JP3930652B2 - 溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材およびその製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続溶融金属めっき装置に配設されている浴中機器のうち、被めっき材をめっき浴中において案内し走行させるのに用いられる溶融金属めっき浴用ロール部材、とくに溶融亜鉛−アルミニウムめっき浴用ロール部材とその製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】
鋼帯表面に金属めっきするための溶融亜鉛めっき装置1や溶融アルミニウムめっき装置などに用いられているシンクロール2やサポートロール3は、図1に示すように、めっき浴中に浸漬して用いられるものである。例えば、このシンクロール2は、亜鉛やアルミニウムなどの溶融金属中に常時浸漬して用いられることから、使用条件が苛酷であり、基本的には次のような機能を具備することが要求されている。
▲1▼溶融金属によってロール表面が侵食されにくいこと、▲2▼通過する鋼帯と接触しても表面が磨耗しにくく、初期の形状精度を長く維持できること、▲3▼消耗材ではあるが、その寿命が長く、装置コストを抑制できること。
しかも、このシンクロール2は、めっき浴中で、鋼帯の案内走行と同時に方向転換のために鋼帯を巻き付けて用いられるので、さらに次のような性能も要求される。▲4▼めっき浴中に懸濁浮遊する異物(「ドロス」、主としてFe−Zn合金などの粒粒子、もしくはこれらがめっき金属成分と機械的に結合した粒子で、金属Znより融点が高くこれが鋼帯面に付着するとめっき層の形状欠陥を招くもの) が被めっき鋼帯に付着しにくい構成になっていること、▲5▼一般に、シンクロールの外周面には、上記ドロスを排出させるためのらせん溝4, 4′が刻設されているが、この溝の形状がめっき鋼帯にめっきの不均一部となって、色調むら、光沢むらなどのめっき表面欠陥(いわゆる「グルーブマーク」と称されている)となりにくいものであること。
【0003】
これらの要求に応えられる従来のシンクロール2としては、a.ロール外周面に、耐溶融金属侵食性に優れた被覆層を設けたもの、b.ロール外周面に刻設する溝形状を改善したもの、などがある。
前者のロールとしては、たとえば▲1▼特開平1−225761号公報に開示のような、WC−Coサーメットを高速ガス溶射法を用いて被覆したもの、▲2▼実開平3−63565 号公報に開示のような、溶射被覆層に対し化学的緻密化処理法によってCrO3の溶液を塗布して被覆し、かつ該溶射皮膜の微細気孔中にCr2O3 微粒子を含浸させたもの、などが提案されている。
また、後者のロールについては、▲3▼ロール表面に図2(a), (b)に示すような溝4, 4′を刻設したもの、▲4▼実開平3−74654 号公報に開示のような、ロール胴周面に深さ0.05〜0.5mm 、幅0.05〜1.6mm 、ピッチ0.5 〜10mmの連続もしくは非連続な溝を設けたもの、▲5▼特開平4−301057号公報に開示のような、ロール胴周面に高低差で0.5 〜5mmの凹凸面を形成することにより、搬送材とロール外周面とが直接面接触しないようにしたシンクロール、などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの各従来技術は、ロール表面形状の長期安定化やロール表面のZn−Al−Fe金属間化合物の付着, 成長防止、およびドロス排出用らせん溝が鋼板と接触することによって生じるめっきの色調あるいは光沢のむらの軽減にかなりの効果を発揮してきた。しかしながら、近年の自動車用防錆鋼板などに求められている亜鉛めっき鋼板の品質はますます高度化しており、従来の改善技術では必ずしも満足すべき状態ではない。すなわち、めっき鋼板の機械的性質はもちろんのこと、本発明が属している塗装の下地の分野についても、たとえばめっきの点状欠陥あるいは模様欠陥などに対する表面品質への要求がさらに高まっているのが実情である。
【0005】
このような技術的背景の下で、本発明者らは、めっき品質のさらなる向上を図るべく研究を進めるうちに、めっき鋼板表面の欠陥は鋼板とロールとの接触面、とくにロール表面のごく小さな形状欠陥 (面, 線, 点) に起因することをつきとめた。しかも、この形状欠陥は、表面皮膜自体の形状欠陥よりもむしろこの皮膜表面に付着しためっき浴中成分 (ドロス等) に起因していることがわかった。そして、このめっき浴中成分は、微細なFe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物であることも判明した。
【0006】
ところで、上掲の特開平1−225761号公報などが開示するWC−Coサーメット溶射皮膜などは、耐溶融金属性を有する材料であるからロール基材の保護には一応は有効である。しかし、前記溶射皮膜中にはX線回折法では同定できないほどの微少な量の金属Co相が存在するが、このCo相は溶融Zn−Alと親和性をもつことから、Fe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物付着の核となり、その付着を促進すると考えられる。
また、上掲の実開平3−74654 号公報で開示するCr2O3 についても、ロール表層部の溶融Zn−Alと接触する部分では溶融金属AlがCr2O3 を還元して金属Crを生成させる。従って、めっき浴にAlを共に含有するような溶融亜鉛めっき浴中での耐用性は、Cr2O3 では熱力学的に不安定となり、皮膜の劣化が早期に起こり、しかも上記金属間化合物の付着が促進されるという課題があった。
【0007】
以上説明したように、これまでの方法では、ロール基材表面をある程度は保護できるものの、ミクロ的な観点におけるFe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物の付着、成長を確実に阻止するところまでには至っていないのが実情である。
そこで、本発明の主たる目的は、ロール表面性状に起因するめっき表面欠陥の発生阻止のために有効な溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材、とくにその表面皮膜構造とその製造方法を提案することにある。
本発明の他の目的は、ロール表面にめっきドロスが付着しにくく剥離しやすい表面構造を有するロールおよび溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール表面への皮膜の形成方法を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的実現に向け、ロール表面に形成したWC−Co溶射皮膜表面の微視的構造について検討し、広義には“ドロス”と呼ばれるFe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物がロール表面に付着し成長するという弊害を除くべく鋭意研究した結果、下記の要旨構成にかかる発明に想到した。
即ち、本発明は、鋼基材表面にWC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜を被覆してなるロールにおいて、前記WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の表面に、クロム酸化物と窒化物との混合物焼成皮膜を形成すると共に、前記溶射皮膜の表層付近に存在する微小気孔中にも前記クロム酸化物と前記窒化物との混合物焼成微粒子を充填してなる溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材を提案する。
【0009】
次に、本発明は、鋼基材表面にWC−金属硼化物−Co系サーメットを溶射被覆し、次いでこのWC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の表面に、含酸化クロム水溶液と窒化物との混合物からなるスラリーを被覆したのち加熱焼成することにより、前記WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の表面およびその皮膜表層付近に存在する微小気孔中に、焼成混合物を被覆しかつ充填することを特徴とする溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材の製造方法を提案する。
【0010】
本発明において、サーメット溶射皮膜を構成する金属硼化物としては、TiB2, ZrB2, HfB2, VB2, TaB2, NbB2, NiB2, W2B5(WBでもよい) およびCrB2のうちから選ばれるいずれか1種以上を用いることが好ましい。
本発明においては、前記窒化物としては、TiN, ZrN, VN, TaN, AlN, BN, NbN, Si3N4およびSiO2−AlN のうちから選ばれるいずれか1種以上を用いることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記WC−金属硼化物−Co系サーメットの粉末は、まずWCとCoとの混合粉末を焼成してこの両者の金属間化合物もしくは変形WC化合物をつくり、次いでそのWC−Co金属間化合物に金属硼化物を添加混合するか、バインダーを介して5 〜50μmの大きさに造粒したものを用いることが好ましい。
また、本発明においては、混合スラリーは、含クロム酸水溶液1に対し、窒化物を体積比で 0.1〜0.5 の割合いで混合した濃度を有するものであることが好ましい。
なお、本発明は、特にめっき浴成分としてAlを含有する溶融亜鉛合金めっき浴用ロール部材としての用途において、とりわけ効果的に適用される。
【0012】
【発明の実施の形態】
溶融金属めっき浴, とくに溶融Zn−Al合金に対して耐久性を示す材料としては、炭化物や酸化物、窒化物、硼化物などが知られている。本発明者らの研究によれば、溶融金属めっき浴用ロール部材にこれらの材料の混合物、例えば、WC−金属硼化物−Co系サーメットを溶射することが望ましいことがわかっている。しかし、それだけでは十分でなく、その溶射皮膜の気孔を封孔する表面処理が必要である。即ち、本発明においては、その封孔のために有効な方法として、クロム酸化物と窒化物との混合物を被覆し充填することが望ましいとわかった。以下、このことについてさらに詳しく説明する。
【0013】
さて、溶融金属めっき処理, たとえばZn−Al合金めっきにおいて、溶融金属Alは極めて活性な成分であり、他の金属酸化物と共存したとき、しばしば相手の金属酸化物を還元して金属状態に変化させ、自らはより安定な酸化アルミニウム(Al2O3)に変化しようとすることはよく知られている。この現象は、金属熱力学における酸化物生成の標準生成自由エネルギーと温度との関係が教えるところでもある。
即ち、この関係によれば、たとえばWC−Co溶射皮膜の封孔材としてよく知られているCr2O3 は、めっき温度 (約460 ℃) のレベルにおいては熱力学的にAl2O3 より不安定であり、平衡論的には金属Alが共存していると還元が起こって金属Crを生成する可能性がある。
【0014】
そこで発明者らは、このような背景の下で、まずWC−Coサーメットに代えて、溶融金属に対してより安定性があり、耐熱性にも優れているWC−硼化物−Coサーメットを用いることを前提とした上で、さらにその溶射皮膜の上にオーバーコートとしてあるいは封孔材として、このCr2O3 の欠点を補う補完材料として、溶融亜鉛中においてCr2O3 に比べて熱力学的に安定な窒化物の使用に着目した。即ち、本発明は、クロム酸化物と窒化物との混合物をオーバーコートならびに気孔用封孔材とすることにしたのである。ここで、窒化物というのは、溶融金属Zn−Al合金に対して90℃以上の接触角をもち、いわゆる極めて濡れにくい化合物である。しかも、この窒化物というのは、Cr酸化物に比べると、溶融Alとの熱力学的反応性も低い。従って、このような窒化物粒子がCr2O3 粒子に近接して存在すると、Cr2O3 がめっき浴中の溶融Alによって還元され、金属Crを生成したとしても、その微小金属Cr部位がめっき浴と接触する確率は低いものとなる。
その結果、ミクロ的領域で溶融Alによって還元生成した金属Crがめっき浴成分そのものと親和性を示し、めっき浴中に浸漬されたシンクロール表面へのFe−Al、Fe−Al−Zn金属間化合物の付着, 成長を阻止する作用が生じると考えられる。
【0015】
そこで、本発明においては、WC−金属硼化物−Co系溶射皮膜の補強, 封孔処理のために、この溶射皮膜の上に酸化クロムと窒化物との混合物, 例えば、含酸化クロム水溶液と窒化物との混合物スラリーの形で塗布し乾燥, 焼成することにした。即ち、前記混合スラリーを前記溶射皮膜上に塗布し、水和反応、加水分解、縮重合反応などを起こさせたのち、加熱焼成処理することにより、Cr2O3 と窒化物との混合焼成粒子を前記溶射皮膜の表面に被覆すると共に、該皮膜表層部の気孔を通じてその孔中に含浸させることにしたのである。
【0016】
本発明において上記混合スラリーは、クロム酸 (CrO3) 水溶液に代えて、クロム酸アンモニウム(NH4)2CrO4, 重クロム酸アンモニウム(NH4)2Cr2O7 などの水溶液を、それぞれ単独あるいは混合して使用することができる。これらのクロム酸およびクロム酸塩化合物の水溶液は、加熱焼成することによって分解し、いずれも最終生成物として微細なCr2O3 粒子を生成する特徴がある。このように、最終生成物としてCr2O3 を生成する化合物であれば、塩化クロム CrCl2, 硫酸クロム CrSO4, 炭酸クロム CrCO3, 硝酸クロム Cr(NO3)3 , 水酸化クロム Cr(OH)3なども使用することができる。そこで、本発明では、このような各種のクロム化合物を総括して便宜上、含酸化クロム化合物と呼ぶこととする。
【0017】
また、本発明において、上記クロム酸水溶液, 即ち、クロム酸化物と混合して用いる窒化物としては、窒化チタン(TiN) 、窒化ジルコニウム (ZrN)、窒化バナジウム(VN)、窒化タンタル (TaN)、窒化アルミニウム (AlN)、窒化ほう素(BN)、窒化ニオブ (NbN)、窒化珪素 (Si3N4)、サイアロン(SiO2-AlN)などの微粉を、そのまま、または水に溶解させてから添加することができる。
【0018】
なお、クロム酸水溶液と窒化物との混合スラリーは、平均粒径:0.5 〜1.0 μm に調整した上記窒化物の粉末をクロム酸水溶液と混合して調整するが、その上さらに必要に応じて酸化クロム粉末を骨材として加えてもよい。このようにして調整した混合スラリーは、鋼基材表面に被覆したWC−金属硼化物−Co溶射皮膜上に塗布や吹付け手段等によって被覆する。次いで、550 ±10℃の温度で加熱焼成することにより、その焼成微粒子によって該溶射皮膜上を覆うと共にその表層付近にある微小気孔中に侵入させて含浸する。
【0019】
一方、基材表面を覆う溶射皮膜中の金属硼化物としては、硼化チタン (TiB2) 、硼化ジルコニウム (ZrB2) 、硼化ハフニウム (HfB2) 、硼化バナジウム(VB2) 、硼化タンタル (TaB2) 、硼化ニオビウム(NbB2)、硼化タングステン (W2B5, WB) 、硼化クロム (CrB2) などが好適である。
これらの金属硼化物は、5 〜60wt%の割合で含まれるように添加する。この理由は、硼化物量が5wt%より少ない場合は硼化物としての溶融亜鉛に対する濡れ特性が発揮しずらく、一方、60wt%より多くても格別その特性が向上するものではないからである。
【0020】
また、上記溶射皮膜中に混合するCoは、5〜20wt%の範囲で添加する。この理由は、その含有量が5wt%より少ない場合は、溶射皮膜を構成するWC, 金属硼化物粒子の相互結合力が弱くなって、亀裂が発生したり、鋼鉄製基材との密着性も低下するので、好ましくない。一方、Co含有量が20wt%より多くなると、溶融金属の皮膜内部への拡散反応が大となるほか、ドロス成分の付着現象が増加することとなるので好ましくない。
【0021】
次に、本発明の製造方法について説明する。
▲1▼ 下層サーメット溶射皮膜の形成;
脱脂、洗浄、粗面化等の所定の表面処理を施した鋼基材 (ロール基材) に対し、WC−金属硼化物−Co系サーメットを高速フレーム溶射法にて被覆する。
ここで、この溶射に用いるサーメットの粉末としては、WC, 金属硼化物, Coなどの各原料粉末の混合粉末を用いる。その混合粉末は、始めに、WCとCoとを混合して焼成することにより、まずこの両者の金属間化合物、例えば、Co3W3CやWCの一部が分解して生成したW6C2.54, W2Cなどを用いる。
次いで、そのWC−Co金属間化合物粉末に金属硼化物を直接混合するか、有機質バインダーを用いて混合して平均粒径で5〜50μmの大きさに造粒することが好ましい。このような方法の採用によって、WCの比重と著しく異なる金属Co, TiB2, NiB2, CrB2などを均等に混合することができるのである。
▲2▼ 上層の混合物焼成皮膜の形成について;
上述したWC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の上に、クロム酸水溶液とNi3N4 水溶液, BN水溶液あるいはAlN 水溶液などの窒化物含有水溶液とを混合した混合スラリーを、常圧もしくは加圧下に塗布, 吹き付けなどによって被覆し、その後 540〜560 ℃で加熱焼成する。この処理によって、上記混合スラリー中の酸化クロム, 窒化物の粒子が被覆 (厚み 5〜20μm) されると同時に、該サーメット溶射皮膜の気孔中にも侵入し、その後の加熱に伴う脱気によって気孔中に残留し、事実上充填された態様で、サーメット溶射皮膜の表面を覆う。
【0022】
表1は、硼化物−Co系サーメット溶射皮膜を90μm 厚さに被覆した25mmφ×300 mml 炭素鋼材を用い、これらを、▲1▼クロム酸水溶液とSi3N4 との混合スラリー、▲2▼クロム酸水溶液とBNとの混合スラリー、▲3▼クロム酸水溶液とAlNとの混合スラリー、および比較例として、▲4▼クロム酸水溶液のみ、について、それぞれ塗布して被覆, 含浸させ、550 ℃×1Hrの条件で焼成したものを試料とした。そして、これらの試料を、Zn−0.1 %Al 460℃めっき浴内のシンクロール端部にとりつけ、300 時間の流動浸漬を行った後、表面への結晶性Fe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物付着の程度を比較観察した。
その結果、本発明適合例No. ▲1▼、No. ▲2▼、No. ▲3▼は、比較例のNo. ▲4▼に比べて金属間化合物の付着量が少なく優位性が認められた。
【0023】
また、上記試料を細断して、SEM特性X線像で皮膜表面のAlの存在を半定量したところ、表1に示すとおり、比較例No. ▲4▼に比べ、本発明適合例のNo. ▲1▼〜▲3▼の優位性が認められた。このことは、WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜に含浸, 焼成したクロム酸化物と窒化物との混合物の焼成皮膜およびその充填層の部分において、クロム酸化物の一部が溶融Alによって還元され、微視的に金属Cr成分が生成したものの、隣接共存する窒化物による浴成分の接触を軽減させる効果があらわれたものと推察される。また、BNをはじめとする窒化物にはそれ自体に固体潤滑能があり、めっき金属流動浴の接触・付着を境界領域で低下させたことによるものと考えられる。
【0024】
【表1】
Figure 0003930652
【0025】
【実施例】
実施例1
この実施例は、試験材として、直径250mm 、面長1800mmのロール (13Cr系ステンレス鋼製) の表面に、WC−25wt%W2B5− 5wt%TiB2−12wt%Coサーメット溶射皮膜を0.08〜0.09mmの厚さに被覆し、そのWC−金属硼化物−Coサーメット溶射皮膜上にさらに下記組成のスラリーを塗布し乾燥した後、大気雰囲気下で550 ℃±10℃×2Hrの条件にて焼成したものであり、このロールを、Alを0.12%含有する溶融亜鉛めっき装置1の浴中サポートロール3 (図1参照) に適用した例である。
塗布用混合スラリーの組成;
このスラリーは、比重1.60のクロム酸水溶液と粒度範囲5〜10μmのSi3N4 を精製水に加えて比重1.9 〜2.1 とした窒化物含有水溶液とを、混合比 (体積比) 1:1になるように調整したものである。
【0026】
このようにして得られた上記サポートロール3を、460 ℃の亜鉛めっき鋼板用溶融亜鉛めっき浴中で実際に使用した。その結果、稼動後から20日間、問題なく安定した表面品質のめっき鋼板が得られた。さらにその後、該サポートロール3を一旦めっき浴から引き上げ、ロール表面を点検したが、目視観察ではFe−Al、Fe−Al−Znの金属間化合物の析出、付着はほとんど認められなかった。
また、ロール表面に付着していた金属Znを除去するために、該サポートロールを5%H2SO4 水溶液に15分浸漬して金属Znを除去した。そして、再び溶融亜鉛めっき装置に取付けて使用したが、初回使用とほぼ同期間の稼動寿命が得られた。この実施例によって従来仕様のサポートロール3では5〜15日間の耐用寿命であったが、上記サポートロール3は2回使用で約2.5 倍の寿命延長になったとともに、めっき鋼板表面品質を著しく向上させることができた。
【0027】
実施例2
試験材としては、直径700mm 、面長1800mmのロール (13Cr系ステンレス鋼製、ただし、このロール表面には深さ0.25〜0.35mm、ピッチ2.5mm のネジ切り加工したドロス排出用溝があらかじめ施してある。) の表面に、WC−30wt%CrB2−12wt%Coサーメット溶射皮膜を0.08〜0.09mmの厚さに被覆し、さらにこのロール表面のWC−Co溶射皮膜上に、下記組成のスラリーを塗布し、乾燥後、大気雰囲気下550 ℃×2Hr焼成したロールを用いた。
混合スラリーの組成;
このスラリーは、比重1.60のクロム酸水溶液と、粒度範囲0.5 〜1.0 μmのBN粒子を精製水に加えて比重1.30に調整した窒化物含有水溶液を、混合比 (体積比) 1:2としたものである。
【0028】
上記のように処理したロールを、実施例1と同じ溶融亜鉛めっき装置1のシンクロールとして実用に供した。その結果、従来技術では、シンクロール表面の微小ドロスの付着によって、めっき鋼板上に微細な表面欠陥が徐々に増加し、めっき表面品質許容限をこえるためにほぼ5日毎にロールを交換していた。しかしながら、上記の例でのシンクロールでは、稼動後から2週間連続して安定した表面品質のめっき鋼板が得られた。そして、このシンクロールを一旦、浴から引き上げ、ロール表面を点検したところ、めっき鋼板に対する押疵を発生させるようにFe−Al, Fe−Al−Zn金属間化合物のような付着物は観察されず、このような方法によれば、めっき鋼板の表面品質を安定させることに効果のあることがわかった。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、WC−金属硼化物−Co系サーメットを溶射被覆した溶融金属めっき浴用鋼板案内ロールの表面に、窒化物とクロム酸水溶液からなるスラリーを塗布、噴霧あるいは浸漬などの方法によって被覆したのち、焼成することによって溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴に対し熱力学的に安定な保護層を形成できるので、この合金めっき浴中に存在するFe−Al、Fe−Al−Zn金属間化合物粒子が付着成長しにくく耐久性に優れ、しかも、めっき表面欠陥の少ない高品質な鋼板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な溶融亜鉛めっき装置の説明図である。
【図2】ドロス排出用溝を有する従来のめっき浴用ロールの略線図である。

Claims (8)

  1. 鋼基材表面にWC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜を被覆してなるロールにおいて、前記WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の表面に、クロム酸化物と窒化物との混合物焼成皮膜を形成すると共に、前記溶射皮膜の表層付近に存在する微小気孔中にも前記クロム酸化物と前記窒化物との混合物焼成微粒子を充填してなる溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材。
  2. 前記WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜は、TiB2,ZrB2,HfB2,VB2,TaB2,NbB2,NiB2,W2B5およびCrB2のうちから選ばれる1種以上からなる金属硼化物を5〜60wt%、Coを5〜20wt%含有し、残部がWCの組成からなることを特徴とする請求項1に記載のロール部材。
  3. 前記窒化物が、TiN,ZrN,VN,TaN,AlN,BN,NbN,Si3N4およびSiO2−AlNのうちから選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のロール部材。
  4. 鋼基材表面にWC−金属硼化物−Co系サーメットの粉末を溶射被覆し、次いでこのWC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の表面に、含酸化クロム水溶液と窒化物とからなる混合スラリーを被覆したのち加熱焼成することにより、前記WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜の表面およびその皮膜表層付近に存在する微小気孔中に、焼成混合物を被覆しかつ充填することを特徴とする溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき浴用ロール部材の製造方法。
  5. 前記WC−金属硼化物−Co系サーメット溶射皮膜は、TiB2,ZrB2,HfB2,VB2,TaB2,NbB2,NiB2,W2B5およびCrB2のうちから選ばれる1種以上からなる金属硼化物を5〜60wt%、Coを5〜20wt%含有し、かつ残部がWCの組成からなることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記WC−金属硼化物−Co系サーメットの粉末は、まずWCとCoとの混合粉末を焼成してこの両者の金属間化合物もしくはWC複合化合物をつくり、次いでそのWC−Co金属間化合物もしくはWC複合化合物に金属硼化物を添加混合するか、バインダーを介して5〜50μmの大きさに造粒したものを用いることを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 前記含酸化クロム水溶液中に添加する窒化物として、TiN,ZrN,VN,TaN,AlN,BN,NbN,Si3N4およびSiO2−AlNのうちから選ばれるいずれか1種以上を用いることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
  8. 上記混合スラリーは、含クロム酸水溶液1に対し、窒化物を体積比で0.1〜0.5の割合いで混合した濃度を有するものである請求項4に記載の製造方法。
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