JPH1180917A

JPH1180917A - 耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属浴用浸漬部材

Info

Publication number: JPH1180917A
Application number: JP25626597A
Authority: JP
Inventors: Michiyoshi Mizunuma; 道喜水沼; Teruyuki Uchiyama; 輝之内山; Kiyohiro Tarumi; 清弘垂水
Original assignee: Nippon Steel Hardfacing Corp
Current assignee: Nippon Steel Hardfacing Corp
Priority date: 1997-09-05
Filing date: 1997-09-05
Publication date: 1999-03-26

Abstract

(57)【要約】【課題】耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属浴用浸漬部
材の提供。【解決手段】浸漬部材本体の表面に、タングステン炭
化物、チタン炭化物、ニオブ炭化物、モリブデン炭化物
の１種または２種以上と、タンステン・コバルト硼化
物、モリブデン・コバルト硼化物、ニオブ・コバルト硼
化物の１種または２種以上の複合硼化物および不可避不
純物からなる、５〜５００μｍの厚さの表層皮膜を溶射
により形成する。【効果】表層皮膜が高密着性のセラミックスまたはサ
ーメットとなって、耐食・耐摩耗性に優れた効果が奏さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家庭電化
製品、事務用機器、建築資材などの製造に使用される薄
鋼板の連続溶融金属めっきラインにおいて、溶融金属浴
中に浸漬状態で使用されるシンクロール、サポートロー
ルなどのロール類、軸受部品、スナウト等などの溶融金
属浴用浸漬部材に関し、特に耐食・耐摩耗性に優れた無
機質の表層皮膜を基材表面に形成した溶融金属浴用浸漬
部材に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用鋼板や建築資材等に、溶融亜鉛
および溶融アルミニウムめっき鋼板が耐熱・耐食部材と
して賞用されている。これらは主に連続溶融めっきライ
ンで製造されるが、これらの生産ラインにおいては製品
の品質向上および安定化のために、これら設備の溶融金
属浴に浸漬される、シンクロール、サポートロール、軸
受部品、スナウト等の部材では、溶融金属による溶食、
通過する鋼板による摩耗やロール表面などへの溶融金属
やドロス付着が問題となり、これら部材の表面特性につ
いて厳しい要求が課せられている。

【０００３】前記のような要求に対して、特許第２５５
３９３７号（特開平３−９４０１８号公報）が提案され
た。この先行発明は、重量で５〜１５％のコバルトと、
残部がタングステン、チタン、ニオブ、モリブデンの各
炭化物の１種以上ならびにタングステン、モリブデン、
チタンの各硼化物の１種以上からなる溶射層を表面に形
成した溶融金属浴用浸漬部材を要旨とするものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記先行発明において
は、溶射形成される表層皮膜に金属相として含有されて
いるコバルトが溶融金属浴により腐食される恐れがあ
り、その改善が必要とされていた。本発明は、前記した
従来の問題を克服し、耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属
浴用浸漬部材を提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、先行発明にお
ける溶融金属浴に浸漬される部材の表層皮膜構成成分の
うち、コバルトを含む複合金属硼化物相部分が溶融金属
に対する耐食性に特に優れていることを知見し、本発明
を完成するに至った。

【０００６】前記の知見に基づいてなされた本発明は、
浸漬部材本体に形成された５〜５００μｍの厚さの表層
皮膜が、タングステン炭化物、チタン炭化物、ニオブ炭
化物、モリブデン炭化物の１種または２種以上と、タン
ステン・コバルト硼化物、モリブデン・コバルト硼化
物、ニオブ・コバルト硼化物の１種または２種以上の複
合硼化物および不可避不純物からなることを特徴とする
耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属浴用浸漬部材を要旨と
している。

【０００７】また本発明は、前記した表層皮膜中に、結
合材としてのコバルトを１５重量％以下含有するもの
や、さらに加えて１０重量％以下のクロムを含有するも
のも要旨としている。

【０００８】そして、前記表層皮膜中の硼化物相とし
て、クロムを含有するものも本発明の要旨であり、前記
表層が、焼成して金属酸化物を形成する液状封孔剤によ
り封孔処理されているものも本発明の要旨である。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明の構成と作用を説明する。
本発明における硼化物として、複数金属の複合硼化物が
表層皮膜構成材料の一つとして採用された。これは、先
行発明の特許第２５５３９３７号における表層皮膜構成
の溶射材料により形成された表層皮膜を解明した結果か
ら導きだされたものである。

【００１０】前記先行発明の表層皮膜は金属炭化物と金
属硼化物とコバルトの各相から形成されている。この表
層皮膜組織を究明した結果、溶射材料の原料として単体
成分の硼化物材料を使用しても、溶射材料の製造方法、
またそれにより得られた溶射材料を使用する溶射条件な
どにより、得られた溶射皮膜の溶融金属に対する耐食、
耐摩耗性に差があり、その中で耐食性のよいものについ
て調査をした結果、形成された皮膜中に、硼化物相がＷ
ＣｏＢ、ＭｏＣｏＢ、ＮｂＣｏＢなどの複合硼化物とな
ったり、また、複数の硼化物を溶射材料に添加した場合
には、例えばＷＭｏＣｏＢなどの複合硼化物を形成して
いることが判明した。なお、例えばＷＣｏＢと記載され
たものは、Ｗ、ＣｏおよびＢの化合物を意味しており、
Ｗ₃ＣｏＢ₃、ＣｏＷＢ、ＣｏＷ₂Ｂ₂、Ｗ₂Ｃｏ₂₁Ｂ₆など
が包含される。

【００１１】すなわち、耐食性のよい表層皮膜は、金属
相として添加したＣｏのかなりの部分が硼化物の形成成
分となっていることが知見された。また、ＷＢ等の硼化
物粉とＣｏ粉とを中性雰囲気中で焼成した溶射材料によ
り形成した溶射皮膜には、ＷＣｏＢ等の生成が多いこと
が確認された。さらに、Ｃｏの金属相がほとんどなくて
も、前記複合硼化物相と炭化物相との混合相は緻密な皮
膜を形成し、基材に対する密着強度も高いことが判明し
た。

【００１２】本発明は前記知見に基づいて完成されたも
のであり、金属相を含まないか、または金属相を減らし
て大部分が炭化物と複合硼化物により表層皮膜を形成さ
せている。炭化物としては、ＷＣ、ＴｉＣ、ＮｂＣ、Ｍ
ｏＣの１種以上が用いられ、皮膜中において形成される
ＷＴｉＣ、ＷＭｏＣ等のいわゆる複合炭化物も、本発明
の技術範囲に包含される。なお、ＷＣとはタングステン
の炭化物をあらわし、ＷＣ、Ｗ₂Ｃなどの、タングステ
ンと炭素の結合割合の違うものも含むものとする。Ｔｉ
Ｃ、ＮｂＣ、ＭｏＣについても同様である。硼化物とし
ては、前記したＷＣｏＢ、ＭｏＣｏＢ等を主体とする
が、ＷＮｂＣｏＢ等となっている場合も、本発明の技術
範囲に包含される。本発明における炭化物と複合硼化物
の配合割合は重量で炭化物３０〜８０％、複合硼化物７
０〜２０％が実用可能な範囲であり、好ましくは炭化物
４５〜６０％、複合硼化物５５〜４０％が優れた特性を
発揮する。組成範囲の下限未満では当該成分の配合効果
が得られず、上限を超えると、当該成分のみの特性に近
くなり、両成分配合の相乗効果が得られない。

【００１３】表層皮膜の形成手段は特に限定されない
が、炭化物、硼化物、金属Ｃｏ粉等の混合粉、その焼成
粉あるいは焼成温度が高い焼結粉を使用した溶射による
皮膜形成が適切である。表層皮膜厚さが５μｍ未満で
は、必要な耐食・耐摩耗性が得られず、５００μｍを超
えると、表層皮膜が剥離し易くなる。

【００１４】表層皮膜中に金属Ｃｏ相を一部形成させる
と、基材への密着性がより向上するが、Ｃｏ含有量が１
５重量％を超えると溶融金属に対する耐食性が低下す
る。また金属相の耐食性向上のために、１０重量％まで
のＣｒを添加できる。多量の添加は金属相の融点が低下
し、併せて溶融金属に対する耐食性も低下する。

【００１５】また、Ｃｒは複合硼化物や複合炭化物の構
成成分としても添加できる。すなわち、炭化物成分とし
てＷ、Ｍｏ、Ｔｉ、Ｎｂが複合化し、硼化物成分として
Ｗ、Ｍｏ、Ｎｂ、Ｃｏ、Ｃｒが複合化し、金属相成分と
してＣｏ、Ｃｒが複合化した皮膜、例えばＷＭｏＴｉＮ
ｂＣｏＣＢ、ＷＭｏＴｉＮｂＣｒＣｏＮｉＣＢなどと表
示しうる皮膜も本発明の技術範囲に包含される。

【００１６】形成された前記表層皮膜は、主にセラミッ
クス状となっているため溶融金属耐食性に優れている。
金属相としてＣｏ、Ｃｒなどが含まれても、多くは金属
間化合物状態になっており、溶融金属耐食性に優れてい
る。そして、皮膜形成過程において化合物状態とするこ
とにより、基材に対する皮膜の密着性、緻密性を向上さ
せることが出来る。溶射による表層皮膜形成は、前記し
た各点に好都合であり、特に高速ガス溶射法例えばスル
ーザメテコ社製ダイヤモンドジェット溶射機または日本
ユテック社製ＪＰ−５００溶射機を使用して溶射を実施
するのが適している。

【００１７】表層皮膜形成後、焼成により金属酸化物を
生成する封孔処理液に浸漬あるいはこれを塗布し、焼成
して封孔処理した皮膜も本発明の技術範囲に包含され
る。封孔剤としては、濃度が１５〜２５％の金属アルコ
キシドアルコール系ゾル液あるいは同ゲル液、クロム酸
溶液、セラミックス超微粉懸濁液などが使用できる。前
記封孔処理液を前記表層皮膜に刷毛で塗布するか、ある
いは処理液に浸漬したのち乾燥し、４００〜４５０℃で
６０〜１８０分間加熱焼成して金属酸化物を形成させて
封孔を行なう

【００１８】

【実施例】本発明を実施例により具体的に説明するが、
これによって本発明が限定されることはない。表１に示
す成分組成、厚みを有する表層皮膜を形成した試験片
（素材：ＳＵＳ３０４、寸法：５×３０×１００ｍｍ）
を作製した。皮膜形成はＷＢ、ＭｏＢ、ＮｂＢの各粉粒
と、各炭化物粉粒と、金属粉粒とを混合焼成した粒径１
０〜４４μｍの噴射パウダーを使用し、高速ガス溶射法
（スルーザメテコ社製ダイヤモンドジェット溶射機）に
より、燃焼ガスとして酸素圧力：１０．３バール、プロ
ピレン圧力：６．９バール、エアー圧力：５．２バー
ル、溶射パウダー送給量：３８ｇ／分、溶射距離：１５
０〜２００ｍｍの条件により実施した。また、封孔処理
は、前記試験片を２０％Ｚｒアルコキシドアルコールゾ
ル液に浸漬し、引き上げて乾燥後、４３０℃で３０分間
焼成して行なった。

【００１９】

【表１】

【００２０】表１における表層皮膜の分析値は、炭化物
量、硼化物量については検出されたＣ、Ｂ量によって按
分したものである。硼化物、炭化物が複数添加検出され
ているものは、これらの複合硼化物、複合炭化物として
存在するものもある。硼化物中のＭはＣｏであり、Ｃｒ
含有の場合はＣｏの一部がＣｒに置換されていることも
ある。また、硼化物、炭化物の化学式はＸ線回析像で検
出されたものが存在しているものとした。したがって、
溶射材料中には金属単体成分のＣｏ、Ｃｒが存在して
も、形成された表層皮膜中では金属単体で検出されてい
ないものもある。分析は、表層皮膜を剥離してサンプル
とした。

【００２１】表１において、Ｎｏ．１〜Ｎｏ．４は金属
相がない（検出されない）もの、Ｎｏ．５〜Ｎｏ．８は
Ｃｏ相が検出されたもの、Ｎｏ．９、Ｎｏ．１０は金属
相にＣｒが含まれたもの、Ｎｏ．１１〜Ｎｏ．１４は封
孔処理をされていないものである。Ｎｏ．１５〜Ｎｏ．
２０は比較例であって、Ｎｏ．１５〜Ｎｏ．１８は炭化
物相−Ｃｏ系の皮膜である。Ｎｏ．１９，Ｎｏ．２０は
特許第２５５３９３７号発明の硼化物−炭化物−Ｃｏ系
の皮膜である。

【００２２】表２は、表１に示された表層皮膜の基材に
対するＪＩＳＨ８６６６に規定される密着性試験方法
によって測定した密着強度、溶融亜鉛浴腐食試験状況、
皮膜硬さを示している。

【表２】

【００２３】本発明実施例を比較例と対比すると、溶融
亜鉛腐食試験において本発明の表層皮膜は皮膜自体の反
応が少なく、且つ亀裂や剥離が発生しにくいので基材と
の反応による亜鉛付着が生じにくい。一方、比較例では
密着強度や硬さは良好であるが、表層皮膜自体の溶融亜
鉛浴による腐食が有り、亜鉛が付着しやすく、皮膜の剥
離も発生しやすい。

【００２４】

【発明の効果】本発明は以上説明したように、基材に形
成された表層皮膜が高密着性のセラミックスまたはサー
メットとなっており、溶融金属耐食性に優れ、かつ皮膜
硬さも高いから耐摩耗性にも優れ、シンクロール、サポ
ートロール、軸受部品、スナウト等の溶融金属浴用浸漬
部材として、耐食・耐摩耗性に優れた効果が奏され、産
業上極めて有用である。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】浸漬部材本体に形成された５〜５００μ
ｍの厚さの表層皮膜が、タングステン炭化物、チタン炭
化物、ニオブ炭化物、モリブデン炭化物の１種または２
種以上と、タンステン・コバルト硼化物、モリブデン・
コバルト硼化物、ニオブ・コバルト硼化物の１種または
２種以上の複合硼化物および不可避不純物からなること
を特徴とする耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属浴用浸漬
部材。
【請求項２】表層皮膜にコバルト１５重量％以下を含
有する請求項１記載の耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属
浴用浸漬部材。
【請求項３】表層皮膜にクロム１０重量％以下を含有
する請求項１または２記載の耐食・耐摩耗性に優れた溶
融金属浴用浸漬部材。
【請求項４】硼化物相にクロムも含有する請求項１、
２または３記載の耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属浴用
浸漬部材。
【請求項５】焼成して金属酸化物を形成する液状封孔
剤により封孔処理された表層皮膜である請求項１ないし
４のいずれかに記載の耐食・耐摩耗性に優れた溶融金属
浴用浸漬部材。