JPH06116702A - 耐溶融金属性に優れる複合溶射材料および複合溶射皮膜 - Google Patents

耐溶融金属性に優れる複合溶射材料および複合溶射皮膜

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JPH06116702A
JPH06116702A JP26342892A JP26342892A JPH06116702A JP H06116702 A JPH06116702 A JP H06116702A JP 26342892 A JP26342892 A JP 26342892A JP 26342892 A JP26342892 A JP 26342892A JP H06116702 A JPH06116702 A JP H06116702A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶射皮膜の、溶融金属による侵食を防ぎ、併
せて、その皮膜表面へのドロスの付着を防止して、めっ
きプラントの稼動効率を高めるとともに、めっき品質の
向上を実現する。 【構成】 炭化物と金属、あるいは炭化物サーメットの
粒子と硼化物とからなる複合溶射材料であり、前記粒子
を硼化物で被覆、一体化してなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐溶融金属性に優れ
る、粉状もしくは粒状の複合溶射材料とこの材料の溶射
によって形成される複合溶射皮膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっ
き、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきなどのめっき層
は、優れた防錆、防食力を発揮することから、かかるめ
っき技術は、自動車、航空機、車輌、建築、家電製品な
どの主要部材に古くから使用されており、現在でもなお
主要な役割りを果している有用な表面処理技術である。
【0003】なかでも、特に大量に生産されている溶融
亜鉛めっき鋼板のめっき処理は、多くの場合、図1に示
すような連続めっき処理によって行われている。この連
続式溶融亜鉛めっき装置には、めっき浴1中に浸漬され
ているシンクロール2、めっき浴中の表面近傍に配設さ
れるサポートロール3及びこれらのロールを通過した後
のめっき鋼板4を案内するガイドロール5、鋼板に付着
した過剰の亜鉛を窒素ガスや水蒸気で吹き飛ばすための
噴射ノズル6などが配設されている。ここで、本発明に
係る複合溶射材料の溶射対象となるめっき用部材は、め
っき浴中に浸漬されるか、溶融亜鉛が飛散付着するか、
あるいは鋼板上にめっきされた亜鉛が軟化状態にある条
件下でそれに接触する箇所に配設され、(1) 溶融亜鉛に
よる侵食が起こり難いこと、(2) 通板材 (鋼板) と接触
しても摩耗しにくいこと、(3) 付着した溶融亜鉛の剥離
ならびに保守点検が容易なこと、(4) めっき用部材とし
ての寿命が長く低コストであること、(5) 高温の溶融亜
鉛浴中に浸漬した際の熱衝撃によく耐えることなどが要
求されるものである。
【0004】このような要求に応えるため、シンクロー
ル用皮膜を例にとれば、(1) 特公昭58−11507 号公報に
記載のJIS H8303 (1976)制定のCo基自溶合金に準拠した
合金組成の皮膜を形成したもの。(2) 特開昭61−117260
号公報に開示のような、ZrO2とAl2O3 からなるセラミッ
クス皮膜を溶射形成したもの、(3) 特公昭58−37386 号
公報に開示のように、WC, Cr3C2, TiCの一種または二種
以上に対し、Ni, Siの如き熱間耐食性金属または、これ
らの酸化物を共存させてなる0.1 〜2.4mm 厚さの皮膜
を、主として溶射法によって形成したもの、などが提案
されており、以上のような技術に対し、発明者らも同種
技術の開発研究を行なって、(4) 特願昭63−49846 号
(特開平1−225761号) で、WCサーメットにおいて、Co
を5〜28%含み、その皮膜の気孔率を1.8 %以下、膜厚
を 0.040〜0.10mm未満とした溶射皮膜、(5) 特願昭63−
192753号(特開平2−43352 号) において、硼化物また
はこれにCoを5〜28%含ませた材料を減圧プラズマ溶射
法によって形成させたもの、(6) 特願平1−54883 号
(特開平2−236266号) において、ZrB2, TiB2及び各種
炭化物に5〜40%のTa, Nbを含ませた材料を用い、減圧
プラズマ溶射法によってその皮膜表面粗さをRa 0.01 〜
5μm 、気孔率1.8 %以下の皮膜を形成させたもの、
(7) 実願平1−124010号(実開平3−63565 号) におい
て、炭化物を主体とするサーメット溶射皮膜上に、化学
的緻密化法によってCr3O3 を形成した皮膜、(8) 特願平
2−201187号(特開平4−88159 号) において、炭化物
溶射皮膜の一部を硼化処理によって硼化物に変化させた
皮膜、(9) 特願平3−31448 号(出願日 平成3.2.1)に
おいて各種炭化物、硼化物またはそのサーメット溶射皮
膜にAlまたはAl−Zn合金を加熱拡散することによって、
耐溶融亜鉛性を向上させる、などの諸技術および皮膜を
提案してきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の例示から判るよ
うに、従来の溶融亜鉛めっき用部材に形成する溶射皮膜
についての研究課題は、耐溶融亜鉛性皮膜材料の選
定、皮膜の密着性の改善、皮膜の表面粗さと緻密性
の改善、などが主体を占めており、それぞれ改善効果が
認められている。しかしながら、昨今の溶融亜鉛めっき
鋼板の需要の拡大に伴って、めっきプラントの稼動率の
向上および、めっき鋼板の品質向上に対する要求が極め
て強くなり、耐溶融亜鉛性はもとより、めっき浴中に浮
遊する微細なドロス成分 (Zn−Fe, Zn−Fe−Al合金) の
溶射皮膜表面への付着ひいては、付着したそのドロスに
よって鋼板に極微小な押傷が発生することさえも嫌忌す
るような状況となってきた。そこで、本発明では、これ
らの要求を十分に満たすことができる、耐溶融金属性に
優れる複合溶射材料およびこの材料を用いて溶射形成し
た複合溶射皮膜を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の実
験研究を行った結果、溶射皮膜中への溶融亜鉛の侵入に
ついては、緻密な炭化物あるいは炭化物サーメット皮膜
を採用することによって阻止する一方、ドロス成分の付
着については、溶融亜鉛と冶金反応しない硼化物を使用
することによって防止することが有効であることを知見
した。これがため、本発明の、耐溶融金属性に優れる複
合溶射材料では、炭化物あるいは炭化物サーメットの各
粒子と硼化物とからなる混合溶射材料の粒子を、予め複
合一体化させておき、これにより、溶射作業中において
両成分が分離することなく、複合状態のままで溶射され
て成膜化されるように構成した。即ち、本発明は、炭化
物あるいは炭化物サーメットの各粒子と、硼化物とを混
合してなる複合溶射材料において、上記炭化物または炭
化物サーメットの各粒子と硼化物とが予め複合一体化し
ていることを特徴とする耐溶融金属性に優れる複合溶射
材料を、提案する。また、本発明は、予め硼化物と溶融
結合させるかまたは表面に予め硼化物の被覆層を設けて
なる炭化物、あるいは同じ処理を施してなる炭化物サー
メットの溶射材料を溶射して形成される複合溶射皮膜
を、提案する。なお、上記複合溶射材料を溶射して形成
した複合溶射皮膜は、炭化物や炭化物サーメットの特性
である溶融亜鉛の内部侵入防止特性と、硼化物が具える
ドロス成分付着防止特性を兼備した皮膜となる。
【0007】
【作用】本発明の溶射材料を構成する主要成分は、炭化
物、硼化物およびサーメットを構成する金属であり、か
かる炭化物としては、TiC, NbC, WC, Cr3C2, B4C, TaC,
BiC, ZrC, HfCもしくはVCなどが有利に適合し、かかる
硼化物としては、TiB2, ZrB2, HfB2, VB2, TaB2, NbB2,
W2B5 もしくはCrB2などが有利に適合し、そして、上記
の炭化物サーメットを構成する金属成分としては、Co,
Ni, Cr,Al, Feのいずれか一種または二種以上のものが
用いられる。
【0008】これらのそれぞれの主要構成成分は、次に
示すような特性を有する。炭化物は、溶融金属に対して
強い侵食抵抗力, 即ち溶融亜鉛の内部侵入防止特性を示
すが、それ単独では溶融しにくい。しかし、金属が共存
すると、これがバインダーとなって溶射皮膜の形成を容
易にする。硼化物は、炭化物以上に溶融金属に対する侵
食抵抗力が高く、しかも本質的に溶融金属との接触角が
大きく、濡れ難く、溶融金属と合金反応をしない特徴が
ある。本発明は、この特性を、溶融亜鉛浴中に浮遊する
ドロス成分の付着防止の目的に利用しようとするもので
ある。また、硼化物は安定した溶融状態を呈するためそ
の溶射成膜が容易である。金属成分は、本質的に溶融亜
鉛と反応して合金をつくるが、一方では炭化物や硼化物
とも反応して金属間化合物をつくることができる。この
金属間化合物は、溶射皮膜の形成を容易にするほか、金
属単体よりも耐溶融亜鉛性を向上させる特徴がある。
【0009】なお、市販の炭化物のなかには、製造条件
によって遊離の炭素を含むことがあり、また金属材料中
にもC,Si, Mn, P,Sその他の不純物を含むことがあ
るが、これらの成分の混入量については本発明の目的に
対し、妨げとなる現象が認められないので、特に規定し
ないことを付記しておく。
【0010】以上の材料を用いて、本発明の溶射材料の
製造例を説明する。 (1) 市販の炭化物サーメット粉末に、硼化物粉末を混合
し、メカニカルアロイング法またはメカノフュージング
法によって両成分の少なくとも一部を溶融させて複合一
体化させる。なお、このとき高分子バインダーを添加す
ることによって両粉末の結合を促進させることもできる
(機械的複合法)。 (2) 市販の炭化物サーメット粉末を、硼化物の蒸気、特
にハロゲン硼化物の蒸気中に曝露させることによって、
炭化物サーメット粉末の表面に硼素または硼化物を析出
させて蒸着被覆する(CVD 法)。 (3) 真空容器中の硼素又は硼化物に電子ビームを照射し
てこれを蒸気化させ、炭化物サーメット粉末をこの蒸気
に曝露させることによって、その表面に硼化物を析出付
着させて被覆する(PVD 法)。 (4) 市販の炭化物サーメットを溶融状の硼砂 (Na2B2O7)
中に浸漬含浸させることにより、炭化物サーメット粉末
の表面を硼化物化させる。なお、この硼砂に代えて、NH
4Cl +B4C 混合粉末中に炭化物サーメット粉末を添加し
て600 ℃〜800℃で1〜3時間加熱することにより、硼
化物を含浸させる方法でもよい(熱拡散法)。
【0011】このようにして製造した溶射粉末材料は、
比重の著しく異なる材料たとえばWC(約15.6) 、TiB2
(約4.4)を一つの粉末粒子(複合粒子)として取扱うこ
とができるので、一旦複合一体化すれば、溶射作業中に
おいてもこの両成分が分離するようなことがない。な
お、複合一体化した粒子は、必要に応じ溶射に適した粒
度に粉砕調整する。すなわち、溶射用としては直径5〜
50μm が好ましく、これ未満では溶射時にフューム化
し、またそれを越えると、皮膜を構成した際に、未溶融
粒子となって混在し、空隙の発生や粒子間結合力の低下
をもたらすので好ましくない。
【0012】次に、上述した複合溶射材料を用いて溶射
成膜を形成する方法について具体的に説明する。さきに
述べたように、本発明の溶射材料は、そのすべてが粉末
状態であるため、成膜に当っては、プラズマ溶射法、可
燃性ガスの燃焼炎を熱源とするフレーム溶射法あるいは
爆発溶射法によって成膜することが好適である。また、
かかる溶射皮膜の形成に際しては、炭化物、硼化物、こ
れらのサーメットあるいは複合粒子などを使用目的に応
じて任意に選定できるため、それらの溶射材料を層状構
造にしたり、傾斜構造に成膜することも可能である。た
とえば(1) 炭化物サーメットを50μm 厚にフレーム溶射
法によって形成し、さらにその上に複合材料粒子を50μ
m 厚にプラズマ溶射法によって積層すること、(2) 炭化
物サーメット材料と複合粉末材料の混合割合を種々変化
させ、鉄鋼母材側ほど炭化物サーメット含有量を多く
し、上層部ほど複合材料の比率が高くなるような構造に
成膜すること、など成膜構成成分の割合いを自由に選定
することができる。
【0013】ところで、このようにして形成される溶射
皮膜は、緻密な状態にすることが大切であり、多孔質な
皮膜では、溶融亜鉛が気孔部を通って内部へ侵入するた
め、如何に耐溶融亜鉛性に優れた溶融材料を用いて成膜
しても、その機能を十分に発揮させることができない。
これがため、溶射成膜時においては、溶射粉末の、溶射
ガンへの供給量を調整して1パス当り3〜30μm の皮膜
厚みが得られるように、複数回の溶射を重ねて所定の膜
厚となるようにするのが好ましい。なお、1パス当りの
膜厚が上述したより薄い場合には、より緻密な皮膜が得
られるものの、実用的な膜厚たとえば100 μm を得るの
に長時間を要し経済的でない。一方、1パス当りの皮膜
厚さが30μm を越える場合には、皮膜の気孔率が高くな
るとともに、皮膜を構成する粒子相互の結合力が弱くな
り、剥離しやすくなる欠点がある。
【0014】以上のような方法で製造した本発明の溶射
材料およびこの材料を用いて形成される溶射皮膜の最大
の特徴は、耐溶融金属性に優れた炭化物あるいは炭化物
サーメットの粒子、硼化物がそれぞれ一個の粒子として
完全に複合一体化していることにある。このため、本発
明の溶射材料によって形成した皮膜表面は、炭化物、硼
化物、金属などから成る複合化粒子が均等に分布した状
態を呈するとともに、粒子の表面には常に、硼化物が存
在する確率が高い。これに対し、炭化物、硼化物、金属
などを単に混合状態にしたままで、または、炭化物サー
メットと硼化物とを単に混合させただけの状態で溶射を
行うと、高速の粒子となって、飛行中にそれぞれの材料
の比重(例えば、WCの比重約15、TiB2の比重約4.4 、Ti
C の比重約4.9 、CrB2の比重約5.2)の差、粒径差などに
よって分離現象が発生する。このため、如何に均等に混
合した溶射材料を用いても、それを溶射成膜した表面で
は粉末材料成分の分布は極めて不均等となり、この結
果、溶融金属の内部侵入速度が速くなったり、ドロス成
分が付着しやすくなる欠陥がある。すなわち、ドロス成
分の付着は、溶射皮膜表面に存在する金属質部を核とし
て成長することが多く、単なる混合粉末の溶射面では、
ドロスの付着を防ぐことはできない。この点、本発明の
複合溶射材料では、前述の粉末加工例に示すように、硼
化物が常に金属質を被覆した状態にしてあるので、皮膜
表面には、ドロス成分の付着の核となる部分が殆んど存
在しない状態となる。
【0015】
【実施例】
(実施例1)本発明に係る材料を溶射して形成した溶射
皮膜の耐溶融亜鉛性を調査するため、次のような実験を
行った。先ず、構造用炭素鋼 (SS400)直径15×長さ200m
m を母材とし、その表面に下記(1) 〜(13)の粉末材料を
用いて厚さ100 μm の皮膜を、高速ガス炎溶射法および
プラズマ溶射法によって形成した。なお(1) 〜(9) の材
料は機械的複合法によって製造したものであり、その他
の材料は、(10),(11)の材料は機械的混合法により、(1
3),(14) の材料は溶融粉砕法により、また(12)の材料は
噴霧法によってそれぞれ製造されたものである。
【0016】(1) (85WC−11Co) −4TiB2 (2) (80TiC −1Ni −2Cr −10Al) −7TiB2 (3) 80Cr3C2−20ZrB2 (4) (84WC−10Co−2Al)−4CrB2 (5) (90TiC −5Al −2Fe)−3TiB2 (6) (88WC−12Co) 50μm その上に(1) を50μm (7) (83WC−17Co) 70μm その上に(2) を30μm (8) (88WC−12Co) 80μm その上に(3) を20μm (9) (83WC−17Co) 50μm その上に(4) を50μm (10) (88WC−12Co) (11) (83WC−17Co) (12)自溶合金 (JIS H8303, MSFCo1) (13) 100Al2O3 (14) 8Y2O3−92ZrO2 以上の材料のうち(10)〜(14)は比較用として準備したも
のであり、括弧内はサーメット1個の粉末粒子を示す。
【0017】次に、上記複合溶射材料を溶射した溶射皮
膜つき材料を溶融亜鉛浴中に浸漬した。その条件は下記
の通りである。 (1) 亜鉛浴組成 純亜鉛中に、ドロス成分として0.05
%の鉄粉を添加 (2) 温 度 480 ℃ (3) 浸漬時間 10日間 浸漬後の皮膜は、外観観察するとともに、試験片皮膜を
切断してその断面を光学顕微鏡およびX線マイクロアナ
ライザによって、亜鉛の皮膜内部への侵入状況を観察し
た。
【0018】表1は、この結果を要約したものである。
No.12 の比較材料の自溶合金表面には、多量の亜鉛が付
着するとともに、自溶合金皮膜が亜鉛によって侵食さ
れ、局部的に母材が露出していた。また、No.13 の100A
l2O3皮膜およびNo.14 の8Y2O3・92ZrO2皮膜はいずれ
も、皮膜の50%以上が剥離し、ここでも母材が亜鉛によ
って甚しく侵食されていた。ただ、No.10 およびNo.11
のWC−Co皮膜は、亜鉛の侵食は認められるものの、皮膜
それ自体は破壊されなかった。しかし皮膜表面にはドロ
ス成分の付着が認められた。これに対し、本発明の材料
による皮膜では、その内部への亜鉛の侵入深さが3〜10
μm の範囲にあることに加え、ドロス成分の付着も認め
られず極めて清浄かつ健全な状態を維持していた。
【0019】
【表1】
【0020】(実施例2)本実施例では、本発明の複合
溶射材料と化学成分的には同一ながら、炭化物(炭化物
サーメットを含む)、硼化物、金属などの粒子を単に混
合した状態で、プラズマ溶射法によって100 μm 厚に溶
射成膜したものの耐溶融亜鉛性とドロス成分の付着状況
を調査した。
【0021】・本発明の複合溶射材料(全成分が一体化
している) (1) (85WC −11Co) −4TiB2 (2) (80TiC−1Ni −2Cr −10Al) −7TiB2 (3) 80Cr3C2 −20ZrB2 (4) (84WC −10Co−2Al)−4CrB2 (5) (90TiC−5Al −2Fe)−3TiB2 ・比較のための溶射材料 (6) (85WC-11Co) に4TiB2 を機械的に混合 (7) (80TiC−1Ni −2Cr −10Al) に7TiB2 を機械的に混
合 (8) 80Cr3C2 と20ZrB2を機械的に混合 (9) (84WC −10Co−2Al)に4CrB2 を機械的に混合 (10)(90TiC−5Al −2Fe)に3TiB2 を機械的に混合 なおここで、溶射皮膜浸漬用亜鉛浴組成、温度、浸漬時
間及び浸漬後の皮膜の調査要領などは実施例1と同様と
した。
【0022】調査結果を要約すると表2に示す通りであ
る。この結果から明らかなように、比較用の溶射材料で
成膜したNo.6〜No.10 の皮膜でもその表面からの亜鉛の
侵入深さは30μm 以内にとどまっており、この点では耐
溶融亜鉛性は認められる。しかし皮膜の表面にはドロス
成分が点々と付着成長していた。ドロス成分が付着して
いる皮膜表面部をミクロ的に観察すると、その部分には
金属成分が存在し、これを核としてドロスが付着してい
ることが判明した。これに対し、本発明の複合溶射材料
で形成されたNo.1〜No.5の皮膜では亜鉛の侵入深さが5
μm 以下であるうえ、ドロス成分の付着もなく、極めて
健全かつ清浄な状態を呈していた。なお、皮膜の表面を
拡大鏡及びEPMAで調査すると硼化物がほぼ全面を被覆し
た状態となっており、このためドロス成分の付着現象が
なかったものと考えられる。
【0023】
【表2】
【0024】(実施例3)本実施例では、アルミニウム
(55)−亜鉛(45)合金浴への本発明の複合溶射材料を用い
たプラズマ溶射皮膜の適用性を実験的に調査した。ここ
でも溶射皮膜の厚さは 100μm とし、比較材料は実施例
2と同じものを用いた。
【0025】・本発明の複合溶射材料 (1) (85WC −11Co) −4TiB4 (2) (80TiC−1Ni −2Cr −10Al) −7TiB4 (3) 80Cr3C2 −20ZrB2 (4) (84WC −10Co−2Al)−4CrB2 (5) (90TiC−5Al −2Fe)−3TiB2 ・比較のための溶射材料 (6) (85WC-11Co) に4TiB4 を機械的に混合 (7) (80TiC−1Ni −2Cr −10Al) に7TiB2 を機械的に混
合 (8) 80Cr3C2 と20ZrB2を機械的に混合 (9) (84WC −10Co−2Al)に4CrB2 を機械的に混合 (10)(90TiC−5Al −2Fe)に3TiB2 を機械的に混合 ・アルミニウム−亜鉛合金浴への浸漬条件 (1) 浴組成 アルミニウム55重量%−亜鉛45重量%にFe
粉0.05%添加 (2) 温 度 605℃ (3) 浸漬時間 10 日間 浸漬後の皮膜は実施例1及び2と同様な方法によって評
価した。
【0026】表3はこれらの結果を要約したものであ
る。この結果から明らかなように、比較用の溶射材料で
形成したNo.6〜No.10 の皮膜は、外観的には破壊は認め
られないものの、ドロス成分が多量に付着するととも
に、その断面を調査すると亜鉛の一部は完全に皮膜 (10
0 μm 厚) を貫通し、母材に達していた。これに対し本
発明の複合溶射材料を用いて形成した溶射皮膜は、亜鉛
の侵入が30〜60μm の深さにとどまるとともに、ドロス
成分の付着も軽微であり、特にNo.1, No.2およびNo.5の
皮膜にはほとんど認められず、良好な外観状態を示し
た。
【0027】
【表3】
【0028】(実施例4)本実施例では、本発明の溶射
材料で形成した皮膜の耐溶融アルミニウム性を調査する
ため、実施例1と同質, 同寸法の構造用炭素鋼を母材と
し、その表面に、下記(1) 〜(12 よの粉末材料を用いて
厚さ 150μm の皮膜を高速ガス炎溶射法およびプラズマ
溶射法で形成した。なお、(1) 〜(7) の材料は機械的複
合法によって製造したものであり、(8) と(9) は機械的
混合法、(10)は噴霧法、(11)と(12)は溶融粉砕法によっ
て製造された市販品である。 (1) (84NbC−5Al −4Fe)−5NbB2 −2TiB2 (2) (90B4C−3Al −3Fe −1Co)−3TiB2 (3) (84TaC−8Al −3Fe −2Co)−3VB2 (4) (85SiC−7Al −1Fe −2Co)−5HfB2 (5) (87ZrC−7Cr −2Al)−4W2B (6) (80Cr3C2−10VC−5Ni −2Co)−3NbB2 (7) (80WC −5TiC−10Co) −5TiB2 (8) (80WC −12Co) (9) (83WC −17Co) (10)自溶合金 (JIS H8303, MSFCo1) (11) 100Al2O3 (12) 8Y2O3−92ZrO2 以上の材料のうち (8)〜(12)は、比較用として準備した
ものであり、また括弧内はサーメット材料として1個の
粒子を示す。次に、これらの溶射皮膜を溶融アルミニウ
ム中に浸漬したが、その条件は下記の通りである。 (1) アルミニウム浴組成 純アルミニウム浴中に、ド
ロス成分として 0.1%の鉄粉を添加 (2) 温 度 720 ℃ (3) 浸漬時間 4 日間 浸漬後の皮膜は、外観を観察するとともに皮膜を切断
し、光学顕微鏡およびX線マイクロアナライザーによっ
て、アルミニウムの皮膜内部への侵入状況を観察した。
【0029】表4は、この結果を要約したものである。
No.10 の自溶合金皮膜は溶融アルミニウムによって侵食
されて、母材の侵食も顕著であった。No.11 の100 Al2O
3 皮膜およびNo.12 の8Y2O3−92ZrO2皮膜は、ともに溶
射皮膜の気孔から侵入したアルミニウムによって母材が
選択的に侵食され、これに伴って皮膜は剥離と破壊して
いた。また、No.8, 9 のWC−Coサーメット皮膜でも、溶
融亜鉛の内部侵入が激しく、その先端は母材近くにまで
達するとともに、ドロス成分が付着していた。また、皮
膜の一部にチッピング現象も認められた。これに対し、
本発明の材料で形成した皮膜は、アルミニウムの皮膜内
部への侵入深さは10〜20μm の範囲にとどまるととも
に、ドロス成分の付着が認められないか、あるいはドロ
スの付着が軽微であるうえ、その除去が極めて容易であ
った。
【0030】
【表4】
【0031】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように、本発
明にかかる、炭化物あるいは炭化物サーメットの粒子と
硼化物とを複合一体化してなる複合溶射材料を用いて形
成した溶射皮膜は、溶融亜鉛および溶融亜鉛−アルミニ
ウム合金浴およびアルミニウム浴中において、優れた耐
溶融金属性を発揮できるにとどまらず、浴中に浮遊する
ドロス成分の付着をも防止し得ることが判明した。この
結果、溶融めっき鋼板の長期連続生産が可能となり、設
備の保守点検費用の節減、生産コストの低減などと共
に、ドロスの付着のない高品質めっき鋼板の安定生産に
大きな効果が期待できる。また、本発明の複合材料によ
って溶射皮膜を形成したシンクロールは、溶融亜鉛によ
る侵食が防止されるため、ロール材質の、亜鉛浴中への
溶出による、亜鉛浴の純度低下が発生せず、この面から
も高品質めっき鋼板の生産を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融亜鉛めっき浴槽およびそれに付属する各種
ロールその他の配設状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 溶融亜鉛浴 2 シンクロール 3 サポートロール 4 めっき用鋼板 5 ガイドロール 6 噴射ノズル

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化物あるいは炭化物サーメットの各粒
    子と、硼化物とを混合してなる複合溶射材料において、
    上記炭化物または炭化物サーメットの各粒子と硼化物と
    が予め複合一体化していることを特徴とする耐溶融金属
    性に優れる複合溶射材料。
  2. 【請求項2】 炭化物粒子や炭化物サーメット粒子と硼
    化物との複合一体化は、各粒子と硼化物との機械的結
    合, 溶融結合、もしくは該粒子表面に硼化物を蒸気被覆
    または含浸させることにより得られたものである請求項
    1に記載の複合溶射材料。
  3. 【請求項3】 上記炭化物が、TiC, NbC, WC, Cr3C2, B
    4C, TaC, SiC, ZrC,HfCおよびVCのいずれか1種以上か
    らなる請求項1に記載の複合溶射材料。
  4. 【請求項4】 上記硼化物が、TiB2, ZrB2, HfB2, VB2,
    TaB2, NbB2, W2B5およびCrB2のいずれか1種以上から
    なる請求項1に記載の複合溶射材料。
  5. 【請求項5】 上記炭化物サーメットを構成する金属成
    分が、Co, Ni, Cr,Al, Feのいずれか一種または二種以
    上のものである請求項1に記載の複合溶射材料。
  6. 【請求項6】 予め硼化物と溶融結合させるかまたは表
    面に予め硼化物の被覆層を設けて複合一体化させてなる
    炭化物、あるいは同じ処理を施してなる炭化物サーメッ
    トの溶射材料を溶射して形成される複合溶射皮膜。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100487490B1 (ko) * 2000-12-22 2005-05-03 주식회사 포스코 용융아연에 대한 내식성이 우수한 텅스텐계 용사코팅용분말의 제조방법
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