JP4047534B2 - 魚釣用スピニングリール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚釣用スピニングリールに係わり、特に、ハンドルの回転をスプールの前後動に変換するスプール往復動機構をリール本体内部に設けて成る魚釣用スピニングリールの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、魚釣用スピニングリールは、リール本体と、リール本体から延出する脚部と、脚部の端部に形成されて釣竿に取り付けられる竿取付部とを有している。また、前記リール本体内には、ハンドルが固定されるハンドル軸が回転可能に支持されている。また、ハンドル軸にはドライブギアが固定されており、このドライブギアには、ハンドル軸に対して直交する方向に延び且つリール本体に回転可能に支持された管状のピニオンギアが噛合している。また、ピニオンギアの先端部にはロータが一体的に取り付けられ、ハンドル軸と直交する方向に延在するスプール軸がピニオンギアを貫通している。この場合、スプール軸は、ピニオンギアと同心的に配されており、ハンドル軸と直交する方向に沿って前後動できる。また、スプール軸の先端部には釣糸が巻回されるスプールが取り付けられている。
【0003】
ハンドル軸と直交する方向に沿ってスプール軸(したがって、スプール)を前後動させるスプール往復動機構(以下、オシレーティング機構という。)は、ピニオンギアを介してドライブギアに係合しており、スプールに釣糸を均等に巻回するために動作する。具体的には、このオシレーティング機構は、ピニオンギアから回転力(駆動力)を受けて回転するウォームシャフト(トラバースカム軸)と、ウォームシャフトの溝と噛み合い且つスプール軸に対してその軸方向に移動不能に取り付けられたスライダとからなり、ハンドルの回転操作によってハンドル軸およびピニオンギアが回転されると、ピニオンギアと噛み合うウォームシャフトの回転に伴ってスライダがウォームシャフトの軸方向に前後動し、スライダが一体に取り付いたスプール軸を軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。
【0004】
また、ピニオンギアとウォームシャフトは互いに近接して平行に延びており、そのため、ピニオンギアからウォームシャフトへの回転力(駆動力)の伝達は、一般に、ピニオンギアの前部に同心的に回り止め嵌着された第1の歯車とウォームシャフトの前端部にこれと同心的に固定された第2の歯車との噛み合いによって実現されている(実開昭63−18070号公報等参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように、ピニオンギアとウォームシャフトとの近接配置に伴って、第1の歯車をピニオンギアと同軸に配置し且つ第2の歯車をウォームシャフトと同軸に配置するとともに、これらの歯車同士をピニオンギアの前端側で噛み合わせると、以下のような不具合が生じる。
【0006】
すなわち、一般に、ピニオンギアの前端側には、逆転防止装置を構成するラチェットや転がり式一方向クラッチなどの構成要素が集中している。そのため、オシレーティング機構の第1および第2の歯車をピニオンギアの前端側に配置して噛み合わせるようにすると、軸方向でリールが大型化したり、歯車の装着位置が前記ラチェットやクラッチ等によって制約を受ける虞がある。
【0007】
また、特に遠投用のスピニングリールのように、スプールへの釣糸巻回時の食い込みによる釣糸放出抵抗を防止する場合には、スプールの前後動速度の減速を図ってスプールに釣糸を密に巻回することが必要となるが、この場合に、オシレーティング機構の第1の歯車がピニオンギアと同軸に配置されていると、第1の歯車の外径がピニオンギアの外径に依存することから、減速比率に限界が生じ、釣糸放出抵抗を所望のレベルまで下げることができなくなる。
【0008】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、リール本体の軸方向の大型化を防止できるとともに、スペースおよび動力伝達上の制約を生じることなく、スプールの前後動の大きな減速を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の魚釣用スピニングリールは、リール本体と、リール本体に回転可能に支持されたロータと、リール本体に回転可能に支持されたハンドル軸と一体で回転するドライブギアと、ドライブギアと噛み合い且つドライブギアの回転力をロータに伝達するピニオンギアと、ロータの回転によって釣糸が巻回されるスプールを支持し、前記ピニオンギア内を貫通するスプール軸と、スプール軸と平行に延びる螺軸と、この螺軸の螺旋溝と噛み合い且つスプール軸に対して軸方向に移動不能に取り付けられたスライダとを有し、ピニオンギアとスプール軸とを連結してピニオンギアの回転をスプール軸の往復動に変換するスプール往復動機構と、ピニオンギアの回転力を螺軸に伝達する連動歯車機構と、を備え、前記連動歯車機構は、ピニオンギアと螺軸との間に形成された空間内に位置されており、リール本体に回転可能に支持された回転軸の一端側に設けた歯車を、ピニオンギアに噛合させ、該回転軸の他端側に設けた歯車を前記螺軸の先端に設けた歯車に噛合させ、前記スライダは、該スライダの前後動の前端位置で前記連動歯車機構との干渉を回避する逃げ空間を形成する屈曲部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール1は、リール本体1aと、リール本体1aから延出する脚部1dと、脚部1dの端部に形成され且つ図示しない釣竿に取り付けられる竿取付部1cとを有している。
【0012】
リール本体1a内には、図示しないハンドルが固定されるハンドル軸2が回転可能に支持されている。ハンドル軸2にはドライブギア3が固定されており、このドライブギア3には、ハンドル軸2に対して直交する方向に延び且つリール本体1aに軸受け11を介して回転可能に支持された管状のピニオンギア13が噛合している。このピニオンギア13の先端部には、ベール6および釣糸案内装置15を備えたロータ8が一体的に取り付けられている。
【0013】
ハンドル軸2と直交する方向に延在するスプール軸9がピニオンギア13を貫通している。この場合、スプール軸9は、ピニオンギア13と同心的に配されており、ハンドル軸2と直交する方向に沿って前後動できる。また、スプール軸9の先端部には釣糸が巻回されるスプール10が取付けられている。
【0014】
また、ドライブギア3にはピニオンギア13を介してスプール往復動機構としてのオシレーティング機構19が係合している。このオシレーティング機構19は、後述する連動歯車機構40を介してピニオンギア13と噛み合う螺軸としてのウォームシャフト(トラバースカム軸)19aと、ウォームシャフト19aの螺旋溝29と噛み合い且つスプール軸9に対してその軸方向に移動不能に取り付けられた摺動体としてのスライダ19bとからなる。
【0015】
このような構成では、前記ハンドルの回転操作によってハンドル軸2、ドライブギア3、ピニオンギア13がそれぞれ回転されると、連動歯車機構40を介してピニオンギア13と噛み合うウォームシャフト19aが回転するとともに、その回転に伴ってスライダ19bがウォームシャフト19aの軸方向に前後動し、スライダ19bと一体のスプール軸9が軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。また、ハンドルを回転操作してハンドル軸2を回転させると、このようなオシレーティング機構19の動作と同時に、ドライブギア3およびピニオンギア13を介してロータ8が回転駆動する。したがって、スプール10には、釣糸案内装置15を介して、釣糸が均等に巻回される。
【0016】
また、リール本体1aには、ロータ8の逆回転を防止する逆転防止機構が設けられている。この逆転防止機構は、ピニオンギア13に対して回り止め嵌合された内輪20と、内輪20の外側に配された環状の保持体27と、保持体27の外側に配された外輪25とから成る一方向クラッチを有している。
【0017】
保持体27は複数の転動部材27aを保持している。各転動部材27aは、内輪20の外周面と摩擦接触して内輪20の回転動作によって転動するとともに、外輪25の内周面と摩擦接触することができる。また、外輪25の内周面には、各転動部材27aがフリーに回転(転動)できるフリー回転領域と、各転動部材27aと摩擦接触して各転動部材27aの回転を阻止する楔領域とが形成されている。また、各転動部材27aは、保持体27に設けられたバネ部材(図示せず)によって、前記楔領域に向けて常時付勢されている。
【0018】
公知のように、外輪25の外周には歯車21が一体的に形成されている。この歯車21には、リール本体1aの前部に設けられた係止部材39が、操作ツマミ23の操作で回転する切換操作軸22の端部の係合作用により係脱可能に構成されている。つまり、操作ツマミ23の切換え操作によって係止部材39を介して外輪25を回転状態または非回転状態とすることにより、ロータ8を逆転防止状態と逆転可能状態とに切換えられるように構成されている。
【0019】
図2に拡大して示されるように、ピニオンギア13の回転力(動力)をウォームシャフト19aに伝達する連動歯車機構40は、ピニオンギア13とウォームシャフト19aとの間に形成された空間S1内に位置されている。この空間S1は、ピニオンギア13とウォームシャフト19aとを互いに所定の距離Lだけ離間させることによって、逆転防止機構を避けたピニオンギア13の基端側の領域に確保されている。
【0020】
図示のように、連動歯車機構40は、軸受51,52を介してリール本体1aに回転可能に支持された回転軸40bと、この回転軸40bの先端に一体形成された第1の歯車40aと、回転軸40bの基端側に固定され且つ第1の歯車40aよりも径が大きい第2の歯車40cとから成る。この場合、第1の歯車40aは、ウォームシャフト19aの先端に固定された大径の歯車55と噛み合っている。また、第2の歯車40cは、ピニオンギア13と噛み合っている。
【0021】
また、第1の歯車40aおよび第2の歯車40cは歯車55とともに減速機構を構成しており、各歯車40a,40c,55の外径比および歯数比は、所定の減速比が得られるように設定されている。
【0022】
このような構成では、ハンドルの回転操作に伴ってピニオンギア13が回転すると、第1の歯車40aと回転軸40bと第2の歯車40cとが一体で回転し、第1の歯車40aと歯車55を介して噛み合うウォームシャフト19aが回転する。また、この場合、ピニオンギア13の回転は、各歯車40a,40c,55から成る減速機構を介して減速されつつ、ウォームシャフト19aに伝達される。
【0023】
なお、空間S1の先端側開口は蓋体50によって閉塞されている。また、スライダ19bには屈曲部49が形成されている。この屈曲部49は、スライダ19bの前後動の前端位置で連動歯車機構40とスライダ19bとの干渉を回避する逃げ空間S2をスプール軸9とスライダ19bとの間に形成するとともに、スライダ19bの前後動の後端位置でスライダ19bの取付け部をリール本体1aの後端に位置するスプール軸9の基端に取り付けることを可能にし、スライダ19bと連動歯車機構40との干渉を回避しつつスプール軸9(スプール10)の前後動のストロークを長く確保することに寄与する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用スピニングリール1は、ピニオンギア13とウォームシャフト19aとの間の距離を従来よりも大きく確保し、リール本体1aに支持され且つピニオンギア13とウォームシャフト19aとに噛み合う連動歯車機構40を、ピニオンギア13とウォームシャフト19aとの間に形成された空間S1内に配置している。
【0025】
このように、ピニオンギア13とウォームシャフト19aとの間の距離を従来よりも大きく確保して、連動歯車機構40を配置可能な空間S1をリール本体1aの径方向で確保すると、ピニオンギア13の回転をウォームシャフト19aに伝達する歯車40a,40c,55を、ピニオンギア13やウォームシャフト19aと同軸に配置する必要がなくなるため、スプール軸9(スプール10)の前後動の大きな減速(所望の減速比)を得ることができるとともに、逆転防止機構を避けたピニオンギア13の基端側の領域で歯車40a,40c,55をリール本体1aの径方向に配置することができるため、リール本体1aの軸方向の大型化を防止することができる。また、大きな減速比が得られることから、スプール10に釣糸を密に巻回することが可能となり(したがって、釣糸の巻取り量を増加させることができる)、スプール10への釣糸巻回時の食い込みによる釣糸放出抵抗を所望のレベルまで下げることができる(釣糸の放出飛距離が向上する)。これは、特に遠投用のスピニングリールにおいて有益である。
【0026】
また、このように、歯車40a,40c,55をリール本体1aの径方向に配置することができれば、このような歯車の装着のために従来必要であった軸方向の空間分をスプール軸9の更なるストロークに当てることができ、スプール10のロングストローク化が可能となる。
【0027】
また、逆転防止機構を避けたピニオンギア13の基端側の領域に歯車40a,40c,55を配置できれば、歯車40a,40c,55の装着位置が逆転防止機構によって制約を受けたり、逆転防止機構の装着位置が歯車40a,40c,55によって制約を受けることもなくなる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の魚釣用スピニングリールによれば、連動歯車機構がピニオンギアと螺軸との間に形成された空間内に位置されることにより、リール本体の軸方向の大型化を防止できるとともに、リール本体に回転可能に支持された回転軸の一端側に設けた歯車を、ピニオンギアに噛合させ、該回転軸の他端側に設けた歯車を前記螺軸の先端に設けた歯車に噛合させ、スライダに形成された屈曲部が、スライダの前後動の前端位置で連動歯車機構との干渉を回避する逃げ空間を形成することにより、スライダと連動歯車機構との干渉を回避しつつスプール軸の前後動のストロークを長く確保し、スペースおよび動力伝達上の制約を生じることなく、スプールの前後動の大きな減速を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの側断面図である。
【図2】図1の魚釣用スピニングリールの要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…魚釣用スピニングリール
1a…リール本体
2…ハンドル軸
3…ドライブギア
8…ロータ
9…スプール軸
10…スプール
13…ピニオンギア
19…オシレーティング機構(スプール往復動機構)
19a…ウォームシャフト(螺軸)
40…連動歯車機構
S1…空間
Claims (1)
- リール本体と、
リール本体に回転可能に支持されたロータと、
リール本体に回転可能に支持されたハンドル軸と一体で回転するドライブギアと、
ドライブギアと噛み合い且つドライブギアの回転力をロータに伝達するピニオンギアと、
ロータの回転によって釣糸が巻回されるスプールを支持し、前記ピニオンギア内を貫通するスプール軸と、
スプール軸と平行に延びる螺軸と、この螺軸の螺旋溝と噛み合い且つスプール軸に対して軸方向に移動不能に取り付けられたスライダとを有し、ピニオンギアとスプール軸とを連結してピニオンギアの回転をスプール軸の往復動に変換するスプール往復動機構と、
ピニオンギアの回転力を螺軸に伝達する連動歯車機構と、
を備え、
前記連動歯車機構は、ピニオンギアと螺軸との間に形成された空間内に位置されており、リール本体に回転可能に支持された回転軸の一端側に設けた歯車を、ピニオンギアに噛合させ、該回転軸の他端側に設けた歯車を前記螺軸の先端に設けた歯車に噛合させ、前記スライダは、該スライダの前後動の前端位置で前記連動歯車機構との干渉を回避する逃げ空間を形成する屈曲部が形成されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
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