JP2004350614A - 魚釣用リールの逆転防止装置 - Google Patents
魚釣用リールの逆転防止装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004350614A JP2004350614A JP2003154041A JP2003154041A JP2004350614A JP 2004350614 A JP2004350614 A JP 2004350614A JP 2003154041 A JP2003154041 A JP 2003154041A JP 2003154041 A JP2003154041 A JP 2003154041A JP 2004350614 A JP2004350614 A JP 2004350614A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- wedge
- rolling member
- urging
- reel
- shaped space
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗の軽減という要求特性をバランス良く満たすことを可能にする魚釣用リールの一方向クラッチを提供する。
【解決手段】本発明の逆転防止装置は、内輪とリール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面16が形成されて各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成される。各楔状空間内には、転がり部材20a,20bが配置され、各転がり部材20a,20bを楔領域16bへ付勢する付勢部材25a,25bが設けられている。そして、少なくともいずれか一つの楔状空間における付勢部材の付勢力を、他の楔楔空間内に配置された付勢部材の付勢力とは異なるように設定したことを特徴とする。
【選択図】 図4
【解決手段】本発明の逆転防止装置は、内輪とリール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面16が形成されて各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成される。各楔状空間内には、転がり部材20a,20bが配置され、各転がり部材20a,20bを楔領域16bへ付勢する付勢部材25a,25bが設けられている。そして、少なくともいずれか一つの楔状空間における付勢部材の付勢力を、他の楔楔空間内に配置された付勢部材の付勢力とは異なるように設定したことを特徴とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転部の一方向の回転を許容し、他方向の回転を阻止する魚釣用リールの逆転防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、魚釣用リールには、ハンドルの巻取り駆動により回転させる回転体の釣糸繰出し方向の回転(逆転)を阻止する逆転防止装置が組み込まれており、このような逆転防止装置として、逆転方向の遊度を小さくしてフッキング操作性やドラグの滑り出し特性を向上させる転がり式一方向クラッチ(以下、一方向クラッチとする)が知られている。
【0003】
通常、魚釣用リールに用いられている一方向クラッチは、逆転防止力を最優先して、トルク容量の大きい楔角度が大きめの一方向クラッチを用いることが一般的となっているが、回転体の逆転方向の回転速度が速い場合、楔作用面に対して転がり部材が滑り、確実な楔作用が得られずに逆転方向への空転が生じる不具合がある。
【0004】
そこで、このような不具合を解消するために、本出願人は、特許文献1に開示されているように、一方向クラッチ内に形成された複数の異なる楔角度の楔領域に転がり部材を噛み込ませる構成を提案している。
【0005】
このような構成によれば、楔角度が小さい部分では噛み込み性の向上が図れると共に、楔角度が大きい部分によってある程度の逆転トルク容量が確保されるため、レスポンスの良い逆転防止機能を維持しつつ逆転トルク容量が向上した逆転防止機能が得られるようになる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−119183号公報。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した構成において、更に逆転トルク容量を向上させるためには、軸方向に一方向クラッチを複数併設する等の手段が考えられるが、これは一方向クラッチ自体が大型化するため好ましくない。従って、周方向に配置する転がり部材の数を増やす等、楔作用する転がり部材の数を増やすことが考えられる。
【0008】
ところが、このように転がり部材の数を増やすと、転がり部材の接触面積が増えてしまい、釣糸巻取り回転時の正転トルクが増大して巻取りが重くなるといった問題が生じる。
すなわち、噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗を軽減する、という機能は、相反する要求特性となる場合があり、一つの機能を向上させようとすると別の機能が低下してしまったり、不必要に、一方向クラッチ自体が大型化するという問題も生じる。このため、魚釣用リールに用いられる一方向クラッチでは、上記した夫々の要求特性をある程度の水準で維持できるような構成が望まれている。
【0009】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗の軽減という要求特性をバランス良く満たすことを可能にする魚釣用リールの一方向クラッチを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明の魚釣用リールの逆転防止装置は、リール本体に回転可能に支持されたハンドルに連動回転する内輪と、リール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面が形成され、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成され、各楔状空間内に転がり部材が配置されると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えており、少なくともいずれか一つの楔状空間における前記付勢部材の付勢力を、他の楔楔空間内に配置された付勢部材の付勢力とは異なるように設定したことを特徴とする。
【0011】
上記した構成によれば、付勢力の強い付勢部材によって転がり部材の楔領域に対する噛み込み性が良好になるため逆転防止時におけるレスポンスが良くなると共に、付勢力の弱い付勢部材によって転がり部材の正転時における回転抵抗の軽減が図れるようになる。
【0012】
また、本発明の魚釣用リールの逆転防止装置は、リール本体に回転可能に支持されたハンドルに連動回転する内輪と、リール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面が形成され、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成され、各楔状空間内に転がり部材が配置されると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えており、前記楔状空間における楔角度を略同一にすると共に、少なくともいずれか一つの楔状空間における転がり部材の直径を、他の楔状空間内に配置された転がり部材の直径とは異なる直径にしたことを特徴とする。
【0013】
上記した構成によれば、転がり部材の径に関係なく楔領域への転がり部材の噛み込み性が一定になるため、噛み込み性の向上が図れると共に、径の大きい転がり部材によって逆転トルク容量の向上が図れるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は、本発明の一実施形態を示す図であり、図1は、魚釣用リールであるスピニングリールの内部構成を示す図、図2は、一方向クラッチ部分の拡大図、図3は、一方向クラッチ部分の断面図、図4(a),(b)は、夫々、一方向クラッチを正面から見た図、及びその側面図、そして、図5は、一方向クラッチの分解斜視図である。
【0015】
スピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚1aが一体形成されており、その前方には回転可能に支持されたロータ2と、ロータ2の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール3が配設されている。
【0016】
リール本体1内には、ハンドル軸5aが回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル5が取り付けられている。また、ハンドル軸5aには、巻取り駆動機構が係合しており、この巻取り駆動機構は、ハンドル軸5aに取り付けられ、内歯が形成された駆動ギヤ6と、この駆動ギヤ6に噛合すると共にハンドル軸5aと直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部が形成されたピニオン7とを備えている。
【0017】
ピニオン7は、軸受を介してリール本体内に回転可能に支持されており、その空洞部には、ハンドル軸5aと直交する方向に延出し、先端側に前記スプール3を装着したスプール軸3aが軸方向に移動可能に挿通されている。また、前記ピニオン7には、スプール3(スプール軸3a)を前後往復動させるための公知のスプール往復動装置8が係合している。
【0018】
前記ピニオン7はスプール側に向けて延出しており、その先端部において、前記ロータ2が取り付けられている。また、ピニオン7には、その中間部分に、以下に詳述する一方向クラッチ(逆転防止装置)10が取り付けられており、リール本体1の外部に取り付けられているレバー9を回動操作することで一方向クラッチを作動させ、ハンドル5の逆回転を防止するようになっている。
【0019】
上記した構成により、ハンドル5を巻取り操作することで、ロータ2が巻取り駆動機構を介して回転駆動され、かつスプール3がスプール往復動装置8を介して前後往復動されるので、釣糸は、ロータ2の腕部2aに設けられた釣糸案内部材2bを介してスプール3の巻回胴部3aに均等に巻回される。
【0020】
次に、上記した一方向クラッチ10の構成について詳細に説明する。
一方向クラッチ10は、ハンドル5の回転操作によって連動回転するピニオン7の外周に回り止め固定される内輪12と、リール本体1に対して回り止めされた外輪13とを備えており、これら内外輪12,13は、径方向内外に略同芯状に配置されている。なお、本実施形態における外輪13は、ユニットの前端側に配置される回り止めプレート15に形成された一対の腕部15aに嵌合しており、これら各腕部15aがリール本体1の前端円筒部1bに形成された凹部1cに嵌合することで、外輪13はリール本体に対して回り止めされた状態となっている。
【0021】
前記内外輪12,13の対向面のいずれか一方側(本実施形態では外輪側)には、周方向に所定間隔をおいてカム面16が複数形成されている。このカム面16は、他方の対向面との間で、後述する転がり部材が自由に回転できる領域16a(フリー回転領域)と、転がり部材の回転を規制する楔領域16bとで構成された楔状空間を形成している。なお、外輪のカム面16が形成されている部分は、径方向外方に膨出していることから、前記した回り止めプレート15を配設することなくこの膨出部分をリール本体の前端円筒部1bに嵌合させることで外輪を回り止めしても良い。
【0022】
前記内外輪12,13間には、上記したフリー回転領域16aと楔領域16bによって形成される楔状空間に位置する転がり部材20a,20bを保持した保持器22が配設されている。保持器22は、円筒状の本体23と本体の円筒壁部に所定間隔おいて形成された複数の窓部24とを備えており、この窓部24に前記転がり部材20a,20bが交互に配設されている。各窓部24には、そこに配置される転がり部材20a,20bに当て付くように位置する付勢部材25a,25bと、各付勢部材25a,25bの両側に位置する当付部材26が形成されており、転がり部材20a,20bを、常時、楔領域16b側に向けて付勢すると共に、移動規制している。
【0023】
本実施形態の構成では、上記した転がり部材は、径が同一で軸方向長さが異なるものを交互に配置しており(長いものを符号20aで、短いものを符号20bで示してある)、これに伴って窓部の大きさも異なるように形成されている。また、上記した付勢部材は、軸方向が長い転がり部材20aに当て付く付勢部材25aを付勢力が弱くなるように形成され、軸方向が短い転がり部材20bに当て付く付勢部材25bを付勢力が強くなるように形成されている。
【0024】
上記したように転がり部材20a,20bを保持する保持器22には、前端側においてリール脚に向けて突出する切換操作部27が一体形成されており、この切換操作部27は、前記外輪13の開口端面側に形成された切欠部28の両側面に当て付くことで保持器22の回動範囲を規制している。また、切換操作部27には、上記したリール本体1の外部に取り付けられているレバー9と連結された切換レバー9aが係合されており、レバー9を回動操作することで、保持器22の回動位置をON位置/OFF位置のいずれかに切換えられるように構成されている。
【0025】
すなわち、レバー9は、ON位置にすると、各転がり部材が楔領域16bに移動するように保持器22を回動させ(図4(a)の反時計回り方向)、OFF位置にすると、各転がり部材がフリー回転領域16aに移動するように保持器22を回動させる(図4(a)の時計回り方向)。
【0026】
以上のように構成された一方向クラッチ10を組み込んだスピニングリールの作用について説明する。
【0027】
レバー9を操作して一方向クラッチをOFF位置に設定すると、保持器22は各転がり部材20a,20bがフリー回転領域16aに位置するように回動される。このため、ピニオン7は、いずれの方向にもフリー回転可能状態であり、ハンドル5は、正転/逆転可能な状態となる。
【0028】
また、レバー9を操作して一方向クラッチをON位置に設定すると、図4(a)に示すように、保持器22は各転がり部材20a,20bが楔領域16bに位置するように回動される。この状態でハンドルを巻取り操作すると、ピニオン7に回り止め固定された内輪12は、図4(a)において時計回り方向に回転駆動され、それに伴って各転がり部材20a,20bは、各付勢部材25a,25bの付勢力に抗してフリー回転領域に移動する。これにより、ハンドルは釣糸巻取り方向に関しては、フリー回転状態となる。
【0029】
一方、ハンドルを逆方向に回転しようとしたり、或いは釣糸の繰出しでロータが逆方向に回転しようとすると(ピニオンに回り止め固定された内輪は、図4において反時計回り方向に回転しようとする)、各転がり部材20a,20bは、反時計回り方向の移動、及び各付勢部材25a,25bの付勢力によって、楔領域16bに移動する。この場合、外輪13は、リール本体に対して回り止めされているため、逆回転が防止される(逆転防止状態)。すなわち、ハンドル5は、正転のみ可能で逆転防止状態となっている。
【0030】
上記した構成によれば、転がり部材を付勢する付勢部材に強弱を持たせているため、逆転時において、強い付勢部材25bによって、楔領域に対する転がり部材20bの噛み込み性が向上して、逆転防止時におけるレスポンスが向上する。そして、全ての付勢部材の付勢力を強く設定すると、正転時に移行する際の抵抗が増してしまうが、上記したように、弱い付勢部材25aを併設したことによって、正転時に移行する際の抵抗や正転時における摩擦抵抗が軽減されるため、結果として、噛み込み性の向上と正転時の抵抗軽減といった相反する要求特性を同時に向上させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、上記した付勢部材の強弱設定に加え、転がり部材の軸方向長さを、付勢部材の強弱に応じて変化させている。これは、転がり部材の軸方向長さを長く設定することによって、楔領域に対する接触面積が増えるため、結果として逆転トルク容量を向上するという要求特性を満足することが可能となる。
【0032】
この場合、上記した付勢部材の強弱との関係で、付勢力の弱い付勢部材25aと長い転がり部材20aを組み合わせ、付勢力の強い付勢部材25bと短い転がり部材20bを組み合わせたことで、逆転防止時における噛み込み性の向上を短い転がり部材20bによって達成すると共に、逆転トルク容量の向上を長い転がり部材20aによって達成することが可能となる。しかも、転がり接触面積が多い転がり部材20a側の付勢力が弱く設定されているため、正転時における回転抵抗を軽減することも可能となる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態を、図6〜図8を参照して説明する。これらの図において、図6は、魚釣用リールである両軸受型リールの内部構成を示す平面図、図7は、一方向クラッチ部分の拡大図、そして、図8は、一方向クラッチ部分の断面図である。
【0034】
両軸受型リールのリール本体31は、左右フレーム32a,32bに夫々装着された左右側板33a,33bを備えており、左右フレーム32a,32b(左右側板33a,33b)間には、釣糸が巻回されるスプール35aが取り付けられたスプール軸35が軸受を介して回転可能に支持されている。
【0035】
前記スプール35aは、右側板33bから突出するハンドル軸37の端部に取り付けられたハンドル38を回転操作することによって、巻取り駆動機構を介して回転駆動される。この場合、ハンドル軸37は、右フレーム32bと右側板33bとの間に軸受を介して回転自在に支持されていると共に、後述する一方向クラッチ50によって釣糸巻取方向にのみ回転可能に構成されている。
【0036】
前記巻取り駆動機構は、ハンドル軸37に対してドラグ部材を介在させて回転可能に取り付けられた駆動歯車39と、この駆動歯車39に噛合すると共に、軸受を介して右フレーム32bと右側板33bとの間に回転自在に支持されたピニオン40とを備えている。
【0037】
ピニオン40には、公知のクラッチ機構が係合しており、ピニオン40は、図示されていないクラッチ操作部材によって軸方向に移動され、駆動力伝達状態(クラッチON状態)、或いはスプール軸35からピニオン40が外れたスプールフリー回転状態(クラッチOFF状態)に切り換えられる。また、前記左右フレーム32a,32bの間には、公知のレベルワインド装置42が設けられており、ハンドル38を回転操作することによって、スプール35aには、左右往復動する釣糸案内部を介して釣糸が均等に巻回されるようになっている。
【0038】
上記した構成により、ハンドル38を巻取り操作することで、スプール35aが巻取り駆動機構を介して回転駆動され、かつレベルワインド装置42の釣糸案内部が左右往復動されるので、釣糸は、スプール35aに均等に巻回される。
【0039】
次に、上記した一方向クラッチ50の構成について詳細に説明する。
一方向クラッチ50は、ハンドル38の回転操作によって回転駆動されるハンドル軸37の外周に回り止め固定される内輪52と、リール本体31(右側板33b)に対して回り止めされた外輪53とを備えており、これら内外輪52,53は、径方向内外に略同芯状に配置されている。なお、本実施形態における外輪53は、外周面が断面非円形状に形成されており、右側板33bに形成された凹所に嵌合することで、外輪53はリール本体に対して回り止めされた状態となっている。
【0040】
前記内外輪52,53の対向面のいずれか一方側(本実施形態では外輪側)には、周方向に所定間隔をおいてカム面が複数形成されている。本実施形態のカム面は、交互に大きさの異なるカム面55,56が形成されており、大きいカム面55には大径の転がり部材60aが、小さいカム面56には小径の転がり部材60bが配置されるようになっている。
【0041】
各カム面55,56には、そこに配される転がり部材60a,60bが自由に回転できる領域55a,56a(フリー回転領域)と、転がり部材の回転を規制する楔領域55b,56b(楔状空間)が形成されている。なお、外輪に形成されるカム面の内、大きいカム面55が形成されている部分は、径方向外方に大きく膨出しており、この膨出部分が右側板33bに形成された凹所に嵌合して外輪の回り止め機能を果たしている。
【0042】
また、前記転がり部材60a,60bは、保持器62によってその位置が保持されると共に、保持器に形成された付勢部材65によって、楔領域55b,56b側に向けて常時付勢されている。
【0043】
そして、上記した各カム面55,56は、楔領域に噛み込まれる転がり部材に対して、楔角度が略同一となるように形成されている。この場合、楔角度は、転がり部材が楔領域に噛み込まれた際、内輪側と外輪側との接触点における接線同士が交差する角度によって規定される(転がり部材が潰れ等により周方向にある程度の長さで接触する場合、接触点は、その中心位置で定められる)。このような楔角度は、大きいカム面55及び小さいカム面56が全く同一(相似形状)に形成されていると、転がり部材の外径の相違、内外輪に対する曲面接触、転がり部材の潰れ等の要因で相違してしまい、大径の転がり部材部分では、楔角度が大きくなって噛み込み特性が低下してしまうが、上記したように、全てのカム面55,56を、予めそこに配設される径の異なる転がり部材に応じて、楔角度が略同一になるように設計しておくことで、噛み込み特性を一定に維持することが可能となる。
【0044】
従って、小径の転がり部材に加えて大径の転がり部材を用いることで、さらに逆転トルク容量の向上を図ろうとした場合、上記したように、楔角度が略均一となるように設計しておくことによって、楔領域に対する噛み込み性を低下させることなく(逆転防止時におけるレスポンスを低下させることなく)、逆転トルク容量の向上が図れるようになる。しかも、大径の転がり部材に対して、小径の転がり部材を配設することにより、正転時における抵抗を軽減することが可能となる。
【0045】
なお、この実施形態における上記した楔角度の略均一とは、各カム面の楔角度の誤差が全体で±1°以内に設定されていれば良い。
【0046】
図9及び図10は、本発明の第3実施形態を示す図であり、図9は、一方向クラッチ部分の断面図、図10は、図9のA−A線に沿った断面図である。
この実施形態では、上記した第1実施形態に用いられた一方向クラッチ10を両軸受型リールに装着できるように構成すると共に、転がり部材20を全て同一形状とし、かつ保持器22に配される付勢部材25a,25bの付勢力を強弱相違するように構成したものである(第1実施形態と同様な構成要素に関しては同一の参照符号が付されている)。
【0047】
このように、転がり部材20を付勢する付勢部材に強弱を持たせることで、逆転時において、強い付勢部材25bによって、楔領域に対する転がり部材20の噛み込み性が向上して、逆転防止時におけるレスポンスの向上が図れると共に、弱い付勢部材25aによって、正転時に移行する際の抵抗や正転時における摩擦抵抗が軽減されるため、結果として、噛み込み性の向上と正転時の抵抗軽減といった相反する要求特性を同時に向上させることが可能となる。
【0048】
以上のように、一方向クラッチにおける転がり部材を付勢する付勢部材の付勢力を、その配設場所や転がり部材の構成に応じて変化させたり、或いは、異なる径の転がり部材に対する楔角度を略均一に設定する構成については、重視される要求特性に応じて適宜変形することが可能である。例えば、上記した第2実施形態においても、転がり部材の径に応じて、その転がり部材を付勢する付勢部材の付勢力を変化させたり、或いは、更に転がり部材の軸方向長さを変える等、適宜変形することが可能である。また、逆に、第1の実施形態において、軸方向長さの短い転がり部材に対する付勢力を小さく設定し、軸方向長さの長い転がり部材に対する付勢力を大きく設定する等、その組み合わせについても、適宜変形することが可能である。また、上記した実施形態では、バランスを考慮して付勢力の大きい付勢部材と小さい付勢部材を交互に配置したり、径の異なる転がり部材を交互に配置したが、本発明は、このような構成に限定されることはなく、少なくとも一部に付勢力が異なる付勢部材が配設されたり、或いは少なくとも一部に径の異なる転がり部材が配設されるような構成であっても良い。
【0049】
さらに、本発明における一方向クラッチは、ユニットとして外輪、内輪、転がり部材、転がり部材を保持する保持器、及び転がり部材を楔領域に向けて付勢する付勢部材を備えた構成であれば良く、各部材の配置態様、形状、構成、及び魚釣用リールに対する装着方法については、適宜変形することが可能である。例えば、特開平8−112049号に開示されているように、付勢部材を保持器に設けないような構成であっても良い。
【0050】
また、本発明は、魚釣用リールの逆転防止装置に関するものではあるが、逆転防止装置である一方向クラッチの用途として、魚釣用リール以外のものに適用しても良い。この場合、一方向クラッチは、ユニットとして、図4及び図5に示すように構成することが可能であり、また、保持器を回動させるような切換操作部27を削除しても良い。すなわち、一方向クラッチ単体の構成として、内輪と、径方向外側に配置された外輪とを備え、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面を形成し、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成されて各楔状空間内に転がり部材を配置すると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えた構成であれば良い。
【0051】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗の軽減という要求特性をバランス良く満たすことを可能にする魚釣用リールの一方向クラッチが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す図であり、魚釣用スピニングリールの内部構成を示す図。
【図2】一方向クラッチ部分の拡大図。
【図3】一方向クラッチ部分の断面図。
【図4】(a)は、一方向クラッチを正面から見た図、(b)は、その側面図。
【図5】一方向クラッチの分解斜視図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図であり、両軸受型リールの内部構成を示す平面図。
【図7】一方向クラッチ部分の拡大図。
【図8】一方向クラッチ部分の断面図。
【図9】本発明の第3実施形態を示す図であり、一方向クラッチ部分の断面図。
【図10】図9のA−A線に沿った断面図。
【符号の説明】
1 リール本体
5 ハンドル
10,50 一方向クラッチ(逆転防止装置)
12,52 内輪
13,53 外輪
16,55,56 カム面
16a,55a,55b フリー回転領域
16b,55b,56b 楔領域
20,20a,20b,60a,60b 転がり部材
25a,25b,65 付勢部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転部の一方向の回転を許容し、他方向の回転を阻止する魚釣用リールの逆転防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、魚釣用リールには、ハンドルの巻取り駆動により回転させる回転体の釣糸繰出し方向の回転(逆転)を阻止する逆転防止装置が組み込まれており、このような逆転防止装置として、逆転方向の遊度を小さくしてフッキング操作性やドラグの滑り出し特性を向上させる転がり式一方向クラッチ(以下、一方向クラッチとする)が知られている。
【0003】
通常、魚釣用リールに用いられている一方向クラッチは、逆転防止力を最優先して、トルク容量の大きい楔角度が大きめの一方向クラッチを用いることが一般的となっているが、回転体の逆転方向の回転速度が速い場合、楔作用面に対して転がり部材が滑り、確実な楔作用が得られずに逆転方向への空転が生じる不具合がある。
【0004】
そこで、このような不具合を解消するために、本出願人は、特許文献1に開示されているように、一方向クラッチ内に形成された複数の異なる楔角度の楔領域に転がり部材を噛み込ませる構成を提案している。
【0005】
このような構成によれば、楔角度が小さい部分では噛み込み性の向上が図れると共に、楔角度が大きい部分によってある程度の逆転トルク容量が確保されるため、レスポンスの良い逆転防止機能を維持しつつ逆転トルク容量が向上した逆転防止機能が得られるようになる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−119183号公報。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した構成において、更に逆転トルク容量を向上させるためには、軸方向に一方向クラッチを複数併設する等の手段が考えられるが、これは一方向クラッチ自体が大型化するため好ましくない。従って、周方向に配置する転がり部材の数を増やす等、楔作用する転がり部材の数を増やすことが考えられる。
【0008】
ところが、このように転がり部材の数を増やすと、転がり部材の接触面積が増えてしまい、釣糸巻取り回転時の正転トルクが増大して巻取りが重くなるといった問題が生じる。
すなわち、噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗を軽減する、という機能は、相反する要求特性となる場合があり、一つの機能を向上させようとすると別の機能が低下してしまったり、不必要に、一方向クラッチ自体が大型化するという問題も生じる。このため、魚釣用リールに用いられる一方向クラッチでは、上記した夫々の要求特性をある程度の水準で維持できるような構成が望まれている。
【0009】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗の軽減という要求特性をバランス良く満たすことを可能にする魚釣用リールの一方向クラッチを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明の魚釣用リールの逆転防止装置は、リール本体に回転可能に支持されたハンドルに連動回転する内輪と、リール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面が形成され、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成され、各楔状空間内に転がり部材が配置されると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えており、少なくともいずれか一つの楔状空間における前記付勢部材の付勢力を、他の楔楔空間内に配置された付勢部材の付勢力とは異なるように設定したことを特徴とする。
【0011】
上記した構成によれば、付勢力の強い付勢部材によって転がり部材の楔領域に対する噛み込み性が良好になるため逆転防止時におけるレスポンスが良くなると共に、付勢力の弱い付勢部材によって転がり部材の正転時における回転抵抗の軽減が図れるようになる。
【0012】
また、本発明の魚釣用リールの逆転防止装置は、リール本体に回転可能に支持されたハンドルに連動回転する内輪と、リール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面が形成され、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成され、各楔状空間内に転がり部材が配置されると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えており、前記楔状空間における楔角度を略同一にすると共に、少なくともいずれか一つの楔状空間における転がり部材の直径を、他の楔状空間内に配置された転がり部材の直径とは異なる直径にしたことを特徴とする。
【0013】
上記した構成によれば、転がり部材の径に関係なく楔領域への転がり部材の噛み込み性が一定になるため、噛み込み性の向上が図れると共に、径の大きい転がり部材によって逆転トルク容量の向上が図れるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は、本発明の一実施形態を示す図であり、図1は、魚釣用リールであるスピニングリールの内部構成を示す図、図2は、一方向クラッチ部分の拡大図、図3は、一方向クラッチ部分の断面図、図4(a),(b)は、夫々、一方向クラッチを正面から見た図、及びその側面図、そして、図5は、一方向クラッチの分解斜視図である。
【0015】
スピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚1aが一体形成されており、その前方には回転可能に支持されたロータ2と、ロータ2の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール3が配設されている。
【0016】
リール本体1内には、ハンドル軸5aが回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル5が取り付けられている。また、ハンドル軸5aには、巻取り駆動機構が係合しており、この巻取り駆動機構は、ハンドル軸5aに取り付けられ、内歯が形成された駆動ギヤ6と、この駆動ギヤ6に噛合すると共にハンドル軸5aと直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部が形成されたピニオン7とを備えている。
【0017】
ピニオン7は、軸受を介してリール本体内に回転可能に支持されており、その空洞部には、ハンドル軸5aと直交する方向に延出し、先端側に前記スプール3を装着したスプール軸3aが軸方向に移動可能に挿通されている。また、前記ピニオン7には、スプール3(スプール軸3a)を前後往復動させるための公知のスプール往復動装置8が係合している。
【0018】
前記ピニオン7はスプール側に向けて延出しており、その先端部において、前記ロータ2が取り付けられている。また、ピニオン7には、その中間部分に、以下に詳述する一方向クラッチ(逆転防止装置)10が取り付けられており、リール本体1の外部に取り付けられているレバー9を回動操作することで一方向クラッチを作動させ、ハンドル5の逆回転を防止するようになっている。
【0019】
上記した構成により、ハンドル5を巻取り操作することで、ロータ2が巻取り駆動機構を介して回転駆動され、かつスプール3がスプール往復動装置8を介して前後往復動されるので、釣糸は、ロータ2の腕部2aに設けられた釣糸案内部材2bを介してスプール3の巻回胴部3aに均等に巻回される。
【0020】
次に、上記した一方向クラッチ10の構成について詳細に説明する。
一方向クラッチ10は、ハンドル5の回転操作によって連動回転するピニオン7の外周に回り止め固定される内輪12と、リール本体1に対して回り止めされた外輪13とを備えており、これら内外輪12,13は、径方向内外に略同芯状に配置されている。なお、本実施形態における外輪13は、ユニットの前端側に配置される回り止めプレート15に形成された一対の腕部15aに嵌合しており、これら各腕部15aがリール本体1の前端円筒部1bに形成された凹部1cに嵌合することで、外輪13はリール本体に対して回り止めされた状態となっている。
【0021】
前記内外輪12,13の対向面のいずれか一方側(本実施形態では外輪側)には、周方向に所定間隔をおいてカム面16が複数形成されている。このカム面16は、他方の対向面との間で、後述する転がり部材が自由に回転できる領域16a(フリー回転領域)と、転がり部材の回転を規制する楔領域16bとで構成された楔状空間を形成している。なお、外輪のカム面16が形成されている部分は、径方向外方に膨出していることから、前記した回り止めプレート15を配設することなくこの膨出部分をリール本体の前端円筒部1bに嵌合させることで外輪を回り止めしても良い。
【0022】
前記内外輪12,13間には、上記したフリー回転領域16aと楔領域16bによって形成される楔状空間に位置する転がり部材20a,20bを保持した保持器22が配設されている。保持器22は、円筒状の本体23と本体の円筒壁部に所定間隔おいて形成された複数の窓部24とを備えており、この窓部24に前記転がり部材20a,20bが交互に配設されている。各窓部24には、そこに配置される転がり部材20a,20bに当て付くように位置する付勢部材25a,25bと、各付勢部材25a,25bの両側に位置する当付部材26が形成されており、転がり部材20a,20bを、常時、楔領域16b側に向けて付勢すると共に、移動規制している。
【0023】
本実施形態の構成では、上記した転がり部材は、径が同一で軸方向長さが異なるものを交互に配置しており(長いものを符号20aで、短いものを符号20bで示してある)、これに伴って窓部の大きさも異なるように形成されている。また、上記した付勢部材は、軸方向が長い転がり部材20aに当て付く付勢部材25aを付勢力が弱くなるように形成され、軸方向が短い転がり部材20bに当て付く付勢部材25bを付勢力が強くなるように形成されている。
【0024】
上記したように転がり部材20a,20bを保持する保持器22には、前端側においてリール脚に向けて突出する切換操作部27が一体形成されており、この切換操作部27は、前記外輪13の開口端面側に形成された切欠部28の両側面に当て付くことで保持器22の回動範囲を規制している。また、切換操作部27には、上記したリール本体1の外部に取り付けられているレバー9と連結された切換レバー9aが係合されており、レバー9を回動操作することで、保持器22の回動位置をON位置/OFF位置のいずれかに切換えられるように構成されている。
【0025】
すなわち、レバー9は、ON位置にすると、各転がり部材が楔領域16bに移動するように保持器22を回動させ(図4(a)の反時計回り方向)、OFF位置にすると、各転がり部材がフリー回転領域16aに移動するように保持器22を回動させる(図4(a)の時計回り方向)。
【0026】
以上のように構成された一方向クラッチ10を組み込んだスピニングリールの作用について説明する。
【0027】
レバー9を操作して一方向クラッチをOFF位置に設定すると、保持器22は各転がり部材20a,20bがフリー回転領域16aに位置するように回動される。このため、ピニオン7は、いずれの方向にもフリー回転可能状態であり、ハンドル5は、正転/逆転可能な状態となる。
【0028】
また、レバー9を操作して一方向クラッチをON位置に設定すると、図4(a)に示すように、保持器22は各転がり部材20a,20bが楔領域16bに位置するように回動される。この状態でハンドルを巻取り操作すると、ピニオン7に回り止め固定された内輪12は、図4(a)において時計回り方向に回転駆動され、それに伴って各転がり部材20a,20bは、各付勢部材25a,25bの付勢力に抗してフリー回転領域に移動する。これにより、ハンドルは釣糸巻取り方向に関しては、フリー回転状態となる。
【0029】
一方、ハンドルを逆方向に回転しようとしたり、或いは釣糸の繰出しでロータが逆方向に回転しようとすると(ピニオンに回り止め固定された内輪は、図4において反時計回り方向に回転しようとする)、各転がり部材20a,20bは、反時計回り方向の移動、及び各付勢部材25a,25bの付勢力によって、楔領域16bに移動する。この場合、外輪13は、リール本体に対して回り止めされているため、逆回転が防止される(逆転防止状態)。すなわち、ハンドル5は、正転のみ可能で逆転防止状態となっている。
【0030】
上記した構成によれば、転がり部材を付勢する付勢部材に強弱を持たせているため、逆転時において、強い付勢部材25bによって、楔領域に対する転がり部材20bの噛み込み性が向上して、逆転防止時におけるレスポンスが向上する。そして、全ての付勢部材の付勢力を強く設定すると、正転時に移行する際の抵抗が増してしまうが、上記したように、弱い付勢部材25aを併設したことによって、正転時に移行する際の抵抗や正転時における摩擦抵抗が軽減されるため、結果として、噛み込み性の向上と正転時の抵抗軽減といった相反する要求特性を同時に向上させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、上記した付勢部材の強弱設定に加え、転がり部材の軸方向長さを、付勢部材の強弱に応じて変化させている。これは、転がり部材の軸方向長さを長く設定することによって、楔領域に対する接触面積が増えるため、結果として逆転トルク容量を向上するという要求特性を満足することが可能となる。
【0032】
この場合、上記した付勢部材の強弱との関係で、付勢力の弱い付勢部材25aと長い転がり部材20aを組み合わせ、付勢力の強い付勢部材25bと短い転がり部材20bを組み合わせたことで、逆転防止時における噛み込み性の向上を短い転がり部材20bによって達成すると共に、逆転トルク容量の向上を長い転がり部材20aによって達成することが可能となる。しかも、転がり接触面積が多い転がり部材20a側の付勢力が弱く設定されているため、正転時における回転抵抗を軽減することも可能となる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態を、図6〜図8を参照して説明する。これらの図において、図6は、魚釣用リールである両軸受型リールの内部構成を示す平面図、図7は、一方向クラッチ部分の拡大図、そして、図8は、一方向クラッチ部分の断面図である。
【0034】
両軸受型リールのリール本体31は、左右フレーム32a,32bに夫々装着された左右側板33a,33bを備えており、左右フレーム32a,32b(左右側板33a,33b)間には、釣糸が巻回されるスプール35aが取り付けられたスプール軸35が軸受を介して回転可能に支持されている。
【0035】
前記スプール35aは、右側板33bから突出するハンドル軸37の端部に取り付けられたハンドル38を回転操作することによって、巻取り駆動機構を介して回転駆動される。この場合、ハンドル軸37は、右フレーム32bと右側板33bとの間に軸受を介して回転自在に支持されていると共に、後述する一方向クラッチ50によって釣糸巻取方向にのみ回転可能に構成されている。
【0036】
前記巻取り駆動機構は、ハンドル軸37に対してドラグ部材を介在させて回転可能に取り付けられた駆動歯車39と、この駆動歯車39に噛合すると共に、軸受を介して右フレーム32bと右側板33bとの間に回転自在に支持されたピニオン40とを備えている。
【0037】
ピニオン40には、公知のクラッチ機構が係合しており、ピニオン40は、図示されていないクラッチ操作部材によって軸方向に移動され、駆動力伝達状態(クラッチON状態)、或いはスプール軸35からピニオン40が外れたスプールフリー回転状態(クラッチOFF状態)に切り換えられる。また、前記左右フレーム32a,32bの間には、公知のレベルワインド装置42が設けられており、ハンドル38を回転操作することによって、スプール35aには、左右往復動する釣糸案内部を介して釣糸が均等に巻回されるようになっている。
【0038】
上記した構成により、ハンドル38を巻取り操作することで、スプール35aが巻取り駆動機構を介して回転駆動され、かつレベルワインド装置42の釣糸案内部が左右往復動されるので、釣糸は、スプール35aに均等に巻回される。
【0039】
次に、上記した一方向クラッチ50の構成について詳細に説明する。
一方向クラッチ50は、ハンドル38の回転操作によって回転駆動されるハンドル軸37の外周に回り止め固定される内輪52と、リール本体31(右側板33b)に対して回り止めされた外輪53とを備えており、これら内外輪52,53は、径方向内外に略同芯状に配置されている。なお、本実施形態における外輪53は、外周面が断面非円形状に形成されており、右側板33bに形成された凹所に嵌合することで、外輪53はリール本体に対して回り止めされた状態となっている。
【0040】
前記内外輪52,53の対向面のいずれか一方側(本実施形態では外輪側)には、周方向に所定間隔をおいてカム面が複数形成されている。本実施形態のカム面は、交互に大きさの異なるカム面55,56が形成されており、大きいカム面55には大径の転がり部材60aが、小さいカム面56には小径の転がり部材60bが配置されるようになっている。
【0041】
各カム面55,56には、そこに配される転がり部材60a,60bが自由に回転できる領域55a,56a(フリー回転領域)と、転がり部材の回転を規制する楔領域55b,56b(楔状空間)が形成されている。なお、外輪に形成されるカム面の内、大きいカム面55が形成されている部分は、径方向外方に大きく膨出しており、この膨出部分が右側板33bに形成された凹所に嵌合して外輪の回り止め機能を果たしている。
【0042】
また、前記転がり部材60a,60bは、保持器62によってその位置が保持されると共に、保持器に形成された付勢部材65によって、楔領域55b,56b側に向けて常時付勢されている。
【0043】
そして、上記した各カム面55,56は、楔領域に噛み込まれる転がり部材に対して、楔角度が略同一となるように形成されている。この場合、楔角度は、転がり部材が楔領域に噛み込まれた際、内輪側と外輪側との接触点における接線同士が交差する角度によって規定される(転がり部材が潰れ等により周方向にある程度の長さで接触する場合、接触点は、その中心位置で定められる)。このような楔角度は、大きいカム面55及び小さいカム面56が全く同一(相似形状)に形成されていると、転がり部材の外径の相違、内外輪に対する曲面接触、転がり部材の潰れ等の要因で相違してしまい、大径の転がり部材部分では、楔角度が大きくなって噛み込み特性が低下してしまうが、上記したように、全てのカム面55,56を、予めそこに配設される径の異なる転がり部材に応じて、楔角度が略同一になるように設計しておくことで、噛み込み特性を一定に維持することが可能となる。
【0044】
従って、小径の転がり部材に加えて大径の転がり部材を用いることで、さらに逆転トルク容量の向上を図ろうとした場合、上記したように、楔角度が略均一となるように設計しておくことによって、楔領域に対する噛み込み性を低下させることなく(逆転防止時におけるレスポンスを低下させることなく)、逆転トルク容量の向上が図れるようになる。しかも、大径の転がり部材に対して、小径の転がり部材を配設することにより、正転時における抵抗を軽減することが可能となる。
【0045】
なお、この実施形態における上記した楔角度の略均一とは、各カム面の楔角度の誤差が全体で±1°以内に設定されていれば良い。
【0046】
図9及び図10は、本発明の第3実施形態を示す図であり、図9は、一方向クラッチ部分の断面図、図10は、図9のA−A線に沿った断面図である。
この実施形態では、上記した第1実施形態に用いられた一方向クラッチ10を両軸受型リールに装着できるように構成すると共に、転がり部材20を全て同一形状とし、かつ保持器22に配される付勢部材25a,25bの付勢力を強弱相違するように構成したものである(第1実施形態と同様な構成要素に関しては同一の参照符号が付されている)。
【0047】
このように、転がり部材20を付勢する付勢部材に強弱を持たせることで、逆転時において、強い付勢部材25bによって、楔領域に対する転がり部材20の噛み込み性が向上して、逆転防止時におけるレスポンスの向上が図れると共に、弱い付勢部材25aによって、正転時に移行する際の抵抗や正転時における摩擦抵抗が軽減されるため、結果として、噛み込み性の向上と正転時の抵抗軽減といった相反する要求特性を同時に向上させることが可能となる。
【0048】
以上のように、一方向クラッチにおける転がり部材を付勢する付勢部材の付勢力を、その配設場所や転がり部材の構成に応じて変化させたり、或いは、異なる径の転がり部材に対する楔角度を略均一に設定する構成については、重視される要求特性に応じて適宜変形することが可能である。例えば、上記した第2実施形態においても、転がり部材の径に応じて、その転がり部材を付勢する付勢部材の付勢力を変化させたり、或いは、更に転がり部材の軸方向長さを変える等、適宜変形することが可能である。また、逆に、第1の実施形態において、軸方向長さの短い転がり部材に対する付勢力を小さく設定し、軸方向長さの長い転がり部材に対する付勢力を大きく設定する等、その組み合わせについても、適宜変形することが可能である。また、上記した実施形態では、バランスを考慮して付勢力の大きい付勢部材と小さい付勢部材を交互に配置したり、径の異なる転がり部材を交互に配置したが、本発明は、このような構成に限定されることはなく、少なくとも一部に付勢力が異なる付勢部材が配設されたり、或いは少なくとも一部に径の異なる転がり部材が配設されるような構成であっても良い。
【0049】
さらに、本発明における一方向クラッチは、ユニットとして外輪、内輪、転がり部材、転がり部材を保持する保持器、及び転がり部材を楔領域に向けて付勢する付勢部材を備えた構成であれば良く、各部材の配置態様、形状、構成、及び魚釣用リールに対する装着方法については、適宜変形することが可能である。例えば、特開平8−112049号に開示されているように、付勢部材を保持器に設けないような構成であっても良い。
【0050】
また、本発明は、魚釣用リールの逆転防止装置に関するものではあるが、逆転防止装置である一方向クラッチの用途として、魚釣用リール以外のものに適用しても良い。この場合、一方向クラッチは、ユニットとして、図4及び図5に示すように構成することが可能であり、また、保持器を回動させるような切換操作部27を削除しても良い。すなわち、一方向クラッチ単体の構成として、内輪と、径方向外側に配置された外輪とを備え、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面を形成し、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成されて各楔状空間内に転がり部材を配置すると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えた構成であれば良い。
【0051】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、噛み込み性の向上、逆転トルク容量の向上、及び正転時における抵抗の軽減という要求特性をバランス良く満たすことを可能にする魚釣用リールの一方向クラッチが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す図であり、魚釣用スピニングリールの内部構成を示す図。
【図2】一方向クラッチ部分の拡大図。
【図3】一方向クラッチ部分の断面図。
【図4】(a)は、一方向クラッチを正面から見た図、(b)は、その側面図。
【図5】一方向クラッチの分解斜視図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図であり、両軸受型リールの内部構成を示す平面図。
【図7】一方向クラッチ部分の拡大図。
【図8】一方向クラッチ部分の断面図。
【図9】本発明の第3実施形態を示す図であり、一方向クラッチ部分の断面図。
【図10】図9のA−A線に沿った断面図。
【符号の説明】
1 リール本体
5 ハンドル
10,50 一方向クラッチ(逆転防止装置)
12,52 内輪
13,53 外輪
16,55,56 カム面
16a,55a,55b フリー回転領域
16b,55b,56b 楔領域
20,20a,20b,60a,60b 転がり部材
25a,25b,65 付勢部材
Claims (2)
- リール本体に回転可能に支持されたハンドルに連動回転する内輪と、リール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面が形成され、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成され、各楔状空間内に転がり部材が配置されると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えた魚釣用リールの逆転防止装置において、
少なくともいずれか一つの楔状空間における前記付勢部材の付勢力を、他の楔楔空間内に配置された付勢部材の付勢力とは異なるように設定したことを特徴とする魚釣用リールの逆転防止装置。 - リール本体に回転可能に支持されたハンドルに連動回転する内輪と、リール本体に回り止めされた外輪とが径方向内外に配置され、前記両輪の対向面のいずれか一方の周方向複数箇所にカム面が形成され、各カム面と他方の対向面との間に楔状空間が形成され、各楔状空間内に転がり部材が配置されると共に、各転がり部材を楔領域へ付勢する付勢部材を備えた魚釣用リールの逆転防止装置において、
前記楔状空間における楔角度を略同一にすると共に、少なくともいずれか一つの楔状空間における転がり部材の直径を、他の楔状空間内に配置された転がり部材の直径とは異なる直径にしたことを特徴とする魚釣用リールの逆転防止装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003154041A JP2004350614A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | 魚釣用リールの逆転防止装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003154041A JP2004350614A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | 魚釣用リールの逆転防止装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004350614A true JP2004350614A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34048807
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003154041A Pending JP2004350614A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | 魚釣用リールの逆転防止装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004350614A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102293186A (zh) * | 2010-06-23 | 2011-12-28 | 株式会社岛野 | 钓鱼用渔线轮的单向离合器 |
JP2013139886A (ja) * | 2008-08-26 | 2013-07-18 | Nsk Warner Kk | ワンウェイクラッチ |
EP3262933A1 (en) | 2016-06-30 | 2018-01-03 | Globeride, Inc. | Fishing reel |
-
2003
- 2003-05-30 JP JP2003154041A patent/JP2004350614A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013139886A (ja) * | 2008-08-26 | 2013-07-18 | Nsk Warner Kk | ワンウェイクラッチ |
CN102293186A (zh) * | 2010-06-23 | 2011-12-28 | 株式会社岛野 | 钓鱼用渔线轮的单向离合器 |
EP2399455A3 (en) * | 2010-06-23 | 2012-12-05 | Shimano Inc. | One-way clutch for fishing reel |
US8746603B2 (en) | 2010-06-23 | 2014-06-10 | Shimano Inc. | One-way clutch for fishing reel |
CN102293186B (zh) * | 2010-06-23 | 2015-05-13 | 株式会社岛野 | 钓鱼用渔线轮的单向离合器 |
TWI566694B (zh) * | 2010-06-23 | 2017-01-21 | 島野股份有限公司 | 釣魚用捲線器之單向離合器 |
EP3262933A1 (en) | 2016-06-30 | 2018-01-03 | Globeride, Inc. | Fishing reel |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1525794B1 (en) | Spinning-reel reciprocating device | |
US7191969B2 (en) | Fishing reel | |
TWI465193B (zh) | 雙軸承捲線器的捲筒軸支撐構造 | |
TW200925453A (en) | Roller clutch | |
US5221057A (en) | Spinning reel with one-way clutch mechanism | |
US5494232A (en) | Reversal preventive device | |
JP2004350614A (ja) | 魚釣用リールの逆転防止装置 | |
TWI300332B (en) | Rotor for a spinning reel | |
JP2010104322A (ja) | 魚釣用リール | |
JPH10238561A (ja) | ローラクラッチ | |
JPH0611469U (ja) | 魚釣用スピニングリ−ル | |
JP2000139287A (ja) | 魚釣用リ−ル | |
JP4047534B2 (ja) | 魚釣用スピニングリール | |
JP3438949B2 (ja) | スピニングリールの逆転防止装置 | |
US6224006B1 (en) | Spinning reel having tapered spool and compact reel body | |
JP2006254762A (ja) | 魚釣用リール | |
JP2012200151A (ja) | 魚釣用スピニングリール | |
TWI835584B (zh) | 釣魚用紡車式捲線器 | |
JP5894545B2 (ja) | 魚釣用スピニングリール | |
JP3643276B2 (ja) | 魚釣用スピニングリール | |
JP2994151B2 (ja) | 逆転防止装置 | |
US20210112798A1 (en) | Baitcaster with internal gear set | |
JP4023802B2 (ja) | 魚釣用リール | |
JP2005192491A (ja) | 魚釣用リ−ル | |
JP3012344U (ja) | 魚釣用リールの逆転防止装置 |