JP4038765B2 - 貯蔵米飯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気加熱により、貯蔵米飯を短時間且つ容易に、通常炊飯と同じような炊き立てご飯とすることができる貯蔵米飯に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の傾向として、米の消費が落ち続け、それに加えて米の輸入圧力により、減反につぐ減反が繰り返され、田んぼが放置され荒廃している。いざ米を含めた食料品の輸入が種々の要因により減少した際、一旦荒廃した田んぼを活用しようとしても、元に復元するには放置した年数だけかかると言われているから、対応出来ないことになる。幸いにも、米に関しては、味の点で価格の安い輸入米に勝っているため、国内産米は高価格であっても飯米として太刀打ち出来ている。しかしながら、米の主食としての良さが見直され、食生活の変化による米の消費減退は頭打ちとなり、微増に転じているものの、国内産米の豊作が続き、国内産米同士の価格競争が起き価格下落につながり、更なる減反が予測されるところである。
【0003】
その一方で単身者は無論、外食産業や一般家庭まで米の炊飯時間を出来るだけ省きたいという機運が、無洗米の普及に代表されるように今までにない強さで起きている。この機運は、外食産業では価格競争の激化により人件費の圧縮を図りたいということから起き、一般家庭では専業主婦の減少から単身者と同じように炊飯自体からの開放により起きている。かって、電気釜の普及により米を失敗せずに、美味しく炊けるようになり、炊飯の苦労から開放されたが、今また電気釜によっても解消することの出来ない炊飯時間0(ゼロ)という命題が突き付けられている。
【0004】
上記命題に対して、すでに今までの炊飯時間を1/3程度に短縮でき、しかも長期にわたり貯蔵でき、上記電気釜による通常炊飯と同じような炊き立てご飯を得ることができる早炊き米が市場に提供され、高い成果を上げている。しかし、これは炊飯時間を短縮出来てもゼロではない。一方、主に単身者向けに電子レンジ等で電磁波加熱するだけで、直ぐに食べることのできる貯蔵飯や、電子レンジで解凍し、更に加熱して食べることのできる調理飯があり、パンやカップ麺感覚で食べることの出来るものが出回りつつある。これらは、炊飯時間の取れない人や調理に不慣れな人にとって、時間や調理技能が無くても利用でき重宝である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の貯蔵飯や調理飯は、パンやカップ麺感覚で食べることが出来て都合が良いが、電磁波加熱の際、これらから水分が飛び、米の表面が固くなりぱらぱら感のあるご飯になって、炊き立てのごはんの食感が得られず、逆にその水分が表面に戻ったりして、食感を著しく低下させている。したがって、上記した貯蔵飯や調理飯は、炊飯時間ゼロの命題をクリアーできても、あまり普及していない。また、この炊き立てのご飯の食感を得ることが出来ないこと以外に、これらの貯蔵飯や調理飯の中には、ほぐしがきかず包装状態の形状が解消できず、ご飯茶碗や皿などに自由に盛り付けることが出来ないものもあり、これは外食産業では絶対に受け入れることが出来ないし、一般家庭でも受け入れ辛い。更に、これらの貯蔵飯や調理飯は、最終ユーザー向けであって、業務用ではなく外食産業における人件費の圧縮を図りたいという目的になじまないものである。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、加熱するだけで、炊き立てのごはんの食感ばかりか、ほぐしが容易であり、且つ多種多様の用途に対応させ得て、しかも炊飯時間ゼロの命題もクリアーすることのできる貯蔵米飯を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成することが、米の総需要を頭打ちから増加に転じさせ、ひいては減反が少なくなり田んぼの荒廃を減らし、いざ米を含めた食料品の輸入が種々の要因により減少した際にも、対応出来ることになるため、鋭意研究を行った。その結果、水分値が42重量%の上記早炊き米であるアルファー化米の重量1に対して、重量0.25の割合で熱水を加えかき混ぜ10分ほど放置すると、水分値が53〜54重量%のアルファー化米となり、これを耐熱容器に入れ密封して120℃で20分ほど加圧加温調理することで、利用時に耐熱容器に入った状態で加熱するだけで、炊き立てのごはんの食感ばかりか、ほぐしが容易で、炊飯時間ゼロの命題をクリアー出来ることを見い出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、請求項1の発明にかかる貯蔵米飯は、所定の洗米及び吸水工程を済ませた米を水蒸気で蒸し且つ必要に応じて水蒸気で蒸す過程で加水して米澱粉の少なくとも一部をアルファー化して、更に必要に応じて乾燥しその蒸し米の水分を5重量%〜50重量%にしたあと、無菌状態で冷却してなる早炊き米である、アルファー化米に対して、50重量%〜65重量%の範囲の最適水分値となるように水を吸水させ、該吸水後の所定量のアルファー化米を容器にて密封し、85℃〜125℃の温度にて10分間〜30分間加圧加熱調理してなることを特徴とするものである。
【0009】
前記アルファー化米は、上記のとおり水分値が5重量%〜50重量%の範囲にあり、米澱粉の少なくとも1部がアルファー化しているものである。なお、米澱粉が全くアルファー化していない通常の米は、本発明のアルファー化米にならない。すなわち、通常の米とおいしいご飯と言われる水分値とする量の水とを容器に入れ密封して、加圧加温調理してもその過程で、本発明の貯蔵米飯とすることが出来ないことは、実験により実証されている。
【0010】
最適水分値は、米の種類や調理飯の場合にはその種類により異なり、更に人の好みによっても変わるから一概に決めることは出来ない。しかし、この最適水分値は、流動食でなければ50重量%〜65重量%の範囲に入るものと思われる。
【0011】
上記した定義のアルファー化米に、上記最適水分値となるように水を吸水させる方法には、特に限定がない。但し、このアルファー化米は、常温の水ではほとんど吸水しないので、少なくとも50℃以上の湯である必要があり、100℃に近い方が吸水時間を短縮できる。したがって、この水は50℃〜100℃、より好ましくは90℃〜98℃である。なお、この水は後に詳述するように調味液や調味液+具材であっても良く、水、すなわちH2Oとして、アルファー化米の水分値5重量%〜50重量%の範囲のものを、美味しいご飯の水分値と言われる53重量%〜65重量%にするのに必要な量があれば、良いのである。
【0012】
最適水分値としたアルファー化米は、容器内に入れ密封するが、この容器は、第一義的に85℃〜125℃の温度にて10分間〜30分間の加圧加温調理に耐えうるものでなければならない。第二義的にガスバリアー性を十分有するものでなかればならない。容器は上記した第一義的、第二義的の条件沿うものであれば袋状のものでも、トレー状のものでの良い。そして、この85℃〜125℃、より好ましくは100℃〜120℃の温度にて加圧加温調理時に、アルファー化米は当然殺菌され、更に、アルファー化していない米澱粉が存在している場合は、アルファー化が100%に進むことになる。加圧加温調理が終了した後、常温まで冷却して製品としての貯蔵米飯となる。なお、これを食するには、容器内に密封した貯蔵米飯をそのままの状態で、蒸気加熱、電子レンジ加熱、熱水加熱などにより暖めた後、容器を開封して取り出せば、この貯蔵米飯は、炊き立てのごはんの食感ばかりか、ほぐしが容易で食器に自在に盛り付け出来、しかも暖めるだけで実質炊飯時間ゼロの命題もクリアーしたものとなっている。
【0013】
上記した貯蔵米飯となる早炊き米である、アルファー化米は、以下のようにして作られる。
まず、貯蔵米飯となる原料米を洗米する。この洗米方法は水洗や水を使用しない方法、例えば、蒸気を使用したり、精米機でぬかの部分まで精米する、などいずれの方法でもよい。次に、洗米した原料米に吸水させる。この吸水方法も、常温の水、50℃〜60℃の湯あるいは生蒸気を使用するなどいずれでもよい。常温の水では20分間〜120分間の浸漬が必要となり、50℃乃至60℃の湯では10分間〜60分間の浸漬が必要となって、更に、生蒸気では10分間未満とすることができる。所定の浸漬乃至蒸気吸水を終えた原料米を水切りして、蒸し器に投入し、0.25kg/cm2〜1.5kg/cm2の水蒸気で蒸す。この蒸し器で8分間〜12分間ほど蒸し、少なくとも米澱粉の一部をアルファー化させる。なお、上記の0.25kg/cm2〜1.5kg/cm2の水蒸気で8分間〜12分間ほど蒸すと、米澱粉のアルファー化度は90乃至99%程度になり、その水分値は、35重量%±2重量%〜42重量%±2重量%程度となる。従って、水分値を5重量%〜35重量%±2重量%未満の範囲にするには、得られた35重量%±2重量%〜42重量%±2重量%のものをさらに乾燥させる必要がある。同様に,水分値を42重量%±2重量%を越え〜50重量%までの範囲にするには、蒸し器で水蒸気で蒸す過程で1〜3回ほど加水する必要があり、その分全体として蒸し時間が長くなる。
【0014】
蒸し器内で水蒸気で蒸し場合により加水して所定の水分値及びアルファー化度となった蒸し米、あるいはその蒸し米を乾燥して所定の水分値とした乾燥蒸し米を、熱い状態のまま直ちに無菌状態のガスバリアー性の袋に入れ、袋を開いたまま真空冷却容器内に入れて真空冷却容器を密封し、減圧して急速に真空冷却する。この真空冷却容器内を−600mmHgほどの真空状態を10秒間〜30秒間保持できるまで真空冷却を継続すると、蒸し米あるいは乾燥蒸し米はほぼ常温となるから、この真空冷却容器内に無菌エアーを送り大気圧とし、この真空冷却容器内で無菌エアーを入れた状態の袋の口をシールする。そして、真空冷却容器を開けて口をシールした袋入り蒸し米あるいは乾燥蒸し米を取り出し、常温にて24時間〜48時間放置してアルファー化した米澱粉を均質化、換言すれば熟成させて、早炊き米、すなわち、前記アルファー化米を得る。
【0015】
この状態の早炊き米であるアルファー化米は、塊状になっているから、袋の上から揉みほぐして単粒化すると、あたかも炊飯する前の通常の流通米のような状態になる。そして、この単粒化状態のアルファー化米から前記貯蔵米飯を得るには、上記したとおり、アルファー化米に対して、50重量%〜65重量%の範囲の最適水分値となるように、50℃〜100℃の水を吸水させ、該吸水後の所定量のアルファー化米を容器にて密封し、85℃〜125℃の温度にて10分間〜30分間加圧加熱調理すれば良い。なお、上記の所定の水分値及びアルファー化度となった蒸し米、あるいはその蒸し米を乾燥して所定の水分値とした乾燥蒸し米を真空冷却する工程は、上記のとおり、最終的に加圧加熱調理するから、例えば、常圧の無菌室にて冷却するなど、上記したような厳格な無菌保持を簡略化しても良い。
【0016】
そして、上記の方法にて得られたアルファー化米の水分値は、上記のとおり5重量%〜50重量%の範囲であるが、好ましくは35重量%±2重量%〜42重量%±2重量%の範囲である。その理由は、すでに述べたように、0.25kg/cm2〜1.5kg/cm2の水蒸気で8分間〜12分間ほど蒸すと、アルファー化度は90乃至99%程度になり、その水分値は、35重量%±2重量%〜42重量%±2重量%程度となり、この蒸し米から35重量%±2重量%未満とするには別途乾燥機により乾燥させなければならないからである。一方、水分値を42重量%±2重量%を越え〜50重量%の範囲にするには、すでに述べたように蒸し器で蒸す過程で1〜3回ほど加水する必要があるが、同じ蒸し器内での加水操作が増えただけであり、更に美味しいご飯の水分値と言われている50重量%〜65重量%により近づき、あと処理がなお一層容易になる。
【0017】
また、請求項2の発明にかかる貯蔵米飯は、前記水は調味液であることを特徴とするものである。
【0018】
前記水は、すなわち、H2Oとしてアルファー化米の水分値5重量%〜50重量%の範囲のものを、美味しいご飯の水分値と言われる50重量%〜65重量%にするのに必要であり、それに見合う十分な量があれば良いのである。したがって、それに見合う十分な量の水さえ確保されていれば、その水に調味料が添加され調味液となっていても何ら差し支えないのである。また、この調味料には限定がないから、貯蔵米飯の味を増したり栄養価も向上させたり、その他種々のものが利用出来る。
【0019】
また、請求項3の発明にかかる貯蔵米飯は、前記調味液はこれに調理済みの具材を含有させたことを特徴とするものである。
【0020】
前記調味液は、単に水に調味料のみを添加したものばかりか、調理済みの具材を含有させたものと定義する。すなわち、調味液にアルファー化米の水分値5重量%〜50重量%の範囲のものを、美味しいご飯の水分値と言われる50重量%〜65重量%にするのに必要にして十分な量の水が含まれていれば良く、この量の水が確保されている限り、その水に調味料ばかりか具材が入っていても何ら差し支えないのである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の貯蔵米飯の優位性を実施例により実証する。
〈実施例1〉
早炊き米(もち米)1000gに95℃にした250ccの赤飯の調味液を加え攪拌し、5分間放置した後、再び攪拌して5分間放置する。これにより得られた1250g、水分値53%〜54%の吸水後の早炊き米を容器に入れシールした後、レトルト釜にて120℃、20分間加圧加熱調理したあと、水冷し30℃にして製品とする。更に、この製品を包装状態のまま蒸し器にて100℃、20分間加熱して、容器を開封し出来たての赤飯を得た。なお,ここで早炊き米は、もち米を流水により洗米し、水に90分間浸漬して水分値を42%として、蒸気にて10分間加熱して米澱粉をアルファー化し、常圧の無菌室にて冷却することで得た。また、赤飯の調味液は、小豆を煮ることにより得た煮汁に食塩5gを溶かして得た。
〈比較例1〉
実施例1と対比するため、現在業務用として一般的に行われている赤飯の製造方法にて赤飯を得た。すなわち、実施例1と同じもち米750gを流水により洗米し、水に12時間浸漬して水分値が42%の浸漬もち米1000gを得、これを蒸し器にて10分間蒸したあと、実施例1と同じ赤飯の調味液を100cc噴霧した。再度5分間蒸しそのあと同じ赤飯の調味液を100cc噴霧して、更に5分間蒸したのち同じ赤飯の調味液を100cc噴霧し、その後10分間蒸して出来たての赤飯を得た。
【0022】
実施例1及び比較例1で得られた赤飯を対比するため、▲1▼各赤飯のほぐし状況を目視観察する。▲2▼各赤飯をご飯茶碗及び皿に盛り付け、その盛り付け状況を目視観察する。▲3▼5人のパネラーに各赤飯を一口ずつ食味してもらい、その有意差があるか、どうか見てもらう。すなわち、5人のパネラーにはどれが実施例1及び比較例1で得られた赤飯かを知らせず、順位を付けてもらうことにより行う。パネラーが1番としたものに3点、2番は2点、3番は1点とした。
【0023】
上記の結果、▲1▼の結果は各赤飯ともほぐし状況はほぼ同じで、その有意差が認められなかった。▲2▼の結果は各赤飯とも盛り付け状況もほぼ同じで、その有意差が認められなかった。▲3▼5人のパネラーの合計点で一番高ったの実施例1で、比較例1の順であったが、有意差が認められるほどの差がない。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、既に米澱粉の一部がアルファー化し、その水分が5重量%〜50重量%の早炊き米であるアルファー化米に、おいしいと言われる水分値に足りない水を吸水させ、その後加圧加熱調理する過程で未アルファー化の米澱粉を100%アルファー化して包装状態で保管するから、利用時に加熱するだけで、炊き立てのごはんを得る。したがって、長期保管が可能なのに、加熱するだけで炊き立てのごはんの食感が得られ、そればかりか、ほぐしが容易で、且つ多種多様の用途に対応させ得て、しかも炊飯時間ゼロの命題もクリアーすることができる効果がある。
【0025】
また、請求項2の発明によれば、利用時に加熱するだけの、炊き立ての味付けごはんを得る。したがって、業務用、家庭用にかかわりなく、炊飯時間の取れない場合や炊飯に不慣れな人にとって、時間や炊飯技能が無くても利用できる。
【0026】
また、請求項3の発明によれば、利用時に加熱するだけの、炊き立ての具材も含んだ味付けごはんを得る。したがって、業務用、家庭用にかかわりなく、炊飯や調理時間の取れない場合や炊飯や調理に不慣れな人にとって、時間や炊飯も含めた調理技能が無くても利用でき、重宝である。
Claims (3)
- 所定の洗米及び吸水工程を済ませた米を水蒸気で蒸し且つ必要に応じて水蒸気で蒸す過程で加水して米澱粉の少なくとも一部をアルファー化して、更に必要に応じて乾燥しその蒸し米の水分を5重量%〜50重量%にしたあと、無菌状態で冷却してなる早炊き米である、アルファー化米に対して、50重量%〜65重量%の範囲の最適水分値となるように水を吸水させ、該吸水後の所定量のアルファー化米を容器にて密封し、85℃〜125℃の温度にて10分間〜30分間加圧加熱調理してなることを特徴とする貯蔵米飯。
- 前記水は調味液である請求項1記載の貯蔵米飯。
- 前記調味液はこれに調理済みの具材を含有させた請求項2記載の貯蔵米飯。
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