JP4038039B2 - ゲストホスト型液晶表示素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイに適用可能なゲストホスト方式の液晶表示素子の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
液晶素子として多くの方式が提案されている(例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年)。例えば、ゲストホスト方式の液晶素子では、液晶中に二色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封入し、これに電場を与え、電場による液晶の動きに合わせて、二色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることによって表示する。このゲストホスト方式は、明るい表示が可能である点で、反射型液晶素子として期待されている。ここで、ゲストホスト方式については、例えば、「Handbook of Liquid Crystals」(B. Bahadur著、D. Demus, J. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編、Vol. 2A, Wiley−VCH社、1998年)の第3.4章、第257〜302頁に詳細な記載がある。また、液晶素子に利用される二色性色素に関しては、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に詳細な記載がある。
【0003】
一般に、液晶表示セルにおける液晶の配向方式としては、電圧を印加しない状態で基板に対して液晶の分子長軸が水平方向に並んでいる水平配向方式と、基板に対して液晶の分子長軸が垂直方向に並んでいる垂直配向方式とがある。このうち、従来から、水平配向方式が広く研究されている。この水平配向方式では、電圧印加によりホスト液晶を基板に対して垂直に配向させることで、二色性色素を基板に対して垂直に配向させて表示を行う。しかしながら、この水平配向を用いたゲストホスト方式液晶素子では、電圧を印加した際に、配向膜近傍のホスト液晶は水平配向膜からの相互作用を受けるために完全に垂直に配向しないため、配向膜近傍の二色性色素も完全に垂直に配向せず表示コントラストを低下させてしまうという課題がある。また、完全に垂直に配向させるためには、高い電圧を必要とするため、表示コントラストを上げようとすると消費電力が大きくなるという課題がある。
【0004】
垂直配向方式を用いたゲストホスト方式液晶素子としては、特開平10−20346号公報、特開2000−292816号公報に開示されているが、これらの液晶素子においては、二色性色素のオーダーパラメーターが低いため、充分な表示コントラストが得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、表示コントラストの高いゲストホスト方式液晶表示素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明のゲストホスト型液晶表示素子は、少なくとも一方が透明電極である対向配置された一対の基板と、前記一対の基板に挟持される、ホスト液晶および下記一般式(a)で表される置換基を有する二色性色素を含む液晶層とを備え、前記基板の少なくとも一方の対向面に対して前記ホスト液晶を角度60°〜90°で配向させてなることを特徴とする。
一般式(a)
−(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1
式中、Hetは硫黄原子または酸素原子を表し、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基を表す。mは0または1を表し、p、qおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。p、qおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}は同一でも異なっていてもよい。
【0007】
本発明の好ましい態様として、前記一対の基板の少なくとも一つの対向面に垂直配向膜を有することを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;前記ホスト液晶が負の誘電異方性を示すことを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;前記二色性色素がアントラキノン色素であることを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;前記プレチルト角が80°〜90°であることを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;前記ホスト液晶が、分子中に一以上のフッ素原子を有することを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;前記二色性色素として、一種以上のイエロー色素、一種以上のマゼンタ色素および一種以上のシアン色素を含むことを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;が提供される。
【0008】
本発明の好ましい態様として、前記二色性色素が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;より好ましい態様として、前記二色性色素が、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで表されることを特徴とする上記ゲストホスト型液晶表示素子;が提供される。
【0009】
一般式(1)
【化2】
【0010】
式中、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基であり、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同義である。R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々独立して水素原子または置換基を表す。好ましくは、p=2、q=0、r=1且つn=1であり、B1はアリール基、B2は1,4−シクロヘキサンジイル基、C1はアルキル基を各々表す。
【0011】
一般式(2)
【化3】
【0012】
式中、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基であり、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは前記一般式(1)中の各々と同定義である。R9はアリールチオまたはヘテロアリールチオ基を表す。
【0013】
一般式(3)
【化4】
【0014】
式中、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基であり、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは前記一般式(1)中の各々と同定義である。R10、R11およびR12は各々独立して、アルールチオまたはヘテロアリールチオ基を表す。
【0015】
一般式(4)
【化5】
【0016】
式中、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基であり、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは前記一般式(1)中の各々と同定義である。R13、R14およびR15は各々独立して、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシ基を表すが、R13、R14およびR15のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシ基を表す。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも一方が透明電極である対向配置された一対の基板と、前記一対の基板に挟持される、ホスト液晶および二色性色素を含む液晶層とを有するゲストホスト型液晶表示素子の製造方法において、前記一対の基板の対向面の少なくとも一つにプレチルト角が60°〜90°の配向膜を形成する工程を含み、且つ前記2色性色素として前記一般式(a)で表される置換基を有する色素を用いることを特徴とするゲストホスト型液晶表示素子の製造方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0019】
本発明の液晶表示素子は、ホスト液晶と二色性色素とを含む液晶層を有し、該液晶層に電圧を加えてホスト液晶分子の配列の方向を変化させることで、二色性色素による吸収、即ち、液晶層を透過する光の色相を変化させるゲストホスト方式の液晶表示素子である。
【0020】
まず、本発明に用いられる二色性色素について説明する。
本発明に用いられる二色性色素は、いかなる発色団を有する色素であってもよく、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素などを用いることができる。具体的には、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」( A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に記載されているものが挙げられる。
好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素であり、特に好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素である。
【0021】
前記アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいずれであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。アゾ色素は、一般的には環構造を含むが、該環構造としては、炭素芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環など)、および複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)が挙げられる。
【0022】
前記アントラキノン色素としては、置換基として酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基を含むものが好ましい。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0023】
本発明において、前記二色性色素は下記一般式(a)で表される置換基を少なくとも1つ有する。
一般式(a)
−(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1
【0024】
前記一般式(a)において、Hetは硫黄原子または酸素原子を表す。
前記一般式(a)において、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表す。前記2価のアリール基としては、炭素数2〜20のアリール基が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環の2価基が好ましい。特に好ましくは、ベンゼン環、置換ベンゼン環の2価基であり、さらに好ましくは1、4−フェニレン基である。B1およびB2が各々表す2価のヘテロアリール基としては、炭素数1〜20のヘテロアリール基が好ましい。具体的には、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、およびこれらが縮環して形成される縮環の2価のヘテロアリール基が好ましい。B1およびB2が各々表す2価の環状脂肪族炭化水素基の好ましい具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基であり、特に好ましくは、(E)−シクロヘキサン−1、4−ジイル基である。
【0025】
B1およびB2は各々置換基を有していてもよく、該置換基としては以下の置換基群Vから選ばれるいずれかが挙げられる。
置換基群V:
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素);メルカプト基;シアノ基;カルボキシル基;リン酸基;スルホ基;ヒドロキシ基;炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基);炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ピペリジノスルファモイル基);ニトロ基;炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、ナフトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基);
【0026】
炭素数0〜20、好ましくは炭素数0〜12、更に好ましくは炭素数0〜8の置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、3−n−プロピルフェニルアミノ基、4−n−プロピルフェニルアミノ基、3−n−ブチルフェニルアミノ基、4−n−ブチルフェニルアミノ基、3−n−ペンチルフェニルアミノ基、4−n−ペンチルフェニルアミノ基、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、3−ピリジルアミノ基、2−チアゾリルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、N,N−メチルフェニルアミノ基、N,N−エチルフェニルアミノ基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基);炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);
【0027】
炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルアミノメチル基、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする};炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−カルボキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、p−シアノフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−トリル基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えばピリジル基、5−メチルピリジル基、チエニル基、フリル基、モルホリノ基、テトラヒドロフルフリル基);が挙げられる。これら置換基群Vはベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造もとることができる。さらに、これらの置換基上にさらに置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が置換していてもよい。
【0028】
置換基群Vとして好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、無置換アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
【0029】
前記一般式(a)において、Q1は2価の連結基を表す。好ましくは、炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる原子から構成される原子団からなる2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキシル−1,4−ジイル基)、炭素数2〜20のアルケニレン基(例えば、エテニレン基)、炭素数2〜20のアルキニレン基(例えば、エチニレン基)、アミド基、エーテル基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、複素環2価基(例えば、ピペラジンー1,4−ジイル基)、またはこれらを2以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。Q1はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基、およびそれらを組合せからなる2価の連結基を表すのが好ましい。
Q1はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0030】
前記一般式(a)において、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基を表す。好ましい例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルおよびシクロアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ペンチルシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);が挙げられる。C1として特に好ましくはアルキル基またはアルコキシ基であり、さらに好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはトリフルオロメトキシ基である。
C1はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0031】
前記一般式(a)において、mは0または1を表し、好ましくは1である。p、qおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10を満足する。なお、p、q、rおよびnが各々2以上の場合、その繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよい。
好ましいp、q、rおよびnの組合せを以下に記す。
(1) p=2、q=0、r=1、n=1
(2) p=3、q=0、r=0、n=1
(3) p=4、q=0、r=0、n=1
(4) p=5、q=0、r=0、n=1
(5) p=2、q=1、r=1、n=1
(6) p=1、q=1、r=2、n=1
(7) p=3、q=1、r=1、n=1
(8) p=1、q=1、r=3、n=1
(9) p=2、q=1、r=2、n=1
(10) p=1、q=1、r=1、n=3
(11) p=0、q=1、r=3、n=1
(12) p=0、q=1、r=2、n=2
(13) p=1、q=1、r=2、n=2
(14) p=2、q=1、r=1、n=2
【0032】
特に好ましくは、 (1) p=2、q=0、r=1、n=1;(2) p=3、q=0、r=0、n=1;(3) p=4、q=0、r=0、n=1;(5) p=2、q=1、r=1、n=1;の組合せである。
【0033】
なお、−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1としては、液晶性を示す構造を含むことが好ましい。ここでいう液晶とは、いかなるフェーズであってもよいが、好ましくはネマチック液晶、スメクチック液晶、デイスコテイック液晶であり、さらに好ましくは、ネマチック液晶、スメクチック液晶であり、特に好ましくは、ネマチック液晶である。液晶化合物の具体例としては、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧、丸善、2000年の第3章「分子構造と液晶性」に記載されているものなどが挙げられる。
【0034】
−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない(図中、波線は連結位置を表す)。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
前記二色性色素中における前記一般式(a)で表される置換基の個数は、1〜8であるのが好ましく、1〜4であるのがより好ましく、1または2であるのが特に好ましい。
【0039】
前記二色性色素の中でも下記一般式(1)で表されるアントラキノン化合物が好ましい。
【0040】
一般式(1)
【化9】
【0041】
式中、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々独立して水素原子または置換基を表す。R2〜R8が各々表す置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0043】
前記一般式(1)中、好ましくは、p=2、q=0、r=1且つn=1であり、B1はアリール基、B2は1,4−シクロヘキサンジイル基、C1はアルキル基を各々表す。
【0044】
前記一般式(1)で表されるアントラキノン色素の中でも、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで表されるアントラキノン色素がより好ましい。
【0045】
一般式(2)
【化10】
【0046】
前記一般式(2)において、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
前記一般式(2)において、R9はアリールチオ基またはヘテロアリールチオ基を表す。好ましくは炭素数6〜80、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、4−n−プロピルフェニルチオ基、2−n−ブチルフェニルチオ基、3−n−ブチルフェニルチオ基、4−n−ブチルフェニルチオ基、2−t−ブチルフェニルチオ基、3−t−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、3−n−ペンチルフェニルチオ基、4−n−ペンチルフェニルチオ基、4−アミルペンチルフェニルチオ基、4−ヘキシルフェニルチオ基、4−ヘプチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);好ましくは炭素数1〜80、より好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);である。R9はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0048】
R9として好ましくは、アリールチオ基であり、特に好ましくは3位または4位にアルキル基を有するアリールチオ基である。
【0049】
以下に前記一般式(2)で表されるアントラキノン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
【化13】
【0053】
次に下記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物について詳細に説明する。
一般式(3)
【化14】
【0054】
前記一般式において、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(3)において、R10、R11およびR12は各々独立して、アリールチオ基またはヘテロアリールチオ基を表す。R10〜R12で各々表されるアリールチオ基またはヘテロアリールチオ基については、前記一般式(2)中のR9で表される各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
以下に、前記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
【化15】
【0057】
【化16】
【0058】
次に、下記一般式(4)で表されるアントラキノン化合物について詳細に説明する。
一般式(4)
【化17】
【0059】
前記一般式(4)において、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0060】
前記一般式(4)において、R13、R14およびR15は各々アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシ基を表すが、R13、R14およびR15のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基またはヒドロキシ基である。前記アリールチオ基およびヘテロアリールチオ基については、前記一般式(2)中のR9が表す各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
R13〜R15で各々表される置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で置換されたアミノ基が好ましい。具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、3−n−プロピルフェニルアミノ基、4−n−プロピルフェニルアミノ基、3−n−ブチルフェニルアミノ基、4−n−ブチルフェニルアミノ基、3−n−ペンチルフェニルアミノ基、4−n−ペンチルフェニルアミノ基、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、3−ピリジルアミノ基、2−チアゾリルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、N,N−メチルフェニルアミノ基、N,N−エチルフェニルアミノ基が挙げられる。
R14およびR15として好ましくは、無置換アミノ基もしくはアリールアミノ基であり、特に好ましくは、アリールアミノ基である。
R13〜R15で各々表されるアシルアミノ基としては、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で置換されたアシルアミノ基が好ましい。
【0061】
以下に、前記一般式(4)で表されるアントラキノン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
以下に、本発明に使用可能なその他の二色性色素の具体例(x−1はアントラキノン色素の具体例、azo−1〜8はアゾ色素の具体例、meso−1〜4はメロシアニン色素の具体例)を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】
本発明に用いられる二色性色素は、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)、「総説合成染料」(堀口博著、三共出版、1968年)およびこれらに引用されている文献に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0070】
本発明において、液晶層は、1種以上のイエロー色素、1種以上のマゼンタ色素および1種以上のシアン色素を含有するのが好ましく、ニュートラルな黒色となる態様が好ましい。フルカラー化を行う際には、赤(R)、緑(G)、青(B)を混合する加法混色と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)を重ね合わせる減法混色とがあるが、本発明では、減法混色により黒色となる態様が好ましい。その詳細については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に記載がある。通常、イエロー色素は、430〜490nmの範囲に、マゼンタ色素は、500〜580nmの範囲に、シアン色素は600〜700nmの範囲に、その極大吸収波長が存在する。色素に含まれる置換基の種類および置換位置等によって最大吸収波長がシフトし、色相も変化するが、前記一般式(2)で表されるアントラキノン化合物はイエロー色素としての例が多く、前記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物はマゼンタ色素としての例が多く、前記一般式(4)で表されるアントラキノン化合物はシアン色素としての例が多い。
【0071】
次に、本発明に用いられるホスト液晶について説明する。
本発明に使用可能なホスト液晶は、前記一般式(a)で表される置換基を有する二色性色素(以下、単に「本発明の二色性色素」という場合がある)と共存しうるものであれば特に制限はないが、例えば、ネマチック相あるいはスメクチック相を示す液晶化合物が利用できる。その具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁および第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。TFT駆動に適したフッ素置換されたホスト液晶を使用することもできる。
【0072】
本発明には、誘電率異方性が負のホスト液晶を用いるのが好ましい。誘電率異方性が負の液晶は、一般的に、液晶分子の短軸が誘電率異方性が大きくなるような構造にする必要があるが、例えば、「月刊ディスプレイ」(2000年、4月号)の第4頁〜9頁に記載のもの、Synlett., 第4巻、第389頁〜396頁、1999年に記載のものが挙げられる。なかでも、電圧保持率の観点から、フッ素系置換基を有する誘電率異方性が負の液晶が好ましい。
以下に、誘電率異方性が負の液晶の代表的具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
【化24】
【0074】
【化25】
【0075】
前記一般式(a)で表される置換基を有する置換基を有する二色性色素(以下、単に「本発明の二色性色素」という場合がある)は、ホスト液晶(特に、前記例示された誘電率異方性が負の液晶)に対する溶解度が高く、かつ液晶組成物のオーダーパラメーターの向上に寄与する。特に、TFT駆動に適しているフッ素系ホスト液晶に対する溶解度が高い特徴を有している。
【0076】
前記液晶層には、ホスト液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば,液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、カイラル化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。そのような添加剤としては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。
【0077】
前記液晶層におけるホスト液晶および本発明の二色性色素の含有量については制限はないが、前記二色性色素の含有量は、ホスト液晶の含有量に対して0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜6質量%であることが特に好ましい。また、液晶層の吸収スペクトルを測定することで、所望の光学濃度に必要な色素濃度を決定することが望ましい。
【0078】
本発明の液晶表示素子は、一対の基板を備える。前記基板は、挟持される液晶層に電圧を供与可能なように、電極基板であるのが好ましい。前記電極基板は、通常、ガラスあるいはプラスチックからなる基板上に、電極層を形成したものを用いることができる。プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。基板については、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第218〜231頁に記載のものを用いることができる。前記一対の基板のうち、少なくとも一方は透明電極基板であり、ガラス、プラスチック等の透明な基板上に透明電極層を有する構成が好ましい。前記透明電極層は、例えば、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ等から形成することができる。前記透明電極層については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものが用いられる。
【0079】
本発明の液晶素子は、例えば、一対の基板をスペーサーなどを介して、1〜50μm間隔で対向配置させ、基板間に形成された空間に、ホスト液晶および本発明の二色性色素を含有する液晶組成物を注入することにより作製することができる。前記スペーサーについては、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。前記液晶組成物は、本発明の二色性色素をホスト液晶に溶解して調製することができる。溶解は、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用して行うことができる。
【0080】
本発明において、前記一対の基板の少なくとも一の対向面には、前記ホスト液晶を基板に対して角度60°〜90°(好ましくは、80°〜90°)で配向させる配向処理が施されていることが好ましい。基板に対する液晶分子の傾き角の決定方法としては、「液晶便覧」(液晶便覧編集委員会編、丸善、2000年)の第234頁〜239頁に記載されている。配向処理としては、特に制限はなく、ラビング処理、光照射、蒸着等種々の方法が挙げられる。中でも、前記一対の基板の対向面の少なくとも一つに配向膜を形成し、該配向膜に種々の条件でラビング処理、光照射等を施すと、液晶分子を基板に対して前記範囲の角度で容易に液晶を配向させることができるので好ましい。前記配向膜は、いかなる材料であってもよく、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第240〜256頁に記載のものが用いられる。前記配向膜としては、ポリイミド系の材料からなる膜が好ましい。ポリイミド系配向膜としては、例えば、「月刊ディスプレイ」(2000年、8月号、第13頁〜18頁)、「液晶便覧」(液晶便覧編集委員会編、丸善、2000年)の第253頁〜258頁に記載のものが挙げられる。また、ラビング処理についても特に制限はなく、例えば、配向膜の表面をバフで一定方向に擦り、微細な溝を作製する一般的な方法が挙げられる。形成される配向膜のプレチルト角は60°〜90°の垂直配向膜であるのが好ましく、80°〜90°の垂直配向膜であるのがより好ましい。
【0081】
本発明の好ましい態様は、ホスト液晶として誘電率異方性が負の液晶を用い、二色性色素として長軸方向の吸収効果が大きい色素を用いたポジ型の表示特性を示すゲストホスト液晶表示素子である。この態様では、電圧無印加時には液晶は角度60〜90°で垂直配向するとともに、二色性色素もゲスト液晶と同様に垂直配向するので、二色性色素によって入射光は吸収されず透過する。一方、電圧を印加すると、液晶分子がその誘電率異方性により、平行配向をとるようになるので、同様に二色性色素も平行配向をとるようになり、その結果、入射光は二色性色素によって吸収されるようになる。即ち、電圧無印加時には白表示、電圧印加時には黒表示を行うポジ型の表示特性を示す。
【0082】
また、他の態様として、誘電率異方性が負のホスト液晶と、短軸方向の吸収効果が大きい二色性色素とを組合せたネガ型の表示特性を示すゲストホスト表示素子も挙げられる。
【0083】
本発明の液晶表示素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載され、本発明の液晶表示素子の駆動方法として利用できる。
【0084】
本発明の液晶表示素子を適用可能な液晶ディスプレイは、特にその方式については制限されないが、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第309頁に記載のゲストホスト方式に記載されている▲1▼ホモジニアス配向、▲2▼ホメオトロピック配向、White−Taylor型(相転移型)として▲3▼フォーカルコニック配向および▲4▼ホメオトロピック配向、▲5▼Super Twisted Nematic(STN)方式との組合せ、▲6▼強誘電性液晶(FLC)との組合せ、また、「反射型カラーLCD総合技術」(内田龍男監修、シーエムシー社、1999年)の第2−1章(GHモード反射型カラーLCD)、第15〜16頁に記載されている、▲1▼Heilmeier型GHモード、▲2▼1/4波長板型GHモード、▲3▼2層型GHモード、▲4▼相転移型GHモード、▲5▼高分子分散液晶(PDLC)型GHモードなどが挙げられる。
【0085】
さらに、本発明の液晶表示素子は特開平10−67990号、同10−239702号、同10−133226号、同10−339881号、同11−52411号、同11−64880号、特開2000−221538号などの各公報に記載されている積層型GHモード、特開平11−24090号公報などに記載されているマイクロカプセルを利用したGHモードの液晶ディスプレイに用いることができる。さらに、特開平6−235931号、同6−235940号、同6−265859号、同7−56174号、同9−146124号、同9−197388号、同10−23346号、同10−31207号、同10−31216号、同10−31231号、同10−31232号、同10−31233号、同10−31234号、同10−82986号、同10−90674号、同10−111513号、同10−111523号、同10−123509号、同10−123510号、同10−206851号、同10−253993号、同10−268300号、同11−149252号、特開2000−2874号などの公報に記載されている反射型液晶ディスプレイに用いることができる。また、特開平5−61025号、同5−265053号、同6−3691号、同6−23061号、同5−203940号、同6−242423号、同6−289376号、同8−278490号、同9−813174号などの公報に記載されている高分子分散液晶型GHモードに用いることができる。
【0086】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0087】
[液晶セルの作製]
(1) ITOが蒸着されたガラス基板の表面に、JSR(株)製ポリイミド配向膜「JALS−682−R3」を塗布した後、180℃にて焼結させた。該基板をラビング処理(パラレル配向)した後、触媒化成工業(株)製スペーサー(6.5μm)とエポキシ接着剤を用いて、サンドイッチ状の液晶セルAを作製した。前記配向膜上における、液晶の配向のプレチルト角は88°であった。
一方、比較として、水平配向膜であるJSR(株)製ポリイミド配向膜「AL3046」を用いて上記と同様に液晶セルBを作製した。前記配向膜上におけるプレチルト角は2°であった。
【0088】
(2) 液晶素子の作製
下記表1に示す化合物(本発明の二色性色素および公知の比較化合物)の各々1mgを、下記表1に示すホスト液晶100mgと混合し、80℃に加熱撹拌した。室温まで冷却して、(1)で作製したセルAまたはBに注入して、液晶素子を作製した。なお、セルAを用いた場合は、誘電率異方性が負の液晶(メルク社製、「MLC−6608」)を、セルBを用いた場合は、誘電率異方性が正の液晶(メルク社製「ZLI−5081」)を用いた。
【0089】
(3) 電圧印加時の吸収スペクトル測定
作製した各々の液晶素子に、ラビング方向と平行な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖(0V))をUV3100(島津製作所製、可視吸収スペクトル計)にて測定した。次に、作製した各々の液晶素子に、矩形交流電圧(10V、60Hz)を印加し、ラビング方向と平行な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖(10V))を測定した。各々の極大吸収波長における(A‖(0V))および(A‖(10V))の測定値から、Dmax/Dminを以下の式に従って求めた。結果を表2に示す。
セルAの場合:Dmax/Dmin={A‖(10V)}/{A‖(0V)}
セルBの場合:Dmax/Dmin={A‖(0V)}/{A‖(10V)}
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【化26】
【0093】
表2に示す結果より、実施例の液晶表示素子は、濃度比Dmax/Dminが従来の化合物を用いた比較例の液晶表示素子よりも高くなり、すなわち、表示コントラストが高いことがわかる。
【0094】
また、実施例1の液晶表示素子において、ホスト液晶を、誘電率異方性が正の液晶(メルク社製、「ZLI−5081」)に、セルを水平配向セルBに代えた以外は、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子について、上記と同様に455nmにおける濃度比Dmax/Dminを測定したところ9であった。このことから、垂直配向方式の本発明の液晶表示素子は、水平配向方式よりも濃度比Dmax/Dminが高いことがわかる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、高い表示コントラストを与える液晶表示素子およびその製造方法を提供することができる。
Claims (11)
- 少なくとも一方が透明電極である対向配置された一対の基板と、前記一対の基板に挟持される、ホスト液晶および下記一般式(a)で表される置換基を有する二色性色素を含む液晶層とを備え、電圧無印加時において、前記基板の少なくとも一方の対向面に対して前記ホスト液晶を角度60°〜90°で配向させてなるゲストホスト型液晶表示素子。
一般式(a) −(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1
(式中、Hetは硫黄原子または酸素原子を表し、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、又はアルコキシ基表す。mは1を表し、pおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、q は0を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。pおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}は同一でも異なっていてもよい。) - 前記一般式(a)中、p=2、q=0、r=1且つn=1であり、B 1 はアリール基、B 2 は1,4−シクロヘキサンジイル基、C 1 はアルキル基を各々表すことを特徴とする請求項1に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記一対の基板の少なくとも一つの対向面に垂直配向膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記ホスト液晶が負の誘電異方性を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記二色性色素がアントラキノン色素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記一般式(1)中、p=2、q=0、r=1且つn=1であり、B1はアリール基、B2は1,4−シクロヘキサンジイル基、C1はアルキル基を各々表すことを特徴とする請求項6に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記基板の対向面に対して前記ホスト液晶を角度80°〜90°で配向させてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記ホスト液晶が、分子中に一以上のフッ素原子を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 前記二色性色素として、一種以上のイエロー色素、一種以上のマゼンタ色素および一種以上のシアン色素を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のゲストホスト型液晶表示素子。
- 少なくとも一方が透明電極である対向配置された一対の基板と、前記一対の基板に挟持される、ホスト液晶および二色性色素を含む液晶層とを有するゲストホスト型液晶表示素子の製造方法において、電圧無印加時において、前記一対の基板の対向面の少なくとも一つにプレチルト角が60°〜90°の配向膜を形成する工程を含み、且つ前記2色性色素として下記一般式(a)で表される置換基を有する色素を用いることを特徴とするゲストホスト型液晶表示素子の製造方法。
一般式(a) −(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1
(式中、Hetは硫黄原子または酸素原子を表し、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、又はアルコキシ基を表す。mは1を表し、pおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、q は0を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。pおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}は同一でも異なっていてもよい。)
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