JP4064653B2 - 液晶組成物および液晶素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、特にゲストホスト方式の液晶ディスプレイに好ましく用いられる新規な液晶組成物、ならびにこれらを利用した液晶素子の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
液晶素子として多くの方式が提案されている(例えば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年)。例えば、ゲストホスト方式の液晶素子では、液晶中に2色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封入し、これに電場を与え、電場による液晶の動きに合わせて、2色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることによって表示する方式である。このゲストホスト方式は、明るい表示が可能である点で、反射型液晶素子として期待されている。ここで、ゲストホスト方式については、例えば、「Handbook of Liquid Crystals」(B. Bahadur著、D. Demus, J. Goodby, G. W. Gray, H. W. Spiess, V. Vill編、Vol. 2A, Wiley−VCH社、1998年)の第3.4章、第257〜302頁に詳細な記載がある。また、液晶素子に利用される2色性色素に関しては、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に詳細な記載がある。
【0003】
ところで、液晶素子に用いられる2色性色素には、適切な吸収特性、高いオーダーパラメーター、ホスト液晶に対する高い溶解性および耐久性などの性能が要求される。ここで、オーダーパラメーターSは、熱的に揺らぎを受ける分子の分子長軸が、ダイレクターに対して時間平均でずれ角θ傾いているとき、S=(3cos2θ−1)/2 で定義される。S=0.0の場合、分子は全く秩序がない状態であることを示し、S=1.0の場合、分子は分子長軸がダイレクターの方向に一致して配列している状態にあることを示す。正のオーダーパラメーターを有する2色性色素に関しては、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に詳細な記載がある。
従来、大きな正のオーダーパラメーターを与える2色性色素としては、アントラキノン色素、アゾ色素などが知られており、なかでも、アントラキノン色素は光堅牢性が高い点で広く研究されてきた。しかしながら、そのオーダーパラメーターは実際の液晶表示素子においては、充分な高い値ではなく、その結果、ゲストホスト方式の液晶表示素子における表示コントラストの低下を招いていた。よって、大きな正のオーダーパラメーターを与える2色性色素の開発が望まれていた。
【0004】
ゲストホスト方式液晶表示素子のうち、フルカラー化の方式として、カラーフィルターを用いた方式においては、2色性色素を含有する液晶層で可視域全体の光を吸収あるいは透過させる必要があり、その目的のためには、複数の2色性色素を混合して用いることが従来から広く検討されてきた。例えば、複数の2色性色素を併用した報告としては、特開平11−5980号、特開平10−338881号、特開平10−298553号、特開平10−260386号、特開平10−17867号、特開平6−234976号などの各公報が挙げられる。しかしながら、従来の2色性色素では、オーダーパラメーターが十分ではなく、その結果、ゲストホスト方式の液晶表示素子における表示コントラストの低下を招いていた。よって、可視域全体にわたって高いオーダーパラメーターを与える液晶組成物の開発が望まれていた。また、高い表示コントラストを得るためには、ホスト液晶に溶解している2色性色素の濃度を高める必要があるが、従来の色素では、満足すべき溶解性を示すものは少なく、その向上が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、可視域全体にわたって高いオーダーパラメーターを持ち、表示素子に利用した場合に表示コントラストの向上に寄与し得る液晶組成物および液晶素子を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の液晶組成物は、2種類以上の色素を含有し、少なくとも1種の色素が下記一般式(a)で表される置換基を有することを特徴とする。
一般式(a)
−(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1
式中、Hetは硫黄原子または酸素原子を表し、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基を表す。mは0または1を表し、p、qおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。p、qおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}は同一でも異なっていてもよい。
【0007】
本発明の好ましい態様として、前記一般式(a)で表される置換基を有する色素が、アントラキノン色素であることを特徴とする上記液晶組成物;前記一般式(a)中、m=1、p=2、q=0、r=1且つn=1であることを特徴とする上記液晶組成物;前記2種類以上の色素は、1種以上のイエロー色素、1種以上のマゼンタ色素および1種以上のシアン色素を含み、且つ前記一般式(a)で表される置換基を有する色素が、前記イエロー色素、前記マゼンタ色素および前記シアン色素のいずれかであることを特徴とする上記液晶組成物;が提供される。
【0008】
本発明の好ましい態様として、前記一般式(a)で表される置換基を有する色素が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されることを特徴とする上記液晶組成物;より好ましい態様として、前記2種類以上の色素は、1種以上の前記一般式(1)で表される化合物と、1種以上の前記一般式(2)で表される化合物と、1種以上の前記一般式(3)で表される化合物とを含むことを特徴とする上記液晶組成物;が提供される。
【0009】
一般式(1)
【化4】
【0010】
式中、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同義である。R2はアリールチオ基またはヘテロアリールチオ基を表す。
【0011】
一般式(2)
【化5】
【0012】
式中、R3は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同義である。R4、R5およびR6は各々独立してアリールチオ基またはヘテロアリールチオ基を表す。
【0013】
一般式(3)
【化6】
【0014】
式中、R7は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同義である。R8、R9およびR10は各々独立してアリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基またはアリールオキシ基を表すが、R8、R9およびR10の少なくとも1つ以上は置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基またはアリールオキシ基を表す。
【0015】
また、前記課題を解決するため、本発明の液晶素子は、本発明の液晶組成物からなる液晶層を少なくとも1つ以上有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
本発明の液晶組成物は2種類以上の色素を含有する。本発明に用いられる色素は、いかなる発色団を有する色素であってもよく、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素などを用いることができる。具体的には、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」( A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に記載されているものが挙げられる。
好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素であり、特に好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素である。
【0017】
前記アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいずれであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。アゾ色素は、一般的には環構造を含むが、該環構造としては、炭素芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環など)、および複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)が挙げられる。
【0018】
前記アントラキノン色素としては、置換基として酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基を含むものが好ましい。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0019】
本発明において、前記2種類以上の色素のうち少なくとも一つの色素は、下記一般式(a)で表される置換基を少なくとも1つ有する。
一般式(a)
−(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1
【0020】
前記一般式(a)において、Hetは硫黄原子または酸素原子を表す。
前記一般式(a)において、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表す。前記2価のアリール基としては、炭素数2〜20のアリール基が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環の2価基が好ましい。特に好ましくは、ベンゼン環、置換ベンゼン環の2価基であり、さらに好ましくは1、4−フェニレン基である。B1およびB2が各々表す2価のヘテロアリール基としては、炭素数1〜20のヘテロアリール基が好ましい。具体的には、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、およびこれらが縮環して形成される縮環の2価のヘテロアリール基が好ましい。B1およびB2が各々表す2価の環状脂肪族炭化水素基の好ましい具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基であり、特に好ましくは、(E)−シクロヘキサン−1、4−ジイル基である。
【0021】
B1およびB2は各々置換基を有していてもよく、該置換基としては以下の置換基群Vから選ばれるいずれかが挙げられる。
置換基群V:
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素);メルカプト基;シアノ基;カルボキシル基;リン酸基;スルホ基;ヒドロキシ基;炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基);炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ピペリジノスルファモイル基);ニトロ基;炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、ナフトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基);
【0022】
炭素数0〜20、好ましくは炭素数0〜12、更に好ましくは炭素数0〜8の置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、3−n−プロピルフェニルアミノ基、4−n−プロピルフェニルアミノ基、3−n−ブチルフェニルアミノ基、4−n−ブチルフェニルアミノ基、3−n−ペンチルフェニルアミノ基、4−n−ペンチルフェニルアミノ基、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、3−ピリジルアミノ基、2−チアゾリルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、N,N−メチルフェニルアミノ基、N,N−エチルフェニルアミノ基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基);炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);
【0023】
炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルアミノメチル基、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする};炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−カルボキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、p−シアノフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−トリル基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えばピリジル基、5−メチルピリジル基、チエニル基、フリル基、モルホリノ基、テトラヒドロフルフリル基);が挙げられる。これら置換基群Vはベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造もとることができる。さらに、これらの置換基上にさらに置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が置換していてもよい。
【0024】
置換基群Vとして好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、無置換アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、無置換アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基である。
【0025】
前記一般式(a)において、Q1は2価の連結基を表す。好ましくは、炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる原子から構成される原子団からなる2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキシル−1,4−ジイル基)、炭素数2〜20のアルケニレン基(例えば、エテニレン基)、炭素数2〜20のアルキニレン基(例えば、エチニレン基)、アミド基、エーテル基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、複素環2価基(例えば、ピペラジンー1,4−ジイル基)、またはこれらを2以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。Q1はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基、およびそれらを組合せからなる2価の連結基を表すのが好ましい。
Q1はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0026】
前記一般式(a)において、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基を表す。好ましい例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルおよびシクロアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ペンチルシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);が挙げられる。C1として特に好ましくはアルキル基またはアルコキシ基であり、さらに好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはトリフルオロメトキシ基である。
C1はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0027】
前記一般式(a)において、mは0または1を表し、好ましくは1である。p、qおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10を満足する。なお、p、q、rおよびnが各々2以上の場合、その繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよい。
好ましいp、q、rおよびnの組合せを以下に記す。
(1) p=3、q=0、r=0、n=1
(2) p=4、q=0、r=0、n=1
(3) p=5、q=0、r=0、n=1
(4) p=2、q=0、r=1、n=1
(5) p=1、q=1、r=2、n=1
(6) p=3、q=1、r=1、n=1
(7) p=1、q=1、r=3、n=1
(8) p=2、q=1、r=2、n=1
(9) p=1、q=1、r=1、n=3
(10) p=0、q=1、r=3、n=1
(11) p=0、q=1、r=2、n=2
(12) p=1、q=1、r=2、n=2
(13) p=2、q=1、r=1、n=2
【0028】
特に好ましくは、(1) p=3、q=0、r=0、n=1;(2) p=4、q=0、r=0、n=1;(4) p=2、q=0、r=1、n=1;の組合せである。
【0029】
なお、−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1としては、液晶性を示す構造を含むことが好ましい。ここでいう液晶とは、いかなるフェーズであってもよいが、好ましくはネマチック液晶、スメクチック液晶、デイスコテイック液晶であり、さらに好ましくは、ネマチック液晶、スメクチック液晶であり、特に好ましくは、ネマチック液晶である。液晶化合物の具体例としては、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧、丸善、2000年の第3章「分子構造と液晶性」に記載されているものなどが挙げられる。
【0030】
−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない(図中、波線は連結位置を表す)。
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
前記色素中の前記一般式(a)で表される置換基の個数は、1〜8であるのが好ましく、1〜4であるのがより好ましく、1または2であるのが特に好ましい。
【0035】
前記一般式(a)で表される置換基を有する色素の好ましい態様としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
一般式(1)
【化10】
【0037】
前記一般式(1)において、R1は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0038】
前記一般式(1)において、R2はアリールチオ基またはヘテロアリールチオ基を表す。好ましくは炭素数6〜80、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、4−n−プロピルフェニルチオ基、2−n−ブチルフェニルチオ基、3−n−ブチルフェニルチオ基、4−n−ブチルフェニルチオ基、2−t−ブチルフェニルチオ基、3−t−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、3−n−ペンチルフェニルチオ基、4−n−ペンチルフェニルチオ基、4−アミルペンチルフェニルチオ基、4−ヘキシルフェニルチオ基、4−ヘプチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);好ましくは炭素数1〜80、より好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);である。R2はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0039】
R2として好ましくは、アリールチオ基であり、特に好ましくは3位または4位にアルキル基を有するアリールチオ基である。
【0040】
以下に前記一般式(1)で表されるアントラキノン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
次に下記一般式(2)で表されるアントラキノン化合物について詳細に説明する。
一般式(2)
【化14】
【0045】
前記一般式において、R3は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(2)において、R4、R5およびR6は各々独立して、アリールチオ基またはヘテロアリールチオ基を表す。R4〜R6で各々表されるアリールチオ基またはヘテロアリールチオ基については、前記一般式(1)中のR2で表される各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
以下に、前記一般式(2)で表されるアントラキノン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
【化15】
【0048】
【化16】
【0049】
次に、下記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物について詳細に説明する。
一般式(3)
【化17】
【0050】
前記一般式(3)において、R7は−S−((B1)p−(Q1)q−(B2)r)n−C1で表される置換基を表し、Sは硫黄原子を表し、B1、B2、Q1、p、q、rおよびnは、前記一般式(a)中の各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0051】
前記一般式(3)において、R8、R9およびR10は各々アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基またはアリールオキシ基を表すが、R8、R9およびR10のうち少なくとも1つは置換もしくは無置換のアミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基またはアリールオキシ基である。前記アリールチオ基およびヘテロアリールチオ基については、前記一般式(1)中のR2が表す各々と同定義であり、好ましい範囲も同様である。
【0052】
R8〜R10で各々表される置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で置換されたアミノ基が好ましい。具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、3−n−プロピルフェニルアミノ基、4−n−プロピルフェニルアミノ基、3−n−ブチルフェニルアミノ基、4−n−ブチルフェニルアミノ基、3−n−ペンチルフェニルアミノ基、4−n−ペンチルフェニルアミノ基、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、3−ピリジルアミノ基、2−チアゾリルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、N,N−メチルフェニルアミノ基、N,N−エチルフェニルアミノ基が挙げられる。
R9およびR10として好ましくは、無置換アミノ基もしくはアリールアミノ基であり、特に好ましくは、アリールアミノ基である。
【0053】
R8〜R10で各々表されるアシルアミノ基としては、アルキル基、アリール基もしくはヘテロアリール基で置換されたアシルアミノ基が好ましい。
【0054】
R8〜R10で各々表されるアリールオキシ基としては、無置換もしくはアルキル基、ハロゲン原子、またはアルキニル基で置換されたアリールオキシ基が好ましい。例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、1−ナフトキシ基、4−n−プロピルフェノキシ基、2−n−ブチルフェノキシ基、3−n−ブチルフェノキシ基、4−n−ブチルフェノキシ基、2−t−ブチルフェノキシ基、3−t−ブチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−n−ペンチルフェノキシ基、4−n−ペンチルフェノキシ基、4−アミルペンチルフェノキシ基、4−ヘキシルフェノキシ基、4−ヘプチルフェノキシ基、4−オクチルフェノキシ基、4−トリフルオロメチルフェノキシ基、3−トリフルオロメチルフェノキシ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェノキシ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェノキシ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェノキシ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェノキシ基が挙げられる。
【0055】
以下に、前記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
【化18】
【0057】
【化19】
【0058】
【化20】
【0059】
以下に、前記一般式(a)で表される置換基を有するアゾ色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
【化21】
【0061】
以下に、前記一般式(a)で表される置換基を有するメロシアニン色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0062】
【化22】
【0063】
本発明に用いられる色素は、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)、「総説合成染料」(堀口博著、三共出版、1968年)およびこれらに引用されている文献に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0064】
本発明の液晶組成物は、2種以上の色素を含有し、少なくとも一種が前記一般式(a)で表される置換基を有する化合物(以下、「本発明の化合物」という場合がある)であることを特徴とする。本発明の化合物はホスト液晶に対する溶解度が高く、かつ液晶組成物のオーダーパラメーターの向上に寄与する。特に、TFT駆動に適しているフッ素系ホスト液晶に対する溶解度が高いという特徴を有する。また、ゲストホスト型液晶表示素子の2色性色素とし機能させた場合に、表示コントラストの向上に寄与する。
【0065】
本発明の液晶組成物は、1種以上のイエロー色素、1種以上のマゼンタ色素および1種以上のシアン色素を含有するのが好ましく、ニュートラルな黒色となる態様が好ましい。フルカラー化を行う際には、赤(R)、緑(G)、青(B)を混合する加法混色と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)を重ね合わせる減法混色とがあるが、本発明では、減法混色により黒色となる態様が好ましい。その詳細については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に記載がある。通常、イエロー色素は、430〜490nmの範囲に、マゼンタ色素は、500〜580nmの範囲に、シアン色素は600〜700nmの範囲に、その極大吸収波長が存在する。色素に含まれる置換基の種類および置換位置等によって最大吸収波長がシフトし、色相も変化するが、前記一般式(1)で表されるアントラキノン化合物はイエロー色素としての例が多く、前記一般式(2)で表されるアントラキノン化合物はマゼンタ色素としての例が多く、前記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物はシアン色素としての例が多い。
【0066】
本発明においては、C、MおよびY色素のうち少なくとも1種が前記一般式(a)で表される置換基を有する色素(好ましくは前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるアントラキノン化合物)であればよく、前記一般式(a)で表される置換基を有しない色素を含有していてもよい。本発明の好ましい態様は、C、MおよびY色素として、各々1種以上の前記一般式(a)で表される置換基を有する色素(好ましくは前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されるアントラキノン化合物)を含有する液晶組成物である。特に好ましい態様は、イエロー色素として前記一般式(1)、マゼンタ色素として前記一般式(2)、およびシアン色素として前記一般式(3)で表されるアントラキノン化合物を、各々少なくとも1種含有する液晶組成物である。
【0067】
本発明の液晶組成物に使用可能なホスト液晶は、本発明の化合物と共存しうる(その他の色素も含有する場合は該色素とも共存しうる)ものであれば特に制限はないが、例えば、ネマチック相あるいはスメクチック相を示す液晶化合物が利用できる。その具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁および第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。TFT駆動に適したフッ素置換されたホスト液晶を使用することもできる。
【0068】
本発明の液晶組成物には、ホスト液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば、液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、カイラル化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。そのような添加剤は、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。
【0069】
本発明の液晶組成物において、ホスト液晶および前記本発明の化合物の含有量については制限はないが、本発明の化合物の含有量はホスト液晶の含有量に対して0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜6質量%であることが特に好ましい。C、MおよびY色素を各々1種以上含有する黒色表示が可能な液晶組成物を調製する場合は、各々の色素の含有量が前記範囲であるのが好ましい。
【0070】
本発明の液晶組成物は、ホスト液晶へ2種以上の色素(少なくとも1種の本発明の化合物を含む)を溶解することによって調製することができる。溶解は、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用して行うことができる。
【0071】
本発明の液晶素子は、本発明の液晶組成物を含有する液晶層を備えた液晶素子である。本発明の液晶素子は、例えば、一対の電極基板間と、一対の電極基板に挟持される本発明の液晶組成物を含有する液晶層とから構成することができる。前記電極基板は、通常ガラスあるいはプラスチックからなる基板上に、電極層を形成したものを用いることができる。プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。基板については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第218〜231頁に記載のものを用いることができる。基板上に形成される電極層は、好ましくは透明電極層である。例えば、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ等から形成することができる。透明電極については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものが用いられる。
【0072】
前記基板が液晶層と接する表面には、配向処理を施した層(配向膜)を形成することが好ましい。前記配向処理としては、例えば、4級アンモニウム塩を塗布し配向させる方法、ポリイミドを塗布しラビング処理により配向する方法、SiOxを斜め方向から蒸着して配向する方法、さらには、光異性化を利用した光照射による配向方法などが挙げられる。配向膜については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第240〜256頁に記載のものが用いられる。
【0073】
本発明の液晶素子は、例えば、一対の基板をスペーサーなどを介して、1〜50μm間隔で対向させ、基板間に形成された空間に本発明の液晶組成物を注入することにより作製することができる。前記スペーサーについては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。
【0074】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載され、本発明の液晶素子の駆動方法として利用できる。
【0075】
本発明の液晶素子は、液晶ディスプレイに利用することができる。特にその方式については制限されないが、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第309頁に記載のゲストホスト方式に記載されている▲1▼ホモジニアス配向、▲2▼ホメオトロピック配向、White−Taylor型(相転移型)として▲3▼フォーカルコニック配向および▲4▼ホメオトロピック配向、▲5▼Super Twisted Nematic(STN)方式との組合せ、▲6▼強誘電性液晶(FLC)との組合せ、また、「反射型カラーLCD総合技術」(内田龍男監修、シーエムシー社、1999年)の第2−1章(GHモード反射型カラーLCD)、第15〜16頁に記載されている、▲1▼Heilmeier型GHモード、▲2▼1/4波長板型GHモード、▲3▼2層型GHモード、▲4▼相転移型GHモード、▲5▼高分子分散液晶(PDLC)型GHモードなどが挙げられる。
【0076】
さらに、本発明の液晶素子は特開平10−67990号、同10−239702号、同10−133226号、同10−339881号、同11−52411号、同11−64880号、特開2000−221538号などの各公報に記載されている積層型GHモード、特開平11−24090号公報などに記載されているマイクロカプセルを利用したGHモードの液晶ディスプレイに用いることができる。さらに、特開平6−235931号、同6−235940号、同6−265859号、同7−56174号、同9−146124号、同9−197388号、同10−23346号、同10−31207号、同10−31216号、同10−31231号、同10−31232号、同10−31233号、同10−31234号、同10−82986号、同10−90674号、同10−111513号、同10−111523号、同10−123509号、同10−123510号、同10−206851号、同10−253993号、同10−268300号、同11−149252号、特開2000−2874号などの各公報に記載されている反射型液晶ディスプレイに用いることができる。また、特開平5−61025号、同5−265053号、同6−3691号、同6−23061号、同5−203940号、同6−242423号、同6−289376号、同8−278490号、同9−813174号などの各公報に記載されている高分子分散液晶型GHモードに用いることができる。
【0077】
その他、本発明の液晶素子は、空間変調素子、光または熱書き込み型液晶ディスプレイなどにも適用することができる。
【0078】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0079】
[実施例1]
(1) 液晶組成物の調製
表1に示した化合物(本発明の化合物および従来の化合物)の各々2mgを混合した後、市販のフッ素系液晶(商品名「ZLI−5081」、E. Merck社製) 100mgと混合し、80℃に加熱撹拌し、液晶組成物を各々調製した。これらの資料を室温まで冷却した後、液晶素子の作製にそれぞれ用いた。
【0080】
【表1】
【0081】
【化23】
【0082】
(2) 液晶素子の作製
上記で得られた液晶組成物の各々を、市販の液晶セル用基板に注入し、液晶素子を各々作製した。用いた液晶セル用基板は、E.H.C.社製のもので、ITO透明電極層、およびポリイミド配向膜(ラビング処理によりパラレル配向処理付き)が形成されたガラス板(厚さ0.7mm)であり、セルギャップ8μmで、エポキシ樹脂シール付きのものであった。
【0083】
(3) オーダーパラメーターの測定
作製した各々の液晶素子に、ラビング方向と平行な偏光および垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A‖およびA⊥)をUV3100(島津製作所製、可視吸収スペクトル計)にて測定した。特定の吸収波長におけるA‖およびA⊥から、オーダーパラメーターSを下式1に従いそれぞれについて求めた。求めたオーダーパラメーターSを、測定した吸収波長とともに表2に示す。
式1
S = (A‖−A⊥)/(A‖+2・A⊥)
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示した結果より、前記一般式(a)で表される置換基を有する本発明の化合物を含む液晶組成物は、可視域全体にわたりオーダーパラメーターが高いことがわかる。すなわち、ニュートラルな黒色表示素子として有用であることがわかる。
【0086】
[実施例2]
(1)液晶組成物の調製
下記表3に示す化合物(本発明の化合物および従来の化合物)の各々5mgを混合した後、市販のフッ素系液晶(商品名「ZLI−5081」、E、Merck社製)100mgと混合し、80℃に加熱撹拌し、その後、室温まで冷却して、不溶の化合物をろ別し、液晶組成物を各々調製した。
【0087】
【表3】
【0088】
(2)液晶素子の作製
実施例1と同一の手順により液晶素子を作製した。
(3)吸収スペクトルの測定
作製した各々の液晶素子に、ラビング方向と平行な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトルA||をUV3100にて測定した。測定した吸収波長と、吸光度を下記表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
表4に示した結果により、本発明の化合物を含む液晶組成物は、高い吸光度を示すことがわかる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、可視域全体にわたり高いオーダーパラメーターを与え、表示素子に利用した場合に表示コントラストの向上に寄与し得る液晶組成物および液晶素子を提供することができる。
Claims (5)
- シアン、マゼンタおよびイエロー色素として、各々1種以上の下記一般式(a)で表される置換基を有するアントラキノン色素を含有することを特徴とする液晶組成物。
一般式(a)
−(Het)m−{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}n−C1 (式中、Hetは硫黄原子または酸素原子を表し、B1およびB2は各々2価のアリール基、ヘテロアリール基または環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはアシルオキシ基を表す。mは0または1を表し、p、qおよびrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。p、qおよびrが各々2以上の時、2以上のB1、Q1およびB2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B1)p−(Q1)q−(B2)r}は同一でも異なっていてもよい。) - 前記一般式(a)で表される置換基を有するアントラキノン色素が、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される色素から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
一般式(1)
一般式(2)
一般式(3)
- 1種以上の前記一般式(1)で表される化合物と、1種以上の前記一般式(2)で表される化合物と、1種以上の前記一般式(3)で表される化合物とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶組成物。
- 前記一般式(a)中、m=1、p=2、q=0、r=1且つn=1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物からなる液晶層を少なくとも1つ以上有することを特徴とする液晶素子。
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