JP4036219B2 - 自動車のエンジンフード構造 - Google Patents

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Description

本発明は自動車のエンジンフード、特にセミボンネットタイプ車に用いられる横幅に対して前後長の短いエンジンフード構造に関する。
従来、自動車のエンジンフードは、衝突時に歩行者を保護する観点から、衝突時に車両側へ倒れ込んだ歩行者の頭部や肩がエンジンフードにその上方から衝突したときにエンジンフードを変形させて衝撃を吸収させる構造が採られている。例えば下記特許文献1に記載されたように、乗用車では、フードアウタ(アウタ部材)とフードインナ(インナ部材)とで構成されたエンジンフードにおいて、上記フードインナには、その外周部(外周骨)で囲まれた内側に、前後方向に延びる複数の切欠きと複数の縦骨格部(骨格形成部)が交互に形成されている。これによれば上からの衝突荷重により縦骨格部が容易に変形して衝撃吸収性能が発揮される。そして縦骨格部と上記フードアウタとで構成される断面形状を前後方向に変化させており、これにより部分的に剛性を変化させて衝撃吸収性能の調整が容易で全体的に均一な衝撃吸収性能が得られるようにしている。
特開2004−217008号公報
ところで、セミボンネットタイプの車両のエンジンフードでは、前後長が短いから、特許文献1のように、フードインナの外周部の内側に互いに分離された複数の縦骨格部を設けて、衝突荷重により縦骨格部を変形させて衝撃を吸収させようとしても、縦骨格部が短いために剛性が大きく、変形しにくいので、エンジンフードが縦長の乗用車のような衝撃吸収作用は発揮されない。
そこで図5に示すように、従来の代表的なセミボンネットタイプ車用のエンジンフード1Aでは、フードアウタ2の裏面に設置されたフードインナ3Aに、外周部37の内側の骨格部として、左右両側に前後方向に対して斜めに延びる複数の縦骨部38a,38bを交差状に設けるとともに、中央部に狭幅の縦骨部39が前後方向に複数設けられている。縦骨部38a,38bは斜めにして全長を長くとって剛性を低くし、縦骨部39は狭幅として剛性を低くして衝突荷重により変形容易にしている。尚、フードインナ3Aは、外周部37およびその内側の各縦骨部38a,38b,39が略断面逆ハット形で、両縁フランジをフードアウタ2裏面に接着剤(図略)により接合して閉断面を構成している。
しかしながら従来のエンジンフード1Aでは、骨格部38a,38bの交差部では衝突荷重に対する剛性が高く変形しにくいので骨格部38a,38bの一般部に比べて衝撃吸収性能が低い。また、図6に示すように、衝突荷重が外周部37の内周縁付近に作用した場合(矢印F2)には、外周部37の底壁371の内周縁から起立する縦壁状の側面部372は荷重の作用方向の剛性が大きく、かつ各縦骨部38a,38b,39が支えとなっているから側面部372および底壁371はほとんど撓み変形せず、側面部372の上端が潰れ変形するものの、変形ストロークが小さく、変形範囲も衝突荷重F2が作用した周辺の局部的なものとなって衝撃吸収性能が十分に発揮されない。特にエンジンフード1Aの前端部ではこの傾向が強い。
このように従来のセミボンネットタイプ車用のエンジンフードでは、部分ごとに衝撃吸収性能にバラツキがあったり、変形範囲が局部的になるなど、フード全体で効率のよい衝撃吸収性能が発揮されないといった問題点があった。そこで本発明は、自動車のエンジンフード、特にセミボンネットタイプ車用のエンジンフードにおいて、広い範囲を変形させることにより効率のよい衝撃吸収がなされ得るエンジンフード構造を提供することを課題としてなされたものである。
本発明は、車幅方向の長さに対して前後方向の長さが短い自動車のエンジンフードであって、外板をなすフードアウタの裏面にフードインナを設けた自動車のエンジンフード構造において、上記フードインナは上記フードアウタの外周に沿う環状で、上記フードアウタの前端に沿う前部横枠部と、上記フードアウタの後端に沿う後部横枠部との間に車幅方向に延びる空間部を有する形状に形成し、
上記前部横枠部および上記後部横枠部は、底壁の外周縁から起立して上端が上記フードアウタの外周縁に結合される外周側壁と、上記底壁の内周縁から起立して上端が上記フードアウタの裏面に接合される内周側壁を備え、上記前部横枠部の内周側壁の位置をエンジンフードの前後方向ほぼ中央部に設定して、上記後部横枠部の内周側壁と前後幅の狭い上記空間部を介してほぼ平行に対向せしめ、
上記両横枠部の内周側壁を、上記底壁の内周縁から起立する下段縦壁部と、該下段縦壁部の上端から略水平方向に屈曲する水平部と、該水平部から起立する上段縦壁部とからなる階段状に形成する(請求項1)。
各横枠部の内周側壁を、上下段の縦壁部と中間の水平部とで階段状に形成したので、歩行者が上方からエンジンフードに衝突したとき、衝突荷重により内周側壁の各屈曲部の屈曲角が容易に変形して内周側壁が上下方向に潰れ変形し、衝突荷重を吸収するので衝撃が緩和される。この場合、従来構造のように縦骨部を変形させるのではなく、長い横枠部を変形させるようにしたので変形範囲を広くでき、効率良く衝撃を緩和することができる。かつ、歩行者が衝突する確率の高いエンジンフードの前後方向ほぼ中央部に前部横枠部の内周縁を設けたので、前部横枠部の内周側壁により衝撃を吸収する。
上記上段縦壁部の上端に、該上端から略水平方向に屈曲し、上記フードアウタの裏面に接着剤により接合されるフランジを形成する(請求項2)。フランジによりフードアウタに作用する衝突荷重を内周側壁に作用させやすい。
上記底壁と、上記下段縦壁部との間の角度を直角ないし鈍角とする(請求項3)。上方から作用する衝突荷重により容易に内周側壁が変形する。
上記両横枠部の間に前後方向に複数の細い縦骨部を架設する(請求項4)。細縦骨部により上方から作用する衝突荷重により前部横枠部と後部横枠部との間隙が広がることが抑制され、横枠部の内周側壁の変形性がよい。
本発明によれば、上方より作用する衝突荷重によりフード幅方向に延びる横枠部を変形させてフード上の広い範囲を変形させることにより効率のよい衝撃吸収がなされるエンジンフード構造を提供することができる。
図1ないし図4に基づいて本発明をセミボンネットタイプ車用のエンジンフードに適用した実施形態を説明する。図1は本発明のエンジンフード1の裏面図を示し、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1のIII −III 線に沿うエンジンフード1の片側半部の断面図、図4は図1のIV−IV線に沿う断面図である。図1、図2に示すように、エンジンフード1 は車幅方向の長さが前後方向の長さよりも長く、幅方向中央部が前方へ張り出す若干弓なりに湾曲する長方形状で、外板を構成するほぼ平板状のフードアウタ2と、フードアウタ2の裏面に設けられたフードインナ3とで構成してある。
フードインナ3は、フードアウタ2の外周部の裏面に沿う環状をなし、フードアウタ2の前端に沿うように横方向に延びる前部横枠部3aと、フードアウタ2の後端に沿って横方向に延びる後部横枠部3bとを備え、両横枠部3a,3bの左右両端は前部横枠部3aの両端が後方に屈曲して後部横枠部3bの両端と湾曲状に一連に繋がっている。そして前部横枠部3aと後部横枠部3bとの間には前後幅が狭くフード幅方向に沿って延びる横長の空間部30が形成されている。空間部30内の左右両側位置には前部横枠部3aと後部横枠部3bとを前後方向に架けわたした左右一対の細い縦骨部35,35が形成してある。フードインナ3は前後の横枠部3a,3b、および左右の縦骨部35,35が一体にプレス成形された金属板で構成してある。
フードインナ3の前部横枠部3aは、弓なりに湾曲する前側の外周縁に対して内周縁が車幅方向に沿うほぼ直線状をなし、車幅方向中央部の前後幅が広幅で、かつ内周縁はフード前後方向のほぼ中央位置に設けてある。後部横枠部3bは、弓なりに湾曲する後側の外周縁に対して内周縁が前部横枠部3aの内周縁と平行な車幅方向に直線状をなし、車幅方向左右両側の前後幅が広幅に形成してある。
フードインナ3の前部横枠部3aは、底壁31と、底壁31の外周縁から上方へ屈曲する低い起立状の外周側壁32と、底壁31の内周縁から上方へ屈曲する起立状の内周側壁33とで浅い断面容器状をなす。
前部横枠部3aは、外周側壁32の上縁の結合フランジを、フードアウタ2の外周(前縁)裏面に重ね合わせるとともに、フードアウタ2の外周縁で上記結合フランジを被覆するようにヘミング加工して結合してある。前部横枠部3aは、前下がり傾斜姿勢をなすフードアウタ2に対して底壁31がほぼ水平姿勢をなす。
前部横枠部3aの内周側壁33は、底壁31の内周縁から鈍角状に屈曲して上方かつ斜め後方へ向かって起立する下段縦壁部331と、下段縦壁部331の上縁から後方へ向けて屈曲してフードアウタ2とほぼ平行面をなす水平部332と、水平部332の内周縁から上方へほぼ直角に屈曲する上段縦壁部333、および上段縦壁部333の上縁から後方へ向けて屈曲してフードアウタ2とほぼ平行面をなすフランジ334を備えた階段状に形成してある。
内周側壁33の下段縦壁部331と底壁31との間の屈曲角度は110度程度に設定してある。水平部332は内周側壁33全体の高さ方向のほぼ中央位置に形成してある。
前部横枠部3aの内周側壁33は、上縁のフランジ334がフードアウタ2の裏面の前後方向のほぼ中央位置、具体的にはフードアウタ2の前縁からフード前後長の約5分の2ないし2分の1の位置に図略のマスチックシーラ等により接着してある。
尚、前部横枠部3aの左右両側の後部横枠部3bとの連結部も同様に、外周側壁32の上縁の結合フランジをフードアウタ2の外周(側縁)裏面に結合するとともに、内周側壁33の上縁のフランジ334をフードアウタ2の裏面のマスチックシーラにより接着してある。
後部横枠部3bは前部横枠部3aと同様に、底壁31と、底壁31の外周縁から屈曲して上方へ起立する外周側壁32と、底壁31の内周縁から屈曲して上方へ起立するの内周側壁33とで浅い断面容器状をなす。後部横枠部3bの底壁31はフードアウタ2とほぼ平行面をなし、外周壁32と内周壁33との高さ寸法はほぼ同じにしてある。
後部横枠部3bの内周側壁33は、前部横枠部3aのそれと同様に、下段縦壁部331、水平部332、上段縦壁部333およびフランジ334を備えた階段状に形成してある。後部横枠部3bは、外周側壁32の上縁の結合フランジを、フードアウタ2の外周(後縁)裏面に重合結合して、フードアウタ2の外周縁でヘミング加工するとともに、内周側壁33の上縁のフランジ334をフードアウタ2の裏面に図略のマスチックシーラにより接着してある。
フードインナ3の縦骨部35,35は、図4に示すように、断面逆ハット形に形成してあり、幅が約30mmで横枠部3a,3bよりも遙に狭くしてある。縦骨部35,35は、底壁351が横枠部3a,3bの水平部332と同一面状に形成してあり、左右のフランジ部352が横枠部3a,3bのフランジ334と同一面状に形成してある。縦骨部35,35は左右のフランジ部352がフードアウタ2の裏面にマスチックシーラにより接着してある。
歩行者がエンジンフード1に衝突してフードアウタ2の上に衝突荷重F1がかかると、フードアウタ2を介してフードインナ3の前部および後部横枠部3a,3bの各内周側壁33に荷重が作用し、各内周側壁33の上段縦壁部333と水平部332との間の屈曲部および水平部332と下段縦壁部331との間の屈曲部が挫屈変形し、下段縦壁部331と底壁31との間の屈曲部が開き変形して内周側壁33は全体が下方向へ潰れ状に変形し、フードアウタ2が衝突点を中心に広い範囲で撓み変形して衝撃を吸収する。更に衝突荷重が大きいときは、各横枠部3a,3bの底壁31が、その長さ方向に沿って撓んで大きな衝撃を効率よく吸収する。
本実施形態のエンジンフード1は、従来の短い縦方向の骨格部を変形させて衝撃を緩和させる構造に比べて、横方向に長い横枠部3a,3bを広い範囲で変形させるようにしたので、図3に示すようにエンジンフード1が横方向に広い範囲で変形して効率よく衝撃を吸収し、歩行者のダメージを軽減できる。
尚、前部および後部横枠部3a,3bの間に架設した縦骨部35,35は、細くして剛性を低くしたうえ数を少なくしたので、これらが強固に突っ張ってフードアウタ2や前部および後部横枠部3a,3bの変形を妨げるということがない。また縦骨部35,35は、エンジンフード1に過大な衝突荷重が作用した場合には、ある程度の支えとなってエンジンフード1の過剰な変形を防ぎ、変形したエンジンフード1がエンジンルーム内のエンジンや他の部品類に突き当たって底付きすることを防止する。
前部横枠部3aの内周側壁33をエンジンフード1の前後方向のほぼ中央位置に設けたので、後部横枠部3bの内周側壁33と併せてフードアウタ2の張りを充分に確保できるうえ、エンジンフード1の前後方向の中間位置は衝突荷重が入力しやすく、衝撃緩和に都合がよい。また上述の実施形態では各横枠部3a,3bの底壁31と内周側壁33の下段縦壁部331との間の屈曲部の屈曲角を鈍角状としたが、これに限らずほぼ直角でもよく、上記屈曲部の屈曲角を直角ないし鈍角にすることで、衝突荷重により屈曲部が容易に開き変形する。
本発明を適用したエンジンフードの裏面図である。 図1のII−II線に沿う断面図である。 図1のIII −III 線に沿う位置でエンジンフードの片側半部の衝突による撓み変形状態を示す断面図である。 図1のIV−IV線に沿う断面図である。 従来のエンジンフードの裏面図である。 図5のVI−VI線に沿う断面図である。
符号の説明
1 エンジンフード
2 フードアウタ
3 フードインナ
3a 前部横枠部
3b 後部横枠部
30 空間部
31 底壁
32 外周側壁
33 内周側壁
331 下段縦壁部
332 水平部
333 上段縦壁部
334 フランジ
35 縦骨部

Claims (4)

  1. 車幅方向の長さに対して前後方向の長さが短い自動車のエンジンフードであって、外板をなすフードアウタの裏面にフードインナを設けた自動車のエンジンフード構造において、
    上記フードインナは上記フードアウタの外周に沿う環状で、上記フードアウタの前端に沿う前部横枠部と、上記フードアウタの後端に沿う後部横枠部との間に車幅方向に延びる空間部を有する形状に形成し、
    上記前部横枠部および上記後部横枠部は、底壁の外周縁から起立して上端が上記フードアウタの外周縁に結合される外周側壁と、上記底壁の内周縁から起立して上端が上記フードアウタの裏面に接合される内周側壁を備え、
    上記前部横枠部の内周側壁の位置をエンジンフードの前後方向ほぼ中央部に設定して、上記後部横枠部の内周側壁と前後幅の狭い上記空間部を介してほぼ平行に対向せしめ、
    上記両横枠部の内周側壁を、上記底壁の内周縁から起立する下段縦壁部と、該下段縦壁部の上端から略水平方向に屈曲する水平部と、該水平部から起立する上段縦壁部とからなる階段状に形成したことを特徴とする自動車のエンジンフード構造。
  2. 上記上段縦壁部の上端に、該上端から略水平方向に屈曲し、上記フードアウタの裏面に接着剤により接合されるフランジを形成した請求項1に記載の自動車のエンジンフード構造。
  3. 上記底壁と、上記下段縦壁部との間の角度を直角ないし鈍角とした請求項1または2に記載の自動車のエンジンフード構造。
  4. 上記両横枠部の間に前後方向に複数の細い縦骨部を架設した請求項1ないし3のいずれかに記載の自動車のエンジンフード構造。
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