JP5881309B2 - 歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル - Google Patents

歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル Download PDF

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Description

本発明は、高い剛性を備え、歩行者と自動車の衝突時に、歩行者、特に、歩行者の頭部を保護する性能、即ち、歩行者保護性に優れ、アルミニウム合金からなるアウターパネル及びインナーパネルが積層してなる自動車用フードパネルに関する。
近年、環境問題を背景に、自動車のフードパネルに、軽量なアルミニウム合金板を採用した車両が増えつつある。一方、歩行者と自動車の衝突事故で、歩行者頭部を保護することが重要視され、歩行者保護性に優れるフードパネルの構造が検討されている。
通常フードパネルは、自動車の外側に位置するアウターパネルと、エンジンルーム側に位置するインナーパネルで構成されている。歩行者頭部がフードパネルに衝突した際には、まず、アウターパネルが変形し、その後、インナーパネルが変形して、衝突エネルギーが吸収される。しかし、アルミニウム合金は、鋼板に比べ、軽量で、強度が低いので、アルミニウム合金からなるフードパネルは、フードパネルの慣性移動によるエネルギー吸収能が小さい。
そのため、歩行者頭部は、エンジンルーム内に深く進入し、エンジン部品などの剛性部材に衝突して、致命的な傷害を受け易い。アルミニウム合金を用いたフードパネルは、歩行者保護性が大きな課題となる。
歩行者頭部を確実に保護するには、インナーパネルと剛性部材の干渉を回避する必要がある。その対策の一つは、フードパネルとエンジン部品などの剛性部材との間隔を大きく拡げることである。しかし、この間隔の拡大は、エンジンルーム周辺の設計自由度を大幅に損ねてしまうので、歩行者頭部の変位量を抑制する対策が検討されている。
そこで、本発明者らは、フードパネルが剛性部材と干渉しても、歩行者頭部が、直接、剛性部材からの衝撃を受けないように、インナーパネルにリブのように凹部を形成し、アウターパネルと一体としたときに、その凹凸を利用した構造上の効果を奏するフードパネルを提案している(特許文献1、2及び3)。
特許文献1、2及び3で開示されているフードパネルにおいて、エンジンルーム側から見てインナーパネルの凸部は、アウターパネルと閉断面空間を形成することで、高い曲げ剛性を有する。そのため、歩行者頭部のエンジンルーム内への進入を抑制しても、ストローク量を低減することができる。
また、インナーパネルがその直下の剛性部材などと衝突しても、閉断面空間が変形することで衝突時の衝撃を緩和することができる。
また、アウターパネルに近接するインナーパネルの凹部は、図1で示すように、リブのようにインナーパネル全体にわたって井桁状や多角形状に配置されている。
したがって、歩行者頭部衝突直後にアウターパネルと接触し、インナーパネルの凹部を伝って、フードパネル全体に衝撃を分散することができる。そのため、衝突初期の段階で、歩行者頭部に大きな反力を与えることができ、歩行者頭部の減速に寄与し、衝撃を弱めることができる。
また、フードパネルの張り剛性、すなわち、フードパネルに垂直方向の局所的な荷重を、フードパネルにかけたとき(例えば人がフードパネルを手で押えたときなど)に、その荷重とフードパネルの垂直方向の変位とで決まる剛性(張り剛性)を強くする役割がある。
しかし、アウターパネルに近接するインナーパネルの凹部は曲げ剛性が弱く、特に、凹部同士の交差箇所は、剛性が極めて弱くなる。そのため、フードパネルとして要求される例えばねじり剛性などが、大きく損なわれるおそれがある。また、歩行者頭部の衝突位置によっては、インナーパネルの凹部の交差箇所を起点に変形し、フードパネルが折れ曲がってしまうこともある。その場合、インナーパネルによる支持作用が得られず、歩行者頭部が、エンジンルーム内に深く進入し、エンジンルーム内の剛性部材と衝突するおそれがある。
したがって、特許文献1、2のようなインナーパネルにおいては凹部を起点とした局所変形によっては、歩行者保護性能及び、ねじり剛性を大きく損ねるおそれがある。
一方、特許文献3のような構造では、優れた歩行者保護性を発揮できるものの、高度な張り剛性も同時に要求される場合において、凸部直上に加重が加わった場合等、荷重点によっては、その張り剛性の要求に充分な余裕をもって達成できないおそれがある。
特開2008−30732号公報 特開2008−168844号公報 特願2010−073083号
歩行者保護の観点から、フードパネルが変形しても、エンジンルーム内の剛性部材と干渉しないように、フードパネルと剛性部材の間隔を大きく確保する必要がある。しかし、フードパネルの材料として、成形性の劣る材料や、軽量な材料(例えば、アルミニウム合金)を使用すれば、歩行者頭部衝突時のフードパネルの変位量が増大し、フードパネルと剛性部材の間隔を、より大きく確保しなければならず、エンジンルーム周辺の設計自由度を大幅に損ねてしまう。
また、インナーパネルにリブ状の凹凸加工をし、その凹凸を利用した構造が提案されているが、フードパネルのねじり剛性を損ない、局所的衝撃に弱いという問題がある。
ここで、歩行者保護性能について説明する。歩行者保護性能は、歩行者頭部を模擬したインパクターを実際の車両に衝突させ、頭部に発生する加速度(反力に相当)から下記式(1)で計算される頭部障害基準値(Head Injury Criteria、以下「HIC値」という。)によって評価される(参照:独立行政法人 自動車事故対策機構)。
現在の基準では、図9に示すように背の低い子供頭部はフードパネルの前方に、背の高い大人頭部はフードパネル後方に衝突する。地上から車両の外形に沿った距離WAD(Wrap Around Distance)を指標にして、衝突場所をきめている。また、衝突荷重も、国内法規では子供頭部3.5kg、大人頭部は4.5kgに設定されている。通常の歩行者衝突を考えたとき、WAD1700mm以上の領域では、大人の頭部インパクターの衝撃が主体となり、WAD1700mm未満の領域では、子供の頭部インパクターの衝撃が主体となる。これら試験条件において試験領域の2/3以上の部分でのHIC値が1000以下であり、それ以外の試験領域でもHIC値が2000以下であることが求められている。つまり、異なる衝突条件に対し、適正なフードパネル構造が求められている。
しかし、現在のフードパネルは、全範囲で同じ衝突条件であることを前提としていることから、その剛性が部分的に過剰または過少になり、適正な構造とはなっていなかった。
本発明は、このような問題に鑑み、1枚のインナーパネルにおいて、衝突部位に応じて適正な衝突条件に対応し、より高い剛性を確保しつつ、凹部から生じる局所的変形も抑制することを課題とする。これを解決することで、一定の剛性を維持しながら、歩行者頭部が衝突しても、フードパネルの変位量が小さくなり、且つ、エンジンルーム内の剛性部材に衝突した場合でも衝撃吸収性に優れた、バランスのよい自動車用フードパネルを提供すること目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、アルミニウム合金からなるインナーパネルにリブ状の凹部を加工し、その一部の凹部の深さを他の凹部の深さより浅くすることにより、捩れ剛性にも、局所的衝撃にも強いバランスのよいフードパネルが得られることを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、アルミニウム合金からなりアウターパネル及びインナーパネルが積層してなる自動車用フードパネルにおいて、インナーパネルに、断面形状が略台形であるエンジンルーム側から見て凸部と、同様に断面形状が略台形であるアウターパネルに近接して対向するリブ状の凹部を配置し、凹部が凸部の四方を囲み、さらに凸部がフードパネルの長辺方向に延伸する構造を有するインナーパネルにおいて、凹部の深さを調整することで歩行者頭部の変位量を抑制でき、剛性も強化する改善手段に関する知見を見いだし、該知見に基づいて、インナーパネルの形状・構造を最適化したものである。
さらに、本発明者らは、インナーパネルの凸部の高さを変えることにより、同一のインナーパネルにおいて異なる衝突条件に対応できることを見出し、本発明を成すに至った。
ここで、インナーパネルの凹部とは、エンジンルーム側から見て、アウターパネル側に近接するようにリブ状に形成された溝状の凹み部である。その配置は特に限定されないが、図3や図4に示すような格子状、井桁状や多角形状に配置される。
インナーパネルの凸部とは、上記凹部に囲まれ、凹部と相対的にエンジンルーム側に近接する一定の面積を有する部分である。その配置は、凹部との関係で決まり、図3や図4のように井桁状や多角形状の内部の領域のように配置される。
凹部、凸部とも、車両進行方向に相当するインナーパネルの短辺、およびその長辺方向の断面形状が略台形となる。本明細書においては、略台形の断面形状のエンジンルーム側を上辺、アウターパネル側を下辺とよぶ。したがって、凹部とは断面形状の下辺に相当する面を、凸部とは断面形状の上辺に相当する面を指す。
凹部の深さとは、当該凹部に隣接する凸部の上辺から凹部の下辺までの長さ(台形の高さに相当)のうち、最も小さい値をいう。凸部の上辺と凹部の下辺は直線とは限らないが、通常、同距離を保った曲線となっている場合が多く、その場合は、その曲線間の距離を高さとすればよい。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)アルミニウム合金からなるアウターパネル及びインナーパネルが積層してなり、車両進行方向に直角方向が長辺となる自動車用フードパネルにおいて、インナーパネルが、エンジンルーム側から見てアウターパネル側に近接する方向にリブ状に配置された凹部と、当該凹部に囲まれ、車両進行方向に直交するインナーパネルの長辺方向の断面形状が略台形となる凸部を複数有し、前記凸部が、インナーパネルの長辺方向に延伸する構造を有し、インナーパネルの長辺方向または短辺方向に2つ以上並んで配置され、当該凸部の間に、インナーパネルの周囲に位置する凹部に比べて深さが浅い凹部を配置することを特徴とする歩行者保護性および剛性に優れた自動車用フードパネル。
(2)インナーパネルの前記深さの浅い凹部とアウターパネル間の距離が、隣接する凸部とアウターパネル間の距離の30%〜70%であることを特徴とする(1)に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
(3)インナーパネルの前記深さの浅い凹部の幅が10〜100mmとすることを特徴とする(1)または(2)に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
(4)インナーパネルの前記深さの浅い凹部の長手方向が、フードパネルの長辺方向に対して20°〜90°に配置することを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
(5)インナーパネルの複数ある前記深さの浅い凹部において、深さが異なる凹部を含むことを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
なお、一部の凹部の深さは同一であることを含むものとする。
(6)インナーパネルの複数ある前記凸部において、同一凸部内にアウターパネルからの距離が異なる面を有する凸部を含むことを特徴とする(1)〜(5)に記載の歩行者保護性に優れた自動車用フードパネル。
(7)インナーパネルの前記凸部において、WAD1700mm未満に相当する範囲における前記凸部の面のアウターパネルからの距離をH1、WAD1700mm以上の範囲に相当する前記凸部の面のアウターパネルからの距離をH2としたとき、H2がH1と同一または大きいことを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の歩行者保護性に優れた自動車用フードパネル。
(8)前記H1が15mm〜35mmであり、前記H2が20mm〜50mmであることを特徴とする(7)に記載の歩行者保護性に優れた自動車用フードパネル。
(9)インナーパネルと剛性部材との距離が60mm以下である部位において、(1)〜(8)の何れか1項に記載される凸部が設けられたことを特徴する歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
本発明によれば、軽量でありながら、フードパネルの張り剛性、ねじり剛性を損なうことなく、歩行者頭部の衝撃によるフードパネルの変位形量を小さくし、更に、エンジンルーム内の剛性部材に衝突しても衝撃吸収性に優れ、歩行者保護性能を著しく高めることができる。その結果、フードパネルのインナーパネルと、エンジン部品などの剛性部材との間隔を縮めることができ、車両のフロント構造の設計自由度を大きくすることができる。例えば、自動車車体におけるアウターパネルの相対的な高さを低くすることができ、意匠創作の自由度が大きくなる。
また、本発明によれば、インナーパネルの材料として、アルミニウム合金に替え、若干、成形性の劣る軽量材料を使用できるので、フードパネルの軽量化と歩行者保護性能の向上の両立も可能となる。
特許文献1、2に基づく、アウターパネルに近接した凹部を有する従来構造(従来例1)を示す図である。(a)は、フードパネルの全体を表示し、(b)は、フードパネルの断面を模式的に示す。 特許文献3に基づく、フードパネル長辺方向に一様な凸部を有する従来構造(従来例2)を示す図である。(a)は、フードパネルの全体を表示し、(b)は、フードパネルの断面を模式的に示す。 本発明のフードパネルを示す図である。(a)は、フードパネルの全体を表示し、(b)は、フードパネルの断面を模式的に示す。 フードパネルのビーム構造(従来例3)を示す図である。 フードパネルの支持点と歩行者頭部(歩行者頭部を模擬したインパクター)の衝突地点を示す図である。 張り剛性検証のため、フードパネルの支持点と加重点を示す図である。 ねじり剛性検証のため、フードパネルの支持点と加重点を示す図である。 本発明による高さ調整した凹部を示す断面概略図である。(a)は従来構造を表示し、(b)は、本発明の凹凸高さを表示する。 歩行者頭部保護性能試験における、地上から車両の該当する地点までの距離WAD(Wrap Around Distance)と衝突条件を示す図である。WAD1700mmを元に、大人、子供の頭部の衝撃位置エリアとその条件が定められている。 一部の凸部内に段差を付けたときのインナーパネルの構造を示す模式図である。 フードパネルの拘束地点と子供頭部、大人頭部の衝突位置を示した図である。 本発明に係る、リブ状の凹部を形成し、それに囲まれる凸部を有し、フード前方と後方で凸部高さが異なるインナーパネルの構造とその略断面図である。 本発明に係るリブ状の凹部を形成し、高さが一定な凸部を有するインナーパネルの構造とその略断面図である。
以下、本発明について図を用いて詳細に説明する。
図1に、特許文献1、2に基づく、アウターパネルに近接する凹部を有する従来のフードパネルを示す。図1(a)に、フードパネルのうちインナーパネルの外観を示す。図1(b)に、図1(a)の中央の点線部を側部から見たフードパネルの断面を模式的に示す。
図2に、特許文献3に基づく、エンジンルームから見て凸部を一様に有する、従来のフードパネルを示す。図2(a)に、フードパネルのうちインナーパネルの全体を示し、図2(b)に、図1(a)の中央の点線部を側部から見たフードパネルの断面を模式的に示す。
図3に、本発明のフードパネルを示す。図1、2と同様に、図3(a)に、インナーパネルの全体を示し、図3(b)に、フードパネルの断面を模式的に示す。
図1(a)に示す従来のフードパネル1は、平面視略台形状で、インナーパネル1の中央部には、車両進行方向に直角方向の長辺方向(フードパネルの長辺方向)に延伸する2つの、凸部Aと凸部Bと、その周囲をアウターパネルに近接して対向する凹部が配置される。凸部Aと凸部Bの間には、アウターパネルに近接する凹部bが配置されている。凹部aは図8(a)の概略図に示すようにアウターパネルに近接する。
図2(a)に示す従来のフードパネル1は、同様に、エンジンルーム側から見て平面視略台形状で、インナーパネル1の中央部には、フードパネルの長辺方向に延伸する凸部2と、アウターパネルに近接して対向する凹部3と、凹部3が、凸部2の周囲を囲む部分があることを特徴とする。凸部2がフードパネルの長辺方向で、中央に凹部(図1(a)における凹部b)がないことが特徴である。
図3(a)に示す本発明によるフードパネル1は、エンジンルーム側から見て平面視略台形状で、インナーパネル1の中央部には、フードパネルの長辺方向に延伸する2つの、凸部Aと凸部Bと、その周囲をアウターパネルに近接して対向する凹部bが配置される。凸部Aと凸部Bの間には、凹部bより浅い深さ(凹部と凸部の境界部から凹部の頂部までの距離)を有する凹部aが配置されている。つまり、凹部aは、図8(b)に示すように、凹部bに比べアウターパネルと近接しない。ここで、インナーパネルがアウターパネルに近接するとは、その間隔が5mm以下の状態をいう。通常のフードパネルは、アウターパネルとインナーパネル間をマスチック(接着剤)などで接合するため、アウターパネルとインナーパネルが5mm以下に接近させないといけないからである。それに対し、近接していない状態とは、インナーパネルとアウターパネルの間に5mm超の空間を有している状態のことをいう。
つまり、図8に詳細に示すように、アウターパネルから凸部までの高さHに対して、凸部に相当する部分から凹部aの底(下辺)までの深さhが浅く設定されている。また、図3(b)に示すように、凹部の断面は略台形状となっている。図3(b)においては、凹部bが略台形状になっており、凹部aの断面(図の紙面に対して垂直方向の断面)も略台形状となっている。
各構造の剛性及び歩行者保護性能を数値解析によって検証した。凹部aの深さを、凹部bの高さの50%にして評価した。
まず張り剛性について評価した。フードパネルが車両に取り付けられた状態、すなわち、図6に示すように車両後方側はヒンジ、車両前方側はストライカーで固定された状態で、凹部a直上のアウターパネル上に50[N]の荷重を負荷する数値解析を、汎用の動的陽解法の解析コードで行い、荷重点の鉛直方向変位量でフードパネルの張り剛性を評価した。
次にフードパネルのねじり剛性について評価した。図7に示すように、フードパネルが車両に取り付けられた状態、すなわち、車両後方側はヒンジ、車両前方側はストライカーで固定された状態でフードパネルの前方片側に荷重100[N]を負荷した際の数値解析を汎用の動的陽解法の解析コードで行い、荷重点の鉛直方向変位量でフードパネルのねじり剛性を評価した。
最後にフードパネルの歩行者保護性能について評価した。図5に示すように、歩行者頭部保護基準の子供用インパクターを衝突させる試験に相当する数値解析を実施した。凹部a直上に歩行者頭部に相当するものを衝突させた際の数値解析を、汎用の動的陽解法の解析コードで行い、歩行者頭部の最大変位量で歩行者保護性能を評価した。解析結果を表1に示す。
なお、比較例として、図1に示すように、凹部の高さが一様のフードパネルと、凹部凸部のない一様平板によるフードパネルで、大きさ、板厚を同じくしたものを用いて評価した。
評価の結果、従来例1は、張り剛性が最も優れた。これは、荷重点直下のアウターパネルが変形し、インナーパネルの凹部に接触することによって、支持されるためと考えられる。
一方、ねじり剛性の変位量が他構造より劣った。これは、インナーパネルの凹部は曲げ剛性が極めて弱く、凹部を起点に大きく変形が生じたために、ねじり剛性と歩行者保護性能の変位量が本発明例や比較例2に比べて大きく悪化した。
従来例2は、ねじり剛性及び歩行者保護性能の変位量が最も優れた。これは曲げ剛性に優れる凸部を有することで、インナーパネルの変形が抑制され、歩行者頭部衝撃時の変位量が小さく抑えられた。
一方、凸部直上の張り剛性は最も劣った。荷重点からアウターパネルを支持する凹部まで離れているため、アウターパネルが大きくたわんだことによるものと考えられる。
凹部深さを調整した本発明例は、はり剛性、ねじり剛性、変位量ともに、従来例1,2の中間にあたり、均衡のとれた特性であることが確認できた。そこで、図4で示すような、一般的なビーム構造のフードパネル構造を基準に、凹部aの深さを、隣接する凸部頂上面からアウターパネルまでの距離(最大距離)を基準(100%)として変化させ、凹部a直上の張り剛性、及びフードパネルのねじり剛性、歩行者頭部がフード中央に衝突した場合のインナーパネルの変位量への影響を、数値解析によって検証評価した。フード中央で衝突することとしたのは、拘束点から離れ、変位量への影響が最も出易く、あわせて衝
突地点直下の凹部aの影響をよく確認できるためである。
なお、質量を等価にするため、本発明のフードパネルのインナーパネルの板厚は0.8mmとし、従来例3の貫通孔を設けたビーム構造のインナーパネルの板厚は1.0mmとした。
その結果を表2に解析結果を示す。従来例3のビーム構造より優れた状態を「○」、劣った場合は「×」で結果を整理した。
凹部a直上の張り剛性は、相対深さが低くなるほど悪化した。図1(b)に示す実施例1のように相対深さ100%の形状では、アウターパネル直下にインナーパネルが位置するため、インナーパネルの支持を受けて、高い張り剛性が得られる。
一方、剛性が弱い凹部を起点にフードパネルが局所変形するため、ねじり剛性、歩行者保護性能は悪化した。
一般的なビーム構造を基準に、同等以上のねじり剛性を確保しつつ、優れた歩行者保護性能を両立するには、凸部頂上面(断面の上辺に相当)からアウターパネルまでの距離を基準として、凹部の底面(断面の下辺に相当)からアウターパネルまでの距離を30〜70%の範囲とすることが適切であった。より好ましくは、その下限を35%、上限を65%とするとよい。さらに下限を40%、上限を60%とするとなお好ましい。
[凹部の幅]
更に、凹部の相対高さを30%と70%にしたときの凹部の幅の影響を検証した解析結果を表3に示す。
表3から、凹部の幅を拡げて100mmまでは、十分な剛性を備え、歩行者保護性能に優れることが確認された。凹部の幅を10mm未満にすると、成形が極めて困難になることと、衝突時にアウターパネルとの接触面積が小さくなり、インナーパネルの変形速度を十分減速できず、ストローク量の増大、更にはインナーパネルとエンジン部品が干渉するおそれがある。
一方、凹部の幅が100mm超になると、剛性の弱い凹部が拡がることで、ねじり剛性が大幅に悪化するおそれがある。また、歩行者保護性能評価においてもアウターパネルが大きく撓んで、その変位量が大きくなり、歩行者保護性も悪化する。
従って、本発明の凹部の幅は、10〜100mmが好ましい。凹部の幅の下限は30mm、上限は70mmとすると、さらに好ましい。
[凹部の長さ]
凹部の長さは、素材のプレス成形性を考慮すると、凸部の幅に対して2倍以上であることが好ましい。2倍未満では、凸部同士の間隔が狭まり、凸部並びに本発明に規定する凹部の成形が困難になるからである。
[凸部の高さ]
本発明の凸部の高さは、15mm超50mm以下が望ましい。凸部の高さが15mm以下であると、長辺方向の曲げ剛性が不足し、インナーパネルが長辺方向で折れ曲がり、頭部衝突によるインナーパネルの変位量が大きくなり、歩行者保護性が悪化する恐れがある。一方、凸部の高さが50mm超であると、エンジン部品との間隔が狭くなり、インナーパネルとエンジン部品が干渉するおそれがある。また、インナーパネルの成形も極めて難しくなる。
また、歩行者保護性能が極めて厳しい条件、特に、インナーパネルからエンジン部品までの距離、すなわちクリアランスが極めて狭く、剛性部材との衝突が不可避な状況において優れた歩行者保護性能を発揮するには凸部高さを一定とせず、エンジンルーム内の部品形状、WADに合わせて凸部の高さを調整、または図10のように凸部の頂上面内を段状とすることが望ましい。これによって、重量の大きい大人頭部の衝突でも剛体衝突時の衝撃を十分撃吸収できる。
そのため、図10および図12に示すように、WAD1700mm未満の範囲におけるインナーパネルの前記凸部の高さをH1、WAD1700mm以上の範囲における前記凸部の高さをH2としたときH1に対しH2を大きく設定することが望ましい。更に望ましくは、WAD1700mm未満の範囲では、15mm〜35mmとし、WAD1700mm以上の範囲では、20mm〜50mmとすることである。
図10は、インナーパネル内にWAD1700mmラインが有る場合を示している。そのため、WAD1700mmラインより後方(車両進行方向後方)の凸部高さをH2に、WAD1700mmラインより前方(車両進行方向先方)の凸部高さをH1となるように、凸部頂上面に段差を設けている。
[凹部の深さ]
よって凹部の深さは、凸部の高さに合わせて、5mm超35mm以下とすることが望ましい。凹部深さが5mm以下であると、ねじり剛性向上に寄与できない。また35mm超であれば、凸部と凹部ともにインナーパネルの成形が極めて難しくなる。好ましくは、下限を10mm、上限を30mmとするとよい。さらに下限を15mmとするとさらによい。
凹部aは、中央部だけでなく、インナーパネルの前後部に配置された凸部を分断する凹部でもよい。
つまり、図3に示す本発明に係る深さ調整された凹部は、インナーパネルの中央部に設けられているが、インナーパネルの中央部に設けられる凹部に限るものではなく、車両進行方向前方、また後方に配置された凹部においても同様の効果が得られる。
即ち、インナーパネルの周囲に配置される凹部は、インナーパネルとアウターパネルの接合のため近接させないといけないが、その他の凹部は前記周囲の凹部より深さが浅くてよい(即ち、アウターパネルからの距離が、5mm以上あってよい)。
また、図3では、凹部aが、フードパネルの長辺方向に延伸する凸部に対し、垂直に(車両進行方向に平行に)配置されているが、凹部を凸部の延伸方向に対して斜めに(フードパネルの長辺方向に対して斜めに)配置してもよい。
しかし、凸部の延伸方向に対して、凹部の長手方向が20°未満になると、凹部の交差箇所の幅が拡大し、著しく剛性を損なうおそれがある。また、成形も非常に困難になる。
また、張り剛性を確保するために、本発明による深さを調整した凹部を延伸方向に2つ以上設けてもよい。但し、剛性の弱い凹部を設けるほど、ねじり剛性及び、歩行者保護性は悪化するため、最大でも3つ程度が好ましい。
また、深さを調整した凹部を複数設けた場合、それらの相対高さは一定である必要はなく、設置位置の必要剛性、歩行者保護性能を考慮して、各々の異なった深さに設定してもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
[実施例1:従来例との比較]
全長900〜1500mm、全幅1200〜2000mmのフードパネルを想定し、歩行者頭部保護基準の子供用インパクター(以下、単に「インパクター」と言う。)をフードパネルに衝突させる試験に相当する数値解析を実施した。
本発明の凸部を設けたインナーパネルとアウターパネル、及び、ヘム加工部から構成されるフードパネルモデルを、フードパネルは、左右ヒンジ部、及び、ストライカー部に該当する3箇所で固定して、構成した。なお、フードパネル周辺に、エンジン部品、車体フレーム等の剛性部材は設けていない。
直径165mm、質量3.5kgのインパクターを、65°の角度、及び、35km/hの速度で、フードパネルの中央に衝突させて、数値解析を行った。数値解析は、汎用の動的陽解法の解析コードで行い、歩行者頭部の最大変位量で歩行者保護性能を評価した。
フードパネルの材質は、自動車パネル用の6000系アルミニウム合金を想定した。
6000系アルミニウム合金は、Mg:0.2〜1.2%、Si:0.5〜1.5%、またCu:0.1〜1.5%を含有し残部Alからなり、そのアルミニウム合金の引張試験を行って特性を求めた。
アウターパネルの厚さは1.0mmとし、インナーパネルの厚さは、フードパネルの総質量を揃えるため、本発明例及び、比較に用いた従来例1、2のインナーパネルの厚さは0.8mmとした。
比較に用いた従来例3のビーム構造(図4)では、打抜き孔を設けるので、厚さは1.0mmとした。表4に、解析結果を示す。
表4中の従来例1は、自動車用フードパネルのインナーパネルに一般的に用いるビーム構造について解析した結果である。従来例1の変位量85.7mmを基準として、変位量が、上記基準より小さく、改善された状態を「○」と評価し、上記基準より大きくなり、悪化した状態を「×」と評価した。
本発明による凹部深さを調整した本発明例は、張り剛性、ねじり剛性を確保しつつ頭部変位量が、ビーム構造の頭部変位量より小さくなり、優れた歩行者保護性能を発揮することが認められる。
[実施例2:凹部の形状]
実施例1と同じ条件で、即ち、全長900〜1500mm、全幅1200〜2000mmのフードパネルを想定し、歩行者頭部保護基準の子供用インパクターをフードパネルに衝突させる試験に相当する数値解析を実施した。
本発明の凸部を設けたインナーパネルとアウターパネル、ヘム加工部から構成されるフードパネルモデルを、フードパネルは左右ヒンジ部、ストライカー部に該当する3箇所で固定して構成した。なお、フードパネル周辺に、エンジン部品、車体フレーム等の剛性部材は設けていない。
直径165mm、質量3.5kgのインパクターを、65°の角度、及び、35km/hの速度で、フードパネルの中央に衝突させて、数値解析を行った。数値解析は、汎用の動的陽解法の解析コードで行い、歩行者頭部の最大変位量で、歩行者保護性能を評価した。表5に、解析結果を示す。
No.1はインナーパネルの構造として一般的なビーム構造の従来例である。
No.2〜7は、凹部の相対深さを変更した例である。凹部の相対深さが低いとねじり剛性、歩行者保護性に優れる一方、張り剛性が不足する。相対深さを大きくするほど、張り剛性が増すが、相対深さ70%以上では、歩行者保護性の変位量がビーム構造より悪化する。
No.3、8、9は、凹部の相対深さを30%とし、幅を変更した例である。100mmまでは剛性、歩行者保護性が確保できるが、150mmになると、ねじり剛性がビーム構造より悪化する。
No.5、10、11は、相対深さを70%とし、幅を変更した例である。100mmまでは剛性、歩行者保護性が確保できるが、150mmになると、ねじり剛性及び歩行者保護性が悪化する。
なお、凹部の相対深さは、全凹部を一様に同じ相対深さとする必要はない。各凹部の相対深さが30〜70%になっていれば、各凹部において従来のビーム構造に比べ優れた剛性や歩行者保護性が確保することができる。
[実施例3:凹部の配置方向]
実施例1と同じ条件で、即ち、全長900〜1500mm、全幅1200〜2000mmのフードパネルを想定し、歩行者頭部保護基準の子供用インパクターをフードパネルに衝突させる試験に相当する数値解析を実施した。
本発明の凹部形状については、フード中央に設けられた凸部を分断するように、相対深さ50%の凹部を設けたインナーパネルとアウターパネル、ヘム加工部から構成されるフードパネルモデルを、左右ヒンジ部、ストライカー部に該当する3箇所で固定して構成した。なお、フードパネル周辺に、エンジン部品、車体フレーム等の剛性部材は設けていない。
フード中央に設けられた凸部の延伸方向(フードパネルの長辺方向)に対し、凹部を20°、60°、75°、90°と斜方向に配置した状態で、その特性検証した。解析結果を表6に示す。
No.1〜4より、本発明の凹部が、凸部に対して斜方向に配置された場合においても、張り剛性、ねじり剛性を確保しつつ、歩行者保護性の変位量が、ビーム構造のその変位量より小さくなり、優れた歩行者保護性能を発揮することが認められる。
[実施例4:凹部の配置数]
実施例1と同じ条件で、即ち、全長900〜1500mm、全幅1200〜2000m
mのフードパネルを想定し、歩行者頭部保護基準の子供用インパクターをフードパネルに衝突させる試験に相当する数値解析を実施した。
本発明の凹部形状については、フード中央に設けられた凸部を分断するように、相対深さを50%とした凹部を等間隔に複数設けたインナーパネルと、アウターパネル、ヘム加工部から構成されるフードパネルモデルを左右ヒンジ部、ストライカー部に該当する3箇所で固定して構成した。なお、フードパネル周辺に、エンジン部品、車体フレーム等の剛性部材は設けていない。解析結果を表7に示す。
剛性の弱い凹部が増すことで、ねじり剛性及び歩行者頭部の変位量は悪化する。No.1〜3より、本発明の凹部を設けたインナーパネルは、1〜3個までならば、歩行者保護性の変位量が、ビーム構造のその変位量より小さくなり、優れた歩行者保護性能を発揮することが認められる。しかし、4個以上になると、ビーム構造より変位量が悪化した。
[実施例5:剛体衝突時の歩行者保護性能]
アウターパネルからクリアランス60mmの位置に剛性部材を設置した模擬車両前方構造において、実施例1の本発明例のインナーパネルを設けたフードパネルに、歩行者頭部保護基準の子供・大人用インパクターを衝突させる試験に相当する数値解析を実施した。
すなわち、子供頭部の場合、直径165mm質量3.5kgのインパクターを、大人頭部の場合、直径165mm質量4.5kgのインパクターを、それぞれ65°の角度で35km/hの速度で、衝突解析を行った。
これら条件でインパクターをフードパネルに衝突させた際の数値解析を、汎用の動的陽解法の解析コードで行い、歩行者頭部が受ける衝撃を求め、HIC値によって評価した。衝突位置は図11に示すa点、b点の2箇所とし、フードの車両進行方向前方の衝突地点aに子供頭部インパクターを、フードの車両進行方向後方の衝突地点bに大人頭部インパクターを衝突させた。
ここで、インナーパネルは、アウターパネルに近接する凹部と、一様な高さでエンジンルーム側に突出する凸部からなる以下の2構造を適用した。構造Aは、図12に示すように凸部高さが車両前方における凸部高さH1より車両後方側の高さH2が大きい(すなわちH1<H2)。構造Bは、図13に示すように凸部高さが車両前方及び後方とも同じの高さである(すなわちH1=H2)。
数値解析結果を表8に示す。歩行者頭部が受けた衝撃から算出されるHIC値が1000以下となるものを良好と評価した。
凸部高さを調整した構造Aは、子供頭部、大人頭部いずれの衝突条件でもHIC値を1000以下に収めることができた。このとき静剛性は凸部を一定とした構造Bと同等以上である。
一方、凸部高さが一定の構造Bは、子供頭部の歩行者保護性能に優れるが、大人頭部が衝突する進行方向後方側では、HIC値が1000を超える結果となった。従って、大人頭部が主に衝突する領域と、子供頭部が主に衝突する領域とで、剛性を異なるような構造とすることで、HIC値を1000以下にすることができることがわかった。
[実施例6:材料強度の影響]
実施例1と同様にして、凹部深さを調整したインナーパネルを、6000系、5000系、及び、3000系のアルミニウム合金からなるものとし、数値解析によって、歩行者保護性能を評価した。
表9に、6000系、5000系、及び、3000系のアルミニウム合金の0.2%耐力、引張強度、及び、BH特性を示す。
なお、6000系合金の成分組成は、0.6%Mg、1.0%Si、残部Al及び不可避的不純物であり、5000系合金の成分組成は、4.5%Mg、残部Al及び不可避的不純物であり、3000系合金の成分組成は、1.2%Mn、1.0%Mg、残部Al及び不可避的不純物である。
表9に示すアルミニウム合金の引張性質は、JIS Z 2201に準拠して作製した引張試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して測定した。BH後の耐力は、JIS G 3135の附属書に記載の塗装焼付硬化試験方法と同様に、予歪みを2%、時効温度を170℃、時効時間を20分として測定した。
アウターパネルの材質は、自動車用のボディーパネル用の6000系アルミニウム合金とし、アウターパネルの厚さは1.0mmとし、インナーパネルの厚さは0.8mmとした。
本発明凹部形状については、図3に示すように、フード中央に設けられた凸部を2分割するように、相対深さを50%とした凹部を配置した。表10に、解析結果に示す。
No.1〜3より、本発明の凹部を設けたインナーパネルは、いずれのアルミニウム合金を適用しても、張り剛性、ねじり剛性はビーム構造より優れた剛性を確保。また歩行者保護性の変位量も、ビーム構造のその変位量より小さくなり、優れた歩行者保護性能を発揮することが認められる。
前述したように、本発明によれば、フードパネルの必要性能である、張り剛性、ねじり剛性を確保しつつ、歩行者頭部がフードパネルに衝突した際のインナーパネルの局所変形を防止し、衝撃を吸収するので、インナーパネルの変位量を抑制する。また、剛体に衝突した場合においても衝撃を低減し、歩行者保護性能を著しく高めることができる。
本発明によれば、フードパネルのインナーパネルと、エンジン部品などの剛性部材との間隔を縮めることができ、車両のフロント構造の設計自由度を大きくすることができる。例えば、自動車車体におけるアウターパネルの相対的な高さを低くすることができ、意匠創作の自由度が大きくなる。
また、本発明によれば、インナーパネルの材料として、アルミニウム合金に替え、若干、成形性の劣る軽量材料を使用できるので、フードパネルの軽量化と歩行者保護性能の向上との両立が可能となる。
したがって、本発明によれば、意匠性に加えて、燃費性能、及び、運動性能の向上が可能な、歩行者保護性に優れた、アルミニウム合金製のフードパネルを提供することができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が極めて大きいものである。

Claims (9)

  1. アルミニウム合金からなるアウターパネル及びインナーパネルが積層してなり、車両進行方向に直角方向が長辺となる自動車用フードパネルにおいて、インナーパネルが、エンジンルーム側から見てアウターパネル側に近接する方向にリブ状に配置された凹部と、当該凹部に囲まれ、車両進行方向に直交するインナーパネルの長辺方向の断面形状が略台形となる凸部を複数有し、前記凸部が、インナーパネルの長辺方向に延伸する構造を有し、インナーパネルの長辺方向または短辺方向に2つ以上並んで配置され、当該凸部の間に、インナーパネルの周囲に位置する凹部に比べて深さが浅い凹部を配置することを特徴とする歩行者保護性および剛性に優れた自動車用フードパネル。
  2. インナーパネルの前記深さの浅い凹部とアウターパネル間の距離が、隣接する凸部とアウターパネル間の距離の30%〜70%であることを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
  3. インナーパネルの前記深さの浅い凹部の幅が10〜100mmとすることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
  4. インナーパネルの前記深さの浅い凹部の長手方向が、フードパネルの長辺方向に対して20°〜90°に配置することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
  5. インナーパネルの複数ある前記深さの浅い凹部において、深さが異なる凹部を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
    なお、一部の凹部の深さは同一であることを含むものとする。
  6. インナーパネルの複数ある前記凸部において、同一凸部内にアウターパネルからの距離が異なる面を有する凸部を含むことを特徴とする請求項1〜5に記載の歩行者保護性に優れた自動車用フードパネル。
  7. インナーパネルの前記凸部において、WAD1700mm未満に相当する範囲における前記凸部の面のアウターパネルからの距離をH1、WAD1700mm以上の範囲に相当する前記凸部の面のアウターパネルからの距離をH2としたとき、H2がH1と同一または大きいことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の歩行者保護性に優れた自動車用フードパネル。
  8. 前記H1が15mm〜35mmであり、前記H2が20mm〜50mmであることを特徴とする請求項7に記載の歩行者保護性に優れた自動車用フードパネル。
  9. インナーパネルと剛性部材との距離が60mm以下である部位において、請求項1〜8の何れか1項に記載される凸部が設けられたことを特徴する歩行者保護性及び剛性に優れた自動車用フードパネル。
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