JP4036066B2 - ボールねじ用ボール循環こま及びボールねじ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじのボールを無限循環させる部品として使用されるボール循環こまの改良に関する
【0002】
【従来の技術】
従来、工作機械の送り装置などで使用されるボールねじは、外周面に螺旋状のボール軌道溝を有するねじ軸と、このねじ軸のボール軌道溝と対向する螺旋状のボール軌道溝を内周面に有する円筒状のナットと、このナットとねじ軸との間に組み込まれた多数のボールとからなり、ねじ軸またはナットの一方を軸回りに回転させると、ねじ軸とナットの両ボール軌道溝間に形成された螺旋状ボール転動路をボールが転動し、これによってナットまたはねじ軸が軸方向に直線運動するようになっている。
【0003】
このようなボールねじのナットまたはねじ軸を継続的に直線運動させるためには、ボールを無限循環させる必要があるが、ボールを無限循環させる部品として、ボール循環チューブを使用したボールねじでは、ボールの公転速度が大きくなるにつれて騒音や振動などが発生し易くなるなどの問題がある。また、ボール循環チューブをナットに固定するための平面部をナットの外周面に形成する必要があるため、コスト高を招くなどの問題もある。そこで、このような問題を解消するために、ボールを無限循環させる部品として、図6のようなボール循環こま19を使用したボールねじが下記の特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】
独国実用新案第DE295048号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載のボールねじでは、ボール循環こま19が樹脂で形成されているため、騒音や振動の発生を抑制することができる。また、チューブ式ボールねじのように、ボール循環チューブをナットに固定するための平面部をナットの外周面に形成する必要がないので、コストの上昇を抑制することができるが、次のような問題点を有していた。すなわち、上述したボールねじでは、図6のようなタング部19aをボール循環こま19に設け、このタング部19aでボールを掬い上げてナットに形成されたボール戻し通路に導入しているため、タング部19bの両側に形成されたV字状切込み部19bの隅部に応力集中が発生する。このため、切込み部19bの隅部に亀裂等が生じ、ボール循環こま19の破損に至るおそれがあった。
【0006】
本発明は上記のような問題点に着目してなされたものであり、切込み部の隅部に応力集中が発生することを抑制して耐久性および信頼性の向上を図ることのできるボールねじ用ボール循環こま及びこれを使用したボールねじを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、外周面に螺旋状のボール軌道溝を有するねじ軸と、前記ボール軌道溝に対応する螺旋状のボール軌道溝を内周面に有し且つ軸方向に貫通するボール戻し通路を有するナットと、前記ねじ軸または前記ナットの相対的な回転運動により前記ボール軌道溝間に形成された螺旋状ボール転動路を転動する多数のボールとを備えてなるボールねじに使用され、前記ボールを前記螺旋状ボール転動路から掬い上げるタング部を有し、前記タング部の両側に形成された切込み部の隅部に応力集中を緩和するためのスリットを設けたボール循環こまであって、前記スリットが円弧状の応力集中緩和面を有し、前記ボールの直径をDw、前記応力集中緩和面の曲率半径をRとしたとき、前記応力集中緩和面の曲率半径と前記ボールの直径との比を、0.05<R/Dw<0.2の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0008】
このような構成によると、切込み部の隅部に発生する応力集中がスリットによって緩和され、切込み部の隅部に亀裂等が発生することを抑制できるので、ボール循環こまの耐久性と信頼性を向上させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1至図4は本発明の一実施形態を示す図であり、図1に示されるように、ボールねじ10のねじ軸11の外周面には、螺旋状のボール軌道溝12が形成されている。このボール軌道溝12はナット13の内周面に形成された螺旋状のボール軌道溝14と対向しており、ねじ軸11またはナット13の一方が軸回りに回転すると、ねじ軸11とナット13との間に組み込まれた多数のボール15がボール軌道溝12,14間に形成された螺旋状ボール転動路16を転動するようになっている。
【0010】
ナット13には、ボール15を戻すためのボール戻し通路17が形成されている。このボール戻し通路17はナット13の軸方向に貫通しており、ナット13の両端部には、螺旋状ボール転動路16とボール戻し通路17との間にボール15のリターン案内路18を形成するボール循環こま19が設けられている。
ボール循環こま19は樹脂を所定の形状に射出成形または切削加工して形成されており、ナット13の両端面に形成された凹陥部20(図2参照)に嵌め込まれている。また、ボール循環こま19はボール15を螺旋状ボール転動路16から掬い上げるためのタング部19a(図3及び図4参照)を有しており、このタング部19aの両側に形成されたV字状切込み部19bの隅部には、応力集中を緩和するためのスリット21がナット13の内周面に形成されたボール軌道溝14のリード角方向に沿って設けられている。
【0011】
スリット21は円弧状の応力集中緩和面21a(図4参照)を有しており、ボール15の直径をDw、応力集中緩和面21aの曲率半径をRとすると、両者の比は0.06<R/Dw<0.2の範囲内に設定されている。
上述のように、タング部19aの両側に形成された切込み部19bの隅部にスリット21を設けると、切込み部19bの隅部に発生する応力集中がスリット21によって緩和される。したがって、切込み部の隅部に亀裂等が発生することを抑制できるので、ボール循環こま19の耐久性と信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、上述した実施形態のように、切込み部19bの隅部にスリット21をボール軌道溝14のリード角方向に沿って設けると、切込み部の隅部にスリットをねじ軸に対して垂直に設けた場合と比較して、タング部19aの削り代が少なくて済むので、タング部19aの機械的強度を大幅に低下させることなくボール循環こま19の耐久性と信頼性を向上させることができる。
【0013】
次に、ボール15の直径に対する応力集中緩和面21aの曲率半径R/Dwを0.05<R/Dw<0.2の範囲内に設定した理由について表1および図5を参照して説明する。
【0014】
【表1】
Figure 0004036066
【0015】
本発明者らは、応力集中緩和面21aの曲率半径比R/Dwが表1に示す通りのボール循環こまTP1〜TP14を作成し、これらのボール循環こまTP1〜TP14を使用してボールねじの耐久性試験を使用ボールねじ名:NSKボールねじ(呼び番 40×40×1300)、使用試験機名:ボールねじ高速耐久試験機、最高回転数:7500min−1、ストローク:1000mmの試験条件で行った。そして、各ボール循環こまに亀裂が生じるまでの時間を測定し、その測定結果を基に各ボール循環こまの寿命比を評価した。
【0016】
図5は、ボール循環こまTP1〜TP14の寿命比とR/Dwとの関係を示す図である。同図から明らかなように、応力集中緩和面21aの曲率半径比R/Dwが0.05以下になるとボール循環こまの寿命比が5以下の値となり、早期破損に至ることがわかる。これは、応力集中緩和面21aの曲率半径比R/Dwが0.05以下になると、タング部両側の切込み部の隅部に応力集中が生じ、ボール循環こまに亀裂が生じるためである。
【0017】
また、応力集中緩和面21aの曲率半径比R/Dwが0.2以上になると、ボール循環こまの寿命比が5以下の値となり、早期破損に至ることがわかる。これは、応力集中緩和面21aの曲率半径比R/Dwが0.2以上になると、タング部の幅寸法が狭くなることによって強度が不足するためである。
したがって、応力集中を緩和してボール循環こまの耐久性を高めるためには、応力集中緩和面21aの曲率半径Rをボール15の直径Dwに対して0.05<R/Dw<0.2の範囲内に設定すればよいことがわかる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が実施可能である。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項の発明によれば、切込み部の隅部に発生する応力集中がスリットによって緩和され、切込み部の隅部に亀裂等が発生することを抑制できるので、ボール循環こまの耐久性と信頼性を向上させることができる。
請求項の発明によれば、耐久性と信頼性の向上を図ることのできるボールねじを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボール循環こまを備えたボールねじの軸方向断面図である。
【図2】図1に示すナットの正面図である。
【図3】本発明に係るボール循環こまの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3のボール循環こまを示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】ボール循環こまの寿命比と応力集中緩和面の曲率半径比との関係を示す図である。
【図6】従来のボール循環こまを示す図である。
【符号の説明】
10 ボールねじ
11 ねじ軸
12 ボール軌道溝
13 ナット
14 ボール軌道溝
15 ボール
16 螺旋状ボール転動路
17 ボール戻し通路
18 リターン案内路
19 ボール循環こま
19a タング部
19b 切込み部
20 凹陥部
21 スリット
21a 応力集中緩和面

Claims (2)

  1. 外周面に螺旋状のボール軌道溝を有するねじ軸と、前記ボール軌道溝に対応する螺旋状のボール軌道溝を内周面に有し且つ軸方向に貫通するボール戻し通路を有するナットと、前記ねじ軸または前記ナットの相対的な回転運動により前記ボール軌道溝間に形成された螺旋状ボール転動路を転動する多数のボールとを備えてなるボールねじに使用され、前記ボールを前記螺旋状ボール転動路から掬い上げるタング部を有し、前記タング部の両側に形成された切込み部の隅部に応力集中を緩和するためのスリットを設けたボール循環こまであって、前記スリットが円弧状の応力集中緩和面を有し、前記ボールの直径をDw、前記応力集中緩和面の曲率半径をRとしたとき、前記応力集中緩和面の曲率半径と前記ボールの直径との比を、0.05<R/Dw<0.2の範囲内に設定したことを特徴とするボール循環こま。
  2. 請求項記載のボール循環こまを備えたことを特徴とするボールねじ。
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