JP4035379B2 - 洗車機における車形検出方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機に関し、特に洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を多数配列させて車体形状を読み取る方式の車形検出方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の装置として特開平10−338103号公報に記載の車形検出装置を備えた洗車機が知られている。すなわち、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を多数配列させ、洗車機と自動車の相対移動に伴い各々車体検出させてこの検出データを記憶蓄積し、この蓄積したデータから自動車車体の輪郭を抽出するもので、抽出した車体の輪郭を正確になぞるように洗車機の処理装置を制御するためのものである。
【0003】
この種の車形検出装置は、車形検出をしながら洗浄作業が行うといった状況で使用されることが多く、このため洗浄水が飛散する環境下で光信号による車体検出を行う必要があり、飛散する水滴により車体検出の結果に影響を受けないよう対策する必要があった。このため、水滴により光信号の授受が阻害されても誤検出とならないよう、これまでは、発光素子側では十分なレベルの発光出力をさせると共に、受光素子側で受ける光量が所定以上低下しないと車体検出とは判断しない方法で対応していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、多様化する洗車の内容やその時の環境等に応じて車形検出の条件が変わり、常に正確に車形を把握することが難しくなってきている。例えば、門型洗車機においても高圧スプレーを用いて洗浄する方式が増えて来ているが、高圧スプレーを使用すると細かな水滴が多量に飛散し、車体検出用の光信号を遮る結果となる。また、寒冷時には温水を用いて洗車を行うことが一般化してきているが、この場合には温水散布により湯気が発生し、やはり車体検出用の光信号を遮る結果となる。
【0005】
上記のような場合に対処して、まず発光素子の発光出力と受光素子の受光感度を更に上げて、光信号が大きく減衰しても確実に受光/遮光の判断ができるよう対策することが考えられる。しかし、こうした対策ではコストアップを招くばかりか、自動車のウィンドウ部分を透過して来た光信号を受けて受光と判断しまい、本来車体検出しなければならないウィンドウ部分で車体と認識できなくなる問題があった。このウィンドウの検出は、車体側面のウィンドウであれば、その上方の天井部を車体と認識するので、非検出となっても問題ないが、フロントウィンドウやリアウィンドウを非検出と判定してしまうと、洗車処理手段をウィンドウ内側の車室まで入り込ませようと制御される結果となり、車体に損傷を及ぼす危険があった。
【0006】
従って、この発明の課題とするところは、洗車内容や環境に応じて最適な車体検出を行い、常に正確な車形検出ができる洗車機における車形検出方法および装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機において、前記車形データは、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を上下に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて形成されるものであり、前記車体検出手段は、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき、車体検出と判断するものであり、前記しきい値は実行しようとする洗車の内容に応じて可変とされることを特徴とする洗車機における車形検出方法により、上記課題の解決をはかったものである。
【0008】
ここで、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄と前後して車形検出を行うものであるとき、前記しきい値を小さくすれば良い。また、実行しようとする洗車の内容が洗浄水の使用を伴わずに車形検出を行うものであるとき、前記しきい値を大きくすれば良い。
【0009】
この発明は、洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機において、前記車形データは、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を上下に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて形成されるものであり、前記車体検出手段は、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき、車体検出と判断するものであり、前記しきい値は洗車を実行するときの環境に応じて可変とされることを特徴とする洗車機における車形検出方法により、上記課題の解決をはかったものである。
【0010】
ここで、洗車を実行するときの環境が所定温度以下で洗浄水散布に伴い湯気の発生が予想されるとき、前記しきい値を小さくすれば良い。
【0011】
この発明は、洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機に備えられ、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を前記相対移動の方向と略直行する方向に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて前記車形データを形成する車形検出装置において、前記車体検出手段において前記光信号が授受される状態から所定のしきい値以上の光量の低下が認められるとき車体検出と判断する判定手段と、洗車機の操作部で選択された洗車の内容に応じて前記しきい値を可変設定する設定手段と、該設定手段で与えるしきい値に基づいて前記判定手段から得る車体検出信号を取り込み、この車体検出信号に応じた車形データを形成する車形データ形成手段とを設けたことを特徴とする洗車機における車形検出装置により、上記課題の解決をはかったものである。
【0012】
ここで、操作部で選択された洗車の内容が高圧スプレー洗浄と前後して車形検出を行うものであるとき、前記設定手段ではしきい値を小さく設定すれば良い。また、操作部で選択された洗車の内容が洗浄水の使用を伴わずに車形検出を行うものであるとき、前記設定手段ではしきい値を大きく設定すれば良い。
【0013】
この発明は、洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機に備えられ、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を前記相対移動の方向と略直行する方向に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて前記車形データを形成する車形検出装置において、前記車体検出手段において前記光信号が授受される状態から所定のしきい値以上の光量の低下が認められるとき車体検出と判断する判定手段と、洗車機に備える外気温センサで与える外気温に応じて前記しきい値を可変設定する設定手段と、該設定手段で与えるしきい値に基づいて前記判定手段から得る車体検出信号を取り込み、この車体検出信号に応じた車形データを形成する車形データ形成手段とを設けたことを特徴とする洗車機における車形検出装置により、上記課題の解決をはかったものである。
【0014】
【作用】
この発明により、車体検出と判断するためのしきい値を実行しようとする洗車の内容に応じて可変することにより、洗車の内容によって車形検出するときの環境が変わっても、その洗車内容に合った判定条件となるようしきい値を変えて確実な車体検出ができる。すなわち、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を伴う場合は、受光素子へ到達する光信号のレベルが低くなると予想して、しきい値を小さくしてわずかな光量の変動でも車体検出か非検出かを判定できるようにし、一方、実行しようとする洗車の内容が洗浄水の使用を伴わない場合は、光信号の減衰が小さいと予想してしきい値を大きくし、フロントウィンドウやリアウィンドウを透過して来たようなわずかな光量の信号では車体検出とせずに、誤検出を確実に防止できるようにしたものである。
【0015】
また、車体検出と判断するためのしきい値を洗車するときの環境に応じて可変することにより、車形検出するときの環境が変わっても、その環境に合った判定条件となるようしきい値を変えて確実な車体検出ができる。すなわち、洗車するときの外気温が低く湯気の発生が見込まれる場合は、受光素子へ到達する光信号のレベルが低くなると予想して、しきい値を小さくしてわずかな光量の変動でも車体検出か非検出かを判定できるようにしたものである。
【0016】
【実施例】
以下、この発明の実施例について図面を基に説明する。図面にはドライブスルーで洗車サービスを行う門型洗車機を例示しており、図1は実施例における入場・退場の様子を説明する平面レイアウトの説明図、図2は同実施例の側面説明図、図3は同じく平面説明図である。なお、この発明の対象となる洗車機は、このような門型洗車機に限定されるものではなく、車形データを使用する洗車機であればいずも適用できる。
【0017】
1は洗車機本体で、門型に形成されレール2・2上を自動車Aを跨ぐように往復走行する。本体1は、図1(A)に見られるように通常レール2・2で与えられる走行範囲の後端部に停止し、この位置から洗車を開始する。本体1には、ブラシ装置3・4・4,ブロワノズル6・7・7をはじめ散水ノズル5a・5b・5c,液剤タンク(図示しない)等が備えられ、走行に伴って水,洗剤,ワックス等を散布してブラッシングする洗浄作業やブロワノズルより空気を吹き付ける乾燥作業を行う。
【0018】
ここで、洗車を受ける自動車Aは、図1(A)の矢印で示すように、レール2・2で与えられる本体1走行範囲の前方から進入し、図1(A)(B)に図示される位置に停車して洗車を受け、洗車が終了すると図1(B)に示すように同走行範囲後方へ退場する。すなわち、自動車は前進走行して進入し、洗車後は同じく前進走行して退場するもので、洗車機利用客が自動車に乗ったまま洗車を受けて通り抜ける、いわゆるドライブスルーによる洗車を可能にしている。
【0019】
前記ブラシ装置は、本体1前側に位置し車体上面に沿って昇降し同上面をブラッシングする上面ブラシ装置3と、該上面ブラシ装置3の下方に位置し車体に対して接離(開閉)動作し主に車体側面下部をブラッシングする左右一対のロッカーブラシ装置(図示しない)と、上面ブラシ装置3およびロッカーブラシ装置の後方に位置し車体に対して接離(開閉)動作し車体の前後面および側面をブラッシングする左右一対の側面ブラシ装置4・4とからなる。なお、このブラシ装置3・4・4は散水ノズル5a・5b・5cと共にブロワノズル6・7・7より本体1前側にあって、洗浄部Sを形成している。
【0020】
散水ノズル5a・5b・5cは、ブラシ装置によるブラッシングと前後して洗浄水や洗剤・ワックス等の液剤の希釈水を通常圧で散布する低圧ノズル5a・5bと、車体の砂・泥等を落とすよう洗浄水や液剤希釈水を高圧噴霧する高圧ノズル5cとからなっている。高圧ノズル5cは、ブラッシングに先立って車体の砂・泥等を落とし、砂・泥等をブラシで擦り付けて車体に洗車傷を発生させないようスプレー洗浄するもので、ブラシ装置3・4・4より前側で後述の車形検出装置10の後方に位置している。これら散水ノズル5a・5b・5cは、本体1と別体として設置される公知の給水装置(図示しない)から送水を受けており、また給水装置に公知の温水ボイラ(図示しない)が接続されて、冬などの寒冷期には洗浄水として温水が供給される。
【0021】
また、前記ブロワノズルは、各ブラシ装置3・4・4の後方にあって、車体上面に沿って昇降し同上面に空気を吹き付けて乾燥をはかる上面ブロワノズル6と、該上面ブロワノズル6より更に本体1後方に位置し車体側面に空気を吹き付けて乾燥をはかる左右一対の側面ブロワノズル7・7とからなり、本体1の後側に乾燥部Dを形成している。
【0022】
8は本体1の洗浄部Sの後方で乾燥部Dの手前に位置しブラシ装置および散水ノズルから飛散する水がブロワノズルのある乾燥部Dへ至らぬように遮断するシャッターである。シャッター8は、側面ブラシ4と上面ブロワノズル6との間の本体1天井部に設けられており、それぞれ上下に昇降自在な複数(図面では3枚)の遮蔽板を備え、この遮蔽板をまとめて支持する左右一対のキャリアこのによって昇降操作し、各遮蔽板はキャリアの下降に伴い自重で下降し、それぞれ段差を設けて順番に下降が規制されることによって、複数の遮蔽板が上下に連なるようにしてスクリーンを形成する。
【0023】
9は洗車機本体1の走行位置を検出する走行位置検出装置、10は本体1のブラシ装置より前側の前縁部に設けられ自動車の車形を読み取る車形検出装置である。走行位置検出装置9は、本体1が単位距離走行する毎にパルス出力するエンコーダを備え、そのパルス信号をカウントすることで本体1の走行位置を検知する。車形検出装置10は、複数の発光素子を上下に配列させた発光部10aと、これに対応して複数の受光素子を上下に配列した受光部10bとを対向させてあり、前記エンコーダ9からのパルス信号に同期して両者間で光信号(赤外光)の授受を行い、これにより車体の上面位置を検出するもので、詳しくは後述する。車形検出装置10により取り込まれた車形データは、ブラシ装置3・ブロワノズル5およびシャッター8の昇降制御に使用される。
【0024】
11はレール2・2で与えられる本体1走行範囲に入る手前で自動車の運転席から操作可能な高さに設けられる操作ボックスで、料金投入と洗車内容の選択入力等の操作を受け付ける。
【0025】
図4は実施例の制御系を示すブロック図で、20はマイクロコンピュータを備えた制御部、21は各部の駆動回路、22は洗車機本体1に設けられ外気温を検出する温度センサ、23は前記給水装置における洗浄水の水温を検出する水温センサである。制御部20は、操作ボックス11において洗車を受け付け、上記した走行位置検出装置9,車形検出装置10,温度センサ22,水温センサ23をはじめ図示しないその他の各種センサ等からの信号に基づき予めプログラムされたシーケンスに従って、洗車機本体1の走行、ブラシ3・4・4およびブロワノズル6・7・7の作動、散水ノズル5a・5b・5cからの放水、シャッター8の昇降等を制御する。特に、制御部20は、車形検出装置10からの車形データを基に、上面ブラシ3・上面ブロワノズル6およびシャッター8を車体上面に沿うよう昇降制御する。
【0026】
実行される代表的な洗車動作としては、(1)本体1が前方へ1回往行するだけで洗浄と乾燥とを完了するスピード洗車と、(2)本体1が1往復して洗浄動作した後に2回目の往行時に乾燥動作するノーマル洗車と、(3)本体1が1往復して洗浄動作とワックス塗布を行い2回目の往行時に乾燥動作するワックス洗車がある。また、こうした洗車動作(1)〜(3)のオプション動作として高圧ノズル5cからの高圧スプレー洗浄が設定され、操作ボックス11において高圧スプレーを実行するか否かを選択することができる。なお、この他にもコーティング処理・水垢処理などの処理を盛り込んで2往復・3往復といったより付加価値の高い洗車動作をさせることもできる。
【0027】
図5は実施例における主に車形検出装置10部分の制御系の説明図である。車形検出装置10は、発光部10aを構成する多数の発光素子30と受光部10bを構成する多数の受光素子31とが、水平に対向する同士でそれぞれに1体1で対応させて車両検出し、こうして多数の対をなして形成される車両検出手段が上下に配列させた構成となっている。32は発光部10aの駆動部、33は受光部10bの駆動部、34は受光部10bでの受光検出部で、洗車に際して車両検出する場合には、発光駆動部32では上方(下方)の発光素子より下方(上方)へ走査するように順次に光信号を出力させ、これと同期して受光駆動部33では発光する素子と対をなす受光素子31で受光させて、受光検出部34において各素子での受光レベル(受光量)を順次に取得する。
【0028】
受光検出部34には、各受光素子31で取得した受光レベルに基づきその素子の高さ位置で車体が検出されるか否かを判断する判定部35と、判定部35で車体検出の判断をするためのしきい値を設定する設定部36と、判定部35の判定結果に基づき自動車車体の上面位置を検出する上面位置検出部37とが含まれる。受光素子31での受光レベルは、発光素子30からの光信号を受けると高くなり、光信号が車体により遮られると低くなる。従って、判定部35では各受光素子31が対応する発光素子30からの光信号を受けたか否かを判断し、光信号が遮られて車体検出と判断された最も上方にある受光素子の高さ位置を車体上面の位置として上面位置検出部37より信号出力する。
【0029】
38は車形検出装置10の制御部で、走行位置検出装置9で単位距離の走行を検出する毎に発光駆動部32・受光駆動部33へ駆動信号を出力して車体検出させ、これに伴って上面位置検出部37で与える上面位置を走行位置検出装置9で与える走行位置と対応させて、車形データとして車形記憶部39へ記憶させる。制御部38では、こうして記憶した車形データに基づいて制御部20では洗車処理装置を車体に沿うよう制御するものである。また制御部38には、車形データ以外のしきい値の設定データ等を記憶する記憶部40を備えている。
【0030】
図6は実施例とした洗車機での洗車動作を説明するフローチャート、図7は図6で実施される初期設定の一部として実行される車形検出の初期設定を説明するフローチャートである。以下、これらの図面を基に実施例の動作を説明する。
【0031】
図6において、操作ボックス11で洗車開始入力があると、入場処理シーケンスを実行して自動車を所定の洗車位置まで誘導し、またこの間に制御部20・38では初期設定をして洗車動作に備える(1)。入場処理シーケンスでは、洗車機本体1前側に設ける図示しないガイド灯により「前進」「停止」「後退」を切換表示し、自動車を洗車位置に停止させる。こうして自動車が洗車位置で停車すると洗車シーケンスを実行して洗車を行う(2)。
【0032】
洗車が終了すると、終了処理シーケンスを実行して自動車が安全に退場するよう誘導し洗車機本体1を洗車開始位置へ復帰させる(3)。すなわち、洗車機本体1後方に設けられる表示器において洗車終了の報知と退場を促す表示をし、自動車が退場すると洗車機本体1を後退させて図1(A)に示す開始位置へ復帰させるよう処理するものである。
【0033】
図6ステップ(1)で実行される初期設定において、車形検出装置10の制御部38では、図7に示す設定動作を行う。図7において、まず自動車が検出範囲にいない状態で車形検出動作を行う初期検出動作を行う(1)。発光素子30または受光素子31は、その器差や汚れの付着などに応じて対をなす素子間で授受される信号レベルが異なるため、洗車直前に車体非検出状態で交わされる信号レベルを検出し、各素子毎(車体検出手段毎)に前記記憶部40へ記憶しておく。ここで記憶する信号レベルとは、発光素子が発光することによって対応の受光素子が受けることになる受光量の増加分(利得量)である。
【0034】
続いて、操作ボックスにおいて洗車客が選択した洗車内容を読み取り(2)、更に温度センサ22および水温センサ23で与える外気温・水温等の洗車環境を検出し(3)、こうして得た洗車内容と洗車環境データに基づいて前記設定部36でしきい値を設定する(4)。ここで、しきい値とは、発光素子が発光したことによって対応の受光素子で受ける受光量の増加分と対比される数値であり、発光により受光量がしきい値以上増加すれば車体非検出と判断し、増加分がしきい値に達しなければ車体検出と判断する。なお、ステップ(4)で求めたしきい値があまりにも小さく、正確な車形検出が困難と認められる場合は(5)、洗車動作をする前に洗車機を走行させて車形検出だけを行う、車形検出工程を追加する措置をとることになる(6)。
【0035】
以下、このしきい値の設定方法について説明する。ステップ(1)において、洗車動作直前の空車時の受光量を検出しこれを基礎データとするが、この基礎データ取得時には、まだ洗車が行われておらず洗浄水が飛散したり湯気が発生したりする状況ではないため、実際の洗車時にはこの基礎データより受光量はかなり減衰する。この減衰の程度は、洗車機本体における各部の位置や構造によっても異なるが、出願人の所有する試験機では、通常の高圧スプレーを使用しない洗車で最大50%、高圧スプレーを伴う洗車で最大70%、寒冷時の湯気が発生した場合には最大85%の減衰が認められた。
【0036】
こうしたデータに基づけば、最大85%の減衰に対応して、10〜15%の受光量が認められれば車体非検出となるようにしておけば、どんな条件でも車体検出できると考えられる。しかし、減衰が小さな状況においても、わずかな受光量で車体非検出と判断すると、自動車の窓ガラス(特にフロントウィンドウおよびリアウィンドウ)を透過して来た光が入っても車体非検出となってしまい、窓ガラスを車体と認識できなくなってしまう。従って、洗車に伴う減衰が小さな時にはしきい値を大きくして、窓ガラスを透過して来た弱い光の受光では遮断されたと判断し車体検出とする必要がある。すなわち、減衰の程度を実行する洗車内容と実行するときの環境に応じて想定し、しきい値を設定する必要がある。
【0037】
自動車の窓ガラスについて、前述した通り、洗車機として窓ガラスを誤検出してならないのはフロントウィンドウおよびリアウィンドウである。車体側面のガラス窓は、光信号がガラス面に対して直角に近い角度で透過するので、透明度の高いガラス窓であれば殆ど減衰することなく光信号が透過する。しかし、フロントウィンドウおよびリアウィンドウは、ウィンドウ面に対し光信号が殆ど角度のない状態で透過するので、透明度の高いガラスでも光信号の光量は略半減することになる。従って、このフロントウィンドウおよびリアウィンドウを透過した減衰した光信号に対して車体検出と判定できるよう、しきい値を設定できれば良いのである。
【0038】
例えば、通常の洗車で最大50%の減衰が見込まれるとすれば、前記基礎データの20%程度をしきい値とすれば良い。また、高圧スプレーを使用する洗車内容で最大70%の減衰が見込まれれば、前記基礎データの10%程度をしきい値とし、外気温と水温との温度差が所定以上で湯気の発生が予想され、最大80%の減衰が見込まれれば、前記基礎データの5〜10%をしきい値とすれば良い。このしきい値は、図7ステップ(1)で検出する基礎データと同様に各素子毎(車体検出手段毎)に算出・設定されて記憶部40へ記憶される。このため、しきい値を設定する比率(パーセンテージ)は共通であるが、各素子毎に異なるしきい値で車体検出が行われることになる。
【0039】
なお、ここで高圧スプレーを使用する洗車で、且つ湯気の発生が見込まれる場合は、実質的に洗車しながらの車形検出が不可能と判断されるため、図7ステップ(6)の車形検出工程が追加され、この場合は通常の車形検出しなから洗車することを止め、洗車動作の前に車形検出だけを行うことになる。すなわち、洗車動作する前に洗車機本体1を1往復走行させ、この1往復の往行時に車形検出装置10による車形検出動作を行うものである。この車形検出工程では、洗浄水の飛散等がなく大きな減衰は予想されないため、基礎データの40〜50%程度のしきい値で車体検出すれば良い。なお、洗車機の使用方法として自動車を手洗い洗浄の後に、車体のブロー乾燥に洗車機を利用する場合があるが、このような洗車内容の場合も、洗浄水を使用しないので車形検出工程と同様にしきい値を基礎データの40〜50%程度に設定すれば良い。
【0040】
上記したしきい値は、洗車機の構成や発光素子・受光素子の性能等により変動するので、実状に応じて適宜パーセンテージを設定する必要があるが、車形を常に正確に把握するため、洗車内容や環境に応じてしきい値を変更することは共通であり、光信号の減衰が大きいと予想されるときはしきい値を小さくし、減衰が小さいときは相対的にしきい値を大きくする。すなわち、高圧スプレーを伴う洗車内容や外気温が低く湯気の発生が予想されるときは、光信号の減衰が大きいのでしきい値を小さくし、逆に洗浄水の使用を伴わない状態で車形検出する洗車内容であれば、光信号の減衰が小さいのでしきい値を大きくするものである。
【0041】
図8は車形検出装置10によって検出された車体を表すものであり、図8(a)は従来の車形検出装置を使用し高圧スプレーで洗浄するのと前後して車形検出して得た検出車体、図8(b)は実施例の車形検出装置10で同じく高圧スプレーで洗浄するのと前後して車形検出して得た検出車体である。図8(a)において、従来の車形検出装置のように、高圧スプレーの使用の有無にかかわらず同じしきい値で車体検出すると、実施例に比べて相対的にしきい値が大きくなり、車体検出と判断される受光レベルのレンジが広くなるため、図示のように水滴が密度濃く跳ね上がる車体近くでは、水滴群を車体と誤検出してしまい、この結果、この誤検出した車形データで洗車すると処理装置が車体から離れてしまい洗浄・乾燥ができない問題が生じる。
【0042】
これに対し、実施例では、高圧スプレーの使用に応じてしきい値を小さくしているので、高圧スプレーにより全体的に光信号の減衰が大きく車体の検出/非検出の判別が難しくい中で、車体検出とする受光レベルのレンジを狭くして、水滴により減衰した光信号でも車体非検出とできるので、図示のように車体の輪郭を鮮明に検知することができる。ただ、図示のように、しきい値を小さくした分だけ少しでも透過光が受光されると車体非検出となるため、窓ガラス(特に側面ウィンドウ部)が非検出となるが、フロントウィンドウおよびリアウィンドウは車体検出されるため、洗車処理装置の制御上問題となることはない。
【0043】
なお、高圧スプレーを使用しない洗車で、図8(b)のようなしきい値の小さな車体検出を行うと、光信号の減衰が小さい分だけ車体非検出となる部分が増加し、フロントウィンドウおよびリアウィンドウまでも非検出となってしまう。なお、図8では高圧スプレーの有無に関して例示したが、湯気発生時にあっても全く同様である。
【0044】
この実施例は以上のように構成されるものであるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。例えば、実施例ではドライブスルー式の門型洗車機に適用した例を示すが、洗車機としてはドライブスルーである必要はないし、自動車をコンベアで搬送する連続式洗車機や、ブラシを使用せず高圧スプレーだけで洗車するブラシレス洗車機などにも、何の問題もなく適用することができる。また、実施例では、しきい値に影響する洗車内容として、高圧スプレーの有無や洗浄水使用の有無を上げているが、洗車内容によっては液剤散布の方向や量を変えて行うこともあり、また洗車機の構造によって影響の度合も異なるので、更にいろいろな条件でしきい値を可変することもできる。更に、実施例では、しきい値に影響する環境として、寒冷時の湯気の発生を取り上げているが、洗車機の構造や設置状況に応じては直射日光や雨・雪などの天候が車形検出に影響することもあり、こうした条件に応じてしきい値を変更することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、車体検出と判断するためのしきい値を実行しようとする洗車の内容に応じて可変することにより、洗車の内容によって車形検出するときの環境が変わっても、その洗車内容に合った判定条件となるようしきい値を変えて正確な車体検出ができる。すなわち、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を伴う場合は、受光素子へ到達する光信号のレベルが低くなると予想して、しきい値を小さくして悪条件下でも確実に車体検出できるようにし、一方、実行しようとする洗車の内容が洗浄水の使用を伴わない場合は、光信号の減衰が小さいと予想して、しきい値を大きくしてわずかな光量の変動では車体検出とせずに、自動車のフロントウィンドウおよびリアウィンドウを非検出としてしまうことを確実に防止できるようにしたもので、どのような洗車内容でも常に正確に車形検出ができる。
【0046】
また、車体検出と判断するための光量低下のしきい値を洗車するときの環境に応じて可変することにより、車形検出するときの環境が変わっても、その環境に合った判定条件となるようしきい値を変えて確実な車体検出ができる。すなわち、洗車するときの外気温が低く湯気の発生が見込まれる場合は、受光素子へ到達する光信号のレベルが低くなると予想して、しきい値を小さくしてわずかな光量の変動でも車体検出を判定できるようにしたもので、どのような洗車環境にあっても常に正確に車形検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における入場・退場の様子を説明する平面レイアウトの説明図である。
【図2】実施例の側面説明図である。
【図3】実施例の平面説明図である。
【図4】実施例の制御系を示すブロック図である。
【図5】実施例における主に車形検出装置10部分の制御系の説明図である。
【図6】実施例とした洗車機での洗車動作を説明するフローチャート図である。
【図7】図6で実施される初期設定の一部として実行される車形検出の初期設定を説明するフローチャート図である。
【図8】車形検出装置10によって検出された車体を表す説明図で、(a)は従来の車形検出装置による検出結果、(b)は実施例による検出結果を表す。
【符号の説明】
1 洗車機本体
3 処理装置としての上面ブラシ
6 処理装置としての上面ブロワノズル
8 処理装置としてのシャッター
10 車形検出装置
10a 発光部
10b 受光部
20 洗車機本体の制御部
22 外気温センサとしての温度センサ
30 発光素子
31 受光素子
35 判定手段としての判定部
36 設定手段としての設定部
38 車形検出装置の制御部
Claims (9)
- 洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機において、
前記車形データは、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を上下に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて形成されるものであり、
前記車体検出手段は、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき、車体検出と判断するものであり、前記しきい値は実行しようとする洗車の内容に応じて可変とされることを特徴とする洗車機における車形検出方法。 - 請求項1記載の洗車機における車形検出方法において、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄と前後して車形検出を行うものであるとき、前記しきい値を小さくすることを特徴とする洗車機における車形検出方法。
- 請求項1記載の洗車機における車形検出方法において、実行しようとする洗車の内容が洗浄水の使用を伴わずに車形検出を行うものであるとき、前記しきい値を大きくすることを特徴とする洗車機における車形検出方法。
- 洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機において、
前記車形データは、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を上下に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて形成されるものであり、
前記車体検出手段は、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき、車体検出と判断するものであり、前記しきい値は洗車を実行するときの環境に応じて可変とされることを特徴とする洗車機における車形検出方法。 - 請求項4記載の洗車機における洗車方法において、洗車を実行するときの環境が所定温度以下で洗浄水散布に伴い湯気の発生が予想されるとき、前記しきい値を小さくすることを特徴とする洗車機における車形検出方法。
- 洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機に備えられ、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を上下に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて前記車形データを形成する車形検出装置において、
前記車体検出手段において対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき車体検出と判断する判定手段と、洗車機の操作部で選択された洗車の内容に応じて前記しきい値を可変設定する設定手段と、該設定手段で与えるしきい値に基づいて前記判定手段から得る車体検出信号を取り込み、この車体検出信号に応じた車形データを形成する車形データ形成手段とを設けたことを特徴とする洗車機における車形検出装置。 - 請求項6記載の洗車機における車形検出装置において、操作部で選択された洗車の内容が高圧スプレー洗浄と前後して車形検出を行うものであるとき、前記設定手段ではしきい値を小さく設定することを特徴とする洗車機における車形検出装置。
- 請求項6記載の洗車機における車形検出装置において、操作部で選択された洗車の内容が洗浄水の使用を伴わずに車形検出を行うものであるとき、前記設定手段ではしきい値を大きく設定することを特徴とする洗車機における車形検出装置。
- 洗車機と自動車の相対移動に伴い、自動車車体の輪郭または形状を車形データとして取り込み、洗車機に備える処理装置を車形データに基づいて車体面に沿うよう制御し、自動車車体の洗浄処理や乾燥処理を行う洗車機に備えられ、洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを対向させた車体検出手段を上下に多数配列させてなり、各車体検出手段で授受される光信号が自動車により遮断されたのを検知して車体検出し、これらの車体検出の結果に応じて前記車形データを形成する車形検出装置において、
前記車体検出手段において対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき車体検出と判断する判定手段と、洗車機に備える外気温センサで与える外気温に応じて前記しきい値を可変設定する設定手段と、該設定手段で与えるしきい値に基づいて前記判定手段から得る車体検出信号を取り込み、この車体検出信号に応じた車形データを形成する車形データ形成手段とを設けたことを特徴とする洗車機における車形検出装置。
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