JP4034163B2 - 有機多孔質体、その製造方法および有機多孔質イオン交換体 - Google Patents

有機多孔質体、その製造方法および有機多孔質イオン交換体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の所属する技術分野】
本発明は、吸着剤、クロマトグラフィー用充填剤およびイオン交換体として有用な有機多孔質体、その製造方法および有機多孔質イオン交換体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内にメソポアを有する連続気泡構造を有する多孔質体としては、シリカ等で構成された無機多孔質体が知られている(米国特許第5624875号)。そして、該無機多孔質体はクロマトグラフィー用充填剤として活発な用途開発がなされている。しかし、この無機多孔質体は親水性であるため、吸着剤として用いるためには、表面の疎水処理等の繁雑かつコストアップを伴う操作が必要であった。また、この無機多孔質体を水中に長時間保持すると、シリカの加水分解によって生じるシリケートイオンが水中に溶出するため、純水や超純水を製造するためのイオン交換体として用いることは、不可能であった。一方、上記無機多孔質体をクロマトグラフィー用充填剤として用いると、従来の粒状充填剤を用いた場合に比べ格段に性能の向上が達成できることが報告されているが、その製法上、メソポアは最大で50μmであるため、低圧で大流量の処理を行う際に制約を受けていた。更にクロマトグラフィーの分野では充填剤の洗浄に0.5M水酸化ナトリウム水溶液等の強アルカリ性水溶液を用いるのが一般的である。しかし、このような水溶液で上記無機多孔質体を繰り返し洗浄すると、加水分解が多発しシリケート等が可溶化・溶出することに起因して充填剤の重量が著しく減少してしまうため、上記洗浄操作を頻繁に実施することができないといった欠点を有していた。同様の理由で、上記無機多孔質体を充填剤として用いた系では、アルカリ性溶離液の使用が不可能であり、測定対象系が限定されるといった欠点も有していた。
【0003】
これに対して、連続孔を有する有機多孔質体としては、粒子凝集型構造を有する多孔質体がF.Svec,Science,273,205〜211(1996)等に開示されている。しかし、この方法で得られた多孔質体は粒子凝集型構造のため、細孔容積が小さく、メソポアも大きくできないため、低圧で大流量の処理を行う際に制約を受けていた。また、従来の有機多孔質体やそれにイオン交換基を導入した多孔質イオン交換体は、内部に多くの構造欠陥を有するものであり、強度が低く、膨潤・収縮に対する耐久性が低いのみならず細孔分布が広いため、上記有機多孔質体をクロマトグラフィー用充填剤に用いた際に分離能が不十分であるといった欠点を有していた。
【0004】
このため、細孔容積が大きく、物理的強度が高く、細孔径が大きくとれ且つ細孔径が均一に揃ったもので、マクロボイドなどの内部構造欠陥がない連続気泡構造を有する有機多孔質体の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決したものであって、物理的強度が高く、吸着量や吸着速度に優れた吸着剤、膨潤や収縮に対する耐久性に優れたイオン交換体、分離能の高いクロマトグラフィー用充填剤として用いることのできる有機多孔質体、その製造方法および有機多孔質イオン交換体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水を含有する被処理物を、特定の攪拌混合方法で処理した油中水滴型エマルジョンを重合させて得られる有機多孔質体は、強度を保持しつつ、細孔径が揃った細孔分布を有し、且つ細孔容積が格段に大きいため、吸着量や吸着速度に優れた吸着剤や、低圧、大流量の処理が可能で、膨潤や収縮に対する耐久性に優れたイオン交換体や、分離能の高いクロマトグラフィー用充填剤に好適であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明(1)は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口となる半径が0.01〜100μmのメソポアを有し、該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造内が流路となる連続気泡構造体であって、全細孔容積が1〜50ml/gであり、更に細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅を該主ピークの半径で除した値が0.5以下である有機多孔質体を提供するものである。この有機多孔質体は、特定の連続気泡構造を有したものであり、従来の粒子凝集型多孔質体とは全く異なる新規な構造である。また、該有機多孔質体は、強度を保持しつつ、細孔容積を格段に大きくすることができる。また、細孔分布曲線がシャープであり、吸着量や吸着速度に優れた吸着剤や、低圧、大流量の処理が可能で、膨潤や収縮に対する耐久性に優れたイオン交換体や、分離能に優れたクロマトグラフィー用充填剤に好適である。
【0008】
また、本発明(2)は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水を含有する被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合して油中水滴型エマルジョンを調製した後、重合させ、次いで、未反応物を除去した後、乾燥して前記有機多孔質体を製造する方法を提供するものである。かかる構成を採ることにより、前記有機多孔質体を簡易に且つ確実に製造することができる。
【0009】
また、本発明(3)は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口となる半径が0.01〜100μmのメソポアを有し、該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造内が流路となる連続気泡構造体であって、全細孔容積が1〜50ml/gであり、更に細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅を該主ピークの半径で除した値が0.5以下であり、且つイオン交換基を含有してなる有機多孔質イオン交換体を提供するものである。この有機多孔質イオン交換体は、例えば、電気式脱イオン水製造装置のイオン交換膜間の空間に充填し、脱塩室を構成させれば、膨潤、収縮に対する耐久性に優れ、且つ被処理水を低圧、大流量で通水することが可能となる。また、この有機多孔質イオン交換体は、分離能に優れたクロマトグラフィー用充填剤にも好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体の基本構造は、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に半径が0.01〜100μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは5〜60μmのメソポアを有する連続気泡構造である。すなわち、連続気泡構造は、通常、半径0.2〜500μmのマクロポアとマクロポアが重なり合い、この重なる部分が共通の開口となるメソポアを有するもので、その部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、液体や気体を流せば該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造内が流路となる。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個である。メソポアの半径が0.01μm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が非常に大きくなってしまうため好ましくない。一方、メソポアの半径が100μmを越えると、液体または気体と有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体との接触が不十分となり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体の構造が上記のような連続気泡構造をとることにより、マクロポア群やメソポア群を均一に形成できると共に、F.Svec,Science,273,205〜211(1996)等に記載されているような粒子凝集型多孔質イオン交換体に比べて、細孔容積を格段に大きくすることができる。
【0011】
本発明の有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体は、更に細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅(W)を該主ピークの半径(R)で除した値(W/R)が0.5以下である。細孔分布曲線は水銀圧入法により求められる、所謂細孔分布の微分曲線である。この細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅は、細孔分布曲線のベースラインからの該主ピークの高さHの半分の高さH/2における該主ピークの幅を言い、上記の(W/R)値が小さいほど、細孔分布がシャープであることを示す。本発明の有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体において、(W/R)値が0.5以下であると、連続気泡構造を形成するマクロポア群とメソポア群が均一に存在し、メソポアの分布がシャープになることで、吸着特性や分離特性が格段に向上する。また、マクロボイドがなくなるため、構造欠陥サイトの消失に伴う物理的強度の向上や、膨潤・収縮に対する耐久性も向上する。このため、同じ組成、同じ構造の有機多孔質体もしくは有機多孔質イオン交換体であっても、(W/R)値が0.5以下のものは性能および機能面で格段の改善が認められる。
【0012】
また、該有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体は、1〜50ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が1ml/g未満であると、単位断面積当りの透過液体または気体量が小さくなってしまい、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が50ml/gを超えると、該有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体の強度が著しく低下してしまうため好ましくない。全細孔容積は、従来の多孔質状合成吸着剤やイオン交換樹脂では、せいぜい0.1〜0.9ml/gであるから、それを超える従来にはない1〜50ml/g、好ましくは5〜50ml/gの高細孔容積のものが使用できる。
【0013】
また、該有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体の液体および気体の透過性は、液体の代表として水を、気体の代表として空気を用い、該有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体の厚みを10mmとした時の透過速度が、それぞれ100〜100000L/分・m2・MPa、100〜50000m3/分・m2・MPaの範囲にあることが好ましい。透過速度及び全細孔容積が上記範囲にあれば、これを吸着剤やイオン交換体やクロマトグラフィー用充填剤として用いた場合、液体または気体との接触面積が大きく、かつ液体または気体の円滑な流通が可能となる上に、十分な機械的強度を有しているため優れた性能が発揮できる。連続気泡構造を形成する骨格部分の材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料はポリマー材料を構成する全構成単位に対して、5〜90モル%の架橋構造単位を含むことが好ましい。架橋構造単位が5モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、90モル%を越えると、イオン交換基の導入が困難となり、イオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。
【0014】
該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマーを重合させて得られるホモポリマーでも、複数のモノマーを重合させて得られるコポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。本発明の有機多孔質体または有機多孔質イオン交換体の連続気泡構造は、SEMで観察できる。また、マクロポアの孔径およびメソポアの孔径もSEMで観察できる。
【0015】
本発明の有機多孔質体を吸着剤として使用する場合、例えば、円筒型カラムや角型カラムに、有機多孔質体を当該カラムに挿入できる形状に切り出したものを吸着剤として充填し、これにベンゼン、トルエン、フェノール、パラフィン等の疎水性物質を含有する被処理水を通水させれば、該吸着剤に前記疎水性物質が効率よく吸着される。従来の多孔質状合成吸着剤の細孔容積は、大きいものでせいぜい0.9ml/gであるから、本発明の吸着剤は従来型吸着剤に比して、吸着能力で数倍以上のものも得ることができる。
【0016】
本発明の有機多孔質体をクロマトグラフィー用充填剤として使用する場合、例えば、円筒型カラムや角型カラム、キャピラリーカラム等に、有機多孔質体を当該カラムに挿入できる形状に切り出したものを充填剤として充填し、これに被処理物を透過させれば、強度を保持しつつ、分離能の高い分離を行うことができる。クロマトグラフィーとしては、逆相液体クロマトグラフィー、順相液体クロマトグラフィーや分配クロマトグラフィーを挙げることができる。また、有機多孔質体にミクロポアを導入することで、ゲル浸透クロマトグラフィーへ応用したり、有機多孔質体に各種リガンドを導入することで、光学分割やタンパク質の分離が可能なアフィニティクロマトグラフィーへ応用することも可能である。
【0017】
本発明の有機多孔質イオン交換体は前記有機多孔質体が更にイオン交換基を含有するものであり、そのイオン交換容量としては、特に制限されないが、0.1μg当量/g乾燥多孔質体以上のものがイオン交換能の点から好ましく、特に好ましくは10μg当量/g乾燥多孔質体以上、更に好ましくは0.5mg当量/g乾燥多孔質体以上である。有機多孔質体に導入するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
本発明の有機多孔質イオン交換体をクロマトグラフィー用充填剤として使用する場合、例えば、円筒型カラムや角型カラム、キャピラリーカラム等に、該有機多孔質イオン交換体を当該カラムに挿入できる形状に切り出したものを充填剤として充填し、これに被処理物を透過させれば、強度を保持しつつ、分離能の高い分離を行うことができる。クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィーを挙げることができる。また、ミクロポアを導入した有機多孔質体にイオン交換基を導入した有機多孔質イオン交換体を充填剤に用いることで、水系のゲル浸透クロマトグラフィーへ応用することもできる。
【0018】
上記有機多孔質体の製造方法の一例を以下に示す。すなわち、当該有機多孔質体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水および必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを調製し、これを重合させて製造する。
【0019】
イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーを指すものである。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、本発明においては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、1〜90モル%、好ましくは3〜80モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
【0020】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0021】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であっても良く、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0022】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水および重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法;油溶性モノマー、界面活性剤および油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法等が使用できる。必要に応じて公知の沈殿剤を混合してもよい。
【0023】
エマルジョンを形成させるための混合装置としては、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置と称されるものが使用できる。この遊星式攪拌装置は、例えば、特開平6-71110号公報や特開平11-104404号公報等に開示されているような装置である。本装置の原理は、混合容器を公転させながら自転させることにより、その遠心力作用を利用して該被処理物中の比重の重い成分を外側に移動させ攪拌すると共に、混入する気体をその反対方向に押し出して脱泡するものである。更に、該容器は公転しながら自転しているため、該容器内の該被処理物にらせん状に流れ(渦流)が発生し、攪拌作用を高める。該装置は大気圧下で運転しても良いが、脱泡を短時間で完全に行うためには、減圧下で運転することが好ましい。
【0024】
また、混合条件は、目的のエマルジョン粒径や分布を得ることができる公転及び自転回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。好ましい公転回転数は、回転させる容器の大きさや形状にもよるが、約500〜2000回転/分である。また、好ましい自転回転数は、公転回転数の1/3前後の回転数である。攪拌時間も内容物の性状や容器の形状・大きさによって大きく変動するが、一般に0.5〜30分、好ましくは1〜20分の間で設定する。更に、用いられる容器の形状は、底面直径に対し、充填物の高さが0.5〜5となるよう、充填物を収容可能な形状が好ましい。なお、上記油溶性成分と水溶性成分の混合比は、重なお、上記油溶性成分と水溶性成分の混合比は、重量比で(油溶性成分)/(水溶性成分)=2/98〜50/50、好ましくは5/95〜30/70の範囲で任意に設定することができる。
【0025】
このようにして得られた油中水滴型エマルジョンを重合させる重合条件は、モノマーの種類、重合開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよく、重合開始剤として過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、必要であれば、未反応モノマーと界面活性剤除去を目的に、イソプロパノール等の溶剤で抽出して有機多孔質体を得る。すなわち、油中水滴型エマルジョンのうち、油分が重合して骨格構造を形成し、水滴部分が気泡構造部を形成することになる。
【0026】
次に、本発明の有機多孔質イオン交換体の製造方法について説明する。該有機多孔質イオン交換体の製造方法としては、特に制限されず、イオン交換基を含む成分を一段階で該有機多孔質イオン交換体とする方法や、上記の方法等により有機多孔質体を製造した後、イオン交換基を導入する方法などが挙げられる。このうち、有機多孔質体を製造した後、イオン交換基を導入する方法が、得られる有機多孔質イオン交換体の構造制御が厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0027】
上記の有機多孔質体にイオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;有機多孔質体にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体をクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、上記の方法により有機多孔質体に三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0028】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
(有機多孔質体の製造)
スチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01g、ソルビタンモノオレート2.25gおよびアゾビスイソブチロニトリル0.05gを混合し、均一に溶解させた。次に当該スチレン/ジビニルベンゼン/ソルビタンモノオレート/アゾビスイソブチロニトリル混合物を180gの純水に添加し、遊星式攪拌装置である真空攪拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて13.3kPaの減圧下、底面直径と充填物の高さの比が1:1、公転回転数1800回転/分、自転回転数600回転/分で2.5分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、系を窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、水およびソルビタンモノオレエートを除去した後、85℃で一昼夜減圧乾燥した。
【0029】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3モル%含有した有機多孔質体の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1から明らかなように、当該有機多孔質体は連続気泡構造を有しており、マクロポアおよびメソポアの大きさが均一であることがわかる。また、水銀圧入法により測定した当該有機多孔質体の細孔分布曲線を図2に示す。図2から明らかなように、細孔分布曲線はシャープであり、細孔分布曲線のピークの半径Rは6.6μm、ピークの半値幅(W)は2.8μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.42であった。なお、当該有機多孔質体の全細孔容積は、8.4ml/gであった。また、マクロボイドの有無を確認するため、上記有機多孔質体を切断し、目視にて内部の状態を観察したが、マクロボイドは全くなかった。
【0030】
次に、サンプルを2cm×2cm×2cmの角柱状に切り出し、25℃にて圧縮速度1mm/分で圧縮強度の測定を行った。降伏応力は0.92MPaであり、試験終了時までに、試料の破壊は認められなかった。なお、測定に用いた装置は、テンシロンUTM-2.5TPLであり、500kg-fのロードセルを使用した。
【0031】
また、有機多孔質体の膨潤・収縮に対する耐久性を検討するため、ジクロロエタン中に上記多孔質体を30分間浸漬して膨潤させた後取り出し、風乾によりジクロロエタンを除去し多孔質体を収縮させた。この膨潤・収縮サイクルを3回繰り返したが、クラックの生成は認められなかった。
【0032】
実施例2〜4
(有機多孔質体の製造)
スチレン、ジビニルベンゼン、ソルビタンモノオレートおよびアゾビスイソブチロニトリルの仕込み量を表1に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で有機多孔質体を製造した。結果を表1及び表2にまとめて示すが、いずれの場合もマクロボイドはなく、メソポアの分布は実施例1と同様にシャープであり、降伏応力も高く、かつ、圧縮強度試験において、試料の破壊も認められなかった。更に、実施例1と同様の方法で膨潤・収縮試験を行ってもクラックの生成は認められなかった。
【0033】
比較例1
(有機多孔質体の製造)
エマルジョン調製用攪拌装置として真空攪拌脱泡ミキサーの代わりに通常の乳化分散機(クレアミックス;オルガノ社製)を用い、20000回転/分で2分間攪拌したこと、およびモノマー、乳化剤、水の仕込み量を実施例1の2.5倍としたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機多孔質体を製造した。結果を表1及び表2に示す。
【0034】
当該有機多孔質体の内部構造を、SEMにより観察した結果を図3に示すが、実施例と比較してマクロポアおよびメソポアの大きさがばらついていた。また、水銀圧入法により測定した当該有機多孔質体の細孔分布曲線を図4に示すが、ピークはショルダーを有しており、細孔分布曲線のピークの半径Rは7.7μm、ピークの半値幅(W)は4.0μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.52と実施例に比べて大きく、メソポアの分布は実施例のものに比べてややブロードであった。
【0035】
また、有機多孔質体内部にはマクロボイドも多数認められた。また、実施例1と同様の方法で圧縮強度の測定を行ったところ、降伏応力は0.71MPaと実施例に比べて低く、更に、試験途中でクラックが生じ、試験終了前に試料が破壊した。また、実施例1と同様の方法で膨潤・収縮試験を行ったところ、膨潤・収縮サイクル2回目の膨潤でクラックが発生した。
【0036】
比較例2
(有機多孔質体の製造)
20000回転/分で2分間攪拌の乳化条件に代えて、13000回転/分で2分間攪拌の乳化条件とした以外は、比較例1と同様の方法で有機多孔質体を製造した。結果を表1及び表2に示すが、内部にはマクロボイドが多数存在し、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.67と実施例に比べて大きく、メソポアの分布は実施例のものに比べてブロードであった。また、実施例1と同様の方法で圧縮強度の測定行ったところ、降伏応力も実施例に比べて低く、また、実施例1と同様の方法で膨潤・収縮試験を行ったところ、膨潤・収縮サイクル1回目の膨潤でクラックが発生した。
【0037】
【表1】
Figure 0004034163
【0038】
【表2】
Figure 0004034163
【0039】
実施例5
(有機多孔質イオン交換体の製造)
実施例1で製造した有機多孔質体を切断して5.9gを分取し、ジクロロエタン800mlを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸30.1gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質イオン交換体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.8mg当量/gであった。この湿潤状態の有機多孔質イオン交換体を85℃にて24時間減圧乾燥し、絶乾状態としたが、乾燥の過程でクラックは生じなかった。
【0040】
上記有機多孔質イオン交換体の内部構造は、連続気泡構造を有しており、絶乾状態のサンプルを用いて、水銀圧入法により求めた細孔分布曲線のピークの半径Rは6.7μm、ピークの半値幅(W)は2.7μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.40であった。また、全細孔容積は、8.5ml/gであった。
【0041】
比較例3
(有機多孔質イオン交換体の製造)
比較例1で製造した有機多孔質体5.9gの切断に代えて、比較例1で製造した有機多孔質体10.8gを切断により分取したこと、クロロ硫酸30.1gの添加に代えて、クロロ硫酸52.9gを添加したこと以外は、実施例5と同様の方法で有機多孔質イオン交換体を製造した。製造過程で多孔質体の膨潤に伴い、微小なクラックが少量発生したが、反応を続行した。得られた多孔質イオン交換体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.4mg当量/gであった。なお、湿潤状態の有機多孔質イオン交換体を乾燥させる段階で、新たなクラックが生成し、形状が崩壊した。
【0042】
実施例6
(実施例5で得られた有機多孔質イオン交換体の性能評価)
実施例5で得られたイオン交換体をそれぞれ、内径7mm×長さ90mmのカラムに充填し、0.2M 塩酸を流速24 ml/minで30分間通液してイオン交換基の対イオンを水素イオン形とした後、同じ流速で0.2M 塩化ナトリウム水溶液を1 ml通液し、ナトリウムイオンを吸着させた。続いて、再び0.2M塩酸を同じ流速で通液し、吸着させたナトリウムイオンを脱着させながらカラム入口および出口の導電率を測定し、差導電率(入口−出口)を求め、0.2M 塩化ナトリウム水溶液通液開始時を時間ゼロとして、溶離曲線を求めた。結果を図5に示す。
【0043】
比較例4
(比較例3で得られた有機多孔質イオン交換体の性能評価)
実施例5で得られたイオン交換体の代わりに、比較例3で得られた有機多孔質イオン交換体を使用した以外は、実施例6と同様の方法で行い、溶離曲線を求めた。結果を図5に示す。
【0044】
図5に示すように、実施例5は比較例3に比して、明らかにピークがシャープになっており、本発明の有機多孔質イオン交換体が優れたイオン吸脱着性能を有していることが確認された。
【0045】
実施例7
(有機多孔質体の製造)
スチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01gおよびアゾビスイソブチロニトリル0.05gにかえて、p−クロロメチルスチレン16.20g、ジビニルべンゼン4.05g、アゾビスイソブチロニトリル0.26gを仕込んだことと攪拌時間を5分間に変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で有機多孔質体を製造した。その結果、メソポアの分布は実施例1と同様にシャープであり、細孔分布曲線のピークの半径Rは4.5μm、ピークの半値幅(W)は2.0μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.44であった。なお、当該有機多孔質体の全細孔容積は7.0ml/gであった。また、マクロボイドの有無を確認するため、上記有機多孔質体を切断し、目視にて内部の状態を観察したが、マクロボイドは全くなかった。更に、実施例1と同様の方法で、膨潤・収縮試験を行ってもクラックの生成は認められなかった。
【0046】
実施例8
(有機多孔質イオン交換体の製造)
実施例7で製造した有機多孔質体を切断して6.0gを分取し、ジオキサン800mlを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、トリメチルアミン30%水溶液61.0gを添加した後昇温し、40℃で24時間反応させた。反応終了後、多量の水中に反応物を投入し、水洗して多孔質アニオン交換体を得た。この多孔質イオン交換体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で2.9mg当量/gであった。この湿潤状態の有機多孔質イオン交換体を60℃にて72時間減圧乾燥し、絶乾状態としたが、乾燥の過程でクラックは生じなかった。
上記有機多孔質イオン交換体の内部構造は、連続気泡構造を有しており、絶乾状態のサンプルを用いて、水銀圧入法により求めた細孔分布曲線のピークの半径Rは4.6μm、ピークの半値幅(W)は2.0μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.43であった。また、全細孔容積は7.0ml/gであった。
【0047】
実施例9
(実施例8で得られた有機多孔質イオン交換体の性能評価)
実施例8で得られたイオン交換体を内径7mm×長さ90mmのカラムに充填し、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を流速24ml/minで30分間通液してイオン交換基の対イオンを水酸化物イオン形とした後、同じ流速で0.1M塩化ナトリウム水溶液を1ml通液し、塩化物イオンを吸着させた。続いて、再び0.1M水酸化ナトリウム水溶液を同じ流速で通液し、吸着させた塩化物イオンを脱着させながらカラム入口及び出口の導電率を測定し、差導電率(入口―出口)を求め、0.1M塩化ナトリウム水溶液通液開始時を時間ゼロとして、溶離曲線を求めた。結果を図6に示す。
【0048】
図6に示すように、実施例9の操作で、シャープな塩化物イオン溶出曲線が得られており、本発明の有機多孔質イオン交換体によって、強アルカリ溶離液による陰イオン脱着が良好に行われることが確認された。
【0049】
実施例10
(有機多孔質体の製造)
スチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01gおよびアゾビスイソブチロニトリル0.05gにかえて、スチレン15.19g、ジビニルベンゼン4.05g、グリシジルメタクリレート1.01g、アゾビスイソブチロニトリル0.26gを仕込んだことを除いて、実施例1と同様の方法で有機多孔質体を製造した。その結果、メソポアの分布は実施例1と同様にシャープであり、細孔分布曲線のピークの半径Rは6.3μm、ピークの半値幅(W)は2.8μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.44であった。なお、当該有機多孔質体の全細孔容積は、8.2ml/gであった。また、マクロボイドの有無を確認するため、上記有機多孔質体を切断し、目視にて内部の状態を観察したが、マクロボイドは全くなかった。更に、実施例1と同様の方法で膨潤・収縮試験を行ってもクラックの生成は認められなかった。
【0050】
実施例11
(有機多孔質イオン交換体の製造)
実施例10で製造した有機多孔質体を切断して7.1gを分取し、イソプロパノール200mlを加え、30分撹拌した後、亜硫酸ナトリウム90gを純水800mlに溶解させた溶液を添加し、室温で24時間反応させた。反応終了後、多量の水中に反応物を投入し、水洗して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質イオン交換体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で43μg当量/gであった。この湿潤状態の有機多孔質イオン交換体を60℃にて72時間減圧乾燥し、絶乾状態としたが、乾燥の過程でクラックは生じなかった。
【0051】
上記有機多孔質イオン交換体の内部構造は、連続気泡構造を有しており、絶乾状態のサンプルを用いて、水銀圧入法により求めた細孔分布曲線のピークの半径Rは6.2μm、ピークの半値幅(W)は2.6μm、半値幅をピークの半径で除した値(W/R)は0.42であった。また、全細孔容積は、8.0ml/gであった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体は、その細孔分布がシャープであり、物理的強度が高く、膨潤・収縮に対する耐久性も良好であり、更に、気体や液体が多孔質体内部を均一に透過するため、フィルターや吸着剤;既存のイオン交換樹脂の代替;EDI充填剤;イオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、順相液体クロマトグラフィー用充填剤、分配クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の充填剤;固体酸/塩基触媒として有用であり、広範な用途分野に応用することができる。また、本発明の有機多孔質体を製造する方法は前記有機多孔質体を簡易に且つ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた有機多孔質体のSEM写真である。
【図2】実施例1で得られた有機多孔質体の細孔分布曲線である。
【図3】比較例1で得られた有機多孔質体のSEM写真である。
【図4】比較例1で得られた有機多孔質体の細孔分布曲線である。
【図5】実施例6及び比較例4で得られたイオンクロマトグラフィーの溶離曲線である。
【図6】実施例9で得られたイオンクロマトグラフィーの溶離曲線である。

Claims (7)

  1. 気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口となる半径が0.01〜100μmのメソポアを有し、該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造内が流路となる連続気泡構造体であって、全細孔容積が1〜50ml/gであり、更に細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅を該主ピークの半径で除した値が0.5以下であることを特徴とする有機多孔質体。
  2. 吸着剤として使用することを特徴とする請求項1記載の有機多孔質体。
  3. クロマトグラフィー用充填剤として使用することを特徴とする請求項1記載の有機多孔質体。
  4. イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水を含有する被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合して油中水滴型エマルジョンを調製した後、重合させ、次いで、未反応物を除去した後、乾燥して請求項1記載の有機多孔質体を製造する方法。
  5. 気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口となる半径が0.01〜100μmのメソポアを有し、該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造内が流路となる連続気泡構造体であって、全細孔容積が1〜50ml/gであり、更に細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅を該主ピークの半径で除した値が0.5以下であり、且つイオン交換基を含有してなることを特徴とする有機多孔質イオン交換体。
  6. イオン交換容量が0.1μg当量/g乾燥多孔質イオン交換体以上であることを特徴とする請求項5記載の有機多孔質イオン交換体。
  7. クロマトグラフィー用充填剤として使用することを特徴とする請求項5又は6記載の有機多孔質イオン交換体。
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