JP5486162B2 - モノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体 - Google Patents

モノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体 Download PDF

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Description

本発明は、吸着装置、脱イオン水製造装置あるいはガス状汚染物質除去装置等に用いられる吸着剤またはイオン交換体として有用な連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造の二重構造を有するモノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体に関するものである。
互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に共通の開口を有する連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体や該多孔質体にイオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質イオン交換体が特開2002−306976号に開示されている。該有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体は、吸着剤、クロマトグラフィー用充填剤および脱イオン水製造装置等に用いられるイオン交換体として有用である。
しかし、該有機多孔質イオン交換体は、その製造方法上の制約から全細孔容積を増加させて実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると、骨格構造が細くなることで水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が著しく低下してしまう、逆に全細孔容積を低下させて骨格構造を太くすると、共通の開口となるメソポアが著しく小さくなり、圧力損失が著しく増加してしまうといった欠点を有していた。同様に、上述の方法で得られたモノリス状有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体においては、切断面における骨格部面積が25%以上になることは理論上、不可能であった。
その理由は、該有機多孔質イオン交換体の中間体である連続マクロポア構造のモノリス状有機多孔質体が油中水滴型エマルジョンを経由して製造される点にある。連続マクロポア構造を形成させるためには、油中水滴型エマルジョン中の水滴が互いに接触する必要があり、そのため、水滴の体積分率は75%以上に限定される。油中水滴型エマルジョンの静置重合により得られるモノリス状有機多孔質体は該エマルジョンの構造が固定化された形態をとるため、その空隙率は75%以上であり、該有機多孔質体の切断面の開口率も75%以上となる。従って、切断面の骨格部面積は25%未満であり、油中水滴型エマルジョンを経由する製造法を採用する限り、切断面における骨格部面積が25%以上になることはないからである。
一方、上記連続マクロポア構造以外の構造を有するモノリス状有機多孔質体やモノリス状有機多孔質イオン交換体としては、粒子凝集型構造を有する多孔質体が特表平7−501140号等に開示されている。しかし、この方法で得られた多孔質体は連続した空孔が最大でも約2μmと小さく、低圧で大流量の処理を行うことが要求される工業規模の脱イオン水製造装置等に用いることはできなかった。更に、粒子凝集型構造を有する多孔質体は機械的強度が低く、所望の大きさに切り出してカラムやセルに充填する際に破損しやすい等、ハンドリング性に劣るものであった。
このため、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が格段に低く、構造が均一で大きい連続空孔を有し、更に骨太骨格を有したモノリス状有機多孔質イオン交換体の開発及び、該モノリス状有機多孔質イオン交換体を製造できる製造方法の開発が望まれていた。
特開2002−306976号 特表平7−501140号
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決したものであって、構造が均一で大きい連続マクロボイド構造を有し、更に骨太骨格を有した水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が低い、吸着剤やイオン交換体として有用な新規構造のモノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた油中水滴型エマルジョンに、多数の粒子状テンプレートを存在させ静置重合を行い、その後粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を製造し、更に該有機多孔質中間体の存在下に、ビニルモノマーと架橋剤を特定有機溶媒中で静置重合すれば、連続マクロボイド構造を損なうことなく該有機多孔質中間体の骨格よりも太い骨格を有する骨太のモノリス状有機多孔質体が得られること、骨太のモノリスにイオン交換基を導入すると、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量の著しい低下を招くことなく、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失を大幅に低減することが可能であること等を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マクロボイド同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径0.1〜25mmの開口となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径10〜100μmの開口となる連続マクロポア構造であり、該骨格部(乾燥状態)の切断面のSEM画像において断面に表れる骨格部分の面積が、画像領域中25〜50%であり、前記マクロボイドの平均半径が、前記マクロポアの平均半径の2倍以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質体を提供するものである。
また、本発明は、下記工程;ビニルモノマー、界面活性剤、水、架橋剤及び必要に応じて重合開始剤を、ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)が1:49〜1:3、架橋剤がビニルモノマーと架橋剤の合計中、2.5〜20.0モル%(ただし、2.5モル%を除く。)となるように配合し、撹拌混合して油中水滴型エマルジョンを調製するI工程、該油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合するII工程、該重合体から該粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を得るIII工程、ビニルモノマー、架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤を、ビニルモノマーをモノリス状有機多孔質中間体に対して3〜40倍となる配合量で混合し、調整するIV工程、IV工程で得られた混合物を静置下、且つ該III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るV工程、を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部にイオン交換基が導入されたものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.1mg当量/ml以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供するものである。
本発明のモノリス状有機多孔質体は、連続マクロボイド構造の流路の開口が従来の連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体のそれに比べて格段に大きく、また、連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が連続マクロポア構造であるにも拘わらず、連続マクロポア構造の骨格部分が骨太であるため、機械的強度が高いにも拘わらず、低圧、大流量の処理が可能で、従来用いられてきた合成吸着剤を代替可能であるばかりでなく、その優れた流体透過特性を生かして、合成吸着剤では対応できなかった高粘性成分の吸着除去、ガス状汚染物質除去等新しい用途分野への応用が可能となる。また、本発明のモノリス状有機多孔質体の製造方法によれば、前記モノリス状有機多孔質体を簡易に且つ確実に製造することができる。また、本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体は、上記モノリス状有機多孔質体と略同じ骨格構造を有するため、低圧、大流量の水処理が可能で、従来用いられてきたイオン交換樹脂を代替可能であるばかりでなく、その優れた流体透過特性を生かして、イオン交換樹脂では対応できなかった高粘性成分中のイオン除去、ケミカルフィルター等のガス状汚染物質除去装置に充填して好適に用いることができる。
本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」及び「モノリス状有機多孔質イオン交換体」の両者を説明する際、単に「モノリス状多孔質体等」とも言う。また、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」と、「モノリス状有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
本発明のモノリス状多孔質体等の基本構造は、互いに繋がっているマクロボイドとマクロボイドの該繋がり部分が所定の開口寸法となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が、該連続マクロボイド構造よりも小さな流路を形成する、互いに繋がっているマクロポアとマクロポアの該繋がり部分が所定の開口寸法となる連続マクロポア構造となるものである。すなわち、モノリス状多孔質体等中、連続マクロボイド構造において、液体や気体が低い圧力損失で流れる大きな流路を形成し、連続マクロポア構造において、液体や気体が浸透する該連続マクロボイドよりも小さな流路を形成する。なお、本明細書中、連続マクロボイド構造を形成する見かけ上の骨格部を「骨格部」と言い、連続マクロポア構造を形成する実質上の骨格部を「骨格部分」と言う。
本発明のモノリス状多孔質体等の骨格部である連続マクロポア構造は、図1の模式図に示すように、互いに繋がっているマクロポア3とマクロポア3の該繋がり部分が半径0.01〜100μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは5〜60μmの開口4となる構造である。すなわち、連続マクロポア構造Xは、通常、半径0.2〜500μmのマクロポア3とマクロポア3が重なり合い、この重なる部分が開口4となる構造を有するもので、その部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、液体や気体を流せば該マクロポア3と該開口4で形成される空孔構造内が流路となる。マクロポア3は、連続マクロポア構造X中、概ね同じ半径のものが均一に分散されているが、上記数値範囲を越える更に大きなポアが不均一に所々点在していてもよい。
マクロポア3とマクロポア3の重なりは、1個のマクロポア3で1〜2個、多くのものは3〜10個である。開口4の半径が0.01μm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、開口の半径が100μmを越えると、骨格構造の密度が減少することで、体積当りのイオン交換容量が減少してしまい、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。
連続マクロポア構造の全細孔容積は、油中水滴型エマルジョン経由で調製される連続気泡構造のものより小さく、概ね0.5〜5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、単位断面積当りの通水量が小さくなってしまい、流体が流れ難くなるため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、骨格部分のポリマーの占める割合が低下し、体積当りのイオン交換容量が減少してしまい、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。連続マクロポア構造を形成する骨格部分のポリマーは、架橋構造を有する有機ポリマー材料を用い、該ポリマー材料はポリマー材料を構成する全構成単位に対して、2.5〜20モル%の架橋構造単位を含むことが好ましい。架橋構造単位が2.5モル%未満であると、架橋密度が低下してしまい、モノリス中間体由来の連続気泡構造を維持できなくなってしまうため好ましくなく、一方、20モル%を越えると、モノリス中間体にビニルモノマー、架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を含浸させる工程において、該モノリス中間体の架橋密度が高すぎることで、十分な膨潤が進行せず多孔質体の骨格部への吸着又は分配不十分となるため好ましくない。
本発明のモノリス状多孔質体等における連続マクロボイド構造は、図1の模式図に示すように、互いに繋がっているマクロボイド1とマクロボイド1の当該繋がり部分が半径0.1〜25mm、好ましくは0.5〜15mm、特に好ましくは、0.5〜10mmの開口2となる構造である。すなわち、連続マクロボイド構造Yは、通常、半径0.5〜50mmのマクロボイド1とマクロボイド1が重なり合い、この重なる部分が開口2となる構造を有するもので、その部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、液体や気体を流せば該マクロボイド1と該開口2で形成される空孔構造内が流路となる。すなわち、モノリス状多孔質体等においては、連続マクロポア構造Xのオープンポア構造と連続マクロボイド構造Yのオープンポア構造が混在し且つ互いに繋がって流路を形成している。
マクロボイド1とマクロボイド1の重なりは、1個のマクロボイド1で1〜2個、多くのものは3〜10個である。開口2の半径が0.1mm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きく、圧力損失を低減させるという十分な効果が得られにくいため好ましくない。一方、開口の半径が25mmを越えると、液体または気体と有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体との接触が不十分になり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。マクロボイド1は、連続マクロボイド構造Y中、概ね均一に分散されている。開口の半径が25mm近傍のものは、体積が大きな吸着剤やイオン交換体を製造する場合に適用される。
本発明のモノリス状多孔質体等において、マクロボイド1の平均半径は、マクロポア3の平均半径の2倍以上、好ましくは2〜250000倍、特に5〜10000倍、更に10〜1000倍である。マクロボイドの平均半径がマクロポアの平均半径の2倍未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きく、圧力損失を低減させるという十分な効果が得られにくいため好ましくない。また、マクロボイドの半径が大き過ぎると、液体または気体と有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体との接触が不十分になり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。マクロボイドとマクロポアの半径はSEM写真等において明確に認識できる。このため、それらの平均半径はSEM写真等における少なくとも任意の10点、好ましくは任意の20点の半径を抽出してその平均を取ればよい。なお、マクロボイドの形状が真球状以外の形状の場合、真球状に換算して比較する。
マクロボイドの形状は特に制限はなく、例えば、立方体、直方体、楕円球状、真球状あるいは不定形状等が挙げられるが、この中、該マクロボイドが、静置下重合の後、粒子状テンプレートが除去されて形成されることから、均一充填の簡易性、該テンプレート除去後のモノリス状多孔質体等の共通開口構造の均一性の観点より、真球状が好ましい。
本発明において、連続マクロボイド構造部分の好適な空隙率はモノリス状多孔質体等中、75%前後である。なお、本発明のモノリス状多孔質体等において、連続マクロポア構造X及び連続マクロボイド構造Yは、該多孔質体等中、それぞれ均一に存在しているため、連続マクロポア構造Xをマトリックスとして、該マトリックス中に連続マクロボイド構造Yが形成された構造であり、また、連続マクロボイド構造Yをマトリックスとして、該マトリックス中に該連続マクロポア構造Xが形成された構造である。また、本発明のモノリス状多孔質体等は、マクロボイドとマクロポアが、それぞれ均一で且つ上記範囲の半径を有する球状である場合、所謂フラクタル構造となるものである。
本発明のモノリスの連続マクロポア構造は、開口径が大きく、骨格部分が太いという斬新な構造を有する。当該骨太骨格の構造は、連続マクロポア構造体(乾燥状態)を切断した面のSEM(走査型電子顕微鏡による二次電子像)画像で確認することができる。モノリスの連続マクロポア構造の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部分の面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部分の面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、体積当りの吸着容量が低下してしまうため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、吸着特性の均一性が失われるため好ましくない。なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、実際には水に対する油相部の配合比を多くして骨格部分を太くしても、共通の開口を確保するためには配合比に限界があり、断面に表れる骨格部分の面積の最大値は画像領域中、25%を超えることはできない。
SEM画像を得るための条件は、切断面の断面に表れる骨格部分が鮮明に表れる条件であればよく、例えば倍率100〜600、写真領域が約150mm×100mmである。SEM観察は、主観を排除したモノリスの任意の切断面の任意の箇所で撮影された切断箇所や撮影箇所が異なる3枚以上、好ましくは5枚以上の画像で行なうのがよい。
切断されるモノリスは、電子顕微鏡に供するため、乾燥状態のものである。連続マクロポア構造のSEM画像における切断面の骨格部分を図2及び図3を参照して説明する。また、図3は、図2のSEM写真の断面として表れる骨格部分を転写したものである。図3中、概ね不定形状で且つ断面で表れるものは本発明の「断面に表れる骨格部分(符号12)」であり、図2に表れる円形の孔は開口(メソポア)であり、また、比較的大きな曲率や曲面のものはマクロポア(図3中の符号13)である。図3の断面に表れる骨格部分の面積は、矩形状の写真領域11中、28%である。このように、骨格部分は明確に判断できる。
SEM写真において、切断面の断面に表れる骨格部分の面積の測定方法としては、特に制限されず、当該骨格部分を公知のコンピューター処理などを行い特定した後、コンピューターなどによる自動計算又は手動計算による算出方法が挙げられる。手動計算としては、不定形状物を、四角形、三角形、円形又は台形などの集合物に置き換え、それらを積層して面積を求める方法が挙げられる。
また、本発明のモノリスの連続マクロポア構造は、骨格を構成する壁部の厚みが概ね20〜200μmである。壁部の厚みは、隣接する2つのマクロポアを区画する壁であって、該2つのマクロポアの中心を結ぶ線(図3のZ−Z線)が切断する部分の厚み(図3のd、d)を言う。従って、例えば隣接する3つ以上のマクロポアで囲まれる柱部は本発明の壁部ではない。形成される壁部の厚みが20μm未満であると、体積当りの吸着容量が低下してしまうため好ましくなく、200μmを超えると、吸着特性の均一性が失われるため好ましくない。上記有機多孔質体の壁部の厚みも、切断面の骨格部分と同様に、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の5点以上を採って、求めることが好ましい。なお、特開2002−306976号公報記載のモノリスは、前述の如く、油中水滴型エマルジョン形成の制約から、全細孔容積5ml/g以下の場合、最大でせいぜい10μmである。
また、本発明のモノリスの連続マクロポア構造は、0.5〜5ml/g、好適には0.8〜4ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が小さ過ぎると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、体積当りの吸着容量が低下してしまうため好ましくない。本発明のモノリスは、開口の平均直径及び全細孔容積が上記範囲にあり、且つ骨太の骨格であるため、これを吸着剤として用いた場合、流体との接触面積が大きく、かつ流体の円滑な流通が可能となるため、優れた性能が発揮できる。
本発明のモノリス状有機多孔質体を構成する材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマー及び、必要に応じて架橋剤を重合させて得られるポリマーでも、複数のモノマー及び、必要に応じて架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
本発明のモノリス状有機多孔質体を吸着剤として使用する場合、例えば、円筒型カラムや角型カラムに、有機多孔質体を当該カラムに挿入できる形状に切り出したものを吸着剤として充填し、これにベンゼン、トルエン、フェノール、パラフィン等の疎水性物質を含有する被処理水を通水させれば、該吸着剤に前記疎水性物質が効率よく吸着される。
本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体は、前記モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部に更にイオン交換基を均一に導入したものであり、そのイオン交換容量としては、特に制限されないが、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.1mg当量/ml以上、好ましくは0.15mg当量/mlのイオン交換容量を有しているものである。水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.1mg当量/ml未満であると、破過までに処理できるイオンを含んだ水の量、即ち脱イオン水の製造能力が低下してしまうため好ましくない。
導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAやSIMS等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
有機多孔質体に導入するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
次に、本発明のモノリス状有機多孔質体の製造方法について説明する。すなわち、当該製造方法は、ビニルモノマー、界面活性剤、水、架橋剤及び必要に応じて重合開始剤を、ビニルモノマー(M)と水の重量比(M):(W)が1:49〜1:3、好ましくは1:40〜1:3、更に好ましくは1:30〜1:3、架橋剤がビニルモノマーと架橋剤の合計中、2.5〜20.0モル%となるように混合し、撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製するI工程、該油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合するII工程、該重合体から該粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を得るIII工程、ビニルモノマー、架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤を、ビニルモノマーがモノリス状有機多孔質中間体に対して3〜40倍となる量で混合し、調整するIV工程、IV工程で得られた混合物を静置下、且つ該III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るV工程とを有する。
I工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
I工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。
I工程で用いられる界面活性剤は、ビニルモノマーと水を混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類及び、目的とするエマルジョン粒子の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
I工程で用いられる重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
I工程において、ビニルモノマー、界面活性剤、水、必要に応じて架橋剤や重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、架橋剤、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
モノリス中間体のマクロポアとマクロポアの重なり部分である開口の半径0.01〜100μmは、油中水滴型エマルジョンを得る工程において、界面活性剤の添加量、攪拌混合における攪拌回転数及び攪拌時間などを適宜に決定することで達成することができる。また、攪拌混合の際、アルコール、カルボン酸あるいは炭化水素を共存させることにより調整することもできる。開口の半径0.01μm近傍は、界面活性剤の添加量を多くしたり、攪拌回転数を高めたり、攪拌時間を長くとることにより、逆に半径100μm近傍は、界面活性剤の添加量を少なくしたり、攪拌回転数を低くしたり、攪拌時間を短くすることで達成することができる。
I工程において、ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)が上記範囲を外れると、III工程で得られるモノリス中間体の骨格部の全細孔容積が3〜10ml/gのものが得られなくなり、IV工程で得られるモノリスの骨格を太くできなくなる。
II工程は、容器内の油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合する工程である。容器内に油中水滴型エマルジョンを導入し、その後、多数の粒子状テンプレートを入れてもよく(第1の方法)、容器内に多数の粒子状テンプレートを入れ、その後、油中水滴型エマルジョンを導入してもよい(第2の方法)。第1の方法では、多数の粒子状テンプレートを入れた後は、落し蓋等の方法で若干、粒子状テンプレートを押圧することが、最密充填あるいはそれに近い充填ができる点で好ましい。また、第2の方法では、油中水滴型エマルジョンを導入する際、脱気しながら行なうことが、多数の粒子状テンプレート間の隙間に油中水滴型エマルジョンを十分に行き渡らせることができ、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造をそれぞれ均一に形成できる点で好ましい。また、第1の方法及び第2の方法のいずれの場合も、容器への油中水滴型エマルジョンの導入はエマルジョン構造を崩壊させることなく、静かに行なうことが好ましい。
II工程で用いる粒子状テンプレートは、静置時及び重合時にその形状を保持してエマルジョンやポリマー中に存在し、重合後は除去手段により除去されるものである。粒子状テンプレートとしては、多糖類ハイドロゲルが、油中水滴型エマルジョンに対する安定性、マクロボイド形成の容易性、充填及び除去の容易性の観点から好ましい。多糖類ハイドロゲルの具体例としては、例えば、寒天、アルギン酸カルシウム、ゼラチン、カラギナン、ペクチン、グルコマンナン等のハイドロゲルが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上をブレンドして用いてもよい。これら粒子状テンプレートの中で、寒天、アルギン酸カルシウムのハイドロゲルが、粒子状テンプレートの入手の容易性、静置下重合した後のテンプレート除去工程の容易性から好ましい。
多糖類ハイドロゲルビーズは公知の製造方法で容易に得られる。寒天ハイドロゲルビーズの製造方法としては、例えば寒天溶液を冷却した気相部に噴霧し固化させる方法(特開平6−254382号)、寒天溶液を冷却した液相部に滴下し固化させる方法(特開2000−185229号、特開平5−49911号)が挙げられる。また、アルギン酸カルシウムハイドロゲルビーズの製造方法としては、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中に滴下することでゲル化させる方法(特開昭63−139108号、特開平11−137188号)が挙げられる。
また、その粒子状テンプレートの形状は特に制限はなく、例えば、立方体、直方体、楕円球状、真球状等が挙げられる。この中、真球状とすることが、マクロボイドが、静置下重合の後、該テンプレートが除去されることで形成されることから、均一充填の簡易性、該テンプレート除去後のモノリス状多孔質体等の共通開口構造の均一性などの観点より好ましい。
粒子状テンプレートの粒子径は、真球状換算にして、半径が0.5〜50mm、好ましくは0.5〜25mm、特に好ましくは、0.5〜10mmである。すなわち、粒子状テンプレート除去後、半径0.5〜50mmのマクロボイドとマクロボイドが重なり合い、この重なる部分が開口となる構造を形成し、その部分がオープンポア構造となることから、液体や気体を流した場合、該マクロボイドと該開口で形成される空孔構造内が流路となる。該テンプレート半径が0.5mm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きく、圧力損失を低減させる十分な効果が得られにくいため好ましくない。一方、該テンプレート半径が50mmを越えると、液体または気体とモノリス状多孔質体等との接触が不十分になり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。なお、粒子状テンプレートの形状が立方体や直方体の場合、油中水滴型エマルジョン中に導入する際、特段の操作を行わずとも、静置状態において、それぞれのテンプレートがランダム方向において互いが接触するため、好適な連続マクロボイド構造を形成することができる。
II工程において、容器の油中水滴型エマルジョン中への多数の粒子状テンプレートの充填は、適当な開口を形成させるため、それぞれの粒子状テンプレートが相互に接触するような充填、特に最密充填あるいは最密充填に近い充填をすることが好ましい。粒子状テンプレートは互いの接触が点接触のような充填であっても、重合の際、ポリマー材料部が収縮するため、適度な開口を形成することができる。なお、開口において、半径が0.1mmに近い開口を形成するには、粒子径が小さく且つ揃ったものを選択することで得ることができ、また、半径が25mmに近い開口を形成するには、粒子径が大きく且つ最密充填することで得ることができる。
II工程において、重合条件は、モノマーの種類、重合開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。
III工程は、重合体から粒子状テンプレートを除去する工程である。すなわち、重合終了後、容器から内容物を取り出し、粒子状テンプレートを除去した後、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、2−プロパノール等の溶剤で抽出して、骨格部の全細孔容積が3〜10ml/g、全構成単位中、架橋構造単位が2.5〜20.0モル%である、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を得る。
粒子状テンプレートの除去方法としては、特に制限はなく、例えば、熱溶解、加水分解、酵素分解、酸化分解、エチレンジアミン四酢酸やヘキサメタりん酸ナトリウム等、キレート剤によるイオン交換処理等が挙げられる。これら粒子状テンプレート除去方法の中、熱溶解又はエチレンジアミン四酢酸やヘキサメタりん酸ナトリウム等のキレート剤によるイオン交換処理が、実験操作上の簡易性、該テンプレート除去の容易性の点で好ましい。
IV工程は、ビニルモノマー、架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調整する工程である。
IV工程で用いられるビニルモノマーとしては、前記I工程と同様に分子中に重合可能なビニル基を含有し、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
これらビニルモノマーの添加量は、前記III工程で得られたモノリス中間体に対して、重量で3〜40倍、好ましくは4〜30倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、生成したモノリスの骨格(モノリス骨格の壁部の厚み)を太くできず、体積当りの吸着容量やイオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が40倍を超えると、開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
IV工程で用いられる架橋剤は、前記I工程と同様に分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。
IV工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記ビニルモノマーの濃度が5〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が5重量%未満となると、重合速度が低下してしまうため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
IV工程で用いられる重合開始剤としては、前記I工程と同様に熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
V工程は、前記IV工程で得られた混合物を静置下、且つ前記III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得る工程である。骨太有機多孔質体の骨格部、すなわち、連続マクロポア構造は全細孔容積0.5〜5ml/g、全構成単位中、架橋構造単位を2.5〜20.0モル%含有する。
V工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下でビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造は消失し、上述の骨太のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部分に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行して骨太骨格のモノリスが得られると考えられる。
また注目すべき特徴として本発明のモノリスは、前記IV工程において、ビニルモノマーの添加量を前記III工程で得られたモノリス中間体に対して、重量で3〜40倍とすることで、上述の理由により重合が液相(マクロボイド内)で進行することなく、多孔質体中、すなわち骨格部分や骨格部分の表面で進行することで、モノリス中間体の連続マクロボイド構造を維持したまま骨太有機多孔質体を得ることができる。
V工程において、重合条件はII工程と同様に、モノマーの種類、重合開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。重合終了後、容器から内容物を取り出し、未反応のビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、2−プロパノール等の溶剤で抽出してモノリス状有機多孔質体を得る。
次に、本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法について説明する。該モノリス状有機多孔質イオン交換体は、上記の方法により得られたモノリス状有機多孔質体を製造した後、モノリス状有機多孔質体の骨格部分の表面及び骨格部分の内部にイオン交換基を均一に導入したものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.1mg当量/ml以上、好ましくは0.15〜5.0mg当量/mlである。このように、予めモノリス状有機多孔質体を製造し、その後、イオン交換基を導入する方法が、モノリス状有機多孔質イオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
上記モノリス状有機多孔質体の骨格部分の表面及び骨格部分の内部にイオン交換基を均一に導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;有機多孔質体の表面及び骨格内部にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体をクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体の表面及び骨格内部にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、有機多孔質体に三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、スルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン−ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により有機多孔質体を製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を骨格表面及び骨格内部に均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
イオン交換容量の調整は、多孔質体と反応試薬の選択により適宜決定できる。例えば、0.1mg当量/gといった比較的低いカチオン交換容量の多孔質体を製造する場合には、濃硫酸やクロロスルホン酸といったスルホン化試薬との反応性が低いジビニルベンゼンを主成分とする多孔質体をスルホン化することで達成できる。また、グラフト反応によりカチオン交換基を導入する場合は、多孔質体に導入するラジカル開始基や連鎖移動基の導入量を低く抑えることで、カチオン交換容量を低くすることができる。一方、カチオン交換容量を高くしたい場合には、スルホン化試薬との反応性が高いスチレンを主成分とする多孔質体をスルホン化する。また、グラフト反応を用いる場合には、多孔質体に導入するラジカル開始基や連鎖移動基の導入量を多くすればよい。また、アニオン交換容量や両性イオン交換容量の場合も、前記カチオン交換容量の場合と同じ方法で行うことができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
スチレン4.81g、ジビニルベンゼン0.25g、ソルビタンモノオレート0.27g及び、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/ソルビタンモノオレート/2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を45.0gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて13.3kPaの減圧下、公転回転数1000回転/分、自転回転数330回転/分で2分間撹拌し、油中水滴型エマルジョンを得た(I工程)。
I工程で得られた油中水滴型エマルジョンを円筒容器内に静かに注入した。次いで、該エマルジョン中に真球状で粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルビーズを最密充填し、系内を窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた(II工程)。寒天ハイドロゲルビーズは、寒天溶液を冷却した溶液に滴下し固化させる方法により製造されたものを使用した。
重合終了後、内容物を取り出し、90℃以上に加熱した純水中で1時間撹拌することで、寒天ハイドロゲルを除去した。その後、2−プロパノールで6時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、水及び、ソルビタンモノオレートを除去した後、85℃で一昼夜減圧乾燥することで、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有した、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を得た(III工程)。
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.7mmであった。また骨格部の連続マクロポア構造は、平均半径31μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は12μmであった。得られた多孔質体は、重量4.2g、直径70.0mm、高さ40.5mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質体の製造)
スチレン19.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1−オクタノール30g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gを混合し、均一に溶解させた(IV工程)。
次に上記III工程で得られたモノリス中間体を厚さ約20mmの円盤状に切断して、2.0g分取した。分取したモノリス中間体を内径88mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一昼夜減圧乾燥することで、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有した、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質体を得た(V工程)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.4mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図2に示す。図2のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。図2から明らかなように、当該モノリスの骨格部は連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格部分が比較例の図10のものと比べて遥かに太く、また、骨格を構成する壁部の厚みが厚いものであった。
次ぎに、得られたモノリスを主観を排除して上記位置とは異なる位置で切断して得たSEM画像2点、都合3点から壁部の厚みと断面に表れる骨格部分の面積を測定した。壁部の厚みは1つのSEM写真から得た8点の平均であり、骨格部分の面積は画像解析により求めた。なお、壁部は前述の定義のものである。また、骨格部分の面積は3つのSEM画像の平均で示した。この結果、壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中29%であった。また、粒子状テンプレートを使用しないこと以外は同様の方法で別途に調製した連続マクロポア構造体について、マクロポアの平均半径、開口の平均半径及び全細孔容積を水銀圧入法により測定した。水銀圧入法により測定した当該モノリスのマクロポアの平均半径は30μm、開口の平均半径は11μm、全細孔容積は2.4ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量18.1g、直径86.5mm、高さ24.9mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例1で得られた有機多孔質体に、ジクロロメタン1800mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸99.2gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体を得た。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.45倍であり、直径は125.4mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.17mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.1mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.1mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は44μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は16μmであった。更に、モノリス状有機多孔質体と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは44μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中29%、全細孔容積は2.4mlであった。結果を表3にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルに代えて、粒子半径が2.5mmの寒天ハイドロゲルを使用した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径2.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.2mmであった。また骨格部の連続マクロポア構造は、平均半径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は10μmであった。得られた多孔質体は、重量4.0g、直径70.2mm、高さ42.0mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例2で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、実施例1と同様の方法でスチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。
得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径2.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.1mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図5に示す。図5のSEM画像は、図2と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部の連続マクロポア構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中28%であった。また、実施例1と同様の方法により求めた、当該モノリスのマクロポアの平均半径は28μm、開口の平均半径は9μm、全細孔容積は2.6ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量18.5g、直径86.9mm、高さ24.0mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例2で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.45倍であり、直径は126.0mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.18mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は3.6mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.8mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は41μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は13μmであった。更に、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは44μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中28%、全細孔容積は2.6mlであった。結果を表3にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルに代えて、粒子半径が12.5mmの寒天ハイドロゲルを使用した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径12.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は6.1mmであった。また骨格部の連続マクロポア構造は、平均半径32μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は13μmであった。得られた多孔質体は、重量4.0g、直径70.5mm、高さ40.1mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例3で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、実施例1と同様の方法でスチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。
得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径11.0mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は5.2mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図6に示す。図6のSEM画像は、図2と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部の連続マクロポア構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは30μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中30%であった。また、実施例1と同様の方法により求めた、当該モノリスのマクロポアの平均半径は31μm、開口の平均半径は12μm、全細孔容積は2.5ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量18.9g、直径87.2mm、高さ23.7mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例3で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.46倍であり、直径は127.5mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.20mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は20.0mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は10.0mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は45μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は18μmであった。更に、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは44μm、骨格部面積はSEM写真の写真領域中30%、全細孔容積は2.5mlであった。結果を表3にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルに代えて、粒子半径が1.5mmのアルギン酸カルシウムハイドロゲルビーズを使用したことと、テンプレート除去条件を、90℃以上に加熱した純水中で1時間撹拌に代えて、10%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液中で4時間撹拌としたこと以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。なお、アルギン酸カルシウムハイドロゲルビーズは、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中に滴下してゲル化させる方法で得られたものを使用した。
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.8mmであった。また骨格部の連続マクロポア構造は、平均半径32μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は12μmであった。得られた多孔質体は、重量4.3g、直径70.5mm、高さ40.1mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例4で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、実施例1と同様の方法でスチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。
得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.4mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.6mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図7に示す。図7のSEM画像は、図2と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部の連続マクロポア構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは32μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中29%であった。また、実施例1と同様の方法により求めた、当該モノリスのマクロポアの平均半径は30μm、開口の平均半径は10μm、全細孔容積は2.2ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量18.5g、直径86.3mm、高さ23.2mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例4で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.44倍であり、直径は124.3mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.22mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.3mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.2mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は43μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は14μmであった。更に、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは46μm、骨格部分の面積はSEM写真の写真領域中29%、全細孔容積は2.2mlであった。結果を表3にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
スチレン4.81g、ジビニルベンゼン0.25g、ソルビタンモノオレート0.27gの原料に代えて、スチレン1.69g、ジビニルベンゼン0.09g、ソルビタンモノオレート0.10gの原料とした以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.7mmであった。また骨格部の連続マクロポア構造は、平均半径58μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は22μmであった。得られた多孔質体は、重量2.1g、直径69.5mm、高さ38.7mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質体の製造)
スチレン19.0g、ジビニルベンゼン1.0g、1−オクタノール30g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2gの原料に代えて、スチレン23.8g、ジビニルベンゼン1.25g、1−オクタノール35g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gの原料としたこと、実施例1のモノリス中間体2.0g分取に代えて、実施例5のモノリス中間体1.1g分取したこと以外は実施例1と同様の方法で、モノリス状有機多孔質体を製造した。
得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.4mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.6mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図8に示す。図8のSEM画像は、図2と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部の連続マクロポア構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは28μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中26%であった。また、実施例1と同様の方法により求めた、当該モノリスのマクロポアの平均半径は40μm、開口の平均半径は16μm、全細孔容積は4.5ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量21.4g、直径88.0mm、高さ23.7mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質体に代えて、実施例5で得られたモノリス状有機多孔質体を使用した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.47倍であり、直径は129.4mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.18mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.1mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.9mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は59μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は24μmであった。更に、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは41μm、骨格部分の面積はSEM写真の写真領域中26%、全細孔容積は4.5mlであった。結果を表3にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
スチレン4.81g、ジビニルベンゼン0.25g、ソルビタンモノオレート0.27gの原料に代えて、スチレン12.8g、ジビニルベンゼン0.68g、ソルビタンモノオレート0.71gの原料とした以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.7mmであった。また骨格部の連続マクロポア構造は、平均半径12μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は7μmであった。得られた多孔質体は、重量12.1g、直径71.0mm、高さ43.5mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例1のモノリス中間体2.0g分取に代えて、実施例6で得られたモノリス中間体5.6g分取としたこと以外は実施例1と同様の方法で、モノリス状有機多孔質体を製造した。
得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.3mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図9に示す。図9のSEM画像は、図2と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部の連続マクロポア構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは35μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中35%であった。また、実施例1と同様の方法により求めた、当該モノリスのマクロポアの平均半径は12μm、開口の平均半径は6μm、全細孔容積は1.5ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量21.0g、直径89.4mm、高さ24.5mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質体に代えて、実施例6で得られたモノリス状有機多孔質体を使用した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.42倍であり、直径は126.9mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.22mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は1.8mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.7mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は17μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は9μmであった。更に、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは50μm、骨格部分の面積はSEM写真の写真領域中35%、全細孔容積は1.5mlであった。結果を表3にまとめて示す。
(モノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造)
実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質体を製造した。
得られた有機多孔質体に、ジメトキシメタン1405ml、四塩化スズ44.6gを加え、10℃以下まで冷却した後、クロロ硫酸978.7gを徐々に加え、昇温して35℃で5時間反応させた。その後、再び10℃以下まで冷却し、容器より反応溶液を抜き取り、テトラヒドロフラン/水=1/1混合溶液1800mlを加え洗浄し、クロロメチル化有機多孔質体を得た。該クロロメチル化有機多孔質体に、テトラヒドロフラン1800mlを加え、そこにトリメチルアミン30%水溶液879.1gを加え、昇温して50℃で6時間反応させた。その後、容器より反応溶液を抜き取り、メタノール/水=1/1混合溶液1800mlを加え洗浄を行い、更に純水で洗浄してモノリス状有機多孔質アニオン交換体を得た。得られたアニオン交換体の、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量は、0.16mg当量/mlであった。
比較例1
(連続気泡構造型モノリス状有機多孔質体の製造)
スチレン4.81g、ジビニルベンゼン0.25g、ソルビタンモノオレート0.27g及び、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07g及び純水45.0gの原料に代えて、スチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01g、ソルビタンモノオレート1.07g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26g及び純水180gの原料に変更したこと、寒天ハイドロゲルビーズの使用を省略したこと以外は、実施例1のモノリス状有機多孔質中間体と同様の方法でモノリス状有機多孔質体を製造した。
得られた有機多孔質体は、粒子状テンプレートを用いないことから、連続マクロボイド構造を形成しておらず、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3.3モル%含有した連続マクロポア構造のみを形成した。連続マクロポア構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは5μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中10%であった(図10参照)。また、当該モノリスのマクロポアの平均半径は30μm、開口の平均半径は11μm、全細孔容積は8.6ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量16.7g、直径71.0mm、高さ40.5mmの円柱状であった。結果を表1、表2にまとめて示す。
(連続気泡構造型モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
比較例1で得られた連続マクロポア構造のモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られた該カチオン交換体には連続マクロボイド構造は形成しておらず、反応前後の膨潤率は1.55倍であり、直径110.1mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.21mg当量/mlであった。
この有機多孔質カチオン交換体の内部構造は、連続マクロポア構造を有しており、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは8μm、断面で表れる骨格部分の面積はSEM画像中10%であった。また、水湿潤状態の平均細孔半径を、有機多孔質体の平均細孔半径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は47μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は17μmであった。結果を表3にまとめて示す。
参考例1
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例1で製造したモノリス状有機多孔質中間体を、スチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行う工程を省略し、そのままスルホン化反応を行うことで、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
すなわち、実施例1のIII工程で得られたモノリス状多孔質中間体を厚さ約20mmの円盤状に切断して、2.0g分取した後、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.56倍であり、直径は109.5mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.05mg当量/mlであった。
水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.4mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.3mmであった。
また、骨格部の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、マクロポアの平均半径は48μm、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は19μmであった。更に、実施例1と同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚みは8μm、骨格部分の面積はSEM写真の写真領域中10%、全細孔容積は8.5mlであった。結果を表1、表2、表3にまとめて示す。
(イオン除去性能試験1)
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質カチオン交換体を、内径10mm、高さ100mmのカラムに充填し、0.004mol/l 塩化ナトリウム水溶液(Naイオン濃度:92.0ppm)を、線速度10m/hで通液し、Naイオンの除去性能を測定した。その結果、Naイオン除去率は99%以上であり、圧力損失は0.002MPaであった。また、モノリス状有機多孔質カチオン交換体は、イオン除去性能試験に耐える強度を有するものであった。
(イオン除去性能試験2)
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質カチオン交換体に代えて、比較例1で製造した連続気泡構造型モノリス状有機多孔質カチオン交換体を用いたこと以外は、イオン除去性能試験1と同様のイオン除去性能試験を行った。その結果、Naイオン除去率は99%以上であったが、圧力損失は0.014MPaであった。
Figure 0005486162
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本発明のモノリス状多孔質体等は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し、更に連続マクロポア構造は骨太骨格構造というユニークな構造である。このことから、水や気体などの流体を流した際圧力損失が極めて低くなることが期待でき、フィルターや吸着剤;2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置に充填して用いられるイオン交換体;固体酸/塩基触媒として有用であり、広範な用途分野に応用することができる。
本発明のモノリス状多孔質体等の基本骨格構造を示す模式図である。 実施例1で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM画像である。 図2のSEM画像の断面として表れる骨格部を手動転写したものである。 実施例1で得られたモノリス状有機多孔質カチオン交換体の外観写真である。 実施例2で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM画像である。 実施例3で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM画像である。 実施例4で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM画像である。 実施例5で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM画像である。 実施例6で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM画像である。 比較例1で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
符号の説明
1 マクロボイド
2 共通の開口
3 マクロポア
4 共通の開口
11 写真領域
12 断面に表れる骨格部
13 マクロポア
X 連続マクロポア構造
Y 連続マクロボイド構造
Z−Z 2つのマクロポアの中心を結ぶ線
d 壁面厚み

Claims (5)

  1. マクロボイド同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径0.1〜25mmの開口となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径10〜100μmの開口となる連続マクロポア構造であり、該骨格部(乾燥状態)の切断面のSEM画像において断面に表れる骨格部分の面積が、画像領域中25〜50%であり、前記マクロボイドの平均半径が、前記マクロポアの平均半径の2倍以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質体。
  2. 前記マクロボイドの平均半径が、前記マクロポアの平均半径の2〜250000倍であることを特徴とする請求項1記載のモノリス状有機多孔質体。
  3. 下記工程;
    ビニルモノマー、界面活性剤、水、架橋剤及び必要に応じて重合開始剤を、ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)が1:49〜1:3、架橋剤がビニルモノマーと架橋剤の合計中、2.5〜20.0モル%(ただし、2.5モル%を除く。)となるように配合し、撹拌混合して油中水滴型エマルジョンを調製するI工程、
    該油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合するII工程、
    該重合体から該粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を得るIII工程、
    ビニルモノマー、架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤を、ビニルモノマーをモノリス状有機多孔質中間体に対して3〜40倍となる配合量で混合し、調整するIV工程、
    IV工程で得られた混合物を静置下、且つ該III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する骨太有機多孔質体を得るV工程、
    を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質体の製造方法。
  4. 前記粒子状テンプレートが、多糖類ハイドロゲルであることを特徴とする請求項3記載のモノリス状有機多孔質体の製造方法。
  5. 請求項1又は2記載のモノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部にイオン交換基が導入されたものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.1mg当量/ml以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体。
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