JP4032940B2 - 電子写真用現像剤及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る電子写真用現像剤、及び電子写真用現像剤を用いた画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用トナー(以下、単に「トナー」という場合がある)の定着方式としては、常温で圧力ロールのみを用いる圧力定着方式、加熱ロール等を用いる接触加熱型定着方式や、オーブン加熱によるオーブン定着方式、キセノンランプ等によるフラッシュ定着方式、マイクロ波等による電磁波定着方式、溶剤蒸気を用いる溶剤定着方式等の非接触定着方式が挙げられるが、従来、熱を用いたオーブン定着方式や接触加熱型定着方式が信頼性や安全性の面から主に使用されている。
【0003】
特に加熱ロールやベルト等を用いる接触加熱型定着方式は、通常加熱源を設けた加熱ロールまたはベルトと、加圧ロールまたはベルトとから構成され、加熱ロールまたはベルト表面に被記録体のトナー画像面を圧接触させながら通過させることにより定着を行うものであり、加熱ロールまたはベルト表面と被記録体のトナー画像面とが直接接触するため、熱効率が有効で迅速に定着を行うことができるという特徴を有しており、広く採用されている。
【0004】
これらの熱定着方式では、電源を入れてから定着機の温度が使用温度まで迅速に上昇し定着可能な状態となるまでの時間、いわゆるウォームアップタイムの短縮とともに、エネルギー使用量を低減するため、より低温で定着できることが望まれている。特に近年では、省エネルギーの徹底のため使用時以外は定着器への通電を停止することが望まれており、定着器温度は、通電とともに瞬時に定着可能温度に達する必要があるため、より一層低温での定着が必要となっている。また、定着温度を低減することにより、同じ消費電力であってもプリントスピードの高速化が可能であり、さらに接触加熱型定着方式では加熱ロールなどの定着部材の長寿命化が可能となるため、コストの面からも好ましい。
【0005】
しかしながら、従来の方法においてトナーの定着温度を低温化させることは、同時に必然的にトナーのガラス転移点も低下させてしまうことになり、トナーの保存性との両立が困難となる。低温定着化とトナー保存性との両立のためには、トナーがガラス転移点をより高温に保ったまま、高温領域でトナーの粘度が急速に低下する、いわゆるシャープメルト性をもつことが必要である。
【0006】
一方、トナーに使用される樹脂は、通常ある程度ガラス転移点、分子量等に幅を持つため、前記シャープメルト性を得るためには、極端に樹脂の組成、分子量をそろえる必要があるものの、前記樹脂を得るためには、特殊な製法を用いたり、樹脂をクロマトグラフィー等で処理をすることにより樹脂の分子量を整える必要が生じてしまい、この場合、樹脂作製のためのコストが高くならざるを得ず、またその際に不要な樹脂が生じ、近年の環境保護の観点からも好ましくない。
【0007】
このような低温定着性を実現するために、結着樹脂として結晶性樹脂を使用する方法が検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。結晶性樹脂を使用することにより、結晶の融点以下ではトナーの硬さが保持され、融点を超えたところで結晶の融解とともに粘度が急激に低下することにより、低温定着が図られる。しかし上記開示技術では、結晶性樹脂の融点が若干低すぎるため、粉体や画像の信頼性に問題があったり、結晶性樹脂では紙への定着性能が十分ではないという問題点があった。
【0008】
紙への定着性改善が期待される結晶性樹脂としては、ポリエステル樹脂が挙げられ、結晶性ポリエステルをトナーに用いることが提案された(例えば、特許文献4参照)。これは、ガラス転移温度が40℃以上の非結晶性ポリエステルと、融点が130℃〜200℃の範囲の結晶性ポリエステルを混合して用いる方法である。しかしこの方法は、優れた粉砕性、耐ブロッキング性を有するが、結晶性ポリエステルの融点が高く、従来以上の低温定着性は達成できない。
【0009】
また、結晶性樹脂として融点が110℃以下の樹脂を用い、非結晶性樹脂を混合させトナーとして使用する方法も提案された(例えば、特許文献5参照)。しかし、結晶性樹脂に対して非結晶性樹脂を混合する場合には、トナーの融点降下を起こし、トナーブロッキング、画像の保存性の悪化等実用上問題がある。また、非結晶性樹脂成分が多い場合には、非結晶性樹脂成分の特性が大きく反映されるため、定着温度を従来より低下させることは難しい。よって、トナー用樹脂としては結晶性樹脂を単独で用いるか、非結晶性樹脂を混合してもごくわずかの量でないと実用化は困難である。
【0010】
以上より、結晶性ポリエステル樹脂をできるだけ単独で熱ロール定着に用いることが望ましく、結晶性ポリエステル樹脂を用いる例がいくつか提案された(例えば、特許文献6〜8参照)。しかしこれらは、テレフタル酸のカルボン酸成分に対して、炭素数の少ないアルキレングリコールや脂環族アルコールを用いている樹脂である。したがって、その中に、結晶性ポリエステル樹脂という記述はあるものの、部分結晶性ポリエステルであり、トナー(樹脂)の温度に対する粘度変化が急峻でなく、ブロッキング性・定着後の画像保存性に問題はないものの、熱ロール定着において従来以上の低温定着を実現することはできない。
【0011】
一方、本発明者らは既に、架橋構造を有する結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含むトナーが、耐ブロッキング性・画像の保存性に優れ、かつ低温定着を実現し得ることを示した(例えば、特許文献9参照)。しかしながら、かかるトナーでは、特に電子写真用キャリア(以下、単に「キャリア」という場合がある)との2成分現像剤の帯電において、帯電性のより一層の向上が望まれる。これに対し、樹脂組成を規定する方法を試みているが(例えば、特許文献10参照)、この方法では帯電性の向上は示しているものの、負帯電性トナーの場合帯電分布が広く、経時での帯電安定性も十分ではない。また、スルホン酸成分を含有すると負帯電性は向上するものの、外部環境、特に高温高湿下での帯電性低下が大きく、未だ改善の余地がある。
【0012】
【特許文献1】
特公昭56−13943号公報
【特許文献2】
特公昭62−39428号公報
【特許文献3】
特公昭63−25335号公報
【特許文献4】
特公昭62−39428号公報
【特許文献5】
特公平4−30014号公報
【特許文献6】
特開平4−120554号公報
【特許文献7】
特開平4−239021号公報
【特許文献8】
特開平5−165252号公報
【特許文献9】
特開2001−117268号公報
【特許文献10】
特開2002−82845号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、低融点の結晶性ポリエステル樹脂をトナーの結着樹脂の主成分として使用することで、従来に比べ低温での定着が可能となり、定着工程でのエネルギーを大幅に低減し、またウォームアップタイムを短縮し、さらに定着後の優れた画像保存性を達成できる電子写真用現像剤の提供を目的とする。
加えて本発明は、前記結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度を規定し、さらにフッ素含有樹脂被覆キャリアと組み合わせることで、帯電性、帯電の環境依存性、また経時での帯電安定性に優れた正帯電電子写真用トナーを含む電子写真用現像剤、及びそれを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> キャリアとトナーとからなる電子写真用現像剤であって、
該キャリアが、芯材表面にフッ素含有樹脂を含む被覆樹脂層が設けられた電子写真用キャリアであり、
前記トナーが、少なくとも着色剤と、下記式(1)で定義されるエステル濃度Mが0.06以上0.12以下、融点が50〜120℃の範囲であり、スルホン酸基を実質的に含まない結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、からなり、該結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解若しくは分散して混合液を調製する混合工程、該混合液を水系媒体中に添加し、回転羽根を有する乳化機を用いて分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程、該分散懸濁液より溶媒を除去する溶媒除去工程を、少なくとも有してなる溶解懸濁法により製造され、体積平均粒径が3.0〜9.0μmの範囲である正帯電電子写真用トナーであることを特徴とする電子写真用現像剤である。
M=K/A ・・・ 式(1)
(上記式中、Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
【0015】
<2> 前記フッ素含有樹脂がフッ化ビニリデン系樹脂である<1>に記載の電子写真用現像剤である。
<3> 前記エステル濃度Mが、0.065以上0.115以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載の電子写真用現像剤である。
<4> 前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が、60〜110℃の範囲であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真用現像剤である。
<5> 前記結晶性ポリエステル樹脂が、酸由来構成成分として2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分を含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の電子写真用現像剤である。
【0016】
<6> 潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、該静電潜像を現像剤により現像してトナー画像を形成する現像工程と、潜像担持体表面に形成されたトナー画像を被記録体に転写して転写画像を形成する転写工程と、被記録体に転写された転写画像を定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記現像剤が、<1>に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成方法である。
【0017】
さらに本発明は、前記トナーが、少なくともシアン、マゼンタおよびイエローの3色のトナー画像からなるフルカラートナーであること、前記トナーが、0.5〜40質量部の範囲の離型剤を含有したトナーであることが好ましい。また、前記正帯電感光体が、アモルファスシリコン感光体であることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<電子写真用現像剤>
本発明の電子写真用現像剤は、キャリアとトナーとからなる電子写真用現像剤であって、該キャリアが、フッ素含有樹脂を含むマトリックス樹脂で表面が被覆されたキャリアであり、前記トナーが、少なくとも着色剤と、下記式(1)で定義されるエステル濃度Mが0.06以上0.12以下、融点が50〜120℃の範囲であり、実質的にスルホン酸基を含まない結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂とからなることを特徴とする。
M=K/A ・・・ 式(1)
(上記式中、Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
【0019】
(トナー)
本発明におけるトナーを構成する結着樹脂は結晶性ポリエステル樹脂を主成分とし、該結晶性ポリエステル樹脂の上記式(1)で示されるエステル濃度Mは、0.06以上0.12以下であることが必要である。
【0020】
上記「エステル濃度M」とは、結晶性ポリエステル樹脂のポリマーにおけるエステル基の含有割合を示す一つの指標である。前記式(1)中のKで表される「ポリマー中のエステル基数」は、言い換えればポリマー全体に含まれるエステル結合の数を指す。
【0021】
前記式(1)中のAで表される「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」は、ポリマーの高分子鎖を構成する原子の合計であり、エステル結合に関与する原子数は全て含むが、その他の構成部位における枝分かれした部分の原子数は含まない。すなわち、エステル結合に関与するカルボキシル基やアルコール基に由来する炭素原子および酸素原子(1つのエステル結合中酸素原子は2個)や、高分子鎖を構成する、例えば芳香環における6つの炭素は、前記原子数の計算に含まれるが、高分子鎖を構成する、例えば芳香環やアルキル基における水素原子、その置換体の原子ないし原子群は、前記原子数の計算に含まれない。
【0022】
具体例を挙げて説明すれば、高分子鎖を構成するアリーレン基における、炭素原子6つと水素原子4つとの計10個の原子のうち、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれるものは、炭素原子の6つのみであり、また、前記水素が如何なる置換基に置換されたとしても、当該置換基を構成する原子は、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれない。
【0023】
結晶性ポリエステル樹脂が、1の繰り返し単位(例えば、高分子がH−[OCOR1COOR2O−]n−Hで表される場合、1の繰り返し単位は、[ ]内で表される。)のみからなる単重合体の場合には、1の繰り返し単位内には、エステル結合は2個存在する(すなわち、当該繰り返し単位内におけるエステル基数K’=2)ので、エステル濃度Mは、下記式(1−1)により、求めることができる。
M=2/A’ ・・・式(1−1)
(上記式中、Mはエステル濃度を、A’は1の繰り返し単位における高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
【0024】
また、結晶性ポリエステル樹脂が、複数の共重合単位からなる共重合体の場合には、共重合単位ごとに、エステル基数KXおよび高分子鎖を構成する原子数AXを求め、これらに共重合割合を乗じた上で、それぞれ合計し、前記式(1)に代入することで、求めることができる。例えば、共重合単位がXa、XbおよびXcの3つであり、これらの共重合割合がa:b:c(ただし、a+b+c=1)である化合物[(Xa)a(Xb)b(Xc)c]についてのエステル濃度Mは、下記式(1−2)により、求めることができる。
M={KXa×a+KXb×b+KXc×c}/{AXa×a+AXb×b+AXc×c}・・・式(1−2)
(上記式中、Mはエステル濃度を表し、KXaは共重合単位Xa、KXbは共重合単位Xb、KXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれのエステル基数を表し、AXaは共重合単位Xa、AXbは共重合単位Xb、AXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれの高分子鎖を構成する原子数を表す。)
【0025】
結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度Mは、これを用いて作製したトナーの帯電性に大きな影響を与える。これはエステル濃度Mにより樹脂抵抗が変化するのが主要因であり、エステル濃度Mが大きくなると樹脂抵抗が低下し、帯電性が低下してしまう。本発明ではエステル濃度を0.06以上0.12以下にすることで、十分な帯電性や帯電安定性が得られるとともに、安定してトナーを作製することが可能となった。
【0026】
また得られたトナーは、従来のアモルファスポリエステル樹脂を使用したトナーよりも正帯電性が強い。アモルファスポリエステル樹脂を使用したトナーは、通常キャリアと混合した場合、良好な負帯電性を示す。しかし、本発明に使用する結晶性のポリエステル樹脂は、上記アモルファスポリエステル樹脂と異なり、キャリアと混合した場合に正帯電性を示すことがわかった。そのため、後述する正帯電用のキャリアと組み合わせることでより安定した正帯電性トナーを得ることができる。
【0027】
前記エステル濃度Mが0.06未満では、樹脂の融点が高くなり、紙への接着性が低下する。また、疎水性が強く、かつ溶剤への溶解性も低下することから安定してトナーを作製することが困難となる。特に、本発明では後述するように、結晶性ポリエステルが実質的にスルホン酸基を含まないため、スルホン酸基を含む結晶性ポリエステル樹脂に比べ疎水性がより強く、エステル濃度Mの下限値はより制限される。さらに、モノマー自身も高価になるためコスト的にも好ましくない。エステル濃度の下限としては0.065が好ましく、0.07がより好ましい。
【0028】
一方エステル濃度が0.12を超えると、樹脂抵抗が低下し、トナーの帯電性が低下してしまう。また融点も低くなりすぎるため、粉体や定着画像の安定性も低下してしまう。エステル濃度の上限としては0.115が好ましく、0.12がより好ましい。
【0029】
本発明においては、特定のポリエステル樹脂が結晶性ポリエステル樹脂である必要がある。特定のポリエステル樹脂が結晶性でない場合、即ち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。また、前記のように結着樹脂として用いてトナー化した場合にも、良好な正帯電性トナーを得ることができない。
【0030】
なお、本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0031】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50〜120℃の範囲であることが必要であり、60〜110℃の範囲であることが好ましく、62〜105℃の範囲であることがより好ましい。融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない。
【0032】
本発明において、前記結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂においては、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピーク温度をもって融点とみなす。
【0033】
既述の如く、本発明のトナーにおける結着樹脂は、前記式(1)で定義されるエステル濃度Mが0.06以上0.12以下である結晶性ポリエステル樹脂(以下、単に「特定のポリエステル樹脂」という場合がある。)を、主成分として含むものであるが、ここで「主成分」とは、前記結着樹脂を構成する成分のうち、主たる成分のことを指し、具体的には、前記結着樹脂の50%以上を構成する成分を指す。ただし、本発明において、前記結着樹脂のうち、特定のポリエステル樹脂が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、全てが特定のポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
【0034】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、本発明において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0035】
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0036】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸が、入手容易性、低融点のポリマーを形成しやすい等の点で好ましい。
【0037】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分や芳香族ジカルボン酸由来構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。尚、上記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0038】
前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0039】
これらの、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分の、全酸由来構成成分における含有量としては、20構成モル%以下が好ましく、10構成モル%以下がより好ましい。
【0040】
前記含有量が20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0041】
なお、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における酸由来構成成分全体中の当該酸由来構成成分、または、アルコール由来構成成分全体中の当該アルコール構成成分を、各1単位(モル)としたときの百分率を指す。
【0042】
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジカルボン酸を用いることが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮すると1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0043】
前記アルコール由来構成成分は、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含む。前記アルコール由来構成成分としては、前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が90構成モル%以上であるのが好ましい。
【0044】
前記含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分等の構成成分である。
【0045】
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。
【0046】
上記2重結合を持つジオール由来構成成分の、アルコール由来構成成分における含有量としては、20構成モル%以下が好ましく、10構成モル%以下がより好ましい。
【0047】
上記含有量が20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0048】
本発明における結晶性ポリエステル樹脂は、実質的にスルホン酸基を含まないことが必要である。実質的にスルホン酸基を含まないことにより、トナーの抵抗値が低下せず、帯電性が低下することがない。上記実質的にスルホン酸基を含まないとは、含んでいてもトナーの抵抗値には影響を及ぼさない程度の量が含まれることをいう。このため、結晶性ポリエステル樹脂中にスルホン酸基を持つ酸由来構成成分、アルコール由来構成成分が含まれる場合には、それらは0.1構成モル%以下であることが好ましい。
【0049】
前記ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0050】
前記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0051】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0052】
具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0053】
本発明におけるトナーに用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が好ましい。
好ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用できる。
【0054】
また、着色剤として磁性粉を使用することもできる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0055】
これらは単独で使用可能な他、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら着色剤の含有量としては、前記結着樹脂に100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲が好ましく、1〜30質量部の範囲がより好ましい。
なお、前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られる。
【0056】
本発明におけるトナーに用いられるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、無機微粒子、帯電制御剤、離型剤等の公知の各種添加剤等を挙げることができる。
【0057】
上記無機微粒子は、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みを調整することができる。無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機微粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、発色性やOHP透過性等透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ微粒子が好ましく用いられる。また、シリカ微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好まし句用いられる。
【0058】
これらの無機微粒子の添加量は、トナー全質量の0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜15質量%の範囲であることがより好ましい。
【0059】
前記帯電制御剤としては、必要に応じて種々の物を用いることができるが、正帯電用の帯電制御剤を使用することが好ましい。該帯電制御剤としては、アジン化合物(ニグロシン)、4級アンモニウム塩などが使用できる。
【0060】
本発明に使用するトナーは、離型剤を含有するのが好ましい。離型剤を含有することで定着工程での離型性が向上し、接触加熱型定着方式では定着ロールに塗布する離型オイルを減少させる、またはなくすことができるため、離型オイルによる定着ロール寿命の低下やオイル筋等のディフェクトを回避することができ、また定着装置の低コスト化にもつながる。
【0061】
離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、 オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;などが挙げられる。
【0062】
離型剤の融点は、50〜120℃の範囲が好ましく、結着樹脂の融点以下であることがより好ましい。離型剤の融点が50℃未満では、離型剤の変化温度が低すぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、複写機内温度が高まった時に現像性が悪化したりする。融点が120℃を超える場合には、離型剤の変化温度が高過ぎ、結晶性樹脂の低温定着性を損ねてしまう場合がある。
本発明において、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0063】
離型剤の含有量としては、トナー原料100質量部に対し1〜20質量部の範囲が好ましく、2〜15質量部の範囲がより好ましい。1質量部未満であると、離型剤添加の効果がない場合がある。20質量部以上であると、帯電性への悪影響が現れやすくなり、また現像器内部においてトナーが破壊されやすくなるため離型剤やトナー樹脂のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れるばかりでなく、例えばカラートナーを用いた場合、定着時の画像表面への染み出しが不十分になり易く、画像中に離型剤が在留しやすくなってしまうため、透明性が悪化してしまう場合がある。
【0064】
また、上記トナーには結晶核剤を添加してもよい。結晶核剤を添加することで結晶サイズを微細化するとともに結晶サイズが均質化されるため、樹脂の透明性を向上させることができる。さらに、結晶核剤は結晶性樹脂の結晶化度を向上させる効果もあり、これにより結晶性樹脂に含まれる非晶質部分の割合が減少するため、トナーの保存性や耐ブロッキング性、または流動性が向上し、感光体へのフィルミング、さらに二成分現像方法の場合にはキャリアへのフィルミングを防止することができる。
【0065】
本発明に使用する結晶核剤としては公知の結晶核剤が使用できる。例えばシリカ、タルク、カオリン、アルミナ、ミョウバン、酸化チタン等の無機系結晶核剤;ジベンジリデンソルビトールやジメチルベンジリデンソルビトール等の低級アルキルジベンジリデンソルビトール、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム等の安息香酸金属塩、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等のリン酸エステル金属塩、モンタン酸ナトリウム等の直鎖脂肪酸金属塩、ロジン酸部分金属塩等の有機系結晶核剤;が挙げられる。特にジベンジリデンソルビトール等の有機系核剤はゲル化剤としても作用し、核剤同士のパーコレーションネットワークによってさらに結晶を微細化/均質化することができる。
【0066】
これら結晶核剤の含有量としては、無機系結晶核剤の場合は0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.3〜10質量部の範囲がより好ましい。有機系結晶核剤の場合は0.005〜10質量部の範囲が好ましく、0.01〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0067】
上記含有量が、無機系結晶核剤の場合は0.1質量部より、有機系結晶核剤の場合は0.005質量部より少ないと、核剤としての働きが十分発現されず、含有量が、無機系結晶核剤の場合は20質量部より、有機系結晶核剤の場合は10質量部より多いと核剤の凝集体による2次障害や核剤の種類によってはゲル化による弾性率の著しい向上から製造性や画像光沢性が懸念となってしまう。また、上記含有量の範囲で無機系、有機系を問わず、2種以上の結晶核剤を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
以上説明した本発明の電子写真用現像剤に用いるトナーの製造方法としては、溶解懸濁法が用いられる。
以下、本発明の電子写真用トナーの製造方法である、溶解懸濁法による製造方法について説明する。
【0069】
前記溶解懸濁法としては、結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解若しくは分散して混合液を調製する混合工程、該混合液を水系媒体中に添加し、回転羽根を有する乳化機を用いて分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程、該分散懸濁液より溶媒を除去する溶媒除去工程を、少なくとも有してなる。また、前記分散懸濁液を加熱し、前記粒子にラジカル反応により架橋構造を導入する架橋工程を導入してもよい。
【0070】
結晶性ポリエステルの懸濁液滴(粒子)の形成は、水系媒体と、結晶性ポリエステル及び着色剤を少なくとも含む混合液(ポリマー液)と、を混合した溶液に剪断力を与えることにより成される。その際、加熱する、或いは、有機溶剤に結晶性ポリエステルを溶解させることにより、ポリマー液の粘性を下げて粒子を形成することができる。また、分散粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。
【0071】
上記分散に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0072】
分散懸濁工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0073】
前記分散剤として無機化合物を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、微粒子を得る目的で、分散媒体中にて無機化合物の微粒子を生成する態様を採用してもよい。前記分散剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲が好ましい。
【0074】
結晶性ポリエステル及び必要に応じて他の樹脂、並びにモノマーを溶解する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類;または水等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。上記溶媒は、不飽和結晶性ポリエステル及び必要に応じて他のモノマーの種類、並びに粒径により、適宜溶媒を選択して用いる。
【0075】
前記溶媒の使用量としては、結晶性ポリエステル及び必要に応じて他のモノマーの総量100質量部に対して、50〜5000質量部の範囲が好ましく、120〜1000質量部の範囲がより好ましい。
【0076】
前記結晶性ポリエステルの懸濁液滴(粒子)の大きさとしては、体積平均粒径で3.0〜9.0μmの範囲であることが好ましく、4.0〜8.0μmの範囲であることがより好ましい。
【0077】
樹脂成分を架橋する目的で、結晶性ポリエステル樹脂として不飽和結晶性ポリエステル樹脂を使用する場合は、架橋工程を導入してもよい。
架橋工程としては、水系媒体中に重合開始剤を溶解させたポリエステル(結着樹脂)を懸濁分散させ、加熱して重合を行う、或いは、ポリエステル(結着樹脂)を懸濁分散させた後、重合開始剤を後から添加して重合を行う等が挙げられる。
【0078】
上記重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、
【0079】
1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシ−α−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
【0080】
これら重合開始剤は、単独で使用することも、または2種以上を併用することもできる。重合開始剤の量や種類は、ポリマー中の不飽和部位量、共存する着色剤の種類や量によって選択される。
また、例えば乳化工程、凝集工程、及び融合工程からなる乳化凝集法の場合には、乳化工程前にあらかじめポリマーに混合しておいてもよいし、凝集工程で凝集塊に取り込ませてもよい。さらには、融合工程、或いは融合工程の後に導入してもよい。凝集工程、融合工程、あるいは融合工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化した液を、粒子分散液(樹脂粒子分散液等)に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0081】
以上のような工程により得られたトナーは、乾燥後に必要に応じて風力分級機等を用いた分級工程を経て粒度分布をシャープにしてもよい。
【0082】
本発明におけるトナーの体積平均粒子径は、3.0〜9.0μmの範囲であり、4.0〜8.0μmの範囲がより好ましい。体積平均粒子径が3.0μmより小さいと、流動性が低下し各粒子の帯電性が不十分になりやすく、また帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる。体積平均粒子径が9.0μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなる。
【0083】
前記体積平均粒子径の測定は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行うことができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0084】
<トナーの好ましい物性>
本発明に使用されるトナーは、常温下で十分な硬さを有することが望まれる。具体的には、その動的粘弾性が、角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa以上であり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa以上であることが望ましい。なお、貯蔵弾性率GLおよび損失弾性率GNは、JIS K−6900にその詳細が規定されている。
【0085】
角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa未満であったり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa未満であると、現像器内でキャリアと混合された時に、キャリアから受ける圧力や剪断力によりトナーの粒子が変形し、安定な帯電現像特性を維持することができないことがある。また、潜像担持体(感光体)表面のトナーがクリーニングされる際に、クリーニングブレードから受ける剪断力によって変形し、クリーニング不良をも生ずることがある。
【0086】
前記角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)及び損失弾性率GN(30)が上記範囲にある場合には、高速の電子写真装置に用いた場合でも定着時の特性が安定し好ましい。
【0087】
さらに、本発明におけるトナーは、温度変化による前記貯蔵弾性率GL及び前記損失弾性率GNの値の変動が、10℃の温度範囲で2桁以上となる温度の区間(10℃温度を上昇させた際に、GL及びGNの値が100分の1もしくはそれより小さい値まで変化するような温度の区間)を有することが好ましい。前記貯蔵弾性率GL及び前記損失弾性率GNが、前記温度の区間を有しないと、定着温度が高くなり、その結果、定着工程のエネルギー消費を低減するのに不十分となることがある。
【0088】
また、本発明の電子写真用トナーは、貯蔵弾性率の常用対数を温度に対してプロットした時に、融点Tmから20℃高い温度(Tm+20℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm+20)、融点Tmから50℃高い温度(Tm+50℃)に於ける貯蔵弾性率をGL(Tm+50)とした場合、下記式(2)を満たし、かつ、損失弾性率の常用対数を温度に対してプロットした時に、融点Tmから20℃高い温度(Tm+20℃)における損失弾性率をGN(Tm+20)、融点Tmから50℃高い温度(Tm+50℃)に於ける損失弾性率をGN(Tm+50)とした場合、下記式(3)を満たすことが、画像部位による温度分布等で生じる画像光沢の不均一性を減少させるため好ましい。
|logGL(Tm+20)−logGL(Tm+50)|≦1.5・・・式(2)
|logGN(Tm+20)−logGN(Tm+50)|≦1.5・・・式(3)
【0089】
この指標は、本発明におけるトナーの粘度が、融点以降では温度に対する依存性が緩やかであることを示し、粘弾性の温度依存性がより低くなることを意味する。
【0090】
図1は、本発明におけるトナーの好ましい特性を示すグラフである。図1において、縦軸は貯蔵弾性率の常用対数logGL、あるいは、損失弾性率の常用対数logGNを表し、横軸は温度を表す。このような特性を有するトナーにおいては、結晶性ポリエステルの融点付近である60〜120℃の温度領域において急激な弾性率の低下が見られ、また、所定の温度範囲でその弾性率が安定することから、定着時の画像部位による温度分布から生じる画像光沢の不均一性や、高温に加熱されても、紙等の被記録体に対する過度の染み込みを防止することができる。
【0091】
このように、既述のようにして製造され、前記の構成、特性を有する本発明におけるトナーは、耐トナーブロッキング性、画像の保存性、及び低温定着性に優れるものである。
【0092】
本発明においては、トナー粒子表面に流動化剤や助剤等の外添剤を添加処理してもよい。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できるが、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種は、30nm〜200nmの範囲、さらには30nm〜180nmの範囲の平均1次粒子径を有することが好ましい。
【0093】
トナーが小粒径化することによって、感光体との非静電的付着力が増大するため、転写不良やホローキャラクターと呼ばれる画像抜けが引き起こされ、重ね合わせ画像等の転写ムラを生じさせる原因となるため、平均1次粒子径が30nm〜200nmの大径の外添剤を添加することにより、転写性を改善させることができる。
【0094】
平均1次粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を十分に低減できず、転写効率が低下し画像のぬけが発生したり、画像の均一性を悪化させてしまったりする。また、経時による現像機内でのストレスによって微粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化し、コピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題を引き起こす。平均1次粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性悪化の原因ともなる。
【0095】
(キャリア)
本発明に用いるキャリアとしては、芯材表面にフッ素含有樹脂を含む被覆樹脂層が設けられた電子写真用キャリアであることが必要である。前述のように、結晶性ポリエステル樹脂を用いたトナーは正帯電性が強いが、該トナーを正帯電しやすい上記キャリアと組み合わせることで、より安定した正帯電性を得ることができる。また、フッ素含有樹脂は表面エネルギーが小さいため、トナー及びトナー組成物、または外添剤によるキャリア汚染が少なく、優れた帯電経時安定性を得ることができる。
【0096】
フッ素含有樹脂としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、帯電性及び帯電安定性の観点から、フッ化ビニリデン系樹脂が好ましく用いられる。
【0097】
これらのフッ素含有樹脂は、シリコーン樹脂等他の樹脂と組み合わせて使用することができる。他の樹脂と組合わせることにより、被覆樹脂層の芯材との接着性向上や帯電性制御を行うことができる。
【0098】
シリコーン樹脂は、ケイ素原子がシロキサン結合を介して互いに結合し、網目状に伸び広がった巨大分子であり、該巨大分子表面のシロキサン結合を介して、他の3以下のケイ素原子としか結合していないケイ素原子は通常水酸基を有しているが、本発明においては、この水酸基の少なくとも一部がメチル基、またはメチル基及びフェニル基と置換してなる樹脂である、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0099】
また、その他のフッ素樹脂と組み合わせて用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂が挙げられる。さらに、芯材との密着性を向上させるために、樹脂中にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤を含有させたり、あるいは芯材にこれらを塗布したりすることもできる。
【0100】
芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、またはフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、中でもフェライト系芯材が好ましく用いられる。フェライト系芯材としては、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライト等の芯材が挙げられる。
【0101】
また、磁性粉を結着樹脂中に分散した樹脂−磁性粉分散型キャリア芯材も挙げられる。結着樹脂としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂等が挙げられる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0102】
キャリア芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜100μmの範囲が好ましく、20〜80μmの範囲がより好ましく、25〜60μmの範囲がさらに好ましい。
【0103】
一般にキャリアは、適度な電気抵抗値を有することが必要であり、具体的には109 〜1014Ωcmの範囲程度の電気抵抗値が求められている。例えば鉄粉キャリアのように電気抵抗値が106 Ωcmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題が生じる。一方、絶縁性の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、その結果エッジの効いた画像にはなるが、反面大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなる、エッジ効果という問題が生じてしまう。そのため、キャリアの抵抗調整のために樹脂被覆層中に導電性微粉末を分散させることが好ましい。
【0104】
導電性微粉末の具体例としては、金、銀、銅のような金属;カーボンブラック;更に酸化チタン、酸化亜鉛のような半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの;等が挙げられる。
また、上記導電性微粉末の添加量としては、マトリックス樹脂100質量部に対し、1.0〜20.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0105】
前記被覆樹脂層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を微粒子化し被膜樹脂の融点以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被膜させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。
【0106】
上記方法により形成される被膜樹脂層の平均膜厚は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.2〜5μmの範囲がより好ましい。
【0107】
(電子写真用現像剤)
本発明の電子写真用現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0108】
<画像形成方法>
次に、本発明の電子写真用現像剤を用いた画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法は、潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤担持体に担持された現像剤を用い、前記潜像担持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記潜像担持体表面に形成されたトナー画像を紙等の被記録体表面に転写する転写工程と、被記録体表面に転写されたトナー画像を熱定着する定着工程とを含むものであって、前記現像剤として、本発明の電子写真用現像剤を用いることを特徴とするものである。前記潜像担持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。
【0109】
図2は、潜像担持体が電子写真感光体(以下、単に「感光体」という場合がある)である場合の画像形成装置の概略構成図である。まず、該感光体1の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等の帯電器2により一様に帯電した後、レーザーやLED等の露光装置3により露光し、感光体1表面に静電潜像を形成する。正帯電トナーを使用する場合、感光体1が正帯電感光体であることが、反転現像方式採用の観点から望ましい。また帯電器として一般的なコロトロン帯電器は正帯電用の場合、オゾンの発生量が少なく、環境の面でも好ましい。さらにオゾンによる感光体劣化も少ないため、感光体寿命も向上する(潜像形成工程)。
【0110】
次いで、感光体1表面に形成された静電潜像を、感光体1に対向して配置された現像器4から供給されるトナーにより現像してトナー画像を形成する。本発明のトナーとキャリアとからなる二成分現像方式の場合、現像器4のマグロール等、現像剤担持体表面に磁性キャリアがブラシ状に現像剤層が形成され、これにトナーが付着した、いわゆる磁気ブラシによりトナー画像形成される(現像工程)。
【0111】
感光体1表面に形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器、バイアス電圧が印加された転写ロール等の転写装置5により、紙等の被記録体6表面に転写される。この場合、現像工程で得られたトナー画像をそのまま被記録体6に転写する以外にも、中間転写体を用い、該中間転写体に一旦転写した後に被記録体6に転写する手段も採ることが可能である(転写工程)。
【0112】
フルカラーの画像を得ようとする場合には、現像工程で少なくともシアン、マゼンタ及びイエローの3色、さらに必要に応じてブラックの4色のトナーを用いて現像されたトナー画像を積層して転写することにより行われる。この時、中間転写体を用いて、中間転写体表面にこれらを一旦積層転写した後(1次転写)、一括して転写体に転写する(2次転写)ことは、位置ずれのない、発色性の良好な画像を得る上で好ましいものである。
【0113】
その後、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等のクリーニング装置7で感光体1表面の残存トナーを除去し、除電装置8により残存電荷が除去される(クリーニング工程)。
【0114】
該電子写真感光体としては、正帯電感光体が好ましく用いられる。また、該正帯電感光体としてはアモルファスシリコン感光体や正帯電用OPCが好ましい。特にアモルファスシリコン感光体は、正帯電トナー用の感光体として優れており、対摩耗性、耐傷つき性、耐衝撃性等も格段に優れている。そのため、クリーニングブレード等による摩耗が少なく、感度の経時変化が少なく、また感光体ライフを向上させることができる。
【0115】
正帯電用OPCとしては、正帯電用単層OPCが好ましく用いられる。正帯電用単層OPCは負帯電用OPCに比べ、単層であるため工程の簡略化もできる。また光電特性の変化が少ないため、OPCの長寿命化が可能となり好ましい。
【0116】
前記アモルファスシリコン感光体は、アルミニウム、ステンレス鋼等の導電性基板表面に電荷注入阻止層や光導電層、表面層等を積層した層構造を有している。図3は、その一例の模式的断面図である。図3においては、感光体は、支持体(導電性基板)11の表面に、電荷注入阻止層12、光導電層13、電荷捕獲層14、中間層15及び表面層16が積層した層構成を有する。
【0117】
電荷注入阻止層12から中間層16までの各層は、アモルファスシリコンを主体とする層であって、グロー放電分解法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等の手段によって形成することができる。電荷注入阻止層12の材料としては、第III族元素が添加されたアモルファスシリコンが挙げられ、さらに接着性向上等の目的で窒素、酸素等が添加される。
【0118】
光導電層13の材料としては、水素及び/またはハロゲンが添加されたアモルファスシリコンが挙げられ、導電性制御の目的で第III族元素を添加してもよい。またこの光導電層13は、電荷発生層と電荷輸送層との2種から構成されていてもよい。
【0119】
電荷捕獲層14の材料としては、第III族元素が添加されたアモルファスシリコンが挙げられる。
中間層15は存在しなくてもよく、また中間層15が存在する場合、単層構造でも、複数の層より構成されていてもよい。
【0120】
電荷捕獲層14または中間層15の表面に設ける表面層16の形成方法としては、グロー放電分解法、プラズマCVD法、蒸着法、イオンプレーティング法が挙げられ、成膜材料としてSiOX、SiNX、SiCX、a−C、AlOX等が挙げられる。また、ソルベントキャスト法による塗布膜として、シリコーンハードコート剤、熱硬化性有機高分子材料、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の硬化性高分子を用いることができる。表面層16は、圧力転写時のアモルファスシリコン感光体表面に発生する傷を防ぎ、また、転写効率を改善するのに有効である。また表面層16は、結着樹脂中に導電性金属酸化物微粉末を分散した層であってもよい。
【0121】
感光体1には、電子写真特性及び帯電電位安定のために、感光体温度を一定に保つための加熱及び冷却源を設けてもよい。
【0122】
また、アモルファス感光体の表面には、長期使用によってオゾンやNOX由来物質が付着し、電荷がリークする所謂「像流れ」を生じやすいため、現像剤中に研磨剤を添加してもよい。研磨剤としては、チタン酸ストロンチウムやアルカリ土類金属、炭酸塩等が挙げられる。
【0123】
単色の画像を得ようとする場合、前記転写工程で被記録体に転写される転写画像の画像面積率100%領域におけるトナー質量(TMA)は、0.80mg/cm2以下であることが好ましく、0.60mg/cm2以下であることがより好ましい。TMAが0.80mg/cm2より多いと、その条件で積層画像を形成した場合の画像段差が大きくなるため視覚的な違和感が大きくなる。またトナー消費量も多くなるため、コスト的にも好ましくない。
【0124】
トナー画像を転写する被記録体(記録材)6としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、前記被記録体6の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
【0125】
さらに、被記録体6の表面に転写されたトナー画像は、図2における加熱型定着器9により熱定着され、最終的な定着画像が形成される(定着工程)。
加熱型定着器9としては、加熱ロール等を用いる接触加熱型定着方式や、オーブン加熱による非接触加熱型定着方式が挙げられるが、信頼性や安全性、また熱効率の観点から接触型定着装置を用いることが好ましい。ここでいう接触型定着装置とは、定着ロール等の定着部材が、転写画像が形成されている被記録体6を圧接することにより、被記録体6に転写画像を定着する方式の定着装置をいい、従来公知の接触型定着装置を広く使用することができる。圧接の方式としては、2つの接触するロール間、または接触するロールとベルトとの間等に、転写画像が形成されている被記録体6を通過させ、ロール−ロールまたはロール−ベルトのニップ領域で、転写画像を圧接し定着する方法等が挙げられる。
【0126】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
まず、実施例、比較例で用いたキャリア、感光体の製造について説明する。
−キャリア(1)の製造−
Mn−Mg−Srフェライト粒子(パウダーテック社製、体積平均粒径:35μm)100質量部、ペンウオルト社製のKYNAR7201(ポリフッ化ビニリデン−テトラフロロエチレン共重合体)2質量部、及びメチルフェニルシリコーン樹脂(東レダウ社製、フェニル/メチル比:2.4、軟化点:78℃) 0.5質量部を1L小型ニーダーで5分間混合し、熱媒温度200℃に設定して40分間攪拌混練した後、ヒーターを切り、攪拌しながら50分間冷却した。その後、75μmの篩で篩分を行ってキャリア(1)を得た。
【0128】
−キャリア(2)の製造−
メチルフェニルシリコーン樹脂をスチレン−nブチルメタクリレート−MMA共重合体(総研化学社製、軟化点:85℃)に代えた以外は、キャリア(1)の製造と同様にしてキャリア(2)を得た。
【0129】
−キャリア(3)の製造−
スチレン/メチルメタアクリレート共重合体1.5質量部をトルエン10質量部に溶解した液と、Mn−Mg−Srフェライト粒子(平均粒径:35μm)をニーダーに投入し、常圧で70℃まで昇温し30分攪拌した後、減圧して溶剤を留去した。得られたコートキャリアを75μmメッシュで篩分し、キャリア(3)を作製した。
【0130】
−アモルファスシリコン感光体の製造−
厚さ4mm、直径84mmのAl製円筒状基体表面に、グロー放電により電荷注入層、光導電層、電荷捕獲層、表面層を形成した。電荷注入層、光導電層、電荷捕獲層はシランガス、水素ガス及びジボランガスにより製膜され、膜厚は各々約2μm、約15μm、約0.8μmであった。表面層はシランガス、水素ガス及びアンモニアガスにより製膜され、膜厚は約0.1μmであった。
【0131】
<実施例1>
(トナーの製造)
−結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、セバシン酸ジメチル42.2質量部と、フマル酸ジメチル1.1質量部と、ジメチルスルホキシド27質量部と、1,10−デカンジオール33.2質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下でジメチルスルホキシドを留去し、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い、30分間攪拌後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)61.3質量部を合成した。
【0132】
得られた結晶性ポリエステル(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9200であり、数平均分子量(Mn)は4000であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(1)について、NMR(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、ドデカンジオイック酸由来構成成分の含有量が96構成モル%、フマル酸由来構成成分の含有量が4構成モル%であった。
【0133】
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は79℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.084であった。
【0134】
−電子写真用トナー(1)の製造(溶解懸濁法)−
結晶性ポリエステル(1)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部と、トルエン60質量部とを混合し、サンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロースの3.0質量%水溶液36質量部に、炭酸カルシウムの40質量%懸濁液45部と、水45質量部と、を添加した。これに、前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
【0135】
次いで、窒素気流下で加熱攪拌を続けながら、トルエン22質量部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)1.5質量部を溶解させた溶液を前記懸濁溶液に加え、80℃で1.0時間反応させた。さらに攪拌を続けながら、水浴にて40℃まで懸濁溶液を冷却して懸濁重合を終了し、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥により、電子写真用トナー(1)を製造した。
【0136】
得られた電子写真用トナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.5μmであった。また、形状はほぼ球形であった。
【0137】
(電子写真用現像剤の作製・評価)
電子写真用トナー(1)に100質量部に対し、表面疎水化処理したシリカ微粒子(Wacker社製疎水性シリカ:H2050EP)0.8質量部を加え、ヘンシェルミキサーにて5分間添加混合し、その後45μmの篩分網で篩分した。
得られたトナー5質量部とキャリア(1)95質量部とをVブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用現像剤を作製した。
【0138】
−帯電性の評価−
上記電子写真用現像剤をDocuColor 1250(富士ゼロックス(株)製)の現像器に入れ、高温高湿下(28℃/85RH%)、及び低温低湿下(28℃/85RH%)の環境下で24時間放置した。その後、現像器を3分間空回しを行い、現像剤を取り出してブローオフ帯電量測定機(東芝社製)で帯電量を測定した。
【0139】
−かぶり、感光体摩耗/傷の評価−
上記現像器をDocuColor 1250(富士ゼロックス(株)製)改造機に入れ、感光体を前記アモルファスシリコン感光体に変更した。感光体の初期表面電位を+700Vに、露光部分の表面電位が+100Vにするように調整した。また現像器への現像バイアス電圧を+500Vにして反転現像を行うようにした。また、評価環境は22℃/55RH%とした。
【0140】
上記設定でコピー試験を行い、初期及び10000枚複写後に、出力サンプルから30cmの距離で、以下の基準で背景部かぶりの目視評価を行った。なお、○までを許容範囲とした。
◎:かぶりなし
○:近くで観察すると多少かぶりが見られる
△:かぶりが多少目立つ
×:かぶりが目立つ
××:かぶりが非常に目立つ
また100000枚複写後に感光体を取り出し、感光体表面の摩耗及び傷の有無を確認した。
【0141】
−低温定着性の評価−
DocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)の定着器を、定着温度が可変となるように改造し、未定着画像を用いて電子写真用トナー(1)の低温定着性の評価を行った。未定着画像の形成条件は以下の通りとした。
[画像形成条件]
・トナー画像:ソリッド像(40mm×50mm)
・トナー量(記録紙上):0.40mg/cm2
・記録紙:富士ゼロックス社製カラーコピー用ペーパー(J紙)
【0142】
得られた未定着画像を、設定した定着器温度において定着画像を作製した後、得られた各定着画像の画像面を谷折りにし、折れ目部の画像のはがれ度合いを観察し、画像が殆んどはがれない最低の定着温度をMFT(℃)として測定し、低温定着性の評価とした。
【0143】
−画像保存性の評価−
最低の定着温度(MFT(℃))で定着画像が形成された記録紙2枚を、画像面を重ね合わせ、温度60℃、湿度85%の環境下に荷重100g/cm2をかけた状態で7日間放置した。重ね合わせた画像をはがし、記録紙間における画像同士の融着、非画像部に転写があるか否かを目視にて観察し、下記評価基準により評価した。
○:画像保存性に問題なし
△:多少の変化が観察されたが実用上の問題なし
×:大きな変化が観察され、実用上使用不可である
以上の評価結果をまとめて表1に示す。
【0144】
<実施例2>
実施例1の電子写真用現像剤の作製において、キャリア(1)をキャリア(2)に代えた以外は実施例1と同様にして現像剤を作成し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0145】
<実施例3>
(トナーの製造)
−結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、セバシン酸ジメチル42.2質量部と、フマル酸ジメチル1.1質量部と、ジメチルスルホキシド27質量部と、1,6−ヘキサンジオール33.2質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下でジメチルスルホキシドを留去し、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い、30分間攪拌後、粘稠な状態となったところで空冷し反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(2)61.3質量部を合成した。
【0146】
得られた結晶性ポリエステル(2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は11200であり、数平均分子量(Mn)は5000であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(2)のNMR測定によるセバシン酸由来構成成分とフマル酸由来構成成分の共重合比は、96:4であった。
【0147】
また、結晶性ポリエステル樹脂(2)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は79℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.101であった。
【0148】
−電子写真用トナー(2)の製造(溶解懸濁法)−
結晶性ポリエステル(2)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部と、トルエン60質量部とを混合し、サンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロースの3.0質量%水溶液36質量部に、炭酸カルシウムの40質量%懸濁液45部と、水45質量部と、を添加した。これに前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
【0149】
次いで、窒素気流下で加熱攪拌を続けながら、トルエン22質量部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)1.5質量部を溶解させた溶液を前記懸濁溶液に加え、80℃で1.0時間反応させた。さらに攪拌を続けながら、水浴にて40℃まで懸濁溶液を冷却して懸濁重合を終了し、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥により、電子写真用トナー(2)を製造した。
【0150】
得られた電子写真用トナー(2)の体積平均粒子径は6.7μmであった。また形状はほぼ球形であった。
【0151】
(電子写真用現像剤の作製・評価)
実施例2の電子写真用現像剤の作製において、電子写真用トナー(1)を電子写真用トナー(2)に代えた以外は実施例2と同様にして現像剤を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
<比較例1>
(トナーの製造)
−非結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した2口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン65モル部と、テレフタル酸80モル部と、n−ドデセニルコハク酸10モル部と、トリメリット酸10モル部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸)に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させた。その後、210〜250℃で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0153】
得られた非結晶性ポリエステル(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は10200であり、数平均分子量(Mn)は5400であった
【0154】
また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、前述の融点の測定と同様にして測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の開始点をとったガラス転移点(Tg)は62℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.067であった。
【0155】
−電子写真用トナー(3)の製造(溶解懸濁法)−
非結晶性ポリエステル樹脂(1)82質量部と、シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)18質量部とを混合し、バンバリー型混練機を用いて溶融混練し、高濃度の着色樹脂組成物を得た。該着色樹脂組成物25質量部と、非結晶性ポリエステル樹脂(1)75質量部とを酢酸エチル100質量部に分散・溶解させ分散溶液を調製した。
【0156】
得られた分散溶液を、カルボキシメチルセルロース1質量部と、炭酸カルシウム20質量部と、水100質量部と、の混合液中に加え、ミキサーを用いて高速撹拌して分散させ乳化液を得た。この乳化液をビーカーに移し、約5倍量の水を加え、撹拌しながら43℃の温浴中で10時間保持し、前記酢酸エチルを蒸発させた。炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、水とトナーとの混合物を得た。最後に、水を凍結乾燥機で蒸発させ、電子写真用トナー(3)を得た。
【0157】
得られた電子写真用トナー(3)について、前記と同様に平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は7.2μmであった。また形状はほぼ球形であった。
【0158】
(電子写真用現像剤の作製・評価)
実施例2の電子写真用現像剤の作製において、電子写真用トナー(1)を電子写真用トナー(3)に代えた以外は実施例2と同様にして現像剤を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0159】
<比較例2>
(トナーの製造)
−結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、1,4−ブタンジオール90.1質量部と、フマル酸ジメチル22.2量部と、アジピン酸ジメチル161.1質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.3質量部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(3)220質量部を合成した。
【0160】
得られた結晶性ポリエステル(3)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は10200であり、数平均分子量(Mn)は4500であった。
【0161】
また、結晶性ポリエステル樹脂(3)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、DSCを用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は58℃であった。NMR測定によるアジピン酸由来構成成分とフマル酸由来構成成分の共重合比は、96:4であった。エステル濃度Mを計算すると、0.144であった。
【0162】
−電子写真用トナー(4)の製造(溶解懸濁法)−
結晶性ポリエステル(3)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部と、トルエン60質量部とを混合し、サンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロースの3.0質量%水溶液36質量部に、炭酸カルシウムの40質量%懸濁液45部と、水45質量部と、を添加した。これに前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
【0163】
次いで、窒素気流下で加熱攪拌を続けながら、トルエン22質量部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)1.5質量部を溶解させた溶液を前記懸濁溶液に加え、80℃で1.0時間反応させた。さらに攪拌を続けながら、水浴にて40℃まで懸濁溶液を冷却して懸濁重合を終了し、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥により、電子写真用トナー(4)を得た。
【0164】
得られた電子写真用トナー(4)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。また形状はほぼ球形であった。
【0165】
(電子写真用現像剤の作製・評価)
実施例2の電子写真用現像剤の作製において、電子写真用トナー(1)を電子写真用トナー(4)に代えた以外は実施例2と同様にして現像剤を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0166】
<比較例3>
(トナーの製造)
−結晶性ポリエステル樹脂(4)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、1,20−エイコサンジオール37.8質量部と、フマル酸ジメチル1.3質量部と、ジメチルスルホキシド20質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.07質量部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下でジメチルスルホキシドを留去し、窒素気流下、エイコジオイック酸ジメチル38.9質量部を加え、180℃で1時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い、30分時間攪拌した後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(4)33質量部を合成した。
【0167】
得られた結晶性ポリエステル樹脂(4)はTHFに不溶のため、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定及びNMRによる組成分析をすることができなかった。
【0168】
また、結晶性ポリエステル樹脂(4)の融点(Tm)を、前述の測定方法によりDSCを用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は105℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.046であった。
さらに、得られた結晶性ポリエステル樹脂(4)はトルエン及び酢酸エチルに不溶であったため、溶解懸濁法にてトナーを作製することができなかった。このため、以降の評価は行うことができなかった。
【0169】
<比較例4>
(トナーの製造)
−結晶性ポリエステル樹脂(5)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、セバシン酸ジメチル38.4質量部と、フマル酸ジメチル1.1質量部と、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル4.2質量部と、ジメチルスルホキシド27質量部と、1,10−デカンジオール32.8質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌を行った。その後、減圧下でジメチルスルホキシドを留去し、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い、60分間攪拌後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)65質量部を合成した。
【0170】
得られた結晶性ポリエステル(5)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は6800であり、数平均分子量(Mn)は3200であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(1)について、NMR(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、ドデカンジオイック酸由来構成成分の含有量が88.5構成モル%、フマル酸由来構成成分の含有量が4構成モル%、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル由来構成成分の含有量が7.5構成モル%であった。
【0171】
また、結晶性ポリエステル樹脂(5)の融点(Tm)を、前述の測定方法によりDSCを用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は69℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.084であった。
【0172】
−電子写真用トナー(5)の製造(溶解懸濁法)−
結晶性ポリエステル(5)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部と、トルエン60質量部とを混合し、サンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロースの3.0質量%水溶液36質量部に、炭酸カルシウムの40質量%懸濁液45質量部と、水45質量部と、を添加した。これに前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
【0173】
次いで、窒素気流下で加熱攪拌を続けながら、トルエン22質量部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)1.5質量部を溶解させた溶液を前記懸濁溶液に加え、80℃で1.0時間反応させた。さらに攪拌を続けながら、水浴にて40℃まで懸濁溶液を冷却して懸濁重合を終了し、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥により、電子写真用トナー(5)を得た。
【0174】
得られた電子写真用トナー(5)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径は6.0μmであった。また形状はほぼ球形であった。
【0175】
(電子写真用現像剤の作製・評価)
実施例2の電子写真用現像剤の作製において、電子写真用トナー(1)を電子写真用トナー(5)に代えた以外は実施例2と同様にして現像剤を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0176】
<比較例5>
実施例3の電子写真用現像剤の作製において、表面疎水化処理したシリカ微粒子を、負帯電用シリカ(日本アエロジル社製疎水性シリカ:R972)0.6質量部に、キャリア(2)をキャリア(3)に代え、評価機を改造していないDocuColor 1250(富士ゼロックス(株)製)とした以外は実施例3と同様にして評価を実施した。結果を表1に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
表1の結果のように、実施例1〜3で用いた本発明の電子写真用現像剤では、トナーの正帯電性及び環境安定性に優れ、耐刷試験においてもアモルファスシリコン感光体を用いているため、傷等が発生することがなく、高画質な画像を得ることができた。一方、比較例で用いた電子写真用現像剤では、トナーの正帯電性が十分でなかったり、画像保存性に問題が発生し、実用としての性能を満たすことができなかった。
【0179】
【発明の効果】
本発明の電子写真用現像剤を用いることで、従来に比べ大幅な低温定着が可能となり、定着工程での消費エネルギーやウォームアップタイムの大幅な低減を図ることができ、形成される画像の優れた保存性も実現できる。また本発明の電子写真用現像剤を用いることで、優れた正帯電性及び帯電の安定性が得られ、現像剤ライフの大幅な延長を図ることができる。また環境依存性にも優れるため、環境によらず安定した画像が提供できる。加えて、正帯電の場合、帯電器によるオゾンの発生を大幅に減少でき、さらに正帯電現像剤用の感光体としてアモルファスシリコン感光体や正帯電用単層OPCを用いた場合、感光体ライフを大幅に延長でき、感光体交換頻度の低減や画像の安定化を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる電子写真用トナーの好ましい粘弾性特性を示すグラフである。
【図2】 電子写真感光体を用いた画像形成装置の概略構成図である。
【図3】 アモルファスシリコン感光体の構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体(潜像担持体)
2 帯電器
3 露光装置
4 現像器
5 転写装置
6 被記録体
7 クリーニング装置
8 除電装置
11 支持体
12 電荷注入阻止層
13 光導電層
14 電荷捕獲層
15 中間層
16 表面層
Claims (6)
- キャリアとトナーとからなる電子写真用現像剤であって、
該キャリアが、芯材表面にフッ素含有樹脂を含む被覆樹脂層が設けられた電子写真用キャリアであり、
前記トナーが、少なくとも着色剤と、下記式(1)で定義されるエステル濃度Mが0.06以上0.12以下、融点が50〜120℃の範囲であり、スルホン酸基を実質的に含まない結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、からなり、該結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解若しくは分散して混合液を調製する混合工程、該混合液を水系媒体中に添加し、回転羽根を有する乳化機を用いて分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程、該分散懸濁液より溶媒を除去する溶媒除去工程を、少なくとも有してなる溶解懸濁法により製造され、体積平均粒径が3.0〜9.0μmの範囲である正帯電電子写真用トナーであることを特徴とする電子写真用現像剤。
M=K/A ・・・ 式(1)
(上記式中、Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。) - 前記フッ素含有樹脂がフッ化ビニリデン系樹脂である請求項1記載の電子写真用現像剤。
- 前記エステル濃度Mが、0.065以上0.115以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用現像剤。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が、60〜110℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用現像剤。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂が、酸由来構成成分として2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用現像剤。
- 潜像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、該静電潜像を現像剤により現像してトナー画像を形成する現像工程と、潜像担持体表面に形成されたトナー画像を被記録体に転写して転写画像を形成する転写工程と、被記録体に転写された転写画像を定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記現像剤が、請求項1に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
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