JP2004361790A - 画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る画像形成方法に関し、トナーブリスターの発生を抑え、低コストで均一な光沢を有する画像を形成する。
【解決手段】融点が60℃から120℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む一色の有色トナーを用いて有色トナー像を形成する有色トナー像形成工程S3_1と、非画像部を含む領域に、融点が60℃から120℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む無色トナーを用いて無色トナー像を形成する無色トナー像形成工程S3_2と、各色トナー像を、繊維層の表面に樹脂からなる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である用紙25上に転写し、転写したこれらトナー像に熱を加えて用紙25上にこれらトナー像を定着する転写・定着工程S3_13とを有する。
【選択図】 図3
【解決手段】融点が60℃から120℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む一色の有色トナーを用いて有色トナー像を形成する有色トナー像形成工程S3_1と、非画像部を含む領域に、融点が60℃から120℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む無色トナーを用いて無色トナー像を形成する無色トナー像形成工程S3_2と、各色トナー像を、繊維層の表面に樹脂からなる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である用紙25上に転写し、転写したこれらトナー像に熱を加えて用紙25上にこれらトナー像を定着する転写・定着工程S3_13とを有する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式でフルカラー画像を用紙に形成するときには、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、BK(黒)の4色のカラートナーを用紙に順番に積層し、その後、積層させたカラートナーに熱定着ロール等で熱を加えることでカラートナーを用紙に定着させ、定着トナー像からなるフルカラー画像を得る。
【0003】
電子写真方式では、形成した画像の画質を印刷した画像の画質やプリントした銀塩写真の画質にどれだけ近づけることができるかが課題の一つであり、そのための技術の一つとして、画像に光沢性を持たせる技術が種々提案されている。
【0004】
ここでは、カラートナーを用いて1枚の用紙に電子写真方式によって画像を形成する場合を例にあげ、1枚の用紙のうち、カラートナーが定着された部分を画像部と称し、それ以外の部分を非画像部と称して以下説明する。電子写真方式によって形成された画像では画像部と非画像部での光沢が異なりやすく、電子写真方式による画像は、印刷や銀塩写真で得られた画像と比較して滑らかさのない不自然なものになることがある。この光沢の差異を低減するために、非画像部に無色透明トナーを定着させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。カラートナーとは別に無色透明トナーを用いると、使用するトナー量が増大し、定着時にかかるエネルギーも増大する。これらの特許文献に記載された技術では、定着時にかかるエネルギーを低減するための措置がなんら採られておらず、画像形成のコストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
また、電子写真方式によって形成された画像では、用紙に定着したトナーの剥離により画像の保存性が問題になることがある。そのため、電子写真方式では、形成した画像の保存性をプリントした銀塩写真の保存性と同等にすることも課題の一つである。前述のように無色透明トナーを使用してトナー量が増加した場合には、画像の保存性の問題がさらに顕在化する。
【0006】
ところで、トナーが溶融する温度(定着温度)を低くすることは、定着時にかかるエネルギーを低減することができ、無色透明トナーを用いたことによる定着時のエネルギー増大に有効な対策である。また、定着温度を低くすることは、定着部材の昇温時間の短縮化、定着部材の長寿命化等、様々な利点がある。そこで、従来より、低温定着を実現するためのトナーが種々提案されているが(例えば、特許文献5〜9参照。)、これらの中でも、特許文献7〜9に記載されたトナーが、定着前のトナーの凝集によるブロッキングや、定着後のトナーの剥離を防止しつつ低温定着を実現することができるトナーとして優れている。そのため、特許文献7〜9に記載された技術を採用した無色透明トナーや有色トナーを用いて画像形成を行えば、画像の保存性についての問題は解消される。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−58374号公報
【特許文献2】
特開平1−108563号公報
【特許文献3】
特開平5−127437号公報
【特許文献4】
特開平9−197858号公報
【特許文献5】
特公昭62−39428号公報
【特許文献6】
特公平4−30014号公報
【特許文献7】
特開平4−120554号公報
【特許文献8】
特開平4−239021号公報
【特許文献9】
特開平5−165252号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献7〜9に記載されたトナーは、結着樹脂として部分結晶性ポリエステル樹脂を用いたものであり、トナーの温度に対する粘度変化がなだらかで、従来以上の低温定着を実現することは不可能であり、無色透明トナーを用いた画像形成のコスト高という問題は依然として解消されない。
【0009】
また、トナー像の加熱定着時には、用紙の繊維層内部の水分が加熱され水蒸気が発生し、繊維層内部の水蒸気圧が上昇する。この水蒸気が用紙の外に排出される際に、何らかの理由でその排出がスムーズにいかないと、繊維層内部で発生した水蒸気が用紙上に転写されたトナー像を突き破って流出し、定着トナー像には微小なフクレや貫通孔(以下、トナーブリスターと呼ぶ)が残り画像の品位が低下してしまうことがある。
【0010】
ところで、無色透明トナーを用いて写真並みの高画質を達成するためには、表面凹凸が少なく、溶融したトナーの、繊維層への過剰な染み込みを防止する塗被層を設けたいわゆるコート紙を使用することが、光沢の均一性や画像の鮮明度が高められる点から望ましい。コート紙上に画像を形成するにあたり、無色透明トナーを非画像部に定着させようとすると、用紙のほぼ全面にわたってトナーが存在する状態になり、この状態でトナーに熱を加え水蒸気が多量に発生すると、上述のトナーブリスターが発生しやすくなる。すなわち、従来のコート紙では、塗被層を設けたことにより水蒸気の排出経路が不十分となり、用紙内部で発生した多量の水蒸気は塗被層中のわずかな排出経路に集中する。わずかな排出経路に集まった水蒸気は、用紙上に転写されたトナー像に大きな孔を開けて一気に流出する。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、トナーブリスターの発生を抑え、低コストで均一な光沢を有する画像を形成することができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の画像形成方法は、一色のトナーを用いてトナー像を形成することを、色が異なるトナーを用いて所定回実行し、それぞれ得られたトナー像をその転写体上に転写し、その転写体上にこれらのトナー像を定着することからなる画像形成方法において、
融点が60℃から120℃の間に存在する結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む一色の有色トナーを用いてトナー像を形成する有色トナー像形成工程と、
上記有色トナー像形成工程におけるいずれの色の有色トナーも不存在になる非画像部を含む領域に、融点が60℃から120℃の間に存在する結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む無色トナーを用いて無色トナー像を形成する無色トナー像形成工程と、
上記転写体が、繊維層の表面に少なくとも顔料と接着成分からなる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である転写体であることを特徴とする。
【0013】
本発明の画像形成方法で用いる有色トナーの結着樹脂の主成分および無色トナーの結着樹脂の主成分はいずれも結晶性のものであるため、結晶の融点以下ではトナーの硬さが保持され、融点を超えたところで結晶の融解とともにトナーの粘度が急激に低下する。また、これらの主成分はいずれも融点が60℃から120℃の間に存在するものである。これらのことから、本発明の画像形成方法によれば、低温定着が実現され低コストで画像形成を行うことができるとともに本発明の画像形成方法によって形成された画像の保存性は良好なものになる。また、本発明の画像形成方法で用いる用紙は、上記塗被層を有するいわゆるコート紙である。このため上記用紙の表面は平坦になっており、この用紙上に形成された定着トナー像からなる画像の光沢の均一性が向上する。また、溶融したトナーの、繊維層への過剰な染み込みが上記塗被層によって防止され、トナーの光沢が維持される。さらに、本発明の画像形成方法によれば低温定着を実現することができることから、定着時の用紙の温度上昇が抑えられ、発生する水蒸気量が低減する。このため、トナーブリスターの発生が抑えられる。さらに、上記用紙は、透気度が8000秒以下であるため、定着時の加熱によって繊維層内部で発生した水蒸気は、十分な排出経路を通って用紙外部に排出され、この点からもトナーブリスターの発生が抑えられる。
【0014】
また、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程および上記無色トナー像形成工程は、融点のばらつきが10℃の範囲に収まった有色トナーおよび無色トナーを用いる工程であることが好ましい。
【0015】
定着温度は融点の一番高いトナーに合わせる必要があることから、融点の差が10℃より大きいと定着設定温度が上昇してしまうことから、融点のばらつきが10℃の範囲に収まった有色トナーおよび無色トナーを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程は、上記有色トナーとして、下記式1で定義されるエステル濃度Mが0.05以上0.12以下の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、着色剤である顔料とを少なくとも含有したトナーを用いる工程であり、
上記無色トナー像形成工程は、上記無色トナーとして、下記式1で定義されるエステル濃度Mが0.05以上0.12以下の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を少なくとも含有したトナーを用いる工程であることも好ましい。
【0017】
M=K/A ・・・式1
(Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度Mが0.12を超えると樹脂抵抗が低下し、帯電性が低下してしまう。一方、上記エステル濃度Mが0.05を下回ると、安定してトナーを作製することが困難になる。
【0018】
さらに、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程を上記所定回実行するとともに上記無色トナー像形成工程も実行することで形成された各色トナー像が、繊維層の表面に少なくとも顔料と接着成分なる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である転写体上で最終的に一つに重なるように、これらトナー像をその転写体上に転写し、転写したこれらトナー像に熱を加えてその転写体上にこれらトナー像を定着する転写・定着工程を備え、
上記転写・定着工程が、上記有色トナー像形成工程を上記所定回実行するとともに上記無色トナー像形成工程も実行することで形成された各色トナー像を、坪量が70〜220kg/m2である上記用紙に転写し、転写した各トナー像に熱を加えてその用紙上にトナー像を定着する工程であることも好ましい。
【0019】
上記坪量が70g/m2 を下回ると、定着時に上記用紙にかかる熱量が大きくなり、水蒸気圧が大きくなって、ブリスターが発生しやすくなる。一方、上記坪量が220g/m2 を超えると、上記用紙に対する熱量が小さくなり、水蒸気圧も小さくなるため、ブリスターの発生は抑えられるが、上記用紙の加熱に要する熱量が大きくなり過ぎて、コストアップにつながる。
【0020】
またさらに、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程が、上記有色トナーとして帯電極性が揃ったトナーを用いる工程であり、
上記無色トナー像形成工程が、上記無色トナーとして、上記有色トナーの帯電極性とは反対の極性に帯電極性が揃ったトナーを用いる工程であることが好ましく、
上記有色トナー像形成工程が、上記有色トナーとして、上記一方の極性と同極性に帯電させた帯電有色トナーを用い、その帯電有色トナーを上記トナー像担持体表面の、低電位の画像部に反転現像させて有色トナー像を形成する工程であり、
上記無色トナー像形成工程が、上記無色トナーとして、上記他方の極性と同極性に帯電させた帯電無色トナーを用い、その帯電無色トナーを上記トナー像担持体表面の、高電位の非画像部に正規現像させて無色トナー像を形成する工程であることがより好ましい。
【0021】
このように帯電極性を逆極にすることで、1つの静電潜像を、反転現像と正規現像との2つの現像に用いることができるようになり、単色トナー層を得るための静電潜像の形成が1回ですみ、非常に効率的である。そのため画像形成の高速化や画像形成方法を実施するシステムの簡便化を計る事ができる。
【0022】
また、本発明の画像形成方法において、上記転写・定着工程が、転写した各トナー像を担持した上記用紙を、環状ベルト表面と加熱されたロール体表面とが接することで形成されたニップ領域に送り込み、そのニップ領域を通過させることにより、その用紙上に各トナー像を定着する工程であることも好ましい。
【0023】
こうすることで、ニップ領域を通過する用紙に、一瞬にして高い圧力を加える必要がなくなり、トナーブリスターの発生を抑えることができる。
【0024】
さらに本発明は、以下の構成を併せ持つことが好ましい。
【0025】
(1)各有色トナー及び無色トナーの内、一番融点の低いトナーの融点(Tm1)から20℃高い温度(Tm1+20℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm1+20℃)、損失弾性率をGN(Tm1+20℃)とした時に、各トナーのlogGL(Tm1+20℃)の差の絶対値の最大値及びlogGN(Tm1+20℃)の差の絶対値の最大値がともに1.5以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0026】
(2)前記有色トナー像形成工程が、前記有色トナーと樹脂被膜キャリアからなる有色現像剤とを用いた工程であって、
前記無色トナー像形成工程が、前記無色トナーと樹脂被膜キャリアからなる無色現像剤とを用いた工程であることを特徴とする画像形成方法。
【0027】
(3) 上記有色トナー像形成工程と上記無色トナー像形成工程により得られた、単色の有色トナー像と無色トナー像とからなる単色トナー層を中間転写体に転写する工程を含み、複数色の単色トナー層を中間転写体上で重ね合わせた後、上記転写・定着工程を実行することを特徴とする画像形成方法。
【0028】
(4) 上記用紙の内部結合力が0.38N・m以上であることを特徴とする画像形成方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
まず、本発明の画像形成方法の各工程を説明する前に、この画像形成方法で用いられるトナーについて詳述する。なお、本発明の画像形成方法では、有色トナーと無色トナーとの2種類のトナーを用いるが、有色トナーと無色トナーとを特に区別する必要がない場合には、単にトナーと称することがある。
【0031】
本発明の画像形成方法で用いる有色トナーおよび無色トナーはいずれも、結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含むものである。ポリエステル樹脂が結晶性でない場合、即ち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。ここで「主成分」とは、前記結着樹脂を構成する成分のうち、主たる成分のことを指し、具体的には、前記結着樹脂の50%以上を構成する成分を指す。ただし、前記結着樹脂のうち、特定のポリエステル樹脂が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、全てが特定のポリエステル樹脂であることが特に好ましい。また、本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0032】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、60〜120℃の範囲であることが必要であり、62〜110℃の範囲であることが好ましく、64〜105℃の範囲であることがより好ましい。融点が60℃より低いとトナーの保存性が悪化し、定着後の良好なトナー画像保存性が得られなくなる。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない。
【0033】
前記結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂においては、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピーク温度をもって融点とみなす。
【0034】
この実施形態においては、結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、ここにいう「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。以下、これらの構成成分について詳述する。
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0035】
また、前記酸由来構成成分は、芳香族ジカルボン酸であってもよく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸が、入手容易性、低融点のポリマーを形成しやすい等の点で好ましい。
【0036】
前記酸由来構成成分としては前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分や芳香族ジカルボン酸由来成分のほかに、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を含有してもよい。スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を含有すると、負帯電性が強くなり、また顔料等の色材の分散を良好にできる。そのためスルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を、有色トナー用の結着樹脂には含有させ、無色トナー用の結着樹脂には含有させないか、あるいは無色トナー用の結着樹脂に含有させたとしても有色トナー用の結着樹脂に比べ少なくすることが有効である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0037】
スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分の全酸由来構成成分における含有量としては、0.1〜6構成モル%であり、0.5〜5構成モル%がより好ましい。前記含有量が6構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下したりしてしまう。また帯電の環境依存性(特に温湿度依存性)が強くなり、樹脂の電気抵抗(樹脂抵抗)が低下するため、帯電量も低下してしまう。0.1構成モル%より下回ると顔料の分散性が悪化する。
【0038】
また前記酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれていることが好ましい。尚、上記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0039】
これらの、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分を含有させた場合、全酸由来構成成分における含有量としては、20構成モル%以下が好ましく、10構成モル%以下がより好ましい。前記含有量が20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下してしまう。
【0040】
なお、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における酸由来構成成分全体中の当該酸由来構成成分、または、アルコール由来構成成分全体中の当該アルコール構成成分を、各1単位としたときのモル%を指す。
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジカルボン酸を用いることが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコストを考慮すると1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0041】
前記アルコール由来構成成分は、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含むものであることが好ましく、その含有量が90構成モル%以上であることがより好ましい。前記含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
【0042】
必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分等の構成成分がある。
【0043】
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。
【0044】
上記2重結合を持つジオール由来構成成分を含有させる場合、アルコール由来構成成分における含有量としては、20構成モル%以下が好ましく、10構成モル%以下がより好ましい。上記含有量が20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下してしまう。
【0045】
前記ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸由来構成成分とアルコール由来構成成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0046】
前記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0047】
モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0048】
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0049】
具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0050】
有色トナーと無色トナーの結着樹脂に使用する結晶性ポリエステル樹脂の主要な酸由来構成成分と主要なアルコール由来構成成分は同組成であることが好ましい。主要な成分を同組成にすることでトナーの相溶性が向上し、またトナー融点の差が小さくなる。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂は下記式(1)で定義されるエステル濃度Mが、0.05以上0.12以下であることが好ましい。
【0052】
M=K/A ・・・(式1)
(式1中、Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
上記「エステル濃度M」とは、結晶性ポリエステル樹脂のポリマーにおけるエステル基の含有割合を示す一つの指標である。前記式(1)中の‘K’は、「ポリマー中のエステル基数」を示す。この「ポリマー中のエステル基数」は、言い換えればポリマー全体に含まれるエステル結合の数を指す。
【0053】
前記式(1)中の‘A’は、「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」を示す。この「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」は、ポリマーの高分子鎖を構成する原子の合計であり、エステル結合に関与する原子数は全て含むが、その他の構成部位における枝分かれした部分の原子数は含まない。すなわち、エステル結合に関与するカルボキシル基やアルコール基に由来する炭素原子および酸素原子(1つのエステル結合中酸素原子は2個)や、高分子鎖を構成する、例えば芳香環における6つの炭素は、前記原子数の計算に含まれるが、高分子鎖を構成する、例えば芳香環やアルキル基における水素原子、その置換体の原子ないし原子群は、前記原子数の計算に含まれない。
【0054】
具体例を挙げて説明すれば、高分子鎖を構成するアリーレン基における、炭素原子6つと水素原子4つとの計10個の原子のうち、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれるものは、炭素原子の6つのみであり、また、前記水素が如何なる置換基に置換されたとしても、当該置換基を構成する原子は、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれない。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂が、1の繰り返し単位(例えば、高分子がH−[OCOR1COOR2O−]n−Hで表される場合、1の繰り返し単位は、[ ]内で表される。)のみからなる単重合体の場合には、1の繰り返し単位内には、エステル結合は2個存在する(すなわち、当該繰り返し単位内におけるエステル基数K’=2)ので、エステル濃度Mは、下記式(1−1)により、求めることができる。
【0056】
M=2/A’ ・・・式(1−1)
(式(1−1)中、Mはエステル濃度を、A’は1の繰り返し単位における高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
また、結晶性ポリエステル樹脂が、複数の共重合単位からなる共重合体の場合には、共重合単位ごとに、エステル基数KXおよび高分子鎖を構成する原子数AXを求め、これらに共重合割合を乗じた上でそれぞれ合計し、前記式(1)に代入することで求めることができる。例えば、共重合単位がXa、XbおよびXcの3つであり、これらの共重合割合がa:b:c(ただし、a+b+c=1)である化合物[(Xa)a(Xb)b(Xc)c]についてのエステル濃度Mは、下記式(1−2)により、求めることができる。
【0057】
M={KXa×a+KXb×b+KXc×c}/{AXa×a+AXb×b+AXc×c}・・・式(1−2)
(式(1−2)中、Mはエステル濃度を表し、KXaは共重合単位Xa、KXbは共重合単位Xb、KXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれのエステル基数を表し、AXaは共重合単位Xa、AXbは共重合単位Xb、AXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれの高分子鎖を構成する原子数を表す。)
結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度Mは、これを用いて作製したトナーの帯電性に大きな影響を与える。これはエステル濃度Mにより樹脂抵抗が変化するのが主要因であり、エステル濃度Mが大きくなると樹脂抵抗が低下し、帯電性が低下してしまう。本発明ではエステル濃度を0.05以上0.12以下にすることで、十分な帯電性や帯電安定性が得られるとともに、安定してトナーを作製することが可能となった。
【0058】
前記エステル濃度Mが0.05未満では、樹脂の融点が高くなってしまうとともに紙への接着能力が低下する。また疎水性が強く、かつ溶剤への溶解性も低下することから安定してトナーを作製することが困難となる。さらに、モノマー自身も高価になるためコスト的にも好ましくない。エステル濃度の下限としては0.055が好ましく、0.06がより好ましい。
【0059】
一方エステル濃度が0.12を超えると、樹脂抵抗が低下し、トナーの帯電性が低下してしまう。また融点も低くなりすぎるため、粉体や定着画像の安定性も低下してしまう。エステル濃度の上限としては0.115が好ましく、0.11がより好ましい。
【0060】
本発明において用いられる有色トナーには着色剤が含まれている。ここでの着色剤は、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が好ましい。
【0061】
好ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジジンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用できる。
【0062】
また、着色剤として磁性粉を使用することもできる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0063】
これらは単独で使用可能な他、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら着色剤の含有量としては、前記結着樹脂を100質量部とした場合、0.1〜40質量部の範囲が好ましく、1〜30質量部の範囲がより好ましい。
【0064】
前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られ、この実施形態では、有色トナーとして、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーの4色のトナーを用いる。
【0065】
本発明において用いられるトナーはその他の成分を含むものであってもよい。すなわち、無機微粒子、帯電制御剤、離型剤等の公知の各種添加剤等が添加されたものであってもよい。
【0066】
上記無機微粒子は、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みを調整することができる。無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機微粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、発色性やOHP透過性等の透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ微粒子が好ましく用いられる。また、シリカ微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0067】
これらの無機微粒子の添加量は、トナー全質量の0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜15質量%の範囲であることがより好ましい。
【0068】
上記帯電制御剤として負帯電制御剤を添加する場合には、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属錯体などを添加すればよい。また正帯電制御剤を添加する場合には、アジン化合物(ニグロシン)、4級アンモニウム塩、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物等などを添加すればよい。帯電制御剤の含有量としては0.01〜6.0質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。
【0069】
また、本発明に使用するトナーは、離型剤を含有していてもよい。離型剤を含有することで後述する定着工程での離型性が向上し、接触加熱型定着方式を採用した定着器では、定着ロールに塗布する離型オイルを減少させる、またはなくすことができる。このため、離型オイルによる定着ロール寿命の低下やオイル筋等のディフェクトを回避することができ、また定着器の低コスト化にもつながる。
【0070】
離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ペンタエリスリトール類等のエステル類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、 オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;などが挙げられる。
【0071】
離型剤の融点は、50〜120℃の範囲が好ましく、結着樹脂の融点以下であることがより好ましい。離型剤の融点が50℃未満では、離型剤の変化温度が低すぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、この離型剤を収容している装置内部の温度が高まった時に現像性が悪化したりする。融点が120℃を超える場合には、離型剤の変化温度が高過ぎ、結晶性樹脂の低温定着性を損ねてしまう場合がある。
【0072】
これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0073】
離型剤の含有量としては、トナー全体を100質量部とした場合、1〜30質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましい。1質量部未満であると、離型剤添加の効果がない場合がある。30質量部以上であると、帯電性への悪影響が現れやすくなり、また現像器内部においてトナーが破壊されやすくなるため離型剤やトナー樹脂のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れるばかりでなく、例えばカラートナーを用いた場合、定着時の画像表面への染み出しが不十分になり易く、画像中に離型剤が在留しやすくなってしまうため、透明性が悪化してしまう場合がある。
【0074】
また、上記トナーには結晶核剤を添加してもよい。結晶核剤を添加することで結晶サイズを微細化するとともに結晶サイズが均質化されるため、樹脂の透明性を向上させることができる。さらに、結晶核剤は結晶性樹脂の結晶化度を向上させる効果もあり、これにより結晶性樹脂に含まれる非晶質部分の割合が減少するため、トナーの保存性や耐ブロッキング性、または流動性が向上し、感光体へのフィルミング、さらに二成分現像方法の場合にはキャリアへのフィルミングを防止することができる。
【0075】
結晶核剤としては、公知の結晶核剤である、例えばシリカ、タルク、カオリン、アルミナ、ミョウバン、酸化チタン等の無機系結晶核剤;ジベンジリデンソルビトールやジメチルベンジリデンソルビトール等の低級アルキルジベンジリデンソルビトール、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム等の安息香酸金属塩、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等のリン酸エステル金属塩、モンタン酸ナトリウム等の直鎖脂肪酸金属塩、ロジン酸部分金属塩等の有機系結晶核剤;が挙げられる。特にジベンジリデンソルビトール等の有機系核剤はゲル化剤としても作用し、結晶核剤同士のパーコレーションネットワークによってさらに結晶を微細化/均質化することができる。
【0076】
これら結晶核剤の含有量としては、トナー全体を100質量部とした場合、無機系結晶核剤の場合は0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.3〜10質量部の範囲がより好ましい。有機系結晶核剤の場合は0.005〜10質量部の範囲が好ましく、0.01〜5質量部の範囲がより好ましい。上記含有量が、無機系結晶核剤の場合は0.1質量部より、有機系結晶核剤の場合は0.005質量部より少ないと、結晶核剤としての働きが十分発現されない。一方、上記含有量が、無機系結晶核剤の場合は20質量部より、有機系結晶核剤の場合は10質量部より多いと、結晶核剤の凝集体による2次障害や結晶核剤の種類によってはゲル化による弾性率の著しい向上から製造性が低下したり画像光沢性が悪化してしまう。また、上記含有量の範囲で無機系、有機系を問わず、2種以上の結晶核剤を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
以上説明したトナーを製造する方法としては、粉砕が困難なため湿式製法が好ましい。特に制限はないが、液中乾燥法、乳化凝集法、溶融懸濁法、溶解懸濁法等、公知の湿式製法の中から適宜選択されることが好ましく、中でも溶解懸濁法、乳化凝集法が好ましい。
【0078】
以下、本発明の画像形成方法に用いられるトナーの製造方法の一例として、まず溶解懸濁法による製造方法について説明する。
【0079】
前記溶解懸濁法としては、結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解若しくは分散して混合液を調製する混合工程、該混合液を水系媒体中に添加し、回転羽根を有する乳化機を用いて分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程、該分散懸濁液から溶媒を除去する溶媒除去工程を、少なくとも有してなる。
【0080】
混合工程では、結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂、着色剤、及び必要に応じた他の樹脂並びにモノマーを溶媒中に溶解させ、混合液(ポリマー液)を得る。
【0081】
ここでの溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類;または水等が挙げられる。上記溶媒は、結晶性ポリエステル及び必要に応じた他のモノマーの種類、並びに粒径により、これらの中から適宜選択して用いられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0082】
前記溶媒の使用量としては、結晶性ポリエステル及び必要に応じて添加する他のモノマーの総量100質量部に対して、50〜5000質量部の範囲が好ましく、120〜1000質量部の範囲がより好ましい。
【0083】
続いて、分散懸濁工程において、その混合液と水系媒体を混合した溶液に分散器を用いて剪断力を与えることで結晶性ポリエステルの液状の懸濁粒子を得る。その際、加熱することでポリマー液の粘性を下げて粒子を形成することができる。分散器としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0084】
また、懸濁粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。この分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0085】
ここで、結晶性ポリエステルの液状の懸濁粒子を加熱し、その粒子にラジカル反応により架橋構造を導入する架橋工程を導入してもよい。
【0086】
架橋工程としては、水系媒体中に重合開始剤を溶解させたポリエステル(結着樹脂)を懸濁分散させ、加熱して重合を行う、或いは、ポリエステル(結着樹脂)を懸濁分散させた後、重合開始剤を後から添加して重合を行う等が挙げられる。
【0087】
上記重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシ−α−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
【0088】
これら重合開始剤は、単独で使用することも、または2種以上を併用することもできる。重合開始剤の量や種類は、ポリマー中の不飽和部位量、共存する着色剤の種類や量によって選択される。
【0089】
また、例えば後述する乳化工程、凝集工程、及び融合工程からなる乳化凝集法の場合には、重合開始剤を、乳化工程前にあらかじめポリマーに混合しておいてもよいし、凝集工程で凝集塊に取り込ませてもよい。さらには、架橋工程を、融合工程、或いは融合工程の後に導入してもよい。架橋工程を、凝集工程、融合工程、あるいは融合工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化させた液を、粒子分散液(樹脂粒子分散液等)に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0090】
溶媒除去工程では、結晶性ポリエステルの液状の懸濁粒子から溶媒を除去する。その後、必要に応じて風力分級機等を用いた分級工程を経て粒度分布をシャープにしてもよい。
【0091】
次に乳化凝集法によるトナー製造方法について説明する。前記乳化凝集法は特定のポリエステル樹脂を乳化し乳化粒子を形成する乳化工程と、該乳化粒子の凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を熱融合させる融合工程と、を有する。
【0092】
乳化工程における乳化粒子は前述の懸濁粒子の作製と同様に作製できるが、溶剤を実質的に用いずに水中で乳化粒子を作製するのが好ましい。乳化粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.01〜2μmが好ましく、0.03〜1.0μmがより好ましく、0.04〜0.8μmがさらに好ましい。
【0093】
前記凝集工程においては、得られた乳化粒子を、前記ポリエステル樹脂の融点一歩手前の温度で加熱して凝集し凝集体を形成する。乳化粒子の凝集体の形成は、攪拌下、乳化液のpHを酸性にすることによってなされる。当該pHとしては、2〜6が好ましく、2.5〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。この際、凝集剤を使用するのも有効である。
【0094】
ここで用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0095】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0096】
前記融合工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集体の懸濁液のpHを3〜7の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、前記ポリエステル樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより凝集体を融合させる。前記加熱の温度としては、前記ポリエステル樹脂の融点以上であれば問題無い。前記加熱の時間としては、融合が十分に為される程度行えばよく、0.5〜10時間程度行えばよい。
【0097】
前記融合工程において得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じた洗浄工程、乾燥工程を経て、トナー粒子として完成する。
【0098】
本発明に用いられるトナーの体積平均粒子径は、3.0〜9.0μmの範囲が好ましく、4.0〜8.0μmの範囲がより好ましい。体積平均粒子径が3.0μmより小さいと、流動性が低下し各粒子の帯電性が不十分になりやすく、また帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる。体積平均粒子径が9.0μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなる。
【0099】
前記体積平均粒子径の測定は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行うことができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0100】
本発明においては、融点のばらつきが10℃の範囲に収まった有色トナーおよび無色トナーを用いることが好ましい。定着温度は融点の一番高いトナーに合わせる必要があることから、融点の差が10℃より大きいと定着設定温度が上昇してしまう。また有色トナーと無色トナーとの融点の差が10℃より大きいと、両者の定着性に差が生じてしまうことがある。
【0101】
また、本発明においては、各有色トナー及び無色トナーの内、一番融点の低いトナーの融点Tm1から20℃高い温度での各トナーの貯蔵弾性率をGL(Tm1+20)としたときに、各トナーのlogGL(Tm1+20)の差の絶対値の最大値が1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。同様にTm1から20℃高い温度での各トナーの損失弾性率をGN(Tm1+20)としたときに各トナーのlogGN(Tm1+20)の差の絶対値の最大値が1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。差の絶対値の最大値が1.5より大きいと各有色トナー間及び有色トナーと無色トナーの画像光沢度の差が大きくなり、面内の画像光沢の均一性が低下してしまう。なお、貯蔵弾性率GLおよび損失弾性率GNについては、JIS K−6900にその詳細が規定されている。
【0102】
本発明の画像形成方法において用いるトナーは、温度変化による前記貯蔵弾性率GL及び前記損失弾性率GNの値の変動が、10℃の温度変化で2桁以上となる温度の区間(10℃温度を上昇させた際に、GL及びGNの値が100分の1もしくはそれより小さい値まで変化するような温度の区間)を有することが好ましい。前記貯蔵弾性率GL及び前記損失弾性率GNが、前記温度の区間を有しないと、定着温度が高くなり、その結果、定着工程のエネルギー消費を低減するのに不十分となることがある。
【0103】
また、本発明の画像形成方法において用いるトナーは、各有色トナー及び無色トナーの内、一番融点の低いトナーの融点Tm1から20℃高い温度(Tm1+20℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm1+20)、Tm1から40℃高い温度(Tm1+40℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm1+40)とした場合、下記式(2)を満たし、かつ(Tm1+20℃)における損失弾性率をGN(Tm1+20)、(Tm1+40℃)に於ける損失弾性率をGN(Tm1+40)とした場合、下記式(3)を満たすことが、画像部位による温度分布等で生じる画像光沢の不均一性を減少させるため好ましい。
|logGL(Tm1+20)−logGL(Tm1+40)|≦1.5・・・式(2)
|logGN(Tm1+20)−logGN(Tm1+40)|≦1.5・・・式(3)
さらに下記式(4)及び(5)を満たす事がさらに好ましい。
|logGL(Tm1+20)−logGL(Tm1+40)|≦1.2・・・式(4)
|logGN(Tm1+20)−logGN(Tm1+40)|≦1.0・・・式(5)
この指標は、本発明におけるトナーの粘度が、融点以降では温度に対する依存性が緩やかであることを示し、粘弾性の温度依存性がより低くなることを意味する。
【0104】
図1は、本発明の画像形成方法に用いるトナーの好ましい特性を示すグラフである。
【0105】
図1において、縦軸は貯蔵弾性率の常用対数logGL、あるいは、損失弾性率の常用対数logGNを表し、横軸は温度を表す。このような特性を有するトナーにおいては、結晶性ポリエステルの融点付近である60〜120℃の温度領域において急激な弾性率の低下が見られ、また、融点を超えた温度範囲でその弾性率が安定することから、定着時の画像部位による温度分布から生じる画像光沢の不均一性や、高温に加熱されても、紙等の被記録体に対する過度の染み込みを防止することができる。
【0106】
さらに、本発明の画像形成方法に用いるトナーは、常温下で十分な硬さを有することが望まれる。具体的には、その動的粘弾性が、角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa以上であり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa以上であることが望ましい。
【0107】
角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa未満であったり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa未満であると、二成分現像方法の場合、現像器内でキャリアと混合された時に、キャリアから受ける圧力や剪断力によりトナーの粒子が変形し、安定な帯電現像特性を維持することができないことがある。また、潜像担持体(感光体)表面のトナーがクリーニングされる際に、クリーニングブレードから受ける剪断力によって変形し、クリーニング不良をも生ずることがある。
【0108】
前記角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)及び損失弾性率GN(30)が上記範囲にある場合には、高速の電子写真装置に用いた場合でも定着時の特性が安定し好ましい。
【0109】
このように、既述のようにして製造され、前記の構成、特性を有するトナーは低温定着性について優れたものであり、このようなトナーを用いることで定着時にかかるエネルギーが低減され、低コストで画像形成を行うことができる。また、このトナーは、耐トナーブロッキング性および画像の保存性についても優れたものである。
【0110】
また、本発明の画像形成方法においては、流動化剤や助剤等の外添剤が表面に添加されたトナーを用いてもよい。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できるが、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種は、30nm〜200nmの範囲、さらには10nm〜180nmの範囲の平均1次粒子径を有することが好ましい。
【0111】
トナーが小粒径化することによって、感光体との非静電的付着力が増大するため、転写不良やホローキャラクターと呼ばれる画像抜けが引き起こされ、重ね合わせ画像等の転写ムラを生じさせる原因となるため、平均1次粒子径が30nm〜200nmの大径の外添剤を添加することにより、転写性を改善させることができる。
【0112】
平均1次粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を十分に低減できず、転写効率が低下し画像のぬけが発生したり、画像の均一性を悪化させてしまったりする。また、経時による現像機内でのストレスによって微粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化し、コピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題が引き起こされる。平均1次粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性悪化の原因ともなる。
【0113】
本発明で用いるトナーは、有色トナーと無色トナーの帯電極性が逆極であることが好ましい。帯電極性を逆極にすると、後述するように同じ静電潜像を反転現像及び正規現像することで有色トナーによる画像部作製と無色透明トナーによる非画像部作製が1回でできるため、非常に効率的である。そのため高速化やシステムの簡便化を計る事ができる。
(キャリア)
本発明で用いるトナーは一成分トナーとして用いてもよいが、キャリアと組み合わせた二成分現像剤として用いるのが好ましい。また有色トナーと無色トナーで異なる極性のキャリアを用いることが好ましい。
【0114】
負帯電トナー用キャリアとしては、樹脂で被膜されたキャリアであることが好ましく、窒素含有樹脂で被膜されたキャリアであることがさらに好ましい。トナーを負帯電しやすい上記キャリアと組み合わせることで、より安定した負帯電性を得ることができる。
【0115】
前述の窒素含有樹脂としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含むアクリル系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。またこれらの共重合樹脂でもかまわない。
【0116】
キャリアの被膜樹脂としては前記窒素含有樹脂の中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂と窒素を含有しない樹脂とを組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂を微粒子状にし、窒素を含有しない樹脂中に分散して使用してもよい。特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂は負帯電性が高く、また樹脂硬度が高いため被膜樹脂の剥がれなどによる帯電量の低下を抑制することができ好ましい。
【0117】
窒素含有樹脂を分散する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0118】
正帯電トナー用キャリアとしては、芯材表面にフッ素含有樹脂を含む被覆樹脂層が設けられた電子写真用キャリアであることが好ましい。トナーを正帯電しやすい上記キャリアと組み合わせることで、より安定した正帯電性を得ることができる。また、フッ素含有樹脂は表面エネルギーが小さいため、正帯電制御剤及び他のトナー組成物、または外添剤によるキャリア汚染が少なく、優れた帯電経時安定性を得ることができる。
【0119】
フッ素含有樹脂としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0120】
これらの中でも、帯電性及び帯電安定性の観点から、フッ化ビニリデン系樹脂が好ましく用いられる。
【0121】
これらのフッ素含有樹脂は、シリコーン樹脂等他の樹脂と組み合わせて使用することができる。他の樹脂と組合わせることにより、被覆樹脂層の芯材との接着性向上や帯電性制御を行うことができる。
【0122】
シリコーン樹脂は、水酸基の少なくとも一部がメチル基、またはメチル基及びフェニル基と置換してなる樹脂である、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0123】
また、その他のフッ素樹脂と組み合わせて用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂が挙げられる。さらに、芯材との密着性を向上させるために、樹脂中にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤を含有させたり、あるいは芯材にこれらを塗布したりすることもできる。
【0124】
芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、またはフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、中でもフェライト系芯材が好ましく用いられる。フェライト系芯材としては、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライト等の芯材が挙げられる。
【0125】
また、磁性粉を結着樹脂中に分散した樹脂−磁性粉分散型キャリア芯材も挙げられる。結着樹脂としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂等が挙げられる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0126】
キャリア芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜100μmの範囲が好ましく、20〜80μmの範囲がより好ましく、25〜60μmの範囲がさらに好ましい。
【0127】
一般にキャリアは、適度な電気抵抗値を有することが必要であり、具体的には109 〜1014Ωcmの範囲程度の電気抵抗値が求められている。例えば鉄粉キャリアのように電気抵抗値が106 Ωcmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題が生じる。一方、絶縁性の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、その結果エッジの効いた画像にはなるが、反面大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなる、エッジ効果という問題が生じてしまう。そのため、キャリアの抵抗調整のために樹脂被覆層中に導電性微粉末を分散させることが好ましい。
【0128】
導電性微粉末の具体例としては、金、銀、銅のような金属;カーボンブラック;更に酸化チタン、酸化亜鉛のような半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの;等が挙げられる。
【0129】
また、上記導電性微粉末の添加量としては、マトリックス樹脂100質量部に対し、1.0〜20.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0130】
前記被覆樹脂層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を微粒子化し被膜樹脂の融点以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被膜させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。
【0131】
上記方法により形成される被膜樹脂層の平均膜厚は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.2〜5μmの範囲がより好ましい。
(電子写真用現像剤)
現像方式がトナーとキャリアとからなる二成分現像方式の場合、トナーとキャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0132】
次に、本発明の画像形成方法で用いられる電子写真用転写紙、すなわち用紙について詳述する。
(電子写真用転写紙)
本発明の画像形成方法において用いられる電子写真用転写紙は繊維層の表面に樹脂からなる塗被層が設けられたいわゆるコート紙である。このコート紙では、繊維層の繊維と繊維の隙間に樹脂が入り込んで用紙表面が平坦になっており、このコート紙上に形成された定着トナー像からなる画像の光沢の均一性が向上する。また、溶融したトナーの、繊維層への過剰な染み込みが上記塗被層によって防止され、トナーの光沢が維持される。したがって、無色トナーと組み合わせることで光沢均一性や画像鮮明度がより向上し、写真並みの高画質を得ることができる。このコート紙の塗被層としては、例えば、白色顔料と、その白色顔料を繊維層に接着する接着剤とを主成分とする層が好ましい。白色顔料が添加されることで、転写紙の白色度が向上し、より一層高画質な画像を得ることができる。
【0133】
塗被層を設ける基紙に使用するパルプとしては、クラフトパルプやセミケミカルパルプ、ケミカルグラウンドパルプ、砕木パルプ、リファイナーグラウンドパルプ、古紙パルプ等を単独あるいは複数組み合わせて使用したパルプが挙げられる。さらに重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク等の填料や、ロジン、石油樹脂等のサイズ剤、また塩化ナトリウムや塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム等の抵抗調整剤を適宜配合することができる。また必要に応じて紙力増強剤、染料、PH調整剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0134】
塗被層に用いる顔料は、通常の一般塗被紙に用いられる顔料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドクレー、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン、ポリメチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等主成分とする密実型又は中空型の有機顔料等を単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0135】
塗被層に用いる接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆たんぱく等の天然系接着剤等の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は顔料100質量部当たり5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲で使用される。
【0136】
また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等通常の塗被紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用してもよい。
【0137】
このようにして調製された塗被組成物は、一般の塗被紙製造に使用される塗被装置、例えばブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ等を用いオンマシンあるいはオフマシンによって基紙上に一層あるいは多層に分けて乾燥重量で片面当たりに8〜50g/m2 、好ましくは10〜25g/m2の範囲で塗被される。
【0138】
塗被後の平滑化処理は、通常用いられる平滑化装置、例えば、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー等が用いられ、白紙光沢が50%以上になるように仕上げられるのが好ましく、60%以上がより好ましい。このようにして得た塗被層の密度は1.20g/m3 以下に調整することが好ましく、1.10g/m3 以下がより好ましい。
【0139】
また、この電子写真用転写紙は、透気度が8000秒以下である必要があり、7000秒以下であることがより好ましい。空気の透気度が8000秒を超えた場合、定着の熱により発生した水蒸気によりトナーブリスターが発生してしまうことがある。ここでの透気度の値は、Japan Tappi No.5に規定の王研式透気度試験法(JIS P8117)に準じた方法により測定したときの値である。
【0140】
上述した結晶性トナーを用いた場合、従来よりも著しく低温で定着することができるため定着時の紙の温度上昇が抑制され、そのために発生する水蒸気量を抑制することができる。したがって従来よりもトナーブリスターの発生を抑制し、上記転写紙と組み合わせることでトナーブリスターの発生を防止することができる。
【0141】
透気度を上げる方法としては、前記の塗被層構成材料及び構成方法の中から、例えば、カレンダー後の配向の良好な顔料の選択(有機顔料、デラミネーテッドクレー、柱状形顔料など)、塗被層の積層化、仕上げのカレンダーのロール温度を高めること等があるが、目的に応じてこれらを適宜組み合わせて使用することができる。上記の塗被層の積層化は、下層の塗布は基紙を目止めするものであり、このことにより上層の表面塗被層は平滑性を向上させ、高い白紙光沢化を容易にする。
【0142】
さらに、こうして作製した塗被紙は保管時に吸脱湿が発生しないように、ポリエチレンラミネート紙等の防湿包装紙やポリプロピレン等で包装することが好ましい。
【0143】
また、本発明に用いられる電子写真用転写紙の坪量は、70〜220g/m2の範囲が好ましい。前記坪量が70g/m2 を下回ると、定着時に用紙にかかる熱量が大きくなり、水蒸気圧が大きくなってしまう。また、220g/m2 を超えると、用紙に対する熱量が小さくなり、水蒸気圧も小さくなるため、ブリスターの発生は抑えられるが、用紙の加熱に要する熱量が大きくなり過ぎて、転写紙へのトナーの定着に要する熱量が不足するという問題が生じる。
【0144】
また該転写紙の繊維層の内部結合力を0.38N・m以上に調製することが好ましい。繊維層の内部結合力を高めると、繊維層が水蒸気圧に耐えることができ、繊維層が水蒸気によって拡散される速度がゆっくりなものになる。このため、水蒸気圧の低下が起こり、塗被層の空隙を通過する水蒸気は低圧のものとなり、トナーブリスターの発生を抑制すると考えられる。
【0145】
続いて、本発明の画像形成方法について説明する。
【0146】
図2は、本発明の画像形成方法の一実施形態を実施する画像形成装置の模式図である。
【0147】
図2に示す画像形成装置1は、感光体ドラム11と、中間転写ベルト12を備えている。感光体ドラム11は、時計回りに回転するものである。中間転写ベルト12は、複数の支持ロールに張架されて感光体ドラム11の表面に当接されるように配置されている。なお、中間転写ベルト12に代えて中間転写ドラムを用いてもよく、さらには、中間転写ベルトや中間転写ドラムといった中間転写体は単層構成または多層構成のいずれであってもよい。中間転写ベルトの材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ウレタン、ナイロン、アクリル、塩化ビニル等の樹脂が用いられる。多層構成とする場合、転写面にはフッ素樹脂、フッ素樹脂の微粒子分散のポリエステル樹脂等が用いることが好ましい。また、導電性を付与するために、カーボンブラック、金属酸化物等の導電剤を各層に添加してもよい。
【0148】
また、この画像形成装置1では、中間転写ベルト12を挟んで感光体ドラム11と対向する位置に、1次転写ロール13が配設されている。感光体ドラム11と中間転写ベルト12とが接する部分が1次転写位置である。
【0149】
感光体ドラム11の周囲には、1次転写位置の上流側に現像ロータリー14が配設され、現像ロータリー14の上流側には帯電器(コロトロン)15が配設されている。現像ロータリー14には、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各有色トナーを収容した現像器141〜144が配設されている。また、現像ロータリー14と帯電器15との間には、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する光書き込みユニット16が配備されている。この光書き込みユニット16には、図示省略したが、半導体レーザーとポリゴンミラーが内蔵されている。さらに、現像ロータリー14と1次転写位置の間には、無色透明トナーを収容した現像器17と、転写前帯電器18が配備されている。
【0150】
1次転写位置の下流側には、ブレード191を有する感光体クリーニング19が配設され、感光体クリーニング装置19の下流側には、除電装置20が配設されている。
【0151】
中間転写ベルト12の周囲には、1次転写位置の下流側に、2次転写部材としてのバイアスロール21が設けられ、このバイアスロール21の下流側には、ベルトクリーニング装置22が配置されている。中間転写ベルト12を挟んでバイアスロール21と対向する位置には、バックアップロール23が設けられている。この画像形成装置1では、バイアスロール21とバックアップロール23とで挟まれた位置が2次転写位置になり、この2次転写位置には、給紙トレイ24内に収容された用紙25が送り込まれる。
【0152】
さらに、この画像形成装置1は定着器26を備えており、2次転写位置に送り込まれた用紙25はこの定着器26へと送られる。図2に示す定着器26は、押圧パッド261とエンドレスベルト262とを用いたベルトニップ方式の接触加熱型定着器である。この定着器は、熱源2631を内蔵した加熱定着ロール263とエンドレスベルト262とを備えている。加熱定着ロール263の周面は、熱源2631により加熱される。エンドレスベルト262の表面は、加熱定着ロール263の周面に接しており、このエンドレスベルト262の裏面側には、押圧パッド261が配備されている。押圧パッド261は、エンドレスベルト262の裏面に当接し、エンドレスベルト262の表面を加熱定着ロール263に向けて押しつけ、十分な長さのニップ領域を確保している。加熱定着ロール263は回転駆動するものであり、回転駆動することで、用紙25をニップ領域に送り込むとともにニップ領域から送り出す。エンドレスベルト262は、ニップ領域を通過する用紙に従って循環する。押圧パッド261の形状は、このニップ領域において、エンドレスベルト262の循環方向下流側に向かうにつれてエンドレスベルト262の押しつけ力が強くなる形状になっている。トナーブリスターは、用紙25に急激に高い圧力が加わると生じやすいが、この定着器26では、用紙25に徐々に圧力が加わるため、トナーブリスターの発生が抑えられる。なお、図2に示す定着器に代えて、ロールとロールの間でニップ領域を形成する定着器を用いてもよいが、ロールとロールの間でニップ領域を形成する定着器では、用紙25に急激に高い圧力が加わりやすいため、図2に示す定着器の方が好ましい。
【0153】
図3は、図2に示す画像形成装置において実行される画像形成方法の各工程を示すフローチャートである。
【0154】
図2に示す画像形成装置に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色の各画像信号が入力されると、まず、静電潜像形成工程S3_1が実行される。この静電潜像形成工程S3_1では、図2に示す感光体ドラム11の表面を、帯電器15により一様に帯電した後、入力された画像情信号のうち、シアンの画像信号に応じたレーザ光を光書き込みユニット16から感光体ドラム11に向けて照射することで感光体ドラム11表面に静電潜像を形成する。続いて、Cトナー像形成工程S3_2が実行される。このCトナー像形成工程S3_2では、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を、現像ロータリー14に備えられたシアントナーを収納した現像器144により現像する。
【0155】
ここで、図3とともに図4も用いて説明する。
【0156】
図4は、静電潜像が形成された感光体ドラムを展開し模式的に示す図である。
【0157】
上述の静電潜像形成工程S3_1が実行されることで、感光体ドラム11表面には、低電位の部分111と、高電位の部分112とからなる静電潜像が形成されている。現像ロータリー14に備えられた各現像器141〜144内に収納された有色トナー14tは、負側に帯電しており、感光体ドラム11表面の低電位部分である潜像形成部分に反転現像することで、有色トナー画像を形成する。このCトナー像形成工程S3_2では、シアントナーが感光体ドラム11表面に供給され、感光体ドラム11表面にはシアントナー像が形成される。
【0158】
次いで、図3に示す無色透明トナー像形成工程S3_3が実行される。図2に示す無色透明トナーを収容した現像器17内に収納された図4に示す無色透明トナー17tは、正側に帯電しており、感光体ドラム11表面の高電位部分である非潜像形成部分に正規現像され、無色透明トナー画像が形成される。
【0159】
ここでの画像形成方法では、有色トナー像と非画像部の無色透明トナー像とからなる単色トナー層を得るための潜像形成が1回で済み、かつ連続で現像できるため簡便かつ高速な画像形成を行うことができる。
【0160】
なお、Cトナー像形成工程S3_2および無色透明トナー像形成工程S3_3における現像方式がトナーとキャリアとからなる二成分現像方式の場合、現像器にはマグロール等の現像剤担持体が備えられており、この現像剤担持体表面に、トナーが付着した磁性キャリアがブラシ状となった現像剤層(いわゆる磁気ブラシ)が形成される。この際少なくとも無色透明トナー像形成工程では、磁気ブラシが感光体ドラム11に直接接触しない非接触現像方式、あるいは磁性キャリアが磁性粉分散型キャリアである現像剤であることが好ましい。非接触現像方式、あるいは磁性粉分散型キャリアを用いることで有色トナーにより形成された有色トナー像を乱すことなく無色透明トナー像を形成することができる。
【0161】
ここまでの工程が終了した時点で、感光体ドラム11の表面には、シアントナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像が形成されており、続いて実行される1次転写工程S3_4では、これら2つのトナー像を、図2に示す中間転写ベルト12に1次転写する。1次転写を実行するにあたり、転写前に感光体ドラム上の2つのトナー像の帯電を均一にすることで転写時の像乱れが少なく、また転写効率も向上するため、転写前に、図2に示す転写前帯電器18が用いられる。
【0162】
1次転写工程S3_4によりトナー像が中間転写ベルト12に転写された後の感光体ドラム11の表面からは、図2に示す感光体クリーニング装置19のブレード191によって残存トナーが除去され、除電装置20によって残存電荷が除去される。
【0163】
続いて今度は、静電潜像形成工程S3_5により、感光体ドラム11の表面に、マゼンタの画像信号に応じた静電潜像を形成し、Mトナー像形成工程S3_6および無色透明トナー像形成工程S3_7が実行されることで、感光体ドラム11の表面には、マゼンタトナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像が形成される。次いで、これらのトナー像を、先の1次転写工程S3_4と同じく、中間転写ベルト12に転写する(1次転写工程S3_8)。ここでの1次転写工程S3_8では、転写するトナー像が、先の1次転写工程S3_4において転写したトナー像と重なるように転写する。
【0164】
この後は、同様に、イエローの画像信号に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程S3_9,Yトナー像形成工程S3_10,無色透明トナー像形成工程S3_11,中間転写ベルト12にイエロートナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像を転写する1次転写工程S3_12,ブラックの画像信号に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程S3_13,BKトナー像形成工程S3_14,無色透明トナー像形成工程S3_15,中間転写ベルト12にブラックトナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像を転写する1次転写工程S3_16が順次実行され、ここまでの工程が終了した時点で、中間転写ベルト12には、ベルト表面側からシアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの順で1つに重なり合ったトナー像が形成されている。
【0165】
最後に実行される転写・定着工程S3_17では、中間転写ベルト12上で1つに重なり合ったトナー像を、図2に示すバイアスロール21とバックアップロール23とで挟まれた2次転写位置において用紙25に転写し、定着器26において用紙25に定着させる。
【0166】
図5は、用紙上に転写されたトナー像の一例を示した図である。
【0167】
図5に示す用紙25には、塗被層側から、ブラックトナー層LBK、イエロートナー層LY、マゼンタトナー層LM、シアントナー層LCが順に積層されている。ここでの画像形成方法では、画像部と非画像部の単位面積あたりのトナー量を同じにしている。そのため、図5に示すように、定着後の1色ごとの単色トナー層LBK,LY,,LM,LCの厚さが一定になり、画像段差が生じず、画像光沢の均一性が向上する。
【0168】
ここで、単色の画像を得ようとする場合、図3に示す転写・定着工程S3_17で用紙上に転写されるトナー像の画像面積率100%領域におけるトナー質量(TMA)は、有色トナーによる画像部、及び無色透明トナーによる非画像部において、0.80mg/cm2以下であることが好ましく、0.60mg/cm2以下であることがより好ましい。TMAが0.80mg/cm2より多いと定着時のエネルギーが増大し、またトナー消費量も多くなるため、コスト的にも好ましくない。
【0169】
定着器26では、図5に示すトナー像が、用紙25に加熱加圧定着させられる。すなわち、加熱定着ロール263によって用紙上のトナー像に熱が加えられ、トナー像を構成する各トナーは溶融させられる。また、用紙25は、ニップ領域を通過することで圧力が加えられる。加熱加圧定着されることで、用紙25上のトナー像は定着トナー像になり、定着トナー像からなる画像が完成する。
【0170】
なお、転写・定着工程S3_17によりトナー像が用紙25に転写された後の中間転写ベルト12の表面からは、図2に示すベルトクリーニング装置22によって転写残トナーが除去される。
【0171】
以上、位置ずれのない、発色性の良好な画像を得るために中間転写ベルト12を利用した画像形成方法について説明したが、本発明は、これに限らず、中間転写ベルトを用いず、感光体ドラム11表面で各色トナー像を重ね合わせていき、感光体ドラム11表面から用紙に一括転写してもよく、あるいは、感光体ドラム11表面に有色トナー像が形成される度に用紙に転写し、用紙上で各色トナー像を重ね合わせいってもよい。さらに、無色透明トナー像形成工程を最初に1回だけ実施し、その後は各有色トナーのトナー像形成工程を連続して実施する画像形成方法であってもよい。
【0172】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0173】
まず、実施例、比較例ともにトナーとキャリアとからなる二成分現像方式を採用したので、キャリアの製造について説明する。
−正帯電トナー用キャリアの製造−
Mn−Mg−Srフェライト粒子(パウダーテック社製、体積平均粒径:35μm)100質量部、ペンウオルト社製のKYNAR7201(ポリフッ化ビニリデン−テトラフロロエチレン共重合体)2質量部、及びメチルフェニルシリコーン樹脂(東レダウ社製、フェニル/メチル比:2.4、軟化点:78℃)0.5質量部を1リットル小型ニーダーで5分間混合し、熱媒温度200℃に設定して40分間攪拌混練した後、ヒーターを切り、攪拌しながら50分間冷却した。その後、75μmメッシュで篩分を行って正帯電トナー用キャリアを作製した。
【0174】
なお、ここにいう質量部は、構成成分全体に対する割合を示し(以下、同じ)、例えば、Mn−Mg−Srフェライト粒子は、100/102.5(%)の含有量になる。
−負帯電トナー用キャリアの製造−
トルエン1.25質量部にカーボンブラック(商品名;VXC−72、キャボット社製)0.12質量部を混合し、サンドミルで20分攪拌分散することでカーボン分散液を得た。また、3官能性イソシアネート80重量%と酢酸エチル溶液(タケネートD110N:武田薬品工業社製)1.25質量部とを混合攪拌しコート剤樹脂溶液も得た。その後、上記カーボン分散液、上記コート剤樹脂溶液、およびMn−Mg−Srフェライト粒子(平均粒径;35μm)をニーダーに投入し、常温で5分間混合攪拌した後、常圧にて150℃まで昇温し溶剤を留去した。さらに30分混合攪拌後、ヒーターの電源を切り50℃まで降温した。得られたコートキャリアを75μmメッシュで篩分を行って負帯電トナー用キャリアを作製した。
<実施例1>
−結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、セバシン酸ジメチル41.3質量部と、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル1.1質量部と、フマル酸ジメチル1.1質量部と、ジメチルスルホキシド27質量部と、1,10−デカンジオール33.2質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下でジメチルスルホキシドを留去し、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い、30分間攪拌後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)61.3質量部を合成した。この結晶性ポリエステル樹脂(1)の、酸由来構成成分の炭素数は‘8’であり、アルコール由来構成成分の炭素数は‘10’である。
【0175】
得られた結晶性ポリエステル(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9000であり、数平均分子量(Mn)は4000であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(1)について、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS(テトラメチルシラン)基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、セバシン酸由来成分と5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル成分とフマル酸由来成分のモル含有比が94:2:4であった。したがって、スルホン酸基を有する2価のカルボン酸の共重合成分は2.0構成モル%になる。
【0176】
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.084であった。
−結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成−
セバシン酸ジメチルの添加量を42.2質量部に変更し、また5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチルを除いた以外は結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0177】
得られた結晶性ポリエステル(2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は10000であり、数平均分子量(Mn)は4500であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(2)について、NMR(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、セバシン酸由来成分とフマル酸由来成分のモル含有比が96:4であった。
【0178】
また、結晶性ポリエステル樹脂(2)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は78℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.084であった。
−電子写真用シアントナー(1)の製造(溶解懸濁法)−
結晶性ポリエステル(1)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部と、トルエン60質量部とを混合し、サンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロースを3.0質量%含有する水溶液36質量部に、炭酸カルシウムを40質量%含有する懸濁液45質量部と、水45質量部と、を添加した。これに、前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
【0179】
次いで、窒素気流下で加熱攪拌を続けながら、トルエン22質量部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)1.5質量部を溶解させた溶液を前記懸濁溶液に加え、80℃で1.0時間反応させた。さらに攪拌を続けながら、水浴にて40℃まで懸濁溶液を冷却して懸濁重合を終了し、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液中の粒子は炭酸カルシウムで覆われており、得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、粒子を覆っている炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、さらに水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥を行い、45μmの篩いで篩分して電子写真用シアン着色粒子(1)を製造した。形状はほぼ球形であった。
【0180】
続いて、電子写真用シアン着色粒子(1)に外添処理を施した。ここでの外添処理では、電子写真用シアン着色粒子(1)に、1次粒子径40nmの表面疎水化処理したシリカ微粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ:RX50)0.8wt%と、メタチタン酸100質量部にイソブチルトリメトキシシラン40質量部およびトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10質量部で処理した反応生成物である1次粒子平均径20nmのメタチタン酸化合物微粒子1.0wt%とを、ヘンシェルミキサーにて5分間添加混合した。その後45μmの篩分網で篩分して電子写真用シアントナー(1)を作製した。
【0181】
得られた電子写真用シアントナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.8μmであった。また電子写真用シアントナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。
−電子写真用マゼンタトナー(1)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部に代えて、キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)1.0質量部およびカーミン6B顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)0.7質量部の2種類の顔料を用いた以外は電子写真用シアントナー(1)と同様にして電子写真用マゼンタトナー(1)を作製した。
【0182】
得られた電子写真用マゼンタトナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.9μmであった。また電子写真用マゼンタトナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。
−電子写真用イエロートナー(1)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部に代えて、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー180)2.8質量部を用いた以外は電子写真用シアントナー(1)と同様にして電子写真用イエロートナー(1)を作製した。
【0183】
得られた電子写真用イエロートナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。また電子写真用イエロートナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。
−電子写真用有色現像剤(1)の作製−
得られた電子写真用シアントナー(1)5質量部と前記負帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用シアン現像剤(1)を作製した。また同様にして、電子写真用マゼンタ現像剤(1)および電子写真用イエロー現像剤(1)もそれぞれ作製した。
−電子写真用無色透明トナー(1)の作製−
結晶性ポリエステル(1)を結晶性ポリエステル(2)に代え、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)を除いた以外は電子写真用シアン着色粒子(1)と同様にして電子写真用無色透明粒子(1)を作製した。形状はほぼ球形であった。
【0184】
続いて、電子写真用無色透明粒子(1)に外添処理を施した。ここでの外添処理では、電子写真用無色透明粒子(1)100質量部に対し、表面疎水化処理したシリカ微粒子(Wacker社製疎水性シリカ:H2050EP)0.8質量部を加え、ヘンシェルミキサーにて5分間添加混合た。その後45μmの篩分網で篩分して電子写真用無色透明トナー(1)を得た。
【0185】
得られた電子写真用ブラックトナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は7.2μmであった。また電子写真用無色透明トナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は79℃であった。
−電子写真用無色透明現像剤(1)の作製−
得られた電子写真用無色透明トナー(1)5質量部と前記正帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した。
−トナー粘弾性の評価−
得られた各トナーについて、粘弾性の測定を行った。測定装置は、レオメトリックス社製のレオメーター、商品名「ARES」(RHIOSシステム ver6.4.4)を用いた。直径8mmのパラレルプレートを用い、あらかじめホットプレート上で溶融させ直径8mm、厚さ約2mmに成型した電子写真用シアントナー(1)をパラレルプレートの間に挟み、正弦波振動により測定を行った。周波数は1rad/sとし、30℃〜150℃の範囲で毎分1℃温度を上昇させながら、動的粘弾性を測定した。歪みは初期値を0.03%とした後は、自動測定モードによって変化させた。
−帯電性の評価−
上記電子写真用現像剤をDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)の現像器に入れ、温度22℃、湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、現像器を3分間空回ししてから、現像剤を取り出してブローオフ帯電量測定機(東芝社製)で帯電量を測定した。
以上の評価結果を現像剤特性として表1に表す。
【0186】
【表1】
【0187】
−電子写真用転写紙(1)の作製−
LBKP(フリーネス(CSF)=450ml)90質量部、及びNBKP(フリーネス(CSF)=450ml)10質量部のパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(PC:白石カルシウム(株))を5質量部となるように添加し、対パルプ(LBKPとNBKPを合わせたパルプスラリー)当たり、澱粉1.5質量部、アルケニル無水コハク酸0.1質量部、及び硫酸バンド0.6質量部を添加し、長網抄紙機を用いて抄紙して澱粉の塗被量が1.0g/m2となるようにサイズプレスで塗布し、坪量が108g/m2、密度0.70g/cm3の基紙を得た。
【0188】
次に顔料成分としてカオリン(ウルトラホワイト90:エンゲルハード(株))を70質量部、重質炭酸カルシウム(カーピタル90:富士カオリン(株))を30質量部とし、前記顔料成分100質量部に対し、接着剤として酸化澱粉(エースA:王子コーンスターチ(株))を3質量部、SBR(JSR0668:日本合成ゴム(株))を13質量部とし、塗被層塗料を作成し、前記基紙に、ブレード塗工にて片面10g/m2で両面塗工し、片面塗被層の厚みが14μmで、用紙の坪量が128g/m2、密度が0.96g/cm3、透気度が2500秒の電子写真用転写紙(1)を得た。また電子写真用転写紙(1)を使用する前に低温低湿下で24時間の調湿を行った。
−画像作製方法−
図2に示す現像ロータリー14を、ブラックを除く、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各有色トナーを収容した3つの現像器を有する現像ロータリーに代えた以外は、図2に示す画像形成装置1の構成と同じ画像形成装置を用いて画像形成を行った。ここでは、図2に示す画像形成装置1の構成部品と同じ構成部品には、図2の説明で用いた符号と同じ符号を付して説明する。
【0189】
本実施例で用いた画像形成装置の感光体ドラム11は負帯電のOPC感光体である。また、現像ロータリー14内の3つの現像器142,143,144にはぞれぞれ、電子写真用イエロー現像剤(1)、電子写真用マゼンタ現像剤(1)、および電子写真用シアン現像剤(1)を入れた。これら3つの現像器はいずれも、マグネットロールを内蔵した現像スリーブを備えたものであり、このマグネットロールには直流あるいはさらに交流のバイアス電圧が印加され、2成分有色現像剤による接触現像が行われる。また、現像ロータリー14よりも下流側に配備された現像器17には、電子写真用無色透明現像剤(1)を入れ、この現像器17にも同様に電圧を印加し、2成分無色現像剤による非接触現像を行わせた。この時各色トナー層で、有色トナーと無色透明トナーの単位面積あたりのトナー量が同じになるように現像電位を調整した。
【0190】
まず帯電器15で時計回りに回転する感光体ドラム11上に一様に負の電荷を与えた。次に光書き込みユニット16から感光体ドラム11に向けてイエロー像のレーザー光を照射し、イエロー静電潜像を感光体ドラム11上に形成した。次いで、感光体ドラム11上に形成したイエロー静電潜像を現像器142に収容された負帯電した電子写真用イエロートナー(1)により反転現像し、感光体ドラム11上にイエロートナー像を形成した。続いて現像器17により非潜像部分を電子写真用無色透明トナー(1)により正規現像し、イエロートナー層を形成した。
【0191】
続いて、転写前帯電器18により、感光体ドラム11上に形成したイエロートナー層の帯電の均一化を行った後、1次転写ロール13によって中間転写ベルト12に1次転写した。
【0192】
次いでイエロートナー層と同様にマゼンタトナー層、シアントナー層を中間転写ベルト12上に順次積層した。一方、給紙トレイ24から電子写真用転写紙(1)を搬送し、前記積層したトナー層をバイアスロール21とバックアップロール23とで挟まれた2次転写位置において電子写真用転写紙(1)上に転写した。次いで、積層したトナー像が転写された電子写真用転写紙(1)を、定着器15に通し、定着トナー像からなる画像を形成した。
−低温定着性の評価−
上記画像形成方法を実施する中で、以下の条件で作成した単色トナー画像を未定着の状態で取り出した。
[画像形成条件]
・トナー画像:ソリッド像(40mm×50mm)
・単色トナー量(用紙上):0.40mg/cm2
ここでは、ロール−ベルト方式の定着器を備えたDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)のその定着器を定着温度が可変となるように改造し、取り出した未定着画像の低温定着性の評価を行った。すなわち、未定着画像を、設定した定着器温度において電子写真用転写紙(1)に定着させ、得られた各定着画像の画像面を谷折りにし、折れ目部の画像のはがれ度合いを観察し、画像が殆んどはがれない最低の定着温度をMFT(℃)として測定し、低温定着性の評価とした。
−画像保存性の評価−
未定着画像を電子写真用転写紙(1)に、最低の定着温度(MFT(℃))より20℃高い温度で定着させたものを2枚用意し、それら2枚の画像面を重ね合わせ、荷重100g/cm2をかけた状態で温度60℃、湿度85%の環境下に7日間放置した。その後、重ね合わせた画像をはがし、トナー像同士の融着があるか否かを目視にて観察し、下記評価基準により評価した。
【0193】
○:画像保存性に問題なし
△:多少の変化が観察されたが実用上の問題なし
×:大きな変化が観察され、実用上使用不可である
低温定着性の評価および画像保存性の評価についての結果を定着特性として表2に表す。
【0194】
【表2】
【0195】
−トナーブリスターの評価−
ブリスターの評価は、定着温度が可変となるように改造した上記定着器を用い、温度28℃、湿度85%2の環境下で実施した。限界用紙坪量を105g/m2以下とし、コピー原稿としてシアン色、マゼンタ色、イエロー色の3色の画像面積率100%のものを用い、3色の重ね刷り部で、ブリスター未発生のものは○、発生しているが目視では確認できないものは△、発生を目視で確認できるものは×とした。
−粒状性及び画像全体の官能評価−
各単色画像と二次色画像、及び三次色画像について、平均反射濃度が異なる、2×2cmの均一画像が並んだチャート状の画像を、前記MFTより20℃高い温度でA4サイズの電子写真用転写紙(1)に定着させ、評価サンプルとした。この評価サンプルでは、用紙上の単色トナー量が0.40mg/cm2となるようにした。定着画像の粒状性の評価は前記評価サンプルを用いて、目視評価により行った。この目視評価では、20人の評価者に、前記評価サンプルの定着画像のきめについて、1.非常にきめが粗い、2.きめが粗い、3.普通、4.きめが細かい、5.非常にきめが細かいの5つに分類してもらい、その平均値を求めた。平均値が2未満の場合を×、2以上4未満の場合を△、4以上の場合を○とした。
【0196】
画像全体の官能評価では、まず、人物写真のサンプルを作製した。ここでも、前記MFTより20℃高い温度で定着させるとともに、用紙上の単色トナー量が0.40mg/cm2となるようにした。そして、作成したサンプルについて目視評価を行った。ここでは、20人の評価者に、作成したサンプルの画質について、1.非常に悪い、2.悪い、3.普通、4.良い、5.非常に良いの5つに分類してもらい、その平均値を求めた。平均値が2未満の場合を×、2以上4未満の場合を△、4以上の場合を○とした。
トナーブリスターの評価と粒状性及び画像全体の官能評価についての結果を紙特性および画質評価として表3に表す。
【0197】
【表3】
【0198】
<実施例2>
−結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、1,20−エイコサンジオール19.6質量部と、フマル酸ジメチル0.7質量部と、ジメチルスルホキシド10質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。減圧下、ジメチルスルホキシドを留去し、窒素気流下、ドデカンジオイック酸ジメチル15.9質量部を加え、180℃で1時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い20分攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(3)33質量部を合成した。この結晶性ポリエステル樹脂(3)の、酸由来構成成分の炭素数は‘12’であり、アルコール由来構成成分の炭素数は‘20’である。
【0199】
得られた結晶性ポリエステル(3)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9200であり、数平均分子量(Mn)は4300であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(3)のNMR測定によるドデカンジオイック酸由来成分とフマル酸ジメチル由来成分の共重合比は、92:8であった。
【0200】
また、結晶性ポリエステル樹脂(3)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は94℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.056であった。
−電子写真用無色透明トナー(2)の製造−
結晶性ポリエステル樹脂(2)を結晶性ポリエステル樹脂(3)に代え、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)を2.5質量部を溶解させた溶液を懸濁溶液に加え、98℃で2.0時間反応させた以外は実施例1と同様にして電子写真用無色透明トナー(2)を製造した。得られた電子写真用無色透明トナー(2)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径は8.6μmであった。また形状はやや不定形であった。また電子写真用無色透明トナー(2)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は95℃であった。
−電子写真用無色透明現像剤(2)の製造−
実施例1の電子写真用現像剤の作製において、電子写真用無色透明トナー(1)を電子写真用無色透明トナー(2)に代えた以外は電子写真用無色透明現像剤(1)と同様にして現像剤を作製した。
−評価−
電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した電子写真用無色透明現像剤(2)に代えた以外は、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。結果を表1〜3に表す。
<実施例3>
電子写真用転写紙(1)を市販の印刷用塗被紙ロストンカラーホワイト(王子製紙(株))(以下、電子写真用転写紙(2)と称する)に代え、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。電子写真用転写紙(2)は開封した直後のものを使用した。この電子写真用転写紙(2)の片面塗被層厚みは22μm、用紙の坪量は129g/m2、密度は1.10g/cm3、透気度は6000秒であった。結果を表2〜3に表す。
<比較例1>
−非結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した2口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35質量部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン65質量部と、テレフタル酸80質量部と、n−ドデセニルコハク酸10質量部と、トリメリット酸10質量部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸)に対して0.05質量部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させた。その後、210〜250℃で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0201】
得られた非結晶性ポリエステル(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は13200であり、数平均分子量(Mn)は6600であった。
【0202】
また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、前述の融点の測定と同様にして測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の開始点をとったガラス転移点(Tg)は62℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.067であった。
−電子写真用シアントナー(2)の製造−
非結晶性ポリエステル樹脂(1)82質量部と、シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)18質量部とを混合し、バンバリー型混練機を用いて溶融混練し、高濃度の着色樹脂組成物を得た。該着色樹脂組成物25質量部と、非結晶性ポリエステル樹脂(1)75質量部とを酢酸エチル100質量部に分散・溶解させ分散溶液を調製した。
【0203】
得られた分散溶液を、カルボキシメチルセルロース1質量部と、炭酸カルシウム20質量部と、水100質量部と、の混合液中に加え、ミキサーを用いて高速撹拌して分散させ乳化液を得た。この乳化液をビーカーに移し、約5倍量の水を加え、撹拌しながら43℃の温浴中で10時間保持し、前記酢酸エチルを蒸発させた。炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、水とトナーとの混合物を得た。最後に、水を凍結乾燥機で蒸発させ、45μmの篩いで篩分して電子写真用シアン着色粒子(2)を得た。形状はほぼ球形であった。
【0204】
得られた電子写真用シアン着色粒子(2)に、電子写真用シアントナー(1)作製時に行った外添処理と同様な外添処理を施し、電子写真用シアントナー(2)を得た。前記と同様に平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。
−電子写真用マゼンタトナー(2)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部に代えて、キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)1.0質量部およびカーミン6B顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)0.7質量部の2種類の顔料を用いた以外は電子写真用シアントナー(2)と同様にして電子写真用マゼンタトナー(2)を作製した。得られた電子写真用マゼンタトナー(2)の体積平均粒子径は6.5μmであった。
−電子写真用イエロートナー(2)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部を、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー180)2.8質量部に代えた以外は電子写真用シアントナー(2)と同様にして電子写真用イエロートナー(2)を作製した。得られた電子写真用イエロートナー(2)の体積平均粒子径は6.4μmであった。
−電子写真用有色現像剤(2)の作製−
得られた電子写真用シアントナー(2)5質量部と前記負帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用シアン現像剤(2)を作製した。また同様にして電子写真用マゼンタ現像剤(2)と電子写真用イエロー現像剤(2)も、それぞれ作製した。
−電子写真用無色透明トナー(3)の作製−
ボントロンP−51(オリエント化学社製)0.3質量部と、非結晶性ポリエステル樹脂(1)99.7質量部とを混合し、バンバリー型混練機を用いて溶融混練し、酢酸エチル100質量部に分散・溶解させ分散溶液を調製した。
【0205】
得られた分散溶液を、カルボキシメチルセルロース1質量部と、炭酸カルシウム20質量部と、水100質量部と、の混合液中に加え、ミキサーを用いて高速撹拌して分散させ乳化液を得た。この乳化液をビーカーに移し、約5倍量の水を加え、撹拌しながら43℃の温浴中で10時間保持し、前記酢酸エチルを蒸発させた。炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、水とトナーとの混合物を得た。最後に、水を凍結乾燥機で蒸発させ、45μmの篩いで篩分して電子写真用無色透明粒子(3)を得た。形状はほぼ球形であった。
【0206】
得られた電子写真用無色透明粒子(3)に、電子写真用無色透明トナー(1)作製時に行った外添処理と同様な外添処理を施し、電子写真用無色透明トナー(3)を作製した。得られた電子写真用無色透明トナー(3)の体積平均粒子径は7.0μmであった。
−電子写真用無色透明現像剤(3)の作製−
得られた電子写真用無色透明トナー(3)5質量部と前記正帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用無色透明現像剤(3)を作製した。
−評価−
電子写真用有色現像剤(1)を作製した電子写真用有色現像剤(2)に代えるとともに、電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した電子写真用無色透明現像剤(3)に代えた以外は、実施例3と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。
<比較例2>
−結晶性ポリエステル樹脂(4)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、1,4−ブタンジオール90.1質量部と、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル3.0質量部と、フマル酸ジメチル22.2質量部と、アジピン酸ジメチル165.4質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.3質量部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(4)220質量部を合成した。この結晶性ポリエステル樹脂(4)の、酸由来構成成分の炭素数は‘4’であり、アルコール由来構成成分の炭素数も‘4’である。
【0207】
得られた結晶性ポリエステル(4)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9200であり、数平均分子量(Mn)は4100であった。
【0208】
また、結晶性ポリエステル樹脂(4)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、DSCを用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は56℃であった。NMR測定によるアジピン酸由来成分と5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル由来成分とフマル酸由来成分の共重合比は、95:1:4であった。エステル濃度Mを計算すると、0.142であった。
−結晶性ポリエステル樹脂(5)の合成−
アジピン酸ジメチルの添加量を167.2質量部に変更し、また5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチルを除いた以外は結晶性ポリエステル樹脂(4)の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(5)を得た。
【0209】
得られた結晶性ポリエステル(5)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9800であり、数平均分子量(Mn)は4500であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(5)について、NMR(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、セバシン酸由来成分とフマル酸由来成分のモル含有比が96:4であった。
【0210】
また、結晶性ポリエステル樹脂(5)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は58℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.143であった。
−電子写真用有色トナー(3)の製造−
結晶性ポリエステル(1)を結晶性ポリエステル(4)に代えた以外は電子写真用シアントナー(1)と同様にして電子写真用シアントナー(3)を製造した。以下同様に電子写真用マゼンタトナー(3)及び電子写真用イエロートナー(3)を製造した。得られた電子写真用シアントナー(3)、電子写真用マゼンタトナー(3)及び電子写真用イエロートナー(3)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径はそれぞれ6.6μm、6.3μm、6.4μmであった。また融点を測定したところ、明確なピークを有し、いずれのトナーピークトップの温度に56℃であった。またいずれの形状もほぼ球形であった。
−電子写真用有色現像剤(3)の作製−
得られた電子写真用シアントナー(3)5質量部と前記負帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用シアン現像剤(3)、を作製した。また同様にして電子写真用マゼンタ現像剤(3)と電子写真用イエロー現像剤(3)を、それぞれ作製した。
−電子写真用無色透明トナー(4)の製造−
結晶性ポリエステル(2)を結晶性ポリエステル(5)に代えた以外は電子写真用無色透明トナー(1)と同様にして電子写真用無色透明トナー(4)を製造した。得られた電子写真用無色透明トナー(4)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。また融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は58℃であった。また形状はほぼ球形であった。
−電子写真用無色透明現像剤(4)の製造−
電子写真用無色透明トナー(1)を電子写真用無色透明トナー(4)に代えた以外は電子写真用無色透明現像剤(1)と同様にして電子写真用無色透明現像剤(4)を作製した。
−評価−
電子写真用有色現像剤(1)を作製した電子写真用有色現像剤(3)に代えるとともに電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した電子写真用無色透明現像剤(4)に代えた以外は、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。結果を表1〜3に表す。
<比較例3>
電子写真用転写紙(1)を市販の印刷用塗被紙OKトップコート(王子製紙(株))(以下、電子写真用転写紙(3)と称する)に代えるとともに、画像形成方法を実施するにあたり使用した画像形成装置に備えられた定着器をロール−ロール定着方式であるデジタルカラー複写機A−Color935の定着器に代えた以外は、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。電子写真用転写紙(3)は開封した直後のものを使用した。この電子写真用転写紙(3)の片面塗被層の厚みは14μmで、用紙の坪量は107g/m2、密度は1.23g/cm3、透気度は17000秒であった。結果を表2〜3に表す。
<比較例4>
電子写真用無色透明現像剤(1)を用いなかったこと以外は実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。結果を表2〜3に表す。
【0211】
実施例1で用いた本発明の画像形成方法では、表1〜3の結果のように、ブリスターの発生がなく、粒状性と画像官能評価に優れ、かつ最低定着温度が従来に比べ著しく低く、定着画像の保存性にも優れる。また帯電性にも優れるため、かぶり等のディフェクトも見られなかった。
【0212】
また、実施例3も実施例1と同様に良好であることがわかる。
【0213】
実施例2では、表1に示すように、無色透明トナーの融点が、各有色トナーの融点に比べ18℃も高く、最低定着温度が、表2に示すように実施例1に比べ上昇していることがわかる。このことから、より低い温度での定着を実現するには、融点のばらつきが可能な限り小さな有色トナーおよび無色トナーを用いることが好ましいことがわかる。なお、実施例2では、この点を除いては、実施例1と同程度の結果になっている。
【0214】
比較例1では、表2に示すように、最低定着温度が各実施例に比べ大きく上昇し、定着画像保存性が各実施例に比べ劣っている。これらは、結着樹脂の主成分に非結晶性樹脂を用いたことに起因すると考える。また、比較例1では、実施例3で用いた用紙と同じ、透気度がやや高い用紙を用いている。実施例3では、ブリスターの発生が抑えられていたのに対し、この比較例1では、軽微なブリスターが発生した。この違いは、実施例3では、最低定着温度が低かったため、透気度がやや高くてもブリスターの発生を抑えることができたのに対し、比較例1では、最低定着温度が大きく上昇したことにより、ブリスターの発生が抑えられなかったと考える。このことから、ブリスターの発生を抑えるためには、用いるトナーの結着樹脂の主成分を結晶性樹脂にするか非結晶性樹脂にするかということと使用する用紙の透気度との関係が重要であることがわかる。
【0215】
比較例2では表2に示すように、最低定着温度は低いものの、結晶性ポリエステル樹脂の融点が低すぎたため定着画像の保存性が非常に悪い。また、帯電性が低いため若干のかぶりが観察され、表3に示すように画像官能評価ではあまり好ましくない結果になっている。これは、結晶性ポリエステルのエステル濃度が高すぎたことに起因する結果と考える。
【0216】
比較例3では表3に示すように、ブリスターが発生し、それによる画質悪化が見られた。比較例3では、紙の透気度が高く、またロール−ロール定着方式の定着器を用いたことから、ブリスターの発生を抑えることができなかったと考える。
【0217】
比較例4では、表3に示すように、粒状性や画像官能評価が実施例1に比べ劣る結果になっている。比較例4と実施例1の違いは、非画像部を無色透明トナーで覆ったか否かの違いである。有色トナーのみの画像形成では画像部と非画像部の画像段差や画像光沢性の不均一性により、画像官能評価の結果が低下したと考える。また粒状性については非画像部を無色透明トナーで覆わなかったことから、有色トナーが孤立している部分が生じ、この部分での転写が良好に行われなかった影響と考える。一方、実施例1では、非画像部を無色透明トナーで覆ったことにより有色トナーが孤立している部分が生じず、紙面全体にわたって良好な転写が行われたと考える。
【0218】
これらの結果より、塗被層を設けた紙を使用し、非画像部を無色透明トナーで定着することで、面内の画像光沢が均一になり、また、各色トナー層で、有色トナーと無色透明トナーの単位面積あたりのトナー量が同じになるように現像電位を調整することで、画像段差が解消され粒状性や画像の官能評価が著しく向上することがわかる。さらに各有色トナーと無色透明トナーの粘弾性を揃えることで、画像光沢をさらに均一化することができることもわかる。
【0219】
また、結晶性ポリエステルトナーを用いることで、従来に比べ大幅な低温定着が実現されており、定着工程での消費エネルギーやウォームアップタイムの大幅な低減により低コストで画像形成を行うことができる。
【0220】
さらに、これらの結果より、形成された画像の優れた保存性も実現することができることや、トナーの低温定着性と紙の透気度を規定することでトナーブリスターの発生を抑制することができることもわかる。
【0221】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の画像形成方法によれば、トナーブリスターの発生を抑え、低コストで均一な光沢を有する画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法に用いるトナーの好ましい特性を示すグラフである。
【図2】本発明の画像形成方法の一実施形態を実施する画像形成装置の模式図である。
【図3】図2に示す画像形成装置において実行される画像形成方法の各工程を示すフローチャートである。
【図4】静電潜像が形成された感光体ドラムを展開し模式的に示す図である。
【図5】用紙上に転写されたトナー像の一例を示した図である。
【符号の説明】
1 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 中間転写ベルト
13 1次転写ロール
14 現像ロータリー
15 帯電器
16 光書き込みユニット
17 現像器
18 転写前帯電器
19 感光体クリーニング装置
20 除電装置
21 バイアスロール
22 ベルトクリーニング装置
23 バックアップロール
24 給紙トレイ
25 用紙
26 定着器
261 押圧パッド
262 エンドレスベルト
263 加熱定着ロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式でフルカラー画像を用紙に形成するときには、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、BK(黒)の4色のカラートナーを用紙に順番に積層し、その後、積層させたカラートナーに熱定着ロール等で熱を加えることでカラートナーを用紙に定着させ、定着トナー像からなるフルカラー画像を得る。
【0003】
電子写真方式では、形成した画像の画質を印刷した画像の画質やプリントした銀塩写真の画質にどれだけ近づけることができるかが課題の一つであり、そのための技術の一つとして、画像に光沢性を持たせる技術が種々提案されている。
【0004】
ここでは、カラートナーを用いて1枚の用紙に電子写真方式によって画像を形成する場合を例にあげ、1枚の用紙のうち、カラートナーが定着された部分を画像部と称し、それ以外の部分を非画像部と称して以下説明する。電子写真方式によって形成された画像では画像部と非画像部での光沢が異なりやすく、電子写真方式による画像は、印刷や銀塩写真で得られた画像と比較して滑らかさのない不自然なものになることがある。この光沢の差異を低減するために、非画像部に無色透明トナーを定着させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。カラートナーとは別に無色透明トナーを用いると、使用するトナー量が増大し、定着時にかかるエネルギーも増大する。これらの特許文献に記載された技術では、定着時にかかるエネルギーを低減するための措置がなんら採られておらず、画像形成のコストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
また、電子写真方式によって形成された画像では、用紙に定着したトナーの剥離により画像の保存性が問題になることがある。そのため、電子写真方式では、形成した画像の保存性をプリントした銀塩写真の保存性と同等にすることも課題の一つである。前述のように無色透明トナーを使用してトナー量が増加した場合には、画像の保存性の問題がさらに顕在化する。
【0006】
ところで、トナーが溶融する温度(定着温度)を低くすることは、定着時にかかるエネルギーを低減することができ、無色透明トナーを用いたことによる定着時のエネルギー増大に有効な対策である。また、定着温度を低くすることは、定着部材の昇温時間の短縮化、定着部材の長寿命化等、様々な利点がある。そこで、従来より、低温定着を実現するためのトナーが種々提案されているが(例えば、特許文献5〜9参照。)、これらの中でも、特許文献7〜9に記載されたトナーが、定着前のトナーの凝集によるブロッキングや、定着後のトナーの剥離を防止しつつ低温定着を実現することができるトナーとして優れている。そのため、特許文献7〜9に記載された技術を採用した無色透明トナーや有色トナーを用いて画像形成を行えば、画像の保存性についての問題は解消される。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−58374号公報
【特許文献2】
特開平1−108563号公報
【特許文献3】
特開平5−127437号公報
【特許文献4】
特開平9−197858号公報
【特許文献5】
特公昭62−39428号公報
【特許文献6】
特公平4−30014号公報
【特許文献7】
特開平4−120554号公報
【特許文献8】
特開平4−239021号公報
【特許文献9】
特開平5−165252号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献7〜9に記載されたトナーは、結着樹脂として部分結晶性ポリエステル樹脂を用いたものであり、トナーの温度に対する粘度変化がなだらかで、従来以上の低温定着を実現することは不可能であり、無色透明トナーを用いた画像形成のコスト高という問題は依然として解消されない。
【0009】
また、トナー像の加熱定着時には、用紙の繊維層内部の水分が加熱され水蒸気が発生し、繊維層内部の水蒸気圧が上昇する。この水蒸気が用紙の外に排出される際に、何らかの理由でその排出がスムーズにいかないと、繊維層内部で発生した水蒸気が用紙上に転写されたトナー像を突き破って流出し、定着トナー像には微小なフクレや貫通孔(以下、トナーブリスターと呼ぶ)が残り画像の品位が低下してしまうことがある。
【0010】
ところで、無色透明トナーを用いて写真並みの高画質を達成するためには、表面凹凸が少なく、溶融したトナーの、繊維層への過剰な染み込みを防止する塗被層を設けたいわゆるコート紙を使用することが、光沢の均一性や画像の鮮明度が高められる点から望ましい。コート紙上に画像を形成するにあたり、無色透明トナーを非画像部に定着させようとすると、用紙のほぼ全面にわたってトナーが存在する状態になり、この状態でトナーに熱を加え水蒸気が多量に発生すると、上述のトナーブリスターが発生しやすくなる。すなわち、従来のコート紙では、塗被層を設けたことにより水蒸気の排出経路が不十分となり、用紙内部で発生した多量の水蒸気は塗被層中のわずかな排出経路に集中する。わずかな排出経路に集まった水蒸気は、用紙上に転写されたトナー像に大きな孔を開けて一気に流出する。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、トナーブリスターの発生を抑え、低コストで均一な光沢を有する画像を形成することができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の画像形成方法は、一色のトナーを用いてトナー像を形成することを、色が異なるトナーを用いて所定回実行し、それぞれ得られたトナー像をその転写体上に転写し、その転写体上にこれらのトナー像を定着することからなる画像形成方法において、
融点が60℃から120℃の間に存在する結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む一色の有色トナーを用いてトナー像を形成する有色トナー像形成工程と、
上記有色トナー像形成工程におけるいずれの色の有色トナーも不存在になる非画像部を含む領域に、融点が60℃から120℃の間に存在する結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む無色トナーを用いて無色トナー像を形成する無色トナー像形成工程と、
上記転写体が、繊維層の表面に少なくとも顔料と接着成分からなる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である転写体であることを特徴とする。
【0013】
本発明の画像形成方法で用いる有色トナーの結着樹脂の主成分および無色トナーの結着樹脂の主成分はいずれも結晶性のものであるため、結晶の融点以下ではトナーの硬さが保持され、融点を超えたところで結晶の融解とともにトナーの粘度が急激に低下する。また、これらの主成分はいずれも融点が60℃から120℃の間に存在するものである。これらのことから、本発明の画像形成方法によれば、低温定着が実現され低コストで画像形成を行うことができるとともに本発明の画像形成方法によって形成された画像の保存性は良好なものになる。また、本発明の画像形成方法で用いる用紙は、上記塗被層を有するいわゆるコート紙である。このため上記用紙の表面は平坦になっており、この用紙上に形成された定着トナー像からなる画像の光沢の均一性が向上する。また、溶融したトナーの、繊維層への過剰な染み込みが上記塗被層によって防止され、トナーの光沢が維持される。さらに、本発明の画像形成方法によれば低温定着を実現することができることから、定着時の用紙の温度上昇が抑えられ、発生する水蒸気量が低減する。このため、トナーブリスターの発生が抑えられる。さらに、上記用紙は、透気度が8000秒以下であるため、定着時の加熱によって繊維層内部で発生した水蒸気は、十分な排出経路を通って用紙外部に排出され、この点からもトナーブリスターの発生が抑えられる。
【0014】
また、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程および上記無色トナー像形成工程は、融点のばらつきが10℃の範囲に収まった有色トナーおよび無色トナーを用いる工程であることが好ましい。
【0015】
定着温度は融点の一番高いトナーに合わせる必要があることから、融点の差が10℃より大きいと定着設定温度が上昇してしまうことから、融点のばらつきが10℃の範囲に収まった有色トナーおよび無色トナーを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程は、上記有色トナーとして、下記式1で定義されるエステル濃度Mが0.05以上0.12以下の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、着色剤である顔料とを少なくとも含有したトナーを用いる工程であり、
上記無色トナー像形成工程は、上記無色トナーとして、下記式1で定義されるエステル濃度Mが0.05以上0.12以下の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を少なくとも含有したトナーを用いる工程であることも好ましい。
【0017】
M=K/A ・・・式1
(Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度Mが0.12を超えると樹脂抵抗が低下し、帯電性が低下してしまう。一方、上記エステル濃度Mが0.05を下回ると、安定してトナーを作製することが困難になる。
【0018】
さらに、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程を上記所定回実行するとともに上記無色トナー像形成工程も実行することで形成された各色トナー像が、繊維層の表面に少なくとも顔料と接着成分なる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である転写体上で最終的に一つに重なるように、これらトナー像をその転写体上に転写し、転写したこれらトナー像に熱を加えてその転写体上にこれらトナー像を定着する転写・定着工程を備え、
上記転写・定着工程が、上記有色トナー像形成工程を上記所定回実行するとともに上記無色トナー像形成工程も実行することで形成された各色トナー像を、坪量が70〜220kg/m2である上記用紙に転写し、転写した各トナー像に熱を加えてその用紙上にトナー像を定着する工程であることも好ましい。
【0019】
上記坪量が70g/m2 を下回ると、定着時に上記用紙にかかる熱量が大きくなり、水蒸気圧が大きくなって、ブリスターが発生しやすくなる。一方、上記坪量が220g/m2 を超えると、上記用紙に対する熱量が小さくなり、水蒸気圧も小さくなるため、ブリスターの発生は抑えられるが、上記用紙の加熱に要する熱量が大きくなり過ぎて、コストアップにつながる。
【0020】
またさらに、本発明の画像形成方法において、上記有色トナー像形成工程が、上記有色トナーとして帯電極性が揃ったトナーを用いる工程であり、
上記無色トナー像形成工程が、上記無色トナーとして、上記有色トナーの帯電極性とは反対の極性に帯電極性が揃ったトナーを用いる工程であることが好ましく、
上記有色トナー像形成工程が、上記有色トナーとして、上記一方の極性と同極性に帯電させた帯電有色トナーを用い、その帯電有色トナーを上記トナー像担持体表面の、低電位の画像部に反転現像させて有色トナー像を形成する工程であり、
上記無色トナー像形成工程が、上記無色トナーとして、上記他方の極性と同極性に帯電させた帯電無色トナーを用い、その帯電無色トナーを上記トナー像担持体表面の、高電位の非画像部に正規現像させて無色トナー像を形成する工程であることがより好ましい。
【0021】
このように帯電極性を逆極にすることで、1つの静電潜像を、反転現像と正規現像との2つの現像に用いることができるようになり、単色トナー層を得るための静電潜像の形成が1回ですみ、非常に効率的である。そのため画像形成の高速化や画像形成方法を実施するシステムの簡便化を計る事ができる。
【0022】
また、本発明の画像形成方法において、上記転写・定着工程が、転写した各トナー像を担持した上記用紙を、環状ベルト表面と加熱されたロール体表面とが接することで形成されたニップ領域に送り込み、そのニップ領域を通過させることにより、その用紙上に各トナー像を定着する工程であることも好ましい。
【0023】
こうすることで、ニップ領域を通過する用紙に、一瞬にして高い圧力を加える必要がなくなり、トナーブリスターの発生を抑えることができる。
【0024】
さらに本発明は、以下の構成を併せ持つことが好ましい。
【0025】
(1)各有色トナー及び無色トナーの内、一番融点の低いトナーの融点(Tm1)から20℃高い温度(Tm1+20℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm1+20℃)、損失弾性率をGN(Tm1+20℃)とした時に、各トナーのlogGL(Tm1+20℃)の差の絶対値の最大値及びlogGN(Tm1+20℃)の差の絶対値の最大値がともに1.5以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0026】
(2)前記有色トナー像形成工程が、前記有色トナーと樹脂被膜キャリアからなる有色現像剤とを用いた工程であって、
前記無色トナー像形成工程が、前記無色トナーと樹脂被膜キャリアからなる無色現像剤とを用いた工程であることを特徴とする画像形成方法。
【0027】
(3) 上記有色トナー像形成工程と上記無色トナー像形成工程により得られた、単色の有色トナー像と無色トナー像とからなる単色トナー層を中間転写体に転写する工程を含み、複数色の単色トナー層を中間転写体上で重ね合わせた後、上記転写・定着工程を実行することを特徴とする画像形成方法。
【0028】
(4) 上記用紙の内部結合力が0.38N・m以上であることを特徴とする画像形成方法。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0030】
まず、本発明の画像形成方法の各工程を説明する前に、この画像形成方法で用いられるトナーについて詳述する。なお、本発明の画像形成方法では、有色トナーと無色トナーとの2種類のトナーを用いるが、有色トナーと無色トナーとを特に区別する必要がない場合には、単にトナーと称することがある。
【0031】
本発明の画像形成方法で用いる有色トナーおよび無色トナーはいずれも、結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含むものである。ポリエステル樹脂が結晶性でない場合、即ち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。ここで「主成分」とは、前記結着樹脂を構成する成分のうち、主たる成分のことを指し、具体的には、前記結着樹脂の50%以上を構成する成分を指す。ただし、前記結着樹脂のうち、特定のポリエステル樹脂が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、全てが特定のポリエステル樹脂であることが特に好ましい。また、本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0032】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、60〜120℃の範囲であることが必要であり、62〜110℃の範囲であることが好ましく、64〜105℃の範囲であることがより好ましい。融点が60℃より低いとトナーの保存性が悪化し、定着後の良好なトナー画像保存性が得られなくなる。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない。
【0033】
前記結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂においては、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピーク温度をもって融点とみなす。
【0034】
この実施形態においては、結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、ここにいう「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。以下、これらの構成成分について詳述する。
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0035】
また、前記酸由来構成成分は、芳香族ジカルボン酸であってもよく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸が、入手容易性、低融点のポリマーを形成しやすい等の点で好ましい。
【0036】
前記酸由来構成成分としては前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分や芳香族ジカルボン酸由来成分のほかに、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を含有してもよい。スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を含有すると、負帯電性が強くなり、また顔料等の色材の分散を良好にできる。そのためスルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を、有色トナー用の結着樹脂には含有させ、無色トナー用の結着樹脂には含有させないか、あるいは無色トナー用の結着樹脂に含有させたとしても有色トナー用の結着樹脂に比べ少なくすることが有効である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0037】
スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分の全酸由来構成成分における含有量としては、0.1〜6構成モル%であり、0.5〜5構成モル%がより好ましい。前記含有量が6構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下したりしてしまう。また帯電の環境依存性(特に温湿度依存性)が強くなり、樹脂の電気抵抗(樹脂抵抗)が低下するため、帯電量も低下してしまう。0.1構成モル%より下回ると顔料の分散性が悪化する。
【0038】
また前記酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれていることが好ましい。尚、上記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0039】
これらの、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分を含有させた場合、全酸由来構成成分における含有量としては、20構成モル%以下が好ましく、10構成モル%以下がより好ましい。前記含有量が20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下してしまう。
【0040】
なお、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における酸由来構成成分全体中の当該酸由来構成成分、または、アルコール由来構成成分全体中の当該アルコール構成成分を、各1単位としたときのモル%を指す。
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分としては脂肪族ジカルボン酸を用いることが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコストを考慮すると1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0041】
前記アルコール由来構成成分は、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含むものであることが好ましく、その含有量が90構成モル%以上であることがより好ましい。前記含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
【0042】
必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分等の構成成分がある。
【0043】
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。
【0044】
上記2重結合を持つジオール由来構成成分を含有させる場合、アルコール由来構成成分における含有量としては、20構成モル%以下が好ましく、10構成モル%以下がより好ましい。上記含有量が20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下してしまう。
【0045】
前記ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸由来構成成分とアルコール由来構成成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0046】
前記ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0047】
モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0048】
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0049】
具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0050】
有色トナーと無色トナーの結着樹脂に使用する結晶性ポリエステル樹脂の主要な酸由来構成成分と主要なアルコール由来構成成分は同組成であることが好ましい。主要な成分を同組成にすることでトナーの相溶性が向上し、またトナー融点の差が小さくなる。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂は下記式(1)で定義されるエステル濃度Mが、0.05以上0.12以下であることが好ましい。
【0052】
M=K/A ・・・(式1)
(式1中、Mはエステル濃度を、Kはポリマー中のエステル基数を、Aはポリマーの高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
上記「エステル濃度M」とは、結晶性ポリエステル樹脂のポリマーにおけるエステル基の含有割合を示す一つの指標である。前記式(1)中の‘K’は、「ポリマー中のエステル基数」を示す。この「ポリマー中のエステル基数」は、言い換えればポリマー全体に含まれるエステル結合の数を指す。
【0053】
前記式(1)中の‘A’は、「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」を示す。この「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」は、ポリマーの高分子鎖を構成する原子の合計であり、エステル結合に関与する原子数は全て含むが、その他の構成部位における枝分かれした部分の原子数は含まない。すなわち、エステル結合に関与するカルボキシル基やアルコール基に由来する炭素原子および酸素原子(1つのエステル結合中酸素原子は2個)や、高分子鎖を構成する、例えば芳香環における6つの炭素は、前記原子数の計算に含まれるが、高分子鎖を構成する、例えば芳香環やアルキル基における水素原子、その置換体の原子ないし原子群は、前記原子数の計算に含まれない。
【0054】
具体例を挙げて説明すれば、高分子鎖を構成するアリーレン基における、炭素原子6つと水素原子4つとの計10個の原子のうち、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれるものは、炭素原子の6つのみであり、また、前記水素が如何なる置換基に置換されたとしても、当該置換基を構成する原子は、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれない。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂が、1の繰り返し単位(例えば、高分子がH−[OCOR1COOR2O−]n−Hで表される場合、1の繰り返し単位は、[ ]内で表される。)のみからなる単重合体の場合には、1の繰り返し単位内には、エステル結合は2個存在する(すなわち、当該繰り返し単位内におけるエステル基数K’=2)ので、エステル濃度Mは、下記式(1−1)により、求めることができる。
【0056】
M=2/A’ ・・・式(1−1)
(式(1−1)中、Mはエステル濃度を、A’は1の繰り返し単位における高分子鎖を構成する原子数を、それぞれ表す。)
また、結晶性ポリエステル樹脂が、複数の共重合単位からなる共重合体の場合には、共重合単位ごとに、エステル基数KXおよび高分子鎖を構成する原子数AXを求め、これらに共重合割合を乗じた上でそれぞれ合計し、前記式(1)に代入することで求めることができる。例えば、共重合単位がXa、XbおよびXcの3つであり、これらの共重合割合がa:b:c(ただし、a+b+c=1)である化合物[(Xa)a(Xb)b(Xc)c]についてのエステル濃度Mは、下記式(1−2)により、求めることができる。
【0057】
M={KXa×a+KXb×b+KXc×c}/{AXa×a+AXb×b+AXc×c}・・・式(1−2)
(式(1−2)中、Mはエステル濃度を表し、KXaは共重合単位Xa、KXbは共重合単位Xb、KXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれのエステル基数を表し、AXaは共重合単位Xa、AXbは共重合単位Xb、AXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれの高分子鎖を構成する原子数を表す。)
結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度Mは、これを用いて作製したトナーの帯電性に大きな影響を与える。これはエステル濃度Mにより樹脂抵抗が変化するのが主要因であり、エステル濃度Mが大きくなると樹脂抵抗が低下し、帯電性が低下してしまう。本発明ではエステル濃度を0.05以上0.12以下にすることで、十分な帯電性や帯電安定性が得られるとともに、安定してトナーを作製することが可能となった。
【0058】
前記エステル濃度Mが0.05未満では、樹脂の融点が高くなってしまうとともに紙への接着能力が低下する。また疎水性が強く、かつ溶剤への溶解性も低下することから安定してトナーを作製することが困難となる。さらに、モノマー自身も高価になるためコスト的にも好ましくない。エステル濃度の下限としては0.055が好ましく、0.06がより好ましい。
【0059】
一方エステル濃度が0.12を超えると、樹脂抵抗が低下し、トナーの帯電性が低下してしまう。また融点も低くなりすぎるため、粉体や定着画像の安定性も低下してしまう。エステル濃度の上限としては0.115が好ましく、0.11がより好ましい。
【0060】
本発明において用いられる有色トナーには着色剤が含まれている。ここでの着色剤は、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が好ましい。
【0061】
好ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジジンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用できる。
【0062】
また、着色剤として磁性粉を使用することもできる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0063】
これらは単独で使用可能な他、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これら着色剤の含有量としては、前記結着樹脂を100質量部とした場合、0.1〜40質量部の範囲が好ましく、1〜30質量部の範囲がより好ましい。
【0064】
前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られ、この実施形態では、有色トナーとして、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーの4色のトナーを用いる。
【0065】
本発明において用いられるトナーはその他の成分を含むものであってもよい。すなわち、無機微粒子、帯電制御剤、離型剤等の公知の各種添加剤等が添加されたものであってもよい。
【0066】
上記無機微粒子は、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みを調整することができる。無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機微粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、発色性やOHP透過性等の透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ微粒子が好ましく用いられる。また、シリカ微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0067】
これらの無機微粒子の添加量は、トナー全質量の0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜15質量%の範囲であることがより好ましい。
【0068】
上記帯電制御剤として負帯電制御剤を添加する場合には、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属錯体などを添加すればよい。また正帯電制御剤を添加する場合には、アジン化合物(ニグロシン)、4級アンモニウム塩、オニウム化合物、トリフェニルメタン系化合物等などを添加すればよい。帯電制御剤の含有量としては0.01〜6.0質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。
【0069】
また、本発明に使用するトナーは、離型剤を含有していてもよい。離型剤を含有することで後述する定着工程での離型性が向上し、接触加熱型定着方式を採用した定着器では、定着ロールに塗布する離型オイルを減少させる、またはなくすことができる。このため、離型オイルによる定着ロール寿命の低下やオイル筋等のディフェクトを回避することができ、また定着器の低コスト化にもつながる。
【0070】
離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ペンタエリスリトール類等のエステル類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、 オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;などが挙げられる。
【0071】
離型剤の融点は、50〜120℃の範囲が好ましく、結着樹脂の融点以下であることがより好ましい。離型剤の融点が50℃未満では、離型剤の変化温度が低すぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、この離型剤を収容している装置内部の温度が高まった時に現像性が悪化したりする。融点が120℃を超える場合には、離型剤の変化温度が高過ぎ、結晶性樹脂の低温定着性を損ねてしまう場合がある。
【0072】
これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0073】
離型剤の含有量としては、トナー全体を100質量部とした場合、1〜30質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましい。1質量部未満であると、離型剤添加の効果がない場合がある。30質量部以上であると、帯電性への悪影響が現れやすくなり、また現像器内部においてトナーが破壊されやすくなるため離型剤やトナー樹脂のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れるばかりでなく、例えばカラートナーを用いた場合、定着時の画像表面への染み出しが不十分になり易く、画像中に離型剤が在留しやすくなってしまうため、透明性が悪化してしまう場合がある。
【0074】
また、上記トナーには結晶核剤を添加してもよい。結晶核剤を添加することで結晶サイズを微細化するとともに結晶サイズが均質化されるため、樹脂の透明性を向上させることができる。さらに、結晶核剤は結晶性樹脂の結晶化度を向上させる効果もあり、これにより結晶性樹脂に含まれる非晶質部分の割合が減少するため、トナーの保存性や耐ブロッキング性、または流動性が向上し、感光体へのフィルミング、さらに二成分現像方法の場合にはキャリアへのフィルミングを防止することができる。
【0075】
結晶核剤としては、公知の結晶核剤である、例えばシリカ、タルク、カオリン、アルミナ、ミョウバン、酸化チタン等の無機系結晶核剤;ジベンジリデンソルビトールやジメチルベンジリデンソルビトール等の低級アルキルジベンジリデンソルビトール、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム等の安息香酸金属塩、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等のリン酸エステル金属塩、モンタン酸ナトリウム等の直鎖脂肪酸金属塩、ロジン酸部分金属塩等の有機系結晶核剤;が挙げられる。特にジベンジリデンソルビトール等の有機系核剤はゲル化剤としても作用し、結晶核剤同士のパーコレーションネットワークによってさらに結晶を微細化/均質化することができる。
【0076】
これら結晶核剤の含有量としては、トナー全体を100質量部とした場合、無機系結晶核剤の場合は0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.3〜10質量部の範囲がより好ましい。有機系結晶核剤の場合は0.005〜10質量部の範囲が好ましく、0.01〜5質量部の範囲がより好ましい。上記含有量が、無機系結晶核剤の場合は0.1質量部より、有機系結晶核剤の場合は0.005質量部より少ないと、結晶核剤としての働きが十分発現されない。一方、上記含有量が、無機系結晶核剤の場合は20質量部より、有機系結晶核剤の場合は10質量部より多いと、結晶核剤の凝集体による2次障害や結晶核剤の種類によってはゲル化による弾性率の著しい向上から製造性が低下したり画像光沢性が悪化してしまう。また、上記含有量の範囲で無機系、有機系を問わず、2種以上の結晶核剤を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
以上説明したトナーを製造する方法としては、粉砕が困難なため湿式製法が好ましい。特に制限はないが、液中乾燥法、乳化凝集法、溶融懸濁法、溶解懸濁法等、公知の湿式製法の中から適宜選択されることが好ましく、中でも溶解懸濁法、乳化凝集法が好ましい。
【0078】
以下、本発明の画像形成方法に用いられるトナーの製造方法の一例として、まず溶解懸濁法による製造方法について説明する。
【0079】
前記溶解懸濁法としては、結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解若しくは分散して混合液を調製する混合工程、該混合液を水系媒体中に添加し、回転羽根を有する乳化機を用いて分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程、該分散懸濁液から溶媒を除去する溶媒除去工程を、少なくとも有してなる。
【0080】
混合工程では、結晶性ポリエステルを主成分とする結着樹脂、着色剤、及び必要に応じた他の樹脂並びにモノマーを溶媒中に溶解させ、混合液(ポリマー液)を得る。
【0081】
ここでの溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類;または水等が挙げられる。上記溶媒は、結晶性ポリエステル及び必要に応じた他のモノマーの種類、並びに粒径により、これらの中から適宜選択して用いられる。これらは、単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0082】
前記溶媒の使用量としては、結晶性ポリエステル及び必要に応じて添加する他のモノマーの総量100質量部に対して、50〜5000質量部の範囲が好ましく、120〜1000質量部の範囲がより好ましい。
【0083】
続いて、分散懸濁工程において、その混合液と水系媒体を混合した溶液に分散器を用いて剪断力を与えることで結晶性ポリエステルの液状の懸濁粒子を得る。その際、加熱することでポリマー液の粘性を下げて粒子を形成することができる。分散器としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0084】
また、懸濁粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。この分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0085】
ここで、結晶性ポリエステルの液状の懸濁粒子を加熱し、その粒子にラジカル反応により架橋構造を導入する架橋工程を導入してもよい。
【0086】
架橋工程としては、水系媒体中に重合開始剤を溶解させたポリエステル(結着樹脂)を懸濁分散させ、加熱して重合を行う、或いは、ポリエステル(結着樹脂)を懸濁分散させた後、重合開始剤を後から添加して重合を行う等が挙げられる。
【0087】
上記重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシ−α−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
【0088】
これら重合開始剤は、単独で使用することも、または2種以上を併用することもできる。重合開始剤の量や種類は、ポリマー中の不飽和部位量、共存する着色剤の種類や量によって選択される。
【0089】
また、例えば後述する乳化工程、凝集工程、及び融合工程からなる乳化凝集法の場合には、重合開始剤を、乳化工程前にあらかじめポリマーに混合しておいてもよいし、凝集工程で凝集塊に取り込ませてもよい。さらには、架橋工程を、融合工程、或いは融合工程の後に導入してもよい。架橋工程を、凝集工程、融合工程、あるいは融合工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化させた液を、粒子分散液(樹脂粒子分散液等)に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0090】
溶媒除去工程では、結晶性ポリエステルの液状の懸濁粒子から溶媒を除去する。その後、必要に応じて風力分級機等を用いた分級工程を経て粒度分布をシャープにしてもよい。
【0091】
次に乳化凝集法によるトナー製造方法について説明する。前記乳化凝集法は特定のポリエステル樹脂を乳化し乳化粒子を形成する乳化工程と、該乳化粒子の凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を熱融合させる融合工程と、を有する。
【0092】
乳化工程における乳化粒子は前述の懸濁粒子の作製と同様に作製できるが、溶剤を実質的に用いずに水中で乳化粒子を作製するのが好ましい。乳化粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.01〜2μmが好ましく、0.03〜1.0μmがより好ましく、0.04〜0.8μmがさらに好ましい。
【0093】
前記凝集工程においては、得られた乳化粒子を、前記ポリエステル樹脂の融点一歩手前の温度で加熱して凝集し凝集体を形成する。乳化粒子の凝集体の形成は、攪拌下、乳化液のpHを酸性にすることによってなされる。当該pHとしては、2〜6が好ましく、2.5〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。この際、凝集剤を使用するのも有効である。
【0094】
ここで用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0095】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0096】
前記融合工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集体の懸濁液のpHを3〜7の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、前記ポリエステル樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより凝集体を融合させる。前記加熱の温度としては、前記ポリエステル樹脂の融点以上であれば問題無い。前記加熱の時間としては、融合が十分に為される程度行えばよく、0.5〜10時間程度行えばよい。
【0097】
前記融合工程において得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じた洗浄工程、乾燥工程を経て、トナー粒子として完成する。
【0098】
本発明に用いられるトナーの体積平均粒子径は、3.0〜9.0μmの範囲が好ましく、4.0〜8.0μmの範囲がより好ましい。体積平均粒子径が3.0μmより小さいと、流動性が低下し各粒子の帯電性が不十分になりやすく、また帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる。体積平均粒子径が9.0μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなる。
【0099】
前記体積平均粒子径の測定は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行うことができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0100】
本発明においては、融点のばらつきが10℃の範囲に収まった有色トナーおよび無色トナーを用いることが好ましい。定着温度は融点の一番高いトナーに合わせる必要があることから、融点の差が10℃より大きいと定着設定温度が上昇してしまう。また有色トナーと無色トナーとの融点の差が10℃より大きいと、両者の定着性に差が生じてしまうことがある。
【0101】
また、本発明においては、各有色トナー及び無色トナーの内、一番融点の低いトナーの融点Tm1から20℃高い温度での各トナーの貯蔵弾性率をGL(Tm1+20)としたときに、各トナーのlogGL(Tm1+20)の差の絶対値の最大値が1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。同様にTm1から20℃高い温度での各トナーの損失弾性率をGN(Tm1+20)としたときに各トナーのlogGN(Tm1+20)の差の絶対値の最大値が1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。差の絶対値の最大値が1.5より大きいと各有色トナー間及び有色トナーと無色トナーの画像光沢度の差が大きくなり、面内の画像光沢の均一性が低下してしまう。なお、貯蔵弾性率GLおよび損失弾性率GNについては、JIS K−6900にその詳細が規定されている。
【0102】
本発明の画像形成方法において用いるトナーは、温度変化による前記貯蔵弾性率GL及び前記損失弾性率GNの値の変動が、10℃の温度変化で2桁以上となる温度の区間(10℃温度を上昇させた際に、GL及びGNの値が100分の1もしくはそれより小さい値まで変化するような温度の区間)を有することが好ましい。前記貯蔵弾性率GL及び前記損失弾性率GNが、前記温度の区間を有しないと、定着温度が高くなり、その結果、定着工程のエネルギー消費を低減するのに不十分となることがある。
【0103】
また、本発明の画像形成方法において用いるトナーは、各有色トナー及び無色トナーの内、一番融点の低いトナーの融点Tm1から20℃高い温度(Tm1+20℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm1+20)、Tm1から40℃高い温度(Tm1+40℃)における貯蔵弾性率をGL(Tm1+40)とした場合、下記式(2)を満たし、かつ(Tm1+20℃)における損失弾性率をGN(Tm1+20)、(Tm1+40℃)に於ける損失弾性率をGN(Tm1+40)とした場合、下記式(3)を満たすことが、画像部位による温度分布等で生じる画像光沢の不均一性を減少させるため好ましい。
|logGL(Tm1+20)−logGL(Tm1+40)|≦1.5・・・式(2)
|logGN(Tm1+20)−logGN(Tm1+40)|≦1.5・・・式(3)
さらに下記式(4)及び(5)を満たす事がさらに好ましい。
|logGL(Tm1+20)−logGL(Tm1+40)|≦1.2・・・式(4)
|logGN(Tm1+20)−logGN(Tm1+40)|≦1.0・・・式(5)
この指標は、本発明におけるトナーの粘度が、融点以降では温度に対する依存性が緩やかであることを示し、粘弾性の温度依存性がより低くなることを意味する。
【0104】
図1は、本発明の画像形成方法に用いるトナーの好ましい特性を示すグラフである。
【0105】
図1において、縦軸は貯蔵弾性率の常用対数logGL、あるいは、損失弾性率の常用対数logGNを表し、横軸は温度を表す。このような特性を有するトナーにおいては、結晶性ポリエステルの融点付近である60〜120℃の温度領域において急激な弾性率の低下が見られ、また、融点を超えた温度範囲でその弾性率が安定することから、定着時の画像部位による温度分布から生じる画像光沢の不均一性や、高温に加熱されても、紙等の被記録体に対する過度の染み込みを防止することができる。
【0106】
さらに、本発明の画像形成方法に用いるトナーは、常温下で十分な硬さを有することが望まれる。具体的には、その動的粘弾性が、角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa以上であり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa以上であることが望ましい。
【0107】
角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa未満であったり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa未満であると、二成分現像方法の場合、現像器内でキャリアと混合された時に、キャリアから受ける圧力や剪断力によりトナーの粒子が変形し、安定な帯電現像特性を維持することができないことがある。また、潜像担持体(感光体)表面のトナーがクリーニングされる際に、クリーニングブレードから受ける剪断力によって変形し、クリーニング不良をも生ずることがある。
【0108】
前記角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)及び損失弾性率GN(30)が上記範囲にある場合には、高速の電子写真装置に用いた場合でも定着時の特性が安定し好ましい。
【0109】
このように、既述のようにして製造され、前記の構成、特性を有するトナーは低温定着性について優れたものであり、このようなトナーを用いることで定着時にかかるエネルギーが低減され、低コストで画像形成を行うことができる。また、このトナーは、耐トナーブロッキング性および画像の保存性についても優れたものである。
【0110】
また、本発明の画像形成方法においては、流動化剤や助剤等の外添剤が表面に添加されたトナーを用いてもよい。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できるが、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種は、30nm〜200nmの範囲、さらには10nm〜180nmの範囲の平均1次粒子径を有することが好ましい。
【0111】
トナーが小粒径化することによって、感光体との非静電的付着力が増大するため、転写不良やホローキャラクターと呼ばれる画像抜けが引き起こされ、重ね合わせ画像等の転写ムラを生じさせる原因となるため、平均1次粒子径が30nm〜200nmの大径の外添剤を添加することにより、転写性を改善させることができる。
【0112】
平均1次粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を十分に低減できず、転写効率が低下し画像のぬけが発生したり、画像の均一性を悪化させてしまったりする。また、経時による現像機内でのストレスによって微粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化し、コピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題が引き起こされる。平均1次粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性悪化の原因ともなる。
【0113】
本発明で用いるトナーは、有色トナーと無色トナーの帯電極性が逆極であることが好ましい。帯電極性を逆極にすると、後述するように同じ静電潜像を反転現像及び正規現像することで有色トナーによる画像部作製と無色透明トナーによる非画像部作製が1回でできるため、非常に効率的である。そのため高速化やシステムの簡便化を計る事ができる。
(キャリア)
本発明で用いるトナーは一成分トナーとして用いてもよいが、キャリアと組み合わせた二成分現像剤として用いるのが好ましい。また有色トナーと無色トナーで異なる極性のキャリアを用いることが好ましい。
【0114】
負帯電トナー用キャリアとしては、樹脂で被膜されたキャリアであることが好ましく、窒素含有樹脂で被膜されたキャリアであることがさらに好ましい。トナーを負帯電しやすい上記キャリアと組み合わせることで、より安定した負帯電性を得ることができる。
【0115】
前述の窒素含有樹脂としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含むアクリル系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。またこれらの共重合樹脂でもかまわない。
【0116】
キャリアの被膜樹脂としては前記窒素含有樹脂の中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂と窒素を含有しない樹脂とを組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂を微粒子状にし、窒素を含有しない樹脂中に分散して使用してもよい。特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂は負帯電性が高く、また樹脂硬度が高いため被膜樹脂の剥がれなどによる帯電量の低下を抑制することができ好ましい。
【0117】
窒素含有樹脂を分散する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0118】
正帯電トナー用キャリアとしては、芯材表面にフッ素含有樹脂を含む被覆樹脂層が設けられた電子写真用キャリアであることが好ましい。トナーを正帯電しやすい上記キャリアと組み合わせることで、より安定した正帯電性を得ることができる。また、フッ素含有樹脂は表面エネルギーが小さいため、正帯電制御剤及び他のトナー組成物、または外添剤によるキャリア汚染が少なく、優れた帯電経時安定性を得ることができる。
【0119】
フッ素含有樹脂としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0120】
これらの中でも、帯電性及び帯電安定性の観点から、フッ化ビニリデン系樹脂が好ましく用いられる。
【0121】
これらのフッ素含有樹脂は、シリコーン樹脂等他の樹脂と組み合わせて使用することができる。他の樹脂と組合わせることにより、被覆樹脂層の芯材との接着性向上や帯電性制御を行うことができる。
【0122】
シリコーン樹脂は、水酸基の少なくとも一部がメチル基、またはメチル基及びフェニル基と置換してなる樹脂である、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0123】
また、その他のフッ素樹脂と組み合わせて用いられる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂が挙げられる。さらに、芯材との密着性を向上させるために、樹脂中にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤を含有させたり、あるいは芯材にこれらを塗布したりすることもできる。
【0124】
芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、またはフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、中でもフェライト系芯材が好ましく用いられる。フェライト系芯材としては、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライト等の芯材が挙げられる。
【0125】
また、磁性粉を結着樹脂中に分散した樹脂−磁性粉分散型キャリア芯材も挙げられる。結着樹脂としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂等が挙げられる。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケルなどの強磁性金属、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの金属の合金、酸化物などの公知の磁性体が使用できる。
【0126】
キャリア芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜100μmの範囲が好ましく、20〜80μmの範囲がより好ましく、25〜60μmの範囲がさらに好ましい。
【0127】
一般にキャリアは、適度な電気抵抗値を有することが必要であり、具体的には109 〜1014Ωcmの範囲程度の電気抵抗値が求められている。例えば鉄粉キャリアのように電気抵抗値が106 Ωcmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題が生じる。一方、絶縁性の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、その結果エッジの効いた画像にはなるが、反面大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなる、エッジ効果という問題が生じてしまう。そのため、キャリアの抵抗調整のために樹脂被覆層中に導電性微粉末を分散させることが好ましい。
【0128】
導電性微粉末の具体例としては、金、銀、銅のような金属;カーボンブラック;更に酸化チタン、酸化亜鉛のような半導電性酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの;等が挙げられる。
【0129】
また、上記導電性微粉末の添加量としては、マトリックス樹脂100質量部に対し、1.0〜20.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0130】
前記被覆樹脂層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を微粒子化し被膜樹脂の融点以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被膜させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。
【0131】
上記方法により形成される被膜樹脂層の平均膜厚は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.2〜5μmの範囲がより好ましい。
(電子写真用現像剤)
現像方式がトナーとキャリアとからなる二成分現像方式の場合、トナーとキャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0132】
次に、本発明の画像形成方法で用いられる電子写真用転写紙、すなわち用紙について詳述する。
(電子写真用転写紙)
本発明の画像形成方法において用いられる電子写真用転写紙は繊維層の表面に樹脂からなる塗被層が設けられたいわゆるコート紙である。このコート紙では、繊維層の繊維と繊維の隙間に樹脂が入り込んで用紙表面が平坦になっており、このコート紙上に形成された定着トナー像からなる画像の光沢の均一性が向上する。また、溶融したトナーの、繊維層への過剰な染み込みが上記塗被層によって防止され、トナーの光沢が維持される。したがって、無色トナーと組み合わせることで光沢均一性や画像鮮明度がより向上し、写真並みの高画質を得ることができる。このコート紙の塗被層としては、例えば、白色顔料と、その白色顔料を繊維層に接着する接着剤とを主成分とする層が好ましい。白色顔料が添加されることで、転写紙の白色度が向上し、より一層高画質な画像を得ることができる。
【0133】
塗被層を設ける基紙に使用するパルプとしては、クラフトパルプやセミケミカルパルプ、ケミカルグラウンドパルプ、砕木パルプ、リファイナーグラウンドパルプ、古紙パルプ等を単独あるいは複数組み合わせて使用したパルプが挙げられる。さらに重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク等の填料や、ロジン、石油樹脂等のサイズ剤、また塩化ナトリウムや塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム等の抵抗調整剤を適宜配合することができる。また必要に応じて紙力増強剤、染料、PH調整剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0134】
塗被層に用いる顔料は、通常の一般塗被紙に用いられる顔料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドクレー、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン、ポリメチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等主成分とする密実型又は中空型の有機顔料等を単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0135】
塗被層に用いる接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆たんぱく等の天然系接着剤等の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は顔料100質量部当たり5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲で使用される。
【0136】
また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等通常の塗被紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用してもよい。
【0137】
このようにして調製された塗被組成物は、一般の塗被紙製造に使用される塗被装置、例えばブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ等を用いオンマシンあるいはオフマシンによって基紙上に一層あるいは多層に分けて乾燥重量で片面当たりに8〜50g/m2 、好ましくは10〜25g/m2の範囲で塗被される。
【0138】
塗被後の平滑化処理は、通常用いられる平滑化装置、例えば、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー等が用いられ、白紙光沢が50%以上になるように仕上げられるのが好ましく、60%以上がより好ましい。このようにして得た塗被層の密度は1.20g/m3 以下に調整することが好ましく、1.10g/m3 以下がより好ましい。
【0139】
また、この電子写真用転写紙は、透気度が8000秒以下である必要があり、7000秒以下であることがより好ましい。空気の透気度が8000秒を超えた場合、定着の熱により発生した水蒸気によりトナーブリスターが発生してしまうことがある。ここでの透気度の値は、Japan Tappi No.5に規定の王研式透気度試験法(JIS P8117)に準じた方法により測定したときの値である。
【0140】
上述した結晶性トナーを用いた場合、従来よりも著しく低温で定着することができるため定着時の紙の温度上昇が抑制され、そのために発生する水蒸気量を抑制することができる。したがって従来よりもトナーブリスターの発生を抑制し、上記転写紙と組み合わせることでトナーブリスターの発生を防止することができる。
【0141】
透気度を上げる方法としては、前記の塗被層構成材料及び構成方法の中から、例えば、カレンダー後の配向の良好な顔料の選択(有機顔料、デラミネーテッドクレー、柱状形顔料など)、塗被層の積層化、仕上げのカレンダーのロール温度を高めること等があるが、目的に応じてこれらを適宜組み合わせて使用することができる。上記の塗被層の積層化は、下層の塗布は基紙を目止めするものであり、このことにより上層の表面塗被層は平滑性を向上させ、高い白紙光沢化を容易にする。
【0142】
さらに、こうして作製した塗被紙は保管時に吸脱湿が発生しないように、ポリエチレンラミネート紙等の防湿包装紙やポリプロピレン等で包装することが好ましい。
【0143】
また、本発明に用いられる電子写真用転写紙の坪量は、70〜220g/m2の範囲が好ましい。前記坪量が70g/m2 を下回ると、定着時に用紙にかかる熱量が大きくなり、水蒸気圧が大きくなってしまう。また、220g/m2 を超えると、用紙に対する熱量が小さくなり、水蒸気圧も小さくなるため、ブリスターの発生は抑えられるが、用紙の加熱に要する熱量が大きくなり過ぎて、転写紙へのトナーの定着に要する熱量が不足するという問題が生じる。
【0144】
また該転写紙の繊維層の内部結合力を0.38N・m以上に調製することが好ましい。繊維層の内部結合力を高めると、繊維層が水蒸気圧に耐えることができ、繊維層が水蒸気によって拡散される速度がゆっくりなものになる。このため、水蒸気圧の低下が起こり、塗被層の空隙を通過する水蒸気は低圧のものとなり、トナーブリスターの発生を抑制すると考えられる。
【0145】
続いて、本発明の画像形成方法について説明する。
【0146】
図2は、本発明の画像形成方法の一実施形態を実施する画像形成装置の模式図である。
【0147】
図2に示す画像形成装置1は、感光体ドラム11と、中間転写ベルト12を備えている。感光体ドラム11は、時計回りに回転するものである。中間転写ベルト12は、複数の支持ロールに張架されて感光体ドラム11の表面に当接されるように配置されている。なお、中間転写ベルト12に代えて中間転写ドラムを用いてもよく、さらには、中間転写ベルトや中間転写ドラムといった中間転写体は単層構成または多層構成のいずれであってもよい。中間転写ベルトの材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ウレタン、ナイロン、アクリル、塩化ビニル等の樹脂が用いられる。多層構成とする場合、転写面にはフッ素樹脂、フッ素樹脂の微粒子分散のポリエステル樹脂等が用いることが好ましい。また、導電性を付与するために、カーボンブラック、金属酸化物等の導電剤を各層に添加してもよい。
【0148】
また、この画像形成装置1では、中間転写ベルト12を挟んで感光体ドラム11と対向する位置に、1次転写ロール13が配設されている。感光体ドラム11と中間転写ベルト12とが接する部分が1次転写位置である。
【0149】
感光体ドラム11の周囲には、1次転写位置の上流側に現像ロータリー14が配設され、現像ロータリー14の上流側には帯電器(コロトロン)15が配設されている。現像ロータリー14には、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各有色トナーを収容した現像器141〜144が配設されている。また、現像ロータリー14と帯電器15との間には、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成する光書き込みユニット16が配備されている。この光書き込みユニット16には、図示省略したが、半導体レーザーとポリゴンミラーが内蔵されている。さらに、現像ロータリー14と1次転写位置の間には、無色透明トナーを収容した現像器17と、転写前帯電器18が配備されている。
【0150】
1次転写位置の下流側には、ブレード191を有する感光体クリーニング19が配設され、感光体クリーニング装置19の下流側には、除電装置20が配設されている。
【0151】
中間転写ベルト12の周囲には、1次転写位置の下流側に、2次転写部材としてのバイアスロール21が設けられ、このバイアスロール21の下流側には、ベルトクリーニング装置22が配置されている。中間転写ベルト12を挟んでバイアスロール21と対向する位置には、バックアップロール23が設けられている。この画像形成装置1では、バイアスロール21とバックアップロール23とで挟まれた位置が2次転写位置になり、この2次転写位置には、給紙トレイ24内に収容された用紙25が送り込まれる。
【0152】
さらに、この画像形成装置1は定着器26を備えており、2次転写位置に送り込まれた用紙25はこの定着器26へと送られる。図2に示す定着器26は、押圧パッド261とエンドレスベルト262とを用いたベルトニップ方式の接触加熱型定着器である。この定着器は、熱源2631を内蔵した加熱定着ロール263とエンドレスベルト262とを備えている。加熱定着ロール263の周面は、熱源2631により加熱される。エンドレスベルト262の表面は、加熱定着ロール263の周面に接しており、このエンドレスベルト262の裏面側には、押圧パッド261が配備されている。押圧パッド261は、エンドレスベルト262の裏面に当接し、エンドレスベルト262の表面を加熱定着ロール263に向けて押しつけ、十分な長さのニップ領域を確保している。加熱定着ロール263は回転駆動するものであり、回転駆動することで、用紙25をニップ領域に送り込むとともにニップ領域から送り出す。エンドレスベルト262は、ニップ領域を通過する用紙に従って循環する。押圧パッド261の形状は、このニップ領域において、エンドレスベルト262の循環方向下流側に向かうにつれてエンドレスベルト262の押しつけ力が強くなる形状になっている。トナーブリスターは、用紙25に急激に高い圧力が加わると生じやすいが、この定着器26では、用紙25に徐々に圧力が加わるため、トナーブリスターの発生が抑えられる。なお、図2に示す定着器に代えて、ロールとロールの間でニップ領域を形成する定着器を用いてもよいが、ロールとロールの間でニップ領域を形成する定着器では、用紙25に急激に高い圧力が加わりやすいため、図2に示す定着器の方が好ましい。
【0153】
図3は、図2に示す画像形成装置において実行される画像形成方法の各工程を示すフローチャートである。
【0154】
図2に示す画像形成装置に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色の各画像信号が入力されると、まず、静電潜像形成工程S3_1が実行される。この静電潜像形成工程S3_1では、図2に示す感光体ドラム11の表面を、帯電器15により一様に帯電した後、入力された画像情信号のうち、シアンの画像信号に応じたレーザ光を光書き込みユニット16から感光体ドラム11に向けて照射することで感光体ドラム11表面に静電潜像を形成する。続いて、Cトナー像形成工程S3_2が実行される。このCトナー像形成工程S3_2では、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を、現像ロータリー14に備えられたシアントナーを収納した現像器144により現像する。
【0155】
ここで、図3とともに図4も用いて説明する。
【0156】
図4は、静電潜像が形成された感光体ドラムを展開し模式的に示す図である。
【0157】
上述の静電潜像形成工程S3_1が実行されることで、感光体ドラム11表面には、低電位の部分111と、高電位の部分112とからなる静電潜像が形成されている。現像ロータリー14に備えられた各現像器141〜144内に収納された有色トナー14tは、負側に帯電しており、感光体ドラム11表面の低電位部分である潜像形成部分に反転現像することで、有色トナー画像を形成する。このCトナー像形成工程S3_2では、シアントナーが感光体ドラム11表面に供給され、感光体ドラム11表面にはシアントナー像が形成される。
【0158】
次いで、図3に示す無色透明トナー像形成工程S3_3が実行される。図2に示す無色透明トナーを収容した現像器17内に収納された図4に示す無色透明トナー17tは、正側に帯電しており、感光体ドラム11表面の高電位部分である非潜像形成部分に正規現像され、無色透明トナー画像が形成される。
【0159】
ここでの画像形成方法では、有色トナー像と非画像部の無色透明トナー像とからなる単色トナー層を得るための潜像形成が1回で済み、かつ連続で現像できるため簡便かつ高速な画像形成を行うことができる。
【0160】
なお、Cトナー像形成工程S3_2および無色透明トナー像形成工程S3_3における現像方式がトナーとキャリアとからなる二成分現像方式の場合、現像器にはマグロール等の現像剤担持体が備えられており、この現像剤担持体表面に、トナーが付着した磁性キャリアがブラシ状となった現像剤層(いわゆる磁気ブラシ)が形成される。この際少なくとも無色透明トナー像形成工程では、磁気ブラシが感光体ドラム11に直接接触しない非接触現像方式、あるいは磁性キャリアが磁性粉分散型キャリアである現像剤であることが好ましい。非接触現像方式、あるいは磁性粉分散型キャリアを用いることで有色トナーにより形成された有色トナー像を乱すことなく無色透明トナー像を形成することができる。
【0161】
ここまでの工程が終了した時点で、感光体ドラム11の表面には、シアントナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像が形成されており、続いて実行される1次転写工程S3_4では、これら2つのトナー像を、図2に示す中間転写ベルト12に1次転写する。1次転写を実行するにあたり、転写前に感光体ドラム上の2つのトナー像の帯電を均一にすることで転写時の像乱れが少なく、また転写効率も向上するため、転写前に、図2に示す転写前帯電器18が用いられる。
【0162】
1次転写工程S3_4によりトナー像が中間転写ベルト12に転写された後の感光体ドラム11の表面からは、図2に示す感光体クリーニング装置19のブレード191によって残存トナーが除去され、除電装置20によって残存電荷が除去される。
【0163】
続いて今度は、静電潜像形成工程S3_5により、感光体ドラム11の表面に、マゼンタの画像信号に応じた静電潜像を形成し、Mトナー像形成工程S3_6および無色透明トナー像形成工程S3_7が実行されることで、感光体ドラム11の表面には、マゼンタトナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像が形成される。次いで、これらのトナー像を、先の1次転写工程S3_4と同じく、中間転写ベルト12に転写する(1次転写工程S3_8)。ここでの1次転写工程S3_8では、転写するトナー像が、先の1次転写工程S3_4において転写したトナー像と重なるように転写する。
【0164】
この後は、同様に、イエローの画像信号に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程S3_9,Yトナー像形成工程S3_10,無色透明トナー像形成工程S3_11,中間転写ベルト12にイエロートナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像を転写する1次転写工程S3_12,ブラックの画像信号に応じた静電潜像を形成する静電潜像形成工程S3_13,BKトナー像形成工程S3_14,無色透明トナー像形成工程S3_15,中間転写ベルト12にブラックトナー像と無色透明トナー像との2つのトナー像を転写する1次転写工程S3_16が順次実行され、ここまでの工程が終了した時点で、中間転写ベルト12には、ベルト表面側からシアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの順で1つに重なり合ったトナー像が形成されている。
【0165】
最後に実行される転写・定着工程S3_17では、中間転写ベルト12上で1つに重なり合ったトナー像を、図2に示すバイアスロール21とバックアップロール23とで挟まれた2次転写位置において用紙25に転写し、定着器26において用紙25に定着させる。
【0166】
図5は、用紙上に転写されたトナー像の一例を示した図である。
【0167】
図5に示す用紙25には、塗被層側から、ブラックトナー層LBK、イエロートナー層LY、マゼンタトナー層LM、シアントナー層LCが順に積層されている。ここでの画像形成方法では、画像部と非画像部の単位面積あたりのトナー量を同じにしている。そのため、図5に示すように、定着後の1色ごとの単色トナー層LBK,LY,,LM,LCの厚さが一定になり、画像段差が生じず、画像光沢の均一性が向上する。
【0168】
ここで、単色の画像を得ようとする場合、図3に示す転写・定着工程S3_17で用紙上に転写されるトナー像の画像面積率100%領域におけるトナー質量(TMA)は、有色トナーによる画像部、及び無色透明トナーによる非画像部において、0.80mg/cm2以下であることが好ましく、0.60mg/cm2以下であることがより好ましい。TMAが0.80mg/cm2より多いと定着時のエネルギーが増大し、またトナー消費量も多くなるため、コスト的にも好ましくない。
【0169】
定着器26では、図5に示すトナー像が、用紙25に加熱加圧定着させられる。すなわち、加熱定着ロール263によって用紙上のトナー像に熱が加えられ、トナー像を構成する各トナーは溶融させられる。また、用紙25は、ニップ領域を通過することで圧力が加えられる。加熱加圧定着されることで、用紙25上のトナー像は定着トナー像になり、定着トナー像からなる画像が完成する。
【0170】
なお、転写・定着工程S3_17によりトナー像が用紙25に転写された後の中間転写ベルト12の表面からは、図2に示すベルトクリーニング装置22によって転写残トナーが除去される。
【0171】
以上、位置ずれのない、発色性の良好な画像を得るために中間転写ベルト12を利用した画像形成方法について説明したが、本発明は、これに限らず、中間転写ベルトを用いず、感光体ドラム11表面で各色トナー像を重ね合わせていき、感光体ドラム11表面から用紙に一括転写してもよく、あるいは、感光体ドラム11表面に有色トナー像が形成される度に用紙に転写し、用紙上で各色トナー像を重ね合わせいってもよい。さらに、無色透明トナー像形成工程を最初に1回だけ実施し、その後は各有色トナーのトナー像形成工程を連続して実施する画像形成方法であってもよい。
【0172】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0173】
まず、実施例、比較例ともにトナーとキャリアとからなる二成分現像方式を採用したので、キャリアの製造について説明する。
−正帯電トナー用キャリアの製造−
Mn−Mg−Srフェライト粒子(パウダーテック社製、体積平均粒径:35μm)100質量部、ペンウオルト社製のKYNAR7201(ポリフッ化ビニリデン−テトラフロロエチレン共重合体)2質量部、及びメチルフェニルシリコーン樹脂(東レダウ社製、フェニル/メチル比:2.4、軟化点:78℃)0.5質量部を1リットル小型ニーダーで5分間混合し、熱媒温度200℃に設定して40分間攪拌混練した後、ヒーターを切り、攪拌しながら50分間冷却した。その後、75μmメッシュで篩分を行って正帯電トナー用キャリアを作製した。
【0174】
なお、ここにいう質量部は、構成成分全体に対する割合を示し(以下、同じ)、例えば、Mn−Mg−Srフェライト粒子は、100/102.5(%)の含有量になる。
−負帯電トナー用キャリアの製造−
トルエン1.25質量部にカーボンブラック(商品名;VXC−72、キャボット社製)0.12質量部を混合し、サンドミルで20分攪拌分散することでカーボン分散液を得た。また、3官能性イソシアネート80重量%と酢酸エチル溶液(タケネートD110N:武田薬品工業社製)1.25質量部とを混合攪拌しコート剤樹脂溶液も得た。その後、上記カーボン分散液、上記コート剤樹脂溶液、およびMn−Mg−Srフェライト粒子(平均粒径;35μm)をニーダーに投入し、常温で5分間混合攪拌した後、常圧にて150℃まで昇温し溶剤を留去した。さらに30分混合攪拌後、ヒーターの電源を切り50℃まで降温した。得られたコートキャリアを75μmメッシュで篩分を行って負帯電トナー用キャリアを作製した。
<実施例1>
−結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、セバシン酸ジメチル41.3質量部と、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル1.1質量部と、フマル酸ジメチル1.1質量部と、ジメチルスルホキシド27質量部と、1,10−デカンジオール33.2質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。その後、減圧下でジメチルスルホキシドを留去し、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い、30分間攪拌後、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)61.3質量部を合成した。この結晶性ポリエステル樹脂(1)の、酸由来構成成分の炭素数は‘8’であり、アルコール由来構成成分の炭素数は‘10’である。
【0175】
得られた結晶性ポリエステル(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9000であり、数平均分子量(Mn)は4000であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(1)について、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS(テトラメチルシラン)基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、セバシン酸由来成分と5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル成分とフマル酸由来成分のモル含有比が94:2:4であった。したがって、スルホン酸基を有する2価のカルボン酸の共重合成分は2.0構成モル%になる。
【0176】
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.084であった。
−結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成−
セバシン酸ジメチルの添加量を42.2質量部に変更し、また5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチルを除いた以外は結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0177】
得られた結晶性ポリエステル(2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は10000であり、数平均分子量(Mn)は4500であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(2)について、NMR(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、セバシン酸由来成分とフマル酸由来成分のモル含有比が96:4であった。
【0178】
また、結晶性ポリエステル樹脂(2)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は78℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.084であった。
−電子写真用シアントナー(1)の製造(溶解懸濁法)−
結晶性ポリエステル(1)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部と、トルエン60質量部とを混合し、サンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロースを3.0質量%含有する水溶液36質量部に、炭酸カルシウムを40質量%含有する懸濁液45質量部と、水45質量部と、を添加した。これに、前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
【0179】
次いで、窒素気流下で加熱攪拌を続けながら、トルエン22質量部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)1.5質量部を溶解させた溶液を前記懸濁溶液に加え、80℃で1.0時間反応させた。さらに攪拌を続けながら、水浴にて40℃まで懸濁溶液を冷却して懸濁重合を終了し、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液中の粒子は炭酸カルシウムで覆われており、得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、粒子を覆っている炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、さらに水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥を行い、45μmの篩いで篩分して電子写真用シアン着色粒子(1)を製造した。形状はほぼ球形であった。
【0180】
続いて、電子写真用シアン着色粒子(1)に外添処理を施した。ここでの外添処理では、電子写真用シアン着色粒子(1)に、1次粒子径40nmの表面疎水化処理したシリカ微粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ:RX50)0.8wt%と、メタチタン酸100質量部にイソブチルトリメトキシシラン40質量部およびトリフルオロプロピルトリメトキシシラン10質量部で処理した反応生成物である1次粒子平均径20nmのメタチタン酸化合物微粒子1.0wt%とを、ヘンシェルミキサーにて5分間添加混合した。その後45μmの篩分網で篩分して電子写真用シアントナー(1)を作製した。
【0181】
得られた電子写真用シアントナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.8μmであった。また電子写真用シアントナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。
−電子写真用マゼンタトナー(1)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部に代えて、キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)1.0質量部およびカーミン6B顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)0.7質量部の2種類の顔料を用いた以外は電子写真用シアントナー(1)と同様にして電子写真用マゼンタトナー(1)を作製した。
【0182】
得られた電子写真用マゼンタトナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.9μmであった。また電子写真用マゼンタトナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。
−電子写真用イエロートナー(1)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部に代えて、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー180)2.8質量部を用いた以外は電子写真用シアントナー(1)と同様にして電子写真用イエロートナー(1)を作製した。
【0183】
得られた電子写真用イエロートナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。また電子写真用イエロートナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は76℃であった。
−電子写真用有色現像剤(1)の作製−
得られた電子写真用シアントナー(1)5質量部と前記負帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用シアン現像剤(1)を作製した。また同様にして、電子写真用マゼンタ現像剤(1)および電子写真用イエロー現像剤(1)もそれぞれ作製した。
−電子写真用無色透明トナー(1)の作製−
結晶性ポリエステル(1)を結晶性ポリエステル(2)に代え、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)を除いた以外は電子写真用シアン着色粒子(1)と同様にして電子写真用無色透明粒子(1)を作製した。形状はほぼ球形であった。
【0184】
続いて、電子写真用無色透明粒子(1)に外添処理を施した。ここでの外添処理では、電子写真用無色透明粒子(1)100質量部に対し、表面疎水化処理したシリカ微粒子(Wacker社製疎水性シリカ:H2050EP)0.8質量部を加え、ヘンシェルミキサーにて5分間添加混合た。その後45μmの篩分網で篩分して電子写真用無色透明トナー(1)を得た。
【0185】
得られた電子写真用ブラックトナー(1)について、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は7.2μmであった。また電子写真用無色透明トナー(1)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は79℃であった。
−電子写真用無色透明現像剤(1)の作製−
得られた電子写真用無色透明トナー(1)5質量部と前記正帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した。
−トナー粘弾性の評価−
得られた各トナーについて、粘弾性の測定を行った。測定装置は、レオメトリックス社製のレオメーター、商品名「ARES」(RHIOSシステム ver6.4.4)を用いた。直径8mmのパラレルプレートを用い、あらかじめホットプレート上で溶融させ直径8mm、厚さ約2mmに成型した電子写真用シアントナー(1)をパラレルプレートの間に挟み、正弦波振動により測定を行った。周波数は1rad/sとし、30℃〜150℃の範囲で毎分1℃温度を上昇させながら、動的粘弾性を測定した。歪みは初期値を0.03%とした後は、自動測定モードによって変化させた。
−帯電性の評価−
上記電子写真用現像剤をDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)の現像器に入れ、温度22℃、湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、現像器を3分間空回ししてから、現像剤を取り出してブローオフ帯電量測定機(東芝社製)で帯電量を測定した。
以上の評価結果を現像剤特性として表1に表す。
【0186】
【表1】
【0187】
−電子写真用転写紙(1)の作製−
LBKP(フリーネス(CSF)=450ml)90質量部、及びNBKP(フリーネス(CSF)=450ml)10質量部のパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(PC:白石カルシウム(株))を5質量部となるように添加し、対パルプ(LBKPとNBKPを合わせたパルプスラリー)当たり、澱粉1.5質量部、アルケニル無水コハク酸0.1質量部、及び硫酸バンド0.6質量部を添加し、長網抄紙機を用いて抄紙して澱粉の塗被量が1.0g/m2となるようにサイズプレスで塗布し、坪量が108g/m2、密度0.70g/cm3の基紙を得た。
【0188】
次に顔料成分としてカオリン(ウルトラホワイト90:エンゲルハード(株))を70質量部、重質炭酸カルシウム(カーピタル90:富士カオリン(株))を30質量部とし、前記顔料成分100質量部に対し、接着剤として酸化澱粉(エースA:王子コーンスターチ(株))を3質量部、SBR(JSR0668:日本合成ゴム(株))を13質量部とし、塗被層塗料を作成し、前記基紙に、ブレード塗工にて片面10g/m2で両面塗工し、片面塗被層の厚みが14μmで、用紙の坪量が128g/m2、密度が0.96g/cm3、透気度が2500秒の電子写真用転写紙(1)を得た。また電子写真用転写紙(1)を使用する前に低温低湿下で24時間の調湿を行った。
−画像作製方法−
図2に示す現像ロータリー14を、ブラックを除く、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各有色トナーを収容した3つの現像器を有する現像ロータリーに代えた以外は、図2に示す画像形成装置1の構成と同じ画像形成装置を用いて画像形成を行った。ここでは、図2に示す画像形成装置1の構成部品と同じ構成部品には、図2の説明で用いた符号と同じ符号を付して説明する。
【0189】
本実施例で用いた画像形成装置の感光体ドラム11は負帯電のOPC感光体である。また、現像ロータリー14内の3つの現像器142,143,144にはぞれぞれ、電子写真用イエロー現像剤(1)、電子写真用マゼンタ現像剤(1)、および電子写真用シアン現像剤(1)を入れた。これら3つの現像器はいずれも、マグネットロールを内蔵した現像スリーブを備えたものであり、このマグネットロールには直流あるいはさらに交流のバイアス電圧が印加され、2成分有色現像剤による接触現像が行われる。また、現像ロータリー14よりも下流側に配備された現像器17には、電子写真用無色透明現像剤(1)を入れ、この現像器17にも同様に電圧を印加し、2成分無色現像剤による非接触現像を行わせた。この時各色トナー層で、有色トナーと無色透明トナーの単位面積あたりのトナー量が同じになるように現像電位を調整した。
【0190】
まず帯電器15で時計回りに回転する感光体ドラム11上に一様に負の電荷を与えた。次に光書き込みユニット16から感光体ドラム11に向けてイエロー像のレーザー光を照射し、イエロー静電潜像を感光体ドラム11上に形成した。次いで、感光体ドラム11上に形成したイエロー静電潜像を現像器142に収容された負帯電した電子写真用イエロートナー(1)により反転現像し、感光体ドラム11上にイエロートナー像を形成した。続いて現像器17により非潜像部分を電子写真用無色透明トナー(1)により正規現像し、イエロートナー層を形成した。
【0191】
続いて、転写前帯電器18により、感光体ドラム11上に形成したイエロートナー層の帯電の均一化を行った後、1次転写ロール13によって中間転写ベルト12に1次転写した。
【0192】
次いでイエロートナー層と同様にマゼンタトナー層、シアントナー層を中間転写ベルト12上に順次積層した。一方、給紙トレイ24から電子写真用転写紙(1)を搬送し、前記積層したトナー層をバイアスロール21とバックアップロール23とで挟まれた2次転写位置において電子写真用転写紙(1)上に転写した。次いで、積層したトナー像が転写された電子写真用転写紙(1)を、定着器15に通し、定着トナー像からなる画像を形成した。
−低温定着性の評価−
上記画像形成方法を実施する中で、以下の条件で作成した単色トナー画像を未定着の状態で取り出した。
[画像形成条件]
・トナー画像:ソリッド像(40mm×50mm)
・単色トナー量(用紙上):0.40mg/cm2
ここでは、ロール−ベルト方式の定着器を備えたDocuPrint C2220(富士ゼロックス(株)製)のその定着器を定着温度が可変となるように改造し、取り出した未定着画像の低温定着性の評価を行った。すなわち、未定着画像を、設定した定着器温度において電子写真用転写紙(1)に定着させ、得られた各定着画像の画像面を谷折りにし、折れ目部の画像のはがれ度合いを観察し、画像が殆んどはがれない最低の定着温度をMFT(℃)として測定し、低温定着性の評価とした。
−画像保存性の評価−
未定着画像を電子写真用転写紙(1)に、最低の定着温度(MFT(℃))より20℃高い温度で定着させたものを2枚用意し、それら2枚の画像面を重ね合わせ、荷重100g/cm2をかけた状態で温度60℃、湿度85%の環境下に7日間放置した。その後、重ね合わせた画像をはがし、トナー像同士の融着があるか否かを目視にて観察し、下記評価基準により評価した。
【0193】
○:画像保存性に問題なし
△:多少の変化が観察されたが実用上の問題なし
×:大きな変化が観察され、実用上使用不可である
低温定着性の評価および画像保存性の評価についての結果を定着特性として表2に表す。
【0194】
【表2】
【0195】
−トナーブリスターの評価−
ブリスターの評価は、定着温度が可変となるように改造した上記定着器を用い、温度28℃、湿度85%2の環境下で実施した。限界用紙坪量を105g/m2以下とし、コピー原稿としてシアン色、マゼンタ色、イエロー色の3色の画像面積率100%のものを用い、3色の重ね刷り部で、ブリスター未発生のものは○、発生しているが目視では確認できないものは△、発生を目視で確認できるものは×とした。
−粒状性及び画像全体の官能評価−
各単色画像と二次色画像、及び三次色画像について、平均反射濃度が異なる、2×2cmの均一画像が並んだチャート状の画像を、前記MFTより20℃高い温度でA4サイズの電子写真用転写紙(1)に定着させ、評価サンプルとした。この評価サンプルでは、用紙上の単色トナー量が0.40mg/cm2となるようにした。定着画像の粒状性の評価は前記評価サンプルを用いて、目視評価により行った。この目視評価では、20人の評価者に、前記評価サンプルの定着画像のきめについて、1.非常にきめが粗い、2.きめが粗い、3.普通、4.きめが細かい、5.非常にきめが細かいの5つに分類してもらい、その平均値を求めた。平均値が2未満の場合を×、2以上4未満の場合を△、4以上の場合を○とした。
【0196】
画像全体の官能評価では、まず、人物写真のサンプルを作製した。ここでも、前記MFTより20℃高い温度で定着させるとともに、用紙上の単色トナー量が0.40mg/cm2となるようにした。そして、作成したサンプルについて目視評価を行った。ここでは、20人の評価者に、作成したサンプルの画質について、1.非常に悪い、2.悪い、3.普通、4.良い、5.非常に良いの5つに分類してもらい、その平均値を求めた。平均値が2未満の場合を×、2以上4未満の場合を△、4以上の場合を○とした。
トナーブリスターの評価と粒状性及び画像全体の官能評価についての結果を紙特性および画質評価として表3に表す。
【0197】
【表3】
【0198】
<実施例2>
−結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、1,20−エイコサンジオール19.6質量部と、フマル酸ジメチル0.7質量部と、ジメチルスルホキシド10質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。減圧下、ジメチルスルホキシドを留去し、窒素気流下、ドデカンジオイック酸ジメチル15.9質量部を加え、180℃で1時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い20分攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(3)33質量部を合成した。この結晶性ポリエステル樹脂(3)の、酸由来構成成分の炭素数は‘12’であり、アルコール由来構成成分の炭素数は‘20’である。
【0199】
得られた結晶性ポリエステル(3)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9200であり、数平均分子量(Mn)は4300であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(3)のNMR測定によるドデカンジオイック酸由来成分とフマル酸ジメチル由来成分の共重合比は、92:8であった。
【0200】
また、結晶性ポリエステル樹脂(3)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は94℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.056であった。
−電子写真用無色透明トナー(2)の製造−
結晶性ポリエステル樹脂(2)を結晶性ポリエステル樹脂(3)に代え、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)を2.5質量部を溶解させた溶液を懸濁溶液に加え、98℃で2.0時間反応させた以外は実施例1と同様にして電子写真用無色透明トナー(2)を製造した。得られた電子写真用無色透明トナー(2)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径は8.6μmであった。また形状はやや不定形であった。また電子写真用無色透明トナー(2)の融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は95℃であった。
−電子写真用無色透明現像剤(2)の製造−
実施例1の電子写真用現像剤の作製において、電子写真用無色透明トナー(1)を電子写真用無色透明トナー(2)に代えた以外は電子写真用無色透明現像剤(1)と同様にして現像剤を作製した。
−評価−
電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した電子写真用無色透明現像剤(2)に代えた以外は、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。結果を表1〜3に表す。
<実施例3>
電子写真用転写紙(1)を市販の印刷用塗被紙ロストンカラーホワイト(王子製紙(株))(以下、電子写真用転写紙(2)と称する)に代え、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。電子写真用転写紙(2)は開封した直後のものを使用した。この電子写真用転写紙(2)の片面塗被層厚みは22μm、用紙の坪量は129g/m2、密度は1.10g/cm3、透気度は6000秒であった。結果を表2〜3に表す。
<比較例1>
−非結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
加熱乾燥した2口フラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35質量部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン65質量部と、テレフタル酸80質量部と、n−ドデセニルコハク酸10質量部と、トリメリット酸10質量部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、トリメリット酸)に対して0.05質量部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させた。その後、210〜250℃で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0201】
得られた非結晶性ポリエステル(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は13200であり、数平均分子量(Mn)は6600であった。
【0202】
また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、前述の融点の測定と同様にして測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の開始点をとったガラス転移点(Tg)は62℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.067であった。
−電子写真用シアントナー(2)の製造−
非結晶性ポリエステル樹脂(1)82質量部と、シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)18質量部とを混合し、バンバリー型混練機を用いて溶融混練し、高濃度の着色樹脂組成物を得た。該着色樹脂組成物25質量部と、非結晶性ポリエステル樹脂(1)75質量部とを酢酸エチル100質量部に分散・溶解させ分散溶液を調製した。
【0203】
得られた分散溶液を、カルボキシメチルセルロース1質量部と、炭酸カルシウム20質量部と、水100質量部と、の混合液中に加え、ミキサーを用いて高速撹拌して分散させ乳化液を得た。この乳化液をビーカーに移し、約5倍量の水を加え、撹拌しながら43℃の温浴中で10時間保持し、前記酢酸エチルを蒸発させた。炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、水とトナーとの混合物を得た。最後に、水を凍結乾燥機で蒸発させ、45μmの篩いで篩分して電子写真用シアン着色粒子(2)を得た。形状はほぼ球形であった。
【0204】
得られた電子写真用シアン着色粒子(2)に、電子写真用シアントナー(1)作製時に行った外添処理と同様な外添処理を施し、電子写真用シアントナー(2)を得た。前記と同様に平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。
−電子写真用マゼンタトナー(2)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部に代えて、キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)1.0質量部およびカーミン6B顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)0.7質量部の2種類の顔料を用いた以外は電子写真用シアントナー(2)と同様にして電子写真用マゼンタトナー(2)を作製した。得られた電子写真用マゼンタトナー(2)の体積平均粒子径は6.5μmであった。
−電子写真用イエロートナー(2)の作製−
銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)1.4質量部を、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー180)2.8質量部に代えた以外は電子写真用シアントナー(2)と同様にして電子写真用イエロートナー(2)を作製した。得られた電子写真用イエロートナー(2)の体積平均粒子径は6.4μmであった。
−電子写真用有色現像剤(2)の作製−
得られた電子写真用シアントナー(2)5質量部と前記負帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用シアン現像剤(2)を作製した。また同様にして電子写真用マゼンタ現像剤(2)と電子写真用イエロー現像剤(2)も、それぞれ作製した。
−電子写真用無色透明トナー(3)の作製−
ボントロンP−51(オリエント化学社製)0.3質量部と、非結晶性ポリエステル樹脂(1)99.7質量部とを混合し、バンバリー型混練機を用いて溶融混練し、酢酸エチル100質量部に分散・溶解させ分散溶液を調製した。
【0205】
得られた分散溶液を、カルボキシメチルセルロース1質量部と、炭酸カルシウム20質量部と、水100質量部と、の混合液中に加え、ミキサーを用いて高速撹拌して分散させ乳化液を得た。この乳化液をビーカーに移し、約5倍量の水を加え、撹拌しながら43℃の温浴中で10時間保持し、前記酢酸エチルを蒸発させた。炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、水とトナーとの混合物を得た。最後に、水を凍結乾燥機で蒸発させ、45μmの篩いで篩分して電子写真用無色透明粒子(3)を得た。形状はほぼ球形であった。
【0206】
得られた電子写真用無色透明粒子(3)に、電子写真用無色透明トナー(1)作製時に行った外添処理と同様な外添処理を施し、電子写真用無色透明トナー(3)を作製した。得られた電子写真用無色透明トナー(3)の体積平均粒子径は7.0μmであった。
−電子写真用無色透明現像剤(3)の作製−
得られた電子写真用無色透明トナー(3)5質量部と前記正帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用無色透明現像剤(3)を作製した。
−評価−
電子写真用有色現像剤(1)を作製した電子写真用有色現像剤(2)に代えるとともに、電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した電子写真用無色透明現像剤(3)に代えた以外は、実施例3と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。
<比較例2>
−結晶性ポリエステル樹脂(4)の合成−
加熱乾燥した3口フラスコに、1,4−ブタンジオール90.1質量部と、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル3.0質量部と、フマル酸ジメチル22.2質量部と、アジピン酸ジメチル165.4質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.3質量部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(4)220質量部を合成した。この結晶性ポリエステル樹脂(4)の、酸由来構成成分の炭素数は‘4’であり、アルコール由来構成成分の炭素数も‘4’である。
【0207】
得られた結晶性ポリエステル(4)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9200であり、数平均分子量(Mn)は4100であった。
【0208】
また、結晶性ポリエステル樹脂(4)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、DSCを用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は56℃であった。NMR測定によるアジピン酸由来成分と5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル由来成分とフマル酸由来成分の共重合比は、95:1:4であった。エステル濃度Mを計算すると、0.142であった。
−結晶性ポリエステル樹脂(5)の合成−
アジピン酸ジメチルの添加量を167.2質量部に変更し、また5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチルを除いた以外は結晶性ポリエステル樹脂(4)の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(5)を得た。
【0209】
得られた結晶性ポリエステル(5)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)での重量平均分子量(Mw)は9800であり、数平均分子量(Mn)は4500であった。また、結晶性ポリエステル樹脂(5)について、NMR(溶剤:ジメチルホルムアミド−d7、TMS基準)を測定したところ、酸由来構成成分においては、セバシン酸由来成分とフマル酸由来成分のモル含有比が96:4であった。
【0210】
また、結晶性ポリエステル樹脂(5)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は58℃であった。エステル濃度Mを計算すると、0.143であった。
−電子写真用有色トナー(3)の製造−
結晶性ポリエステル(1)を結晶性ポリエステル(4)に代えた以外は電子写真用シアントナー(1)と同様にして電子写真用シアントナー(3)を製造した。以下同様に電子写真用マゼンタトナー(3)及び電子写真用イエロートナー(3)を製造した。得られた電子写真用シアントナー(3)、電子写真用マゼンタトナー(3)及び電子写真用イエロートナー(3)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径はそれぞれ6.6μm、6.3μm、6.4μmであった。また融点を測定したところ、明確なピークを有し、いずれのトナーピークトップの温度に56℃であった。またいずれの形状もほぼ球形であった。
−電子写真用有色現像剤(3)の作製−
得られた電子写真用シアントナー(3)5質量部と前記負帯電トナー用キャリア95質量部とをブレンダーに入れ、20分間攪拌した後、105μmメッシュで篩分し、電子写真用シアン現像剤(3)、を作製した。また同様にして電子写真用マゼンタ現像剤(3)と電子写真用イエロー現像剤(3)を、それぞれ作製した。
−電子写真用無色透明トナー(4)の製造−
結晶性ポリエステル(2)を結晶性ポリエステル(5)に代えた以外は電子写真用無色透明トナー(1)と同様にして電子写真用無色透明トナー(4)を製造した。得られた電子写真用無色透明トナー(4)の平均粒子径を前記と同様の方法により測定したところ、体積平均粒子径は6.6μmであった。また融点を測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は58℃であった。また形状はほぼ球形であった。
−電子写真用無色透明現像剤(4)の製造−
電子写真用無色透明トナー(1)を電子写真用無色透明トナー(4)に代えた以外は電子写真用無色透明現像剤(1)と同様にして電子写真用無色透明現像剤(4)を作製した。
−評価−
電子写真用有色現像剤(1)を作製した電子写真用有色現像剤(3)に代えるとともに電子写真用無色透明現像剤(1)を作製した電子写真用無色透明現像剤(4)に代えた以外は、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。結果を表1〜3に表す。
<比較例3>
電子写真用転写紙(1)を市販の印刷用塗被紙OKトップコート(王子製紙(株))(以下、電子写真用転写紙(3)と称する)に代えるとともに、画像形成方法を実施するにあたり使用した画像形成装置に備えられた定着器をロール−ロール定着方式であるデジタルカラー複写機A−Color935の定着器に代えた以外は、実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。電子写真用転写紙(3)は開封した直後のものを使用した。この電子写真用転写紙(3)の片面塗被層の厚みは14μmで、用紙の坪量は107g/m2、密度は1.23g/cm3、透気度は17000秒であった。結果を表2〜3に表す。
<比較例4>
電子写真用無色透明現像剤(1)を用いなかったこと以外は実施例1と同様の画像形成方法の実施および各評価を行った。結果を表2〜3に表す。
【0211】
実施例1で用いた本発明の画像形成方法では、表1〜3の結果のように、ブリスターの発生がなく、粒状性と画像官能評価に優れ、かつ最低定着温度が従来に比べ著しく低く、定着画像の保存性にも優れる。また帯電性にも優れるため、かぶり等のディフェクトも見られなかった。
【0212】
また、実施例3も実施例1と同様に良好であることがわかる。
【0213】
実施例2では、表1に示すように、無色透明トナーの融点が、各有色トナーの融点に比べ18℃も高く、最低定着温度が、表2に示すように実施例1に比べ上昇していることがわかる。このことから、より低い温度での定着を実現するには、融点のばらつきが可能な限り小さな有色トナーおよび無色トナーを用いることが好ましいことがわかる。なお、実施例2では、この点を除いては、実施例1と同程度の結果になっている。
【0214】
比較例1では、表2に示すように、最低定着温度が各実施例に比べ大きく上昇し、定着画像保存性が各実施例に比べ劣っている。これらは、結着樹脂の主成分に非結晶性樹脂を用いたことに起因すると考える。また、比較例1では、実施例3で用いた用紙と同じ、透気度がやや高い用紙を用いている。実施例3では、ブリスターの発生が抑えられていたのに対し、この比較例1では、軽微なブリスターが発生した。この違いは、実施例3では、最低定着温度が低かったため、透気度がやや高くてもブリスターの発生を抑えることができたのに対し、比較例1では、最低定着温度が大きく上昇したことにより、ブリスターの発生が抑えられなかったと考える。このことから、ブリスターの発生を抑えるためには、用いるトナーの結着樹脂の主成分を結晶性樹脂にするか非結晶性樹脂にするかということと使用する用紙の透気度との関係が重要であることがわかる。
【0215】
比較例2では表2に示すように、最低定着温度は低いものの、結晶性ポリエステル樹脂の融点が低すぎたため定着画像の保存性が非常に悪い。また、帯電性が低いため若干のかぶりが観察され、表3に示すように画像官能評価ではあまり好ましくない結果になっている。これは、結晶性ポリエステルのエステル濃度が高すぎたことに起因する結果と考える。
【0216】
比較例3では表3に示すように、ブリスターが発生し、それによる画質悪化が見られた。比較例3では、紙の透気度が高く、またロール−ロール定着方式の定着器を用いたことから、ブリスターの発生を抑えることができなかったと考える。
【0217】
比較例4では、表3に示すように、粒状性や画像官能評価が実施例1に比べ劣る結果になっている。比較例4と実施例1の違いは、非画像部を無色透明トナーで覆ったか否かの違いである。有色トナーのみの画像形成では画像部と非画像部の画像段差や画像光沢性の不均一性により、画像官能評価の結果が低下したと考える。また粒状性については非画像部を無色透明トナーで覆わなかったことから、有色トナーが孤立している部分が生じ、この部分での転写が良好に行われなかった影響と考える。一方、実施例1では、非画像部を無色透明トナーで覆ったことにより有色トナーが孤立している部分が生じず、紙面全体にわたって良好な転写が行われたと考える。
【0218】
これらの結果より、塗被層を設けた紙を使用し、非画像部を無色透明トナーで定着することで、面内の画像光沢が均一になり、また、各色トナー層で、有色トナーと無色透明トナーの単位面積あたりのトナー量が同じになるように現像電位を調整することで、画像段差が解消され粒状性や画像の官能評価が著しく向上することがわかる。さらに各有色トナーと無色透明トナーの粘弾性を揃えることで、画像光沢をさらに均一化することができることもわかる。
【0219】
また、結晶性ポリエステルトナーを用いることで、従来に比べ大幅な低温定着が実現されており、定着工程での消費エネルギーやウォームアップタイムの大幅な低減により低コストで画像形成を行うことができる。
【0220】
さらに、これらの結果より、形成された画像の優れた保存性も実現することができることや、トナーの低温定着性と紙の透気度を規定することでトナーブリスターの発生を抑制することができることもわかる。
【0221】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の画像形成方法によれば、トナーブリスターの発生を抑え、低コストで均一な光沢を有する画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法に用いるトナーの好ましい特性を示すグラフである。
【図2】本発明の画像形成方法の一実施形態を実施する画像形成装置の模式図である。
【図3】図2に示す画像形成装置において実行される画像形成方法の各工程を示すフローチャートである。
【図4】静電潜像が形成された感光体ドラムを展開し模式的に示す図である。
【図5】用紙上に転写されたトナー像の一例を示した図である。
【符号の説明】
1 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 中間転写ベルト
13 1次転写ロール
14 現像ロータリー
15 帯電器
16 光書き込みユニット
17 現像器
18 転写前帯電器
19 感光体クリーニング装置
20 除電装置
21 バイアスロール
22 ベルトクリーニング装置
23 バックアップロール
24 給紙トレイ
25 用紙
26 定着器
261 押圧パッド
262 エンドレスベルト
263 加熱定着ロール
Claims (1)
- 一色のトナーを用いてトナー像を形成することを、色が異なるトナーを用いて所定回実行し、それぞれ得られたトナー像を該転写体上に転写し、該転写体上にこれらのトナー像を定着することからなる画像形成方法において、
融点が60℃から120℃の間に存在する結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む一色の有色トナーを用いてトナー像を形成する有色トナー像形成工程と、
前記有色トナー像形成工程におけるいずれの色の有色トナーも不存在になる非画像部を含む領域に、融点が60℃から120℃の間に存在する結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂を含む無色トナーを用いて無色トナー像を形成する無色トナー像形成工程と、
前記転写体が、繊維層の表面に少なくとも顔料と接着成分からなる塗被層を有する、透気度が8000秒以下である転写体であることを特徴とする画像形成方法。
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