JP4028939B2 - 触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒活性成分の微粒子状材料上への施与、前記材料からなる被覆分散液の製造および該分散液での担体の被覆により、不活性担体上に、大きな表面積を有する微粒子状材料および触媒活性成分からなる触媒活性被覆を有する触媒を製造する方法に関する。
【0002】
前記の方法により、化学技術の多くの分野で使用される触媒が得られる。これは、いわゆる担体付触媒であり、この場合触媒活性成分を高分散性の形で担持材料上に施与し、できる限りわずかな量の活性成分で、触媒の高い触媒活性が保証される。この目的のために、触媒活性成分を受容するために大きな比表面積を有する担持材料を使用する。これは多くの場合、微粒子状の、つまり粉末形の熱安定性金属酸化物である。
【0003】
自動車排ガス触媒の場合、担持材料を被覆の形で触媒不活性担体上に施与する。担体として自動車排ガス浄化のために、セラミックまたは金属からなる、いわゆるハニカム成形体が適切であり、これは排ガスのための並行に並んだ流路が通じている。ハニカム成形体を担持材料で被覆するために、担持材料を多くの場合、水中に分散させ、かつ通常、粉砕工程により均質化する。粉砕により担持材料の平均粒度を1〜10μmの間の値に調整する。
【0004】
流路の壁は、ハニカム成形体を前記の被覆分散液に1回以上浸漬し、続いて乾燥させ、かつか焼することにより被覆する。完成被覆は、分散液被覆とも称する。
【0005】
前記の方法の場合、触媒活性成分を種々の時点で担持材料の比表面積上に施与することができる。例えば、ハニカム成形体を分散液被覆で被覆した後で初めて、被覆したハニカム成形体を触媒活性成分の可溶性前駆物質の水溶液中に浸漬することにより、触媒活性成分を担持材料上に析出させることが公知である。あるいはこのために、触媒活性成分を、分散液被覆の製造の前の作業工程で粉末形の担持材料上に施与する可能性も存在する。
【0006】
本発明は、前記の第二の、触媒活性成分の析出の可能性に関する。高い触媒活性を達成するために、析出方法は、担持材料の比表面積上での成分の、できる限り微細に分散した析出を保証するものでなくてはならない。さらに析出方法は、完成触媒の高い温度安定性および老化安定性をもたらすものであるべきであり、換言すれば触媒活性成分の粒子は、隣接した粒子が、触媒の温度負荷の際に凝集するを防止するために、担持材料の表面上に良好に定着されていなくてはならないということである。
【0007】
粉末形の担持材料上での触媒活性成分の析出のために、種々の方法が公知である。これには例えば、過剰の含浸溶液での含浸が属する。この場合、粉末形の担持材料に、その容量が実質的に担持材料の吸水率よりも大きい、触媒活性成分の水溶液を添加する。この場合、結果として粥状の粘稠度を有する材料が生じ、これを例えば炉中で80〜150℃に高めた温度で脱水し、かつ引き続き触媒活性成分を定着させるためにさらに高い温度でか焼する。脱水の際に、クロマトグラフィー効果が生じ、これは担持材料上での触媒活性成分の不均一な分布につながる可能性がある。
【0008】
いわゆる細孔容量含浸の場合、触媒活性成分の溶液のために、前記溶剤のための担持材料の吸収率の70〜100%に相当する量の溶剤を使用する。通常、該溶剤は水である。該溶液をできる限り均一に、例えばタンク内で回転させた担持材料の上方に噴霧することにより分布させる。全容液の担持材料の上方での分布後に、該材料は含水率にも関わらずまだ流動性である。引き続き含浸した材料を乾燥させ、かつ触媒活性成分を担持材料上に定着するために高めた温度でか焼する。細孔容量含浸でクロマトグラフィー効果を十分に回避することができる。このことにより通常、過剰の溶剤で含浸する前記の方法より良好な結果が得られる。
【0009】
担持材料を触媒活性成分で含浸させる前記の公知の方法の場合の欠点は、含浸工程の後に担持材料上で、高いエネルギー量を使用して、乾燥処理およびか焼処理により触媒活性成分を担持材料上に定着させ、被覆分散液を製造するために必要とされる担持材料を再度分散させる際に、該成分が再度担持材料から脱着することを回避しなくてはならないという事実である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、触媒活性成分の担持材料上での高分散性の分布を保証し、かつコストのかかる乾燥工程およびか焼工程を十分に回避する、触媒の製造方法を提供することである。10nm以下、有利には2〜7nmの触媒活性成分の結晶の大きさが、高分散性として該当する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題は本発明により、触媒活性成分を微粒子状材料上へ施与し、前記材料からなる被覆分散液を製造し、かつ該分散液で担体を被覆することにより、不活性担体上に、大きな表面積を有する微粒子状材料と触媒活性成分とからなる触媒活性被覆を有する触媒を製造する方法において、該方法が以下のプロセス工程:
a)前駆化合物を少なくとも1つの微粒子状材料上に吸着させる細孔容量含浸法により、触媒活性成分の前駆化合物の溶液を用いる、定められた微粒子状材料からなる粉末混合物の含浸、
b)含浸した粉末混合物を使用する水性被覆分散液の製造、
c)こうして得られた分散液を用いる担体の被覆、および
d)被覆の乾燥およびか焼
を含むことを特徴とする触媒の製造方法により解決される。
【0012】
本発明の範囲では、その比表面積が(DIN66132により測定して)10m2/gより大である材料を大きな表面積として解釈する。自動車排ガス浄化のために触媒活性成分として有利には元素の周期系の白金族の貴金属を使用する。これらにはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金が属する。
【0013】
前駆化合物の担持材料上への吸着は、担持材料の表面性状ならびに含浸溶液の前駆化合物およびpH値に依存する。例えば、酸化アルミニウム上の白金族金属の硝酸塩は極めて強く吸着され、これに対して相応する酸度の含浸溶液の場合の塩化物は弱く吸着されるのみである。このことは、ペレット中の触媒活性元素の分布に影響を与えるために、ペレット触媒を製造する際に利用される。硝酸塩を使用する場合には例えば、顕著な皿状の断面が得られ、他方塩化物を使用する場合には、活性成分での、全ペレットのほぼ均質な貫通が可能である。
【0014】
極めて強い吸着も、また弱い吸着も、粉末材料上の触媒活性貴金属の最適な分散にはつながらないことが判明した。極めて強い吸着の場合、担持材料の粉末粒子は前駆化合物により不十分に貫通されるにすぎない。前駆化合物は粉末粒子の比表面積の外側の部分にのみ貯蔵される。このことにより生じた、前記の範囲での高い濃度は、触媒活性貴金属の結晶の大きさの粗大化につながる。しかし、前駆化合物の弱い吸着の場合、該化合物はさらに長時間移動性のままである。従って、含浸した担持材料を乾燥させる際に、種々の割合の含浸材料上での極めて不均一な触媒活性貴金属の分布を有するクロマトグラフィー効果が生じる。このことにより貴金属の結晶の大きさは、極めて広い範囲を有する。極めて小さな結晶以外に、10nmを上回る結晶の大きさを有する貴金属の著しい割合が存在する。
【0015】
ところで、担持材料と貴金属の前駆化合物とを適切に組み合わせる場合、均一かつ高分散性の貴金属の析出が可能であることが判明した。このことは例えば、少なくとも1つの微粒子状材料が6〜10の等電点を有し、かつ前駆化合物として白金族金属のアニオン性塩を使用する場合に該当する。前記の特性の組み合わせにより、相応する材料の粉末粒子の均質な貫通および良好な吸着が得られる。この場合、吸着は実質的に担持材料の正の表面負荷および負に負荷されたアニオンとの間の静電気の相互作用に基づく。
【0016】
含浸後に前駆化合物を担持材料上で熱的に定着する。このために含浸した粉末材料をまず180℃までの温度で乾燥させ、かつ次いで300℃を上回る温度でか焼する。か焼の際に前駆化合物を添加する。その際、選択した温度および前駆化合物の種類に応じて、種々の酸化段階の貴金属の混合物が形成され、これはその後の水性被覆分散液の製造の際に再度溶解することはない。
【0017】
本発明による方法の特に有利な変法では、前駆化合物の熱的定着を省略する。むしろ含浸工程からのまだ湿っている粉末材料を直接、水性被覆分散液に加工する。前記の分散液のpH値を、前記の等電点を1〜3単位下回る、有利には4〜8の間の値に調整することにより、前駆化合物が再度溶解するのを防止する。前記の方法により、前駆化合物を熱的に定着させるための著しいエネルギーコストを節約し、かつ触媒の全製造プロセスを極めて効率よく行うことができる。
【0018】
細孔容量含浸を実施するために、選択した担持材料の混合を、例えばタンク内で均一に回転させる一方で、前駆化合物の溶液をノズルを用いて粉末材料の上方に噴霧する。この場合本発明によれば、使用される溶剤容量を粉末混合物の吸収率の最大90%までに制限する。わずかな溶剤量により、一度吸着した前駆化合物が再度脱着し、かつ凝集してより大きな結晶になりうることを防止する。この場合、溶剤容量をより小さく選択するほど、望ましくない脱着をそれだけ確実に防止することができる。しかし溶剤容量は、使用される容量で、担持材料の所望の負荷のために必要な量の前駆化合物を溶解しなくてはならないという要求により下限が制限される。このため前駆化合物の溶解度に応じて、溶剤容量のための下限が異なる場合がある。通常、溶剤容量は、40%以下ではもはや適用できない。本発明による方法にとって、粉末混合物の吸収率の50〜70%の溶剤容量が特に有利である。
【0019】
前駆化合物の溶解度が低すぎるために、吸水率の90%の溶剤容量が、所望の量の触媒活性成分を含浸工程で担持材料上に施与するために十分でない場合には、含浸をごく少量の溶剤を用いて、相応する中間乾燥を行いながら、繰り返してもよい。
【0020】
含浸工程は、溶剤容量がわずかであるにも関わらず、粉末混合物の全ての部分が均一に含浸溶液と接触することを保証しなくてはならない。このために粉末材料をタンク内で回転させ、かつ含浸溶液を一定の容量流で粉末材料の表面の上方で噴霧する。粉末材料1kg当たり毎分、溶液50mlの容量流(50ml(kg分))は有利であることが実証されている。200ml/(kg分)より上では粉末材料はもはや十分に均質に含浸することができない。5ml/(kg分)より下では含浸は長くなり不経済である。
【0021】
こうして含浸した粉末材料は、まだ完全に流動性であり、このことにより、該材料のその後の加工が実質的に容易になる。該材料を熱的定着の後で、またはそれ以上熱処理しないで直接、水および場合により有機添加剤中に分散させ、不活性担体のための被覆分散液を製造する。担体をこうして得られた分散液で被覆した後で、該被覆を80〜約180℃の高めた温度で乾燥させ、かつ引き続き300℃を越える温度でか焼する。
【0022】
6〜10の等電点を有する適切な担持材料は、例えば酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素またはこれらの混合酸化物である。このために適切なアニオン性貴金属塩は例えば、メチルエタノールアミン白金(IV)ヘキサヒドロキシド、エタノールアミン白金(IV)ヘキサヒドロキシドおよびヘキサクロロ白金(IV)酸またはこれらの混合物である。メタノールアミンまたはエタノールアミンで錯化した白金族金属のアニオン性塩は特に有利である。
【0023】
完成触媒の所望の触媒作用のためには、しばしば特定の触媒活性成分を特定の担持材料上のみに析出させ、触媒活性成分と担持材料との間の有害な相互作用を回避する必要がある。そのような場合、触媒の種々の担持材料を別々にそれぞれの貴金属で含浸しなくてはならない。その後で初めて前記材料から共通の被覆分散液を製造する。そこで例えば、ゼオライトを使用してディーゼル触媒を製造する際に、ゼオライトを白金族金属で被覆しないように注意しなくてはならない。というのもこのことはゼオライト表面のコークス化につながる可能性があるからである。従って従来は、担持材料をゼオライト成分と共に共通の被覆分散液に一体化することができる前に、その他のディーゼル触媒の担持材料を別々に白金族金属で含浸しなくてはならなかった。意外なことに、本発明による方法により前記の分離が不要であることが判明した。というのもアニオン性貴金属塩は極めてわずかな範囲でゼオライトにより吸着されるのみであるからである。
【0024】
担持材料と貴金属塩との間の所望の相互作用は、カチオン性貴金属塩を使用すると、2〜7の間の等電点を有する担持材料の場合でもまた達成できることが判明した。本発明による方法の前記の変法でも選択的に、熱的定着を行ってもよいし、または行わなくてもよい。熱的定着を省略する場合には、被覆分散液を前記の等電点を1〜5単位上回る、有利には7〜9の間のpH値に調整して、前駆化合物の脱着を防止しなくてはならない。
【0025】
第1表に、種々の担持材料がその等電点と共に示されている。それぞれの等電点に関してpH範囲を記載した。というのも特定の担体酸化物の等電点は、製造方法に応じて異なった値を有し、ひいては等電点は一定のpH範囲内で変動するからである。例えば、硫酸塩化した二酸化チタンは、純粋な二酸化チタンよりも酸性であり、ひいてはより低い等電点を有する。
【0026】
第1表の等電点は、界面動電音波振幅法(electrokinetic-sonic-amplitude-process)により、Matec Applied Sciences MA社、USAのESA8000装置で測定した。測定法の記述は、J. Winkler "Zeta potential of pigments and fillers" in EJC, 1-2/97, 38〜42頁の論文に見られる。
【0027】
【表1】
Figure 0004028939
【0028】
第2表は、第1表の担持材料と組み合わせて本方法にとって適切であるアニオン性およびカチオン性の白金化合物のいくつかを挙げている。第2表の白金錯体は、例えばその他の白金族金属の類似の錯体に関する例を挙げている。
【0029】
【表2】
Figure 0004028939
【0030】
【実施例】
本発明による方法を適用して、以下の例でいくつかの触媒を製造した。このために以下の原料を使用した:
ケイ酸アルミニウム:二酸化ケイ素5重量%で安定化した酸化アルミニウム;比表面積:153m2/g
二酸化チタン: 比表面積:95m2/g
二酸化ジルコニウム:比表面積:96m2/g
DAY 二酸化ケイ素/酸化アルミニウムのモル比約200を有する脱アルミニウム化したY−ゼオライト
メチルエタノールアミン白金(IV)ヒドロキシド
エタノールアミン白金(IV)ヒドロキシド
硝酸白金
ヘキサクロロ白金(IV)酸:H2PtCl6
担体: 直径2.5cmおよび長さ7.6cmを有する、キン青石
からなる連続気泡ハニカム成形体;セル密度:62cm-2
;流路の壁厚:0.2mm
比較例1:
重量比84:16でケイ酸アルミニウムおよびDAY−ゼオライトからなる粉末混合物1kgをドラグタンク内に装入した。該混合物は1220ml/kgの吸水率を有していた。該混合物を常に回転させながら、粉末混合物の吸水率の68.3%に相応する、テトラアミン白金(II)硝酸塩の水溶液833mlで、56ml/(kg分)の容量流で噴霧した。まだ流動性の粉末を炉中150℃で12時間乾燥させ、かつ引き続き白金を定着させるために空気中300℃で4時間か焼した。こうして製造した粉末は、その全重量に対して白金0.95重量%を含有していた。
【0031】
粉末を透過電子顕微鏡で調査すると、白金の平均的な結晶の大きさは10nmであった。前記の粉末を使用して、水性被覆分散液を製造した。被覆分散液はpH値6を有していた。第一のハニカム成形体を、ハニカム成形体容量1リットル当たり乾燥質量140gで前記の分散液に浸漬することにより被覆した。該被覆を空気中120℃で乾燥させ、かつ空気中300℃で4時間か焼した。
【0032】
比較例2:
ケイ酸アルミニウムおよびDAY−ゼオライトからなる粉末混合物をさらに1kg、比較例1と同様に含浸させた。ただし含浸させた粉末を熱処理せずに、直ちにさらに加工して水性被覆分散液にし、これは同様にpH値6を有していた。被覆分散液の水相の分析によれば、白金の高い含有量を示していた。
【0033】
第二のハニカム成形体を前記の分散液に浸漬することにより被覆した。乾燥させ、かつか焼したハニカム成形体は、担持材料140g/lおよびわずか0.56g/lの白金を含有していた。
【0034】
例1
ケイ酸アルミニウムおよびDAY−ゼオライトからなる粉末混合物をさらに1キログラム、比較例1と同様の方法で白金で含浸した。ただしテトラアミン白金(II)硝酸塩の代わりにモノエタノールアミン白金(IV)ヒドロキシドの水溶液を含浸のために使用した。比較例1と同様にまだ流動性の粉末を炉中150℃で12時間乾燥させ、かつ引き続き白金を定着するために空気中300℃で4時間か焼した。こうして製造した粉末は、その全重量に対して白金0.95重量%を有していた。
【0035】
白金で活性化した粉末の調査によれば、ケイ酸アルミニウム上の白金結晶は極めて均一に分布していた。平均的な結晶の大きさは5nmであった。ゼオライトをケイ酸アルミニウムと一緒に含浸させたにもかかわらず、ゼオライト粒子上に白金結晶は見られなかった。
【0036】
白金で活性化した粉末を水中に分散させ、かつボールミル中で粉砕することにより均質化した。完成被覆分散液の固体濃度は35重量%であった。被覆分散液のpH値は6.5であった。被覆分散液の水相の調査によれば、ケイ酸アルミニウムからの白金成分のはく離の徴候は生じなかった。
【0037】
第三のハニカム成形体を、ハニカム成形体容量1リットル当たり乾燥質量140gで前記の分散液に浸漬することにより被覆した。該被覆を空気中120℃で乾燥させ、かつ空気中300℃で4時間か焼した。完成触媒は触媒容量1リットル当たり1.34gの白金を有していた。
【0038】
例2:
第四のハニカム成形体を例1の被覆分散液で被覆した。被覆のか焼後に、触媒を2時間、形成ガス流(N2 95容量%;H2 5容量%)下で還元させた。触媒は例1と同様の被覆量を有していた。
【0039】
例3:
ケイ酸アルミニウム/DAY−ゼオライト−混合物をさらに1キログラム製造し、かつ例1の記載と同様にして白金で含浸させた。ただし含浸させた粉末を熱処理せず、直ちに加工して水性被覆分散液にした。該分散液はpH値6.5を有していた。被覆分散液の水相の分析によれば、はく離した白金成分の徴候は見られなかった(このために例8を参照のこと)。
【0040】
該分散液で第五のハニカム成形体を被覆し、乾燥させ、か焼し、かつ還元させた。被覆量は例1のものと同一であった。
【0041】
例4:
ケイ酸アルミニウム/DAY−ゼオライト−混合物をさらに1キログラム製造し、かつ例3の記載と同様にして白金で含浸した。白金前駆物質として、エタノールアミン白金(IV)ヒドロキシドを使用した。含浸した粉末を例3に記載のように熱的に処理せず、直ちに加工して水性被覆分散液にした。該分散液はpH値6.5を有していた。被覆分散液の水相の分析によれば、同様にはく離した白金成分の徴候は見られなかった。
【0042】
該分散液で第六のハニカム成形体を被覆し、乾燥させ、か焼し、かつ還元させた。被覆量は例1のものと同一であった。
【0043】
例5:
ケイ酸アルミニウム/DAY−ゼオライト−混合物をさらに1キログラム製造し、かつ例3の記載と同様にして白金で含浸させた。白金前駆物質として、硝酸白金を使用した。含浸した粉末を例3に記載のように熱処理せず、直ちに加工して水性被覆分散液にした。該分散液を硝酸を用いてpH値5.8に調整した。被覆分散液の水相の分析によれば、同様にはく離した白金成分の徴候は見られなかった。
【0044】
該分散液で第七のハニカム成形体を被覆し、乾燥させ、か焼し、かつ還元させた。被覆量は例1のものと同一であった。
【0045】
例6:
二酸化チタン/DAY−ゼオライト−混合物を1キログラム製造し、かつ例3の記載と同様にして白金で含浸させた。該粉末は920ml/kgの吸水率を有していた。含浸溶液の容量は、506ml、つまり粉末混合物の吸水率の55%であった。白金前駆物質として、メチルエタノールアミン白金(IV)ヒドロキシドを使用した。含浸させた粉末を例3に記載のように熱処理せず、直ちに加工して水性被覆分散液にした。硝酸を用いて該分散液をpH値5.0に調整した。被覆分散液の水相の分析によれば、同様にはく離した白金成分の徴候は見られなかった。
【0046】
例7:
二酸化ジルコニウム/DAY−ゼオライト−混合物を1キログラム製造し、かつ例3の記載と同様にして白金で含浸させた。該粉末混合物は875ml/kgの吸水率を有していた。含浸溶液の容量は、534ml、つまり粉末混合物の吸水率の61%であった。白金前駆物質として、メチルエタノールアミン白金(IV)ヒドロキシドを使用した。含浸させた粉末を例3に記載のように熱処理せず、直ちに加工して水性被覆分散液にした。硝酸を用いて該分散液をpH値5.0に調整した。被覆分散液の水相の分析によれば、同様にはく離した白金成分の徴候は見られなかった。
【0047】
前記の例および比較例が示しているように、正しい材料の組み合わせによってのみ、確実に、析出した貴金属成分が、熱的に定着しなくとも担持材料上に固着され、かつ被覆分散液の製造の際に水相に移行して貴金属の損失につながることがないようにすることができる。
【0048】
例8:
例1〜4により白金で含浸した担体酸化物を異なったpH値(4、7および10)を有する被覆分散液を製造するために使用し、被覆分散液の水相による担体酸化物からの白金成分の可能なはく離を検査する。水相中の白金含有量の測定を、それぞれ2時間後および24時間後ならびに7日後に行った。前記の期間を以下では持続時間と呼ぶ。
【0049】
測定を実施するために、それぞれの被覆分散液を濾別し、かつ水相をICP−MS(ion coupled plasma - mass spectrometry)を用いて白金に関して分析した。使用した白金量と溶液中で分析された白金量との差から、担体酸化物の白金含有量を算出した。結果を第3表に示す。
【0050】
第3表は、第2欄に被覆分散液の製造前の担体酸化物の白金含有量を示している。該含有量は全ての場合において、0.95重量%であった。第5〜7欄は、水相中で異なったpH値および異なった持続時間で測定した白金濃度を、それぞれの担体酸化物の白金含有量に対して重量%で示している。第8〜10欄は、ここから計算により担体酸化物上にまだ残っている白金含有量を示している。
【0051】
例1および例2では、白金成分を熱的に担体酸化物上に定着させた。これらは測定が正確である範囲内で、被覆分散液の水相による白金はく離を示していない。例3および例4では、白金成分を担体酸化物上に熱的に定着しなかった。第3表から、この場合にもまた被覆分散液のpH値を正しく選択(7を下回る値)する場合、無視できる程度の白金はく離が観察されるのみである。しかし、被覆分散液のpH値調整を誤った場合(pH=10)、30重量%までの大量の白金はく離が生じる。
【0052】
【表3】
Figure 0004028939
【0053】
適用例1
前記の例の排ガス浄化触媒の触媒活性を、合成ガス装置で測定した。前記の装置で実際のディーゼルエンジンまたはオットーエンジンの排ガス中に存在するほぼ全てのガス状の排ガス成分をシミュレーションすることが可能である。選択した試験条件およびモデルガス組成を第4表に示す。炭化水素成分として、ディーゼル燃料の着火性を測定するための基準物質として公知のn−ヘキサデカン、通称セタンを使用した。前記の長鎖脂肪族化合物は実際のディーゼル排ガス中にも見られる。
【0054】
【表4】
Figure 0004028939
【0055】
排ガス中に含有されているガス成分の測定のために、第5表に記載の測定装置を使用した。
【0056】
【表5】
Figure 0004028939
【0057】
合成ガス装置で、一酸化炭素および炭化水素の反応を連続運転で排ガス温度140℃で測定した。測定を新鮮な、ならびに老化した(オーブン老化:空気+H2O 10容量%+SO2 20ppmで、750℃で16時間)触媒で行った。
【0058】
着火温度の測定のために、排ガスを75℃から加熱速度15℃/分で十分に加熱した。窒素酸化物の反応率の測定をそれぞれの排ガス温度TNOx,maxで行い、その際に窒素酸化物の反応率は最大を有していた。該温度は第6表および第7表に、それぞれの測定値の後ろにカッコ付きで記載した。
【0059】
反応速度の算出は以下の式:
【0060】
【数1】
Figure 0004028939
【0061】
を用いて行うが、その際、
X=反応率[%]
E=触媒の前の有害物質の濃度[vppm]
A=触媒の後の有害物質の濃度[vppm]
である。
【0062】
測定結果を、新鮮な触媒に関しては第6表に、および老化した触媒に関しては第7表に記載する。
【0063】
【表6】
Figure 0004028939
【0064】
【表7】
Figure 0004028939

Claims (9)

  1. 触媒活性成分を粉末材料上に施与し、前記材料から水性被覆分散液を製造し、かつ担体を該分散液で被覆することにより、不活性担体上に、10m 2 /gより大きい比表面積を有する粉末材料と、白金族金属から選択される触媒活性成分とからなる触媒活性被覆を有する触媒を製造する方法において、該方法が、以下のプロセス工程:
    a1)粉末混合物の吸水率の40〜90%に相応する体積の水中の、白金族金属のアニオン性塩の水溶液を用いた、定められた粉末材料からなる混合物の含浸、その際、粉末材料の少なくとも1種は6〜10の等電点を有し、かつその際、アニオン性塩は、少なくとも1種の粉末材料上に吸着される、および
    b1)アニオン性塩を熱的に定着させることなく、含浸された粉末混合物を使用することにより水性被覆分散液を製造、その際、水性被覆分散液のpH値は、前記の等電点よりも1〜3単位低い値に調整する、
    または
    a2)粉末混合物の吸水率の40〜90%に相応する体積の水中の、白金族金属のカチオン性錯体の水溶液を用いた、定められた粉末材料からなる混合物の含浸、その際、粉末材料の少なくとも1種は2〜7の等電点を有し、かつその際、カチオン性錯体は、少なくとも1種の粉末材料上に吸着される、および
    b2)カチオン性錯体を熱的に定着させることなく、含浸された粉末混合物を使用することにより水性被覆分散液を製造、その際、水性被覆分散液のpH値は、前記の等電点よりも1〜5単位高い値に調整する、
    c)こうして得られた分散液を用いる担体の被覆、および
    d)被覆の乾燥およびか焼
    を含むことを特徴とする、触媒の製造方法。
  2. プロセス工程a1)およびb1)を含み、かつ水性被覆分散液のpH値が、4〜8である、請求項1記載の方法
  3. 定められた粉末材料が、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンあるいは前記の材料同士の、または二酸化ケイ素との混合酸化物の群からの少なくとも1つの材料からなる、請求項記載の方法。
  4. 白金族金属のアニオン性として、塩化物またはアルカノールアミンで錯化したアニオン性塩またはこれらの混合物を使用する、請求項記載の方法。
  5. 別の粉末材料として、50を上回る二酸化ケイ素/酸化アルミニウムのモル比を有する、少なくとも1つのゼオライトを使用する、請求項記載の方法。
  6. 担体上の完成被覆を、300℃を上回る温度で水素含有ガス流中で還元させる、請求項記載の方法。
  7. プロセス工程a2)およびb2)を含み、かつ水性被覆分散液のpH値が7〜9である、請求項1記載の方法。
  8. 定められた粉末材料が、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素の群またはこれらの混合酸化物からの少なくとも1つの材料からなる、請求項記載の方法。
  9. 白金族金属のカチオン性錯体として、テトラアンミン錯体、硝酸塩またはこれらの混合物を使用する、請求項記載の方法。
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