JP4024129B2 - アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用表面処理剤及び該処理剤で表面処理したアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板 - Google Patents

アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用表面処理剤及び該処理剤で表面処理したアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材や家電などの用途に主として無塗装で用いられるアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板に、耐アルカリ性、ロールフォーミング性、耐食性を付与するためのクロムを含有しない金属表面処理剤、及び該処理剤で表面処理したアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム・亜鉛合金系メッキ鋼板、特に55%アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板は耐食性に優れるため建家の屋根材や外壁材、農業用ビニールハウスの支柱などの建材製品、ガードレール、防音壁、排水溝などの土木製品、家電製品、産業機器などに無塗装で用いられる。そのため、メッキ鋼板の表面が変色することなく綺麗な表面外観を長期間維持されることが要求される。また、建材用途の場合には、メッキ鋼板が口一ルにより成形加工されるためメッキがロールに堆積しない性能、いわゆる、ロールフォーミング性が要求される。また、ロールフォーミング後の外観も重要であり、皮膜損傷が無く、耐食性に優れていることが要望される。さらに、建材用途の場合には、コンクリートとの接触による強アルカリ腐食環境下に置かれる場合があり、その際にもメッキ鋼板の表面が変色することなく綺麗な外観が長期間維持されることが必要である。
【0003】
前記の要求や要望に応えるべくなされた従来技術としては、クロムを含有する樹脂被覆を施した技術が多数提案されている。例えば、ロールフォーミング性及び耐食性向上を目的として、特定の水溶性又は水分散性樹脂に6価クロムを特定の割合で配合し、且つpH3〜10に調整した処理液をアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板表面に塗布する処理方法が提案されている(特許文献1参照)。この処理を施されたアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板は、耐食性、特に加工部耐食性に対しては優れたものであるが、皮膜からのクロムの溶出、特に加工時の皮膜傷つき部などからのクロムの溶出が大きく、環境衛生の観点から好ましくないという問題を有していた。このように、従来技術では優れた耐アルカリ性とロールフォーミング性と耐食性とを満足し、且つクロムを含まない表面処理層を有するアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板は得られていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】
特許2097278号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術が抱える問題点を解決するためのものであり、アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板に優れた耐アルカリ性、ロールフォーミング性、耐食性を付与でき、且つクロムを含有しないアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用処理薬剤、及び該表面処理剤で被覆された耐アルカリ性、ロールフォーミング性、耐食性に優れたクロムを含有しない表面処理アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術が抱える課題を解決するための手段について鋭意検討を重ねた結果、特定の樹脂を主成分とした被覆を形成させることにより、前記課題が解決できることを見出し本発明を完成した。即ち、本発明は以下の構成からなるクロムを含有しないアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用表面処理薬剤、及びクロムを含有しない表面処理アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板からなる。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(A)成分、(B)成分及び(C)成分;
(A)カルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂
(B)Zr化合物
(C)シランカップリング剤
を含有し、且つ(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(B)成分のZr化合物中のZrとの質量比(樹脂/Zr)が1〜300の範囲であり、(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(C)成分のシランカップリング剤中の珪素との質量比(樹脂/珪素)が50〜800の範囲であることを特徴とするクロムを含有しないアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用表面処理剤である。
【0008】
また、本発明は、(A)成分のカルボシキル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂と、(B)成分のZr化合物と、(C)成分のシランカップリング剤とを含有し、且つ(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(B)成分のZr化合物中のZrとの質量比(樹脂/Zr)が1〜300の範囲であり、(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(C)成分のシランカップリング剤中の珪素との質量比(樹脂/珪素)が50〜800の範囲である被覆層を少なくとも片面に皮膜付着量として0.5〜5.0g/m有することを特徴とする、耐アルカリ性、ロールフォーミング性、耐食性に優れた、クロムを含有しない表面処理アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の構成を詳細に説明する。
本発明におけるアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板は、メッキ皮膜中のAlの含有量が5〜75質量%のアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板であり、例えば55%アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板が最も代表的なものとして知られている。通常、この種のアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板のメッキ皮膜中にはSiがAl量の0.5質量%以上含まれている。また、例えば、55%アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板とは、通常、Alが50〜60質量%程度含まれるアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板(以下の説明において、55%アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板を示すものとする)を示し、そのメッキ皮膜中には通常Siが1〜3質量%前後含まれている。以下に述べるように、本発明による特性改善効果はメッキ皮膜中のAl量が5〜75質量%のアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板において顕著に得られるものであるが、その中でも上記55%アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板において特に顕著な特性改善効果が得られる。
【0010】
本発明のアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板に適用する金属板材用表面処理剤は、(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂、(B)成分のZr化合物及び(C)成分のシランカップリング剤を配合したものである。例えば、容器に水を入れ、これに上記(A)成分、上記(B)成分、及び上記(C)成分の順に投入しプロペラ撹拌機などを用いて撹拌しながら混合することにより調製することができる。
【0011】
本発明で用いる(A)成分は、カルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂である。この樹脂はアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板表面に皮膜を形成する。樹脂中のカルボキシル基は樹脂の親水性成分としてエマルジョンの安定性に寄与するほか、カルボキシル基があることにより金属素材との密着性が向上し、さらに配合するZr化合物シランカップリング剤と架橋反応をして、耐食性、耐アルカリ性に優れた被膜を得ることができる。本発明で用いる水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂中のカルボン酸当量としては0.15〜3.5mg当量/gが好ましい。また、樹脂中の酸アミド結合−CONH−は、アルカリに対しては互変異性構造である−C(OH)N−をとって酸の作用を示す。酸アミド結合は、酸と反応して不安定な塩を作り、アルカリに対してはアルカリを中和する作用を示すので、酸アミド結合を含有する樹脂は酸及びアルカリに対して耐性を有しており優れた耐アルカリ性と耐食性を持っている。本発明で用いる水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂中の酸アミド当量としては0.05〜3.5mg当量/gが好ましい。これらの樹脂は水溶性の状態や水性エマルジョンの状態などの水系で使用する、すなわち水系樹脂である。そして、皮膜自体の耐加水分解性、耐摩耗性を考慮するとウレタン樹脂が好ましい。なお、この樹脂の合成方法に関しては特に限定するものではないが、工業的に使用されている方法で合成されたものが使用できる。
【0012】
前記の(A)成分の水系樹脂に配合する(B)成分は、Zr化合物である。このZr化合物としてはりん酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸アンモニウム塩、塩化物、フッ化物、フッ化アンモニウム物、錯フッ化物、アセチルアセトナート化合物などが使用できる。
【0013】
(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(B)成分のジルコニウム化合物中のジルコニウムとの質量比(樹脂/Zr)は、1〜300の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜200、さらに好ましくは10〜150の範囲である。カルボシキル基と酸アミド結合を有する樹脂の固形分とジルコニウム化合物中のジルコニウムとの質量比(樹脂/Zr)が1未満の場合は、ジルコニウム化合物による防食効果が飽和するので経済的ではない。一方、カルボシキル基と酸アミド結合を有する樹脂の固形分とジルコニウム化合物中のジルコニウムとの質量比(樹脂/Zr)が300を超える場合は、ジルコニウム化合物による防食効果が乏しいため好ましくない。
【0014】
前記の(A)成分の水系樹脂に配合する(C)成分のシランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリキシドキシプロピルトリエトキシシランなどが好ましく用いられる。
【0015】
(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(C)成分のシランカップリング剤中のSiとの質量比(樹脂/Si)が50〜800の範囲であり、より好ましくは50〜600、さらに好ましくは100〜400の範囲である。カルボシキル基と酸アミド結合を有する水系樹脂(A)の固形分とシランカップリング剤中のSiとの質量比(樹脂/Si)が50未満の場合は、シランカップリン剤による防食効果が飽和するので経済的でない。一方、酸アミド結合を有する樹脂の固形分とシランカップリング剤中のSiとの質量比(樹脂/Si)が800を超える場合は、シランカップリン剤の防食効果が乏しいため好ましくない。
【0016】
なお、本発明においては、金属板材表面処理剤に、潤滑剤として二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系ワックス等の添加が可能であり、また、着色顔料の添加により皮膜を着色することも可能である。更に、本来の性能を損なわない範囲内で消泡剤やレベリング剤を該処理液に添加しても差し支えない。
【0017】
本発明の表面処理剤を用いて、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板の表面を処理する方法としては、特に限定はしないが、例えばロールコート等をはじめとする任意の方法を用いて塗布することが可能であり、電気炉、熱風炉、誘導加熱炉などを用いて、到達板温度で60〜200℃、乾燥時間60秒以内で乾燥させて樹脂被膜を形成させるのが好ましい。
【0018】
アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板の表面に形成する本発明の表面処理剤の皮膜量は、乾燥させたときの樹脂皮膜量として、0.5〜5g/mの範囲である。メッキ皮膜中のAlの含有量が5〜75質量%のAl−Zn系合金メッキ鋼板は、メッキ自体が硬くて脆いという欠点を有しており、これを防ぐため樹脂を被覆することでメッキ剥離を防止することができる。樹脂の皮膜量が0.5g/m未満の場合は、このメッキ剥離防止効果が少ないため好ましくなく、一方、5g/mを越える場合はメッキ剥離防止効果が飽和するので経済的でない。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。
〔試験板の作製〕
(1)供試材
5%アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板(GF)
55%アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板(GL)
【0020】
(2)脱脂処理
シリケート系アルカリ脱脂剤のファインクリーナー4336(日本パーカライジング(株)製)で脱脂処理(濃度20g/L、温度60℃、20秒間スプレー)した後、水道水で洗浄した。
【0021】
(3)樹脂の合成
(3−1)試作ウレタン樹脂
両末端にカルポキシル基を持つ数平均分子量1000のポリエステル樹脂100部、両末端に水酸基を持つ数平均分子量1000のジオール化合物100部、2,2一ジメチロールプロピオン酸15部、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート100部、N−メチル−2−ピロリドン100部とを反応させることにより得られるプレポリマーを脱イオン水に分散させることにより、カルボン酸当量として0.36mg当量/g、酸アミド当量として0.63mg当量/gの試作ウレタン樹脂を得た。
(3−2)試作アクリル樹脂
アクリル酸10部とイソホロンジイソシアネート5部を有機溶剤中で反応させた後に、スチレン25部、メタクリル酸メチル10部、メタクリル酸ブチル20部及びアクリル酸2−エチルヘキシル30部を加え、界面活性剤を含む水溶液中に滴下し重合させることにより、カルボン酸当量として1.0mg当量/g、酸アミド当量として0.3mg当量/gの試作アクリル樹脂を得た。
【0022】
(4)表面処理剤の調整方法
室温にて、蒸留水の中に表1に示す樹脂、表2に示す金属化合物、表3に示す珪素化合物の順に投入し、プロペラ攪機を用いて攪しながら混合し、表4の表面処理剤を調製した。
【0023】
【表1】
Figure 0004024129
【0024】
【表2】
Figure 0004024129
【0025】
【表3】
Figure 0004024129
【0026】
【表4】
Figure 0004024129
【0027】
(5)表面処理鋼板の作製方法
上記にて調整した表面処理剤をバーコーターにて供試材の表面に塗布し、240℃の雰囲気温度で乾燥した。なお、皮膜量(g/m2)の調整は表面処理剤の固形分濃度を適宜調整することにより行った。
【0028】
〔皮膜性能評価〕
(1)平面部耐食性
JIS−Z−2371による塩水噴霧試験を240時間実施し、白錆発生状況を観察し、下記基準により評価を行った。
<評価基準>
◎:白錆発生なし
○:白錆発生面積率が全面積の10%未満
△:白錆発生面積率が全面積の10%以上30%未満
×:白錆発生面積率が全面積の30%以上
【0029】
(2)耐アルカリ性
1%NaOH水溶液に試験板を5時間浸漬し、浸漬前後の皮膜状態を観察し、下記基準により評価を行った。
<評価基準>
◎:外観変化なし
○:変色面積が全面積の10%未満
△:変色面積が全面積の10%以上30%未満
×:変色面積が全面積の30%以上
【0030】
【表5】
Figure 0004024129
【0031】
【表6】
Figure 0004024129
【0032】
本発明の実施例及び比較例の試験結果を表5及び6に示す。本発明の表面処理鋼板を用いた実施例の1〜では、耐食性、耐アルカリ性の双方とも良好である。一方、本発明の範囲外である表面処理鋼板の比較例1〜7では、耐食性、耐アルカリ性の何れか一方が劣っていた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用表面処理剤は、アルミニウム含有亜鉛系合金メッキ鋼板の表面処理に、優れた耐食性と耐アルカリ性を付与することができ、またそのロールフォーミング性が優れることから、産業上の利用価値は非常に大きい。また、クロムを含有しないため環境衛生問題を生じない利点がある。

Claims (2)

  1. 次の(A)成分、(B)成分及び(C)成分;
    (A)カルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂
    (B)Zr化合物
    (C)シランカップリング剤
    を含有し、且つ(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(B)成分のZr化合物中のZrとの質量比(樹脂/Zr)が1〜300の範囲であり、(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(C)成分のシランカップリング剤中の珪素との質量比(樹脂/珪素)が50〜800の範囲であることを特徴とするクロムを含有しないアルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板用表面処理剤。
  2. (A)成分のカルボシキル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂と、(B)成分のZr化合物と、(C)成分のシランカップリング剤とを含有し、且つ(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(B)成分のZr化合物中のZrとの質量比(樹脂/Zr)が1〜300の範囲であり、(A)成分のカルボキシル基と酸アミド結合を有する水系ウレタン樹脂又はアクリル樹脂の固形分と(C)成分のシランカップリング剤中の珪素との質量比(樹脂/珪素)が50〜800の範囲である被覆層を少なくとも片面に皮膜付着量として0.5〜5.0g/m有することを特徴とする、耐アルカリ性、ロールフォーミング性、耐食性に優れた、クロムを含有しない表面処理アルミニウム・亜鉛系合金メッキ鋼板。
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