JP4023687B2 - トルクコンバータのロックアップ容量制御装置 - Google Patents

トルクコンバータのロックアップ容量制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、トルクコンバータのロックアップ容量をエンジンの負荷状態に応じた時系列制御により増大させている加速スリップロックアップ中、エンジンを無負荷状態に切り替えた時において、トルクコンバータのロックアップ容量を適切に制御するための装置に関するものである。
トルクコンバータは、入出力要素間で相対回転(スリップ)を伴ってトルク増大下およびトルク変動吸収下に動力伝達を行うため、滑らかな動力伝達が可能である反面伝動効率が悪い。
そこで、上記のトルク増大機能およびトルク変動吸収機能が不要な低負荷、高速伝動時は、トルクコンバータ入出力要素間の相対回転(スリップ)を制限可能なロックアップ式トルクコンバータが多用されている。
ところでトルクコンバータの伝動効率を高めて、トルクコンバータおよび自動変速機と共に車両のパワートレーンを構成するエンジンの燃費を向上させるには、トルクコンバータ入出力要素間を直結(ロックアップ)して両者間の相対回転(スリップ)を制限するロックアップ車速域を可能な限り低車速まで拡大するのが、エンジンの無負荷時におけるエンジン回転の低下抑制による燃料供給停止(フューエルカット)時間の延長と相まって有効である。
特に、自動変速機がトロイダル型無段変速機やVベルト式無段変速機に代表される無段変速機である場合、ロックアップ解除車速の大いなる低車速化が可能であり、ロックアップ車速域の拡大による燃費の向上が顕著である。
一方でかかるロックアップ解除車速の低車速化は、以下のような問題を生ずる。
つまり、車両の急制動により駆動輪がロック気味になった時、速やかにトルクコンバータのロックアップを解除しないと、ロック気味の駆動輪とエンジンとが機械的に直結されていることから、エンジンが運転停止(エンジンストール)を生ずる。
ロックアップ解除車速が低く設定されている場合、低車速までトルクコンバータがロックアップ状態にされていることから、駆動輪がロック気味になってエンジンストールを生ずる前にトルクコンバータのロックアップを解除することが困難となり、急制動時におけるエンジンストールの問題を回避し難い。
そこで従来特許文献1に記載のように、車両の制動の前に行うアクセルペダルの釈放状態(エンジン無負荷状態)でのコースト(惰性)走行中、トルクコンバータのロックアップ容量を、コースト(惰性)走行トルクに応じて異なるが、トルクコンバータがスリップしないぎりぎりの容量まで学習制御などにより低下させておくコーストロックアップ容量制御が提案されている。
この技術によれば、コーストロックアップ容量が小さいことから、トルクコンバータのロックアップ解除応答をその分高めることができ、車両の急制動により駆動輪がロック気味になっても、速やかなトルクコンバータのロックアップ解除によりエンジンストールを回避することができる。
しかして当該コーストロックアップ容量では、アクセルペダルを踏み込んで再加速した時に伝達トルクが大きくなることから、トルクコンバータがロックアップ容量不足によりスリップしてエンジンの空吹けを生じさせる。
そこでかかる再加速時は、特許文献1に記載のように、トルクコンバータのロックアップ容量を所定の時系列(ランプ)制御により徐々に増大させる加速スリップロックアップを行うことが提案されている。
特開2002−106707号公報
しかし、かかる再加速に伴うロックアップ容量の時系列増大制御(加速スリップロックアップ)中にアクセルペダルの釈放によりエンジンが無負荷状態にされてコースト走行に切り替えられると、伝達トルクの急低下によりロックアップ容量が過大となってトルクコンバータがスリップ状態から急にロックアップ状態にされ、ロックアップショックが発生するという問題を生ずる。
かかるロックアップショックの問題を解決するためには、ロックアップ容量制御の一般的な考え方に基づけば、上記したごとく再加速に伴うロックアップ容量の時系列増大制御(加速スリップロックアップ)中にアクセルペダルの釈放によりエンジンが無負荷状態(コースト走行)に切り替えられた場合、ロックアップ容量の増大制御を止めてトルクコンバータを入出力要素間の相対回転が制限されないコンバータ状態にするのが普通である。
しかし、かかる常識的な対策では以下に説明する問題がある。
つまり、再加速に伴うロックアップ容量の時系列増大制御(加速スリップロックアップ)中にアクセルペダルの釈放によりエンジンが無負荷状態(コースト走行)に切り替えられた時、無条件にトルクコンバータをコンバータ状態にするのでは、前記ロックアップショックの問題を生じない条件のもとでも、再加速に伴うロックアップ容量の時系列増大制御(加速スリップロックアップ)を中止してしまい、エンジン回転の急低下によるフューエルカットの中止(フューエルリカバー)とも相まって燃費の悪化を招く。
また、上記のごとく無条件にトルクコンバータをコンバータ状態にするのでは、その後のアクセルペダルの踏み込みによる再々加速時に、エンジンの空吹けを生じて加速の応答遅れによるダイレクト感を損ない、特にこのダイレクト感が使命の無段変速機搭載車にとって看過できない問題となる。
本発明は、前記無負荷時ロックアップ容量が大きいほど前記したロックアップショックが顕著になるものの、この無負荷時ロックアップ容量が或る値未満である場合は、当該ロックアップショックが体感上問題になることがないとの事実認識に基づき、
ロックアップショックが体感上問題にならない無負荷時ロックアップ容量である場合は、ロックアップ容量の前記時系列制御による増大を継続させてロックアップを進行させることにより、上記した燃費の悪化に関する問題や、エンジンの空吹けによるダイレクト感の喪失に関する問題を解消したトルクコンバータのロックアップ容量制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため、本発明によるトルクコンバータのロックアップ容量制御装置は、請求項1に記載のごとく、
トルクコンバータ入出力要素間の相対回転を制限可能なロックアップ式トルクコンバータと、エンジンと、自動変速機との組み合わせになる車両のパワートレーンを前提とし、
前記トルクコンバータのロックアップ容量を前記エンジンの負荷状態に応じた時系列制御により、コーストロックアップ時のロックアップ容量から増大させている加速スリップロックアップ中、前記エンジンを無負荷状態に切り替えた時のロックアップ容量である無負荷時ロックアップ容量が前記コーストロックアップ時のロックアップ容量より大きいショック判定用ロックアップ容量以上である場合、トルクコンバータを前記入出力要素間の相対回転が制限されないコンバータ状態にし、
前記無負荷時ロックアップ容量が前記ショック判定用ロックアップ容量未満である場合、ロックアップ容量の前記時系列制御による増大を継続させてトルクコンバータを前記入出力要素間の相対回転が0にされたロックアップ状態に向かわせるよう構成したものである。
かかる本発明の構成によれば、トルクコンバータのロックアップ容量をエンジンの負荷状態に応じた時系列制御により増大させている加速スリップロックアップ中、エンジンを無負荷状態に切り替えた時の無負荷時ロックアップ容量がショック判定用ロックアップ容量以上である場合、トルクコンバータを入出力要素間の相対回転が制限されないコンバータ状態にするから、
無負荷時ロックアップ容量がショック判定用ロックアップ容量以上であって、そのままロックアップ容量を時系列制御により増大させるとロックアップショックを生ずるような状況のもとでは、このロックアップショックをトルクコンバータのコンバータ状態により緩和、若しくは解消し得る。
その反面、トルクコンバータのロックアップ容量をエンジンの負荷状態に応じた時系列制御により増大させている加速スリップロックアップ中、無負荷時ロックアップ容量がショック判定用ロックアップ容量未満である場合、ロックアップ容量の上記時系列制御による増大を継続させてトルクコンバータを入出力要素間の相対回転が0にされたロックアップ状態に向かわせるため、
無負荷時ロックアップ容量がショック判定用ロックアップ容量未満であって、そのままロックアップ容量を時系列制御により増大させてもロックアップショックを生ずることがないような状況のもとでは、ロックアップ容量を時系列制御により引き続き増大させることによりトルクコンバータをロックアップ状態に向かわせることとなる。
従って、エンジン負荷状態に応じたロックアップ容量の時系列増大制御(加速スリップロックアップ)中にエンジンが無負荷状態に切り替えられた時、ロックアップ容量の時系列増大制御を継続してもロックアップショックを生じないのにトルクコンバータがコンバータ状態にされることがなくなり、
かかる不必要なロックアップ解除により、また、これによるエンジン回転の急低下でフューエルカットが中止(フューエルリカバー)されることにより、燃費が悪化するという前記の問題を解消することができる。
また、上記のごとく不必要なロックアップ解除が行われないことから、エンジンが無負荷状態に切り替えられた後の再負荷時に、エンジンの空吹けを生ずることがなくて加速の応答遅れによるダイレクト感の喪失に関した前記の問題をも解消することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になるトルクコンバータのロックアップ容量制御装置を具えた車両のパワートレーンを、その制御系とともに示し、このパワートレーンをエンジン1と無段変速機2とで構成する。
エンジン1はガソリンエンジンであるが、そのスロットルバルブ3を運転者が操作するアクセルペダル4とは機械的に連結させず、これから切り離してスロットルアクチュエータ5によりスロットルバルブ3の開度を電子制御するようになす。
スロットルアクチュエータ5は、総合コントローラ21がアクセルペダル4の操作に応じて決定する目標スロットル開度tTVOに関した指令に応動するエンジンコントローラ22によって作動量を制御され、これによりスロットルバルブ3の開度を当該目標スロットル開度tTVOに一致させ、エンジン1の出力をアクセルペダル4の操作に応じた値となるように制御する。
なおエンジンコントローラ22は、スロットルアクチュエータ5を介した上記スロットル開度制御を行うだけでなく、図示しなかったが、その他エンジン1の運転に際して必要な燃料噴射量制御や、フューエルカット制御や、点火時期制御をも行うものとする。
無段変速機2は周知のVベルト式無段変速機とし、ロックアップ式トルクコンバータ6を介してエンジン1の出力軸に駆動結合されたプライマリプーリ7と、これに整列配置したセカンダリプーリ8と、これら両プーリ間に掛け渡したVベルト9とを具える。
そして、セカンダリプーリ8にファイナルドライブギヤ組10を介してディファレンシャルギヤ装置11を駆動結合し、これらにより図示しない車輪を回転駆動するものとする。
無段変速機2の変速動作は、プライマリプーリ7およびセカンダリプーリ8のそれぞれのV溝を形成するフランジのうち、一方の可動フランジを他方の固定フランジに対して相対的に接近させてV溝幅を狭めたり、逆に離間させてV溝幅を拡げることにより行うようにし、
両可動フランジのストローク位置を、変速制御油圧回路12からのプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecの比により決定する。
変速制御油圧回路12は変速アクチュエータとしてのステップモータ13を具え、これを変速機コントローラ23が目標変速比tRTOに対応したステップ位置に駆動させることで、無段変速機2を、実変速比が目標変速比tRTOと一致するように無段変速させるものとする。
変速機コントローラ23は更に、後述するように総合コントローラ21で決定されるロックアップ容量(L/Uprs)指令に対応するロックアップ締結圧(Pup)信号を変速制御油圧回路12に出力し、変速制御油圧回路12はトルクコンバータ6へのロックアップ締結圧をこの信号に応じた値に制御し、トルクコンバータ6を入出力要素間の相対回転(スリップ)が制限されているスリップ制御状態や、トルクコンバータ入出力要素間が直結されたロックアップ状態にしたり、これらのスリップ制限状態を解除したコンバータ状態にする用もなすものとする。
変速機コントローラ23が上記の目標変速比tRTOを求めるに当たっては、予め求めておいた変速線を基にスロットル開度TVOおよび車速VSPから目標入力回転数(目標プライマリプーリ回転数)を求め、この目標入力回転数(目標プライマリプーリ回転数)を変速機出力回転数(車速VSPから求め得る)で除算することにより目標変速比tRTOを求める。
エンジンコントローラ22への目標スロットル開度tTVO指令は、総合コントローラ21が上記のごとくに求め、変速機コントローラ23へロックアップ容量L/Uprs指令は、総合コントローラ21が後述する演算により求めることとする。
そのため総合コントローラ21には、アクセルペダル4の踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ24からの信号と、
車輪の回転数から車速VSPを検出する車速センサ25からの信号と、
アクセルペダル4を釈放した時(アクセル開度APO=0の時)にONとなるアイドルスイッチ26からの信号と、
スロットルバルブ3のスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ27からの信号と、
エンジン回転数Ne(トルクコンバータ入力回転数)を検出するエンジン回転センサ28からの信号と、
トルクコンバータ出力回転数(タービン回転数)Ntを検出するタービン回転センサ29からの信号とをそれぞれ入力する。
なおこれらの信号のうち、センサ25,27からの車速VSP信号およびスロットル開度TVO信号は変速機コントローラ23へも供給され、変速機コントローラ23が目標変速比tRTOを前述したごとくに決定するのにも用いるものとする。
総合コントローラ21が、変速機コントローラ23へのロックアップ容量L/Uprs指令を求める時の演算処理を以下に説明する。
この演算に当たって総合コントローラ21は、図2に示す制御プログラムを実行し、先ずステップS1において、コーストロックアップ(L/U)容量の学習制御中か否かを判定する。
コーストロックアップ容量の学習制御は、総合コントローラ21がアイドルスイッチ26のONを受けて、つまり、アクセルペダル4を釈放したコースト(惰性)走行中に、ロックアップ容量L/Uprsをトルクコンバータ6がスリップしない範囲で最も小さなぎりぎりのロックアップ容量となすよう学習するものである。
これにより、急制動による駆動輪のロック時も、エンジンストールが発生しないようトルクコンバータのロックアップ解除(コンバータ状態への移行)を速やかに完遂させることができる。
ステップS1でコーストL/U容量の学習制御中でないと判定する場合は、本発明によるロックアップ容量L/Uprs制御を行う必要がないから、制御を元に戻して待機する。
ステップS1でコーストL/U容量の学習制御中であると判定する場合は、ステップS2でアイドルスイッチ26がOFFになったか否かを、つまり、コーストL/U容量の学習制御中にアクセルペダル4の踏み込みによる再加速操作があったか否かをチェックする。
この再加速操作があるまでは、本発明によるロックアップ容量L/Uprs制御を行う必要がないから、制御を元に戻して待機し、再加速操作があった時にステップS3で、ロックアップ容量L/Uprsを再加速時スロットル開度TVO(トルクコンバータの伝達トルクを表す)に応じた図3に例示するランプ勾配(時間勾配)で時系列制御により増大させる。
ここでロックアップ容量L/Uprsの再加速時ランプ勾配(時間勾配)は、何れの再加速時スロットル開度TVO(伝達トルク)の場合も、当初小さな一定のロックアップ容量としてガクガク振動の発生を防止し、その後、再加速時スロットル開度TVO(伝達トルク)が大きいほど急な勾配でロックアップ容量が増大するものとする。
再加速時スロットル開度TVO(伝達トルク)が大きいほどロックアップ容量L/Uprsの再加速時ランプ勾配(時間勾配)を急にした理由は、再加速時スロットル開度TVO(伝達トルク)が大きい時にゆっくりとロックアップ容量を増大させたのでは、過渡時にトルクに対しロックアップ容量が不足してトルクコンバータがスリップを生じ、ロックアップクラッチフェーシングの摩耗などに関する問題が発生するからである。
次のステップS4では、ロックアップ容量L/Uprsが、トルクコンバータのロックアップを完了させるべき値に達したか否かにより、ロックアップを完了させるべきか否かを判定する。
ロックアップを完了させるべきと判定した時は、ステップS5において、ステップS3と同様な制御の継続によりロックアップを完了させるような逐次増大するロックアップ容量L/Uprsを図1の変速機コントローラ23に出力して遂にはロックアップを完了させ、ロックアップ容量L/Uprsがロックアップを完了させるべき値に達していなければ、制御をステップS6以後に進めて、本発明が狙いとするロックアップ容量の制御を以下のごとくに行う。
ステップS6においては、アイドルスイッチ26がONか否かにより、再加速用のロックアップが完了する前にエンジンを無負荷状態に切り替えるアクセルペダル4の釈放(足離し)があったか否かをチェックする。
この足離しがなければ、本発明が狙いとするロックアップ容量制御が不要であるから制御をステップS3に戻して、ロックアップ容量L/Uprsを再加速時スロットル開度TVO(伝達トルク)に応じた時系列制御により増大させる操作を、ロックアップ完了まで継続させる。
ステップS6でアイドルスイッチ26がONと判定する時、つまり、再加速用のロックアップが完了する前にエンジンを無負荷状態に切り替えるアクセルペダル4の釈放(足離し)があった時、制御をステップS7に進め、当該足離し時(エンジン無負荷時)のロックアップ容量L/Uprsを無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoとして記憶する。
次いでステップS8において、この無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがロックアップ可否判断用ロックアップ容量L/Uprss以上か否かにより、ロックアップ可能なロックアップ容量か否かを判定する。
ロックアップ可否判断用ロックアップ容量L/Uprssは、図4に例示する予定のマップを基に、無負荷状態への切り替え時のエンジントルクTe(トルクコンバータの伝達トルク)から検索により求め、このエンジントルクTe(トルクコンバータの伝達トルク)が大きいほど大きな値をとるよう定める。
ステップS8で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがロックアップ可否判断用ロックアップ容量L/Uprss以上と判定する(ロックアップ可能な無負荷時ロックアップ容量である)場合は、ステップS9において、無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoが図5のように予め求めておいた許容ロックアップ容量限界値α以上か否かにより、足離し時ロックアップショックが発生するか否かを判定する。
ここで許容ロックアップ容量限界値αの求め方を説明する。
先ず図5に示すごとく、横軸に配した無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoごとに、ロックアップ容量を当該無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoから図3につき前述した勾配で時系列制御により増大させた時に発生する車両加速度Gを求めてプロットし、無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoと当該車両減速度Gとの関係を予め求める。
そしてこの関係をもとに、上記の車両加速度Gがショックとして問題とならない許容加速度限界値G0に対応した無負荷時ロックアップ容量を、足離し時ロックアップショック判定用の許容ロックアップ容量限界値αとして求める。
許容加速度限界値G0以上の加速度を発生する無負荷時ロックアップ容量L/Uprso(L/Uprso≧α)の場合、問題となる足離し時ロックアップショックを発生し、許容加速度限界値G0以上の加速度を発生しない無負荷時ロックアップ容量L/Uprso L/Uprso(L/Uprso<α)の場合、問題となるほどに大きな足離し時ロックアップショックを発生することがない。
ステップS9で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoが許容ロックアップ容量限界値α以上でないと判定する時、つまり、ロックアップ容量L/Uprsの継続的な増大によっても足離し時ロックアップショックが発生しない場合、制御をステップS5に進めて、ステップS3と同様な制御の継続により逐次増大するロックアップ容量L/Uprsを図1の変速機コントローラ23に出力して遂にはロックアップを完了させる。
ステップS9で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoが許容ロックアップ容量限界値α以上であると判定する時、つまり、ロックアップ容量L/Uprsを引き続き増大させると足離し時ロックアップショックが発生する場合は、ステップS10でエンジン回転数Neからタービン回転数Ntを差し引いてトルクコンバータ6のスリップ量ΔN(=Ne−Nt)を求めると共に、このスリップ量ΔNがショック判定用スリップ回転β以上か否かにより、ロックアップ容量L/Uprsを引き続き増大させると足離し時ロックアップショックが発生する大きなスリップ回転をトルクコンバータが持っているか否かをチェックする。
ステップS9で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoが許容ロックアップ容量限界値α以上であると判定しても、ステップS10でトルクコンバータ6のスリップ量ΔNがショック判定用スリップ回転β未満と判定する場合、ロックアップ容量L/Uprsを引き続き増大させても足離し時ロックアップショックが発生するほどトルクコンバータ6がスリップしていないことから、制御をステップS5に進めて、ステップS3と同様な制御の継続により逐次増大するロックアップ容量L/Uprsを図1の変速機コントローラ23に出力して遂にはロックアップを完了させる。
しかし、ステップS9で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoが許容ロックアップ容量限界値α以上であると判定し、且つ、ステップS10でトルクコンバータ6のスリップ量ΔNがショック判定用スリップ回転β以上であると判定する場合、ロックアップ容量L/Uprsを引き続き増大させると確実に足離し時ロックアップショックが発生するため、制御をステップS11に進めて、ロックアップ解放制御によりロックアップ容量L/Uprsを逐次低下させつつ、これを図1の変速機コントローラ23に出力してトルクコンバータ6をロックアップ解除によりコンバータ状態にする。
なお、ステップS8で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがロックアップ可否判断用ロックアップ容量L/Uprss未満と判定する場合、つまり、ロックアップ不能な無負荷時ロックアップ容量であると判定する場合、たとえステップS9、ステップS10の判別結果がステップS5を選択しても実質上ステップS5での処理を実行し得ないことから、制御をステップS11に進めてトルクコンバータ6をロックアップ解除によりコンバータ状態にする。
上記した本実施例の構成によれば、以下の作用効果が得られる。
図6(a)は、瞬時t1までスロットル開度TVO=0のコースト走行に呼応してコーストロックアップ容量制御(ステップS1)が行われ、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによるスロットル開度TVOの増大(再加速)に呼応して図3につき前述した時系列制御によるロックアップ容量L/Uprsの増大(ステップS3)が開始されるも、タービン回転数Ntからのエンジン回転数Neの乖離として示すようにトルクコンバータ6が一時的にスリップを生じ、瞬時t2にアクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが0にされた場合の動作タイムチャートである。
図6(a)の場合、アクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが0にされた瞬時t2における無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがショック判定用の許容ロックアップ容量限界値α未満であるから(ステップS9)、瞬時t2までのロックアップ容量L/Uprsの増大を継続しても足離し時ロックアップショックを生じないとの判断に基づき、ロックアップ容量L/Uprsの増大制御を継続させて(ステップS5)、瞬時t3にロックアップを完了させる。
これがため、足離し時ロックアップショックを生じないにもかかわらず瞬時t2にロックアップを解除することがなくなり、この無用なロックアップ解除でエンジン回転数Neが破線で示すように急低下してフューエルカットが中止(フューエルリカバー)され、燃費が悪化するという問題を解消することができる。
また、上記のごとく瞬時t2に不必要なロックアップ解除が行われないことから、図6(a)には図示しなかったが、エンジンが無負荷状態(スロットル開度TVO=0)に切り替えられたt2以後にアクセルペダルの踏み込みで再々加速が行われても、エンジンの空吹けを生ずることがなくて加速の応答遅れによるダイレクト感の喪失に関した問題をも解消することができる。
図6(b)は、瞬時t1までスロットル開度TVO=0のコースト走行に呼応してコーストロックアップ容量制御(ステップS1)が行われ、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによるスロットル開度TVOの増大(再加速)に呼応して図3につき前述した時系列制御によるロックアップ容量L/Uprsの増大(ステップS3)が開始されるも、タービン回転数Ntからのエンジン回転数Neの乖離として示すようにトルクコンバータ6が一時的にスリップを生じ、瞬時t2にアクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが0にされた場合の動作タイムチャートである。
図6(b)の場合、アクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが0にされた瞬時t2における無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがショック判定用の許容ロックアップ容量限界値αを越えているから(ステップS9)、また、瞬時t2でのトルクコンバータスリップ量ΔNがショック判定用スリップ回転β以上であるから(ステップS10)、
瞬時t2までのロックアップ容量L/Uprsの増大を継続すると足離し時ロックアップショックを生ずるとの判断に基づき、ロックアップ容量L/Uprsの増大制御を中止してロックアップ解放用に低下させて(ステップS11)、瞬時t3にロックアップ解除の完了によりトルクコンバータ6をコンバータ状態にする。
これがため、瞬時t2以後もそれまでのロックアップ容量L/Uprsの増大を継続すると足離し時ロックアップショックを生ずるような状況のもとでは、この足離し時ロックアップショックをトルクコンバータのコンバータ状態により確実に緩和、若しくは解消することができる。
図6(c)は、瞬時t1までスロットル開度TVO=0のコースト走行に呼応してコーストロックアップ容量制御(ステップS1)が行われ、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによるスロットル開度TVOの増大(再加速)に呼応して図3につき前述した時系列制御によるロックアップ容量L/Uprsの増大(ステップS3)が開始されるも、タービン回転数Ntからのエンジン回転数Neの乖離として示すようにトルクコンバータ6が一時的にスリップを生じ、瞬時t2にアクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが0にされた場合の動作タイムチャートである。
図6(c)の場合、アクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが0にされた瞬時t2における無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがショック判定用の許容ロックアップ容量限界値αを越えているが(ステップS9)、瞬時t2でのトルクコンバータスリップ量ΔNがショック判定用スリップ回転β未満であるから(ステップS10)、
瞬時t2までのロックアップ容量L/Uprsの増大を継続しても足離し時ロックアップショックを生じないとの判断に基づき、ロックアップ容量L/Uprsの増大制御を継続させて(ステップS5)、瞬時t3にロックアップを完了させる。
これがため、足離し時ロックアップショックを生じないにもかかわらず瞬時t2にロックアップを解除することがなくなり、この無用なロックアップ解除でエンジン回転数Neが急低下してフューエルカットが中止(フューエルリカバー)され、燃費が悪化するという問題を解消することができる。
また、上記のごとく瞬時t2に不必要なロックアップ解除が行われないことから、図6(c)には図示しなかったが、エンジンが無負荷状態(スロットル開度TVO=0)に切り替えられたt2以後にアクセルペダルの踏み込みで再々加速が行われても、エンジンの空吹けを生ずることがなくて加速の応答遅れによるダイレクト感の喪失に関した問題をも解消することができる。
図6(d)は、瞬時t1までスロットル開度TVO=0のコースト走行に呼応してコーストロックアップ容量制御(ステップS1)が行われ、瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによるスロットル開度TVOの増大(再加速)に呼応して図3につき前述した時系列制御によるロックアップ容量L/Uprsの増大(ステップS3)が開始されるも、タービン回転数Ntからのエンジン回転数Neの乖離として示すようにトルクコンバータ6が一時的にスリップを生じ、その後もアクセルペダルを釈放することがなくてスロットル開度TVOがTVO>0に保たれた場合の動作タイムチャートである。
図6(d)の場合、瞬時t1以後アクセルペダルを踏み続けてスロットル開度TVOが0にされないため、本発明が解決しようとする足離しロックアップショックの問題を生ずることがないから、
ステップS4がステップS5を選択し続けて、瞬時t1以後ロックアップ容量L/Uprsを継続的に、図3につき前述した時系列制御により増大させ、瞬時t3にロックアップを完了させる。
これがため、足離し時ロックアップショックを生じないにもかかわらずロックアップが解除されることがなくなり、この無用なロックアップ解除でエンジン回転数Neが急低下してフューエルカットが中止(フューエルリカバー)され、燃費が悪化するという問題を解消することができる。
なお、図6(d)のロックアップ完了瞬時t3の後の瞬時t4に、アクセルペダルの釈放でスロットル開度TVOが破線で示すごとく0にされた場合は、ロックアップ状態であるためエンジン回転数Neおよびタービン回転数Ntが破線で示すように、一致した状態でスロットル開度TVO=0に呼応して低下する。
そして本実施例によれば、図2のステップS8で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoがロックアップ可否判断用ロックアップ容量L/Uprss以上(ロックアップ可能なロックアップ容量)である場合に限り、ステップS9およびステップS10がステップS5を選択してロックアップ容量L/Uprsの増大制御(ロックアップの進行)を継続させるようにしたから、ロックアップの進行が不能であるにもかかわらずロックアップ容量L/Uprsの増大制御(ロックアップの進行)が継続される愚を避けることができる。
しかもロックアップ可否判断用ロックアップ容量L/Uprssを図4に示すごとく、エンジン無負荷状態への切り替え時におけるエンジントルクTe(トルクコンバータの伝達トルク)が大きいほど大きな値をとるよう定めたから、如何なる無負荷時エンジントルクTe(トルクコンバータの伝達トルク)の基でも上記の作用効果を確実に奏することができる。
なお図5における許容ロックアップ容量限界値αは、図3に対して図示のように移記することができ、このことから、ロックアップ容量L/Uprsが許容ロックアップ容量限界値αに達したか否かを、再加速に伴うロックアップ容量L/Uprsの増大が開始された時(図6のt1)からの経過時間が、図3に示すΔt1(再加速時スロットル開度TVOが3/8〜8/8の時)、Δt2(再加速時スロットル開度TVOが1/8の時)、Δt3(再加速時スロットル開度TVOが0/8の時)を示しているか否かにより判定することができる。
この判定方式を用いるに際しては、図2のステップS9で無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoを直接チェックする代わりに、再加速に伴うロックアップ容量L/Uprsの増大が開始された時(図6のt1)からの経過時間をタイマTMで計測し、図6のアクセルペダル釈放時t2におけるタイマTMの計測値が、図3に示すΔt1(再加速時スロットル開度TVOが3/8〜8/8の時)、Δt2(再加速時スロットル開度TVOが1/8の時)、Δt3(再加速時スロットル開度TVOが0/8の時)以上を示しているか否かにより、無負荷時ロックアップ容量L/Uprsoが許容ロックアップ容量限界値α以上か否かを判定することがきる。
本発明の一実施例になるトルクコンバータのロックアップ容量制御装置を具えた車両用パワートレーンを、その制御系と共に示すシステム図である。 同パワートレーン制御系における総合コントローラが実行するロックアップ容量制御プログラムのフローチャートである。 コーストロックアップ容量制御から再加速時ロックアップ容量制御へ移行した時におけるロックアップ容量の時系列増大制御特性を示す線図である。 ロックアップ可否判定用ロックアップ容量の変化特性図である。 足離し時ロックアップショックが問題となる許容加速度限界値に対応した許容ロックアップ容量限界値の決定方法を説明するための線図である。 図2の制御プログラムによりロックアップ容量を決定するときの動作タイムチャートで、 (a)は、無負荷時ロックアップ容量が小さくて足離し時ロックアップショックを生じない場合の動作タイムチャート、 (b)は、無負荷時ロックアップ容量が大きく、且つ、トルクコンバータスリップ量も大きくて、足離し時ロックアップショックを生ずる場合の動作タイムチャート、 (c)は、無負荷時ロックアップ容量が大きくても、トルクコンバータスリップ量も小さくて、足離し時ロックアップショックを生じない場合の動作タイムチャート、 (d)は、再加速によるロックアップが完了するまでアクセルペダルを踏み続けてスロットルバルブを継続的に開いているため、足離し時ロックアップショックを生ずることのない場合の動作タイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 無段変速機
3 スロットルバルブ
4 アクセルペダル
5 スロットルアクチュエータ
6 ロックアップ式トルクコンバータ
7 プライマリプーリ
8 セカンダリプーリ
9 Vベルト
10 ファイナルドライブギヤ組
11 ディファレンシャルギヤ装置
12 変速制御油圧回路
13 ステップモータ
21 総合コントローラ
22 エンジンコントローラ
23 変速機コントローラ
24 アクセル開度センサ
25 車速センサ
26 アイドルスイッチ
27 スロットル開度センサ
28 エンジン回転センサ
29 タービン回転センサ

Claims (5)

  1. トルクコンバータ入出力要素間の相対回転を制限可能なロックアップ式トルクコンバータと、エンジンと、自動変速機との組み合わせになる車両のパワートレーンにおいて、
    前記トルクコンバータのロックアップ容量を前記エンジンの負荷状態に応じた時系列制御により、コーストロックアップ時のロックアップ容量から増大させている加速スリップロックアップ中、前記エンジンを無負荷状態に切り替えた時のロックアップ容量である無負荷時ロックアップ容量が前記コーストロックアップ時のロックアップ容量より大きいショック判定用ロックアップ容量以上である場合、トルクコンバータを前記入出力要素間の相対回転が制限されないコンバータ状態にし、
    前記無負荷時ロックアップ容量が前記ショック判定用ロックアップ容量未満である場合、ロックアップ容量の前記時系列制御による増大を継続させてトルクコンバータを前記入出力要素間の相対回転が0にされたロックアップ状態に向かわせるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ容量制御装置。
  2. 請求項1に記載のロックアップ容量制御装置において、
    前記無負荷時ロックアップ容量が、トルクコンバータをロックアップさせ得ないロックアップ可否判断用ロックアップ容量未満の低容量である時は、該無負荷時ロックアップ容量がショック判定用ロックアップ容量以上か未満かの前記判定を行うことなく、トルクコンバータを前記コンバータ状態にするよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ容量制御装置。
  3. 請求項2に記載のロックアップ容量制御装置において、
    前記ロックアップ可否判断用ロックアップ容量を、エンジンが無負荷状態に切り替えられた前記無負荷時におけるトルクコンバータの伝達トルクに応じ、該無負荷時伝達トルクが大きいほど大容量としたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ容量制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のロックアップ容量制御装置において、
    ロックアップ容量を前記無負荷時ロックアップ容量から前記時系列制御により増大させた時に発生する車両加速度を無負荷時ロックアップ容量ごとに予め求め、該車両加速度がショックとして問題とならない許容加速度限界値に対応した無負荷時ロックアップ容量を前記ショック判定用ロックアップ容量としたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ容量制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のロックアップ容量制御装置において、
    エンジンを無負荷状態に切り替えた前記無負荷時のトルクコンバータ入出力要素間における相対回転がショック判定用スリップ回転未満である時は、前記無負荷時ロックアップ容量がショック判定用ロックアップ容量以上であっても、ロックアップの進行を継続させてトルクコンバータを前記ロックアップ状態に向かわせるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ容量制御装置。
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