JP4023357B2 - 炊飯器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主に家庭用に使用する炊飯器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、おいしい飯を得るためには米に充分な水を含ませた後炊飯すればよいことが知られている。炊飯の際の吸水工程は、米の糊化温度(60〜70℃)以下の温度で米に水を吸わせる工程であり、予熱工程とも言うことができる。米は、精白米の状態では含水率が15%前後であるが、飽和状態まで吸水すると含水率約30%となる。一般的に、浸水温度が高いほど飽和状態に到達する時間は短く、水温5℃で2時間以上、水温20℃で約1時間、水温60℃で約20分である。飽和状態に吸水した米を炊飯すると、米粒の中心まで水分と熱が行き渡り、芯のない良好な食味のごはんが炊きあがる。
【0003】
現在のマイコンにより制御を行なう炊飯器では、この原理を応用して40〜50℃の高温で20分間の吸水工程を入れ、短時間で吸水させたのち炊き上げるようになっており、鍋内を米の糊化温度より低い温度で一定時間吸水させた後に炊飯加熱を行なうのである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、炊飯量に応じて浸水時間を調整しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、複数の浸水時間を記憶しておき、状況に応じて使用者が選択できるようにしているものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特公昭59−24815号公報
【特許文献2】
特公昭63−46684号公報
【特許文献3】
特開平3−30731号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、使用者の使い方としては、炊飯開始までにあらかじめ浸水させている場合が少なからずある。飽和状態まで浸水させた米をさらに高温浸水させた場合、米の表面の組織が崩れ、べちゃついたごはんになり、食味が劣ってしまう。つまり、使用者が食味を良くしようとした操作が逆に食味を落とす結果になる場合があるのである。このような時には使用者が炊飯器を操作して吸水工程のない、あるいは短縮されたコースを選べば解決されるのだが、その判断は使用者に任され、機器側から自動で最適に炊き上げることはできなかった。
【0008】
また、飽和までの浸水時間は水温によって異なるが、使用者が日常の炊飯において水温とその最適浸水時間を判断することは困難であり、誰もが常に最適条件で最もおいしく炊き上げるということは難しかった。
【0009】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたもので、使用者の炊飯前の準備状態を浸水時間と鍋温度から判断し、それに応じた最適な吸水工程を実行することで、使用者に負担をかけることなく、自動で常に良好な食味のごはんが得られる炊飯器を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、本体と、本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、鍋を加熱する加熱手段と、本体の外蓋開閉検知手段による外蓋の開を検知してから閉を検知するまでの時間が予め定められた所定時間以上であれば外蓋閉を検知してから、または、外蓋開放時間計測手段による外蓋の予め定められた所定時間以上の開放を計測すると外蓋の閉鎖を検知してから炊飯開始操作が行なわれるまでの時間を予備浸漬時間として測定する予備浸漬時間測定手段と、鍋温度検知手段および予備浸漬時間測定手段からの出力を入力として加熱手段を制御する加熱制御手段を備え、米と水を入れた鍋が本体内部に収納されてから使用者が炊飯を開始する時点までの時間を計測し、さらには鍋温度検出手段による鍋温度から米の吸水状態を算出、加熱制御手段はその状態から所定の最適な吸水状態になるように吸水工程を加減するものである。
【0011】
なお、この所定の最適な吸水状態については、鋭意研究の結果独自に見出した事象に基づいている。即ち、米の吸水状態とごはんの炊きあがりの食味に関する相関についてである。米の吸水において、飽和吸水率に達するまでの時間は水温が高いほど短いが、飽和吸水状態が長く続くと米の表面が崩れたり米が糊化し始めたりするため、炊飯した場合に食味が劣ってしまう。
【0012】
また、ごはんのおいしさの要因である甘味となる還元糖は、浸漬水温が高く、時間が長いほど多く生成されるが、この状態が長く続くと同様に、米の表面が崩れたり米が糊化し始めたりするため、炊飯した場合の食味が劣るのである。これらの事象より、米の浸漬温度と時間の関係は、炊き上がりのごはんの触感と甘味、つまりおいしさと相関しているといえる。すなわち、良食味のごはんに炊きあげるための米の吸水状態の至適範囲が存在し、それは米の浸漬温度と時間の条件に置きかえることができるのである。
【0013】
本発明では使用者が炊飯の準備、つまり米と水の入った鍋を炊飯器にセットした時点から炊飯開始する時点までの時間と温度を計測し、加熱制御手段はその結果から米の吸水状態を算出、炊飯開始時から米の吸水状態の至適範囲に達するように吸水工程の時間と温度を加減し、米が最適な吸水状態になるように調整したのち炊き上げることで、自動で常に良食味のごはんを得られる炊飯器を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、本体と、前記本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記本体の外蓋の開放と閉鎖を検知して前記外蓋の開放時間を計測する外蓋開放時間計測手段と、前記外蓋開放時間計測手段が予め定められた所定時間以上の外蓋の開放を計測すると前記外蓋の閉鎖を検知してから炊飯開始操作が行なわれるまでの時間を予備浸漬時間として測定する予備浸漬時間測定手段と、前記予備浸漬時間測定手段からの出力を入力として前記加熱手段を制御する加熱制御手段を備え、前記加熱制御手段は前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程終了時の米の吸水状態を所定の条件にすべく少なくとも前記吸水工程の時間を減じて、最適な吸水工程を実行するものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、本体と、前記本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記本体の外蓋の開閉を検知する外蓋開閉検知手段と、前記外蓋開閉検知手段が前記外蓋の開を検知してから閉を検知するまでの時間が予め定められた所定時間以上であれば前記外蓋閉を検知してから炊飯開始操作が行なわれるまでの時間を予備浸漬時間として測定する予備浸漬時間測定手段と、前記予備浸漬時間測定手段からの予備浸漬時間を入力として前記加熱手段を制御する加熱制御手段を備え、前記加熱制御手段は前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程終了時の米の吸水状態を所定の条件にすべく少なくとも前記吸水工程の時間を減じて最適な吸水工程を実行し、使用者に負担をかけることなく、自動で常に物性の良好なごはんを得ることができるものである。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または請求項2の発明において、鍋の温度を測定する鍋温度検知手段を備え、予備浸漬時間の測定中の鍋温度を入力として吸水工程終了時の米の吸水状態を所定の条件にすべく前記吸水工程の温度を加減するものであり、使用者の炊飯前の準備状態を浸水時間と鍋温度から判断し、それに応じて吸水工程の温度を調整することで、使用者に負担をかけることなく、良好な食味のごはんを得ることができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、上記請求項1から3の発明において、炊飯開始時に米の吸水状態が所定の条件を満たしている場合にも、所定温度にて吸水工程を実施するものであり、予備浸漬時の水温のばらつきの影響をなくし、自動で常に安定した食味のごはんを得ることができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、加熱制御手段が吸水工程において、時間と温度の組み合わせによる複数の工程パターンを持ち、鍋温度検知手段と予備浸漬時間測定手段からの出力より判断し、前記吸水工程終了時の米の吸水状態が所定の一定条件になる最適なひとつのパターンを選択するものであり、使用者に負担をかけることなく自動で常に良好な食味のごはんを得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施例1)
以下、本発明の第1の実施例について図1、図2で説明する。本体1の内部には着脱自由に収納され米と水を入れる鍋2と、鍋2の底側面部に対向するように配置され、前記鍋2を加熱する加熱手段3を収納して備える。前記本体1の上面開口部には、開閉自在に外蓋5を備える。また、鍋2の底面中央に外接して鍋温度検知手段である鍋センサー4を配置する。
【0021】
外蓋5の略中央にはマグネット6と、前記マグネット6を回動自在にする傾斜面7と、前記傾斜面7の下端部に前記マグネット6が移動した際に感知するリードスイッチ8を備える。つまり、前記外蓋5の閉鎖時には前記マグネット6は自重で前記傾斜面7を回動して最下端に移動し、前記リードスイッチ8をONする。また前記外蓋5が開放されると、前記マグネット6は前記傾斜面7の最上端に自重で回動し、前記リードスイッチ8から離されてリードスイッチ8がOFFする。
【0022】
9は前記マグネット6の移動により外蓋5の開放が検知されるとその外蓋開放時間を計測する外蓋開放計時間測手段で有り、前記外蓋開放時間が予め定められた一定時間To以上の時間を計測すると予備浸漬時間測定手段10で予備浸漬時間を測定開始する。11は前記予備浸漬時間測定手段10で予備浸漬時間を測定開始し炊飯開始操作が行われるまでの時間を予備浸漬時間として、この出力により前記加熱手段3を制御する加熱制御手段である。
【0023】
次に実施例1の動作について図2の第1の実施例の動作プログラムのフローチャートを中心に説明する。
【0024】
まず、鍋2に米と水を準備してステップ21で外蓋5を開放するとステップ22に進み、前記マグネット6が前記傾斜面7の最上端に自重で回動し、前記リードスイッチ8から離されてリードスイッチ8がOFFして外蓋開放時間計測手段9で外蓋開放時間toの計測が開始される。次に外蓋が閉鎖されるとステップ23で前記外蓋開放時間toの測定が完了し、ステップ24に進む。ステップ24では前記外蓋開放時間toが予め定められた一定時間であるToより長い、つまりto≧Toかどうかをを判定する。ここではTo=3秒とし、炊飯準備のための長時間の外蓋の開放か、又は確認のための外蓋の開放(1〜2秒)かを判定する。to≧Toの場合は、つまり本体1内に鍋2が収納されたと判定して、ステップ25に進み予備浸水時間測定手段10で予備浸水時間を測定開始する。また、ステップ24で外蓋開放時間toが予め定められた一定時間であるToより短い(to<To)と、鍋2のセットが無かった判定して、外蓋5開放の次のタイミングを待つこととなる。
【0025】
ここで、予備浸水時間の測定開始を鍋2の有無又は鍋2の内容物の有無に係らず、外蓋開放時間toの時間の長さで判定している為、外蓋5を閉鎖するステップ23の前で鍋2がセットできていないと、再度外蓋5の開放となり、ステップ26に進む。ここでも前回のステップ22と同様にステップ27で外蓋開放時間toの測定を開始する。そしてステップ28で外蓋5が閉鎖されると前記外蓋開放時間toの測定が完了し、ステップ29に進む。ステップ29ではステップ24と同様に、予め定められた一定時間であるToより長いと本体1内に鍋2が収納されたと判定して、ステップ25に進み予備浸水時間測定手段10で前回の予備浸漬時間測定をリセットして新たに予備浸水時間を測定開始する。また、ステップ29で外蓋開放時間toが予め定められた一定時間であるToより短いと、鍋2又は鍋2の内容物の確認と判定して、次のステップに進むこととなる。
【0026】
この後も外蓋5の開放が発生すれば、同様に処理される。
【0027】
次にステップ30で本体1に備えた炊飯開始スイッチ(図示せず)をONして炊飯開始となり、ステップ31で予備浸水時間を測定終了する。
【0028】
そして、次にステップ32で前記予備浸水時間を基に吸水工程条件を判定して加熱制御手段11により加熱手段3を制御して吸水工程を開始する。
【0029】
次に吸水工程の条件について、図3、図4を用いて説明する。
【0030】
図3は、精白米の浸漬の水温および時間における吸水率を示したものである。生米の飽和吸水率は30%前後であるが、水温5℃では2時間以上、20℃では約1時間、30℃では約40分、60℃では約20分で飽和状態に達する。また、水温が高いほど飽和吸水率は高くなっているが、これは水温が高い状態が長時間続くと米粒の表面の組織の吸水による膨張が促進されるためである。それよりも高温の60℃になると、米粒表面の糊化が始まる。糊化とは、安定した構造をもつ生米のベータデンプンに水分と約60℃以上の熱を加えるとデンプンの結晶構造が崩れ、その間に水の分子が侵入して目の粗い網目構造のアルファデンプンに変化することである。つまり、糊化が始まると吸水率がさらに高くなるのである。ここで、それぞれの浸水温度において飽和状態に吸水した米を炊飯すると、飽和吸水率が高くなるほど、かつ飽和状態に達してからの時間が長いほど粒の表面が崩れ、べちゃべちゃのごはんに炊き上がり、食味が劣る結果となった。
【0031】
しかし、飽和吸水率が30%以下の場合は、長時間浸水しても粒の崩れは比較的少なく、食味の劣化は少なかった。以上より、吸水率が30%を超える場合には、組織の崩壊や糊化など、デンプンの吸水以外の現象が起こっていると考えられる。これらの結果から、粒の中まで火が通り、べたつきが少ない良食味のごはんに炊き上げるためには、吸水率が飽和状態まで達していて、かつ30%以下の吸水率であることが必要なのである。
【0032】
また、図4は精白米の浸漬の水温および時間における還元糖量を示したものである。米のデンプンは加水分解されてグルコースなどの還元糖となり、これがごはんの甘み成分となる。つまり、還元糖の多いごはんほど甘く食味が優れているということができる。デンプンの還元糖への分解は、アミラーゼ等の米自身に含まれている酵素の働きを介して起こるため、これら酵素の至適活性温度である40℃から60℃で吸水させた場合にもっとも米の甘みが引き出せるのである。
【0033】
以上2つの結果より、粒がしっかりとして甘味のある良食味のごはんを炊き上げるための浸漬工程の条件は、炊き上げ直前に米の吸水率が飽和状態まで達しており、かつ吸水率30%以下、かつ水温が40〜60℃であることだといえる。よって前記予備浸漬時間測定手段10により測定された予備浸漬時間により、その不足分について吸水工程で吸水させることとなる。
【0034】
以上の様に本実施例によれば、外蓋5の開放時間で本体1の鍋2のセットを判定して予備浸漬時間を測定可能とし、例えば、図5に示すように、予備浸漬時間が30分、吸水工程開始時の鍋底温度が20℃であった場合、加熱制御手段7は浸漬工程が30分必要であると判断し、また予備浸漬時間が30分間、鍋底温度が5℃であった場合には、浸漬工程が90分間必要であると判断し、加熱手段3がこれを実行した後炊き上げ工程に移行するのである。続く炊き上げ工程では高火力で炊飯し、鍋温度検知手段4が炊き上がり温度を検知した時点で鍋内を均一になじませるむらし工程に移行し、むらし工程では所定時間を経過すると炊飯が終了する。以上一連の操作により、米の吸水不足により芯のあるごはんになったり、浸水しすぎによりべちゃついたごはんになったりすることを防ぎ、使用者に負担をかけることなく、自動で常に物性の良好なごはんを得ることができるのである。
【0035】
なお、本実施例では外蓋5の開放から閉鎖外蓋開放時間を計測して、定められた一定時間であるToと比較して本体1への鍋2のセット有無を判定して説明したが、外蓋5の開放時間を順次計測し、外蓋5の閉鎖前であっても定められた一定時間であるToを超えた時、本体1への鍋2のセット有りと判定する構成で有っても同様な効果が得られるものである。
【0036】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0037】
図6、7図において、12は外蓋5の閉鎖時にはマグネット6が自重で傾斜面7を回動して最下端に移動し、リードスイッチ8のONを検出し、外蓋5の開放時にはマグネット6が傾斜面7の最上端に自重で回動し、リードスイッチ8から離されてリードスイッチ8のOFFを検出する外蓋開閉検知手段である。その他の本体の構成は実施例1と同じであるため、説明は省略する。
【0038】
次に実施例2の動作について図7の第2の実施例の動作プログラムのフローチャートを中心に説明する。
【0039】
まず、鍋2に米と水を準備してステップ41で外蓋5を開放するとステップ42に進み、前記マグネット6が前記傾斜面7の最上端に自重で回動し、前記リードスイッチ8から離されてリードスイッチ8がOFFして外蓋開閉検知手段12で外蓋開閉を検知すると、つまり本体1内に鍋2が収納されたと判定して、予備浸水時間測定手段10で予備浸水時間を測定開始する。
【0040】
ここで、予備浸水時間の測定開始を鍋2の有無又は鍋2の内容物の有無に係らず、外蓋開閉で判定している為、外蓋5を閉鎖するステップ41の前で鍋2が本体1にセットできていないと、再度外蓋5の開放となり、ステップ43に進む。そして本体1内に鍋2が収納されたと判定して、ステップ42に進み予備浸水時間測定手段10で前回の予備浸漬時間測定をリセットして新たに予備浸水時間を測定開始する。この後も外蓋5の開放が発生すれば、同様に処理される。
【0041】
次にステップ44で本体1に備えた炊飯開始スイッチ(図示せず)をONして炊飯開始となり、ステップ45で予備浸水時間を測定終了する。そして、次にステップ46で前記予備浸水時間及び前記予備浸水時間中の鍋温度検出手段4の温度を基に吸水工程条件を判定して加熱制御手段11により加熱手段3を制御して吸水工程を開始する。次に吸水工程については実施例1と同様でありその説明を省略する。
【0042】
以上説明から明らかなように、実施例2によれば例えば、外蓋5の開放により本体1に鍋2をセットしたと判定して予備浸漬時間を測定するとともに、前記予備浸漬時間の測定中の鍋温度を測定可能とし、図5に示すように、予備浸漬時間が30分、鍋底温度が20℃であった場合、加熱制御手段7は浸漬工程が30分必要であると判断し、また予備浸漬時間が30分間、鍋底温度が5℃であった場合には、浸漬工程が90分間必要であると判断し、加熱手段3がこれを実行した後炊き上げ工程に移行するのである。続く炊き上げ工程では高火力で炊飯し、鍋温度検知手段4が炊き上がり温度を検知した時点で鍋内を均一になじませるむらし工程に移行し、むらし工程では所定時間を経過すると炊飯が終了する。以上一連の操作により、米の吸水不足により芯のあるごはんになったり、浸水しすぎによりべちゃついたごはんになったりすることを防ぎ、使用者に負担をかけることなく、自動で常に物性の良好なごはんを得ることができるのである。
【0043】
なお、本実施例では外蓋5の閉鎖時に本体1への鍋2のセットが完了したとして予備浸漬時間測定を開始して説明したが、外蓋5の開放時であっても同様な効果を得る事は言うまでも無い。
【0044】
また、実施例1及び2において、外蓋5の開放時間を検知するマグネット6、傾斜面7、リードスイッチ8は、炊飯時に発生するおねばをフロートであるマグネット6でキャッチし、おねばが噴出する圧力でマグネット5を移動させる際にリードスイッチ8で検知する構成と兼ねて説明したが、適宜設計変更できる。
【0045】
(実施例3)
実施例3における本体の構成、および使用者が鍋2を本体1にセットするまでの手段は実施例1と同じであるため、説明は省略する。
【0046】
まず、使用者が米と水を入れた鍋2を本体1にセットし、外蓋5を閉じると外蓋開放時間測定手段9が外蓋5の閉を検知し、予備浸漬時間測定手段10が予備浸漬時間の測定を開始する。同時に、鍋温度測定手段4が鍋内の予備浸漬温度として鍋底温度の測定を開始する。
【0047】
次に使用者が炊飯を開始した時点で予備浸漬時間測定手段10および鍋温度測定手段4は測定を終了し、予備浸漬時間を算出し、鍋温度測定手段は予備浸漬温度を算出する。加熱制御手段11には予め、前述の実験データより時間と水温と吸水率に関する推定式を持たせておき、予備浸漬時間と予備浸漬温度から炊飯開始時の米の吸水率を推定する。炊飯開始と同時に始まる吸水工程では、制御手段は推定された吸水率と予備浸漬時間と鍋底温度から判断して、米の吸水率が飽和状態まで達し、かつ吸水率30%以下、かつ水温が40〜60℃になるように加熱手段3を制御し、この状態に達した時点で吸水工程を終了する。
【0048】
例えば、図8に示すように、予備浸漬時間が30分、鍋底温度が20℃であった場合、加熱制御手段は浸漬工程が鍋底温度50℃で10分間必要であると判断し、また予備浸漬時間が30分、鍋底温度が5℃であった場合には、浸漬工程が鍋底温度50℃で20分間必要であると判断し、加熱手段がこれを実行した後炊き上げ工程に移行するのである。続く炊き上げ工程では高火力で炊飯し、鍋温度検知手段4が炊き上がり温度を検知した時点で鍋内を均一になじませるむらし工程に移行し、むらし工程では所定時間を経過すると炊飯が終了する。以上一連の操作により、使用者に負担をかけることなく、米の吸水不足により芯のあるごはんになったり、浸水しすぎによりべちゃついたごはんになったりすることを防ぎ、かつ米に含まれる酵素を活性化し、甘味に優れたごはんを得ることができるのである。
【0049】
(実施例4)
実施例4における本体の構成は実施例1および2と同じであるため、説明は省略する。実施例1および2における炊飯動作と同様に、加熱制御手段11が予備浸漬時間と予備浸漬温度から炊飯開始時の米の吸水率を推定するが、炊飯開始時の米の吸水率がすでに所定の条件に達していると判断された場合にも、加熱制御手段11は一定時間、水温が40〜60℃になるように加熱手段3を制御する。図9に示す例では、予備浸漬時間が60分、鍋底温度が20℃であった場合、および予備浸漬時間が120分、鍋底温度が5℃であった場合には、いずれも米の吸水状態は飽和に達していると判断するが、どちらの場合においても加熱制御手段11は浸漬工程を鍋底温度50℃で5分間実行するように加熱手段3を制御する。その後炊き上げ工程とむらし工程に移行し、ごはんを炊き上げるのである。この操作により、予備浸水時の水温のばらつきの影響をなくし、予備浸漬の状態に関わらず、常に安定した食味のごはんを得ることができるのである。
【0050】
(実施例5)
実施例5における本体の構成は実施例1および2と同じであるため、説明は省略する。実施例3における炊飯動作と同様に、加熱制御手段11が予備浸漬時間と予備浸漬温度から炊飯開始時の米の吸水率を推定するが、予め加熱制御手段11に、特に物性と甘味のバランスがとれた良好な食味のごはんが得られる吸水時間と温度の組合せの複数の工程パターンを持たせておき、炊飯開始時の吸水条件に最も適した吸水工程パターンをその中から選択して実行することにより、自動で常に触感と甘味のバランスの取れた良好な食味のごはんを得ることができるのである。
【0051】
なお、以上の実施例1から5は、マイコンにより制御されるその他の方式の炊飯器においても実施可能であることは言うまでも無い。
【0052】
また、本実施例における精白米の浸漬の水温および時間における吸水率および還元糖量とその結果から導き出せる所定の吸水条件は、精白米品種にコシヒカリを用いた一例であり、米の品種や状態によって適宜調整することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の発明によれば、使用者の炊飯前の鍋セットを外蓋開放時間から判定し、外蓋開放時間に応じて予備浸漬時間を測定して炊飯開始後に最適な時間の吸水工程を実行することで、芯のないごはんに炊き上げる一方、ごはんの崩れやべちゃつきを防ぎ、自動で常に、物性の良好なごはんを得ることができる。
【0054】
請求項2記載の発明によれば、使用者の炊飯前の鍋セットを外蓋の開閉で判定し、外蓋の開閉に応じて予備浸漬時間を測定し、予備浸漬時間から判断し、それに応じた最適な時間の吸水工程を実行することで、芯のないごはんに炊き上げる一方、ごはんの崩れやべちゃつきを防ぎ、自動で常に、物性の良好なごはんを得ることができる。
【0055】
また、請求項3記載の発明によれば、予備浸漬時間測定中の鍋温度を検知し、使用者の炊飯前の準備状態を浸水時間と鍋温度から判断し、それに応じて吸水工程の温度を調整することで、米の甘味を引き出し、自動で常に、特に甘味に優れた良好な食味のごはんを得ることができる。
【0056】
また、請求項4記載の発明によれば、炊飯開始時に米の吸水状態が飽和状態に達していても、所定温度の吸水工程を実施することで、予備浸漬時の水温のばらつきの影響をなくし、自動で常に安定した食味のごはんを得ることができる。
【0057】
また、請求項5記載の発明によれば、加熱制御手段が吸水工程にて時間と温度の組み合わせによる複数の工程パターンを持ち、吸水工程終了時の米の吸水状態が所定の一定条件になる最適なひとつを選択することにより、自動で常に触感と甘味のバランスの取れた良好な食味のごはんを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例を示す炊飯器のブロック図
【図2】 同第1の実施例の動作プログラムのフローチャート
【図3】 精白米の浸漬の水温および時間における吸水率を示した図
【図4】 精白米の浸漬の水温および時間における還元糖量を示した図
【図5】 本発明の第1及び2の実施の形態における炊飯工程を示す図
【図6】 本発明の第2の実施例を示す炊飯器のブロック図
【図7】 同第2の実施例の動作プログラムのフローチャート
【図8】 本発明の第3の実施の形態における炊飯工程を示す図
【図9】 本発明の第4の実施の形態における炊飯工程を示す図
【符号の説明】
1 本体
2 鍋
3 加熱手段
4 鍋温度検知手段
5 外蓋
6 マグネット
7 傾斜面
8 リードスイッチ
9 外蓋開放時間計測手
10 予備浸漬時間測定手段
11 加熱制御手段
12 外蓋開閉検知手段
Claims (5)
- 本体と、前記本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記本体の外蓋の開放と閉鎖を検知して前記外蓋の開放時間を計測する外蓋開放時間計測手段と、前記外蓋開放時間計測手段が予め定められた所定時間以上の外蓋の開放を計測すると前記外蓋の閉鎖を検知してから炊飯開始操作が行なわれるまでの時間を予備浸漬時間として測定する予備浸漬時間測定手段と、前記予備浸漬時間測定手段からの出力を入力として前記加熱手段を制御する加熱制御手段を備え、前記加熱制御手段は前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程終了時の米の吸水状態を所定の条件にすべく少なくとも前記吸水工程の時間を減ずる炊飯器。
- 本体と、前記本体の内部に収納され米と水を入れる鍋と、前記鍋を加熱する加熱手段と、前記本体の外蓋の開閉を検知する外蓋開閉検知手段と、前記外蓋開閉検知手段が前記外蓋の開を検知してから閉を検知するまでの時間が予め定められた所定時間以上であれば前記外蓋閉を検知してから炊飯開始操作が行なわれるまでの時間を予備浸漬時間として測定する予備浸漬時間測定手段と、前記予備浸漬時間測定手段からの予備浸漬時間を入力として前記加熱手段を制御する加熱制御手段を備え、前記加熱制御手段は前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程終了時の米の吸水状態を所定の条件にすべく少なくとも前記吸水工程の時間を減ずる炊飯器。
- 鍋の温度を測定する鍋温度検知手段を備え、予備浸漬時間の測定中の鍋温度を入力として吸水工程終了時の米の吸水状態を所定の条件にすべく前記吸水工程の温度を加減する請求項1または2に記載の炊飯器。
- 炊飯開始時に米の吸水状態が所定の条件を満たしている場合にも、所定温度にて吸水工程を実施する請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
- 加熱制御手段は、吸水工程において、時間と温度の組み合わせによる複数の工程パターンを持ち、鍋温度検知手段と予備浸漬時間測定手段からの出力より判断し、前記吸水工程終了時の米の吸水状態が所定の条件になる最適なひとつのパターンを選択する請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
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