JP4021176B2 - 熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法および成形材料 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法および成形材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた成形材料に関する。詳しくは、特定の構造を有する鎖延長剤からなるハードセグメントを特定量有した熱可塑性ポリウレタンエラストマーと特定の硬度を有する熱可塑性エラストマーとからなる熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法、およびその組成物を用いる成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(以下、「TPU」ということがある。)は、耐磨耗性、機械強度等の特性に優れたゴム弾性体であり、熱可塑性樹脂の成形加工の方法により、成形材料を得ることができる。また、TPUはその原料であるマクロポリオール、イソシアネート化合物、鎖延長剤の比率を変えることにより、幅広い弾性率を発現することができる。このような特性を活かし、TPUは、靴のソール、インソール、スキー靴、自動車外装部品、内装部品、電装部品、あるいはキャスター類、ホース、チューブ、シート、繊維等の様々な分野で使用されている。特に、力学的な変形場で使用されるTPUにおいては、その引張強度の向上、あるいは圧縮永久歪の低下等に例示される機械物性の向上が要求されている。
【0003】
TPUの機械物性を向上させる方法として、マクロポリオール、イソシアネート化合物、鎖延長剤の化学構造を変化させる他に、凝集力の大きいウレタン基からなるハードセグメントの含有量を増加させる方法が最も一般的である(本発明で定義するハードセグメントの含有量とは、マクロポリオール、イソシアネート化合物、および鎖延長剤に由来する成分の総質量に対するイソシアネート化合物と鎖延長剤に由来する成分との質量比率を表す)。
【0004】
しかしながら、ハードセグメントの含有量を増加させることにより、TPUの硬度、引張強度は向上するが、ウレタン基の熱分解温度近傍まで昇温しないと、ハードドメインが融解しないため、TPUの流動開始温度が上昇する、あるいは溶融状態の温度幅が低下し、成形加工温度幅が狭いといった問題が生じるため、成形加工が困難となってくる。
【0005】
従って、TPUの優れた機械物性を維持しつつ、成形加工性を向上させた熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた成形材料の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、引張強度、耐磨耗性、圧縮永久歪等のTPUの優れた機械物性を維持しつつ、流動開始温度の低下、および溶融温度幅を向上させた熱可塑性エラストマー組成物、およびその製造方法、並びにそれを用いた成形材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールを鎖延長剤としたハードセグメントを特定量含み23℃における硬度が特定範囲の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と、23℃における硬度が特定範囲の熱可塑性エラストマー(2)とを含む特定範囲の溶融粘度、および特定範囲の貯蔵弾性率を有する熱可塑性エラストマー組成物を用いると、引張強度、耐磨耗性、および圧縮永久歪等の機械物性、並びに成形加工性が優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、(1)鎖延長剤としての芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールに由来する成分を含有し、イソシアネート化合物および鎖延長剤に由来する成分(ハードセグメント)を、イソシアネート化合物、鎖延長剤およびポリオールに由来する成分の合計量に対して35〜70質量%含み、23℃における硬度(JIS K-7311記載の方法による硬度)が85〜99Aである熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、
(2)23℃における硬度(JIS K-7311記載の方法による硬度)が85〜99Aであって前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と異なる熱可塑性エラストマーとを含み、
210℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度が7×10〜1×104Pa・sであり、150℃における貯蔵弾性率が7×106〜2×108Paであることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物が海島構造を有し、その島部の長軸方向の平均長が1nm〜30μmであることが好ましい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、23℃における引張強度が少なくとも12MPa、テーバー磨耗量が60mg以下、圧縮永久歪が50%以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)測定における融解熱が10〜40J/gであることが好ましい。
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)は50〜98質量部、前記熱可塑性エラストマー(2)は2〜50質量部(ただし、(1)と(2)の合計量は100質量部である)の割合で含まれることが好ましい。
【0011】
前記鎖延長剤としての芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールは、パラキシレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ヒドロキノン、2,2‘−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールであることが好ましい。
【0012】
前記熱可塑性エラストマー(2)は、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のエラストマーであることが好ましい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、(1)鎖延長剤としての芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールに由来する成分を含有し、イソシアネート化合物および鎖延長剤に由来する成分(ハードセグメント)を、イソシアネート化合物、鎖延長剤およびポリオールに由来する成分の合計量に対して35〜70質量%含み、23℃における硬度が85〜99Aである熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、
(2)23℃における硬度が85〜99Aであって前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と異なる熱可塑性エラストマーとを含み、
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)とを混合する際、少なくとも2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度が1〜45%である化合物を、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)との総質量に対して、0.01〜5質量%添加して得られることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、(1)鎖延長剤としての芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールに由来する成分を含有し、イソシアネート化合物および鎖延長剤に由来する成分(ハードセグメント)を、イソシアネート化合物、鎖延長剤およびポリオールに由来する成分の合計量に対して35〜70質量%含み、23℃における硬度が85〜99Aである熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、
(2)23℃における硬度が85〜99Aであって前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と異なる熱可塑性エラストマーと
を混合し、さらに該熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と該熱可塑性エラストマー(2)とを混合する際、少なくとも2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度が1〜45%である化合物を、該熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と該熱可塑性エラストマー(2)との総質量に対して、0.01〜5質量%添加することを特徴としている。
【0014】
前記製造方法では、前記熱可塑性エラストマー組成物の210℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度は7×10〜1×104Pa・sであり、150℃における貯蔵弾性率が7×106〜2×108Paであることが好ましい。
本発明に係る成形材料は、前記熱可塑性エラストマー組成物から得られる。
【0015】
このような本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、特定の構造を有したジオールを鎖延長剤とした熱可塑性ウレタンエラストマー(1)と特定範囲の硬度を有した熱可塑性エラストマー(2)とを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、従来の熱可塑性ポリウレタンエラストマーと比較して、引張強度、耐磨耗性、および圧縮永久歪等の優れた機械物性を保持しつつ、流動開始温度の低下、および溶融温度幅の向上に示される成形加工性に優れた性能を示す。特に、前記熱可塑性ウレタンエラストマー(1)、熱可塑性エラストマー(2)を混合する際、特定範囲のイソシアネート基濃度を有する化合物を添加することにより、得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、海島構造の島部の平均長を特定範囲に制御しながら該島部を形成することが可能であるため、TPUの優れた機械物性を保持しつつ、成形加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
【0016】
このため、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、靴のソール、インソール、スキー靴、自動車外装部品、内装部品、電装部品、あるいはキャスター類、ホース、チューブ、シート、時計バンド、ベルト、ギヤー、不織布、繊維、糸等の幅広い分野において、使用し得る極めて有用な材料である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)(1)]
まず、本発明に係る熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)(1)について説明する。TPU(1)は、通常、ポリオール、イソシアネート化合物、および鎖延長剤、必要に応じてその他の成分を重合させることにより得られる。
<ポリオール>
ポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、およびポリカーボネートジオール等が例示できる。これらポリオールは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0018】
<ポリオキシアルキレンポリオール>
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、たとえば、比較的低分子量の2価アルコールの1種、または2種以上の化合物にプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合したポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。特に、アルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが好ましく用いられる。付加重合に用いるアルキレンオキサイド中のプロピレンオキサイドの含有量は、アルキレンオキサイドの総量に対し、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%であることが望ましい。
【0019】
かかる割合のプロピレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを使用することにより、ポリオキシアルキレンポリオールのオキシプロピレン基の含有量を少なくとも50質量%とすることができる。
また、TPUの耐久性、および機械物性を向上させるためには、ポリオキシアルキレンポリオールの分子末端の1級水酸基化率は、好ましくは少なくとも50モル%、更に好ましくは少なくとも60モル%であることが望ましい。
【0020】
1級水酸基化率を向上するためには、分子末端にエチレンオキサイドを共重合することが好ましい。しかしながら、アルキレンオキサイドの総量に対するエチレンオキサイドの含有量が40質量%を越えると、得られるTPUの湿熱時の力学物性が低下することがあり、エチレンオキサイドは、40質量%以下が好ましい。
【0021】
本発明のTPUの製造に用いるポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、好ましくは200〜6000の範囲、更に好ましくは500〜5000の範囲にあることが望ましい。
また、TPUのガラス転移点の低下、および流動特性を向上させる観点より、分子量、およびオキシアルキレン基の濃度が異なる2種以上のポリオキシアルキレンポリオールを混合して、TPUを製造する方法が好ましい。
【0022】
さらに、本発明で用いられるポリオキシアルキレンポリオールにおいては、プロピレンオキサイドの副反応により生成した分子末端に不飽和基を有するモノオールが少ないことが好ましい。ポリオキシアルキレンポリオール中のモノオール含有量は、JIS K−1557記載の総不飽和度という指標で測定できる。本発明で用いることのできるポリオキシアルキレンポリオール中の総不飽和度は、好ましくは0.03meq./g以下、更に好ましくは0.02meq./g以下であることが望ましい。
【0023】
総不飽和度が、0.03meq./gより大きくなると、TPUの耐熱性、耐久性が低下する傾向にある。また、ポリオキシアルキレンポリオールの工業的な製造の観点から、総不飽和度の下限は0.001meq./g程度であることが好ましい。
このようなポリオキシアルキレンポリオールの製造におけるアルキレンオキサイドの重合触媒としては、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム等のアルカリ金属化合物、およびP=N結合を有した化合物を好ましく用いることができる。
【0024】
前記P=N結合を有する化合物の好ましい形態としては、ホスファゼニウム化合物、ホスフィンオキシド化合物、および、ホスファゼン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらのうちでは、工業的な利用見地から、ホスファゼニウム化合物、およびホスフィンオキシド化合物が特に好ましい。
前記ホスファゼニウム化合物としては、特開平11−106500号公報記載の化合物が挙げられる。たとえば、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムエトキシド、テトラキス[トリ(ピロリジン−1−イル)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウム tert−ブトキシド等が例示される。
【0025】
前記ホスファゼン化合物としては、特開平10−36499号公報の化合物が挙げられる。たとえば、1−tert−ブチル−2,2,2−トリス(ジメチルアミノ)ホスファゼン、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2,2−トリス(ジメチルアミノ)ホスファゼン、1−エチル−2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2λ5 ,4λ5 −カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[ トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ] −2λ5 ,4λ5 −カテナジ(ホスファゼン)、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[ トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ] −2λ5 ,4λ5 −カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−2,2,2−トリ(1−ピロリジニル)ホスファゼン、または7−エチル−5,11−ジメチル−1,5,7,11−テトラアザ−6λ5 −ホスファスピロ[ 5,5] ウンデカ−1(6)−エン等が例示できる。
【0026】
前記ホスフィンオキシド化合物としては、本出願人の特許出願に係わる特願平10−301872号公報記載の化合物が挙げられる。たとえば、トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド、トリス[トリス(ジエチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド等が例示できる。
【0027】
前記アルキレンオキサイド重合触媒を用いることにより、総不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオールを製造することができる。
<ポリテトラメチレンエーテルグリコール>
前記ポリオキシアルキレンポリオールの他に、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMEGという)等が挙げられる。本発明に用いうるPTMEGの数平均分子量としては、好ましくは250〜4000程度、特に好ましくは250〜2000程度の分子量であることが望ましい。
【0028】
<ポリエステルポリオール>
前記ポリエステルポリオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸等、或いはその他の低分子ジカルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。また、ε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンジオール等も例示できる。本発明に用いうるポリエステルポリオールの数平均分子量としては、好ましくは500〜3000程度、特に好ましくは800〜2000程度の分子量であることが望ましい。
【0029】
<ポリカーボネートジオール>
ポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の縮合反応より得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。本発明に用いうるポリカーボネートジオールの数平均分子量としては、好ましくは500〜3000程度、特に好ましくは800〜2000程度の分子量であることが望ましい。
【0030】
前記ポリオールは単独、または2種以上を併用して用いることができる。特に、耐加水分解性が良好なポリオキシアルキレンポリオールの使用が好ましく、その際には、総不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオール、もしくはポリオキシアルキレンポリオールとPTMEGとをブレンドしたポリオールの使用が好ましい。
<イソシアネート化合物>
TPUの製造に用いるイソシアネート化合物について説明する。本発明のTPUの製造において、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系等の化合物が使用できる。
【0031】
たとえば、芳香族系イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、これら有機ポリイソシアネートの80:20質量比(TDI−80/20)、65:35質量比(TDI−65/35)の異性体混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、前記したジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物、トルイレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
脂肪族系イソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族系イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0033】
更に、前記ポリイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体等の変性イソシアネート等も使用できる。
前記ポリイソシアネートのうちでは、好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという)、水添MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、以下、HMDIという)、パラフェニレンジイソシアネート(以下、PPDIという)、ナフタレンジイソシアネート(以下、NDIという)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIという)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)、ノルボルナンジイソシアネート(以下、NBDIという)、さらに好ましくは、MDI、HMDI、PPDI、NDI等の有機ジイソシアネート化合物、およびこれらイソシアネート化合物のウレタン変性、カルボジイミド変性、ウレトイミン変性、イソシアヌレート変性化合物を用いることが望ましい。
<鎖延長剤>
本発明で用いられる鎖延長剤としては、芳香環、複素環または脂環式環を有したジオールが挙げられる。
【0034】
このような鎖延長剤としては、具体的には、たとえばパラキシレングリコール(以下、PXGという)、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、BHETという)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート(以下、BHEIという)、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(以下、BHEBという)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(以下、DERという)、レゾルシン(以下、RSという)、ヒドロキノン(以下、HQという)、2,2‘−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(以下、水添BPAという)、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(以下、SPGという)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMという)、1,4−シクロヘキサンジオール(以下、CHDという)からなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールが挙げられる。これらのうちでは、BHET、BHEB、DER、RS、SPG、CHDMが好ましく、2種以上混合して使用することが更に好ましい。
<TPU(1)の製造方法>
本発明で用いられるTPU(1)は、前記ポリオール、イソシアネート化合物、および鎖延長剤を原料として製造することができる。
【0035】
TPUの製造においては、予め、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させたイソシアネート基末端プレポリマー(以下、「プレポリマー」という)と鎖延長剤とを反応させる方法(以下、「プレポリマー法」という)、或いはポリオールと鎖延長剤とを予め、混合し、次いで、該混合ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させる方法(以下、「ワンショット法」という)のいずれを適用しても構わない。
【0036】
また、いずれの方法においても、ポリオール、鎖延長剤等のヒドロキシル基を有する化合物は、加熱減圧脱水処理を十分に行ない、水分を低減させることが好ましい。これらヒドロキシル基を有する化合物に含有される水分量としては、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下であることが望ましい。
【0037】
通常、前記プレポリマー法においては、不活性ガス存在下、ポリオールとイソシアネート化合物とを好ましくは反応温度40〜150℃で、30秒間〜8時間程度、攪拌混合し、プレポリマーを製造することが望ましい。次いで、イソシアネートインデックスが好ましくは0.8〜1.2の範囲となる量のプレポリマーと鎖延長剤とを秤量し、両者を混合する。プレポリマーと鎖延長剤とのイソシアネートインデックスは好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1、更に好ましくは0.94〜1.08の範囲であることが望ましい。
【0038】
混合方法に特に限定はないが、通常、ディゾルバーのような混合槽や循環式の低圧、高圧衝突混合装置、プラストミル、ニーダー、或いは単軸、二軸回転式の押出機のような装置を用いるのが好ましい。これらの方法にうち、特に、同方向回転式の二軸押出機を用いた反応押出法が最も好ましい。
前記原料の混合温度は特に限定されないが、通常、好ましくは40℃〜280℃、より好ましくは100℃〜260℃、最も好ましくは120〜250℃で、1分間〜1時間程度、攪拌混合を行なうことが望ましい
前記ワンショット法についても同様、予め、混合、脱泡したヒドロキシル基を有する化合物とイソシアネート化合物とを、好ましくは40℃〜280℃、より好ましくは100℃〜260℃の範囲で、30秒間〜1時間程度、攪拌混合を行なうことが望ましい。
【0039】
さらにTPU(1)の製造時に触媒を添加することもできる。このような触媒としては、アミン化合物、有機金属化合物等のポリウレタンを製造する公知の触媒を使用することができる。好ましくは、有機金属化合物が好ましい。
有機金属化合物としては、たとえば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロリド、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、およびナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0040】
これらの触媒は単独で用いることもできるが、2種類以上任意に混合して使用できる。その使用量は、ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.0001〜2.0質量部、さらに好ましくは0.001〜1.0質量部であることが望ましい。
上記方法により、重合したTPU(1)は、カッターやペレタイザーなどを用いて粉砕、細粒化した後、押出成形機や射出成形機を用いて所望の形状に加工することもできる。また、本発明で用いられるTPU(1)には、その製造時あるいは製造後に、必要に応じて、公知の離型剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、防錆剤、乳白剤、充填剤等を添加しても構わない。
【0041】
TPUを製造する際、ポリオール、イソシアネート化合物、および鎖延長剤の総質量に対するイソシアネート化合物と鎖延長剤との含有量(ハードセグメントを誘導する化合物)は、35〜70質量%であり、より好ましくは40〜65質量%であり、更に好ましくは40〜60質量%であることが望ましい。ハードセグメントを誘導する化合物の含有量が35質量%未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の機械物性の発現性が低くなることがある。一方、70質量%を越えると、エラストマーの成形加工性が低下することがあり好ましくない。
【0042】
また、TPU(1)は、ポリオール、イソシアネート化合物および鎖延長剤に由来する成分の総質量に対するイソシアネート化合物と鎖延長剤とに由来する成分の含有量(ハードセグメント含有量)は、35〜70質量%であり、より好ましくは40〜65質量%であり、更に好ましくは40〜60質量%であることが望ましい。ハードセグメント含有量が35質量%未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の機械物性の発現性が低くなることがある。一方、70質量%を越えると、エラストマーの成形加工性が低下することがあり好ましくない。
【0043】
このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用するTPU(1)の23℃における硬度(JIS K-7311記載の方法による硬度)は85〜99Aであり、好ましくは86〜98A、より好ましくは87〜98Aであることが望ましい。硬度が85Aより低くなると、熱可塑性エラストマー(2)との混合性が低下することがあり、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械物性の発現性、および成形加工性が低下することがある。
[熱可塑性エラストマー(2)]
本発明で用いる熱可塑性エラストマー(2)は、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と異なる熱可塑性エラストマーであって、特定の硬度を有している。
【0044】
このような熱可塑性エラストマー(2)としては、具体的には、たとえば、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のエラストマーが挙げられる。
前記ポリアミドエラストマーとしては、ハードセグメントにナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12等、およびそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリオキシアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独、もしくは2種類以上混合して用いてもよい。更には、非エラストマー性樹脂をブレンドしたもの、および共重合したもの等も使用できる。
【0045】
前記ポリエステルエラストマーとしては、たとえば、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体等が例示できる。
前記ポリエステルエーテルブロック共重合体の具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールの少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリオキシアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成されるブロック共重合体等が挙げられる。
【0046】
前記ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール、および平均分子量が約300〜3000のポリカプロラクトン等に代表されるポリエステルジオールのうち少なくとも各1種から構成されるブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸、ジオール成分としては1,4−ブタンジオール、ポリオキシアルキレンジオールとしてはポリテトラメチレングリコールのブロック共重合体、またはポリエステルジオールであるポリカプロラクトンのブロック共重合体が特に好ましい。このようなポリエステルエラストマーとしては、東洋紡績(株)製のペルプレン、東レ・デュポン(株)製のハイトレル等が例示できる。
【0047】
これら熱可塑性エラストマー(2)の23℃における硬度は85〜99Aであり、好ましくは89〜99Aのエラストマーである。熱可塑性エラストマー(2)の硬度が85Aより低くなると、TPU(1)との混合性が低下することがある。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)とを含む。
【0048】
前記したTPU(1)と熱可塑性エラストマー(2)との混合割合は、好ましくはTPU(1)が50〜98質量部、熱可塑性エラストマー(2)は2〜50質量部であり、より好ましくはTPU(1)が60〜95質量部、熱可塑性エラストマー(2)が5〜40質量部であり、さらに好ましくはTPU(1)が65〜90質量部、熱可塑性エラストマー(2)が10〜35質量部であることが望ましい。
【0049】
TPU(1)が50質量部未満であると、TPU(1)を用いた熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、耐磨耗性、圧縮永久歪等の機械物性が低下することがある。TPU(1)が98質量部を越えると、本発明者らが目的とする成形加工性の向上を図ることが困難となることがある。
上記比率にて得られた熱可塑性エラストマー組成物の210℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度は7×101〜1×104Pa・s、好ましくは1×102〜8×103Pa・s、さらに好ましくは2×102〜7×103Pa・s、特に好ましくは2×102〜2×103Pa・sであることが望ましい。
【0050】
210℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度が7×101〜1×104Pa・sの範囲であると、熱可塑性エラストマー組成物の良好な機械物性を維持したまま、押出成形、射出成形、溶融紡糸成形等が可能となる。
なお、本発明で述べる溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)製、ノズル長30mm、直径1mm)で測定した値である。
【0051】
本発明者らが研究した結果、驚くべきことに、本発明のTPU(1)に、熱可塑性エラストマー(2)とを混合することにより、熱可塑性エラストマー組成物の溶融粘度の低下、流動開始温度の低下、および溶融温度幅が広がり、成形性を向上させることができる。
特に、熱可塑性エラストマー組成物が海島構造を有することが好ましく、海島構造を有することにより、それぞれの樹脂の長所を残したままポリマーアロイ化することができ、機械物性を維持しつつ、成形加工性をより向上させた熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。この場合、島部の長軸方向の平均長は、好ましくは1nm〜30μm、より好ましくは2nm〜10μm、最も好ましくは3nm〜8μmであることが望ましい。
【0052】
なお、このような熱可塑性エラストマー組成物中の島部は、TEM撮影(transmission electronmicroscope撮影)により観察することができ、前記島部の長軸方向の平均長も該TEM撮影により観察することができる。
海島構造の島部の長軸方向の平均長が1nm以上30μm以下である熱可塑性エラストマー組成物においては、成形加工性が著しく改善されたものとすることができる。
【0053】
なお、海島構造とは、連続相(海)中に、分散相(島)が存在する構造状態をいう。通常、多量成分が連続相を形成し、少量成分が分散相を形成する。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物の固体粘弾性測定における150℃での貯蔵弾性率は、7×106〜2×108Paであり、好ましくは1×107〜2×108Paであり、更に好ましくは1×107〜1.5×108Paであることが望ましい。
【0054】
貯蔵弾性率が7×106Pa未満であると、本発明者らが目的とする機械物性が低下することがある。貯蔵弾性率が2×108Paを越えると、本発明者らが目的とする耐磨耗性の発現、およびヒステリシスの良好なエラストマーが得られないことがある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の23℃における引張強度は、好ましくは少なくとも12MPa、更に好ましくは少なくとも15MPa、より好ましくは少なくとも18MPaであることが望ましい。
【0055】
耐磨耗性の指標であるテーバー磨耗量は、好ましくは60mg以下、更に好ましくは55mg以下、より好ましくは53mg以下であることが望ましい。
23℃での圧縮永久歪については、好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下であることが望ましい。
このような特性を有する熱可塑性エラストマー組成物における示差走査熱量計(DSC)測定における融解熱は好ましくは10〜40J/g、より好ましくは11〜30J/g、さらに好ましくは11〜25J/g、特に好ましくは12〜25J/gであることが望ましい。
【0056】
なお、融解熱は、TPU(1)と熱可塑性エラストマー(2)のハードドメインの凝集の融解に基づく熱量であり、該値が10J/gより小さいと、本発明者らが目的とする機械物性の発現が低くなることがあり、該値が40J/gを越えると、成形時の流動開始温度が高くなりすぎるので好ましくない。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)とを混合して得られるが、前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)とを混合する際、少なくとも2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度が1〜45%である化合物を、前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)との総質量に対して、0.01〜5質量%添加する。
【0057】
前記イソシアネート基濃度は、好ましくは3〜38%、更に好ましくは4〜37%の範囲にあることが望ましい。イソシアネート基濃度は、n−ジブチルアミン法で測定するNCO%に相当するものである。
このような少なくとも2個のイソシアネート基を有し、上記範囲内のイソシアネート基濃度の化合物をTPU(1)と熱可塑性エラストマー(2)との混合状態に添加することにより、前記島部が観察されるポリマーアロイを製造することができる。
【0058】
前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)との混合には、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等を好適に用いることができる。特に、同方向回転式の二軸押出機の適用が好ましく、一条ねじスクリュー、二条ねじスクリューを適宜組み合わせたスクリューにより混錬する方法がさらに好ましく、一条ねじスクリュー運搬素子を適用したスクリューとニーディングディスクの組み合わせが最も好ましい。
【0059】
押出機のL/Dは、好ましくは20〜60、さらに好ましくは30〜50であることが望ましい。なお、Lはスクリュー長さ(有効長)であり、Dはスクリュー直径である。
スクリュー全長のなかでニーディングディスクが占める長さの総和の比率は1〜20%であることが好ましく、ニーディングディスクは2以上箇所において混練することが好ましい。
【0060】
スクリュー回数数は通常、好ましくは50〜400rpmであり、さらに好ましくは100〜300rpmであることが望ましい。
前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)とは、各々ペレット形態、もしくは粉砕状態でポッパーから押出機に装入する方法が好ましい。その際、前記TPU(1)と前記熱可塑性エラストマーの装入と共に、少なくとも2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度が1〜45%である化合物を0.01〜5質量%添加する方法、あるいは、TPU(1)と熱可塑性エラストマー(2)とをホッパーから装入した後、押出機の途中で上記イソシアネート基を有する化合物を添加する方法等が挙げられる。
【0061】
TPU(1)と熱可塑性エラストマー(2)とを混合する際の温度、特に、押出機を使用した際のバレル温度は、好ましくは150〜280℃、更に好ましくは180〜250℃の範囲にあることが望ましい。押出機を使用した場合の回転数は、好ましくは80〜400rpm、更に好ましくは100〜350rpmの範囲にあることが望ましい。混錬(滞留)時間は、押出機の全長と直径との比にもよるが、0.2分〜1時間の範囲が好ましい。
【0062】
少なくとも2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度が1〜45%である化合物の具体的な例としては、たとえば、前記イソシアネート化合物、および前記ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させたイソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。これらのイソシアネート化合物のうちでは、特に好ましくは、ウレトイミン変性、あるいはカルボジイミド変性したMDI、あるいは前記MDI変性体とPTMEG、低不飽和タイプのポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールとのイソシアネート基末端プレポリマーを用いることが望ましい。
【0063】
特に、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性したMDIの使用により、熱可塑性エラストマー組成物の機械物性、成形加工性を向上させることができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、ポリウタンに用いられる離型剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、防錆剤、乳白剤、充填剤等を添加しても構わない。また、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系等の樹脂を含有していてもよい。
【0064】
前記ポリエステル系樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHDT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンナフタレート(PCHDN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等、およびそれらの共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0065】
前記ポリアミド系樹脂としては、たとえば、ポリカプロラクタム(NY6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(NY66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(NY6−10)等およびそれらの共重合ポリアミドが挙げられる。
[成形材料]
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、靴のソール、インソール、スキー靴、自動車外装部品、内装部品、電装部品、あるいはキャスター類、ホース、チューブ、シート、時計バンド、ベルト、ギヤー、不織布、繊維、弾性糸等の幅広い分野において、使用し得る極めて有用な材料である。
【0066】
なお、本発明におけるTPU(1)、熱可塑性エラストマー(2)、および熱可塑性エラストマー組成物の諸物性値は、下記の実施例に示す方法と同様の方法で行ったものである。
【0067】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の熊様を更に明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例、比較例におけるTPU(1)、熱可塑性エラストマー(2)、および熱可塑性エラストマー組成物の分析、および評価は、下記の方法に従って行った。
(I)硬度
23℃、50%相対湿度下において、JIS K−7311記載の方法により測定する。尚、デユロメーターは、タイプAを使用する。
(II)210℃における溶融粘度(以下、単に溶融粘度と言う。単位:Pa・s)
キャピログラフ(東洋精機(株)製モデル1C)を用いて、熱可塑性エラストマー組成物の210℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度を測定する。長さ30mm、直径は1mmのノズルを用いる。
(III)150℃における貯蔵弾性率(以下、単に貯蔵弾性率と言う。単位:Pa)
固体粘弾性装置(レオメトリックス・ファー・イースト(株)製、RSA−II)を用いて測定する。昇温速度3℃/min、周波数1rad/s、−100〜250℃の温度範囲の条件で、150℃における貯蔵弾性率を測定する。
(IV)透過型電子顕微鏡(TEM)による海島構造の島部の長軸方向の平均長(以下、単に長軸方向の平均長と言う。単位:μm)
熱可塑性エラストマー組成物を30%のリンタングステン酸水和物(H3(PW1240)・nH2O)により染色後、薄膜切片を作製し、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H−7000)にて、観察倍率4000倍で測定する。1つのサンプルにつき、異なる場所で4ヶ所試料を採取し、上記方法にてTEM撮影を行う。得られた写真を画像解析装置にて、島部の長軸方向の平均長をコンピューターにて計算する。
(V)引張強度(単位:MPa)、テーバー磨耗量(単位:mg)、圧縮永久歪(単位:%)
23℃、50%相対湿度下において、引張試験、テーバー磨耗量はJIS K−7311記載の方法により測定する。圧縮永久歪は、JIS K−6263記載の方法により、23℃、24時間の条件で測定する。
(VI)示差走査熱量計(DSC)測定における融解熱(単位:J/g)
セイコーインスツルメンツ(株)(型式:DSC6200R)を用いて測定する。約10mgの粉砕した試料をアルミ製パンに採取し、昇温速度10℃/minで、室温から230℃まで昇温度、10℃/minの降温速度で−100℃まで降温し、昇温速度10℃/minで同温度から280℃まで昇温する。この時の融解ピークの熱量を測定する。
(VII)流動開始温度(単位:℃)および溶融温度幅(単位:℃)
熱可塑性エラストマー組成物のペレット2gを高架式フローテスター(島津製作所(株)製、型式:CFT−500D)に充填し、1mm(径)×10mm(長さ)のノズルを用い、昇温速度2.5℃/min、荷重20kgfの条件で、流動開始温度を測定する。溶融温度幅はペレット2gが溶融を開始した温度と、ノズルから流出が完了した温度の差を測定する。
(VIII)成形材料の評価
実施例、比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をバレル温度180〜230℃、金型温度40〜45℃に設定した射出成形機にて、成形品の脱型性を試験する。成形品の寸法は、120mm×120mm×2mmである。型開き後の突出しピンの圧力を3MPa、突出しピンの長さを20mmの型開放条件にて、自動的に型から成形品が脱型可能な場合はA、自動的に脱型が不可能な場合は、Cで評価した。
【0068】
以下、実施例、比較例につき、説明する。
実施例、比較例で使用したポリオールは、110℃、1.33kPaの条件で、加熱減圧脱水処理を行い、水分量を100ppm未満に低減した。
なお、ポリオールの水酸基価(OHV)は、JIS K−1557の方法に従い、測定する。尚,実施例、比較例の熱可塑性エラストマー組成物の各種物性は、ペレットを射出成形した試験片を用いて測定した。試験片を100℃、24時間、熱処理を行った後に、各種試験に供した。
【0069】
【実施例1】
TPU(1)の製造において、同方向回転の二軸押出機(L/D比40、D=30mm)を使用した。ポリオール化合物(ポリオールと鎖延長剤とを予め、混合した水酸基含有化合物)とイソシアネート化合物とを、各々、定量的に送液するポンプを付属した押出機に、各原料を送液する。供給量は2.5kg/hである。押出したストランドを水冷し、ペレタイザーにて、ペレット化後、90℃、8hの条件で、十分にペレットを乾燥する方法により、TPU(1)を製造した。
【0070】
328.06質量部の平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学(株)製、商品名:PTG−1000)と1342.83質量部の平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学(株)製、商品名:PTG−2000)および335.28質量部のBHEB(サンテクノケミカル(株)製)と20.60質量部のレゾルシン(三井化学(株)製)とを予め、130℃で加熱混合し、ポリオール化合物とした。尚、前記ポリオール化合物にTPUに対して、0.5質量%のイルガノックス1010(チバ・スペシャリティーケミカル(株)製)を添加、溶解した(以下、実施例、比較例ともすべて同様な操作を行った)。該ポリオール化合物と、予め、60℃に調製した725.35質量部の4、4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、商品名:コスモネートPH)とをイソシアネートインデックスが1.01となるように、定量的に押出機に送液し、TPUを製造した。その際、170〜240℃の範囲で押出機の各バレル温度を設定し、ダイスは210℃とした。得られたTPUのハードセグメントの含有量は、39.3質量%であり、硬度は96Aであった。
【0071】
次いで、上記TPUのペレット80質量部と熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット(東レ・デュポン(株)製、商品名:ハイトレル5557、硬度98A)20質量部とを前記した同形式の二軸押出機に装入し、次いで、該TPU(1)と該熱可塑性ポリエステルエラストマーとからなる熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.2質量%のイソシアネート化合物(PTG−1000とコスモネートPHとを、窒素雰囲気下、80℃で反応させたイソシアネート基末端プレポリマー、NCO%6.2)を添加し、スクリュー回転数は275r.p.m.、バレルの最大温度を235℃に設定し、押出機内で混錬後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0072】
該熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を表1に示す。
【0073】
【実施例2】
特開平11−106500号公報記載の方法により調製したホスファゼニウム化合物(テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド)をポリオールの製造触媒としたポリオキシアルキレングリコールをTPUの原料であるポリオールとして用いた。ジプロピレングリコールを開始剤とし、反応温度80℃でプロピレンオキサイドを付加重合後、ポリオールの質量に対して、20質量%のエチレンオキサイドを反応温度120℃で共重合した後、触媒の除去を行い、ポリオールを得た。該ポリオールのOHVは、28.1mgKOH/gであり、JIS K−1557記載の方法で測定した総不飽和度(本発明で述べたモノオール量に相当する)は、0.013meq./gであった。以下、ポリオールAと言う。786.07質量部のポリオールA、215.72質量部の平均分子量250のポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学(株)製、商品名:PTG−250)、および313.40質量部のBHEB(サンテクノケミカル(株)製)とを135℃で加熱混合し、ポリオール化合物とした。該ポリオール化合物と、予め、60℃に調製した650.31質量部のコスモネートPHとをイソシアネートインデックスが1.01となるように、定量的に押出機に送液した以外は、実施例1記載の方法に従い、TPUを製造した。その際、160〜245℃の範囲で押出機の各バレル温度を設定し、ダイスは205℃とした。得られたTPUのハードセグメントの含有量は、49.0質量%であり、硬度は96Aであった。
【0074】
次いで、上記TPUのペレット90質量部と熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット(ハイトレル5557、硬度98A)10質量部とを前記した同形式の二軸押出機に装入し、次いで、該TPUと該熱可塑性ポリエステルエラストマーとからなる熱可塑性エラストマー100質量部に対して,0.1質量%のイソシアネート化合物(三井武田ケミカル(株)製、商品名:コスモネートLK、NCO%28.4)を添加し、スクリュー回転数は265r.p.m.、バレルの最大温度を235℃に設定し、押出機内で混錬後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0075】
該熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を表1に示す。
【0076】
【実施例3】
984.21質量部のPTG−1000、微粉砕した85.07質量部のBHETと266.49質量部のBHEBを予め、130℃の条件で加熱混合し、ポリオール化合物とした。予め、60℃に調整したコスモネートPH675.32質量部をイソシアネート化合物とし、イソシアネートインデックスが1.01となるように、各原料を二軸押出機に送液した以外は、実施例1記載と同様な方法でTPUを製造した。二軸押出機のバレル温度は、各ブロックを160〜240℃で設定し、ダイス部を210℃とした。ハードセグメントの含有量は、51.1質量%、硬度は97AのTPUが得られた。
【0077】
上記TPUのペレット75質量部、熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット(ハイトレル5557、硬度98A)20質量部、および熱可塑性ポリアミドエラストマーのペレット(旭化成(株)製、商品名:レオナ1300S、硬度99A)5質量部とを実施例1と同形式の二軸押出機に装入し、次いで、該TPUと該熱可塑性ポリエステルエラストマーとからなる熱可塑性エラストマー100質量部に対して,0.05質量%のイソシアネート化合物(PTG−1000とコスモネートPHとを、窒素雰囲気下、80℃で反応させたイソシアネート基末端プレポリマー、NCO%6.2)を添加し、スクリュー回転数は270r.p.m.、バレルの最大温度を235℃に設定し、押出機内で混錬後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0078】
該熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を表1に示す。
【0079】
【実施例4】
ポリエステルポリオールであるタケラックU2410(三井武田ケミカル(株)製、OHV110mgKOH/g)1021.0質量部、微粉砕したスピログリコール335.14質量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール39.68質量部を予め、140℃の条件で加熱混合し、ポリオール化合物とした。予め、60℃に調整したコスモネートPH600.05質量部をイソシアネート化合物とし、イソシアネートインデックスが1.01となるように、各原料を二軸押出機に送液した以外は、実施例1記載と同様な方法でTPUを製造した。二軸押出機のバレル温度は、各ブロックを160〜240℃で設定し、ダイス部を210℃とした。ハードセグメントの含有量は、48.9質量%、硬度は98AのTPUが得られた。
【0080】
上記TPUのペレット70質量部と熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット(商品名:ハイトレル5557、硬度98A)30質量部とを実施例1と同形式の二軸押出機に装入し、次いで、該TPUと該熱可塑性ポリエステルエラストマーとからなる熱可塑性エラストマー100質量部に対して,0.1質量%のイソシアネート化合物(商品名:コスモネートLL(三井武田ケミカル(株)製)、NCO%29.1)を添加し、スクリュー回転数は250r.p.m.、バレルの最大温度を235℃に設定し、押出機内で混錬後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0081】
該熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を表1に示す。
【0082】
【比較例1】
984.21質量部のPTG−1000と114.95質量部の1,4−ブタンジオールとを80℃で加熱混合し、ポリオール化合物とした。予め、60℃に調整したコスモネートPH575.05質量部をイソシアネート化合物とし、イソシアネートインデックスが1.01となるように、各原料を二軸押出機に送液した以外は、実施例1記載と同様な方法でTPUを製造した。二軸押出機のバレル温度は、各ブロックを160〜210℃で設定し、ダイス部を200℃とした。ハードセグメントの含有量は、41.2質量%、硬度は92AのTPUが得られた。
【0083】
上記TPUのペレット70質量部と熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット(商品名:ハイトレル5557、硬度98A)30質量部とを実施例1と同形式の二軸押出機に装入し、スクリュー回転数は80r.p.m.、バレルの最大温度を230℃に設定し、押出機内で混錬後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0084】
該熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を表1に示す。
なお、島部を判定することはできなかった。
【0085】
【比較例2】
984.21質量部のPTG−1000と150.71質量部の1,6−ヘキサンジオールとを80℃で加熱混合し、ポリオール化合物とした。予め、60℃に調整したコスモネートPH575.05質量部をイソシアネート化合物とし、イソシアネートインデックスが1.01となるように、各原料を二軸押出機に送液した以外は、比較例1記載と同様な方法でTPUを製造した。ハードセグメントの含有量は、42.4質量%、硬度は87AのTPUが得られた。
【0086】
上記TPUのペレット70質量部と熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレット(商品名:ハイトレル5557、硬度98A)30質量部とを実施例1と同形式の二軸押出機に装入し、スクリュー回転数は80r.p.m.、バレルの最大温度を230℃に設定し、押出機内で混錬後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0087】
該熱可塑性エラストマー組成物の各種物性を表1に示す。
なお、島部を判定することはできなかった。
【0088】
【表1】
Figure 0004021176
【0089】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、特定範囲の溶融粘度と貯蔵弾性率を有し、かつ、本発明に係るTPUとその他の熱可塑性エラストマーを混合した時の分散状態が良好であるため、引張強度、圧縮永久歪、耐磨耗性の指標となるテーバー磨耗量において優れた特性を示す上、流動開始温度が低下し、溶融温度幅が向上している。
【0090】
さらには、成形材料の製造において重要な指標となる脱型性においても優れている。
一方、本発明の範囲外である鎖延長剤を使用したTPUを用いた熱可塑性エラストマー組成物(比較例1、2)は、他の熱可塑性エラストマーとの分散性が悪いため、前記した物性に劣る他、流動開始温度の向上、溶融温度幅が低下し、更には成形材料として重要な脱型性にも劣る。
【0091】
従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、TPUの優れた機械物性を保持しつつ、成形加工性に優れた熱可塑性エラストマー組成物であり、靴のソール、インソール、スキー靴、自動車外装部品、内装部品、電装部品、あるいはキャスター類、ホース、チューブ、シート、時計バンド、ベルト、ギヤー、不織布、繊維、糸等の幅広い分野において、使用し得る極めて有用な材料である。

Claims (6)

  1. (1)鎖延長剤としての芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールに由来する成分を含有し、イソシアネート化合物および鎖延長剤に由来する成分(ハードセグメント)を、イソシアネート化合物、鎖延長剤およびポリオールに由来する成分の合計量に対して35〜70質量%含み、23℃における硬度(JIS K-7311記載の方法による硬度)が85〜99Aである熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、
    (2)23℃における硬度(JIS K-7311記載の方法による硬度)が85〜99Aであって前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と異なる熱可塑性エラストマーと
    を含み、
    前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)とを混合する際、少なくとも2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度が1〜45%である化合物を、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)と前記熱可塑性エラストマー(2)との総質量に対して、0.01〜5質量%添加して得られる、
    210℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度が7×10〜1×104
    a・sであり、150℃における貯蔵弾性率が7×106〜2×108Paであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記熱可塑性エラストマー組成物が海島構造を有し、その島部の長軸方向の平均長が1nm〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(1)が50〜98質量部、前記熱可塑性エラストマー(2)が2〜50質量部(ただし、(1)と(2)の合計量は100質量部である)の割合で含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記鎖延長剤としての芳香環、複素環または脂環式環を有するジオールが、パラキシレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ヒドロキノン、2,2'−ビス(
    4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジオールからなる群から選ば
    れる少なくとも1種のジオールであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 前記熱可塑性エラストマー(2)が、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のエラストマーであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物から得られる成形材料。
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