JP4020266B2 - 変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ - Google Patents
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Description
水溶液中のL−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼの安定性を改善するために、種々の安定化剤を添加したり、酵素を化学修飾する方法がこれまでに行われてきた(特許文献1〜4)。しかし、これらの方法においては十分な安定性の向上がなされておらず、より安定なL−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼが必要とされていた。
即ち、本発明は微生物由来の野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ活性を有する蛋白質のアミノ酸配列において、少なくとも1ケのアミノ酸残基が欠失、置換、挿入されたアミノ酸配列を有し、かつL−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ活性を有する変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ、及び、この変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードするDNA断片、そのDNA断片を含有する発現ベクター、その発現ベクターにより形質転換された宿主細胞である。
変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼを得るためには、上記のようにして形質転換された宿主細胞を一般的な方法で培養し、例えば、エシェリヒア属に属するエシェリヒア.コリの場合は一般にエシェリヒア.コリを培養する培地、例えばLB培地にて、一般にエシェリヒア.コリを培養する方法、例えば25〜37℃において、好気的に培養し、目的とする酵素が最高力価となる培養時間、例えば8〜36時間にて、目的となる酵素を採取すればよい。
L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼの活性測定法
測定試薬
50mM PIPES−NaOH(pH6.5)
10mM D,L−α−グリセロフォスフェート(シグマ社製、米国)
0.03% 4−アミノアンチピリン
0.02% TOOS
0.1% Triton X−100
5U/ml パーオキシダーゼ(シグマ社製、米国)
(PIPES:Piperazine−1,4−bis(2−ethanesulfonic acid))
(TOOS:N−Ethyl−N−(2−hydroxy−3−sulfopropyl)−3−methylaniline,sodium salt,dihydrate 同仁化学研究所製、日本国)
酵素希釈液
50mM PIPES−NaOH(pH6.5)
0.1% Triton X−100
測定試薬1mlを試験管に入れ37℃で5分間予備加温した後、0.02mlの酵素液を加えて、37℃で5分間加温し、0.5%のSDSを2ml加えて反応を停止させ、波長555nmにおける吸光度(Aa)を測定する。また、試薬ブランクとして酵素液の代わりに0.02mlの酵素希釈液を加えたものの吸光度(Ab)も測定する。吸光度(Aa)が0.5以上になるときは酵素を酵素液を適宜、酵素希釈液で希釈して測定するものとする。酵素活性1単位はこの条件下で1分間に1μモルの過酸化水素を生成する酵素量とし、計算式は下記の通りである。
酵素活性(U/ml)=(Aa−Ab)x1.54x酵素の希釈倍率
野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードするDNAを含むプラスミドベクターpGPO101及び変異導入用ベクターpGPOmp18の構築
野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードするDNAを含むプラスミドベクターpGPO101の構築は図1に記載の流れに沿って構築した。すなわち、Streptococcus sp.GPOS−53株の野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードするDNAを含むプラスミドベクターpGPOS1をエシェリヒア.コリDH1・pGPOS1(FERM BP−2133、FERM BP−5729)からアルカリ−SDS法により抽出した後に制限酵素ClaIで完全切断してできた野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードする遺伝子を含む約2.3kbpのDNA断片と、プラスミドベクターpUC12を制限酵素PstIで切断したのちDNA Blunting Kit(宝酒造製、日本国)で末端平滑化してセルフライゲーションしてできたpUC12dPを制限酵素AccIで切断したものとをDNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製、日本国)を用いて連結することでpGPO100を得た。このpGPO100を制限酵素HindIIIで完全切断してできる野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードする遺伝子を含む約2.3kbpのDNA断片と、プラスミドベクターpUC118を制限酵素EcoRIとSphIとで切断してDNA Blunting Kit(宝酒造製、日本国)で末端平滑化してセルフライゲーションしてできたpUC118dESを制限酵素HindIIIで切断したものとをDNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製、日本国)を用いて連結することでプラスミドベクターpGPO101を得た。
尚、上記のプラスミドDNAの制限酵素切断反応はすべてDNA約0.2μg、制限酵素(宝酒造製)10U、反応液量20μl、反応液組成は制限酵素製造元推奨の組成すなわち、ClaI、AccI、HindIII、HincIIは10mMトリス−塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウム、1mMジチオスレイトール、50mM塩化ナトリウムで、PstI、EcoRI、SphIは50mMトリス−塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウム、1mMジチオスレイトール、100mM塩化ナトリウムで、37℃で90分反応させた。
変異型BをコードするDNAを含むプラスミドベクターpGPO101Bの構築とそれを含む形質転換体の作製
配列表配列番号3記載の変異型BのDNA配列は図3に示すようにpGPOmp18上の配列表配列番号2記載の野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼの391番目〜410番目のアミノ酸をコードしている塩基配列に変異を導入した後、pGPO101と組み換えることで作製する。
変異導入用の合成オリゴヌクレオチドは目的とする変異をコードする塩基配列の5’側に配列表配列番号2記載のDNA配列の1150番目〜1169番目の相補鎖の塩基に対して相補的になるような塩基を、3’側には配列表配列番号2記載のDNA配列の1230番目〜1250番目の相補鎖の塩基と相補的になるような塩基をつけた配列表配列番号4で表される合成オリゴヌクレオチドを用いた。この合成オリゴヌクレオチド10pmolをMEGALABEL(宝酒造製、日本国)をその使用説明書に従って用いて5’末端をリン酸化した。
つぎに、図3のようにこのpGPOmp18Bを制限酵素HincIIと制限酵素PstIで切断して得た約0.7kbpのフラグメントとpGPO101を制限酵素HincIIと制限酵素PstIで切断して得た約4.7kbpのフラグメントとをDNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造製、日本国)を用いて連結することで配列表配列番号3記載の変異型BをコードするDNAを含むプラスミドベクターpGPO101Bを得た。このpGPO101Bでエシェリヒア.コリDH1株をhanahan法(Molecular Cloning 第2版;J.Sambrookら;Cold Spring Harbor Laboratory Press発行)に従って形質転換し、その形質転換体を以下のように命名し、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した。なお、かっこ内は国際寄託機関の寄託番号を示す。
エシェリヒア.コリDH1・pGPO101B株(FERM BP−5730)
配列表配列番号2記載のアミノ酸配列のN末端から391番目〜410番目のアミノ酸配列が表1および表2にて示される配列表配列番号5〜13記載ののアミノ酸配列と置換された変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(変異型A、変異型C、変異型D、変異型E、変異型F、変異型G、変異型H、変異型I、変異型J)をコードするDNA断片を含むプラスミドベクター(pGPO101A、pGPO101C、pGPO101D、pGPO101E、pGPO101F、pGPO101G、pGPO101H、pGPO101I、pGPO101J)の構築とそれを含む形質転換体の作製。
変異型Bの製造方法
3.7%のBHI培地(Brain Heart Infusion、Difco社製、米国)を100ml含む500ml容三角フラスコ20ケを120℃、20分間加熱滅菌した後、濾過滅菌したアンピシリン液を終濃度50μg/mlになるように加え、エシェリヒア.コリDH1・pGPO101B株(FERM BP−5730)をコロニーより植菌し、撹拌させながら37℃で18時間培養し、培養力価0.25U/mlの培養液2lを得た。
得られた培養液を8000rpm、10分間遠心分離して、得られた菌体を50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)30mlを加えて懸濁して、超音波により菌体を破砕した。この菌体破砕液を15000rpm、60分間遠心分離し、37ml(酵素活性500U)の上清を得た。この上清を50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)で緩衝かしたDEAE Sepharose FF(ファルマシアバイオテク社製、スウェーデン国)100ml(2.6x20cm)のカラムに通し、0〜0.3MのNaClのリニアグラジエントで溶出を行い、酵素活性画分(480U)を得た。
この得られた酵素活性画分にNaCl濃度が4MとなるようにNaClを溶解し、50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)、4MのNaClで平衡化されたPhenyl Sepharose CL−4B(ファルマシアバイオテク社製、スウェーデン国)20ml(1.5x12cm)のカラムに通し、4〜0MのNaClのリニアグラジエントで溶出を行い活性画分(290U)を回収し、50mMのPIPES−NaOH(pH6.5)に対して透析した後、Centriflo Membrane Cones Type CF25(アミコン社製、米国)で濃縮し、酵素標品を得た。この標品はSDS−PAGEで均質であることが確認され、A280は10.1、280U/mlであった。
変異型A、変異型C、変異型D、変異型E、変異型F、変異型G、変異型H、変異型I、変異型Jの製造方法
3.7%のBHI培地(Brain Heart Infusion、Difco社製、米国)を100ml含む500ml容三角フラスコを120℃、20分間加熱滅菌した後、濾過滅菌したアンピシリン液を終濃度50μg/mlになるように加え、実施例2記載の各変異型酵素を生産する形質転換体をコロニーより植菌し、撹拌させながら37℃で18時間培養し、それぞれ培養液100mlを得た。
それぞれの変異型において、得られた培養液を8000rpm、10分間遠心分離して、得られた菌体を50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)7mlを加えて懸濁して、超音波により菌体を破砕した。この菌体破砕液を15000rpm、10分間遠心分離し、上清を得た。この上清を50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)で緩衝かしたDEAE Sepharose FF(ファルマシアバイオテク社製、スウェーデン国)20ml(1.5x12cm)のカラムに通し、0〜0.5MのNaClのリニアグラジエントで溶出を行い、酵素活性画分を得た。得られた精製酵素液のA280と活性(U/ml)と液量(ml)を表3に示した。
変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(変異型B)の液状安定性およびミカエリス定数の評価
野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(実施例3と同様の方法で精製された標品)と実施例3で得られた変異型Bの酵素標品を用いて下記のような保存条件で残存活性を測定し、液状安定性を評価した。
保存条件
50mM PIPES−NaOH(pH6.5)
0.05% アジ化ナトリウム
10U/ml L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ
37℃
図4で示されるようにに野生型(□−□)に比べ、変異型B(■−■)は安定性が向上していた。
また、野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(実施例3と同様の方法で精製された標品)と実施例3で得られた変異型Bの酵素標品を用いてL−α−グリセロフォスフェートに対するミカエリス定数を活性測定法と同様の測定法でL−α−グリセロフォスフェート濃度を変化させて測定したところ、以下のように野生型に比べ、変異型Bはミカエリス定数が低下し、酵素的性能が向上していた。
野生型 2.5mM
変異型B 0.5mM
変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(変異型B)の至適pH、至適温度
参考例1記載の活性測定法において50mMのPIPES−NaOH(pH6.5)の代わりに各pHの50mMのMES−NaOH(MES:2−Morpholinoethanesulfonic acid, monohydrate)、PIPES−NaOH、Tris−塩酸緩衝液を用いて変異型Bの至適pHを測定した。その結果を図5に示した。図中、○−○はMES−NaOH、●−●はPIPES−NaOH、□−□はTris−塩酸の場合を示す。
また、参考例1記載の活性測定法において50mMのPIPES−NaOH(pH6.5)の代わりに50mMのTris−塩酸(pH8.0)緩衝液を用いて変異型Bの至適温度を測定した。その結果を図6に示した。
変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(変異型A、変異型C、変異型D、変異型E、変異型F、変異型G、変異型H、変異型I、変異型J)の液状安定性およびミカエリス定数の評価
野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(実施例4において変異型と同様に精製された標品)と実施例4で得られた各変異型の酵素標品を用いて下記のような条件で熱処理を行い、前記活性測定法に沿って残存活性を測定し、液状安定性を評価した結果を上記表3に示した。
熱処理条件
50mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.5)
約0.5U/ml L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ
42℃ 10分間加温
野生型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ(実施例4で変異型と同様に精製された標品)と実施例4で得られた各変異型の酵素標品を用いて下記のような反応条件でD,L−α−グリセロフォスフェートの濃度を変化させ、D,L−α−グリセロフォスフェートに対するミカエリス定数を測定した結果を表4に示した。
反応液
20mM PIPES−NaOH(pH6.5)
0.06% 4AA
0.04% TOOS
5U/ml パーオキシダーゼ
酵素希釈液
50mM トリス−塩酸(pH8.5)
反応液0.5mlに0〜1000mMのD,L−α−グリセロフォスフェート溶液0.05ml加えて37℃で5分間予備加温した後、希釈酵素液を0.05ml加えて反応を開始し、5分後に0.5%SDSを1ml加えて反応を停止させ吸光度555nmを測定した。
Claims (7)
- 以下の1)かつ2)かつ3)を満たす蛋白工学的に改変された変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ。
1)配列表配列番号2記載のアミノ酸配列において、そのN末端から391番目〜410番目のアミノ酸配列(配列表配列番号1)が、(アルギニン−アルギニン−システイン−グリシン−グルタミン酸−プロリン)、(アルギニン−アルギニン−システイン−バリン−グルタミン酸−プロリン)または(アルギニン−アルギニン−システイン−ロイシン−グルタミン酸−プロリン)からなる群から選ばれるアミノ酸配列に対して、N末端側にアスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミンのいずれか1ケのアミノ酸を付加し、且つ、C末端側に2〜4ケのアミノ酸配列(但し、該C末端側に直接に付加する1ケのアミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのいずれか1ケのアミノ酸であり、この1ケのアミノ酸に続くアミノ酸が、グリシン、セリンまたはトレオニンのいずれか1ケのアミノ酸であり、これら2ケのアミノ酸に続くアミノ酸がリジン、アルギニン、イソロイシンまたはセリンのいずれか1ケのアミノ酸であり、これら3ケのアミノ酸に続くアミノ酸がアラニン、セリン、またはイソロイシンのいずれか1ケのアミノ酸である配列)が付加したアミノ酸配列]に置換されている
2)安定性が野生型に比し向上している
3)ミカエリス定数が野生型に比し5分の1以下に小さくなっている - 配列表配列番号2記載のアミノ酸配列において、そのN末端から391番目〜410番目のアミノ酸配列(配列表配列番号1)が、[(アスパラギン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−バリン−グルタミン酸−プロリン−フェニルアラニン−グリシン−アルギニン−セリン)、(グルタミン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−バリン−グルタミン酸−プロリン−フェニルアラニン−グリシン−リジン−アラニン)、(アスパラギン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−バリン−グルタミン酸−プロリン−フェニルアラニン−セリン−イソロイシン−セリン)、(アスパラギン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−バリン−グルタミン酸−プロリン−フェニルアラニン−トレオニン−セリン−イソロイシン−セリン)、(アスパラギン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−ロイシン−グルタミン酸−プロリン−フェニルアラニン−グリシン−リジン−アラニン)、(アスパラギン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−バリン−グルタミン酸−プロリン−トリプトファン−グリシン−アルギニン−セリン)または(アスパラギン酸−アルギニン−アルギニン−システイン−グリシン−グルタミン酸−プロリン−フェニルアラニン−グリシン−リジン−アラニン−アスパラギン酸−グルタミン酸−リジン−アラニン−プロリン−セリン−トレオニン−イソロイシン−セリン)からなる群から選ばれる1つのアミノ酸配列]に置換されている、蛋白工学的に改変された変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼ。
- 請求項1または請求項2記載の変異型L−α−グリセロフォスフェートオキシダーゼをコードするDNA断片。
- 請求項3記載のDNA断片を含有する発現ベクター。
- 請求項4記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞。
- エシャリヒア・コリである請求項5記載の宿主細胞。
- 請求項6記載の宿主細胞を培地で培養し、培養物から変異型L−α−グリセロフォスフ
ェートオキシダーゼを採取すること特徴とする変異型L−α−グリセロフォスフェートオ
キシダーゼの製造法。
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