JP4452988B2 - ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性を向上する方法、および、比活性の向上したピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素 - Google Patents

ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性を向上する方法、および、比活性の向上したピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素 Download PDF

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本発明は、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系における、野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性を向上させる方法に関する。
また本発明は、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、比活性が向上した改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素、その製造法、およびそれを用いたグルコースアッセイキットやグルコースセンサーに関する。
本発明の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素は、臨床検査や食品分析などにおけるグルコースの定量に有用である。
ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素は、ピロロキノリンキノン(以下、PQQとも記載)を補酵素とするグルコース脱水素酵素である(以下、PQQ−GDHとも記載)。グルコースを酸化してグルコノラクトンを生成する反応を触媒するから、血糖の測定に用いることができる。血中グルコース濃度は、糖尿病の重要なマーカーとして臨床診断上きわめて重要な指標である。現在、血中グルコース濃度の測定は、グルコースオキシダーゼを使用したバイオセンサーを用いる方法が主流となっているが、反応が溶存酸素濃度に影響されるから、測定値に誤差が生じる可能性があった。このグルコースオキシダーゼにかわる新たな酵素としてピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素が注目されている。我々のグループは、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii) NCIMB11517株が、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を産生することを見出し,遺伝子のクローニングならびに高発現系を構築した(たとえば、特許文献1を参照)。
特開平11−243949号公報
ところで、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素をバイオセンサーに用いる場合、そのストリップ上では、酵素は検体の血液により溶解されることになるが、血液は、水や他の一般的な試薬に用いられる溶媒と比較して、粘度が高く、溶解性が低いので、ストリップ上に添加する酵素量は、タンパク量として少ない方がより望ましい。そのため、単位タンパク質あたりの酵素活性、すなわち比活性、が向上したピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の取得が望まれていた。
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性を野生型と比較して向上させることを課題とするものである。
一般的な血糖モニターでは、フェリシアン化物イオンがメディエーターとして用いられている。本発明者らは、鋭意検討の結果、野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより、上記課題を達成することを見出した。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
項1.
野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより、野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、比活性を向上させる方法
項2.
欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸が活性中心近傍のアミノ酸である、項1に記載の方法
項3.
欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸が活性中心から半径10オングストローム以内に存在するアミノ酸である、項1に記載の方法。
項4.
野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素が、Acinetobacter属由来のものである、項1〜3のいずれか1項に記載の方法
項5.
Acinetobacter属由来PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、76位、143位、144位、163位、168位、169位、228位、229位、247位、248位、343位、346位、348位、377位、406位、408位、424位からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されている、項4に記載の方法
項6.
Acinetobacter属由来PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、168位及び169位からなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されている、項4に記載の方法
項7.
アミノ酸置換が、Q168A、(Q168A+L169G)、(Q168A+L169C)、(Q168A+L169P)、(Q168S+L169E)、(Q168S+L169P)、からなる群から選択される、項6に記載の方法
項8.
活性中心非近傍のアミノ酸置換を組合せた項2〜7のいずれか1項に記載の方法
項9.
245位のアミノ酸置換を組合せた項2〜7のいずれか1項に記載の方法
項10.
アミノ酸置換が、(Q168A+L169G+E245D)、(Q168A+L169P+E245D)からなる群から選択される、項9に記載の方法
項11.
項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において比活性が向上した、改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素
項12.
項11に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット
項13.
項11に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサー
項14.
項11に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を用いたグルコース測定法
項15.
項11に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素をコードする遺伝子。
項16.
項15に記載の遺伝子を含むベクター。
項17.
項16に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
項18.
項17に記載の形質転換体を培養することを特徴とする改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の製造法。
なお、これまでフェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、比活性が向上した改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素に関する報告はない。
本発明による改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素は、比活性向上により、それを用いたグルコースアッセイキットやグルコースセンサーへの酵素添加量の減量を可能にし、安価な製造を可能にする。
本発明の、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において比活性を向上させる方法は、野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素(本願明細書においてはPQQGDHとも呼称する。)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより達成されうる。改変のもとになる野生型のPQQGDHとは、ピロロキノリンキノンを補酵素として配位し、D−グルコースを酸化してD−グルコノ−1,5−ラクトンを生成するという反応を触媒する酵素であり、由来や構造に関しては特に限定するものではない。
改変のもとになる野生型のPQQGDHの起源として代表的なものが、いかに例示される微生物などである。具体的には、例えばアシネトバクター・カルコアセティカス、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・エルギノサ(Pseudomonasaeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、グルコノバクター・オキシダンス等の酸化細菌やアグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacteriumradiobacter)、エシェリヒア・コリ、クレブシーラ・エーロジーンズ(Klebsiella aerogenes)等の腸内細菌を挙げることができる。ただし、エシェリヒア・コリなどに存在する膜型酵素を改変して可溶型にすることは困難であり、起源としてはアシネトバクター属に属する微生物に由来するものを選択することが好ましい。より好ましくはアシネトバクター・カルコアセティカスもしくはアシネトバクター・バウマンニなどの可溶性PQQGDHを選択することが好ましい。
上記のAcinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列は、好ましくはAcinetobacter calcoaceticusまたはAcinetobacter baumannii由来PQQGDHのアミノ酸配列である。中でも好ましくは配列番号1である。配列番号1で示される野生型PQQGDHタンパク質及び配列番号2で示されるその塩基配列は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)NCIMB11517株を起源とするものであり、特開平11−243949号公報に開示されている。なお、上記および配列番号1において、アミノ酸の表記は、シグナル配列が除かれたアスパラギン酸を1として番号付けされている。
アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)NCIMB11517株は、以前、Acinetobacter calcoaceticusに分類されていた。
本発明における比活性とは、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする活性測定系における、単位重量の酵素分子あたりの活性であり、より詳しくは精製酵素1mgあたりの酵素活性の単位である。
本発明における活性中心とは、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素において、基質であるD−グルコースが結合して触媒作用を受ける部位を言い、D−グルコースが結合する基質結合部位及び酸化触媒反応が行われるピロロキノリンキノン結合部位からなる。
さらに本発明における野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素とは、自然界に存在するピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素いっぱんのことである。一方、改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素とは、野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素と比較して、そのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸に欠失、置換、挿入が見られるもののことである。
本発明における比活性の向上は、一般に、野生型に対して比活性の向上が10%以上のものを含む。好ましくは野生型に対して50%以上である。
フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、野生型PQQGDHよりも比活性が向上した本発明のPQQGDHとしては、例えば、活性中心近傍のアミノ酸を少なくとも1つ他のアミノ酸に置換することにより、野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において比活性が向上した改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素がある。
フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、野生型PQQGDHよりも比活性が向上した本発明のPQQGDHとして、さらに詳しくは活性中心から半径10オングストローム以内に存在するアミノ酸を、少なくとも1つ他のアミノ酸に置換したものであり、またそのアミノ酸が、Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、76位、143位、144位、163位、168位、169位、228位、229位、247位、248位、343位、346位、348位、377位、406位、408位、424位からなる群より選ばれるアミノ酸からなるものである。
また、本発明のPQQGDHとして、Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、168位、169位の少なくとも1つの位置においてアミノ酸置換を有する改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素が例示される。
本発明のPQQGDHをさらに詳細に例示するならば、Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、Q168A、(Q168A+L169G)、(Q168A+L169C)、(Q168A+L169P)、(Q168S+L169E)、(Q168S+L169P)、からなる群から選択されるアミノ酸置換を有するピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素である。
ここで、Q168Aとは、168位のQ(Gln)をA(Ala)に置換することを意味する。
なお、本発明のPQQGDHは、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する限り、好ましくは、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系における比活性に対して実質的な悪影響を及ぼさない限り、さらに他のアミノ酸残基の一部が欠失または置換されていてもよく、また他のアミノ酸残基が付加されていてもよい。
また、本発明のPQQGDHは、上記アミノ酸置換に、活性中心非近傍のアミノ酸置換を加えても、野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において比活性向上が維持されている改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素でもある。
詳しくは、245位のアミノ酸置換を組合せた改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素であり、さらに詳しくはアミノ酸置換が、(Q168A+L169G+E245D)、(Q168A+L169P+E245D)からなる群から選択されるアミノ酸置換を有するピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素である。
本発明の、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性を、野生型より向上させる方法は、当該酵素のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより、達成されうる。
本発明の方法において、欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸は、特に限定されないが、活性中心近傍のアミノ酸であることが望ましい。あるいは、欠失、置換もしくは付加されるアミノ酸は、活性中心から半径10オングストローム以内に存在するアミノ酸であることが望ましい。
また、本発明の方法において、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素が、Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、76位、143位、144位、163位、168位、169位、228位、229位、247位、248位、343位、346位、348位、377位、406位、408位、424位からなる群より選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていることが望ましい。
また、Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、168位及び169位からなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていることが望ましい。
さらに、Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、アミノ酸置換が、Q168A、(Q168A+L169G)、(Q168A+L169C)、(Q168A+L169P)、(Q168S+L169E)、(Q168S+L169P)、からなる群から選択されることが望ましい。
また、上記アミノ酸置換に、活性中心非近傍のアミノ酸置換を加えてもかまわず、その際Acinetobacter属由来PQQGDHのアミノ酸配列において、245位のアミノ酸であることが望ましく、さらに(Q168A+L169G+E245D)、(Q168A+L169P+E245D)からなる群から選択されることが望ましい。
ところで、本願出願時において、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus) LMD79.41株由来の酵素のX線結晶構造解析の結果が報告され、活性中心をはじめとした該酵素の高次構造が明らかとなっている(非特許文献1,2,3,4を参照。)。
J.Mol.Biol.,289,319−333(1999) PNAS,96(21),11787−11791(1999) The EMBO Journal,18(19),5187−5194(1999) Protein Science,9,1265−1273(2000)
その高次構造に関する知見を基に、該酵素の構造と機能の相関に関する研究が進められているが、まだ完全に明らかになったとは言えない。例えば、水溶性グルコース脱水素酵素の第6番目のW−モチーフ、のBストランドとCストランドを結ぶループ領域(W6BC)中のアミノ酸残基の構造遺伝子の特定の部位に変異を導入することによりグルコースに対する選択性を改良しうることが考察されている(例えば、特許文献2を参照。)しかしながら、効果が実証されているのは実施例に開示されているものだけである。
特開2001−197888
本願発明の成果をもとにこれらの高次構造に関する知見を見直してみると、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系における比活性の向上には、1つ以上の、活性中心近傍のアミノ酸残基の置換が関わっていると考えられる。
本願発明において活性中心近傍とは、PQQ、グルコース及び/またはPQQに配位するカルシウムイオンとの結合に関与するアミノ酸をさし、それ以外の領域を活性中心非近傍と呼称する。
また、本発明の改変型PQQGDHは、野生型酵素の活性型立体構造における活性中心から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものを含む。
また、本発明の改変型PQQGDHには実質的に、野生型酵素の活性型立体構造において基質から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものを含む。特に、基質がグルコースであるとき、野生型酵素の活性型立体構造において基質から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものが好ましい。
また、本発明の改変型PQQGDHには実質的に、野生型酵素の活性型立体構造において基質の1位の炭素に結合するOH基から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものを含む。特に、基質がグルコースであるとき、野生型酵素の活性型立体構造において基質から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものが好ましい。
また、本発明の改変型PQQGDHには実質的に、野生型酵素の活性型立体構造において基質の2位の炭素に結合するOH基から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものを含む。特に、基質がグルコースであるとき、野生型酵素の活性型立体構造において基質から半径10Å以内の範囲に位置するアミノ酸を変異することにより得られるものが好ましい。
なお、改変箇所が複数ある場合、トータルとしての改変型を野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において比活性が向上していれば、すべての改変箇所が活性中心近傍にある必要はない。
以上の教示にしたがって、当業者は、他の起源に由来する改変型PQQGDHについても、当該領域でアミノ酸残基を置換することにより、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において野生型のPQQGDHよりも比活性が向上したPQQGDHを得ることができる。
例えば、配列番号1のアミノ酸配列と、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)LMD79.41株由来酵素のアミノ酸配列を比較すると、相違箇所はわずかで、相同性は92.3%(シグナル配列含む)となり、非常に類似しているので、配列番号1におけるある残基が、他起源の酵素のどのアミノ酸残基に該当するかを容易に認識することができる。そして、本発明にしたがって、そのような1またはそれ以上の箇所においてアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で欠失、置換あるいは挿入等することにより、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において野生型のPQQGDHよりも比活性が向上したPQQGDHを得ることができる。これらの改変型PQQGDHも本発明の範囲内に含まれる。
本発明は、上記の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素をコードする遺伝子である。
本発明の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の製造方法は、特に限定されないが、以下に示すような手順で製造することが可能である。タンパク質を構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(TransformerMutagenesis Kit;Clonetech製,EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
作製された改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAは、プラスミドと連結された状態にて宿主微生物中に移入され、改変タンパク質を生産する形質転換体となる。この際のプラスミドとしては、例えば、エシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合にはpBluescript,pUC18などが使用できる。宿主微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリー W3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどが利用できる。宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109;東洋紡績製)を用いても良い。
このような遺伝子はこれらの菌株より抽出してもよく、また化学的に合成することもできる。さらに、PCR法の利用により、PQQGDH遺伝子を含むDNA断片を得ることも可能である。
本発明において、PQQGDHをコードする遺伝子を得る方法としては、次のような方法が挙げられる。例えばアシネトバクター・カルコアセティカスNCIB11517 の染色体を分離、精製した後、超音波処理、制限酵素処理等を用いてDNAを切断したものと、リニアーな発現ベクターと両DNAの平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーと酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、PQQを補欠分子族とするGDHをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する微生物を得る。
次いで、上記組換えベクターを保持する微生物を培養して、該培養微生物の菌体から該組換えベクターを分離、精製し、該発現ベクターからGDHをコードする遺伝子を採取することができる。例えば、遺伝子供与体であるアシネトバクター・カルコアセティカスNCIB11517 の染色体DNAは、具体的には以下のようにして採取される。
該遺伝子供与微生物を例えば1〜3日間攪拌培養して得られた培養液を遠心分離により集菌し、次いで、これを溶菌させることによりPQQを補欠分子族とするGDH遺伝子の含有溶菌物を調製することができる。溶菌の方法としては、例えばリゾチーム等の溶菌酵素により処理が施され、必要に応じてプロテアーゼや他の酵素やラウリル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤が併用される。さらに、凍結融解やフレンチプレス処理のような物理的破砕方法と組み合わせてもよい。
上記のようにして得られた溶菌物からDNAを分離精製するには、常法に従って、例えばフェノール処理やプロテアーゼ処理による除蛋白処理や、リボヌクレアーゼ処理、アルコール沈殿処理などの方法を適宜組み合わせることにより行うことができる。
微生物から分離、精製されたDNAを切断する方法は、例えば超音波処理、制限酵素処理などにより行うことができる。好ましくは特定のヌクレオチド配列に作用するII型制限酵素が適している。
クローニングする際のベクターとしては、宿主微生物内で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。ファージとしては、例えばエシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合にはLambda gt10 、Lambda gt11 などが例示される。また、プラスミドとしては、例えば、エシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合には、pBR322、pUC19 、pBluescript などが例示される。
クローニングの際、上記のようなベクターを、上述したGDHをコードする遺伝子供与体である微生物DNAの切断に使用した制限酵素で切断してベクター断片を得ることができるが、必ずしも該微生物DNAの切断に使用した制限酵素と同一の制限酵素を用いる必要はない。微生物DNA断片とベクターDNA断片とを結合させる方法は、公知のDNAリガーゼを用いる方法であればよく、例えば微生物DNA断片の付着末端とベクター断片の付着末端とのアニーリングの後、適当なDNAリガーゼの使用により微生物DNA断片とベクターDNA断片との組換えベクターを作成する。必要に応じて、アニーリングの後、宿主微生物に移入して生体内のDNAリガーゼを利用し組換えベクターを作製することもできる。
クローニングに使用する宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自律増殖可能で外来性遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。一般的には、エシェリヒア・コリW3110 、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101 、エシェリヒア・コリJM109 、エシェリヒア・コリDH5 αなどを用いることができる。
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア・コリの場合には、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポーレーション法などを用いることができる。
上記のように得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量のGDHを安定に生産し得る。宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカーとPQQの添加によりGDH活性を同時に発現する微生物を検索すればよい。例えば、薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつGDHを生成する微生物を選択すればよい。
上記の方法により得られたPQQを補欠分子族とするGDH遺伝子の塩基配列は、Science ,第214巻,1205(1981)に記載されたジデオキシ法により解読した。また、GDHのアミノ酸配列は上記のように決定された塩基配列より推定した。
上記のようにして、一度選択されたPQQを補欠分子族とするGDH遺伝子を保有する組換えベクターより、PQQ生産能を有する微生物にて複製できる組換えベクターへの移入は、GDH遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法によりGDH遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。また、これらのベクターによるPQQ生産能を有する微生物の形質転換は、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポーレーション法などを用いることができる。
PQQ生産能を有する微生物としては、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属等のメタノール資化性細菌、アセトバクター(Acetobacter )属やグルコノバクター(Gluconobacter )属の酢酸菌、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、シュードモナス属、アシネトバクター属等の細菌を挙げることができる。なかでも、シュードモナス属細菌とアシネトバクター属細菌が利用できる宿主−ベクター系が確立されており利用しやすいので好ましい。
シュードモナス属細菌では、シュードモナス・エルギノサ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・プチダなどを用いることができる。また、アシネトバクター属細菌ではアシネトバクター・カルコアセティカス、アシネトバクター・バウマンニ等を用いることができる。
上記微生物にて複製できる組換えベクターとしては、RSF1010 由来のベクターもしくはとその類似のレプリコンを有するベクターがシュードモナス属細菌に利用可能である。例えば、pKT240、pMMB24等(M.M.Bagdasarian ら,Gene,26,273(1983))、pCN40 、pCN60 等(C.C.Nieto ら,Gene,87,145(1990))やpTS1137 等を挙げることができる。また、pME290等(Y.Itohら、Gene,36,27(1985))、pNI111、pNI20C(N.Itohら,J.Biochem.,110,614(1991))も利用できる。
アシネトバクター属細菌では、pWM43 等(W.Minas ら,Appl.Environ.Microbiol. ,59,2807(1993))、pKT230、pWH1266 等(M.Hungerら,Gene,87,45(1990))がベクターとして利用可能である。
こうして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の改変タンパク質を安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、多くの場合は液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
培養温度は菌が成育し、改変型PQQGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、上記のようなPQQ生産能を有する微生物の場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、改変型PQQGDHが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは菌が発育し、改変型PQQGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
培養物中の改変型PQQGDHを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、改変型PQQGDHが培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、改変型PQQGDH含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。改変型PQQGDHが菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してGDHを可溶化し、水溶液として分離採取する。
上記のようにして得られたGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたGDHを得ることができる。
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(ファルマシアバイオテク)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B (ファルマシアバイオテク)、オクチルセファロースCL−6B (ファルマシアバイオテク)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
上記のようにして得られた精製酵素を、例えば凍結乾燥、真空乾燥やスプレードライなどにより粉末化して流通させることが可能である。その際、精製酵素はリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液やGOODの緩衝液に溶解しているものを用いることができる。好適なものはGOODの緩衝液であり、なかでも、PIPES、MESもしくはMOPS緩衝液が特に好ましい。また、カルシウムイオンまたはその塩、およびグルタミン酸、グルタミン、リジン等のアミノ酸類、さらに血清アルブミン等を添加することによりGDHをより安定化することができる。
改変タンパク質は、液状(水溶液、懸濁液等)、粉末、凍結乾燥など種々の形態をとることができる。凍結乾燥法としては、特に制限されるものではなく常法に従って行えばよい。本発明の酵素を含む組成物は凍結乾燥物に限られず、凍結乾燥物を再溶解した溶液状態であってもよい。また、グルコース測定を行なう際には、グルコースアッセイキット、グルコースセンサーなどの種々の形態をとることができる。この様にして得られた精製された改変タンパク質は、以下のような方法により安定化することができる。
塩化カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウムなどのカルシウム塩、或いはグルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、リジンなどのアミノ酸、或いはα−ケトグルタル酸、α−ケトグルコン酸、リンゴ酸などの有機酸、或いは血清アルブミンを単独で、または組み合わせて含有させることにより、改変タンパク質をさらに安定化することができる。
あるいは、(1)アスパラギン酸、グルタミン酸、α−ケトグルタル酸、リンゴ酸、α−ケトグルコン酸、α−サイクロデキストリンおよびそれらの塩からなる群から選ばれた1種または2種以上の化合物および(2)アルブミンを共存せしめることにより、改変タンパク質をさらに安定化することができる。
凍結乾燥組成物中においては、PQQGDH含有量は、酵素の起源によっても異なるが、通常は約5〜50%(重量比)の範囲で好適に用いられる。
アスパラギン酸、グルタミン酸、αーケトグルタル酸、リンゴ酸、及びαーケトグルコン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウム等の塩が挙げられるが特に限定されるものではない。上記化合物とその塩及びα−シクロデキストリンの添加量は、1〜90%(重量比)の範囲で添加することが好ましい。これらの物質は単独で用いてもよいし、複数組み合わせてもよい。
含有される緩衝液としては特に限定されるものではないが、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、GOOD緩衝液などが挙げられる。該緩衝液のpHは5.0〜9.0程度の範囲で使用目的に応じて調整される。凍結乾燥物中においては緩衝剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1%(重量比)以上、特に好ましくは0.1〜30%(重量比)の範囲で使用される。
使用できるアルブミンとしては、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)などが挙げられる。特にBSAが好ましい。該アルブミンの含有量は、好ましくは1〜80%(重量比)、より好ましくは5〜70%(重量比)の範囲で使用される。
組成物には、さらに他の安定化剤などをPQQGDHの反応に特に悪い影響を及ぼさないような範囲で添加してもよい。本発明の安定化剤の配合法は特に制限されるものではない。例えばPQQGDHを含む緩衝液に安定化剤を配合する方法、安定化剤を含む緩衝液にPQQGDHを配合する方法、あるいはPQQGDHと安定化剤を緩衝液に同時に配合する方法などが挙げられる。
また、カルシウムイオンを添加しても安定化効果が得られる。すなわち、カルシウムイオンまたはカルシウム塩を含有させることにより、改変タンパク質を安定化させることができる。カルシウム塩としては、塩化カルシウムまたは酢酸カルシウムもしくはクエン酸カルシウム等の無機酸または有機酸のカルシウム塩などが例示される。また、水性組成物において、カルシウムイオンの含有量は、1×10−4〜1×10−2Mであることが好ましい。
カルシウムイオンまたはカルシウム塩を含有させることによる安定化効果は、グルタミン酸、グルタミンおよびリジンからなる群から選択されたアミノ酸を含有させることにより、さらに向上する。
グルタミン酸、グルタミンおよびリジンからなる群から選択されるアミノ酸は、1種または2種以上であってもよい。前記の水性組成物において、グルタミン酸、グルタミンおよびリジンからなる群から選択されたアミノ酸の含有量は、0.01〜0.2重量%であることが好ましい。
さらに血清アルブミンを含有させてもよい。前記の水性組成物に血清アルブミンを添加する場合、その含有量は0.05〜0.5重量%であることが好ましい。
緩衝剤としては、通常のものが使用され、通常、組成物のpHを5〜10とするものが好ましい。具体的にはトリス塩酸、ホウ酸、グッド緩衝液が用いられるが、カルシウムと不溶性の塩を形成しない緩衝液はすべて使用できる。
前記の水性組成物には、必要により他の成分、例えば界面活性剤、安定化剤、賦形剤などを添加しても良い。
本発明においては以下の種々の方法によりグルコースを測定することができる。
グルコースアッセイキット
本発明はまた、本発明に従う改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキットを特徴とする。本発明のグルコースアッセイキットは、本発明に従うグルコース脱水素酵素を少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明のグルコース脱水素酵素に加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従うグルコース脱水素酵素は種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。好ましくは本発明の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素はホロ化した形態で提供されるが、アポ酵素の形態で提供し、使用時にホロ化することもできる。
グルコースセンサー
本発明はまた、本発明に従う改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を用いるグルコースセンサーを特徴とする。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。好ましくは本発明のグルコース脱水素酵素はホロ化した形態で電極上に固定化するが、アポ酵素の形態で固定化し、ピロロキノリンキノンを別の層としてまたは溶液中で提供することもできる。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のグルコース脱水素酵素をカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
グルコース濃度の測定は、以下のようにして行うことができる。恒温セルに緩衝液を入れ、PQQおよび配位金属、およびメディエーターを加えて一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として本発明のグルコース脱水素酵素を固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素をバイオセンサーに用いる場合、そのストリップ上では、酵素は検体の血液により溶解されることになるが、血液は、水や他の一般的な試薬に用いられる溶媒と比較して、粘度が高く、溶解性が低いので、ストリップ上に添加する酵素量は、タンパク量として少ない方がより望ましい。
本願発明の方法によれば、本願発明のピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性は1より大きい酵素が得られる。好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上のものが得られる。
比活性が高いと、タンパク質としての添加量が少なくて済むため、本願発明のグルコースセンサーは、既述の安定化剤等の添加量の上限制約が低減され、より高い安定性を確保できる可能性を高められる。
[実施例1]
以下、配列番号1に記載されるピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素において、Q168A、(Q168A+L169G)、(Q168A+L169C)、(Q168A+L169P)、(Q168S+L169E)、(Q168S+L169P)の各改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を用いて、本発明を具体的に説明する。言うまでもなく、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例で使用したQ168A、(Q168A+L169G)、(Q168A+L169C)、(Q168A+L169P)、(Q168S+L169E)、(Q168S+L169P)各改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の精製酵素標品は、以下に記載の手順で取得した。
PQQ依存性グルコース脱水素酵素遺伝子の発現プラスミドの構築
野生型PQQ依存性グルコース脱水素酵素の発現プラスミドpNPG5は、ベクターpBluescript SK(−)のマルチクローニング部位にアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii) NCIMB11517株由来のPQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする構造遺伝子を挿入したものである。その塩基配列を配列表の配列番号2に、また該塩基配列から推定されるPQQ依存性グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素の作製
野生型PQQ依存性グルコース脱水素酵素遺伝子を含む組換えプラスミドpNPG5と配列番号3記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、QuickChange(TM)Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、そのプロトコールに従って変異処理操作を行い、更に塩基配列を決定して、配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがアラニンに置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168A)を取得した。
pNPG5と配列番号4記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、上記方法と同様にして配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがアラニンに、169番目のロイシンがグリシンに置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168A+169G)を取得した。
pNPG5と配列番号5記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、上記方法と同様にして配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがアラニンに、169番目のロイシンがシステインに置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168A+169C)を取得した。
pNPG5と配列番号6記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、上記方法と同様にして配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがアラニンに、169番目のロイシンがプロリンに置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168A+169P)を取得した。
pNPG5と配列番号7記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、上記方法と同様にして配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがセリンに、169番目のロイシンがグルタミン酸に置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168S+169E)を取得した。
pNPG5と配列番号8記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、上記方法と同様にして配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがセリンに、169番目のロイシンがプロリンに置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168S+169P)を取得した。
pNPG5M168A、pNPG5M168A+169G、pNPG5M168A+169C、pNPG5M168A+169P、pNPG5M168S+169E、pNPG5M168S+169Pの各組換えプラスミドで大腸菌コンピテントセル(エシェリヒア・コリーJM109;東洋紡績製)を形質転換し、該形質転換体をそれぞれ取得した。
シュードモナス属細菌で複製できる発現ベクターの構築
組換えプラスミドpNPG5M168AのDNA5μgを制限酵素BamHIおよびXHoI(東洋紡績製)で切断して、変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素の構造遺伝子部分を単離した。単離したDNAとBamHIおよびXHoIで切断したpTM33(1μg)とをT4DNAリガーゼ1単位で16℃、16時間反応させ、DNAを連結した。連結したDNAはエシェリヒア・コリDH5αのコンピテントセルを用いて形質転換を行った。得られた発現プラスミドをpNPG6M168Aと命名した。
pNPG5M168A+169G、pNPG5M168A+169C、pNPG5M168A+169P、pNPG5M168S+169E、pNPG5M168S+169Pの各組換えプラスミドについても上記方法と同様にして発現プラスミドを取得した。得られた発現プラスミドそれぞれpNPG6M168A+169G、pNPG6M168A+169C、pNPG6M168A+169P、pNPG6M168S+169E、pNPG6M168S+169Pと命名した。
シュードモナス属細菌の形質転換体の作製
シュードモナス・プチダTE3493(微工研寄12298号)をLBG培地(LB培地+0.3%グリセロール)で30℃、16時間培養し、遠心分離(12,000rpm、10分間)により菌体を回収し、この菌体に氷冷した300mMシュークロースを含む5mMK−リン酸緩衝液(pH7.0)8mlを加え、菌体を懸濁した。再度遠心分離(12,000rpm、10分間)により菌体を回収し、この菌体に氷冷した300mMシュークロースを含む5mMK−リン酸緩衝液(pH7.0)0.4mlを加え、菌体を懸濁した。
該懸濁液に発現プラスミドpNPG6M168Aを0.5μg加え、エレクトロポレーション法により形質転換した。100μg/mlのストレプトマイシンを含むLB寒天培地に生育したコロニーより、目的とする形質転換体を得た。
pNPG6M168A+169G、pNPG6M168A+169C、pNPG6M168A+169P、pNPG6M168S+169E、pNPG6M168S+169Pについても、それぞれ同様に実施し、目的とする形質転換体を得た。
ホロ型発現精製酵素の調製方法
500mlのTerrific brothを2L容坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌濾過したストレプトマイシンを100μg/mlになるように添加した。この培地に100μg/mlのストレプトマイシンを含むPY培地で予め30℃、24時間培養したシュードモナス・プチダTE3493(pNPG6M168A)の培養液を5ml接種し、30℃で40時間通気攪拌培養した。菌体を遠心分離により集菌し、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁した後、超音波処理により破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液をHiTrap−SP(アマシャム−ファルマシア)イオン交換カラムクロマトグラフィーにより分離・精製した。次いで10mM PIPES−NaOH緩衝液(pH6.5)で透析した後に終濃度が1mMになるように塩化カルシウムを添加した。最後にHiTrap−DEAE(アマシャム−ファルマシア)イオン交換カラムクロマトグラフィーにより分離・精製し、精製酵素標品を得た。本方法により得られた標品は、SDS−PAGE的にほぼ単一なバンドを示した。
pNPG6M168A+169G、pNPG6M168A+169C、pNPG6M168A+169P、pNPG6M168S+169E、pNPG6M168S+169Pによるシュードモナス・プチダTE3493形質転換体についても上記方法と同様にして精製酵素標品を取得した。
このようにして取得した精製酵素を用いて性能を評価した。
フェリシアン化物イオンをメディエーターとするピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素活性の測定方法
・ 測定原理
D−グルコース+フェリシアン化物イオン+PQQGDH→
D−グルコノ−1,5−ラクトン + フェロシアン化物イオン
フェリシアン化物イオンの還元により生じたフェロシアン化物イオンの存在は、分光光度法により波長420nmでの吸光度の減少を測定することで確認した。
・ 単位の定義
1単位は、以下に記載の条件下で1分当たり1ミリモルのD−グルコースを酸化させるピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の酵素量をいう。
(3)方法
試薬
A.D−グルコース溶液:1M(1.8g D−グルコース(分子量180.16)/10mlH2O)
B.PIPES−NaOH緩衝液, pH6.5:50mM(60mLの水中に懸濁した1.51gのPIPES(分子量302.36)を、5N NaOHに溶解し、2.2mlの10% Triton X−100を加える。5N NaOHを用いて25℃でpHを6.5±0.05に調整し、水を加えて100mlとした。)
C.フェリシアン化カリウム溶液:50mM(0.165g フェリシアン化カリウム(分子量329.25)/ 10ml H2O)
D.蒸留水
E.酵素希釈液:1mM CaCl, 0.1% Triton X−100, 0.1% BSAを含む50mM PIPES−NaOH緩衝液(pH6.5)

手順
1.遮光ビンに以下の反応混合物を調製し、氷上で貯蔵した(用事調製)
0.9ml D−グルコース溶液 (A)
25.5ml PIPES−NaOH緩衝液(pH6.5) (B)
2.0ml フェリシアン化カリウム溶液 (C)
1.0ml 蒸留水 (D)
反応混合物中の濃度を表1に示す。
Figure 0004452988
2.3.0mlの反応混合液を試験管(プラスチック製)に入れ、37℃で5分間予備加温した。
3.0.1mlの酵素溶液を加え、穏やかに混合した。
4.420nmでの水に対する吸光度の減少を37℃に維持しながら分光光度計で4〜5分間記録し、曲線の初期直線部分からの1分間当たりのΔODを計算した(ODテスト)
同時に、酵素溶液に代えて酵素希釈液(E)加えることを除いては同一の方法を繰り返し、ブランク(ΔODブランク)を測定した。
酵素溶液は、アッセイの直前に氷冷した酵素希釈液(E)で1.0U/ml程度に希釈した(該酵素の接着性のためにプラスチックチューブの使用が好ましい)
計算
活性を以下の式を用いて計算する:
体積活性(U/ml)={ΔOD/min(ΔODテスト− ΔODブランク)×Vt×df}/(1.04×1.0×Vs)
重量活性(U/mg)=(U/ml)×1/C
Vt:総体積(3.1ml)
Vs:サンプル体積(0.1ml)
1.04:フェリシアン化カリウムのミリモル分子吸光係数
1.0:光路長(cm)
df:希釈係数
C:溶液中の酵素濃度(c mg/ml)
比活性の測定
単位液量あたりのタンパク含量をBradford法を原理とするプロテインアッセイにより測定した。実際にはBiorad社製のプロテインアッセイキットを用い、そのプロトコールに従った。5倍希釈した市販の染色液5mlに0.1mlの酵素溶液を添加し、混和後、室温にて30分放置した後、595nmの波長にて吸光度を測定した。この際、濃度既知のウシ血清アルブミンを同様に測定することで検量線を作成し、それより各酵素溶液の単位液量あたりのタンパク含量を測定した。
一方、上記活性測定法により単位液量あたりの活性値を測定し、単位液量あたりの活性値を単位液量あたりのタンパク含量で割ることで、ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の比活性を求めた。
結果を表2に示す。
Figure 0004452988
比活性測定の結果、フェリシアン化物イオンをメディエーターとして酵素活性を測定した場合、いずれの改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素においても、野生型と比較して、比活性の増大を確認することが出来た。
野生型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換もしくは付加することにより、比活性が増大する理由としては、次のような推論が可能である。
ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の詳細な反応メカニズムは、基質であるD−グルコースが酸化されて、電子が酵素に配位しているピロロキノリンキノンに伝達し、さらにメディエーターであるフェリシアン化物イオンに伝達するというものである。そして、酵素反応の律速となるポイントは、ピロロキノリンキノンからフェリシアン化物イオンへの反応性が低いことから、メディエーターであるフェリシアン化物イオンに電子が伝達される過程にあると考えられる。
例えば、活性中心近傍のアミノ酸を変異した場合を考えると、活性中心を含む活性中心近傍の酵素の立体構造が変化し、フェリシアン化物イオンが進入しやすくなるため、酵素反応の律速となっていたフェリシアン化物イオンへの電子伝達がスムーズになり、その結果、比活性が向上したと考えられる。
すなわち、活性中心近傍のアミノ酸を1つあるいはそれ以上置換変異させることにより、同様にフェリシアン化物イオンをメディエーターとする酵素活性測定において比活性の向上が望めると推察する。あるいは別の見方では、本発明において、変異は活性中心から半径10オングストローム以内に存在するアミノ酸に対して行なわれることが望ましい。
活性中心近傍のアミノ酸としては、76位、143位、144位、163位、168位、169位、228位、229位、247位、248位、343位、346位、348位、377位、406位、408位、424位に位置するアミノ酸が具体的に挙げられる(たとえば、非特許文献5を参照)。
Protein Science(2000),9:1265−1273
[実施例2]
また、実施例1で確認された比活性向上効果は、活性中心非近傍のアミノ酸置換を加えても維持されていることを、(Q168A+L169G+E245D)、(Q168A+L169P+E245D)の各改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を用いて、具体的に説明する。言うまでもなく、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例で使用した(Q168A+L169G+E245D)、(Q168A+L169P+E245D)各改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の精製酵素標品取得及び性能評価は、実施例1と同様に実施した。pNPG5M168A+169Gと配列番号9記載の合成オリゴヌクレオチド及びこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがアラニンに、169番目のロイシンがグリシンに、さらに245番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168A+169G+E245D)を、同様にpNPG5M168A+169Pより配列番号2記載のアミノ酸配列の168番目のグルタミンがアラニンに、169番目のロイシンがプロリンに、さらに245番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換された変異型PQQ依存性グルコース脱水素酵素をコードする組換えプラスミド(pNPG5M168A+169P+E245D)を作成した。これら組換えプラスミドを実施例1と同様に処理することにより、発現ベクターの構築、シュードモナス属細菌の形質転換体の作製、ホロ型発現精製酵素の調製、さらに性能評価を実施した。結果を表3に示す。
Figure 0004452988
実施例2の結果より、活性中心非近傍に導入したアミノ酸置換は、活性中心近傍に導入したアミノ酸置換変異による比活性向上効果を妨げるものではないことが確認された。
本発明の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素は、比活性向上により、測定系への酵素添加量の減量を可能にすることから、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする、グルコースアッセイキットやグルコースセンサーの安価な製造を可能にする。臨床検査や食品分析など幅広い用途分野に利用することが出来、産業界に寄与することが大である。

Claims (9)

  1. 配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型のピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素において、168位のグルタミン(Q)をセリン(S)に、169位のロイシン(L)をプロリン(P)に、それぞれ置換することにより、野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において、比活性を向上させる方法。
  2. 請求項に記載の方法により、野生型と比較して、フェリシアン化物イオンをメディエーターとする測定系において比活性が向上した、改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素
  3. 請求項に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素をコードする、配列番号2の塩基配列を有するDNAがコードするタンパク質の168位のグルタミン(Q)に該当するコドンをセリン(S)に該当するコドンに、169位のロイシン(L)に該当するコドンをプロリン(P)に該当するコドンに、それぞれ置換した、改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素をコードする遺伝子。
  4. 請求項に記載の遺伝子を含むベクター。
  5. 請求項に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
  6. 請求項に記載の形質転換体を培養することを特徴とする改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素の製造法。
  7. 請求項に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
  8. 請求項に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサー。
  9. 請求項に記載の改変型ピロロキノリンキノン依存性グルコース脱水素酵素を含むグルコース測定法。
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