JP4019250B2 - フォトセンサシステム及びフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステム及びそのフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷物や写真、あるいは、指紋等の微細な凹凸の形状等を読み取る画像読取装置として、光電変換素子(フォトセンサ)をライン状あるいはマトリクス状に配列して構成されるフォトセンサアレイを有する構造のものがある。このようなフォトセンサアレイとしては、一般に、CCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像デバイスが用いられている。
【0003】
CCDは、周知の通り、フォトダイオードや薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等のフォトセンサを複数配列した構成を有し、各フォトセンサの受光部に照射された光量に対応して発生する電子−正孔対の電荷量を、水平走査回路及び垂直走査回路により検出し、照射光の輝度を検知している。
このようなCCDを用いたフォトセンサシステムにおいては、走査された各フォトセンサを選択状態にするための選択トランジスタを個別に設ける必要があるため、フォトセンサアレイを構成する画素数を増加させると、それにしたがってシステム自体が大型化してしまうという問題を有していた。
【0004】
そこで、近年、このような問題を解決するための構成として、フォトセンサ自体にフォトセンス機能と選択トランジスタ機能とを持たせた、いわゆる、ダブルゲート構造を有する薄膜トランジスタ(以下、「ダブルゲート型フォトセンサ」という)をフォトセンサシステムに適用して、システムの小型化、及び、画素の高密度化を図る試みがなされている。
このようなフォトセンサシステムは、概略、ガラス基板等の一面側にトップゲート電極及びボトムゲート電極を備えたダブルゲート型フォトセンサをマトリクス状に形成して、フォトセンサアレイを構成し、例えば、ガラス基板の背面側に設けられた光源から照射光を照射して、ガラス基板の一面側(フォトセンサアレイの上方)に載置された被写体の2次元画像の画像パターン(例えば、指の指紋パターン等)に応じた反射光を、ダブルゲート型フォトセンサにより明暗情報として検出し、上記2次元画像を読み取るものである。
【0005】
ここで、フォトセンサアレイによる画像読取動作は、各行ごとのダブルゲート型フォトセンサへのリセットパルスの印加による初期化終了時から読み出しパルスが印加されるまでの電荷蓄積期間において、各ダブルゲート型フォトセンサ毎に蓄積されるキャリヤ(正孔)の蓄積量に対応する出力電圧(ドレイン電圧)を読み出すことにより、明暗情報を検出する一連の動作ステップ(リセット動作→電荷蓄積動作→プリチャージ動作→読み出し動作)により被写体画像の読み取りが行われる。なお、このような一連の動作ステップは、上述したダブルゲート型フォトセンサを適用した場合に限らず、周知のフォトダイオードやフォトトランジスタ等をフォトセンサとして用いたフォトセンサシステムにおいても、同様の動作ステップが実行される。また、上述したダブルゲート型フォトセンサ、及び、フォトセンサアレイの具体的な構成及び動作については、後述する発明の実施の形態において詳しく説明する。
【0006】
ところで、上述したようなダブルゲート型フォトセンサのように、入射光による電荷が電荷蓄積期間、蓄積され、該電荷量に基づいて被写体画像の明暗情報を検出するフォトセンサにおいては、被写体が暗く、蓄積される電荷が少ない場合、十分な検出感度を得るために電荷蓄積期間を長く設定(すなわち、画像読取感度を高く設定)することが必要となり、一方、被写体が明るく、蓄積される電荷が多い場合には、電荷が飽和しないようにするために電荷蓄積期間を短く設定(すなわち、画像読取感度を低く設定)することが必要になる。すなわち、被写体画像を適切な感度で良好に読み取るためには、被写体の明るさに応じてフォトセンサの電荷蓄積期間(画像読取感度)を適切に設定する必要がある。
【0007】
したがって、フォトセンサシステムを使用する場所や被写体が種々変化するような場合には、外光照度等の周囲環境の変化や被写体の状態によって被写体の明るさがその都度変化するため、このようなフォトセンサにより被写体の画像を良好に読み込むためには、正規の被写体画像の読取動作とは別個に、画像読取感度を調整、設定するための画像読取動作(以下、便宜的に「感度調整用読取動作」という)を行ない、その結果から最適な感度を設定する必要がある。
【0008】
この感度調整用読取動作としては、例えば、フォトセンサがマトリクス状に配列されたフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムにおいて、各行ごとのフォトセンサに対して画像読取感度(電荷蓄積時間)が順次変化するように設定して、フォトセンサアレイに対応する1画面分の画像読取動作により所定の調整用画像(正規の被写体画像であってもよい)を複数の画像読取感度で読み取るようにする。
【0009】
具体的には、図18に示すように、マトリクス(フォトセンサアレイ)を構成する各行に対して一括して同時にリセット動作を実行して電荷蓄積動作を開始した後、各行ごとのプリチャージ動作及び読み出し動作のタイミングを所定の時間間隔で変化させることにより、電荷蓄積期間を相互に変化させる手法や、図19に示すように、マトリクスを構成する各行に対して1行目からn行目の順方向に所定の時間間隔でリセット動作を順次実行して電荷蓄積動作を開始した後、n行目から1行目の逆方向に所定の時間間隔でプリチャージ動作及び読み出し動作を順次実行する手法が検討されている。
【0010】
このような感度調整用読取動作を行うことにより、1回の調整用画像の読取動作で、各行ごとに異なる画像読取感度(マトリクスの行数分の画像読取感度)の読取画像が得られるので、これにより、周囲環境の変化や被写体の状態に対応した最適な画像読取感度を抽出、設定することができる。ここで、図19に示した感度調整用読取動作においては、行ごとのリセット動作と読み出し動作の順序を逆にしているため、リセット動作及び読み出し動作の行ごとの時間間隔を図18の場合の行毎の読み出し動作の時間間隔と同じとした場合、各行ごとに設定される電荷蓄積期間を、図18に示した場合に比較して2倍の時間間隔で変化させることができるので、同じ行数を用いた1回の調整用画像の読取動作でより広い範囲の画像読取感度の読取画像を得ることができ、画像読取感度の設定幅(感度調整範囲)をより広くすることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際の使用状態において、使用環境や被写体の状態によっては、最適な画像読取感度はそれ程変化しないため、感度調整範囲をある程度狭くしても差し支えないことを確認している。これに対して、感度調整用読取動作に上述した図19に示したような手法を用いた場合、各行ごとの電荷蓄積期間相互の時間間隔やフォトセンサアレイの行数等の設定条件によっては、フォトセンサアレイの全域(全行範囲)において感度調整用読取動作を実行すると、電荷蓄積期間(画像読取感度)が正規の画像読取動作に対する必要な感度調整範囲を超えて過大になり、無駄な制御処理や時間を浪費する場合があるという問題を有していた。また、上記必要な感度調整範囲のみに限定するように、リセット動作及び読出動作の実行タイミングを制御すると、正規の画像読取動作により読み取られた画像の劣化が生じるという問題も有していた。なお、後者の問題点については、後述する発明の実施の形態において、詳しく説明する。
【0012】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑み、複数のフォトセンサにより構成されるフォトセンサアレイを備え、正規の画像読取動作とは別個に感度調整用読取動作を実行するフォトセンサシステムにおいて、感度調整用読取動作における感度調整範囲が過大となることに起因する無駄な制御処理や時間の浪費、さらには、正規の画像読取動作における読取画像の劣化を抑制して、感度設定処理に要する時間を短縮するとともに、正規の画像読取動作の際に良好な画質の読取画像(被写体画像)を得ることができるフォトセンサシステム及びフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のフォトセンサシステムは、所定の数の複数の行及び複数の列を有し、マトリクス状に配列された複数のフォトセンサよりなるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムにおいて、前記フォトセンサアレイの所定の行にリセットパルスを印加して、当該行の複数のフォトセンサを初期化するリセット手段と、前記複数のフォトセンサに所定の電圧のプリチャージパルスを印加するプリチャージ手段と、前記初期化終了後、照射された光により発生する電荷を蓄積する電荷蓄積期間が経過し、かつ、前記プリチャージパルスを印加するプリチャージ動作が終了した前記所定の行の複数のフォトセンサに対して読み出しパルスを印加する読み出し手段と、前記読み出しパルスを印加する読み出し期間に、前記プリチャージ動作により印加され、前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷に応じて変化した電圧を読み出して出力電圧として出力する出力手段と、正規の画像読取動作に適用される画像読取感度を抽出するための画像読み取りを行う感度調整用読取動作において、少なくとも、前記フォトセンサアレイの前記複数の列と前記複数の行より少ない数の行からなる感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対して前記リセットパルスを所定の行順序で順次印加するとともに、前記リセットパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記複数のフォトセンサに前記プリチャージパルスを印加した後、前記リセットパルス及び前記プリチャージパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記感度調整用の領域の各行の前記プリチャージ動作が終了したフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを前記行順序とは逆の行順序で順次印加するように、前記リセットパルス、前記プリチャージパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングを設定して、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに設定される前記電荷蓄積期間が相互に異なるとともに、各行ごとの前記電荷蓄積期間が、少なくとも2つの異なる行間において、時間的に重なる期間を有するように制御するタイミング制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2記載のフォトセンサシステムは、請求項1記載のフォトセンサシステムにおいて、前記タイミング制御手段は、感度調整用読取動作の際に、前記フォトセンサアレイの全領域の各行のフォトセンサに対して、前記リセットパルスを順次印加するとともに、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを順次印加するように、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングを設定することを特徴としている。
【0015】
請求項3記載のフォトセンサシステムは、請求項1記載のフォトセンサシステムにおいて、前記タイミング制御手段は、感度調整用読取動作の際に、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスを順次印加するように、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングを設定することを特徴としている。
【0016】
請求項4記載のフォトセンサシステムは、請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトセンサシステムにおいて、前記感度調整用の領域は、該各行のフォトセンサに設定される前記電荷蓄積期間が相互に異なり、かつ、所定の時間間隔で順次変化するように、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングが制御され、前記正規の画像読取動作における画像読取感度の設定処理に寄与する領域であることを特徴としている。
【0018】
請求項5記載のフォトセンサシステムは、請求項1乃至4のいずれかに記載のフォトセンサシステムにおいて、前記感度調整用読取動作は、少なくとも、前記正規の画像読取動作に先立つ任意のタイミングで実行されることを特徴としている。請求項6記載のフォトセンサシステムは、請求項1乃至5のいずれかに記載のフォトセンサシステムにおいて、前記フォトセンサは、半導体層からなるチャネル領域を挟んで形成されたソース電極及びドレイン電極と、少なくとも前記チャネル領域の上方及び下方に各々絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極及び第2のゲート電極とを有し、前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極のいずれか一方を光照射側として、該光照射側から照射された光の量に対応する電荷が前記チャネル領域に発生、蓄積されることを特徴としている。
【0019】
請求項7記載のフォトセンサシステムは、請求項6記載のフォトセンサシステムにおいて、前記初期化手段は、前記フォトセンサにおける前記第1のゲート電極に前記リセットパルスを印加して前記フォトセンサを初期化するリセット動作を行い、前記プリチャージ手段は、前記フォトセンサにおける前記ドレイン電極に前記プリチャージパルスを印加するプリチャージ動作を行い、前記読み出し手段は、前記リセット動作終了後の前記電荷蓄積期間が経過し、かつ、前記プリチャージ動作が終了した前記フォトセンサの前記第2のゲート電極に前記読み出しパルスを印加する読み出し動作を行い、前記出力手段は、前記読み出しパルスが印加される読み出し期間に、前記ドレイン電極の電圧を前記出力電圧として出力する出力動作を行うことを特徴としている。
【0020】
そして、請求項8記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法は、所定の数の複数の行及び複数の列を有し、マトリクス状に配列された複数のフォトセンサよりなるフォトセンサアレイを備え、該フォトセンサアレイの各行の前記フォトセンサにリセットパルス及び読み出しパルスを印加することにより、前記リセットパルスの印加タイミングから前記読み出しパルスの印加タイミングまでの電荷蓄積期間に蓄積された電荷に基づいて、所望の被写体画像を読み取る正規の画像読取動作を行うとともに、該正規の画像読取動作に適用される画像読取感度を抽出するための感度調整用読取動作を実行するフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法であって、前記感度調整用読取動作は、少なくとも、前記フォトセンサアレイの前記複数の列と前記複数の行より少ない数の行からなる感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対して前記リセットパルスを所定の行順序で順次印加し、前記リセットパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記複数のフォトセンサにプリチャージパルスを印加し、前記リセットパルス及び前記プリチャージパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記感度調整用の領域の各行の前記プリチャージ動作が終了したフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを前記行順序とは逆の行順序で順次印加し、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに設定される前記電荷蓄積期間が相互に異なるとともに、各行ごとの前記電荷蓄積期間が、少なくとも2つの異なる行間において、時間的に重なる期間を有するようにタイミングが制御されることを特徴としている。
【0021】
請求項9記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法は、請求項8記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法において、前記感度調整用読取動作は、前記フォトセンサアレイの全領域の各行のフォトセンサに対して、前記リセットパルスを順次印加するとともに、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを順次印加するようにタイミングが設定されることを特徴としている。
【0022】
請求項10記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法は、請求項8記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法において、前記感度調整用読取動作は、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスを順次印加するようにタイミングが設定されることを特徴としている。
【0023】
すなわち、本発明に係るフォトセンサシステム及びフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法は、所定の数の複数の行及び複数の列を有し、マトリクス状に配列された複数のフォトセンサよりなるフォトセンサアレイを備え、所望の被写体画像を読み取る正規の画像読取動作に先立つ任意のタイミングで、該正規の画像読取動作に設定される画像読取感度を調整するための感度調整用読取動作を実行するフォトセンサシステムにおいて、感度調整用読取動作の際に、少なくとも、フォトセンサアレイの上記複数の列と複数の行より少ない数の行からなる感度調整用の領域に含まれる各行のフォトセンサに対してのみ、リセットパルスを所定の行順序で順次印加し、リセットパルスと時間的に重ならないタイミングで読み出しパルスを上記リセットパルスの行順序とは逆の行順序で順次印加して、上記感度調整用の領域に含まれる各行のフォトセンサに設定される電荷蓄積期間が相互に異なるとともに、各行ごとの電荷蓄積期間が、少なくとも2つの異なる行間において、時間的に重なる期間を有するようにタイミングが制御され、上記領域以外にはリセットパルスのみが印加されるタイミング制御、もしくは、リセットパルス及び読み出しパルスのいずれも印加しないようにタイミングが制御される。
【0024】
これによれば、フォトセンサアレイの感度調整用の領域のみを利用して、正規の画像読取動作における必要な感度調整範囲でのみ感度調整用読取動作を実行することができるので、感度設定処理における無駄な制御処理、例えば、過度に長い電荷蓄積時間(画像読取感度)を設定して調整用画像を読み取る動作を実行したり、このような必要以上の画像読取感度により得られた明度データを含んだ状態での最適感度抽出処理の実行等を回避して、感度設定処理を迅速かつ簡易に実行して、正規の画像読取動作のための適切な画像読取感度を設定することができる。
【0025】
また、このような感度設定処理に寄与する上記感度調整用の領域以外の除外領域に対しては、感度調整用読取動作の際に、リセットパルスのみを印加するように、もしくは、リセットパルス及び読み出しパルスのいずれも印加しないようにタイミングを制御することにより、該除外領域に読み出しパルスが印加された後、リセットパルスが印加されることによる被写体画像の画質の劣化を改善して、良好な被写体画像を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るフォトセンサシステム及びフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法の実施の形態について詳しく説明する。
まず、本発明に係るフォトセンサシステムに適用可能なフォトセンサの一例として、ダブルゲート型フォトセンサについて図面を参照して説明する。
【0027】
<ダブルゲート型フォトセンサ>
図1は、ダブルゲート型フォトセンサの概略構成を示す断面構造図である。
図1(a)に示すように、ダブルゲート型フォトセンサ10は、励起光(ここでは、可視光)が入射されると電子−正孔対が生成されるアモルファスシリコン等の半導体層(チャネル層)11と、半導体層11の両端にそれぞれ設けられたn+シリコンからなる不純物層17、18と、不純物層17、18上に形成されたクロム、クロム合金、アルミ、アルミ合金等から選択され、可視光に対して不透明のソース電極12及びドレイン電極13と、半導体層11の上方(図面上方)にブロック絶縁膜14及び上部(トップ)ゲート絶縁膜15を介して形成されたITO(Indium-Tin-Oxide:インジウム−スズ酸化物)等の透明導電層からなり、可視光に対して透過性を示すトップゲート電極(第1のゲート電極)21と、半導体層11の下方(図面下方)に下部(ボトム)ゲート絶縁膜16を介して形成されたクロム、クロム合金、アルミ、アルミ合金等から選択され、可視光に対して不透明なボトムゲート電極(第2のゲート電極)22と、を有して構成されている。そして、このような構成を有するダブルゲート型フォトセンサ10は、ガラス基板等の透明な絶縁性基板19上に形成されている。
【0028】
ここで、図1(a)において、トップゲート絶縁膜15、ブロック絶縁膜14、ボトムゲート絶縁膜16、及び、トップゲート電極21上に設けられる保護絶縁膜20は、いずれも半導体層11を励起する可視光に対して、高い透過率を有する材質、例えば、窒化シリコンや酸化シリコン等により構成されることにより、図面上方から入射する光のみを検知する構造を有している。
すなわち、ダブルゲート型フォトセンサ10は、半導体層11を共通のチャネル領域として、半導体層11、ソース電極12、ドレイン電極13及びトップゲート電極21により形成される上部MOSトランジスタと、半導体層11、ソース電極12、ドレイン電極13及びボトムゲート電極22により形成される下部MOSトランジスタとからなる2つのMOSトランジスタの組み合わせた構造が、ガラス基板等の透明な絶縁性基板19上に形成されている。
【0029】
なお、このようなダブルゲート型フォトセンサ10は、一般に、図1(b)に示すような等価回路により表される。ここで、TGはトップゲート電極21と電気的に接続されたトップゲート端子、BGはボトムゲート電極22と電気的に接続されたボトムゲート端子、Sはソース電極12と電気的に接続されたソース端子、Dはドレイン電極13と電気的に接続されたドレイン端子である。
【0030】
次いで、上述したダブルゲート型フォトセンサの駆動制御方法について、図面を参照して説明する。
図2は、ダブルゲート型フォトセンサの基本的な駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートであり、図3は、ダブルゲート型フォトセンサの動作概念図であり、図4は、ダブルゲート型フォトセンサの出力電圧の光応答特性を示す図である。ここでは、上述したダブルゲート型フォトセンサの構成(図1)を適宜参照しながら説明する。
まず、リセット動作においては、図2、図3(a)に示すように、ダブルゲート型フォトセンサ10のトップゲート端子TGにパルス電圧(以下、「リセットパルス」と記す;例えば、Vtg=+15Vのハイレベル)φTを印加して、半導体層11、及び、ブロック絶縁膜14における半導体層11との界面近傍に蓄積されているキャリヤ(ここでは、正孔)を放出する(リセット期間Trst)。
【0031】
次いで、電荷蓄積動作においては、図2、図3(b)に示すように、トップゲート端子TGにローレベル(例えば、Vtg=−15V)のバイアス電圧φTを印加することにより、リセット動作を終了し、キャリヤ蓄積動作(電荷蓄積動作)による電荷蓄積期間Taがスタートする。電荷蓄積期間Taにおいては、トップゲート電極21側から入射した光量に応じて半導体層11の入射有効領域、すなわち、キャリヤ発生領域で電子−正孔対が生成され、半導体層11、及び、ブロック絶縁膜14における半導体層11との界面近傍、すなわち、チャネル領域周辺に正孔が蓄積される。
【0032】
そして、プリチャージ動作においては、図2、図3(c)に示すように、電荷蓄積期間Taに並行して、プリチャージパルスφpgに基づいてドレイン端子Dに所定の電圧(プリチャージ電圧)Vpgを印加し、ドレイン電極13に電荷を保持させる(プリチャージ期間Tprch)。
次いで、読み出し動作においては、図2、図3(d)に示すように、プリチャージ期間Tprchを経過した後、ボトムゲート端子BGにハイレベル(例えば、Vbg=+10V)のバイアス電圧(読み出し選択信号;以下、「読み出しパルス」と記す)φBを印加すること(選択状態)により、ダブルゲート型フォトセンサ10をON状態にする(読み出し期間Tread)。
【0033】
ここで、読み出し期間Treadにおいては、チャネル領域に蓄積されたキャリヤ(正孔)が逆極性のトップゲート端子TGに印加されたVtg(−15V)を緩和する方向に働くため、ボトムゲート端子BGのVbg(+15V)によりnチャネルが形成され、ドレイン電流に応じてドレイン端子Dの電圧(ドレイン電圧)VDは、図4(a)に示すように、プリチャージ電圧Vpgから時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0034】
すなわち、電荷蓄積期間Taにおける電荷蓄積状態が明状態の場合には、図3(d)に示すように、チャネル領域に入射光量に応じたキャリヤ(正孔)が捕獲されているため、トップゲート端子TGの負バイアスを打ち消すように作用し、この打ち消された分だけボトムゲート端子BGの正バイアスによって、ダブルゲート型フォトセンサ10はON状態となる。そして、この入射光量に応じたON抵抗に従って、図4(a)に示すように、ドレイン電圧VDは、低下することになる。
一方、電荷蓄積状態が暗状態で、チャネル領域にキャリヤ(正孔)が蓄積されていない場合には、図3(e)に示すように、トップゲート端子TGに負バイアスをかけることによって、ボトムゲート端子BGの正バイアスが打ち消され、ダブルゲート型フォトセンサ10はOFF状態となり、図4(a)に示すように、ドレイン電圧VDが、ほぼそのまま保持されることになる。
【0035】
したがって、図4(a)に示したように、ドレイン電圧VDの変化傾向は、トップゲート端子TGへのリセットパルスφTの印加によるリセット動作の終了時点から、ボトムゲート端子BGに読み出しパルスφBが印加されるまでの時間(電荷蓄積期間Ta)に受光した光量に深く関連し、蓄積されたキャリヤが多い場合(明状態)には急峻に低下する傾向を示し、また、蓄積されたキャリヤが少ない場合(暗状態)には緩やかに低下する傾向を示す。そのため、読み出し期間Treadがスタートして、所定の時間経過後のドレイン電圧VD(=Vrd)を検出することにより、あるいは、所定のしきい値電圧を基準にして、その電圧に至るまでの時間を検出することにより、ダブルゲート型フォトセンサ10に入射した光(照射光)の光量が換算される。
【0036】
なお、図2に示したタイミングチャートにおいて、プリチャージ期間Tprchの経過後、図3(f)、(g)に示すように、ボトムゲート端子BGにローレベル(例えば、Vbg=0V)を印加した状態(非選択状態)を継続すると、ダブルゲート型フォトセンサ10はOFF状態を持続し、図4(b)に示すように、ドレイン電圧VDは、プリチャージ電圧Vpgに近似する電圧を保持する。このように、ボトムゲート端子BGへの電圧の印加状態により、ダブルゲート型フォトセンサ10の読み出し状態を選択、非選択状態に切り替える選択機能が実現される。
【0037】
<フォトセンサシステム>
次いで、上述したダブルゲート型フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムについて、図面を参照して説明する。
図5は、ダブルゲート型フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムの概略構成図である。
【0038】
図5に示すように、フォトセンサシステムは、大別して、多数のダブルゲート型フォトセンサ10を、例えば、n行×m列(n、mは任意の自然数)のマトリクス状に配列したフォトセンサアレイ100と、各ダブルゲート型フォトセンサ10のトップゲート端子TG(トップゲート電極21)及びボトムゲート端子BG(ボトムゲート電極22)を各々行方向に接続して伸延するトップゲートライン101及びボトムゲートライン102と、各ダブルゲート型フォトセンサ10のドレイン端子D(ドレイン電極13)を列方向に接続したドレインライン(データライン)103と、ソース端子S(ソース電極12)を列方向に接続するとともに、接地電位に接続されたソースライン(コモンライン)104と、トップゲートライン101に接続されたトップゲートドライバ110と、ボトムゲートライン102に接続されたボトムゲートドライバ120と、ドレインライン103に接続されたコラムスイッチ131、プリチャージスイッチ132、アンプ133からなるドレインドライバ130と、を有して構成されている。
【0039】
ここで、トップゲートライン101は、図1に示したトップゲート電極21とともに、ITO等の透明導電層で一体的に形成され、ボトムゲートライン102、ドレインライン103並びにソースライン104は、それぞれボトムゲート電極22、ソース電極12、ドレイン電極13と同一の励起光に不透明な材料で一体的に形成されている。また、ソースライン104には、後述するプリチャージ電圧Vpgに応じて設定される定電圧Vssが印加されるが、接地電位(GND)であってもよい。
【0040】
なお、図5において、φtgは、リセット電圧及び光キャリア蓄積電圧のいずれかとして選択的に出力されるパルス信号φT1、φT2、…φTk、…φTnを生成するための制御信号であり、φbgは、読み出し電圧及び非読み出し電圧のいずれかとして選択的に出力されるパルス信号φB1、φB2、…φBk、…φBnを生成するための制御信号、φpgは、プリチャージ電圧Vpgを印加するタイミングを制御するプリチャージパルスである。
【0041】
このような構成において、トップゲートドライバ110からトップゲートライン101を介して、トップゲート端子TGに信号φTk(kは任意の自然数;k=1、2、・・・n)を印加することにより、フォトセンス機能が実現され、ボトムゲートドライバ120からボトムゲートライン102を介して、ボトムゲート端子BGに信号φBkを印加し、ドレインライン103を介して検出信号をドレインドライバ130に取り込んで、シリアルデータ又はパラレルデータの出力電圧Voutとして出力することにより、選択読み出し機能が実現される。
【0042】
上述したフォトセンサシステムの駆動制御方法は、基本的には、上述したダブルゲート型フォトセンサの駆動制御方法(図2参照)を1処理サイクルとして、フォトセンサアレイを構成するマトリクスの行数分シリアル(時系列的)に繰り返すことにより実現されるが、例えば、読取精度を高精細化するためにフォトセンサアレイを高密度化した場合には、被写体画像の読取所要時間が増大して、フォトセンサシステムの実用化の面で好ましくない。そこで、ダブルゲート型フォトセンサを用いたフォトセンサシステムにおいては、例えば、上述した特開2001−148807号公報等に記載されているように、以下に示すような駆動制御方法を適用することにより読取所要時間を大幅に短縮することができる。
【0043】
図6は、上述したフォトセンサシステムの駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。ここでは、図5に示したフォトセンサシステムの構成を適宜参照しながら、駆動制御方法を説明する。
図6に示すように、まず、トップゲートドライバ110からトップゲートライン101を介して、リセットパルスφT1、φT2、…φTk-1、φTk、…φTn(kは任意の自然数;k=1、2、・・・n)を順次印加して、リセット期間Trstをスタートし、各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10を初期化する。
【0044】
次いで、リセットパルスφT1、φT2、…φTk-1、φTk、…φTnが順次立ち下がり、リセット期間Trstが終了することにより、電荷蓄積期間Taがスタートして、各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10に入射される光量に応じてチャネル領域に電荷(正孔)が発生し、蓄積される。ここで、図6に示すように、電荷蓄積期間Ta内に並行して、ドレインドライバ130にプリチャージパルスφpgを印加することにより、プリチャージ期間Tprchをスタートし、ドレインライン103にプリチャージ電圧Vpgを印加して各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10のドレイン電極に所定の電圧を保持させるプリチャージ動作が行われる。
【0045】
次いで、電荷蓄積期間Ta及びプリチャージ期間Tprchが終了したダブルゲート型フォトセンサ10に対して、他の行におけるリセット動作、プリチャージ動作及び読み出し動作のための各信号の印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、各行ごとにボトムゲートドライバ120からボトムゲートライン102を介して、読み出しパルスφB1、φB2、…φBk-1、φBk、…φBnを順次印加して、読み出し期間Treadをスタートし、各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10に蓄積された電荷に対応するドレイン電圧VD1、VD2、VD3、…VDmの変化を、ドレインドライバ130により、各ドレインライン103を介して同時に検出し、シリアルデータ又はパラレルデータからなる出力電圧Voutとして読み出す。
【0046】
ここで、本駆動制御方法においては、行ごとのリセットパルスφT1、φT2、φT3、…φTn、読み出しパルスφB1、φB2、φB3、…φBn、及び、プリチャージパルスφpgの印加タイミングの間隔(Tdelay)を、次の(1)式に示すように、リセットパルスによるリセット期間Trstと、読み出しパルスによる読み出し期間Treadと、プリチャージパルスによるプリチャージ期間Tprchとの合計時間、又は、それ以上に設定する。
Tdelay=Trst+Tprch+Tread ・・・(1)
これにより、リセット動作、プリチャージ動作、読み出し動作が時間的に重なって実行されることがなく、さらに、各行ごとの処理サイクルの一部を時間的にオーバーラップさせることができるので、全ての行におけるリセット動作が終了する前に読み出し動作を行うことができ、2次元画像の読み出し動作を良好に実行しつつ、当該読出所要時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
<2次元画像読取装置>
次に、本発明に係るフォトセンサシステムを適用した2次元画像読取装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態においては、フォトセンサとして、上述したダブルゲート型フォトセンサを適用し、トップゲート電極を第1のゲート電極として電圧(リセットパルス)を印加することにより、フォトセンス機能を実現するとともに、ボトムゲート電極を第2のゲート電極として電圧(読み出しパルス)を印加することにより、チャネル領域に蓄積された電荷量を読み出す機能を実現するものとして説明する。
図7は、本発明に係るフォトセンサシステムを適用した2次元画像読取装置の全体構成を示すブロック図である。なお、ここでは、図1、図5に示したダブルゲート型フォトセンサ及びフォトセンサシステムの構成を適宜参照しながら説明する。また、図5に示したフォトセンサシステムと同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0048】
図7に示すように、本実施形態に係る2次元画像読取装置は、大別して、図5に示したフォトセンサシステムと同様に、ダブルゲート型フォトセンサ10を2次元配列して構成されるフォトセンサアレイ100と、ダブルゲート型フォトセンサ10のトップゲート端子TGに所定のタイミングで、所定のトップゲート電圧(リセットパルス)を印加するトップゲートドライバ(リセット手段)110と、ダブルゲート型フォトセンサ10のボトムゲート端子BGに所定のタイミングで、所定のボトムゲート電圧(読み出しパルス)を印加するボトムゲートドライバ(読み出し手段)120と、ダブルゲート型フォトセンサ10へのプリチャージ電圧の印加及びドレイン電圧の読み出しを行うコラムスイッチ131、プリチャージスイッチ132、アンプ133からなるドレインドライバ(プリチャージ手段、出力手段)130と、読み出されたドレイン電圧(アナログ信号)をデジタル信号からなる画像出力信号(画像データ)に変換するアナログ−デジタル変換器(以下、「A/Dコンバータ」と記す)140と、フォトセンサアレイ100による被写体画像の読取動作制御や画像データの照合、加工等の所定の処理を実行する外部機能部200とのデータのやり取り等を行うとともに、上述した画像読取動作及び後述する感度調整用読取動作(すなわち、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法)を実行制御する機能を備えたコントローラ(タイミング制御手段)150と、読取画像データや画像読取感度の設定等に関連するデータ等を記憶するRAM160と、を有して構成されている。
ここで、フォトセンサアレイ100、トップゲートドライバ110、ボトムゲートドライバ120、ドレインドライバ130は、図5に示したフォトセンサシステムと同等の構成及び機能を有しているので、その詳細な説明を省略する。
【0049】
コントローラ150は、トップゲートドライバ110及びボトムゲートドライバ120に制御信号φtg、φbgを出力することにより、図2及び図6に示したように、トップゲートドライバ110及びボトムゲートドライバ120の各々から、フォトセンサアレイ100を構成する各ダブルゲート型フォトセンサ10のトップゲート端子TG及びボトムゲート端子BGに所定の信号電圧(リセットパルスφTk、読み出しパルスφBk)を印加する動作を制御する。
また、コントローラ150は、被写体画像の読み取り動作において、プリチャージスイッチ132にプリチャージパルスφpgを出力することにより、各ダブルゲート型フォトセンサ10のドレイン端子Dにプリチャージ電圧Vpgを印加して、読み取られた被写体の画像パターンに対応して各ダブルゲート型フォトセンサ10に蓄積された電荷量に応じたドレイン電圧VDを検出する動作を制御する。
【0050】
特に、本実施形態においては、図6に示した正規の被写体画像の読取動作(画像読取動作)において、フォトセンサアレイ100を構成する少なくとも2つの異なる行間に印加されるリセットパルスφTk及び読み出しパルスφBkのいずれのタイミングも相互に時間的に重ならないように設定するとともに、各行ごとの処理サイクルの一部(電荷蓄積期間相互)を時間的にオーバーラップさせた期間を有するように設定する。また、後述する感度調整用読取動作において、上記画像読取動作と同等のタイミング制御に加え、少なくとも、フォトセンサアレイ100の所定の領域に含まれる行範囲に対してのみ、各行ごとに設定される電荷蓄積期間が順次変化するように、上記リセットパルス、プリチャージパルス及び読み出しパルスの印加タイミングを制御して、正規の画像読取動作に適した画像読取感度(電荷蓄積期間)を抽出、設定する機能を有している。
【0051】
さらに、コントローラ150には、ドレインドライバ130から出力される出力電圧Voutが、A/Dコンバータ140を介してデジタル信号に変換され、画像出力信号として入力される。コントローラ150は、この画像出力信号に対して、所定の画像処理を施したり、RAM160への書き込み、読み出しを行うとともに、画像データの照合や加工等の所定の処理を実行する外部機能部200に対するインタフェースとしての機能をも備えている。
【0052】
次に、本発明に係るフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法について詳しく説明する。ここで、本発明に係る駆動制御方法は、上述した一連の画像読取動作に基づいて、正規の被写体画像を読み取る動作(図6に示した画像読取動作)とは別個に、該画像読取動作における最適な画像読取感度(すなわち、電荷蓄積時間)を設定するために、任意のタイミング(例えば、上記画像読取動作の直前等)で実行される感度調整用読取動作に適用される。なお、以下に示す各実施形態においては、フォトセンサとして上述したダブルゲート型フォトセンサを適用した場合について示す。
【0053】
<第1の実施形態>
図8は、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法におけるフォトセンサアレイの領域分割を示す概念図であり、図9は、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第1の実施形態を示すタイミングチャートであり、図10は、本実施形態におけるリセットパルスと読み出しパルスの印加状態を示す概念図である。ここでは、図5に示したフォトセンサシステムを適宜参照しながら、駆動制御方法を説明する。
【0054】
本実施形態に係る駆動制御方法は、図8に示すように、フォトセンサアレイを構成するマトリクスのうち、任意の行範囲(例えば、1行目からi行目までの範囲(iは任意の自然数;i=1、2、・・・n))を領域RAとし、該領域RAに含まれない行範囲(例えば、i行目からn行目までの範囲)を領域RBとして、図9に示すように、まず、ダブルゲート型フォトセンサ10のトップゲート端子TGを行方向に接続するトップゲートライン101の1行目からn行目まで順方向に、上記(1)式に示したパルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、リセットパルスφT1、φT2、…φTn-1、φTnを順次時間的にタイミングをずらして印加(立ち上がり/立ち下がり)することにより、リセット期間Trstに続いて、電荷蓄積期間Taを順次スタートして、各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10を初期化した後、ダブルゲート型フォトセンサ10のトップゲート電極側から入射する光量に応じてチャネル領域に発生する電荷(正孔)を蓄積する。
【0055】
一方、上記トップゲートライン101の1行目からn行目まで順方向にリセットパルスを印加するリセット動作と並行し、かつ、リセットパルスの印加タイミングとは時間的に重ならない任意のタイミングで、ダブルゲート型フォトセンサ10のボトムゲート端子BGを行方向に接続するボトムゲートライン102のn行目から1行目まで逆方向に、上記(1)式に示したパルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、読み出しパルスφBn、φBn-1、…φB2、φB1を順次時間的にタイミングをずらして印加する。
【0056】
ここで、領域RAと領域RBの境界となるi行目において、上述したリセットパルスφTiの印加から読み出しパルスφBiの印加までの電荷蓄積期間Taiが、他の行(1行目からi行目)における電荷蓄積期間に比較して最小(最短)となるように、読み出しパルスφBn、φBn-1、…φB2、φB1の印加タイミングを設定する。また、領域RAに含まれるi行目から1行目のボトムゲートライン102に接続されたダブルゲート型フォトセンサに対してのみ、読み出しパルスφBi、φBi-1、…φB2、φB1の印加に先立って、各行に設定される電荷蓄積期間内に並行して、各行のダブルゲート型フォトセンサ10のドレインライン103にプリチャージパルスφpgを印加(立ち上がり/立ち下がり)することにより、プリチャージ期間Tprchに続いて、読み出し期間Treadをスタートする。
【0057】
これにより、(i−1)行目から1行目の各行における電荷蓄積期間Taは、i行目に設定される電荷蓄積期間Taiを最小期間として、パルス間隔Tdelayの2倍の時間間隔で増加するように設定される。すなわち、各行の電荷蓄積期間Taは、次の(2)式のように表される。
Ta=2×Tdelay×L+Tai ……(2)
ここで、Lは0以上の整数よりなる変数であって、(i−1)行目から1行目ではLの値が0、1、……、i−2となる。すなわち、i行目に設定される電荷蓄積期間Taiを微少時間とすると、図10に示すように、一画面の読み込み処理によって、電荷蓄積期間Taは、概略、パルス間隔Tdelayの2倍の時間を整数倍した値でi種類の異なる値に設定されることになり、i種類の異なる画像読取感度による読み込み処理(電荷蓄積動作)が実行されることになる。
【0058】
そして、上述した読み出しパルスφBi、φBi−1、…φB2、φB1の印加により、各々異なる電荷蓄積期間Taが設定された領域RAに含まれるi行目から1行目のダブルゲート型フォトセンサ10においてのみ、各電荷蓄積期間Taに蓄積された電荷に対応する電圧変化VD1、VD2、VD3、…VDmが、ドレインライン103を介してコラムスイッチ131により取り込まれて読み出される。
【0059】
一方、読み出しパルスφBn、φBn−1、…φBi+1が印加された後、リセットパルスφTi+1、…φTn-1、φTnが印加されることになり、上記電荷蓄積期間Taが設定されず、かつ、プリチャージパルスφpgが印加されない領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサ10においては、実質的に電圧変化VD1、VD2、VD3、…VDmが読み出されない。ここで、領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサ10に対して、領域RAに含まれるダブルゲート型フォトセンサの場合とは逆の順序で、リセットパルス及び読み出しパルスが印加される状態をそのまま継続するように設定することにより、例えば、各行ごとの各パルスの印加タイミングを、感度調整用読取動作後に実行する正規の画像読取動作におけるタイミングと同じにして、画像読取に係る駆動制御を簡易化することができる。
【0060】
すなわち、領域RAに含まれる1行目からi行目のダブルゲート型フォトセンサ10は、調整用画像の読取動作に使用されて読取データが出力され、感度設定処理に寄与することになり、領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサ10は、調整用画像の読取動作に使用されることなく読取データが出力されず、感度設定処理に寄与しないことになる。なお、上述したような感度調整用読取動作により読み取られた調整用画像に基づいて、最適な画像読取感度(電荷蓄積時間)を設定する手法としては、上述した従来技術に示した場合と同様に、調整用画像の列方向の明度データの変位(差分)が最大となる行を抽出して、該行に設定された電荷蓄積期間を最適感度として設定する手法等を良好に適用することができる。
【0061】
ここで、上述した一連の感度設定処理により設定された最適感度を用いた正規の画像読取動作としては、例えば、上述した図6に示した画像読取動作をそのまま適用して、図10に示すように、各行ごとのリセットパルス、プリチャージパルス及び読み出しパルスを、上記最適感度に対応する電荷蓄積時間を有するように印加するとともに、1行目からn行目の順方向に、所定のパルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、順次ずらして印加するものであってもよいし、n行目から1行目の逆方向に、所定の時間間隔で、順次ずらして印加するものであってもよい。また、調整用読取動作は、上述したように、リセットパルスを1行目からn行目の順方向に順次印加し、読み出しパルスをn行目から1行目の逆方向に順次印加する場合に限定されるものではなく、リセットパルスをn行目から1行目の逆方向に順次印加し、読み出しパルスを1行目からn行目の順方向に順次印加するものであってもよい。
【0062】
これにより、リセットパルスを1行目からn行目の順方向に、また、読み出しパルスをn行目から1行目の逆方向に順次印加させて、1回の調整用画像の読取動作で、各行ごとに異なる画像読取感度の読取画像を読み取る感度設定処理を適用したフォトセンサシステムにおいて、所定の領域(行範囲)のダブルゲート型フォトセンサのみを使用して調整用画像の読取動作を実行することができるので、従来技術(図19参照)に示したように、フォトセンサアレイの全域(全行範囲)に対して電荷蓄積期間(画像読取感度)を順次変化させた場合に比較して、感度調整範囲が必要以上に広くなり過ぎることがなく、正規の画像読取動作に対する必要な範囲の画像読取感度で調整用画像を読み取ることができる。したがって、感度調整用読取動作における無駄な制御処理(過度に長い電荷蓄積時間を設定した場合の感度調整用読取動作や最適感度抽出処理等)や時間の浪費を抑制して、迅速かつ簡易に画像読取感度を設定することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
図11は、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第2の実施形態を示すタイミングチャートであり、図12は、本実施形態におけるリセットパルスと読み出しパルスの印加状態を示す概念図である。ここでも、図5に示したフォトセンサシステムを適宜参照しながら、駆動制御方法を説明する。また、上述した第1の実施形態と同等の制御方法については、その説明を簡略化する。
本実施形態は、上述した第1の実施形態において、フォトセンサアレイの領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサに対して、読み出しパルスを印加しないように設定したことを特徴としている。
【0064】
本実施形態に係る駆動制御方法は、図11に示すように、まず、トップゲートライン101の1行目からn行目まで順方向に、上記パルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、リセットパルスφT1、φT2、…φTn-1、φTnを順次タイミングをずらして印加(立ち上がり/立ち下がり)することにより、リセット期間Trstに続いて電荷蓄積期間Taを順次スタートして、各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10を初期化した後、ダブルゲート型フォトセンサ10に入射する光量に応じてチャネル領域に発生する電荷(正孔)を蓄積する。
【0065】
そして、フォトセンサアレイの領域RAに含まれる1行目からi行目までのトップゲートライン101にリセットパルスを印加するリセット動作が終了し、かつ、リセットパルスの印加タイミングとは時間的に重ならない任意のタイミングで、ボトムゲートライン102のi行目から1行目まで逆方向に、上記パルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、読み出しパルスφBi、…φB2、φB1を順次タイミングをずらして印加する。
【0066】
ここで、本実施形態においても、領域RAと領域RBの境界となるi行目において、リセットパルスφTiの印加から読み出しパルスφBiの印加までの電荷蓄積期間Taiが最小(最短)となるように、読み出しパルスφBi、…φB2、φB1の印加タイミングを設定する。また、領域RAに含まれる1行目からi行目までのダブルゲート型フォトセンサにパルス間隔Tdelayの時間間隔で順次印加されたリセットパルスは、領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目まで領域RAと同等の時間間隔で順次印加される。すなわち、領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサには、リセットパルスのみが印加されて、読み出しパルスが印加されないように設定されている。さらに、i行目から1行目のボトムゲートライン102に接続されたダブルゲート型フォトセンサに対してのみ、読み出しパルスφBi、φBi-1、…φB2、φB1の印加に先立って、各行に設定される電荷蓄積期間内に並行して、プリチャージパルスφpgを印加(立ち上がり/立ち下がり)することにより、プリチャージ期間Tprchに続いて読み出し期間Treadをスタートする。
【0067】
これにより、上述した第1の実施形態と同様に、図12に示すように、フォトセンサアレイの所定の領域のダブルゲート型フォトセンサのみを使用した一画面の読み込み処理によって、i種類の異なる画像読取感度が設定されるとともに、正規の画像読取動作における必要な範囲の画像読取感度で調整用画像を読み取ることができるので、感度調整用読取動作における無駄な制御処理や時間の浪費を抑制して、迅速かつ簡易に画像読取感度を設定することができる。また、以下に示すように、上記感度設定処理に寄与しない領域RBへのリセットパルス及び読み出しパルスの印加に起因すると考えられる正規の画像読取動作における読取画像の劣化を抑制することもできる。
【0068】
以下、本実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係について、図面を参照して詳しく説明する。
図13は、第1の実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係を示す画像データであり、図14は、第2の実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係を示す画像データである。
【0069】
上述した第1の実施形態に係る駆動制御方法を感度調整用読取動作に適用した場合、領域RAにおいては、フォトセンサアレイ100のi行目に設定される電荷蓄積時間(画像読取感度)を最小時間とし、1行目方向に順次時間が長くなるように、電荷蓄積時間が設定されているので、図13(a)に示すように、読み取られた調整用画像の明暗状態が、i行目から1行目方向に次第に明るくなる画像が得られるのに対して、領域RBにおいては、電荷の蓄積が行われないので、図13(a)に示すように、(i+1)行目から1行目の範囲の明暗状態が略均一な明るい画像として得られる。
【0070】
このような感度調整用読取動作により得られた調整用画像の明暗情報に基づいて設定された最適な画像読取感度(電荷蓄積期間)に基づいて、例えば、単色の均一画像(いわゆる、べた画像)を被写体画像として正規の画像読取動作を実行した場合、図13(b)に示すように、感度設定処理に寄与する領域RAにおいては、被写体画像に対応した均一な明度を有する画像が得られたのに対して、感度設定処理に寄与しない領域RBにおいては、領域RAとは異なる明度の画像が得られた。また、指紋の凹凸パターンを被写体画像として正規の画像読取動作を実行した場合にあっても、図13(c)に示すように、領域RAにおいては、被写体画像に対応したほぼ均一な明度を有する画像が得られたのに対して、領域RBにおいては、図13(b)に示したような顕著な差異ではないものの、領域RAよりもやや明るい画像が得られた。すなわち、上述した第1の実施形態においては、被写体画像のパターンや明暗状態等によって、領域RA、RB間で顕著な明度の段差が生じることが判明した。なお、図13(d)は、図13(b)に示した読取画像と対比するため、感度設定処理を行うことなく、既定の画像読取感度(電荷蓄積期間)をそのまま正規の感度調整用読取動作に適用した場合におけるべた画像の読取画像であって、全域にわたって均一な明度の画像が得られた。
【0071】
このことから、領域RA、RB間に生じる明度の段差は、感度調整用読取動作において、領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサに印加されるリセットパルス及び読み出しパルスと密接な関係があり、ダブルゲート型フォトセンサに読み出しパルスが印加された後にリセットパルスが印加された場合と、本来のリセットパルス後に読み出しパルスが印加された場合のトップゲート電極の電位状態が、微妙に異なることに起因して発生するものと推定される。
【0072】
これに対して、第2の実施形態に係る駆動制御方法を感度調整用読取動作に適用し、べた画像を被写体画像として正規の画像読取動作を実行した場合、図14(a)に示すように、領域RA、RB間の明度の段差が小さい画像が得られ、特に、指紋の凹凸パターンを被写体画像として正規の画像読取動作を実行した場合にあっては、図14(b)に示すように、その明度の段差が認識されない程度にほぼ均一な明度を有する画像が得られ、画質が改善されることが判明した。これは、感度調整用読取動作において、領域RBのダブルゲート型フォトセンサに対して読み出しパルスを印加することなく、リセットパルスのみを印加し、さらに正規の画像読取装置において、再度リセットパルスが印加されることにより、ダブルゲート型フォトセンサのトップゲート電極の電位状態が、本来のリセット状態により近似することに起因するものと推定される。
【0073】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。
図15は、本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第3の実施形態を示すタイミングチャートであり、図16は、本実施形態におけるリセットパルスと読み出しパルスの印加状態を示す概念図である。ここでも、図5に示したフォトセンサシステムを適宜参照しながら、駆動制御方法を説明する。また、上述した第1の実施形態と同等の制御方法については、その説明を簡略化する。
本実施形態は、上述した第1の実施形態において、フォトセンサアレイの領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサに対して、リセットパルス及び読み出しパルスのいずれも印加しないように設定したことを特徴としている。
【0074】
本実施形態に係る駆動制御方法は、図15に示すように、まず、フォトセンサアレイ100の領域RAに含まれるトップゲートライン101の1行目からi行目まで順方向に、上記パルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、リセットパルスφT1、φT2、…φTiを順次時間的にタイミングをずらして印加(立ち上がり/立ち下がり)することにより、リセット期間Trstに続いて電荷蓄積期間Taを順次スタートして、領域RAの各行ごとのダブルゲート型フォトセンサ10を初期化した後、ダブルゲート型フォトセンサ10に入射する光量に応じてチャネル領域に発生する電荷(正孔)を蓄積する。
【0075】
そして、領域RAに含まれる1行目からi行目までのトップゲートライン101にリセットパルスを印加するリセット動作が終了し、かつ、リセットパルスの印加タイミングとは時間的に重ならない任意のタイミングで、ボトムゲートライン102のi行目から1行目まで逆方向に、上記パルス間隔Tdelayを基準とした時間間隔で、読み出しパルスφBi、…φB2、φB1を順次時間的にタイミングをずらして印加する。すなわち、領域RBに含まれる(i+1)行目からn行目のダブルゲート型フォトセンサ10には、リセットパルス及び読み出しパルスのいずれも印加されないように設定されている。
【0076】
ここで、本実施形態においても、領域RAと領域RBの境界となるi行目において、リセットパルスφTiの印加から読み出しパルスφBiの印加までの電荷蓄積期間Taiが最小(最短)となるように、読み出しパルスφBi、…φB2、φB1の印加タイミングを設定する。また、i行目から1行目のボトムゲートライン102に接続されたダブルゲート型フォトセンサに対してのみ、読み出しパルスφBi、φBi-1、…φB2、φB1の印加に先立って、各行に設定される電荷蓄積期間内に並行して、プリチャージパルスφpgを印加(立ち上がり/立ち下がり)することにより、プリチャージ期間Tprchに続いて読み出し期間Treadをスタートする。
【0077】
これにより、上述した第1及び第2の実施形態と同様に、図16に示すように、フォトセンサアレイの所定の領域のダブルゲート型フォトセンサのみを使用した一画面の読み込み処理によって、i種類の異なる画像読取感度が設定されるとともに、正規の画像読取動作における必要な範囲の画像読取感度で調整用画像を読み取ることができるので、感度調整用読取動作における無駄な制御処理や時間の浪費を抑制して、迅速かつ簡易に画像読取感度を設定することができる。また、上述した第2の実施形態と同様に、上記感度設定処理に寄与しない領域RBへのリセットパルス及び読み出しパルスの印加に起因すると考えられる正規の画像読取動作における読取画像の劣化を抑制することもできる。
【0078】
ここで、本実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係について、図面を参照して説明する。
図17は、本実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係を示す画像データである。なお、必要に応じて上述した第1及び第2の実施形態における画像データ(図13、図14)を参照する。
【0079】
本実施形態に係る駆動制御方法を感度調整用読取動作に適用し、べた画像を被写体画像として正規の画像読取動作を実行した場合、図17(a)に示すように、領域RA、RB間の明度の段差は、第1の実施形態に示した画像データ(図13(b)参照)に比較して、小さく抑制された画像が得られ、特に、指紋の凹凸パターンを被写体画像として正規の画像読取動作を実行した場合にあっては、図17(b)に示すように、第2の実施形態に示した画像データ(図14(b)参照)と略同様に、その明度の段差が認識されない程度にほぼ均一な明度を有する画像が得られ、画質が改善されることが判明した。これは、感度調整用読取動作において、領域RBのダブルゲート型フォトセンサに対してリセットパルス及び読み出しパルスを印加することなく、正規の画像読取動作において、リセットパルスが印加されることにより、ダブルゲート型フォトセンサのトップゲート電極の電位状態が、本来のリセット状態により近似することに起因するものと推定される。なお、図17(b)ではわかりにくいが、領域RAにおいては、感度調整用読取動作によりリセットパルス、プリチャージパルス、読み出しパルスが順次印加された後に、正規の画像読取動作によりリセットパルスが印加されているため、領域RBに比較して若干暗い画像となるが、画質に大きな劣化を及ぼすほどではない。
【0080】
なお、上述した各実施形態においては、図19の従来技術に示したように、リセットパルスと読み出しパルスを逆方向に順次印加することにより、画像読取感度を順次変化させる電荷蓄積期間の設定方法を採用した感度調整用読取動作に適用した場合についてのみ説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、図18の従来技術に示したように、一括して同時にリセットパルスを印加する手法を採用した感度調整用読取動作に適用するものであってもよい。要するに、正規の画像読取動作の感度設定処理において、必要以上の過大な(長い)電荷蓄積時間(画像読取感度)が設定される場合や、さらに、このような無駄な制御処理を抑制するために、フォトセンサアレイの特定の領域に対してのみ、感度調整用読取動作を実行した場合に、正規の画像読取動作により読み取られた画像に明度の段差等の劣化が生じる場合に良好に適用することができる。
【0081】
また、上述した各実施形態に示したように、感度設定動作(感度調整用読取動作)は、正規の画像読取動作の直前に実行されるものに限定されるものではなく、正規の画像読取動作とは別個の任意のタイミングで実行されるものであってもよい。
さらに、上述した各実施形態においては、本発明に係るフォトセンサシステム及びフォトセンサの駆動制御方法を指紋読取装置に適用した場合についてのみ示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、明暗パターンからなる2次元画像を有する被写体であれば、印刷物等であってもよいことはいうまでもない。
【0082】
【発明の効果】
本発明に係るフォトセンサシステム及びそのフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法によれば、正規の画像読取動作に設定される読取感度を調整するための感度調整用読取動作を実行するフォトセンサシステムにおいて、感度調整用読取動作の際に、少なくとも、フォトセンサアレイの全列と全行数より少ない数の行からなる感度調整用の領域に含まれる各行のフォトセンサに対してのみ、リセットパルスを所定の行順序で順次印加し、リセットパルスと時間的に重ならないタイミングで読み出しパルスを上記リセットパルスの行順序とは逆の行順序で順次印加して、上記感度調整用の領域に含まれる各行のフォトセンサに設定される電荷蓄積期間が相互に異なるとともに、各行ごとの電荷蓄積期間が、少なくとも2つの異なる行間において、時間的に重なる期間を有するようにタイミングが制御されるので、フォトセンサアレイの感度調整用の領域のみを利用して、正規の画像読取動作における必要な感度調整範囲でのみ感度調整用読取動作を実行することができ、感度設定処理における無駄な制御処理を回避して、感度設定処理を迅速かつ簡易に実行して、正規の画像読取動作のための適切な読取感度を設定することができる。
【0083】
また、上述したような感度設定処理に寄与する感度調整用の領域以外の除外領域に対して、感度調整用読取動作の際に、リセットパルスのみを印加するように、もしくは、リセットパルス及び読み出しパルスのいずれも印加しないようにタイミングを制御しているので、該除外領域に読み出しパルスが印加された後に、リセットパルスが印加されることによる被写体画像の画質の劣化を改善して、良好な被写体画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダブルゲート型フォトセンサの概略構成を示す断面構造図である。
【図2】ダブルゲート型フォトセンサの基本的な駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。
【図3】ダブルゲート型フォトセンサの動作概念図である。
【図4】ダブルゲート型フォトセンサの出力電圧の光応答特性を示す図である。
【図5】ダブルゲート型フォトセンサを2次元配列して構成されるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムの概略構成図である。
【図6】フォトセンサシステムの駆動制御方法の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明に係るフォトセンサシステムを適用した2次元画像読取装置の全体構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法におけるフォトセンサアレイの領域分割を示す概念図である。
【図9】本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第1の実施形態を示すタイミングチャートである。
【図10】本実施形態におけるリセットパルスと読み出しパルスの印加状態を示す概念図である。
【図11】本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第2の実施形態を示すタイミングチャートである。
【図12】本実施形態におけるリセットパルスと読み出しパルスの印加状態を示す概念図である。
【図13】第1の実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係を示す画像データである。
【図14】第2の実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係を示す画像データである。
【図15】本発明に係るフォトセンサの駆動制御方法の第3の実施形態を示すタイミングチャートである。
【図16】本実施形態におけるリセットパルスと読み出しパルスの印加状態を示す概念図である。
【図17】本実施形態に係る感度調整用読取動作と正規の画像読取動作における読取画像の画質との関係を示す画像データである。
【図18】従来技術における感度調整用読取動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図19】従来技術における感度調整用読取動作の他の例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
10 ダブルゲート型フォトセンサ
100 フォトセンサアレイ
101 トップゲートライン
102 ボトムゲートライン
110 トップゲートドライバ
120 ボトムゲートドライバ
131 コラムスイッチ
132 プリチャージスイッチ
133 アンプ
140 A/Dコンバータ
150 コントローラ
200 外部機能部
Claims (10)
- 所定の数の複数の行及び複数の列を有し、マトリクス状に配列された複数のフォトセンサよりなるフォトセンサアレイを備えたフォトセンサシステムにおいて、
前記フォトセンサアレイの所定の行にリセットパルスを印加して、当該行の複数のフォトセンサを初期化するリセット手段と、
前記複数のフォトセンサに所定の電圧のプリチャージパルスを印加するプリチャージ手段と、
前記初期化終了後、照射された光により発生する電荷を蓄積する電荷蓄積期間が経過し、かつ、前記プリチャージパルスを印加するプリチャージ動作が終了した前記所定の行の複数のフォトセンサに対して読み出しパルスを印加する読み出し手段と、
前記読み出しパルスを印加する読み出し期間に、前記プリチャージ動作により印加され、前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷に応じて変化した電圧を読み出して出力電圧として出力する出力手段と、
正規の画像読取動作に適用される画像読取感度を抽出するための画像読み取りを行う感度調整用読取動作において、少なくとも、前記フォトセンサアレイの前記複数の列と前記複数の行より少ない数の行からなる感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対して前記リセットパルスを所定の行順序で順次印加するとともに、前記リセットパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記複数のフォトセンサに前記プリチャージパルスを印加した後、前記リセットパルス及び前記プリチャージパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記感度調整用の領域の各行の前記プリチャージ動作が終了したフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを前記行順序とは逆の行順序で順次印加するように、前記リセットパルス、前記プリチャージパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングを設定して、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに設定される前記電荷蓄積期間が相互に異なるとともに、各行ごとの前記電荷蓄積期間が、少なくとも2つの異なる行間において、時間的に重なる期間を有するように制御するタイミング制御手段と、を備えていることを特徴とするフォトセンサシステム。 - 前記タイミング制御手段は、前記感度調整用読取動作の際に、前記フォトセンサアレイの全領域の各行のフォトセンサに対して、前記リセットパルスを順次印加するとともに、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを順次印加するように、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングを設定することを特徴とする請求項1記載のフォトセンサシステム。
- 前記タイミング制御手段は、感度調整用読取動作の際に、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスを順次印加するように、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングを設定することを特徴とする請求項1記載のフォトセンサシステム。
- 前記感度調整用の領域は、該各行のフォトセンサに設定される前記電荷蓄積期間が相互に異なり、かつ、所定の時間間隔で順次変化するように、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスの印加タイミングが制御され、前記正規の画像読取動作における画像読取感度の設定処理に寄与する領域であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトセンサシステム。
- 前記感度調整用読取動作は、少なくとも、前記正規の画像読取動作に先立つ任意のタイミングで実行されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフォトセンサシステム。
- 前記フォトセンサは、半導体層からなるチャネル領域を挟んで形成されたソース電極及びドレイン電極と、少なくとも前記チャネル領域の上方及び下方に各々絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極及び第2のゲート電極とを有し、
前記第1のゲート電極又は前記第2のゲート電極のいずれか一方を光照射側として、該光照射側から照射された光の量に対応する電荷が前記チャネル領域に発生、蓄積されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフォトセンサシステム。 - 前記初期化手段は、前記フォトセンサにおける前記第1のゲート電極に前記リセットパルスを印加して前記フォトセンサを初期化するリセット動作を行い、
前記プリチャージ手段は、前記フォトセンサにおける前記ドレイン電極に前記プリチャージパルスを印加するプリチャージ動作を行い、
前記読み出し手段は、前記リセット動作終了後の前記電荷蓄積期間が経過し、かつ、前記プリチャージ動作が終了した前記フォトセンサの前記第2のゲート電極に前記読み出しパルスを印加する読み出し動作を行い、
前記出力手段は、前記読み出しパルスが印加される読み出し期間に、前記ドレイン電極の電圧を前記出力電圧として出力する出力動作を行うことを特徴とする請求項6記載のフォトセンサシステム。 - 所定の数の複数の行及び複数の列を有し、マトリクス状に配列された複数のフォトセンサよりなるフォトセンサアレイを備え、該フォトセンサアレイの各行の前記フォトセンサにリセットパルス及び読み出しパルスを印加することにより、前記リセットパルスの印加タイミングから前記読み出しパルスの印加タイミングまでの電荷蓄積期間に蓄積された電荷に基づいて、所望の被写体画像を読み取る正規の画像読取動作を行うとともに、該正規の画像読取動作に適用される画像読取感度を抽出するための感度調整用読取動作を実行するフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法であって、
前記感度調整用読取動作は、少なくとも、
前記フォトセンサアレイの前記複数の列と前記複数の行より少ない数の行からなる感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対して前記リセットパルスを所定の行順序で順次印加し、
前記リセットパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記複数のフォトセンサにプリチャージパルスを印加し、
前記リセットパルス及び前記プリチャージパルスの印加タイミングと時間的に重ならないタイミングで、前記感度調整用の領域の各行の前記プリチャージ動作が終了したフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを前記行順序とは逆の行順序で順次印加し、
前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに設定される前記電荷蓄積期間が相互に異なるとともに、各行ごとの前記電荷蓄積期間が、少なくとも2つの異なる行間において、時間的に重なる期間を有するようにタイミングが制御されることを特徴とするフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法。 - 前記感度調整用読取動作は、前記フォトセンサアレイの全領域の各行のフォトセンサに対して、前記リセットパルスを順次印加するとともに、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記読み出しパルスを順次印加するようにタイミングが設定されることを特徴とする請求項8記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法。
- 前記感度調整用読取動作は、前記感度調整用の領域の各行のフォトセンサに対してのみ、前記リセットパルス及び前記読み出しパルスを順次印加するようにタイミングが設定されることを特徴とする請求項8記載のフォトセンサシステムにおけるフォトセンサの駆動制御方法。
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