以下、本発明に係る液体吐出装置及び液体吐出方法をプリンタ装置に適用した例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明が適用された液体吐出装置(以下、プリンタ装置と記す。)1は、所定の方向に走行する記録紙Pに対してインクといった液体を吐出して画像や文字を印刷するものである。すなわち、インクジェットプリンタ装置である。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせて、記録紙Pの幅方向、すなわち図1中矢印W方向にインク吐出口(ノズル)を略ライン状に並設した、いわゆるライン型のプリンタ装置である。具体的に、図1に示すプリンタ装置1は、所定の方向に搬送される対象物である記録紙Pに対してインクを吐出し、着弾させることによって、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データ等に応じたインクドットからなる画像や文字等を記録する。
このプリンタ装置1は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジという。)2と、このヘッドカートリッジ2が装着される装置本体であるプリンタ本体3とを備えている。
また、このプリンタ装置1では、ヘッドカートリッジ2が消耗品として取り扱われており、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能とされることによって、容易に交換が可能となっている。
先ず、このようなプリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2について説明する。このヘッドカートリッジ2は、インクを吐出する吐出口であるノズル52aを図1中矢印W方向に記録紙Pの幅に対応する長さで略直線状に複数並べて配置した、いわゆるライン型のプリンタヘッドである。
このヘッドカートリッジ2は、図1及び図2に示すように、インクiを収容するインクタンク11が装着されるカートリッジ本体12を備え、このカートリッジ本体12には、カラー印刷に対応して、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラックの4色からなるインクタンク11y,11m,11c,11kが着脱可能となっている。
これら4つのインクタンク11y,11m,11c,11kは、例えば樹脂材料等を射出成形することで、全体略直方体状に形成された容器であり、その内部に各色に対応したインクiを収容している。また、これら4つのインクタンク11y,11m,11c,11kは、内部の洗浄を行った際に塵埃等の微小な異物が容易に除去されるように、インクiと接する内面が外面よりも表面粗さが小さくなっている。また、これら4つのインクタンク11y,11m,11c,11kは、なるべく多くのインクを収容するために、カートリッジ本体12の長辺方向に対応した長尺形状とされている。そして、各インクタンク11y,11m,11c,11kは、カートリッジ本体12の短辺方向に並んで配置される。なお、以下では、各インクタンク11y,11m,11c,11kが記録紙Pの搬送方向に順に並んで配置されているものとして説明する。
なお、これら4つのインクタンク11y,11m,11c,11kは、インクの消費量が最も多いブラックのインクタンク11kが、他のインクタンク11y、11m、11cよりも容量が大きく、他に比べて厚みを有する以外は同じ構造を有している。なお、これらインクタンク11y,11m,11c,11kの構成を、以下まとめてインクタンク11として説明する。
インクiを収容するインクタンク11は、図2及び図3に示すように、インクiを収容する液体収容部であるインク収容部21と、インク収容部21内のインクiをカートリッジ本体12へと送り出す液体送出部であるインク送出部22と、インク収容部21を外部と連通させる外部連通孔23と、外部連通孔23からインク収容部21内に外部の空気を導入するための空気導入管24とを有している。
インク収容部21は、インクiを収容する収容空間を形成しており、なるべく多くのインクiを収容するため、略々インクタンク11の外形に対応した内形形状を有している。また、インク収容部21は、その底面部が略中央に位置するインク送出部22で最も深くなるように形成されており、内部に収容されたインクiが集中的にインク送出部22に流入するようになされている。
インク送出部22は、インク収容部21と連通されたインクタンク11からカートリッジ本体12へインクiを供給するノズルであり、このインク収容部21の下面中央部から下方に向かって突出して設けられている。そして、このインク送出部22は、後述するカートリッジ本体12の連結部35に円滑に嵌合されるように、先端に向かって内径が拡径されたテーパー形状を有している。
外部連通孔23は、図3に示すように、インク収容部21の上面中央部に設けられている。また、この外部連通孔23は、通気性を有するシール部材(図示せず。)によって閉塞されている。これにより、インクタンク11では、この外部連通孔23から外部にインクiが漏れ出すことを防止すると共に、この外部連通孔23から外部の空気を取り込む際に、インク収容部21内に塵埃等が侵入することを防止している。
空気導入管24は、外部連通孔23からインク収容部21の内部へと下方に向かって延長して設けられている。これにより、インクタンク11では、インク収容部21内のインクiがインク送出部22からカートリッジ本体12へと送り出された際に、このインク収容部21内のインクiが減少した分に相当する空気が、外部連通孔23から空気導入管24を通してインク収容部21内に取り込まれることになる。
また、この空気導入管24の中途部には、インク収容部21から逆流したインクiがいきなり外部連通孔23から外部に流出することがないように、インクiを一時的に貯留させる液体貯留部であるインク貯留部25が設けられている。このインク貯留部25は、正面から見て長い方の対角線をインク収容部21の長辺方向と一致させた略菱形状の内部空間を形成しており、上部側の角部が空気導入管24を介して外部連通孔23と連通されると共に、下部側の角部が空気導入管24を介してインク収容部21と連通されている。これにより、インクタンク11では、インク収容部21から空気導入管24を通して逆流したインクiをインク貯留部25が一時的に貯留することによって、外部連通孔23から外部にインクiが漏れ出すことなく、再度インクiをインク収容部21側に戻すことが可能となっている。
また、このインクタンク11は、図2及び図3に示すように、後述するカートリッジ本体12のタンク装着部31に固定するための固定手段である係合段部26及び係止突部27を有している。
係合段部26は、インクタンク11の長辺方向の一端側に形成された段差部であり、その一端側の側面部から上面部と平行且つ上面部よりも一段低くなされた水平面部26aと、この水平面部26aから上面部に向かって傾斜する傾斜面部26bとを有している。
係止突部27は、インクタンク11の長辺方向の他端側の側面部から突出形成された突起部であり、上面部と平行な水平面部27aと、この水平面部27aよりも下方に位置する側面部に向かって傾斜する傾斜面部27bとを有している。
一方、カートリッジ本体12は、図2及び図3に示すように、上述した各色に対応したインクタンク11y,11m,11c,11kが装着されるタンク装着部31を有している。
このタンク装着部31は、記録紙Pの幅に対応して全体略直方体状に形成されたカートリッジ本体12の上面部から各インクタンク11y,11m,11c,11kを収納するのに十分な深さで形成された凹部であり、その底面部は各インクタンク11y,11m,11c,11kがカートリッジ本体12の短辺方向に並んで配置されるように、隔壁31aによって仕切られた構造を有している。
なお、上述したブラックのインクタンク11kは、他のインクタンク11y,11m,11cに比べて厚みを有することから、このタンク装着部31においても、ブラックのインクタンク11kの装着位置を仕切る隔壁31aの間隔が他のインクタンク11y,11m,11cの装着位置を仕切る隔壁31aの間隔より所定の幅だけ広く形成されている。
そして、このタンク装着部31には、上述したインクタンク11を固定するための固定手段である被係合部32、ラッチレバー33及び板バネ34が設けられている。
被係合部32は、上述したインクタンク11に形成された係合段部26の水平面部26aと係合される部分であり、タンク装着部31の長辺方向の一端側に位置する開口端から長辺方向に所定の幅だけ突出形成されている。
ラッチレバー33は、タンク装着部31の長辺方向の他端側に位置する底面コーナー部から上方に向かって突出された弾性変位片であり、その先端部がタンク装着部31の側面部に対して近接離間する方向に弾性変位可能となっている。また、このラッチレバー33の先端側には、上述したインクタンク11の係止突部27が係止される係止孔33aが穿設されている。そして、隔壁31aによって仕切られたタンク装着部31には、各インクタンク11y,11m,11c,11kに対応したラッチレバー33が、それぞれカートリッジ本体12の短辺方向に並んで設けられている。
板バネ34は、タンク装着部31の底面部に設けられ、このタンク装着部31に装着されたインクタンク11を上方に向かって押圧する押圧部材である。この板バネ34は、タンク装着部31の長辺方向に沿って配置されると共に、一端がタンク装着部31の底面部に固定され、その中間部が上方に向かって折り曲げられた形状を有している。そして、隔壁31aによって仕切られたタンク装着部31の底面部には、各インクタンク11y,11m,11c,11kに対応した板バネ34が、それぞれカートリッジ本体12の短辺方向に並んで設けられている。
このタンク装着部31にインクタンク11を装着する際は、インクタンク11の係合段部26が設けられた一端側を、タンク装着部31の内部に斜めに挿入し、この係合段部26の水平面部26aをタンク装着部31の被係合部32に当接させながら、この当接位置を回動支点として、インクタンク11の係止突部27が設けられた他端側を、図3中矢印A方向に回動させながらタンク装着部31の内部に挿入する。このとき、インクタンク11の係止突部27は、その傾斜面部27bがラッチレバー33に当接することによって、このラッチレバー33をタンク装着部31の側面部に近接する方向へと弾性変位させる。
そして、図4に示すように、インクタンク11がタンク装着部31に装着されると同時に、係止突部27がラッチレバー33の係止孔33aに係止される。このとき、ラッチレバー33の先端部がタンク装着部31に装着されたインクタンク11の側面部を押圧すると共に、タンク装着部31の底面部に設けられた板バネ34がインクタンク11の底面部を上方に向かって押圧することから、係合段部26の水平面部26aがタンク装着部31の被係合部32に係止されると共に、係止突部27の水平面部27aがラッチレバー33の係止孔33aに係止される。これにより、インクタンク11をカートリッジ本体12のタンク装着部31に適切に固定することができる。
一方、このタンク装着部31に装着されたインクタンク11を取り外す際は、ラッチレバー33の先端部をインクタンク11の側面部から離間する方向に弾性変位させる。これにより、上述した係止突部27の水平面部27aとラッチレバー33の係止孔33aとの係止状態が解除される。このとき、図3に示すように、板バネ34がインクタンク11の底面部を図3中反矢印A方向に向かって押圧することから、インクタンク11をタンク装着部31から容易に取り外すことができる。
また、以上のようなインクタンク11が装着されるカートリッジ本体12は、図4及び図5に示すように、上述したインクタンク11のインク送出部22と連結される連結部35と、この連結部35に連結されたインクタンク11からのインクiの供給を行う液体供給部であるインク供給部36と、このインク供給部36により供給されたインクiを吐出するヘッド部37とを有している。
連結部35は、タンク装着部31の底面中央部に設けられたノズルであり、その先端が上述したインク送出部22に嵌合されることによって、インクタンク11のインク送出部22と連結される。また、この連結部35にインクタンク11のインク送出部22が連結された際には、連結部35の先端部に設けられた図示しない開閉ピンがインク送出部22を開放する。また、この連結部35には、連結されたインク送出部22との間からインクiが漏れ出すのを防止するために、Oリング等のシール部材38が設けられている。なお、連結部35は、その先端部が開閉ピンを兼ねるようにしてもよい。すなわち、この連結部35の先端部がインク送出部22に嵌合されると共にインク送出部22を開放する構成であってもよい。また、連結部35の先端部は、上述したインク送出部22に円滑に嵌合されるように、先端に向かって外径が縮径されたテーパー形状を有している。
そして、隔壁31aによって仕切られたタンク装着部31の底面中央部には、各インクタンク11y,11m,11c,11kに対応した連結部35が、それぞれカートリッジ本体12の短辺方向に並んで設けられている。
インク供給部36は、後述するヘッド部37のノズル52aからインクiが吐出された際に、ヘッド部37側に発生する負圧によって図示しない弁が開放されてインクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へとインクiを供給し、インクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へインクiが供給されて、ヘッド部37側の圧力が定常状態に戻ると、弁を閉塞してインクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へのインクiの供給を停止する弁機構である。
そして、インク供給部36は、後述するヘッド部37のノズル52aからインクiを吐出する度に、インクiの供給動作を繰り返す。一方、インクタンク11では、上述したインク供給部36によるインクiの供給動作に連動して、インク収容部21内のインクiがインク供給部36側に供給されると、インク収容部21内のインクiが減少すると共に、この減少したインクiに相当する空気が外部連通孔23から空気導入管24を通してインク収容部21内に導入される。これにより、インク収容部21内の圧力を平衡状態に保ちながら、インク供給部36側にインクiを適切に供給することが可能となっている。
なお、上述した各色に対応した連結部35の下方には、それぞれインク供給部36が設けられている。
ヘッド部37は、インクiを液滴の状態で吐出する後述するノズル52aが形成された吐出面41と、この吐出面41よりも上方に位置し、インク供給部36からインクiが供給されるインク供給口42と、このインク供給口42から供給されたインクiを各ノズルへと導くインク流路43と、吐出面41を保護するヘッドキャップ44とを有している。
吐出面41には、記録紙Pの幅に相当する長さに亘って略直線状に複数のノズル52aが並んで設けられている。インク供給口42は、インク流路43の上面中央部に設けられ、インク供給部36に連通されている。インク流路43は、各ノズル52aにインクiが供給されるように記録紙Pの幅に相当する長さに亘って略直線状に設けられている。
ヘッドキャップ44は、図1及び図2に示すように、吐出面41を保護するために設けられたカバーであり、印刷動作するときには吐出面41より退避する。ヘッドキャップ44は、図2中矢印W方向の両端に開閉方向に設けられた一対の係合突部44aと、長手方向に設けられ吐出面41に付着した余分なインクiを吸い取るクリーニングローラー44bとを有している。ヘッドキャップ44は、係合突部44aが吐出面41に図2中矢印W方向とは略直交方向に亘って設けられたに一対の係合溝41aに係合され、この一対の係合溝41aに沿ってインクタンク11の短手方向、すなわち図2中矢印W方向とは略直交方向に開閉するようにされている。そして、ヘッドキャップ44においては、開閉動作時に、クリーニングローラー44bが吐出面41に当接しながら回転することで、余分なインクiを吸い取り、吐出面41をクリーニングする。このクリーニングローラー44bには、例えば吸湿性の高い部材、具体的にはスポンジ、不織布、織布等が用いられる。また、ヘッドキャップ44は、印刷動作しないときには吐出面44のノズル52aから露出するインクiが乾燥しないように吐出面41を閉塞する。
このような構成のヘッド部37には、上述した構成の他に、所定数のノズル52aを組とするインク吐出ヘッド45を複数有し、このインク吐出ヘッド45が千鳥状に配置されている。すなわち、このインク吐出ヘッド45は、インク流路43を挟んで記録紙Pの幅方向に互い違いに並ぶように配置されている。
インク吐出ヘッド45は、図6に示すように、ベースとなる回路基板51と、複数のノズル52aが形成されたノズルシート52と、回路基板51とノズルシート52との間をノズル52a毎に区画するフィルム53と、インク流路43を通して供給されたインクiを加圧するインク液室54と、インク液室54に供給されたインクiを加熱する発熱抵抗体55とを有している。
回路基板51は、シリコン等からなる半導体ウェハ上に、ロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等からなる制御回路を構成すると共に、インク液室54の上面部を形成している。
ノズルシート52は、吐出面41に向かって縮径され、且つ吐出面41側の口径が20μm程度のノズル52aが穿設されると共に、回路基板51とフィルム53を挟んで対向配置されることで、インク液室54の下面部を形成している。
フィルム53は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなり、上述したインク流路43と連通される部分を除いて各ノズル52aの周囲を囲むように形成されている。また、このフィルム53は、回路基板51とノズルシート52との間に介在されることによって、インク液室54の側面部を形成している。
インク液室54は、上述した回路基板51、ノズルシート52及びフィルム53により囲まれることで、ノズル52a毎にインク流路43から供給されたインクiを加圧する加圧空間を形成している。
発熱抵抗体55は、インク液室54に臨む回路基板51に配置されると共に、この回路基板51に設けられた制御回路等と電気的に接続されている。そして、この発熱抵抗体55は、制御回路等により制御されることで発熱し、インク液室54内のインクiを加熱する。
そして、このインク吐出ヘッド45では、回路基板51の制御回路が発熱抵抗体55を駆動制御し、選択された発熱抵抗体55に対して、例えば1〜3マイクロ秒程度の間だけパルス電流を供給する。これにより、インク吐出ヘッド45では、発熱抵抗体55が急速に加熱される。すると、インク吐出ヘッド45では、図7(A)に示すように、発熱抵抗体55と接するインク液室54内のインクiに気泡bが発生する。そして、インク吐出ヘッド45では、図7(B)に示すように、このインク液室54内において、気泡bが膨張しながらインクiを加圧し、押し退けられたインクiが液滴の状態になってノズル52aより吐出される。また、インク吐出ヘッド45においては、インクiの液滴が吐出された後は、インク流路43を通してインクiがインク液室54に供給されることによって、再び吐出前の状態へと戻る。
なお、上述したインク吐出ヘッド45は、回路基板51の一主面上にフィルム53を全面に亘って形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてフィルム53をインク液室54に対応した形状に成形した後に、この上にノズルシート52を積層することで形成される。
また、上述したインク吐出ヘッド45は、発熱抵抗体55によってインクiを加熱しながら吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えば圧電素子等の電気機械変換素子によってインクiの液滴を電気機械的に吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
なお、上述した各色に対応したインク供給部36の下方には、それぞれヘッド部37が設けられている。そして、カートリッジ本体12の底面部には、各インクタンク11y,11m,11c,11kに対応した各ヘッド部37の吐出面41が、それぞれカートリッジ本体12の短辺方向に並んで設けられており、これらは連続した吐出面41を形成している。
以上のような構成のヘッドカートリッジ2は、上述した構成の他に、インク収容部12内のインクiの残量を検出する図示しない残量検出部や、インクタンク11y,11m,11c,11kを識別する図示しないインクタンク識別部等を備えている。
次に、以上のように構成されるヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ本体3について説明する。
このプリンタ本体3は、図1に示すように、内部への塵埃等の侵入を防ぐために、上部筐体61aと下部筐体61bとから構成される外筐61の内部に組み付けられた構造を有している。
また、このプリンタ本体3において、外筐61の前面側は、図8及び図9に示すように、下部筐体61b内の図示しないフレームに上部筐体61aの両側面部に設けられた一対の支軸62が軸支されることによって、上部筐体61aが下部筐体61bに対して開閉可能となっている。
また、外筐61の前面には、図1に示すように、記録紙Pの給排紙が行われる給排紙口63が設けられている。そして、この給排紙口63に記録紙Pを収納する収納トレイ64が装着されることによって給紙が可能となり、記録紙Pは、この給排紙口63を通して収納トレイ64の開口端のうち前面側を閉塞する蓋トレイ65上に排紙されることになる。
上部筐体61aには、上述したヘッドカートリッジ2が装着されるヘッド装着部66が設けられている。そして、このヘッド装着部66にヘッドカートリッジ2が装着された際には、ヘッドカートリッジ2の吐出面41が、後述する下部筐体61b内の印刷位置に臨むことになる。なお、ヘッドカートリッジ2には、図2に示すように、取手部67が取り付けられている。これにより、ヘッドカートリッジ2は、交換時等においてヘッド装着部66に対する着脱が容易となっている。
また、上部筐体61aには、図1に示すように、このヘッド装着部66を閉塞する蓋体61cが開閉可能に取り付けられている。この蓋体61cは、ヘッド装着部66を閉塞した際には、上部筐体61aと連続した上面部を形成する。また、この蓋体61cは、ヘッド装着部66にヘッドカートリッジ2が装着された状態でも閉塞することが可能となっている。
また、上部筐体61aの上面部には、後述する記録紙Pの給排紙が行われる前面側に位置して、各種操作を行うための操作ボタン68や、印刷状態等を表示するための表示パネル69が設けられている。
さらに、上部筐体61aの上面部には、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部66に装着されたときに、ヘッド装着部66に対してヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するヘッドカートリッジ保持機構70を備えている。具体的に、ヘッドカートリッジ保持機構70は、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ70aを上部筐体61aのヘッド装着部66の周囲に設けられた係止孔70b内の図示しないバネ等といった付勢部材に係止することにより、プリンタ本体3におけるヘッド装着部66の周囲に設けられた基準面3aと、ヘッドカートリッジ2の基準面3aと対向する外周面2aとが圧着することになり、上部筐体61aに対してヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにする。これにより、カートリッジ本体12の吐出面41と、後述する給排紙機構72によって印刷位置に搬送された記録紙Pの主面とを互いに平行且つ所定の間隔をもって対向配置することができる。
また、プリンタ本体3には、図8及び図9に示すように、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部66に装着されたときに、このヘッドカートリッジ2の吐出面41に取り付けられたヘッドキャップ44を開閉するヘッドキャップ開閉機構71と、記録紙Pを所定の方向に搬送してヘッド部37に対して記録紙Pを給排紙する給排紙機構72と、記録紙Pの搬送速度が変化したかどうかを判別する速度判別部73と、インクiを吐出するときのヘッド部37付近の環境温度を検出する温度センサ74とを有している。
ヘッドキャップ開閉機構71は、ヘッドカートリッジ2のヘッドキャップ44を開閉する駆動部を有しており、印刷を行うときにはインク吐出ヘッド45が記録紙Pに対して露出するように吐出面41よりヘッドキャップ44を退避させ、印刷が終了したときにはインク吐出ヘッド45の保護やインクiの乾燥を防ぐために吐出面41をヘッドキャップ44で閉塞するように、ヘッドキャップ44を吐出面41に対して開閉動作する。
給排紙機構72は、図8及び図9に示すように、記録紙Pをヘッドカートリッジ2まで供給し、ヘッドカートリッジ2によって印刷が行われた記録紙Pを外部に排出する、いわゆる記録紙Pを所定の方向に搬送させる用紙搬送手段である。具体的に、給排紙機構72は、プリンタ本体3内部に記録紙Pを給紙する給紙部81と、この給紙部81により給紙された記録紙Pを印刷位置へと搬送する搬送部82と、この搬送部82により搬送された記録紙Pを排紙する排紙部83とによって構成されている。
給紙部81は、収納トレイ64から搬送部82へと記録紙Pを給紙するための給紙手段として、収納トレイ64内の記録紙Pを搬送部82へと送り出す給紙ローラー91と、この給紙ローラー91により送り出された記録紙Pを1枚毎に搬送部82へと送り出すための一対の分離ローラー92a,92bとを有し、これらは、下部筐体61b内に設けられた駆動機構(図示せず。)によって互いに連動しながら、図9中矢印B1,B2,B3方向に回転駆動される。
給紙ローラー91は、収納トレイ64の背面側の開口端から臨む記録紙Pの上方に配置されており、その外周面が、収納トレイ64内に設けられた紙押上げ機構(図示せず。)により押し上げられた記録紙Pと接触可能となっている。
一対の分離ローラー92a,92bは、給紙ローラー91の背面側近傍に位置して、この給紙ローラー91により送り出された記録紙Pをローラーの間に挟み込みながら、互いに同一方向に回転駆動される。これにより、給紙ローラー91が記録紙Pを誤って2枚同時に給紙した場合でも、一方の分離ローラー92aが、その外周面に接する1枚の記録紙Pを搬送部82側へと送り出し、他方の分離ローラー92bが、その外周面に接するもう1枚の記録紙Pを前面側の収納トレイ64へと送り返すことによって、1枚のみ背面側に送り出すことができる。
搬送部82は、給紙部81から排紙部83へと記録紙Pを搬送するための搬送手段として、記録紙Pの送り方向を反転させる反転ローラー93と、この反転ローラー93により反転された記録紙Pを印刷位置へと搬送させる送りローラー94とを有している。
反転ローラー93は、プリンタ本体3内の背面側に配置されており、下部筐体61b内に設けられた駆動機構(図示せず。)によって、図9中矢印C方向に回転駆動される。また、反転ローラー93の背面側には、この反転ローラー93の外周面に沿って反転される記録紙Pを押さえる複数の押さえローラー95a,95b,95cと、反転ローラー93の外周面と対向して記録紙Pの移動を規制する湾曲状の第1の規制板96とが設けられている。
また、この反転ローラー93と一対の分離ローラー92a,92bとの間には、記録紙Pを案内する第1の案内板97が下部筐体61b側に位置して設けられている。さらに、この反転ローラー93と送りローラー94との間には、記録紙Pを案内する第2の案内板98と、この第2の案内板98と対向して記録紙Pの移動を規制する平面状の第2の規制板99とが上部筐体61a側に位置して設けられている。
送りローラー94は、ヘッド部37を基準にして記録紙Pの搬送方向の上流側、すなわち反転ローラー93側、且つ搬送される記録紙Pに対して下部筐体61b側に配置され、記録紙Pの印刷される主面とは反対側の主面に軸中心に回転しながら当接されて記録紙Pを搬送させる。
送りローラー94の上部筐体61a側には、この送りローラー94と対向し、記録紙Pを送りローラー94に押圧させる押圧ローラー100が設けられている。これにより、記録紙Pは、押圧ローラー100によって送りローラー94に接触し、送りローラー94に適切にグリップ、すなわち送りローラー94の外周面に適切に掴まれることから、吐出面41と対向する印刷位置へと適宜搬送されることになる。なお、押圧ローラー100は、軸中心に回転自在にされており、記録紙Pの搬送に伴って回転する。
排紙部83は、図8及び図9に示すように、ヘッド部37で印刷された記録紙Pを給排紙口63側に搬送させる排紙ローラー101と、この排紙ローラー101と対向する拍車102とを有している。
排紙ローラー101は、ヘッド部37を基準にして記録紙Pの搬送方向の下流側、すなわち給排紙口63側、且つ搬送される記録紙Pに対して下部筐体61b側に配置され、記録紙Pの印刷される主面とは反対側の主面に軸中心に回転しながら当接されて記録紙Pを搬送させる。
拍車102は、排紙ローラー101に対して上部筐体61側で対向し、印刷されたインクが極力転写されないように点で記録紙Pの印刷面と接触し、排紙ローラー101との間から記録紙Pを給排紙口63側の蓋トレイ65上へと送り出す。なお、拍車102は、軸中心に回転自在にされており、記録紙Pの搬送に伴って回転する。
このような構成の給排紙機構72において、送りローラー94及び排紙ローラー101は、図10に示すように、駆動源となるパルスモータ103a,103bが例えば無端駆動ベルト等といった図示しないベルトプーリ等によって接続され、各パルスモータ103a,103bからそれぞれ動力が伝達される。そして、送りローラー94及び排紙ローラー101は、反転ローラー93側から搬送された記録紙Pを給排紙口63側に搬送させるように図10中矢印D方向に軸中心に回転駆動する。
これらローラー94,101は、それぞれが異なる回転速度で回転、すなわちそれぞれが異なる回転数で回転しており、その回転数はパルスモータ103a,103bに供給されるパルス電流の周波数により制御される。具体的には、図10中矢印E方向に搬送される記録紙Pを印刷位置まで給紙する送りローラー94の回転速度より記録紙Pに印刷が行われて排紙する排紙ローラー101の回転速度を早くしている。
これにより、給排紙機構72では、ヘッド部37の吐出面41と対向する記録紙Pに対して印刷を行う際に、記録紙Pを弛みがなく搬送方向に緊張した状態にさせることが可能になる。したがって、給排紙機構72では、印刷位置で記録紙Pが弛み、撓み等が生じることを防ぐことから、絶えずヘッド部73の吐出面41と記録紙Pの主面との距離を略一定に保つことができる。なお、パルスモータ103a,103bに供給されるパルス電流の周波数は後述する制御部129等によって制御される。
送りローラー94と排紙ローラー101との間には、印刷位置に搬送された記録紙Pをヘッド部37の吐出面41に対向させるプラテン板104が設けられている。この、プラテン板104は、記録紙Pの先端を送りローラー94から排紙ローラー101まで案内するガイド板としても機能する。なお、プラテン板104は、記録紙Pの印刷位置において、上述したヘッド部37の吐出面41と互いに平行且つ所定の距離を以て対向配置される。
また、下部筐体61bには、図9に示す印刷時に搬送動作を行う搬送位置と、この搬送位置よりも下方に位置して、図8に示す非駆動時に待避される待避位置との間で、上述した送りローラー94、排紙ローラー101、プラテン板104等を昇降させる図示しない昇降機構が設けられている。
以上のような構成の給排紙機構72では、図10に示すように、印刷位置における記録紙Pを搬送方向に緊張した状態にしていることから、図10中矢印E方向に搬送されている記録紙Pの後端が送りローラー94のニップ点、すなわち送りローラー94で記録紙Pを掴んでいる点より外れると、記録紙Pには排紙ローラー101より回転速度の遅い送りローラー94より加わる反搬送方向、すなわち図10中反矢印E方向の負荷が作用しなくなり、送りローラー94より回転速度が速い排紙ローラー101だけで記録紙Pが搬送されて印刷している途中で搬送速度が早くなる。
プリンタ本体3においては、以上のように給排紙機構72において記録紙Pの搬送速度が変化したときに、記録紙Pの搬送速度が変化したことを検出、換言すると記録紙Pの搬送速度が速くなったかどうかを判別する手段として速度判別部73を備えている。
速度判別部73、図10に示すように、図10中矢印E方向に搬送する記録紙Pの後端を検出する後端検出センサ111と、送りローラー94の回転状態を検出するエンコーダ112と、後述する例えばCPU(Central Processing Unit)等を備える制御部129とによって構成されている。
後端検出センサ111は、送りローラー94を基準して搬送方向の上流側に、具体的には第2の規制板99と送りローラー94との間に配置され、印刷位置に搬送される記録紙Pにおける送りローラー94と押圧ローラー100との間に入り込んでいく前の後端を検出し、検出した後端検出データを後述する制御部129に出力する。
エンコーダ112は、送りローラー94の回転状態を検出し、送りローラー94の回転数に応じた回転検出データを後述する制御部129に出力する。
このような速度判別部73では、後端検出センサ111と送りローラー94との間の距離と、送りローラー94による記録紙Pを搬送させるときの単位時間当たりの送り量とに基づき、記録紙Pの後端が後端検出センサ111に検出されてから送りローラー100がどのくらい回転すると記録紙Pの後端がニップ点に到達し、直後に記録紙Pの後端がニップ点より外れて搬送速度が変化するかといった速度判別データを、後述するメモリ部128等に予め記憶させている。したがって、速度判別部73では、後端検出センサ111が記録紙Pの後端を検出し、検出した後端検出データを制御部128に出力することで、この後端検出データと、エンコーダ112からの回転検出データと、予め記憶されている速度判別データとに基づいて制御部129によって記録紙Pが送りローラー94のニップ点より外れて搬送速度が速くなることを判別させることができる。
なお、以上では、速度判別部73が後端検出センサ111とエンコーダ112とによって搬送速度が変化したかどうかを判別しているが、このような構成に限定されることはなく、例えば記録紙Pを搬送しているときの送りローラー94や排紙ローラー101に加わる負荷を直接検出し、この負荷が変化したときに搬送速度が変化したと判別するような構成にしてもよい。また、例えば送りローラー94と排紙ローラー101とによって緊張した状態の記録紙Pに加わる負荷を直接的若しくは間接的に検出し、この負荷が変化したときに搬送速度が変化したと判別するような構成にしてもよい。
温度センサ74は、インクiを吐出するときのヘッド部37付近の環境温度を検出し、数値化して情報信号にし、環境データとして後述する制御部129に出力する。温度センサ74は、図8及び図9に示すように、ヘッド部37を基準にして搬送方向の下流側、具体的にはヘッド部37の側面に沿うように吐出面41の近傍に配置されている。
そして、後述する制御部129では、後述するメモリ部128に温度毎で異なる記録紙Pの時間当たりの送り量に関する搬送速度データが予め記憶されており、この搬送速度データと、温度センサ74より制御部129に出力される環境データとに基づき、印刷時の記録紙Pが時間当たりにどのくらいの距離搬送されるか、すなわち温度毎の搬送速度が得られるようにされている。なお、後述するメモリ部128には、記録紙Pの種類や厚み等によって送りローラー94や排紙ローラー101とのグリップ力等が異なり、搬送速度も違うことから、記録紙Pの種類に対応した複数の搬送速度データが記憶されている。
なお、ここでは、温度センサ74がヘッド部37の周辺温度を検出して得られた環境データで記録紙Pの搬送速度を判別する場合を例に挙げて説明したが、このことに限定されることはなく、例えば後述するメモリ部128に記録紙Pの湿度毎で異なる搬送速度に関する搬送速度データ等を記憶させておき、湿度センサ等によってヘッド部37の周辺湿度を検出して得られた環境データによって記録紙Pの搬送速度が得られるようにしてもよい。また、例えば後述するメモリ部に記録紙Pの温度及び/又は湿度毎で異なる搬送速度に関する搬送速度データ等を記憶させておき、温湿度センサ等によってヘッド部37周辺の湿度及び湿度を検出して得られた環境データによって記録紙Pの搬送速度が得られるようにしてもよい。
次に、以上のように構成されたプリンタ装置1による印刷を制御する図11に示す制御回路121について図面を参照して説明する。
制御回路121は、上述したプリンタ本体3のヘッドキャップ開閉機構71、給排紙機構72の駆動を制御するプリンタ制御部122と、各色のインクiに対応するインク吐出ヘッド45に供給される電流等を制御する吐出制御部123と、各色のインクiの残量を警告する警告部124と、外部装置と信号の入出力を行う入出力端子125と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)126と、読み出された制御プログラム等を一旦格納し、必要に応じて読み出されるRAM(Random Access Memory)127と、記録紙Pの種類に応じてノズル52aからインクiを吐出するときの吐出タイミングを制御する吐出制御データが格納されたメモリ部128と、各部の制御を行う制御部129とを有している。
プリンタ駆動部122は、制御部129からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ開閉機構71を構成する駆動モータ(図示せず。)を駆動させてヘッドキャップ44を開閉動作するように、ヘッドキャップ開閉機構71を制御する。また、プリンタ駆動部122は、制御部129からの制御信号に基づき、給排紙機構72を構成する駆動モータ(図示せず。)や、パルスモータ103a,103bを駆動させてプリンタ本体3の収納トレイ64から記録紙Pを給紙し、印刷後に給排紙口63から蓋トレイ65上に記録紙Pを排出するように給排紙機構72を制御する。
吐出制御部123は、インク吐出ヘッド45に備わる発熱抵抗体55にパルス電流を供給する外部電源との電気的な接続をオン/オフするスイッチング素子や、発熱抵抗体55に供給されるパルス電流値を調整する抵抗体や、スイッチング素子等のオン/オフの切り替えを制御する制御回路部等を有する電気回路である。そして、吐出制御部123は、制御部129からの制御信号に基づき、インク吐出ヘッド45に備わる発熱抵抗体55に供給されるパルス電流等を調整し、インク吐出ヘッド45のノズル52aよりインクiを吐出するときの吐出タイミングを制御する。
警告部124は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段であり、印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を表示する。また、警告部124は、例えばスピーカ等の音声出力手段であってもよく、この場合は、印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を音声で出力する。なお、警告部124は、表示手段及び音声出力手段をともに有するように構成してもよい。また、この警告は、情報処理装置130のモニタやスピーカ等で行うようにしてもよい。
入出力端子125は、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報をインタフェースを介して外部の情報処理装置130等に送信する。また、入出力端子125は、外部の情報処理装置130等から、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の情報を出力する制御信号や、印刷データ等が入力される。ここで、上述した情報処理装置130は、例えばパーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
情報処理装置130等と接続される入出力端子125は、インタフェースとして例えばシリアルインタフェースやパラレルインタフェース等を用いることができ、具体的にUSB(Universal Serial Bus)、RS(Recommended Standard)232C、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394等の規格に準拠したものである。また、入出力端子125は、情報処理装置130との間で有線通信又は無線通信の何れ形式でデータ通信を行うようにしてもよい。なお、この無線通信規格としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11g等がある。
入出力端子125と情報処理装置130との間には、例えばインターネット等のネットワークが介在していてもよく、この場合、入出力端子125は、例えばLAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、xDSL(Digital Subscriber Line)、FTHP(Fiber To The Home)、CATV(Community Antenna TeleVision)、BS(Broadcasting Satellite)等のネットワーク網に接続され、データ通信は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の各種プロトコルにより行われる。
ROM126は、例えばEP−ROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)等のメモリであり、制御部129が行う各処理のプログラムが格納されている。この格納されているプログラムは、制御部129によりRAM127にロードされる。
RAM127は、制御部129によりROM126から読み出されたプログラムや、速度判別部73の後端検出センサ111及びエンコーダ112から制御部129に出力された後端検出データや回転検出データや、温度センサ74から制御部129に出力された環境データ等を記憶する。
メモリ部128は、例えばROMや、EP―ROMや、RAM等であり、上述した速度判別データや、記録紙Pの種類毎の搬送速度データ等が格納されている。また、メモリ部128には、これらデータの他に、上述した記録紙Pの種類毎の吐出制御データも格納されている。
ここでの吐出制御データとは、従来のような記録紙Pの搬送速度が印刷途中で早くなったときに、搬送速度が速くなった分インクiの着弾位置が反搬送方向側にずれる色ずれを補正させるように吐出タイミングを調整するように吐出制御部123でインク吐出ヘッド45を制御するプログラムデータである。
具体的に、図12(A)〜図12(C)を参照して説明する。なお、図12(A)〜図12(C)においては、記録紙Pに着弾した各色のインクiをイエローはyで示し、マゼンダはmで示し、シアンはcで示し、ブラックはkで示している。
記録紙Pに対して印刷する際は、図12(A)に示すように、記録紙Pの搬送方向、すなわち図12(A)中矢印E方向に順に並んだインクタンク11y,11m,11c,11kと対応する吐出面41に設けられた各ノズル52aより各色のインクiを搬送する記録紙Pに吐出するときに、記録紙Pには各色のインクiがイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順で所定の着弾位置M1に順次着弾される。そして、印刷している途中で例えば送りローラー94のニップ点から記録紙Pの後端が外れる等して記録紙Pの搬送速度が変化すると、図12(B)に示すように、ヘッド部37が所定の吐出タイミングでインクiを各ノズル52aより順次吐出していることから、所定の着弾位置M1に対して各色のインクiが記録紙Pの搬送方向の上流側にずれて着弾されてしまう、すなわち色ずれが生じてしまう。このような色ずれに対し、メモリ部128に格納された吐出制御データは、色ずれを補正させるように吐出制御部123を制御して各ノズル52aより吐出されるインクiの吐出タイミングを補正させるプログラムデータであり、図12(C)に示すように、ブラックのインクiが記録紙Pの搬送方向の上流側にずれて着弾される着弾位置M2と略同じ位置にブラック以外のインクiが着弾されるようにブラックのインクiが吐出されるノズル52a以外のノズル52aより吐出されるインクiの吐出タイミングを制御させる。具体的には、ブラックのインクiが吐出される前に吐出されるブラック以外のインクiの吐出タイミングを、記録紙Pの搬送速度が速くなる前より遅らせてインクiを吐出させるように制御し、ブラックのインクiが着弾される着弾位置M2にブラック以外のインクiが着弾されるようにさせる。
ここで、印刷途中で搬送速度が速まったときの記録紙Pの先端から距離毎に起こる各色のインクiの本来着弾される着弾位置M1に対してどのくらい色ずれして着弾しているか、すなわち着弾位置M1に対してどの位ずれて着弾位置M2に着弾するかを測定した結果を図13に示す。なお、図13中yはイエローのインクiにおけるずれ量を示し、mはマゼンダのインクiにおけるずれ量を示し、cはシアンのインクiにおけるずれ量を示し、kはブラックのインクiにおけるずれ量を示している。
図13に示す測定結果より、印刷が記録紙Pの先端から250mm位に進んだところで搬送速度が変化して色ずれが生じはじめており、記録紙Pの搬送方向の最も下流側のノズル52aより吐出されるブラックのインクiの色ずれが最も大きくなっていることがわかる。そして、上述した吐出制御データは、ブラック以外のインクiを搬送速度が速くなる前より吐出タイミング遅らせて吐出させ、図13中に示すブラックのインクiずれ量にブラック以外のインクiのずれ量が略同じになるようにして色ずれを抑制させる。
そして、吐出制御データは、搬送速度が変化したことで起こる色ずれが補正された後は、ブラック以外のインクiの吐出タイミングを遅らせたままでは逆に色ずれが生じてしまうことから、再び搬送速度が変化する前の吐出タイミングで各ノズル52aより各色のインクiを順次吐出するように吐出制御部123を制御する。
一般的に、プリンタ装置1では、温度や湿度が高いと、上述した送りローラー94及び排紙ローラー101とパルスモータ103a,103bとを接続する無端駆動ベルトが温度や湿度の影響で長くなり、無端駆動ベルトのピッチが広くなる。これにより、無端駆動ベルトのテンションが弱まり、ローラー94及び排紙ローラー101等に備わり且つ無端駆動ベルトが掛け合わされるプーリー1歯当たりの送りピッチが減少し、記録紙Pの搬送速度が低下して色ずれが小さくなる。すなわち、常温時に搬送速度が変化することで起こる色ずれより、温度や湿度が高いときのほうが異なる色のインクiの着弾位置ずれが小さくなる。
一方、温度や湿度が低いと、無端駆動ベルトが温度や湿度の影響で短くなり、無端駆動ベルトのピッチが狭くなる。これにより、無端駆動ベルトのテンションが高くなってローラー94及び排紙ローラー101等に備わるプーリー1歯当たりの送りピッチが増大し、記録紙Pの搬送速度が大きくなって色ずれが大きくなる。すなわち、常温時に搬送速度が変化することで起こる色ずれより、温度や湿度が低いときのほうが異なる色のインクiの着弾位置ずれが大きくなる。
したがって、吐出制御データによって色ずれを補正する際は、温度センサ73による環境データに基づき後述する制御部129で吐出制御データを調整し、この調整した吐出制御データで制御した吐出タイミングでブラック以外のインクiを吐出させ、ブラックのインクiが着弾される着弾位置M2にブラック以外のインクiを着弾させる。
以上のようにして吐出制御部123を吐出制御する吐出制御データが格納されたメモリ部128には、記録紙Pの種類や厚み等によって送りローラー94や排紙ローラー101とのグリップ力等が異なり、搬送速度が変化する程度が違う、すなわち記録紙Pの種類毎に色ずれの度合いが異なることから、記録紙Pの種類に対応した複数の吐出制御データが格納されている。
制御部129は、例えばCPU等であり、入出力端子125から入力された印刷データ、ヘッドカートリッジ2から入力されがインクiの残量データ等に基づき、各部を制御する。制御部129は、入力された制御信号等に基づいて各部を制御する処理プログラムをROM126から読み出してRAM127に記憶し、この処理プログラムに基づき各部の制御や処理を行う。
すなわち、制御部129は、ROM166に格納された処理プログラムに基づき、ヘッドキャップ44が開閉動作するようにヘッドキャップ開閉機構71を制御したり、収納トレイ64から記録紙Pを給紙し、印刷後に給排紙口63の蓋トレイ65上へと記録紙Pを送り出すように給排紙機構72を制御したりする。また、制御部129は、搬送速度が速くなる前は温度センサ74からの環境データ、予めメモリ部128に格納された搬送速度データに基づいて所定の吐出タイミングで適切にインクiが吐出されるように吐出制御部123を制御したり、印刷途中で搬送速度が速くなったときは環境データ、予めメモリ部128に格納された吐出制御データに基づいて色ずれのない印刷が記録紙Pに施されるように吐出制御部123を制御したりする。
なお、以上のように構成された制御回路121においては、ROM126に処理プログラムを格納するようにしたが、処理プログラムを格納する媒体としては、ROM126に限定されるものでなく、例えば処理プログラムが記録された光ディスクや、磁気ディスク、光磁気ディスク、ICカード等の各種記録媒体を用いることができる。この場合に制御回路121は、各種記録媒体を駆動するドライブと直接又は情報処理装置130を介して接続されてこれら記録媒体から処理プログラムを読み出すように構成する。
また、ここでは、メモリ部128に速度判別データ、搬送速度データ、複数の吐出制御データ等を格納させた構成にしているが、例えばRAM126、ROM127の容量に余裕がある場合、これらのデータをRAM126及び/又はROM127に格納させるようにしてもよい。
ここで、以上のように構成されるプリンタ装置1の印刷動作について図14及び図15に示すフローチャートを参照にして説明する。なお、本動作はROM126等の記憶手段に格納された処理プログラムに基づいて制御部129内の図示しないCPUの演算処理等により実行されるものである。
先ず、プリンタ本体3に設けられている操作ボタン68が操作されたり、入出力端子125を介して外部の情報処理装置130から入力されたりして制御部129に印刷動作をプリンタ装置1が実行する命令信号が入力される。このとき、印刷する記録紙Pの種類に関する情報信号も入力され、如何なる種類の記録紙Pに印刷が行われるかが設定される。
次に、制御部129は、ステップS1において、各タンク装着部31に所定の色のインクタンク11が装着されているか、又ヘッドカートリッジ2がプリンタ本体3のヘッド装着部66に装着されているかどうかを判断する。そして、制御部129は、全てのタンク装着部31に所定の色のインクタンク11が適切に装着且つヘッドカートリッジ2がプリンタ本体3のヘッド装着部66に装着されているときはステップS2に進み、タンク装着部31にインクタンク11が適切に装着されていないとき、及び/又はプリンタ本体3のヘッド装着部66にヘッドカートリッジ2が装着されていないときはステップS4に進み、印刷動作を禁止する。
制御部129は、ステップS2において、インクタンク11内のインクiが所定量以下、すなわちインク無し状態であるか否かを判断し、インク無し状態であると判断されたときは、警告部124でその旨を警告し、ステップS4において、印刷動作を禁止する。一方、制御部129は、インクタンク11内のインクiが所定量以上であるとき、すなわちインクiが満たされているとき、ステップS3において、印刷動作を許可する。
そして、印刷動作を許可されたプリンタ装置1では、図15に示すように、ステップS11において、制御部129がプリンタ制御部122によってヘッドキャップ開閉機構71及び給排紙機構72を駆動制御し、記録紙Pを印刷可能な位置まで搬送させる。具体的に、印刷動作が開始されると、制御部129は、ヘッドキャップ開閉機構71を駆動制御して、吐出面41を閉塞した状態にあるヘッドキャップ44を、図9に示すように、プリンタ装置1の前面側の退避位置へと移動する。また、制御部129は、図9に示すように、図示しない昇降機構を駆動制御して送りローラー94、排紙ローラー101、プラテン板104を待避位置から搬送位置へと上昇させ、且つパルスモータ103a,103b等を駆動制御して記録紙Pを図9中矢印E方向に搬送させる。このとき、温度センサ74は、ステップS12において、ヘッド部37近傍の温度を検出し、環境データとして制御部129に出力する。
次に、制御部129は、ステップS13において、給排紙機構72によって印刷位置まで搬送され、且つ送りローラー94と排紙ローラー101とによって搬送方向に緊張した状態にされた記録紙Pに対し、温度センサ74より入力された環境データ、予めメモリ部128に格納され、且つ印刷開始時に設定された記録紙Pの種類に対応する搬送速度データに基づいて吐出制御部123でインク吐出ヘッド45を制御し、インクiを適切な吐出タイミングで吐出、着弾させ、入出力端子125を介して外部の情報処理装置130等から入力された文字データや画像データ等といった印刷データに基づくインクドットからなる文字や画像を記録させる。すなわち、記録紙Pに対して印刷を行う。
次に、制御部129は、ステップS14において、速度判別部73の後端検出センサ111で印刷中の記録紙Pの後端を検出し、検出されたら後端検出データとして速度判別部73より入力される。そして、記録紙Pの後端が検出されるまではステップ13の印刷を継続し、記録紙Pの後端を検出したら、後端検出センサ111からの後端検出データと、エンコーダ112からの回転検出データと、予めメモリ部128に記憶されている速度判別データとによって記録紙Pの搬送速度が速くなったと判別してステップS15に進み、色ずれの補正を行う。
次に、制御部129は、ステップS15において、速度判別部73が記録紙Pの後端を検出して搬送速度が速くなったと判別されると、温度センサからの環境データ、予めメモリ部128に格納され、且つ印刷開始時に設定された記録紙Pの種類に対応する吐出制御データに基づいて吐出制御部123でインク吐出ヘッド45を制御し、ブラック以外のインクiの吐出タイミングを搬送速度が速くなる前より遅らせて吐出させ、色ずれが起きないようにインクiの着弾位置を補正させる。
そして、制御部129は、ステップS16において、色ずれ補正後、吐出制御データにより再び搬送速度が変化する前の吐出タイミングで各色のインクiを順次吐出するように吐出制御部123を制御し、印刷データを最後まで印刷し、印刷を終了させる。
次に、制御部129は、ステップS17において、給排紙機構72を制御して印刷が終了した記録紙Pを排紙ローラー101より蓋トレイ65上に排出し、印刷動作を終了する。
そして、プリンタ装置1においては、インクタンク11内のインクがなくなるか、収納トレイ64内の記録紙Pがなくなるか、操作ボタン68や入出力端子125を介して外部の情報処理装置130から印刷中止の命令信号が入力されるまで、ステップ11〜ステップ17の印刷動作を繰り返す。
以上のような方法で印刷動作を行うプリンタ装置1では、速度判別部73の後端検出センサ111が印刷中の記録紙Pの後端を検出し、記録紙Pの搬送速度が速くなったと判別されると、温度センサ74からの環境データ、予めメモリ部128に格納された記録紙Pの種類に対応した吐出制御データに基づいて搬送速度が変化したことで起こる色ずれを補正する。
すなわち、このプリンタ装置1では、印刷中に記録紙Pの搬送速度が速くなると、環境データが要素として盛り込まれた吐出制御データに基づき、搬送方向の最下流側のノズル52aより吐出されるブラックのインクi以外のインクiの吐出タイミングを記録紙Pの搬送速度が速くなる前より遅らせて制御し、ブラックのインクiが着弾される着弾位置にブラック以外のインクiを着弾させて搬送速度が変化したときに起こる色ずれを補正させる。
したがって、このプリンタ装置1では、印刷中に搬送速度が変化しても、記録紙Pの種類や、周囲の環境温度等を考慮しつつ、印刷中に搬送速度が変化することで起こる色ずれが防止された高品位な印刷を行うことができる。
以上は、本発明をプリンタ装置に適用した例について説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものではなく、液体を吐出する他の液体吐出装置に広く適用することが可能である。例えばファクシミリやコピー機、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−34560号公報)、プリンタ配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置等にも適用可能である。
以上では、1つの発熱抵抗体55がインクiを加熱して吐出するインク吐出ヘッド45を例に挙げて説明したが、このような構造に限定されることはなく、複数の圧力発生素子を備え、各圧力発生素子に異なるエネルギー又は異なるタイミングでエネルギーを供給することで吐出方向を制御することが可能な吐出手段を備える液体吐出装置にも適用可能である。
以上では、1つの発熱抵抗体55によってインクiを加熱しながらノズル52aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えばピエゾ素子といった圧電素子等の電気機械変換素子等によってインクを電気機械的にノズルより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
以上では、ライン型のプリンタ装置1を例に挙げて説明したが、このことに限定されることはなく、例えばインクヘッドが記録紙Pの走行方向と略直交する方向に移動するシリアル型の液体吐出装置にも適用可能である。
1 液体吐出装置(液体吐出装置)、2 プリンタヘッドカートリッジ、3 プリンタ本体、11 インクタンク、12 カートリッジ本体、37 ヘッド部、41 吐出面、44 カバーキャップ、45 インク吐出ヘッド、52a ノズル、72 給排紙機構、73 速度判別部、74 温度センサ、94 送りローラー、101 排紙ローラー、103a,103b パルスモータ、111 後端検出センサ、112 エンコーダ、128 メモリ部、129 制御部