JP4016873B2 - 脱イオン水製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は脱イオン水製造方法に係り、特に、混床式イオン交換器を用いて脱イオン水を製造するに当り、混床式イオン交換器の除菌、殺菌性能を有効に発揮させて、良好な処理水を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
混床式イオン交換器を利用した脱イオン水の製造システムの従来例を図1に示す。
【0003】
図1(a)は、医薬分野で用いられる精製水製造システムの系統図であり、原水(前処理水)は、タンク1及びポンプPを経て逆浸透(RO)膜装置2及び混床式イオン交換器3で処理された後、タンク4、ポンプP、熱交換器5、紫外線(UV)殺菌装置6及び限外濾過(UF)膜装置7よりなるサブシステムで処理され、ユースポイントに送給される。
【0004】
図1(b)は、半導体分野で用いられる超純水製造システムの系統図であり、原水となる純水(脱塩水)は、タンク1及びポンプPを経てRO膜装置2で処理された後、タンク4、ポンプP、熱交換器5、低圧UV酸化装置8、混床式イオン交換器3、UV殺菌装置6及びUF膜装置7よりなるサブシステムで処理され、ユースポイントに送給される。
【0005】
なお、これらのシステムにおいては、装置の運転開始に当り、サブシステムを熱水又は薬品により殺菌する。例えば、図1(a)に示す精製水製造システムにおいて熱水殺菌を行う場合には、タンク4内の水を熱交換器5で80〜90℃に加熱した後、UV殺菌装置6及びUF膜装置7に通水する。このUF膜装置7の濃縮水及び透過水は系外へ排出する。また、ユースポイントからタンク4に到る配管は蒸気による滅菌処理が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の精製水製造システムでは、混床式イオン交換器の処理水に生菌が存在するため、サブシステムが短時間で生菌により汚染される。この生菌は、UV殺菌装置で完全に除去することはできず、時間の経過と共に、系内に生菌が増殖することとなる。
【0007】
即ち、混床式イオン交換器の混床式イオン交換樹脂には殺菌能力があり、精製水製造システムにおいても混床式イオン交換器による殺菌効果が期待されるが、実際には、混床式イオン交換器の流出水中には生菌が存在し、この生菌数は、経時的に増加する傾向にある。
【0008】
この混床式イオン交換器の生菌は、樹脂の充填に当り、予め混床式イオン交換器のタンク(ベッセル)及び樹脂自体の殺菌を行っても発生し、通常の場合、混床式イオン交換器流出水中には10〜10個/100cc程度の生菌が存在する。そして、この生菌数は運転時間の経過と共に増大する。この混床式イオン交換器における生菌の増殖の原因の詳細は明らかではないが、タンク(ベッセル)に樹脂を充填する際に生じる外部汚染によるものと推測される。
【0009】
このような混床式イオン交換器における生菌汚染は、図1(b)に示す超純水製造システムの混床式イオン交換器においても問題となっており、これらのシステムにおいて、混床式イオン交換器における生菌の発生を防止する方法の開発が望まれている。
【0010】
本発明は上記従来の問題点を解決し、混床式イオン交換器を用いて脱イオン水を製造するに当り、混床式イオン交換器での生菌の発生を防止すると共に、混床式イオン交換樹脂本来の除菌、殺菌性能を有効に発揮させて、良好な処理水を得る方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の脱イオン水製造方法は、原水を逆浸透膜装置、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を内蔵した混床式イオン交換器に通水した後、熱交換器を備えるサブシステムに通水して脱イオン水を製造する方法において、該逆浸透膜装置、該混床式イオン交換器及び該サブシステムよりなる脱イオン水製造装置の運転開始に際し、該サブシステムに熱水を通水して該サブシステム内を殺菌すると共に、該サブシステムを殺菌した後の熱水を前記混床式イオン交換器の入口側に循環することにより、該混床式イオン交換器に熱水を通水して殺菌処理することを特徴とする。
【0012】
このように装置運転開始に当り、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を内蔵した混床式イオン交換器を熱水で殺菌処理することにより、混床式イオン交換器は破過(イオンブレーク)に到るまで生菌を発生させることがない。そして、混床式イオン交換樹脂本来の除菌、殺菌性能により、流入する生菌も殺菌され、混床式イオン交換器以降の系内を無菌状態に維持することができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明においては、原水をRO膜装置、混床式イオン交換器に通水した後、熱交換器を備えるサブシステムに通水して脱イオン水を製造するに当り、混床式イオン交換器に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填した後、サブシステムに熱水を通水してサブシステム内を殺菌すると共に、サブシステムを殺菌した後の熱を混床式イオン交換器の入口側に循環することにより、混床式イオン交換器に熱水を通し、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を内蔵した混床式イオン交換器を殺菌処理する。
【0015】
本発明において、この殺菌処理に用いる熱水は、純水を加熱したものであることが好ましく、用いる熱水の温度は、殺菌効果の面から、60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは85℃以上であることが望ましい。
【0016】
また、熱水の流通速度はSV=2〜100hr−1程度とするのが好ましく、熱水による殺菌処理時間は15分以上、特に30分以上とするのが好ましい。
【0017】
なお、本発明では、このように混床式イオン交換器に熱水を通水するために、系内の熱水と接触する部分、例えば、混床式イオン交換器のタンクや配管は、ステンレス等の耐熱性材料で構成する必要がある。
【0018】
本発明の脱イオン水製造方法は、図1(a),(b)に示すような医薬向け精製水製造システム、半導体向け超純水製造システム、その他、RO膜装置、混床式イオン交換器及びサブシステムを用いて脱イオン水を製造する各種のシステムに適用することができる。
【0019】
例えば、本発明を図1(a)に示す医薬向け精製水製造システムに適用する場合、次のようにして混床式イオン交換器の熱水殺菌を行うことができる。即ち、前述の如く、このシステムでは、装置の立ち上げに際し、80〜90℃の熱水でサブシステム内の殺菌を行う。そして、この殺菌処理において、UF膜装置7の濃縮水及び透過水は系外へ排出する。本発明の適用に当っては、このサブシステムの殺菌処理において、UF膜装置7の透過水(80〜90℃の熱水)を系外に排出することなく、混床式イオン交換器3の入口側に循環して混床式イオン交換器3を熱水で殺菌する。このようにすることにより、サブシステムの殺菌と共に混床式イオン交換器の殺菌も行うことができる。この混床式イオン交換器3の流出水は系外へ排出しても良く、また、後段のタンク4に送給しても良い
【0020】
なお、本発明においては、タンクに陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填した後に当該混床式イオン交換器に熱水を通水するものであるが、混床式イオン交換器のタンク、並びに、このタンクに充填する陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂もそれぞれ充填に先立ち殺菌処理して用いるのが好ましい。具体的には、タンクは、121℃以上の蒸気を10〜30分間程度通して殺菌する。また、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂は、各々、60℃以上の熱水に15〜60分間程度浸漬処理して殺菌する。
【0021】
以下に実例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0022】
例1
図2に示す試験装置を用いて、原水(厚木市水)の処理を行った(処理水量0.5m/hr)。
【0023】
図2の試験装置は、原水を活性炭塔11で処理した後、タンク12を経てポンプ13でRO膜装置14に送って、RO膜分離処理し、膜透過水を熱交換器15を経て混床式イオン交換器16A,16Bに2等分して通水し、各々処理水を得るものである。
【0024】
活性炭塔11の活性炭としては(株)クラレ製「クラレコールKW」を用い、RO膜装置14のRO膜としてはデサリ社製「SG4040CZH」(4inch)を4本用いた。また、混床式イオン交換器16A,16Bとしては、栗田工業(株)製「KWI EX−MG」(25L)を用い、SV=10hr−1に設定した。
【0025】
混床式イオン交換器16A,16Bのイオン交換樹脂としては、各々、80℃の熱水に1時間浸漬した後、陽イオン交換樹脂:陰イオン交換樹脂=1:1で混合したものを用いた。
【0026】
まず、混床式イオン交換器16A,16Bのタンクに上記イオン交換樹脂を充填する前に、配管17より130℃の蒸気を3kgf/cmで2時間注入し、混床式イオン交換器16A,16Bのタンクを殺菌処理し、その後、イオン交換樹脂を充填した。
【0027】
次に、運転を開始したが、この運転開始後1時間の間は、RO膜装置14の透過水を熱交換器15で80℃に加熱し、この加熱水を混床式イオン交換器16Aのみに通水した。
【0028】
その後、RO膜装置14の透過水を熱交換器15で25℃に調整し、混床式イオン交換器16A,16Bに等通水量で20日間連続通水した。このような処理に当り、RO膜装置の透過水(RO処理水)の生菌数と、混床式イオン交換器16A及び混床式イオン交換器16Bの各処理水の生菌数及び比抵抗値の経時変化を調べ、結果を表1に示した。
【0029】
表1より、混床式イオン交換器に樹脂を充填した後、熱水を通水することにより、樹脂の破過に到るまで生菌の流出を防止できることがわかる。
【0030】
【表1】
Figure 0004016873
【0031】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の脱イオン水製造方法によれば、混床式イオン交換器を用いた脱イオン水の製造に当り、混床式イオン交換器における生菌の発生を防止すると共に、混床式イオン交換器による殺菌作用で、混床式イオン交換器から無菌水を取り出すことが可能となる。
【0032】
このため、混床式イオン交換器の後段のUV殺菌装置を省略したり、或いは、サブシステムの殺菌処理の頻度を低減したりすることが可能となり、高水質の脱イオン水を低コストで効率的に製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は医薬分野で用いられる精製水製造システムの系統図、図1(b)は半導体分野で用いられる超純水製造システムの系統図である。
【図2】実施例1及び比較例1で用いた試験装置の系統図である。
【符号の説明】
1,4 タンク
2 RO膜装置
3 混床式イオン交換器
5 熱交換器
6 UV殺菌装置
7 UF膜装置
8 低圧UV酸化装置

Claims (1)

  1. 原水を逆浸透膜装置、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を内蔵した混床式イオン交換器に通水した後、熱交換器を備えるサブシステムに通水して脱イオン水を製造する方法において、
    該逆浸透膜装置、該混床式イオン交換器及び該サブシステムよりなる脱イオン水製造装置の運転開始に際し、該サブシステムに熱水を通水して該サブシステム内を殺菌すると共に、該サブシステムを殺菌した後の熱水を前記混床式イオン交換器の入口側に循環することにより、該混床式イオン交換器に熱水を通水して殺菌処理することを特徴とする脱イオン水製造方法。
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