JP4016410B2 - 搬送台車システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の利用分野】
この発明は搬送台車システムの改良に関し、特に搬送台車への搬送指令の割付に関する。
【0002】
【従来技術】
搬送台車システムとして、例えば工場の天井に沿って軌道を巡らし、天井走行車を走行させるようにしたシステムがある。そしてこのようなシステムは軌道に沿って複数のステーションを設けて、工場での工程間搬送等に用いられる。同様に大規模な自動倉庫や工場等の地上に沿って軌道を巡らし、軌道に沿って複数の入出庫ステーションを配置すると共に、搬送台車を多数台周回させるようにしたものがある。さらに、軌道を設けずに無人搬送車を工場の床面等を多数台走行させて、工作機械やコンベア等のステーション間で物品を搬送させるようにしたものがある。
【0003】
これらのシステムを搬送台車システムと呼ぶと、搬送は搬送台車に搬送指令を割り付けて、指定したステーションで物品を荷積みすることを指令することから始まる。従来の搬送台車の割付方法では、搬送指令の相対的な重要度を考慮せず、全ての指令を一律に扱っていた。そのため緊急性の高い指令も低い指令も同等に扱われ、緊急性の高い指令への処理が遅れることになる。
【0004】
これに対する対策として、例えばステーション毎に優先度を設けて、優先度の高いステーションに優先的に搬送台車を割り付けることが考えられる。しかしながら実際にはステーションの大部分は同等であり、特定のステーションを優先する理由が無い。例えば搬送台車システムを工程間搬送に用いる場合、原則としてどのステーションも同等である。そしてこのシステムで搬送指令に緊急性が生じるのは、ある工程で処理済み品がオーバーフローする恐れがある、あるいはある工程で前工程からの仕掛品の到着が遅れている、等の場合である。このように搬送指令の重要性は状況に応じて変化し、ステーション毎に一律に優先度を割り当てることは不適当である。
【0005】
【発明の課題】
この発明の課題は、緊急性の高い搬送指令と低い搬送指令とに応じて、かつ柔軟に、搬送台車の割り付けを変化させることにある。
この発明での追加の課題は、優先度の高低に応じた搬送台車の割り付けを、容易に行えるようにすることにある。
この発明での追加の課題は、当初低い優先度を付与した搬送指令が、長期間実行されずに残ることを防止することにある。
【0006】
【発明の構成】
この発明は、複数のステーションと多数の搬送台車と、前記搬送台車とを制御する搬送指令を発生させるための制御部とを備えた搬送台車システムにおいて、
前記搬送指令で荷積みを行うステーションから、所定のエリア内の搬送台車を探索して搬送指令を割付けるようにすると共に、前記搬送指令に優先度を割り付け、かつ未実行の搬送指令を待行列に収容して、待行列中での待ち時間に応じて前記の優先度を増し、さらに搬送指令の優先度に応じて前記探索エリアを拡大あるいは縮小することにより、優先度の高い搬送指令に対して優先的に搬送台車を割り付けるように前記制御部を構成したことを特徴とする。
【0007】
このようなシステムとしては、地上走行車システムや天井走行車システム等が有り、共に複数のステーションと多数の搬送台車とを備え、地上走行車システムの場合、軌道を備えたものでも備えていないものでも良い。ただしスタッカークレーンと棚とステーションからなる自動倉庫は、搬送台車に相当するスタッカークレーンが原則として1基しかないので、この発明の対象に含まれない。
【0008】
【発明の作用と効果】
この発明では、搬送指令に優先度を付与し、優先度に応じて搬送台車(以下単に台車とする)の割り付けを行う。このため緊急性の高い搬送指令は速やかに実行され、優先度の低い搬送指令は台車が空くのを待って実行され、効率的に搬送台車システムを運用できる。また優先度はステーションに付与するのではなく、搬送指令に付与するので、柔軟に優先度を付与できる。
【0009】
この発明では、優先度に応じた台車の割り付けを、エリアを可変にすることで処理する。即ちステーションから所定の範囲をエリアとし、エリア内の空き台車に搬送指令(以下単に指令と呼ぶことがある)を割り付ける。そして優先度の高い指令ほど、エリアを広くする。優先度を可変にすると、複数のステーションの間でエリアが重複するので、エリア内での競合として台車の割り付けが行われる。そしてエリアを広くすれば、優先的に台車が割り付けられる機会が増し、容易に優先度に応じた台車の割り付けができる。
【0010】
また台車を割り付ける範囲をエリアで限定すれば、優先度の高い指令に対してはるかに遠方の台車を割り付けることがなくなる。仮に極端に遠方の台車を優先度の高い指令に割り付けると、優先度を尊重する余り、システム全体の効率が低下する。これに対してエリアを設け、エリアを可変にすると、優先度に応じた割り付けを容易に行え、かつシステム全体としての効率を低下させることが無い。
【0011】
この発明では、搬送指令を待行列に収容して、実行までに時間が経過すると優先度を増加させる。このため長時間実行されない搬送指令は優先度が増加し、実行されずに長時間搬送指令が放置されることがなくなる。
【0012】
【実施例】
図1〜図6に実施例とその変形を示す。図1に実施例の全体構成を示すと、2は制御部で、4は軌道であり、軌道に沿って多数のステーションS1〜S15や、台車T1〜T7を配置し、台車T1〜T7を軌道に沿って原則として同じ方向に周回させる。各ステーションS1〜S15には、空き台車を探索するための探索エリアR1〜R15があり、これらのエリアはステーションから見て上流側へ配置する。なお探索エリアR1〜R15は各ステーションの物品に対する搬送指令の優先度に応じて変化しており、一定ではない。
【0013】
図2に制御部2の構成を示す。6は制御部本体で、図示しない上位コンピュータと接続されており、また光通信等により各ステーションS1〜S15や各台車T1〜T7に接続されている。制御部2には搬送指令発生部8と割付管理部10等があり、割付管理部10のサブシステムとして優先度発生部12,優先度変更部14,探索エリア管理部16があり、他に共用データを記憶した共用メモリ18等がある。そして搬送指令発生部8は各物品に対する搬送指令を発生させて、これをステーションや台車に割り付けると共に、例えば優先度の初期値を指令に付与する。
【0014】
割付管理部10は、ステーションへの台車の割付を管理し、優先度発生部12で各搬送指令に対する優先度を発生させ、優先度変更部14で長時間処理されなかった搬送指令等に対して優先度を増加させ、探索エリア管理部16で各ステーションに対する探索エリアを拡大あるいは縮小して、優先度に応じて探索エリアが変化するように構成する。
【0015】
共用メモリ18では、各台車のステータス、例えば台車が空きか、指令を割り付け済みか、搬送中かの種類を記録する。また共用メモリ18には、ステーションステータスとして、各ステーションに特別の優先度がある場合にはその値、ステーションに物品がなく到着予定の物品もない要求の無い状態、ステーションに物品が到着し荷積み要求がある状態、台車から荷下ろし中である状態等の、ステーションの状態を記録する。また搬送指令発生部8で発生させた搬送指令は、共用メモリ18に記憶させる。この他共用メモリ18には、搬送台車システムの維持管理に必要な共用データを記憶させる。
【0016】
図3に実施例での優先度の付与と探索エリアの管理とを示す。図の左側から搬送指令が割付管理部10に送られて来るものとする。この搬送指令はステーションまで物品が到着し、台車への荷積み要求が生じた時点で送られる。搬送指令は、優先度発生部12のサブシステムとしての優先度付与部12−1に送られ、共用メモリ18を参照して、搬送指令中に高い優先度が指定されているかどうか、あるいは該当するステーションが特別のステーションで、他とは異なる優先度があるか等をチェックする。そして搬送指令に優先度が指定されている場合やステーションに特別の優先度が指定されている場合、それらの優先度を搬送指令に付与して送り出す。
【0017】
なお搬送指令発生部8で付与する優先度は、例えば上位コンピュータで管理する出荷計画等に応じて指定し、あるいは台車システムのマニュアル入力用の端末から指定し、また同じステーションから繰り返して物品の出荷が行われることを搬送指令発生部8で検出して、優先度を高く指定すること等で定める。優先度を付与された搬送指令は、優先度発生部12のサブシステムとしての待行列12−2に入り、ここに収容される。
【0018】
探索エリア管理部16には、荷積み要求のあるステーションについて探索エリアの範囲を指定した表が有り、探索エリアの範囲は、待行列12−2での各搬送指令の優先度で定まる。即ち優先度の高い搬送指令に対しては探索エリアを広くし、優先度の低い搬送指令に対しては探索エリアを狭くする。そして探索エリア内に空き台車が表れ、ステーションにその台車を割付ると、搬送指令の割付が実行されて、該当する指令が削除される。
【0019】
待行列12−2中に優先度の低い搬送指令が長期間実行されずに放置されることを防止するため、タイマ14−1で所定の時間毎に、待行列12−2中の搬送指令の優先度を例えば1増加させる。また実施例では、各ステーションにバッファが存在し、例えば2回搬送分程度の物品を収容できるものとす。そしてステーションのバッファが満員になると、ステーション状態チェック部14−2で優先度を例えば2増加させる。なおステーションのバッファが満員か否かをチェックする代わりに、ステーションに出荷すべき物品が到着する毎に、そのステーションの先頭の搬送指令、(この指令は待行列12−2に存在する)、の優先度を増加させても良い。
【0020】
図4に実線,破線,一点鎖線の3つの搬送指令について、優先度の変化を示す。各搬送指令はステーションへの物品の到着で発生し、台車に荷積みが行われることで消滅する。さて実線の搬送指令では、当初の優先度が1と低く、その後優先度は2に増加するが、途中で優先度の高い搬送指令(破線)が生じ、これが先に処理されるので、実行が遅れる。そこでこの間、所定の時間毎に優先度が例えば1ずつ増加され、優先度が3に達する。図では、この後さらに優先度の高い鎖線の搬送指令が生じているが、例えばここで実線の搬送指令のステーションにさらに出荷物品が到着したとする。するとこのステーションにはバッファに余裕がなくなり、優先度がさらに2増加されて、次の台車で荷積みが行われる。
【0021】
このように実施例では、搬送指令の優先度やステーションの状態及び搬送指令が長期間放置されていたこと等に応じて、優先度を付与あるいは変更し、優先度に応じて処理を行うので、効率的でかつ公平な処理ができる。
【0022】
台車の割付は探索エリア内での空き台車に対して行われる。このため、探索エリアが重複するステーション間で優先度の最も高いものに、台車を割り当てることになる。この結果、優先度の高いステーションほど、より上流側まで台車の割当に参加でき、より速やかに台車を割り当てられる機会が増加する。
【0023】
台車の割当は探索エリア内に限られているので、例えば図1のステーションS2の搬送指令の優先度が極めて高い場合でも、軌道の反対側のステーションS10付近にある台車T7を割り当てられることはない。ここで仮にステーションS2に反対側の台車T7を割り当てると、途中のステーションで荷積みを行う機会があっても無視することになり、システム全体としての効率が低下する。そこで台車の割当をエリアにより制限することにより、搬送台車システムを効率的に保つことができる。
【0024】
図5に、実施例での優先度の割付アルゴリズムを示す。ステーションから台車への搬送指令が発生すると、指令中に指定された優先度やステーションの優先度に応じ、指令に優先度を割り付ける。次いで、搬送指令を待行列に入れ、優先度に応じて探索エリアを指定し、その結果を探索エリア管理部16で管理する。ここでエリア内に空き台車が表れた場合、その台車を割り付けて荷積みを行うと、ステーションから台車への搬送指令が終了し、指令が削除される。代わって台車には行き先ステーションまでの搬送指令が付与される。台車の割付が行われない場合で、該当するステーションのバッファが満員の場合、優先度を例えば2増加し、待行列12−2に入ってからの所定の時間経過すると、その都度優先度を1増加させる。
【0025】
図6に搬送指令のセットに関する処理を示す。ここに搬送指令のセットとは、同一の出荷先(例えば同一のトラック)に複数種の物品を出荷する必要が生じた場合等の概念で、複数回の搬送の最終仕向け先が同じ場合を意味する。このような場合、セットを構成する複数の搬送指令中の一部のみが実行されても意味がなく、全部の指令が実行されることが重要である。そこで例えばセット中の未実行の搬送指令が1になった時点で、優先度を増加させる。
【0026】
搬送指令のセットが生じると、各搬送指令にセット番号を付与して、セットであることを認識できるようにする。また当初付与する優先度は共通とする。そして図5のアルゴリズムと同様にエリア内に空き台車があるかどうか探索し、空き台車が存在すれば台車の割付を行って、割付済みの指令を削除する。このようにして全ての指令に台車の割付が行われれば、搬送指令のセットは実行により消滅する。
【0027】
台車が未割付の指令に対して、所定時間の経過毎に優先度を1増加させ、ステーションのバッファが満員でゆとりが無くなると優先度を2増加させ、セット中の他の搬送指令が実行済みの場合、最後の搬送指令に対して優先度を例えば3増加させる。このためセットの大部分が実行されると、残りの部分には高い優先度が付与され、速やかにセット全体が終了するように台車が割り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の搬送台車システムの構成を示す図
【図2】 実施例での台車の割り付け管理部のブロック図
【図3】 実施例での台車の割り付け過程での優先度の変化を示す図
【図4】 実施例での優先度の変化を搬送指令毎に示した特性図
【図5】 実施例での優先度の管理アルゴリズムを示すフローチャート
【図6】 変形例での優先度の管理アルゴリズムを示すフローチャート
【符号の説明】
2 制御部
4 軌道
S1〜S15 ステーション
T1〜T7 搬送台車
R1〜R15 探索エリア
6 制御部本体
8 搬送指令発生部
10 割り付け管理部
12 優先度発生部
12−1 優先度付与部
12−2 待行列
14 優先度変更部
14−1 タイマ
14−2 ステーション状態チェック部
16 探索エリア管理部
18 共用メモリ

Claims (1)

  1. 複数のステーションと多数の搬送台車と、前記搬送台車とを制御する搬送指令を発生させるための制御部とを備えた搬送台車システムにおいて、
    前記搬送指令で荷積みを行うステーションから、所定のエリア内の搬送台車を探索して搬送指令を割付けるようにすると共に、前記搬送指令に優先度を割り付け、かつ未実行の搬送指令を待行列に収容して、待行列中での待ち時間に応じて前記の優先度を増し、さらに搬送指令の優先度に応じて前記探索エリアを拡大あるいは縮小することにより、優先度の高い搬送指令に対して優先的に搬送台車を割り付けるように前記制御部を構成したことを特徴とする、搬送台車システム。
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