JP4012483B2 - 一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法、および皮膜密着性に優れた絶縁皮膜を有する一方向性電磁鋼板 - Google Patents

一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法、および皮膜密着性に優れた絶縁皮膜を有する一方向性電磁鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォルステライト皮膜のない一方向性電磁鋼板、さらには、鏡面に調整した仕上げ焼鈍後の一方向性電磁鋼板に、張力付与型の絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成方法、及び該絶縁皮膜を有する電磁鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
一方向性電磁鋼板は、磁気鉄心材料として多用されており、エネルギーロスを少なくするために鉄損の少ない材料が求められている。
従来から、一方向性電磁鋼板の鉄損の低減には、張力皮膜の付与が有効であり、この張力皮膜としては、仕上焼鈍工程において鋼板表面の酸化物と焼鈍分離材とが反応して生成するフォルステライト主体の皮膜が有効であることが知られている。
【0003】
特許文献1には、コロイド状シリカと燐酸塩を主体とするコ−テイング液を塗布焼き付けることによって得られる絶縁被膜を形成することによる鉄損低減方法が開示されており、特許文献2には、アルミナゾルと硼酸を主体とするコ−テイング液を塗布焼き付けることによって得られるAl 2 3 −B 2 3 系の結晶質被膜を形成することによる鉄損低減方法が開示されている。
【0004】
しかし、フォルステライト皮膜は、皮膜密着性に優れている反面、地鉄との界面構造が乱れているために、鉄損に対する張力効果がある程度相殺されている。この改善策として、特許文献3には、フォルステライト皮膜を除去するあるいは更に鋼板表面に鏡面化仕上げを行った後に、張力皮膜を付与することによって、更なる鉄損低減を試みる技術が開示されている。
【0005】
しかし、鏡面化した地鉄表面の皮膜密着性は、フォルステライト皮膜のように優れていないため、この改善策として、特許文献4には、地鉄と絶縁皮膜の中間層としてシリカ皮膜を形成する等の処理を行う皮膜密着性改善方法が開示されている。この場合、絶縁皮膜の密着性は、中間層であるシリカ皮膜と地鉄との界面の密着性に依存することが知られており、特許文献5には、このシリカ皮膜と地鉄との界面の密着性に、Fe系水酸化物が影響を及ぼすことが開示されている。
しかし、シリカ皮膜と地鉄との界面の密着性に影響を及ぼす因子については、あまり研究が行われておらず、そのため、密着性に優れた絶縁皮膜を得るための材料指針は得られていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭48−39338号公報
【特許文献2】
特開平6−306628号公報
【特許文献3】
特開昭49−96920号公報
【特許文献4】
特開平6−184762号公報
【特許文献5】
特開平8−269573号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、一方向性電磁鋼板の地鉄と、地鉄と絶縁皮膜との中間層であるシリカ皮膜との、界面の密着性に影響を及ぼす不純物元素を特定することにより、皮膜密着性に優れた絶縁皮膜形成方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
一方向性電磁鋼板表面に形成された絶縁皮膜の皮膜密着性を支配する要因としては、地鉄と中間層であるシリカ皮膜との界面の形状や、該界面における不純物や析出物の存在などが考えられるが、要因別に実験的に調べることは非常に困難であった。そこで本発明者らは、一方向性電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面に存在する元素が絶縁皮膜の皮膜密着性に及ぼす影響について、理論的な見積りを試みた。
【0009】
本発明者らは、一方向性電磁鋼板地鉄と、地鉄と絶縁皮膜の中間層であるシリカ皮膜との界面の密着力について、後述のような理論計算による解析予測方法を用いて鋭意検討した結果、地鉄とシリカ皮膜との界面に存在する不純物元素が皮膜密着性に及ぼす影響は、計算により解析可能であることを見出した。更に後述のように、地鉄とシリカ皮膜との界面に存在する元素の種類により、絶縁皮膜の皮膜密着性が異なることを新たに見出した。
【0010】
本発明は、前記知見に基づきなされたものであり、一方向性電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面に、界面エネルギーを低減する元素を存在させることによって、密着性に優れた一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜を形成する方法、及び該絶縁皮膜を有する電磁鋼板に関するものであり、その要旨は次の通りである。
(1) 一方向性電磁鋼板表面のフォルステライト主体の皮膜を除去した後、または、該鋼板表面を鏡面に調整した後、該鋼板表面にシリカ皮膜を形成する前段に、該鋼板表面とシリカ皮膜との界面エネルギーを低減する、Ti、Cr、Yから選ばれる1種以上の酸化物を、電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面から地鉄側10nm以下の深さに、平均5原子%以上の濃度で分布させ、次いで該表面にシリカ皮膜を形成し、次いで該表面に張力付与型の絶縁皮膜を形成することを特徴とする一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法。
(2) 前記元素を前記鋼板表面に存在させる方法が、CVD法、PVD法、ゾルゲル法、液相析出法のいずれかであることを特徴とする前記(1)に記載の一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法。
(3) 前記(1)記載の方法により製造された一方向性電磁鋼板であって、その表面にはTi、Cr、Yから選ばれる1種以上の元素の酸化物が層状または島状に存在し、その上層にシリカ皮膜が存在し、さらにその上層に張力付与型の絶縁皮膜が存在することを特徴とする皮膜密着性に優れた絶縁皮膜を有する一方向性電磁鋼板。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
一方向性電磁鋼板地鉄と、該地鉄と絶縁皮膜との中間層であるシリカ皮膜との界面の密着性を計算するために、本発明者らが用いた理論計算による解析予測方法について説明する。
【0012】
具体的には、一方向性電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面に、各種元素を仮想的に存在されることが可能な計算機シミュレーションを利用することを考え、計算方法としては、構成原子の原子番号のみを入力するだけで任意の結晶の電子状態を出力することができる密度汎関数理論に基づく第一原理計算(例えば、G.Kresse and J.Furthmuller, Physical Review B54,(1996)11169 、M.C.Payne,M.P.Teter,D.C.Allan,T.A.Arias and J.D.Joannopoulos,Reviews of Mordern Physics64,(1992)1045)を用いた。
【0013】
ここで言う第一原理計算とは、基底関数が平面波で記述されているもので、遷移金属や軽元素を効率良く取り扱うことが可能な超ソフト擬ポテンシャル(D.Vanderbilt, Physical Review B 41,(1990)7892 )を採用したものである。なお、交換相関エネルギーの関数としては、一般化勾配近似(例えば、J.P.Perdew, K. Burke and M.Ernzerhof, Physical Review Letter 77,(1996)3865)を用いる。
以上の特徴を兼ね備えた市販のパッケージソフトウェアとしては、Cambridge Serial Total Energy Package (CASTEP)や、Vienna Ab-initio Simulation Package (VASP)などがある。
【0014】
本発明においては、界面に存在する不純物元素Mによる界面エネルギーの変化は、不純物元素MがFeの場合を基準(ゼロ)にすると、(1)式によって見積もられ、その値を皮膜密着性の指標とする。
界面エネルギーは、地鉄とシリカ皮膜との界面に存在する元素の影響を含んでおり、このエネルギーが小さいほど、絶縁皮膜の皮膜密着性に優れるものと考えた。
E(Fen-1 M+Six 2x)−E(Fen-1 M)
−E(Fen +Six 2x)+E(Fen )・・・・(1)
上記式(1)において、Eは、括弧内の状態のエネルギーを示す。(Fen-1 M+Six 2x)は地鉄とシリカ皮膜との界面に不純物元素Mが存在している状態、(Fen-1 M)は地鉄表面に不純物元素Mが存在している状態、(Fen +Six 2x)は地鉄とシリカ皮膜との界面の状態、(Fen )は地鉄の表面状態に相当する。n、xはそれぞれ、計算に用いた地鉄とシリカ皮膜との界面のモデルに含まれるFe原子とSi原子の数である。
【0015】
なお、本発明において不純物元素Mとしては、地鉄とシリカ皮膜の界面に偏析しやすい元素であるP、S、Sn、Bi、Ni、Cu、酸素との親和性に優れる元素であるTi、Cr、Yを挙げ、そして比較の対象としてFeを挙げ、これらの元素が界面に偏析する場合の界面エネルギーについて、前記本発明に係る理論計算方法により求めた。
【0016】
図1に、地鉄とシリカ皮膜との界面に上記各不純物元素Mがそれぞれ存在する一方向性電磁鋼板について、Feの値を基準(ゼロ)として、上記(1)式から求めた界面エネルギーを示す。界面エネルギーが正となる元素は、界面に存在することによって界面を不安定化する元素であり、逆にこの値が負となる元素は、界面に存在することによって界面を安定化し、皮膜密着性を向上させるものと考えられる元素である。
【0017】
図1に示すように、一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜の皮膜密着性を向上させる元素としては、Ti、Cr、Yが挙げられる。一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜の皮膜密着性は、鋼板中に存在する不純物元素Mと、中間層であるシリカ皮膜中の酸素および地鉄との結合の強さに依存する。従って、不純物元素Mと地鉄および酸素との結合を強く保持するためには、不純物元素Mとしては、酸素に電子を供給してO2-イオンにしやすい元素が有効であり、イオン化傾向の大きいこれらの元素は皮膜密着性を向上させることが可能であるものと考えられる。
【0018】
一方、図1に示すように、一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜の皮膜密着性を著しく劣化させる元素としては、P、S、Sn、Biが挙げられる。密着性を劣化させる元素は、従来の実験的な知見と一致していることから、本発明に係る理論計算方法による見積もりは妥当であると考えられる。
【0019】
上記の皮膜密着性を向上させる元素であるTi、Cr、Yは、電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面から地鉄側10nmまでの深さにおいて、5原子%以上の濃度で分布させることが好ましく、5原子%未満では顕著な効果が見られない。また、これらの皮膜密着性向上に寄与する元素は、電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面から地鉄側10nm超に存在しても、その効果は飽和する。
【0020】
次に、上記の皮膜密着性を向上させる元素であるTi、Cr、Yを電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面に存在させる本発明に係る方法について記載する。
一方向性電磁鋼板を低酸素分圧中で焼鈍すると、シリカの外部酸化皮膜が形成され、この際に、シリカ皮膜と地鉄との界面に、P、SおよびSnなどの元素が偏析することが知られている(例えば、Yanagihara et al.: Oxidation of Metals, Vol.57 (2002) 281 )。これらの偏析元素は、エネルギー的な安定化のため、鋼板内部からシリカ皮膜と地鉄との界面に拡散・偏析するものであり、シリカ皮膜の製法によらず、高温側から等しい冷却速度で冷却することによって、シリカ皮膜と地鉄との界面に偏析するものであると考えられる。
【0021】
従って、本発明に係る皮膜密着性を向上させる元素であるTi、Cr、Yをシリカ皮膜と地鉄との界面に存在させる処理を行う場合であっても、P、SおよびSnなどの偏析元素も同様に界面に存在する。よって、シリカ皮膜と地鉄との界面に存在する元素の界面エネルギーに及ぼす効果の総和が、絶縁皮膜の皮膜密着性を決定するものと考えられる。
【0022】
本発明に係る絶縁皮膜の皮膜密着性向上が予想される元素を地鉄とシリカ皮膜との界面に存在させる方法としては、特に限定はないが、フォルステライトのない一方向性電磁鋼板に絶縁コーティングを施す処理を行う前に、CVD(化学蒸着法)、PVD(物理蒸着法)、ゾルゲル法、若しくは液相析出法で前記元素の層を形成する方法が挙げられる。またこれらの方法の他に、前記元素を予め鋼板中に添加しておき、熱処理等によって地鉄とシリカの界面に前記元素の層を形成する方法も挙げられる。
【0023】
次に、絶縁皮膜の皮膜密着性向上が予想される元素を存在させる上記処理を行った後、シリカの中間層を形成する処理を行う。
本発明に係るシリカの中間層の形成方法としては、例えば前記特許文献4に開示されている方法が挙げられる。この方法は、一方向性電磁鋼板を弱還元性雰囲気中で焼鈍して、電磁鋼板に必然的に含有されているSiを選択的に熱酸化させることによってSiO2 膜を形成させる方法や、CVDやPVD等のドライコーティングによる製膜方法である。また特開平11−209891号公報に開示されているような、陽極電解処理によりSiO2 膜を形成させる方法も用いることができる。
【0024】
次に、絶縁皮膜の形成処理を行う。
本発明に係る一方向性電磁鋼板上に形成する絶縁皮膜としては、一方向性電磁鋼板に通常使用される耐熱性の無機絶縁皮膜が適用できるが、特に張力付与型の絶縁皮膜である場合に好適に効果を発揮する。
具体的には、前記特許文献1に開示されているコロイド状シリカと燐酸塩を主体とするコーティング液を塗布焼き付けることによって得られる絶縁被膜や、前記特許文献2に開示されているアルミナゾルと硼酸を主体とするコーティング液を塗布焼き付けることによって得られるAl2 3 −B2 3 系の結晶質被膜が挙げられる。また、特開平6−248465号公報には各種張力皮膜材質が開示されているが、その中でもα−アルミナ皮膜が好ましく、α−アルミナ皮膜はアルミナゾルを塗布焼き付けることによって得ることができる。
【0025】
本発明に係る一方向性電磁鋼板とシリカ中間層との界面に存在させた元素の、界面近傍での存在量の分析方法について、以下に記載する。
鋼板地鉄とシリカ皮膜との密着性には、上述のように、鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面から鋼板側の平均10nmまでの極めて薄い領域における濃度が重要であるため、この鋼板とシリカ中間層との界面に存在させた元素の分析には、X線光電子分光法(XPS)やオージェ電子分光法(AES)が好適に用いられる。
【0026】
XPSやAESにより、界面に存在させた元素の界面近傍での存在量を分析する場合、100μm 2 1mm2 以下の領域の面分析を行い、その後にAr+ などのイオンビーム照射により表面から所定の厚さをスパッタリングすることを繰り返す深さ方向分析を行い、界面近傍での存在量を求める。鋼板地鉄とシリカ中間層との界面における元素の分布は、微視的には不均一であるため、分析面積が100μm2 未満の場合は測定結果が測定場所により大きくばらつき、また1mm2 以上の領域を一度に測定するのは一般的なXPSおよびAES装置の性能上困難であるため、分析領域の面積は100μm 2 1mm2 の領域を測定するのが望ましい。また、界面から鋼板地鉄側の10nmまでの領域における元素の濃度を求めることから、深さ方向分析の1回のサイクルにおけるスパッタ厚さは、5nm以下であることが望ましい。
【0027】
なお、本発明に係る一方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法は、上述のように絶縁皮膜形成前の工程に特徴があり、従って、例えば熱間圧延、冷間圧延、窒化処理、焼鈍分離剤塗布工程、脱炭焼鈍工程、最終仕上げ焼鈍等の基本工程の条件については特に限定はなく、本発明に係る絶縁性および張力付与性の優れた一方向性電磁鋼板が得られるものであれば構わない。
【0028】
【実施例】
本発明の実施例について以下に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
試料として、Al2 3 を焼鈍分離剤に用いて仕上げ焼鈍を行った後に、表面を鏡面仕上げした一方向性電磁鋼板(Si含有量:3.2質量%、板厚:0.23mm)を複数枚用いた。
【0029】
各試料表面に、交流マグネトロンスパッタ法により、0.67PaのAr中でTiO2 をターゲットに用いて出力1.0kWの条件下で、平均厚さ2nm(実施例1−1)、5nm(実施例1−2)、10nm(実施例1−3)、20nm(実施例1−4)のTi酸化物層を形成した。なお、Ti酸化物層の形成処理を行わないもの(表面が鏡面仕上げのままのもの)を比較例(比較例1)とした。
【0030】
Ti酸化物層形成処理後に、XPSにより試料の最表面の0.04mm2 の領域を分析した。その後に、1keVのAr+ イオンビーム照射を用いて表層から約1nmの厚さをスパッタし、同様にXPSによりスパッタクレーターの底部の0.04mm2 の領域を分析し、これを繰り返すことで、Ti酸化物層形成処理後の表面から50nmまでの深さ領域の分析を行った。
【0031】
その結果、Ti酸化物の平均厚さが5nm以下の試料(実施例1−1、1−2)では、Ti酸化物は、電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面から地鉄側10nmまでの深さにおいて、平均5原子%以上の濃度で分布していたが、Feの自然酸化膜は一方向性電磁鋼板の表面の一部に存在することから、Ti酸化物は膜状ではなく島状に形成されていることを確認した。
【0032】
次に、Ti酸化物を形成した上から、前記Ti酸化物を形成した方法と同様の方法および条件により、100nmの厚さのシリカ膜を形成し、さらに続いて、アルミナゾルと硼酸を主体とするコーティング液を塗布し、900℃で焼き付けを行い、張力付与型の絶縁皮膜を形成した(絶縁皮膜形成量:片面当たり5g/m2 )。
【0033】
絶縁皮膜の密着性は、各試料を直径10、15、20mmφの丸棒に、角度180度となるように巻き付けた際の、絶縁皮膜の剥離部分の面積率により評価した。ここで、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率が0%の場合を密着性良好とし、これ以外を密着性不良と評価した。
【0034】
表1に結果を示す。本発明に係る表面を鏡面に仕上げた一方向性電磁鋼板とシリカ膜の間に少量のTi酸化物を形成した場合(実施例1−1〜1−4)は、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率が0%であり、上記張力被膜の密着性が極めて良好であった。これに対して、Ti酸化物を形成しない場合(比較例1)は、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率が10%であり、上記張力皮膜の密着性は不良であった。
【0035】
【表1】
Figure 0004012483
【0036】
また、ここでは特に記載していないが、CVD法、ゾルゲル法、液相析出法、あらかじめ鋼板中に添加しておいた元素を熱処理によって地鉄とシリカ膜の界面に偏析させる方法により、平均厚さ2〜20nmのTi酸化物を形成した場合について、同様の張力付与型の絶縁皮膜の剥離面積率の評価試験を行ったが、実施例1と同様の結果が得られた。
またさらに、一方向性電磁鋼板と張力付与型の絶縁皮膜の中間層として、Cr酸化物、Y酸化物を平均厚さ2〜20nmで形成した場合について、同様の張力付与型の絶縁皮膜の剥離面積率の評価試験を行ったが、実施例1と同様の結果が得られた。
【0037】
(比較例2)
試料として、実施例1で用いたものと同様の組成および板厚で、同様の処理を行い表面を鏡面に仕上げた一方向性電磁鋼板を複数枚用いた。
各試料を0℃の水と平衡する水蒸気を含有した75体積%H2 −25体積%N2 雰囲気中で、1000℃で100秒間焼鈍し、約50nm厚さのシリカを主体とする外部酸化皮膜を形成した。
次いで、各試料表面に、実施例1と同一条件で張力付与型の絶縁被膜を形成し、実施例1と同一の被膜剥離試験を行った。
【0038】
表2に結果を示す。熱酸化法により形成したシリカ膜上に絶縁皮膜を形成した比較例2と、Ti酸化物を形成せずにスパッタ法でシリカ膜を形成した後に絶縁皮膜を形成した比較例1(表1参照)の20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率は10%と等しく、シリカ膜と一方向性電磁鋼板の界面の密着性は、シリカ膜の製法には依存しないものといえる。さらに、比較例2から、一方向性電磁鋼板とシリカ膜との間にTi酸化物を形成しない場合は、絶縁皮膜の剥離面積率が高く、絶縁皮膜密着性は低いことが明らかである。
【0039】
【表2】
Figure 0004012483
【0040】
【発明の効果】
本発明は、一方向性電磁鋼板と絶縁皮膜との密着性を改善する方法を提供するものであり、本発明の絶縁皮膜形成方法により、鋼板に対して強い張力が付与された鉄損の低い一方向性電磁鋼板が製造でき、その工業的効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】横軸に示した元素を地鉄とシリカの界面に存在させた時の地鉄とシリカの界面エネルギーの変化を示す図である。

Claims (3)

  1. 一方向性電磁鋼板表面のフォルステライト主体の皮膜を除去した後、または、該鋼板表面を鏡面に調整した後、該鋼板表面にシリカ皮膜を形成する前段に、該鋼板表面とシリカ皮膜との界面エネルギーを低減する、Ti、Cr、Yから選ばれる1種以上の酸化物を、電磁鋼板地鉄とシリカ皮膜との界面から地鉄側10nm以下の深さに、平均5原子%以上の濃度で分布させ、次いで該表面にシリカ皮膜を形成し、次いで該表面に張力付与型の絶縁皮膜を形成することを特徴とする一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法。
  2. 前記元素を前記鋼板表面に存在させる方法が、CVD法、PVD法、ゾルゲル法、液相析出法のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の一方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法。
  3. 請求項1記載の方法により製造された一方向性電磁鋼板であって、その表面にはTi、Cr、Yから選ばれる1種以上の元素の酸化物が層状または島状に存在し、その上層にシリカ皮膜が存在し、さらにその上層に張力付与型の絶縁皮膜が存在することを特徴とする皮膜密着性に優れた絶縁皮膜を有する一方向性電磁鋼板。
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