JP4448287B2 - 一方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向性電磁鋼板の表面に、絶縁性および張力付与性の優れた被膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一方向性電磁鋼板は、(110)[001]を主方位とする結晶組織を有し、磁気鉄心材料として多用されており、エネルギーロスを小さくするために鉄損の小さい材料が求められている。特に、5質量%以下の珪素を含有する一方向性電磁鋼板の鉄損の低減には、鋼板に張力を付与することが有効であり、15MPa 程度までの張力付与によって、効果的に鉄損を低減できることが知られている。
【0003】
通常、張力は鋼板表面に形成された被膜により付与されるものであり、従って張力付与には、鋼板より熱膨張係数の小さい材質からなる被膜を高温で鋼板表面に形成することが有効である。これは、鋼板と被膜との間の熱膨張係数差によって生ずる熱応力を利用するものである。
【0004】
通常の一方向性電磁鋼板の表面には、脱炭焼鈍工程で生ずるSiO2 を主体とする酸化膜と、焼鈍分離剤として通常用いられるMgOとが、仕上げ焼鈍中に反応して形成されたフォルステライト主体の被膜(以下、仕上げ焼鈍被膜と称する)が存在する。一般的な一方向性電磁鋼板表面への絶縁皮膜の形成方法は、仕上げ焼鈍被膜を残した上で絶縁被膜を施す方法である。仕上げ焼鈍被膜は鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減に効果がある。
【0005】
仕上げ焼鈍被膜には、均一で欠陥がなく、かつ剪断、打ち抜き、および曲げ加工等に耐え得る密着性に優れていることが要求される。特許文献1には、コロイド状シリカと燐酸塩を主体とするコ−テイング液を鋼板表面に塗布して焼き付けることによって得られる絶縁被膜が開示されており、この被膜は鋼板に対して張力付与の効果が大きく、鉄損低減に有効であることが示されている。
【0006】
この他に、鋼板上への絶縁被膜の形成による鋼板への張力増大の試みもなされている。例えば特許文献2には、アルミナゾルと硼酸を主体とするコ−テイング液を鋼板上に焼き付けることによって得られるA12 O3 −B2 O3 系の結晶質被膜が開示されている。該絶縁被膜は、コロイド状シリカと燐酸塩を主体とするコ−テイングを塗布焼き付けることによって得られる絶縁被膜と比較して、同一膜厚のものとで1.5〜2倍の被膜張力が得られることが記載されている。
【0007】
一般に絶縁被膜は、仕上げ焼鈍被膜の上に形成した場合にはかなりの被膜密着性が得られるものの、鉄損低減のために被膜張力をさらに増加させるとその密着性が不十分となるため、より密着性に優れた仕上げ焼鈍被膜の形成が必要となる。
【0008】
上述のとおり仕上げ焼鈍被膜は、脱炭焼鈍工程で生ずるSiO2 主体の酸化物を原料の一つとするため、この酸化物の種類や量および分布などが仕上げ焼鈍被膜の機械的強度および鋼板との密着性に影響を及ぼす。従って、良好な仕上げ焼鈍被膜を形成させる上で脱炭焼鈍工程の制御は極めて重要である。
【0009】
一方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍に関しては、例えば特許文献3に開示されているように焼鈍雰囲気の露点を50〜70℃に制御する方法、特許文献4に開示されているように脱炭焼鈍後に非酸化性雰囲気中で熱処理を行う方法、特許文献5に開示されているように脱炭焼鈍の前段の露点を40〜65℃とし、後段露点を40〜75℃とする方法などが知られている。しかしながらこれらの方法は、いずれも均質な被膜形成には一定の効果があるものと認められるとはいえ、必ずしも十分なものではなく、特に上述したように、鉄損低減のためにさらに被膜張力を増加させた際に十分な密着性が安定して得られないという問題がある。
【0010】
また、脱炭焼鈍の昇温過程の制御により脱炭酸化現象を制御する方法として、例えば特許文献6には、脱炭焼鈍を施す前に、露点が0℃以下の雰囲気中で、600〜650℃で30秒以上10分未満の事前焼鈍を行う方法が開示されている。しかしながらこの方法では、脱炭が不十分となる場合や、十分な密着性が安定して得られない場合がある。特許文献7には、200〜750℃の温度域で、PH2O /PH2が0.3〜0.85の雰囲気中で少なくとも8秒以上焼鈍処理を行う方法が開示されている。しかしながらこの方法では、十分な密着性が安定して得られない場合がある。
【0011】
このように、上述の従来の方法では、仕上げ焼鈍被膜の品質や脱炭性に問題が生じる場合や、鉄損の低減のためさらに被膜張力を増加させた際の十分な密着性が安定して得られない場合があるなどの問題がある。
【0012】
【特許文献1】
特開昭48−39338号公報
【特許文献2】
特開平6−306628号公報
【特許文献3】
特開昭59−185725号公報
【特許文献4】
特開平2−240215号公報
【特許文献5】
特開平5−148532号公報
【特許文献6】
特開平2−77526号公報
【特許文献7】
特開昭59−35624号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来法の問題点を解決するものであって、絶縁性および張力付与性に優れた被膜を一方向性電磁鋼板の表面に形成することにより、優れた被膜密着性を有する低鉄損の一方向性電磁鋼板を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、一方向性電磁鋼板の表面に張力付与性の被膜を形成するための脱炭焼鈍工程に関して、最適製造条件を見つけるべく鋭意検討を行った。
まず、脱炭焼鈍工程における昇温条件と仕上げ焼鈍被膜の密着性について調べたところ、800℃での鋼板表面のSi濃度と仕上げ焼鈍被膜の密着性との間には強い相関関係があり、前記Si濃度が15〜30mol%の場合に、均質で密着性に優れた仕上げ焼鈍被膜が得られることを見出した。
【0015】
この理由については明らかではないが、本発明者らは以下のように推定している。
脱炭焼鈍工程における内部酸化現象は、雰囲気中のH2 OおよびO2 がO原子として鋼板中へ溶解し、内方へ拡散することにより進行するため、鋼板表面に存在する酸化膜の相および形態が内部酸化現象に大きな影響を及ぼす。脱炭焼鈍における内部酸化現象は約800℃から活発になるため、昇温過程において800℃に達する時点の鋼板表面におけるSiの濃度が、それ以降に形成する内部酸化物の形態や分布に大きな影響を与えるものと考えられる。
【0016】
なお、被膜の曲げ密着性は、仕上げ焼鈍被膜の形態と密接な関係があることが知られており、仕上げ焼鈍被膜と鋼板の界面が鋼板内部に食い込んだ形態をしていると、くさび止め効果などにより密着性が上昇する。本発明者らが見出した後述の上記条件下では、界面がこのような形態になっているものと考えられる。
【0017】
さらに本発明者らは、脱炭焼鈍工程の昇温過程において800℃に達する時点の鋼板表面におけるSiの濃度は、600〜800℃の温度域における平均昇温速度と雰囲気のPH2O /PH2 比の組み合わせにより制御可能であることを見出した。すなわち、昇温過程の600〜800℃の温度域における平均昇温速度は、仕上げ焼鈍被膜の品質や密着性により40〜100℃/sに限定されるが、この平均昇温速度範囲において、雰囲気のPH2O /PH2 比が0.10〜0.2であれば、鋼板表面のSi濃度が15〜30mol%となることを見出した。
【0018】
本発明は上記知見に基づくものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)一方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍工程において、昇温帯の600〜800℃における平均昇温速度が40〜100℃/sで、かつ、P H2O /P H2 比が0.10〜0.2であり、昇温帯の800℃での該鋼板表面のSi濃度が15〜30mol%となるようにした処理を行った後、脱炭処理及び窒化処理をし、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施し、その鋼板表面に張力付与型絶縁被膜を形成することを特徴とする一方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係る一方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法は、脱炭焼鈍工程条件に特徴があり、従って脱炭焼鈍工程以外の、例えば熱間圧延、冷間圧延、窒化処理、焼鈍分離剤塗布工程、最終仕上げ焼鈍等の基本工程の条件については、特に限定はなく、本発明に係る絶縁性および張力付与性の優れた一方向性電磁鋼板が得られるものであれば構わない。
【0020】
本発明に係る脱炭焼鈍工程について、以下に説明する。
脱炭焼鈍の均熱温度は、一次再結晶粒の大きさから、800〜870℃の範囲が好ましく、他の焼鈍条件は板厚、鋼成分などに応じて選択する。
上述のように本発明においては、内部酸化現象が活発になる約800℃に達する時点の鋼板表面におけるSi濃度を15〜30mol%に制御することが重要であり、外部酸化現象が活発になる600℃から内部酸化現象が活発になる800℃の温度域における焼鈍条件を制御することが重要である。すなわち、鋼板中のSiの拡散速度の制約のため、昇温過程の約800℃に達する時点で鋼板表面に形成する外部酸化膜の厚さは20nm以下と非常に薄いが、この表面の外部酸化物が、均熱過程で生じる厚さ2〜5μmの内部酸化層の形成を支配する。
【0021】
800℃に達する時点の鋼板表面におけるSiの濃度と、仕上げ焼鈍被膜の密着性との間には強い相関があり、そのSi濃度が15〜30mol%である場合に、均質で密着性に優れる仕上げ焼鈍被膜が得られる。Si濃度が15mol%未満では、仕上げ焼鈍被膜の十分な密着性が得られない。一方、30mol%超では、内部酸化現象および脱炭現象が阻害され十分な被膜密着性が得られない場合や、さらには、磁気特性から鋼中のC濃度を30ppm以下にすることが必須条件であるものの、30ppm以下にできない場合がある。
【0022】
600〜800℃の温度範囲において制御すべき焼鈍条件としては、平均昇温速度および雰囲気のPH2O /PH2 比が挙げられる。
600〜800℃の昇温帯における平均昇温速度は、40〜100℃/sが好ましい。平均昇温速度が40℃/s未満の場合は、昇温過程において内部酸化および脱炭が顕著に進行するため仕上げ焼鈍被膜の十分な密着性向上効果が得られず、一方、平均昇温速度が100℃/s超の場合は、鋼板全面にわたってSiO2 を主とする外部酸化物を均一に形成することが困難であるため、安定した品質および密着性を有する仕上げ焼鈍被膜を形成できない場合がある。さらに、600〜800℃の昇温帯における雰囲気のPH2O /PH2 比は、800℃における鋼板表面のSi濃度を15〜30mol%とするために0.10〜0.2の範囲に限定する。
【0023】
本発明に係る脱炭焼鈍工程において鋼板表面に形成するSiO2 主体の外部酸化物層は、厚さが数〜数10nmと極めて薄いため、このSiO2 主体の外部酸化物層の組成および膜厚の分析は、X線光電子分光法(XPS)やオージェ電子分光法(AES)が好適に用いられる。XPSやAESにより表面のSi濃度を分析する場合、0.01〜1mm2 の領域の面分析を行い、表面のSi濃度を求める。ここで、鋼板表面における外部酸化物の分布は微視的には不均一であるため、分析面積が0.01mm2 未満の場合は測定結果が測定場所により大きくばらつき、また1mm2 以上の領域を一度に測定するのは一般的なXPSおよびAES装置の性能上困難であるため、分析領域の面積は0.01〜1mm2 が望ましい。
【0024】
なお、800℃に達する時点の鋼板表面におけるSiの濃度を分析する場合は、例えば本発明に係る脱炭焼鈍条件下(600〜800℃における昇温速度:10〜100℃/s、PH2O /PH2:0.10〜0.2)で鋼板を800℃まで加熱し、800℃に到達後、直ちに30℃/s以上の冷却速度で400℃まで昇温時と同一雰囲気中において冷却し、同雰囲気中で室温まで冷却後に鋼板試料をXPSやAESにより分析すればよい。
【0025】
冷却過程において800℃での表面状態を維持するには、冷却速度が重要であり、その上限は特に限定はないが、下限は30℃/s以上の冷却速度が必要であり、好ましくは100℃/s以上の速度で冷却する。ここで、炉温が室温になるまで30℃/s以上の冷却速度で冷却することが望ましいが、外部酸化速度が非常に遅くなる400℃まで30℃/s以上の冷却速度で冷却することにより800℃での表面状態を維持することができる。
【0026】
次に、上記脱炭焼鈍に引き続いて行う窒化焼鈍工程の後に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、水素雰囲気中で約1000〜1200℃で約5〜50h加熱する仕上げ焼鈍工程を行い、鋼板表面にフォルステライト主体の被膜(仕上げ焼鈍被膜)を形成する。仕上げ焼鈍被膜は、上述のように、脱炭焼鈍工程で生ずるSiO2 主体の酸化膜と、焼鈍分離剤として通常用いられるMgOとが、仕上げ焼鈍中に反応して形成するものである。
【0027】
本発明は、優れた密着性を有する仕上げ焼鈍被膜を形成するものであり、張力付与型の絶縁被膜を仕上げ焼鈍被膜の上に形成した場合に好適に効果を発揮する。本発明に係る張力付与型の絶縁被膜の形成方法としては、通常の方法を用いることができ、脱炭焼鈍処理を行った後の鋼板表面に絶縁被膜材質を塗布・焼き付ければよい。
【0028】
本発明に係る張力付与型の絶縁被膜としては、一方向性電磁鋼板に通常使用される耐熱性の無機絶縁被膜が適用できる。具体的には、特許文献1に開示されているようなコロイド状シリカと燐酸塩を主体とするコーティング液を塗布焼き付けることによって得られる絶縁被膜や、特許文献2に開示されているようなアルミナゾルと硼酸を主体とするコーティング液を塗布焼き付けることによって得られるA12 O3 −B2 O3 系の結晶質被膜が挙げられる。また、特開平6−248465号公報には各種の張力被膜材質が開示されているが、この中のアルミナ被膜は、アルミナゾルを塗布・焼き付けることによって得られる。
本発明に係る被膜形成方法によって、電磁鋼板と絶縁被膜の間の密着性が向上し、強い張力が付与された一方向性電磁鋼板が製造可能となる。
【0029】
【実施例】
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
質量%で、Si:3.2%、C:0.05%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.007%、Mn:0.1%、S:0.007%、Cr:0.1%、Sn:0.05%、残部がFeと不可避的不純物からなるスラブを1150℃に加熱し、熱間圧延により板厚を2.0mmにした後、1120℃で焼鈍、酸洗後、冷間圧延により最終板厚を0.23mmとした冷延板を複数枚作製した。
【0030】
次に、これらの冷延板に対して、雰囲気露点を変化させることで昇温帯のPH2O /PH2 比を変え(実施例1−2:PH2O /PH2 比=0.10、実施例1−3:PH2O /PH2 比=0.15)、昇温速度は30℃/sとして、830℃まで加熱した。続いて脱炭処理は、830℃でPH2O /PH2 比が0.44の雰囲気中で120秒間の焼鈍を行った。
なお、800℃に達した時点の鋼板表面のSi濃度の分析は、前記条件で加熱を行い、加熱温度が800℃に到達した後、直ちに100℃/sの冷却速度で室温まで冷却した試料を作製し、X線光電子分光法(XPS)によって分析を行った。
【0031】
その後、アンモニア含有雰囲気中で750℃で30秒間窒化焼鈍し、鋼板中の全窒素量を0.02質量%とした。次いでMgOを主成分とする焼鈍分離剤を表面に塗布した後、1200℃で20時間仕上げ焼鈍を施した。
次いで未反応焼鈍分離剤を除去した後、特許文献1に開示されている方法に準拠して、コロイド状シリカ、燐酸アルミニウム、無水クロム酸からなる処理液を表面に塗布し、850℃で焼き付けることにより、張力付与型の絶縁被膜を形成した(絶縁被膜形成量:片面当たり12g/m2 )。
【0032】
絶縁被膜の密着性は、直径15mmおよび20mmの丸棒に対して、角度が180度になるように鋼板を巻き付けた際の、被膜の剥離した面積率により評価した。20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率が0%の場合を密着性良好とする。
【0033】
表1に結果を示す。本発明法により形成した絶縁被膜(実施例1−2、1−3)は、800℃到達時の鋼板表面のSi濃度が17〜25mol%であり、さらに、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率が0%であり、密着性良好であった。
【0034】
【表1】
【0035】
(比較例1)
実施例1と同様の成分および条件で冷延板を複数枚作製した。
次に、これらの冷延板に対して、雰囲気露点を変化させることで昇温帯のPH2O /PH2比を変え(比較例1−1:0.008、比較例1−2:0.44)、昇温速度は30℃/sとして、830℃まで加熱し、続く脱炭処理は実施例1と同一の条件下で行った。なお、800℃に達する時点の鋼板表面のSi濃度の分析は、実施例1と同様の方法および条件によって行った。
【0036】
その後、実施例1と同様の条件で窒化焼鈍、仕上げ焼鈍を行い、鋼板表面に絶縁被膜を形成し、実施例1と同様の方法で絶縁被膜の密着性の評価を行った。
表1に結果を示す。本発明法の範囲外の絶縁被膜(比較例1−1、1−2)は、800℃到達時の鋼板表面のSi濃度が15〜30mol%の範囲外であり、さらに、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率がそれぞれ20%、40%となり密着性が不良であった。
【0037】
実施例1および比較例1の結果から、脱炭焼鈍工程の昇温過程の800℃に達する時点の鋼板表面におけるSi濃度が15〜30mol%場合に、被膜の密着性が良好となる仕上げ焼鈍被膜を形成できることがわかる。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様の成分および条件で冷延板を複数枚作製した。
次に、これらの冷延板に対して、それぞれ異なる昇温速度で脱炭焼鈍処理を行った。昇温帯における雰囲気のPH2O /PH2 比は0.10とし、昇温速度を変えて(実施例2−2:40℃/s、実施例2−3:100℃/s)830℃まで昇温後、続いて830℃でPH2O /PH2 比が0.44の雰囲気中で120秒間の均熱脱炭処理を行った。なお、800℃に達する時点の鋼板表面のSi濃度の分析は、実施例1と同様の方法および条件によって行った。
【0039】
その後、実施例1と同様の条件で窒化焼鈍、仕上げ焼鈍を行い、鋼板表面に絶縁被膜を形成し、実施例1と同様の方法で絶縁被膜の密着性の評価を行った。
表2に結果を示す。本発明法により形成した絶縁被膜(実施例2−2、2−3)は、800℃到達時の鋼板表面のSi濃度が18〜21mol%であり、さらに、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率が0%であり、密着性良好であった。
【0040】
【表2】
【0041】
(比較例2)
実施例1と同様の成分および条件で冷延板を複数枚作製した。
次に、これらの冷延板に対して、それぞれ異なる昇温速度で脱炭焼鈍処理を行った。昇温帯における雰囲気のPH2O /PH2比は0.10とし、昇温速度を変えて(比較例2−1:5℃/s、比較例2−2:150℃/s)830℃まで昇温後、続く均熱脱炭処理は実施例2と同一の条件下で行った。なお、800℃に達する時点の鋼板表面のSi濃度の分析は、実施例1と同様の方法および条件によって行った。
【0042】
その後、実施例1と同様の条件で窒化焼鈍、仕上げ焼鈍を行い、鋼板表面に絶縁被膜を形成し、実施例1と同様の方法で絶縁被膜の密着性の評価を行った。
表2に結果を示す。本発明法の範囲外の絶縁被膜(比較例2−1、2−2)は、800℃到達時の鋼板表面のSi濃度が15〜30mol%の範囲外であり、さらに、20mmφの丸棒に巻き付けた際の剥離面積率がそれぞれ30%、10%となり密着性が不良であった。
【0043】
実施例2および比較例2の結果から、脱炭焼鈍工程の昇温過程の800℃に達する時点の鋼板表面におけるSi濃度が15〜30mol%場合に、被膜の密着性が良好となる仕上げ焼鈍被膜を形成できることがわかる。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、電磁鋼板と絶縁被膜の間の密着性の改善が可能であり、本発明の絶縁被膜形成法により、強い張力が付与された一方向性電磁鋼板が製造でき、その工業的効果は極めて大きい。
Claims (1)
- 一方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍工程において、昇温帯の600〜800℃における平均昇温速度が40〜100℃/sで、かつ、P H2O /P H2 比が0.10〜0.2であり、昇温帯の800℃での該鋼板表面のSi濃度が15〜30mol%となるようにした処理を行った後、脱炭処理及び窒化処理をし、焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施し、その鋼板表面に張力付与型絶縁被膜を形成することを特徴とする一方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
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