JP4669451B2 - 皮膜密着性に優れ磁気特性が良好な複層皮膜を有する電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの目的を分担して行うため、種類が異なる皮膜が複層して形成されることも通常行われている。これらの目的で、この皮膜の形成物質として酸化物が用いられることが多い。特に上記の特性やコストを満足するものとしてSiを主体とした酸化物が用いられることが多い。
しかし、この技術では鋼板間の接着力が弱く、また、部材を製造する工程で様々な目的から部材がさらされる高温状態の温度によって、また、長期間の使用による経時変化により、接着力が極端に低下し、問題を引き起こすことが指摘されている。
その基本的な考えは、母鋼板上に形成される皮膜を複層化することで様々な特性の両立を図るものである。
(1)質量%で、C:0.07%以下(0を含む)、Si:7.0%以下(0を含む)、Mn:6.5%以下(0を含む)、P:0.30%以下(0を含む)、S:0.080%以下(0を含む)、Al:8.0%以下(0を含む)、N:0.070%以下(0を含む)、O:0.070%以下(0を含む)を含有する鋼板で、表面に酸化物を含有する複層皮膜を有し、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnのいずれか一種または二種以上の元素について、(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の濃度)/(母鋼板の平均濃度)≧2.0かつ(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の濃度)/(皮膜の最内層、すなわち母鋼板に接している層中の平均濃度)≧2.0である電磁鋼板。
(3)前記電磁鋼板において、さらに、母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均深さが5.0μm以下であることを特徴とする電磁鋼板。
(4)前記電磁鋼板において、さらに、母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均周期が15.0μm以下であることを特徴とする電磁鋼板。
(5)前記電磁鋼板において、さらに、皮膜の最内層中に、質量%で、Ni:0.5%以上、Co:0.5%以上、Cr:0.5%以上、Cu:0.5%以上、Mo:0.5%以上、Nb:0.5%以上、Mn:0.5%以上の一種または二種以上を含有することを特徴とする電磁鋼板。
(6)前記電磁鋼板において、さらに、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnのいずれか一種または二種以上の元素が、(皮膜の最内層での平均濃度)/(母鋼板での平均濃度)>1.00であることを特徴とする電磁鋼板。
(7)前記電磁鋼板において、さらに、皮膜の組成に関して、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ti、B、Mnのいずれか一種または二種以上の元素が、(最内層での平均濃度)/(最内層以外の層での平均濃度)>2であることを特徴とする電磁鋼板。
(8)前記電磁鋼板において、さらに、皮膜のSiO2濃度について、皮膜平均で30質量%以上であり、かつ(最内層以外の層での平均濃度)/(最内層での平均濃度)>1.0であることを特徴とする電磁鋼板。
(9)前記電磁鋼板において、さらに、複層構造を形成している皮膜のうちの最内層の平均厚さが10.0μm以下であり、かつ全皮膜厚さの1/2以下であることを特徴とする電磁鋼板。
(10)前記電磁鋼板において、さらに、(全皮膜の厚さ)/(鋼板厚さ)≦1/10であることを特徴とする電磁鋼板。
(11)前記電磁鋼板において、さらに、皮膜が原因となり母鋼板に発生している張力が1MPa以上であることを特徴とする電磁鋼板。
(12)前記電磁鋼板において、さらに、皮膜が原因となり母鋼板に発生している張力と各層の厚さに関し、{[(最内層に起因する張力)/(最内層以外の層に起因する張力)]/(最内層の厚さ)}*(最内層以外の層の厚さ)<1.00であることを特徴とする電磁鋼板。
(17)前記電磁鋼板の製造方法のうち、鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、露点≦0℃の雰囲気中で行われることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
(18)前記電磁鋼板の製造方法のうち、表面皮膜を形成するための物質または混合物が、ドライプロセスで塗布されることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
(19)前記電磁鋼板の製造方法のうち、塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融固化させる熱処理を行う際に、母鋼板に作用する応力として、1MPa以上の張力を付与した状態で行われることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
その際、最内層の皮膜への添加物質、その量、さらには、皮膜に付与する熱処理を最適に制御することで、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの偏析が効率的に起きるようにすることができる。
(A)母鋼板の組成について
まず、母鋼板の組成について説明する。なお、各成分元素の含有量は質量%である。
このような窒化物の害を回避するために、製造工程において鋼板の脱窒を行うコストを考えると、Al脱酸鋼においては溶鋼段階でN含有量を低減しておくことが好ましく、0.0040%以下とすべきで、本発明では低いほど好ましく、0.0027%以下とすれば磁気時効や窒化物形成による特性劣化の抑制効果は顕著で、さらに好ましくは0.0022%、さらに好ましくは0.0015%以下であり、0%であっても構わない。
本発明の特徴は母鋼板自体にあるものではなく、以下に記述するように皮膜構造および皮膜と母鋼板の界面の状態にある。
まず、本発明の最大の特徴である皮膜構造について記述する。
本発明では、後述するように酸化物を主体とした皮膜を想定しているが、その皮膜は複層構造であることを必要とする。これは本発明が、皮膜に必要とされる機能を本質的に分離して考慮し、それぞれに対して最適な解決策を得るようにしたものであるからである。
本発明は少なくとも二層または三層以上の皮膜構造を有するものを発明の対象とする。
次に、もう一方の特徴となる皮膜と母鋼板の界面の状態について記述する。
なお、界面に存在し、本発明の特徴を発現させる元素を「特定元素」と呼ぶこととし、以下、本明細書中では「特定元素」とは「Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの内の一種または二種以上の元素」を表すものとする。
本発明では、母鋼板と皮膜の界面に特定元素の濃化部位を形成することで特性を向上させる。このメカニズムは明確ではないが、このような濃化が、皮膜の密着性を高めることで、上述のように、皮膜の欠陥を防止し、磁気特性や絶縁性、すべり性などの必要特性をも高めるものと考えられる。
特にこの化学的な結合は、皮膜に多量の酸化物を含有させた場合に顕著となることから、皮膜中の酸化物と母鋼板中のFeが、皮膜中の酸素と結合して形成するFe酸化物との化学的結合状態を変化させるものと考えられる。
特定元素について、(母鋼板と皮膜の界面における濃化部位での濃度)/(母鋼板での平均濃度)≧2.0かつ(母鋼板と皮膜の界面における濃化部位での濃度)/(皮膜の最内層での平均濃度)≧2.0であることが好ましい。さらに好ましくは、各々が3.0以上、さらに好ましくは5.0以上、さらに好ましくは10.0以上であり、50.0以上に濃化した部位が存在すれば特性は顕著に向上し、濃化部位が純元素となっていても構わない。
測定データを検討する際には、測定領域の面積のみならず特定の面から分析する場合には測定領域の深さも考慮して特定元素の濃度を決定する必要があるのは言うまでも無い。
特に注意を有するのは例えば特定面に特定元素100%の領域が形成されていてもそれが非常に薄い場合、表面から電子線やX線を用いた解析機器で成分分析を行うと皮膜を透過し母材部も含めた領域の成分が検出されるため特定元素の含有量としては低い定量値が得られるような場合である。
上述のメカニズムの中でも触れたように、本発明での密着性向上メカニズムは必ずしも解明されているものではないが、界面での微細な凹凸が変化することで特徴づけることができる。この凹凸は通常の電磁鋼板の母鋼板と皮膜の界面の形態に比べると非常に微細かつ緻密な状態となっていることが特徴である。この特徴の一つとして界面の凹凸の深さを規定する。
しかし、本発明では母鋼板の粗度については特に規定しない。皮膜形成後に本発明のような粗度に制御することが特性にとって決定的な要因だからである。
特定元素は、皮膜側または母鋼板側に添加しておくことで界面に濃化させることが可能であり、その方法自体は特に限定されるものではない。ただし、母鋼板側に添加すると、本発明の重要な最終目的そのものとも言える、母鋼板の磁気特性に好ましからざる影響を及ぼすことがある。また、界面という非常に狭い範囲に偏在させるべき元素を、皮膜と比べると格段に厚さが大きい鋼板中に分散させておくのは単純に考えても得策とは言えない。さらに、特定元素が界面に偏析するための移動を考えると、熱処理等によりその一部が溶融し、鋼板よりも流動性が高まることが期待できる皮膜側に特定元素を含有させておくことが有利となる。さらに前述のように、本発明の鋼板では皮膜の密着性確保を皮膜の最内層に大きく依存するものであるから、特定元素は皮膜の最内層に含有しておくことが好ましい。そのため、特定元素について、(皮膜の最内層での平均濃度)/(母鋼板での平均濃度)>1.00とするのが好ましい。
特定元素のうち、Ni、Coは効果が非常に顕著で特に重要な元素である。まず、これらについて説明する。
このメカニズムは明確ではないが、これらが皮膜中で酸化物を形成し、上記の元素を鋼板側に排斥し偏析させるものか、または鋼板中に少なからず含有されるC、N、Sなどと結合し、鋼板表面で化合物を形成し、Ni等の偏析起点になるものと考えられる。
上で述べた7元素についての含有量は、最終的な使用状況で母鋼板上に形成されている皮膜中の元素の含有量に関するものであるが、同様の範囲を、皮膜を形成するために母鋼板表面に塗布する物質または混合物についても規定できる。
そして、その変化は、熱処理条件によっても影響するため、一義的には決定できるものではない。そして、制御という観点では、最終的な皮膜中の物質よりも、事前に塗布する物質で制御するほうが工業生産の面からは容易にもなる。
これは上述のように、含有量の変化が熱処理条件等により影響されるため一義的な決定が困難ではあるが、物質反応を制御し、鉄鋼材料を製造している当業者であれば、塗布物質と処理条件が決まれば、机上計算や数度の試行の後には十分に制御できる程度のものである。
皮膜中の含有量であるにしろ、皮膜を形成するために母鋼板表面に塗布する物質または混合物中の含有量であるにしろ、本発明範囲内にあれば、界面への特定元素の偏析が起き、狙っている効果を十分に得ることが可能となる。
本発明の特徴は、皮膜に求められるいくつかの機能を考慮し、複層とすることで、機能的、コスト的にも好ましいものとすることである。例えば、母鋼板と接する層は、鋼板との密着性が良好な組成とし、中間層で張力を確保し、最表層はすべり性や絶縁性が良好な膜とするものである。この中でも特に重要で本発明の特徴となるのは、複層構造を形成している皮膜のうちの最内層で鋼板との密着性を確保し皮膜剥離等の欠陥を抑えることである。以下、最内層を他層と差別化して本発明の特徴を説明する。
本発明は、以上説明したように、皮膜構造および皮膜と母鋼板の界面の状態を特徴とするものであるが、以下で、その前提となる皮膜及びより好ましい皮膜の形態についてさらに説明する。なお、以下の説明は、最内層の皮膜およびそれ以外の層について共通のものである。
本発明における皮膜とは、鋼板の表面に形成されている膜を総称して言う。ただし、体積率で皮膜の50%以上が金属相となるような、金属めっきに類する皮膜は除外する。
皮膜を構成する物質としては、酸化物や炭化物、窒化物、硫化物、フッ化物等、塩化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩などあらゆる化合物を含有させることが可能である。また、皮膜中の含有物は意図して添加した物質ばかりでなく、皮膜を形成する処理中の反応により生成するものも含まれる。
次に皮膜の形態等について述べる。
皮膜の厚さは厚すぎると、電気部品として積層した場合に、磁気特性を担う鋼板の存在率、いわゆる占積率が低下してしまい、部材としての磁気特性を損ねてしまう。この点では、皮膜は薄い方が好ましいが、皮膜欠陥抑制や磁気特性に好ましい鋼板張力を大きく作用させるためには、ある程度の厚さは必要となる。本発明では、鋼板との密着を確保するために特定元素を比較的多く含有させる必要がある最内層は相対的に薄く制御し、鋼板張力やすべり性などを確保するための最内層以外の層を比較的厚く制御する。
また、従来の電磁鋼板と同様に酸化物を主体とする皮膜の上に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂などの有機物を形成することで様々な表面特性を付与することも本発明の効果を損なうものではない。
本発明では鋼板に生ずる張力が1Mpa以上であることが特徴の一つである。好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上で、さらに大きな張力が働いても何ら問題となるものではない。
(E−1)皮膜の形成方法について
以下、本発明の電磁鋼板の製造方法、つまり皮膜の形成方法について述べる。
皮膜形成方法はここに示す方法に限定されるものでないことは言うまでもないことであるが、本方法によれば効率よく、低コストで発明の効果を得ることが可能となる。ただし、本発明は界面に特定元素の偏析部を形成し、さらに皮膜構成物質と母鋼板の反応を制御する必要があり、その意味では、単純な均一な表面処理で目的を達成することは一般には困難である。
複層化は、一層ずつ塗布−熱処理(溶融)−固化し、重ねていくことも可能であるが、製造コストを考えると、まず必要な複層について塗布し、その後、熱処理し、複層を一度に溶融−固化させることが、より好ましい。もちろん、一層を固化する方法と複層を一度に固化する方法を組み合わせてもよい。その場合、母鋼板の表面と界面を形成する層は一層を固化する方法で形成し、その他の層は複層を一度に固化する方法で形成するのがよい。
また、鋼板を打ち抜き加工した後、鋼板の片面のみに皮膜形成物質を塗布し、塗布面が同じ向きになるように積層した後、熱処理を行うことで、皮膜の形成と積層した鋼板の固定を同時に行うことも可能である。このようにすることで、従来、鋼板製造側で行われていた皮膜形成工程を省略したり、特許文献3に開示されている技術を使って、加工時に行っていたカシメや溶接などの積層鋼板の固定加工を省いたりすることも可能となる。
このように積層鋼板を固定した場合、本発明によると皮膜と母鋼板の密着が強固なため、従来法のように皮膜と母鋼板の界面での剥離というトラブルを完全に排除することが可能となる。もちろん、鋼板で皮膜を形成しておき、部材として積層した状態で熱処理だけを行い、皮膜を再溶融、固化させることで積層固定を図るというような使用法も可能である。
次に塗布した物質中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理条件について述べる。
熱処理温度は、あまりに低温では、酸化物の溶融が不十分で皮膜の緻密化やフラット化が不十分となり皮膜欠陥が発生するばかりでなく、特定元素の偏析等も不十分になり密着性も劣化する。また、あまりに高温では、エネルギーコストの問題が起きるばかりか、溶融した皮膜物質の粘度が低下しすぎて、皮膜の厚さの確保が困難になることや、皮膜中の酸化物と母鋼板の反応が激しすぎて、界面構造を含めた良好な皮膜の形成が困難になるとともに、目的とする機能の発揮を阻害する。適当な温度範囲は400〜1200℃、好ましくは500〜1000℃、さらに好ましくは600〜900℃、さらに好ましくは700〜850℃である。
本発明の特徴として、母鋼板に張力を生じている状態にあることは前述の通りである。この張力は皮膜物質と母鋼板の熱膨張の差を原因として、皮膜形成熱処理およびその冷却中に発生させることも可能であるが、本発明では、皮膜形成熱処理中に鋼板に張力を負荷しておき、皮膜形成後に張力を除去することで母鋼板に張力を残存させることも可能である。
前記成分を含む母鋼板に関しては、通常の電磁鋼板と同様に転炉で溶製され、連続鋳造でスラブとされ、ついで熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍などの工程で製造される。これらの工程の中で冷延や焼鈍を複数回行うことや、脱炭工程などを経ることも本発明の効果を何ら損なうものではない。また通常の工程ではなく熱延工程を省略する薄スラブCCなどの工程によって製造しても問題ない。
もう一つの方法は、粉状にした塗布物質を液体に混ぜ、鋼板に吹き付けるものである。液体としては水、有機溶剤などが使用でき、一般的にウェットプロセスとして知られるもので、表4、6においては「Wet」と記述している。本実施例においては液体として水を用い、塗布物質の水中での混ざり具合や、鋼板への付着性を制御するため、表2のベース物質に、珪石、珪砂、ほう砂などのいわゆる「粘土」分を多少の添加物として加えた。
もう一つの方法は、内層となる物質を塗布し、そのまま熱処理を行なうことなく外層となる物質を塗布し、その後、1回の熱処理で内層物質と外層物質の溶融固化を行って皮膜を形成する方法である。この場合は、「中間熱処理」欄は「−」とし、「最終熱処理」欄のみに処理条件を記載した。
皮膜性状は、熱処理による皮膜形成後の皮膜を目視観察し、皮膜剥離、黒点、白濁などの皮膜異常の発生を評価した。
皮膜の密着および性状については、×:問題あり、△:使用可(従来皮膜レベル)、○:良好、◎:非常に良好 として評価を表示した。
磁気特性については、本発明の適用による磁束密度の変化は小さいので、鉄損により効果を評価した。鉄損は55mm角のSST試験により鉄損W15/50を測定し、コイルの圧延方向およびその直角方向についての平均値を求めた。鉄損は鋼板の成分や熱履歴によって大きく変化するため、発明の効果は、物質を塗布せず、皮膜形成材と同一の熱処理を施した材料と比較し、鉄損の差により評価した。
鋼番号1、2、15、16、25、26、29〜31、34、39は塗布物質に特定元素を含まないか、含んでも量が不足または処理条件が好ましくないため効果が現れていない事例である。これ以外のものは、特定物質が皮膜と鋼板の界面に濃化し皮膜密着強度が高まることで、皮膜による鋼板への張力が十分に作用し鉄損改善効果が現れる。特に、最内層に特定物質を十分な量含有させたものは、最内層による密着性が格段に向上し、皮膜により大きな張力を付与した場合にも良好な密着性を確保できている。また、表層をより、ガラス質に近い成分とした場合にも皮膜性状が良好となっている。
Claims (19)
- 質量%で、C:0.07%以下(0を含む)、Si:7.0%以下(0を含む)、Mn:6.5%以下(0を含む)、P:0.30%以下(0を含む)、S:0.080%以下(0を含む)、Al:8.0%以下(0を含む)、N:0.070%以下(0を含む)、O:0.070%以下(0を含む)を含有する母鋼板の表面に酸化物を含有する複層皮膜を有し、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnのいずれか一種または二種以上の元素について、(母鋼板と皮膜の界面における濃化部位での濃度)/(母鋼板での平均濃度)≧2.0かつ(母鋼板と皮膜の界面における濃化部位での濃度)/(皮膜の最内層での平均濃度)≧2.0であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1に記載の電磁鋼板のうち、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnのいずれか一種または二種以上の元素について、母鋼板と皮膜の界面における濃化部位での濃度が、質量%で0.10%以上であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1または2のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均深さが5.0μm以下であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均周期が15.0μm以下であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜4のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、皮膜の最内層中に、質量%で、Ni:0.5%以上、Co:0.5%以上、Cr:0.5%以上、Cu:0.5%以上、Mo:0.5%以上、Nb:0.5%以上、Mn:0.5%以上の一種または二種以上を含有することを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜5のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnのいずれか一種または二種以上の元素について、(皮膜の最内層での平均濃度)/(母鋼板での平均濃度)>1.00であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜6のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、皮膜の組成に関して、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ti、B、Mnのいずれか一種または二種以上の元素について、(最内層での平均濃度)/(最内層以外の層での平均濃度)>2であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜7のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、皮膜のSiO2濃度について、皮膜平均で30質量%以上であり、かつ(最内層以外の層での平均濃度)/(最内層での平均濃度)>1.0であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜8のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、複層構造を形成している皮膜のうちの最内層の平均厚さが10.0μm以下であり、かつ全皮膜厚さの1/2以下であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜9のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、(全皮膜の厚さ)/(鋼板厚さ)≦1/10であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜10のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、皮膜が原因となり母鋼板に発生している張力が1MPa以上であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜11のいずれかの項に記載の電磁鋼板のうち、皮膜が原因となり母鋼板に発生している張力と各層の厚さに関し、{[(最内層に起因する張力)/(最内層以外の層に起因する張力)]/(最内層の厚さ)}*(最内層以外の層の厚さ)<1.00であることを特徴とする電磁鋼板。
- 請求項1〜12のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法であって、母鋼板の表面に酸化物を主体とする物質または混合物を塗布した後、塗布物中に含有している酸化物の1種または2種以上が溶融する温度以上で熱処理して皮膜を形成し、さらにその後、塗布と熱処理を繰り返すことで皮膜の複層構造を形成することを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法であって、母鋼板の表面に酸化物を主体とする物質または混合物を、組成を変えて複層となるように塗布し、その後、すべての層について、塗布した各層の皮膜中に含有している酸化物の1種または2種以上が溶融する温度以上で熱処理することで皮膜の複層構造を形成することを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法であって、母鋼板の表面に、酸化物を主体とする物質または混合物を1層塗布し、あるいは前記物質または混合物の組成を変えて複層となるように塗布し、その後、塗布した層の皮膜中に含有している酸化物の1種または2種以上が溶融する温度以上で熱処理し、以上の塗布と熱処理をそれぞれ1回以上行うことにより複層構造の皮膜を形成することを特徴とする電気部品の製造方法。
- 請求項13〜15のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法のうち、鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、400〜1200℃の温度範囲で0.1〜3600秒間加熱することで行われることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
- 請求項13〜16のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法のうち、鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、露点≦0℃の雰囲気中で行われることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
- 請求項13〜17のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法のうち、表面皮膜を形成するための物質または混合物が、ドライプロセスで塗布されることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
- 請求項13〜18のいずれかの項に記載の電磁鋼板の製造方法のうち、塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融固化させる熱処理を行う際に、母鋼板に作用する応力として、1MPa以上の張力を付与した状態で行われることを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
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