JP5482117B2 - 薄手方向性電磁鋼板及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板 - Google Patents
薄手方向性電磁鋼板及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板 Download PDFInfo
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Description
よって、変圧器のエネルギー損失を低減するために鉄心に求められるのは、鉄損の低減である。すなわち、鉄心として使用される方向性電磁鋼板については、より小さな鉄損が要求されるようになってきた。
一方、渦電流損失は、磁化した際に、電磁鋼板内部で磁化を妨げる方向に流れる電流により生じる損失である。したがって、渦電流損失は、電気抵抗に係る板厚、結晶粒径、磁区サイズ等に依存する。
この理由は、変圧器の鉄心は、方向性電磁鋼板を積層して用いているが、鋼板の板厚を薄くするに従い、鉄心全体の体積に対して鉄(鋼)の体積の占める割合(これを占積率と呼ぶ)が低下するためである。
通常、一方向性電磁鋼板には非磁性の被膜が施されている。前記被膜の膜厚が鋼板の板厚によらず一定であると、積層して鉄心にした場合、鋼板の板厚を薄くするとともに鉄の占める比率(占積率)が低下するからである。したがって、鋼板の板厚を薄くするのに合わせて被膜の厚みも薄くすれば、高い占積率を確保でき、積層しても鋼板の薄手化による鉄損低下が効果的に得られる。
2MgO + SiO2 → Mg2SiO4 ・・・(1)
(1)Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2含まれている薄手方向性電磁鋼板であって、マグネシウム珪酸塩を含む被膜を有し、該マグネシウム珪酸塩を含む被膜による前記鋼板の表面の被覆率が70%〜90%であり、板厚が0.15mm〜0.23mmであることを特徴とする薄手方向性電磁鋼板。
(2)前記マグネシウム珪酸塩被膜を構成する粒子の数平均粒径が、0.3μm〜1.5μmであることを特徴とする上記(1)に記載の薄手方向性電磁鋼板。
(3)前記金属換算質量によるMg含有量Cm (g/m2)が、前記板厚T(mm)に対して、
Cm ≦ −115×T2+53.1×T−3.7
の関係であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄手方向性電磁鋼板。
(5)前記張力絶縁膜の膜厚が、1.5〜2.0μmであることを特徴とする上記(4)に記載の張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
板厚が0.15mm〜0.23mmの薄手で鉄損が小さくなる方向性電磁鋼板において、その表面に一次被膜としてマグネシウム珪酸塩を含む被膜を有し、かつ、前記方向性電磁鋼板にMgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲で含まれていると、二次被膜として張力絶縁被膜を施した製品板としたときに高い磁束密度が得られること、さらに、この製品板を変圧器として積層した場合には高い占積率も確保できることを見出し、本発明に至ったものである。
ここで、磁束は、磁性体の中を優先的に通るものである(ちなみに、磁性体が存在する場合、空気中や非磁性体中の磁束は無視できるほど小さい)。即ち、ここでは、磁性体である鋼の中を磁束が通ると考えてよい。
方向性電磁鋼板のMgが金属換算質量で1.5g/m2未満であると、張力絶縁被膜が密着しなかったり、密着力が弱くて剥がれたりするので好ましくない。一方、方向性電磁鋼板のMgが金属換算質量で2.5g/m2を超えると、方向性電磁鋼板の中で非磁性体の占める割合が大きくなりすぎて、高い磁束密度が得られない。また、Mg量が多くなった場合には、含有するMgは主として一次被膜を構成するマグネシウム珪酸塩の量に対応するようなる。その結果、被膜の厚さが増加し、占積率が低くなるので好ましくない。
本発明では上記の理由で磁束密度が高くなるものであるから、二次被膜を施す前の鋼板の磁束密度を測定しても高い磁束密度となるものである。
これらのことが、上述のように、酸素目付け量で示される薄いフォルステライト被膜を形成しても、必ずしも大きな磁束密度が得られないことの理由である。これらの要因は、一次被膜の量が多い場合は、無視できるものであったが、一次被膜の量を少なくしようとした場合に顕在されてきたものである。本発明では、むしろ、非磁性体を構成する元素であるMgの量を指標として、その量を上記の範囲にすることで、必要最小限の非磁性体を含ませたものにできることを見出したものである。
所定質量の鋼板を酸等で完全に溶解し、前記溶解液中のMgの量を誘導結合プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma)発光分析法により測定する。ここで、鋼板を溶解するには、例えば、硝酸、硫酸等の酸を使用することができる。前記測定結果より、鋼板の単位質量当たりのMg金属換算質量でMg量m(質量%)を算出し、更に、鋼板の密度を7.65g/cm3として板厚t(mm)の鋼板単位面積当たりのMg量M(Mg金属換算質量g/m2)を、次式(2)で求める。
M = 7.65×t×1000×m ・・・(2)
前記被膜中のマグネシウム珪酸塩の同定及び定量には、X線回折法(XRD)を用いる。XRDピークの積分値で各相の検量線を作成して、目的にサンプルを測定することにより、マグネシウム珪酸塩の各相に関し、その存在比率を算出できる。
前記被膜に含まれるマグネシウム珪酸塩は、張力絶縁被膜との密着性及び鋼板との密着性を両立させて十分確保するために、被膜中に70質量%〜90質量%含まれるのがより好ましい。マグネシウム珪酸塩の含有量が70質量%未満であると、張力絶縁被膜と鋼板との間で十分な密着性が得られない場合がある。マグネシウム珪酸塩の含有量が90質量%を超えると、マグネシウム珪酸塩を含む被膜(一次被膜)自体の鋼板に対する密着性が低下する場合がある。特に、マグネシウム珪酸塩を含む被膜中に、スピネルMgAl2O4-δが10質量%超以上含まれると、一次被膜自体の鋼板に対する密着性がより良好になる。
ここで、被覆率Rc(%)とは、鋼板の裏表両面の面積Stに対するマグネシウム珪酸塩を含む被膜が前記裏表両面を覆っている面積Scの割合Rc=100×Sc/Stである。
前記被覆率が90%を超えると、上述のような張力絶縁被膜の密着性向上が小さくなり、張力絶縁被膜を被覆した鋼板の加工時に部分的に剥離する場合がある。張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板は、変圧器などの鉄心を組み立てるにあたり、鋼板の切断や打ち抜き等の加工をするが、前記被覆率が90%を超えたものでは、マグネシア珪酸塩等が緻密に焼結した一次被膜となっているため、加工時の衝撃等でクラックが伝播しやすく、加工時の密着性が劣る場合がある。その反面、前記被覆率が90%以下では、一次被膜には間隙が存在し、加工時の衝撃を吸収でき、クラックが発生したとしてもその伝播を抑制できる。
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて、50μm×50μmの領域Stに対して、前記被膜の表面を上部から観察して又は写真に撮って、被膜が覆っている面積Scを計測し、その値から被覆率Rc=100×Sc/Stを算出する。本発明の被覆率は、20箇所の50μm×50μmの計測から得られる値を平均したものである。
前記のように、マグネシウム珪酸塩を含む被膜は、酸化物の粒子が焼結した組織であるので、粒子が大きいと、粒子に比べて弾性率(ヤング率)の低い粒界の占める割合が小さくなるので、被膜の見掛け弾性率が高くなる。二次被膜と鋼板との間に存在する前記被膜の見掛け弾性率が高い方が、二次被膜による張力を効率よく鋼板に付与できる。
前記粒径が0.3μm未満では、二次被膜による鋼板への張力付与が効果的に得られない場合がある。前記粒径が1.5μmを超えると、被膜組織の粒界の占める割合が少なくなるが、粗大粒による被膜表面の凹凸が顕著になり、二次被膜を施しても鋼板表面の凹凸が残って占積率が低下する場合がある。
張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板では、一次被膜の粒子の粒径は、前記張力絶縁被膜を湿式(化学)エッチングやドライエッチングした後に、上記と同様にSEMにて求めることができる。また、集束イオンビーム(FIB、Focused Ion Beam)を使用して張力絶縁被膜を除去しながら一次被膜の粒子を観察し、粒径を求めることもできる。
前記張力絶縁被膜は、方向性電磁鋼板に張力を付与でき、絶縁性が確保できるものであれば、特に限定されないが、例えば、以下のような被膜を張力絶縁被膜とすることができる。
また、前記塗布液には、リン酸塩3〜24質量%、コロイダルシリカ4〜16質量%が含まれているのが好ましい。更に、クロム酸塩を含む場合には、クロム酸塩が0.2〜4.5質量%含有するのが好ましい。更に、前記水系塗布溶液に、酸化ナトリウム等の添加剤を含んでもよい。
詳細は後の実施例5に記載するが、前記Mg含有量の範囲内と前記板厚の範囲内で種々の薄手方向性電磁鋼板のサンプルを作製し、前記サンプルに更に張力絶縁被膜を施し、切断端部における前記張力絶縁被膜の耐振動剥離性(密着性)を評価した結果、前記Mg含有量Cmと前記板厚Tとが特定の関係にあるときに、切断端部における張力絶縁被膜の耐振動剥離性(密着性)がより優れたものになることを見出した。
Cm ≦ −115×T2+53.1×T−3.7 ・・・(3)
の関係にある場合には、鉄損が小さく、優れた磁束密度が得られるとともに、切断端面における張力絶縁被膜の耐振動剥離性に優れているものとなることを見出しものである。
また、図1に示しているように、
Cm ≧ 10×T−0.5 ・・・(4)
であると、更に、切断端面における張力絶縁被膜の耐振動剥離性に優れるものである。
なお、図1に示されているように、Tはmmで、Cmはg/m2で表したときの値である。
前記剥離の程度は、50cm角の1辺の切断端部を顕微鏡で観察して、50cmの切断端部で剥離している部分の総長さLt(cm)を測定し、100×Lt/50(%)として算出する。
前記切断片に関して、4辺の裏表を同様に観察して、前記同様に算出した値の平均値で、0%以上1%未満:○、1%以上〜2%未満:●、2%以上5%未満:◇、5%以上:×として、耐振動剥離性を評価した。
すなわち、シャー切断のようなせん断による切断時における衝撃が、超音波振動によって剥離を起こす程度のクラックを起こす起点を、切断断面の被膜界面に発生させる場合があり、そのクラック発生起点が、Mg含有量Cmと板厚Tとが特定の関係にあるときには生成し難いものと考える。前記切断時における衝撃が、切断断面の被膜界面に集中あるいは共鳴すると前記クラック発生起点が生成し易くなり、反対に前記衝撃を分散できれば前記クラック発生起点の生成を抑制できる。Mg含有量Cmも板厚Tも、切断時における衝撃に対して大きく影響するものであり、Mg含有量Cmは張力絶縁被膜との密着強度や被膜界面での衝撃振動吸収の程度に主に影響し、板厚Tは鋼板全体の衝撃振動の共振及び減衰(吸収)に主に影響するものである。なお、前記クラック発生起点とは、例えば、マイクロクラックのようなものである。
まず、本発明で使用できる鋼素材(珪素鋼スラブ)の好ましい成分組成について説明する。なお、%は質量%を意味する。
前記珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、次いで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。前記珪素鋼スラブを加熱して、熱間圧延を行う。前記珪素鋼スラブの加熱は、通常、MnS、MnSe、AlN等のインヒビター成分を十分に溶体化(固溶)させるため1300℃を超える高温で行う。但し、後工程において、鋼板状態で外部から窒素を導入する窒化過程を用いてインヒビター成分を増加させる場合には、普通鋼並みのスラブ加熱を行うことも可能である。
脱炭焼鈍の温度に関しては、脱炭焼鈍温度が変化すると、鋼中のCやSiの拡散速度が変化するとともに、CやSiの酸化反応速度も変化する。すなわち、脱炭焼鈍温度が高くなると、鋼中のCやSiの酸化反応が進みやすくなる。したがって、シリカ量に関しては、脱炭焼鈍温度が高いほど多くのシリカが形成され、脱炭焼鈍温度を低くするとシリカの量を少なくできる。
脱炭焼鈍の露点(酸素ポテンシャルPH2O/PH2)に関しては、脱炭焼鈍の雰囲気である露点は、CやSiの酸化反応に影響するものである。例えば、露点(酸素ポテンシャル)が高くなると、CやSiの酸化反応が進みやすくなる。したがって、シリカ量に関しては、露点が高いほど多くのシリカが形成され、露点を低くすると形成されるシリカ量を少なくできる。
Mg量は、仕上げ焼鈍における焼鈍分離剤のMgO以外に、各種添加剤を添加することで変化する。前記添加剤には、シリカとマグネシアの反応に関与するもの、脱炭焼鈍後に形成された鋼板表面のシリカを焼鈍分離剤中に移動させて除去する作用を促すもの、等がある。
具体的な例としては、Na2B4O7、NaOH、Na2CO3、NaCl、KOH、KCl、K2CO3等が挙げられる。
アルカリ金属塩の作用によって流動性を示すようになったシリカは、焼鈍分離剤中、即ち、マグネシア粉末中に移動していくのであるが、マグネシア粒子の表面に高温でシリカが来ると反応して流動性を失ってしまう。一方、TiO2は、マグネシアに比べてシリカと反応し難いので、TiO2が存在するとシリカが反応せずにその表面を移動でき、よりシリカを焼鈍分離剤中に吸収させることになる。よって、添加するTiO2の量は、アルカリ金属塩の量とのバランスで決まるが、一般的には、1.0質量%〜10質量%の範囲であるのが好ましい。アルカリ金属塩の質量に対するTiO2質量の比が、50〜200の範囲がより好ましい。
仕上げ焼鈍で使用する焼鈍分離剤に、セリウム化合物を添加し、その添加量によって前記被覆率を制御できる。セリウム化合物の添加量が多くなると、被覆率が小さくなる傾向がある。前記セリウム化合物としては、例えば、CeO2、Ce2O3、Ce(OH)4、Ce2S3、Ce(SO4)2・nH2O(nは0以上の数)、Ce2(SO4)3・nH2O(nは0以上の数)が挙げられる。なかでもCe(OH)4が、被覆率の制御性が良いので、より好ましい。通常、前記セリウム化合物を、焼鈍分離剤の固形分総量に対して1〜10質量%となるように添加することで、本発明のより好ましい被覆率に制御できる。
前記粒子の粒径は、仕上げ焼鈍の温度の影響を受ける。仕上げ焼鈍温度が高くなるとともに、被膜を構成する結晶粒が成長するため、粒子の粒径が増加する。
張力絶縁被膜が形成できる上述の塗布液を、ロールコーター等の湿式塗布方法で鋼板表面塗布し、空気中、800〜900℃の温度で10〜60秒間焼き付けることによって、張力絶縁被膜を形成できる。
以上、本発明の態様について説明したが、さらに、実施例を用いて、本発明の実施可能性及び効果について説明する。
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.027質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.12〜0.25mm厚に冷間圧延した。この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.33の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分16質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表1に示した添加剤を表1の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。また、焼鈍分離剤の焼付け温度と時間、及び焼鈍分離剤の焼付け後から仕上げ焼鈍を始めるまでの時間によって、塗布した焼鈍分離剤中の含水量を調整した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
また、前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
薄手方向性電磁鋼板の磁気特性の評価に関しては、エプスタイン法により磁束密度B8(磁界800A/mにおける磁束密度)及び鉄損W17/50(磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損)を評価した。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.3質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1μmの張力絶縁膜を施した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
更に、張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板の占積率は、JIS2550に順ずる方法で測定した。
C:0.06質量%、Si:3.2質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.028質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.23mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.21〜0.41の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、表3に示した希土類化合物を種々の割合で添加した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分16質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表3に示した添加剤を表3の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の薄手方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
薄手方向性電磁鋼板の磁気特性の評価に関しては、エプスタイン法により磁束密度B8(磁界800A/mにおける磁束密度)及び鉄損W17/50(磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損)を評価した。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、18質量%、11質量%、0.2質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1μmの張力絶縁膜を施した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで張力絶縁膜を除去した後に、Mgを上記と同様にICP分光分析法で分析し、Mg量を求めた。ここで求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
表4から明らかなように、Mg量が1.5〜2.5g/m2の範囲である実施例No.2-1〜2-8においては、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁束密度は1.89T以上であり良好な磁気特性であった。特に、被覆率が70%以上である実施例No.2-1〜2-7は、張力絶縁被膜密着性がより良好であった。
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.026質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.23mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.41の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、表5に示した希土類化合物を種々の割合で添加した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分17質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表5に示した添加剤を表5の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1050〜1300℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.2質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1μmの張力絶縁膜を施した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで張力絶縁膜を除去した後に、Mgを上記と同様に分析し、Mg量を求めた。この方法で求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
表6から明らかなように、Mg量が1.5〜2.5g/m2の範囲である実施例No.3-1〜3-7においては、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の鉄損が小さく、その磁束密度は1.89T以上であり良好な磁気特性であった。特に、粒径が0.3〜1.5μmの範囲にある実施例No.3-1,3-2,3-5は、二次被膜による鋼板への張力付与が効果的に得られ((A)−(B)値が大きい)、占積率も高いものであった。
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.027質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.23mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.41の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、表7に示した希土類化合物を種々の割合で添加した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分16質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表7に示した添加剤を表7の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.3質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここで、数平均粒子径150nmサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚0.5〜2.5μmの張力絶縁膜を施した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで張力絶縁膜を除去した後に、Mgを上記と同様に分析し、Mg量を求めた。この方法で求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
表8から明らかなように、Mg量が1.5〜2.5g/m2の範囲である実施例No.4-1〜4-8においては、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の鉄損が小さく、その磁束密度は1.89T以上であり良好な磁気特性であった。特に、張力絶縁被膜の膜厚が1.5〜3.0μmの範囲にある実施例No.4-2,4-3,4-5〜4-9は、張力がより効果的に付与でき((A)−(B)値が大きい。)、より高い占積率が維持できた。
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.027質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23mm厚に冷間圧延して、板厚の異なるサンプル板を作製した。
前記各サンプル板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.33の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前記脱炭焼鈍の条件、及び仕上げ焼鈍の条件と焼鈍分離剤の組成を制御して、各板厚の鋼板において、Mg含有量が1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲内で各種Mg含有量の異なる薄手方向性電磁鋼板のサンプルを作製した。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.3質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1.2μmの張力絶縁膜を施した。
前記切断片に関して、4辺の裏表を同様に観察して、前記同様に算出した剥離割合の値の平均値で、0%以上1%未満:○、1%以上〜2%未満:●、2%以上5%未満:◇、5%以上:×として、振動剥離性を評価した。その結果を図1に示す。
尚、膜厚1.2μmの張力絶縁膜を施した場合のみを示しているが、その他の膜厚でも同様の結果を得ている。
Claims (5)
- Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2含まれている薄手方向性電磁鋼板であって、マグネシウム珪酸塩を含む被膜を有し、該マグネシウム珪酸塩を含む被膜による前記鋼板の表面の被覆率が70%〜90%であり、板厚が0.15mm〜0.23mmであることを特徴とする薄手方向性電磁鋼板。
- 前記マグネシウム珪酸塩を含む被膜を構成する粒子の数平均粒径が、0.3μm〜1.5μmであることを特徴とする請求項1に記載の薄手方向性電磁鋼板。
- 前記金属換算質量によるMg含有量Cm(g/m2)が、前記板厚T(mm)に対して、
Cm ≦ −115×T2+53.1×T−3.7
の関係であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄手方向性電磁鋼板。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄手方向性電磁鋼板の表面に、張力絶縁膜による被覆が施されていることを特徴とする張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
- 前記張力絶縁膜の膜厚が、0.5〜2.0μmであることを特徴とする請求項4に記載の張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
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