JP5482117B2 - 薄手方向性電磁鋼板及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板 - Google Patents

薄手方向性電磁鋼板及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、鋼の結晶粒がミラー指数で{110}<001>方位に集積した薄手方向性電磁鋼板及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板に関するものである。
電磁鋼板は、変圧器や発電機等の鉄心として使用される。鉄心(コア)は、コイルで発生する磁束を集約し(磁束の通り道を作り)、変圧器や発電機等の効率を上げる効果を果たしている。したがって、電磁鋼板に求められる性能としては、磁束密度が大きく、磁化されやすいこと、その損失(鉄損)が小さいことがあげられる。変圧器の鉄心には、方向性電磁鋼板が使用されている。
近年、省電力のために変圧器のエネルギー損失を一層低減するニーズが高まっている。変圧器のエネルギー損失を大別すると、負荷に関係なく発生する無負荷損と負荷電流によって変化する負荷損に分けられる。このうち無負荷損は主として鉄心に発生する鉄損であり、負荷損は主として負荷電流による導線の抵抗損(銅損と呼ばれる)からなっている。
よって、変圧器のエネルギー損失を低減するために鉄心に求められるのは、鉄損の低減である。すなわち、鉄心として使用される方向性電磁鋼板については、より小さな鉄損が要求されるようになってきた。
方向性電磁鋼板の鉄損は、主としてヒステリシス損失と渦電流損失に大別される。ヒステリシス損失は交流で磁化された際に、電磁鋼板の磁区が交流磁界に応じて磁界の向きを反転する際の損失である。よって、ヒステリシス損失は、磁区反転し易さを決定する結晶方位、鋼の純度、及び内部歪等によって影響を受ける。
一方、渦電流損失は、磁化した際に、電磁鋼板内部で磁化を妨げる方向に流れる電流により生じる損失である。したがって、渦電流損失は、電気抵抗に係る板厚、結晶粒径、磁区サイズ等に依存する。
方向性電磁鋼板では、渦電流損失が全鉄損の約70%を占めるため、渦電流損失の低減が重要である。渦電流損失の低減に関し、最も有力な手法は、鋼板の板厚を薄くすることによって電気抵抗を大きくすることであることから、0.28mm、0.23mm、0.18mmといった薄肉の鋼板が製造されるようになった。例えば、板厚を薄くする方法として次のような提案がなされている。例えば、特許文献1及び2において、薄手化した電磁鋼板に係る製造方法が開示されている。
このように鋼板の板厚を薄くすることによって、方向性電磁鋼板の鉄損は改善されてはきたものの、薄手化された方向性電磁鋼板を使用して実際に変圧器を製造した場合には、エネルギー損失に関して期待できるほど大きな低減効果が得られない。
この理由は、変圧器の鉄心は、方向性電磁鋼板を積層して用いているが、鋼板の板厚を薄くするに従い、鉄心全体の体積に対して鉄(鋼)の体積の占める割合(これを占積率と呼ぶ)が低下するためである。
板厚を薄くすると占積率が低下するのは、次の理由による。
通常、一方向性電磁鋼板には非磁性の被膜が施されている。前記被膜の膜厚が鋼板の板厚によらず一定であると、積層して鉄心にした場合、鋼板の板厚を薄くするとともに鉄の占める比率(占積率)が低下するからである。したがって、鋼板の板厚を薄くするのに合わせて被膜の厚みも薄くすれば、高い占積率を確保でき、積層しても鋼板の薄手化による鉄損低下が効果的に得られる。
ここで、方向性電磁鋼板の被膜は、絶縁被膜(二次被膜)と、その下層のフォルステライトを主とするマグネシウム珪酸塩被膜(一次被膜)との二層被膜で構成されている。これらの被膜は、絶縁性と鋼板への張力付与のために施されている。張力の付与は磁区を細分化できるので渦電流損失の低減に有力である。張力は前記被膜によって付与が可能であるが、その方法として、次の二つの考え方がある。すなわち、(i)絶縁被膜に張力付与を担わせる方法と、(ii)その下層の一次被膜に張力付与を担わせる方法である。
一次被膜に張力付与を担わせる場合(ii)、鋼板に張力を与えるためには一定以上の膜厚が必要であり、一次被膜を薄くすることはできない。一方、絶縁被膜で張力付与を行う場合(i)、一次被膜の役割は絶縁被膜と鋼板との密着性を確保させるだけで、一次被膜を薄くすることができる。よって、方向性電磁鋼板の被膜設計の1つとして、絶縁被膜で張力付与を担い、一次被膜は前記絶縁被膜と鋼板との密着性を確保できる程度にまで薄くして、被膜の総膜厚を低減させて占積率を高めることが行われている(特許文献3参照)。
一次被膜を構成するフォルステライト(Mg2SiO4)は、仕上げ焼鈍において形成される。即ち、脱炭・一次再結晶焼鈍で鋼板表層に形成されたサブスケール中のシリカ(SiO2)が、仕上げ焼鈍前に鋼板表面に塗布された焼鈍分離剤中のマグネシア(MgO)と、仕上げ焼鈍中に下式(1)のような反応により形成される。
2MgO + SiO2 → Mg2SiO4 ・・・(1)
したがって、(1)式によれば、マグネシア又はシリカの量が少なければ形成されるフォルステライトの量も少なくなって、一次被膜が薄くなる。マグネシアは、一次被膜を形成する原料となっているが、本来は仕上げ焼鈍における焼き付き防止を目的として使用されているので、現実的にはその量を極端に減らすことはできない。したがって、脱炭・一次再結晶焼鈍で形成されるシリカの量を少なくして、フォルステライト生成量を減少させて薄い一次被膜を形成させることになる。
特許文献3では、前記目的で、薄くて均一なフォルステライト被膜を形成する方法が開示されている。特許文献3では、脱炭・一次再結晶焼鈍時に生成するサブスケール(主にシリカ)の酸素目付量を0.4〜1.6g/m2と低くし、かつサブスケール中のファイヤライト(Fe2SiO4)とシリカの組成比を特定の範囲内にすることで、仕上げ焼鈍後に薄く均一なフォルステライト被膜が得られるとしている。
また、薄いフォルステライト被膜とするものではないが、安定に張力付与できるフォルステライト被膜であって、欠陥の無い均一で密着性に優れるフォルステライト被膜を形成することが、特許文献4に開示されている。即ち、フォルステライト被膜が、酸素目付量2.5〜4.5g/m2の範囲とし、Ti目付量0.25〜0.90g/m2の範囲とし、Ti/Nモルを1.2以下とし、フォルステライト粒子の平均粒子径を0.5μm以下にすることで、前記フォルステライト被膜にできるとしている。
特開昭59−126722号公報 特開昭62−167822号公報 特開平4−202713号公報 特開平9−184017号公報
上述のように、薄いフォルステライト被膜とした方向性電磁鋼板によれば、変圧器の鉄心として積層しても高い占積率が得られるものである。特に、鋼板の板厚を薄くした場合には、前記効果が顕著になる。
しかしながら、薄い板厚の方向性電磁鋼板で、例えば、特許文献3の方法によって薄いフォルステライト被膜を形成すると、占積率は高くなるが、必ずしも大きな磁束密度が得られるとは限らないという問題が顕在化してきた。例えば、磁束密度は変圧器の設計と大きく関わっているので、前記の問題が生じて磁束密度が小さくなると変圧器の小型化が難しくなる。
本発明は、板厚0.15〜0.23mmの薄手方向性電磁鋼板とした鉄損の小さい方向性電磁鋼板であって、占積率が高く、かつ大きな磁束密度を持つ薄手方向性電磁鋼板及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するため、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2含まれている薄手方向性電磁鋼板であって、マグネシウム珪酸塩を含む被膜を有し、該マグネシウム珪酸塩を含む被膜による前記鋼板の表面の被覆率が70%〜90%であり、板厚0.15mm〜0.23mmであることを特徴とする薄手方向性電磁鋼板。
)前記マグネシウム珪酸塩被膜を構成する粒子の数平均粒径が、0.3μm〜1.5μmであることを特徴とする上記(1)に記載の薄手方向性電磁鋼板。
)前記金属換算質量によるMg含有量Cm (g/m2)が、前記板厚T(mm)に対して、
Cm ≦ −115×T2+531×T−3.7
の関係であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄手方向性電磁鋼板。
)上記(1)〜()のいずれかに記載の薄手方向性電磁鋼板の表面に、張力絶縁膜による被覆が施されていることを特徴とする張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
)前記張力絶縁膜の膜厚が、1.5〜2.0μmであることを特徴とする上記()に記載の張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
本発明によれば、鉄損が小さく、優れた磁束密度が得られる。また、本発明の薄手方向性電磁鋼板を使用して変圧器を組み立てれば、高い占積率を確保でき、エネルギー損失の低い、優れた変圧器を提供できる。
Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲で、板厚が0.15mm〜0.23mmの範囲の方向性電磁鋼板における張力絶縁被膜を施した場合の切断端部における張力絶縁被膜の耐振動剥離性を示す図である。切断端部の振動剥離性が、0%以上1%未満:○、1%以上〜2%未満:●、2%以上5%未満:◇で示す。
以下、この発明に至った経緯および本発明の詳細について具体的に説明する。
板厚が0.15mm〜0.23mmの薄手で鉄損が小さくなる方向性電磁鋼板において、その表面に一次被膜としてマグネシウム珪酸塩を含む被膜を有し、かつ、前記方向性電磁鋼板にMgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲で含まれていると、二次被膜として張力絶縁被膜を施した製品板としたときに高い磁束密度が得られること、さらに、この製品板を変圧器として積層した場合には高い占積率も確保できることを見出し、本発明に至ったものである。
本発明の上記方向性電磁鋼板で、Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲で含まれると、張力絶縁被膜を施した製品板で高い磁束密度が得られるのは次のように考えられる。
方向性電磁鋼板の磁束密度は、磁化方向に垂直な断面(即ち、板厚方向の断面)における単位面積当たりの磁束である。したがって、断面積Sの方向性電磁鋼板に、特定の強さの磁場をかけた際に得られる磁束がAであれば、磁束密度Bは、B=A/Sとなる。方向性電磁鋼板の磁束密度を考える場合に、評価する試験板は同じサイズであるので、板厚が同じ鋼板で比較すると、それらの断面積Sは、一定である。よって、方向性電磁鋼板の中を通る磁束Aの大きさが、磁束密度Bの大小を左右するものとなる。
ここで、磁束は、磁性体の中を優先的に通るものである(ちなみに、磁性体が存在する場合、空気中や非磁性体中の磁束は無視できるほど小さい)。即ち、ここでは、磁性体である鋼の中を磁束が通ると考えてよい。
したがって、方向性電磁鋼板の磁性体部(鋼)の透磁率が一定であるとして考えれば、磁束が通る鋼の含有率が高いほど磁束密度Bが大きくなる。方向性電磁鋼板が鋼100%で構成されていれば、最も高い磁束密度が得られる。しかし、実際の方向性電磁鋼板には、上述のように一次被膜や二次被膜をはじめとする非磁性体が含まれるので、磁束密度Bは、方向性電磁鋼板中に占める非磁性体の割合(又は、鋼の割合)に依存するものとなる。また、前記一次被膜と二次被膜は、絶縁性や張力付与(低鉄損化)のために必須であるが、方向性電磁鋼板中で前記被膜の占める割合が増えると磁束密度Bが小さくなる。
しかしながら、方向性電磁鋼板のMg量が上記の特定の範囲にあると、必要な絶縁性や張力(低鉄損)を確保しながら、非磁性体の占める割合を最小限にすることができるので高い磁束密度が得られるものと考える。
方向性電磁鋼板のMgが金属換算質量で1.5g/m2未満であると、張力絶縁被膜が密着しなかったり、密着力が弱くて剥がれたりするので好ましくない。一方、方向性電磁鋼板のMgが金属換算質量で2.5g/m2を超えると、方向性電磁鋼板の中で非磁性体の占める割合が大きくなりすぎて、高い磁束密度が得られない。また、Mg量が多くなった場合には、含有するMgは主として一次被膜を構成するマグネシウム珪酸塩の量に対応するようなる。その結果、被膜の厚さが増加し、占積率が低くなるので好ましくない。
本発明では上記の理由で磁束密度が高くなるものであるから、二次被膜を施す前の鋼板の磁束密度を測定しても高い磁束密度となるものである。
前述のように、一次被膜をフォルステライト被膜として、その酸素目付け量で一次被膜の量を判断している例がある(特許文献4参照)。このように酸素目付け量を一次被膜量として判断しても、方向性電磁鋼板に占める非磁性体の量を正確に表していることにならない。仮に、方向性電磁鋼板に化学量論組成のフォルステライトMg2SiO4のみで非磁性体の被膜を構成しているのであれば、非磁性体の量が一義的に決まる。
しかしながら、現実には、(i)一次被膜を構成するのは、フォルステライトだけでなく、スピネルMgAl24等のマグネシウム塩(非磁性体)が含まれていること、(ii)前記酸化物の酸素量は、方向性電磁鋼板の仕上げ焼鈍条件ではMg2SiO4-δやMgAl24-δのような酸素欠損が生じるので、前記化学量論とは一致しないこと、(iii )前記酸化物以外にも、MgS、Mg32、MgSeなどのマグネシウム非酸化物が存在し、これらも非磁性体であること、等によって酸素目付け量と非磁性体の量が必ずしも対応していない。
これらのことが、上述のように、酸素目付け量で示される薄いフォルステライト被膜を形成しても、必ずしも大きな磁束密度が得られないことの理由である。これらの要因は、一次被膜の量が多い場合は、無視できるものであったが、一次被膜の量を少なくしようとした場合に顕在されてきたものである。本発明では、むしろ、非磁性体を構成する元素であるMgの量を指標として、その量を上記の範囲にすることで、必要最小限の非磁性体を含ませたものにできることを見出したものである。
本発明では、方向性電磁鋼板のMgの量は、次のようにして決めることができる。
所定質量の鋼板を酸等で完全に溶解し、前記溶解液中のMgの量を誘導結合プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma)発光分析法により測定する。ここで、鋼板を溶解するには、例えば、硝酸、硫酸等の酸を使用することができる。前記測定結果より、鋼板の単位質量当たりのMg金属換算質量でMg量m(質量%)を算出し、更に、鋼板の密度を7.65g/cm3として板厚t(mm)の鋼板単位面積当たりのMg量M(Mg金属換算質量g/m2)を、次式(2)で求める。
M = 7.65×t×1000×m ・・・(2)
また、張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板では、鋼板総質量に対する張力絶縁被膜の質量が極めて小さいので無視できるので、張力絶縁被膜にMgが含まれない場合には、上記と同様に分析して得られるMg量が、本発明の範囲内であれば本発明の作用効果が得られるものである。
張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板で張力絶縁被膜にMgが含まれる場合には、前記張力絶縁被膜を湿式(化学)エッチングやドライエッチングで除去した後に、上記分析法でMg量を決定できる。湿式エッチングの場合には、例えば、20%水酸化ナトリウム水溶液等のエッチング液を使用されば、張力絶縁被膜を選択的に除去できる。
本発明において、方向性電磁鋼板の板厚は、上述のように0.15mm〜0.23mmである。本発明の方向性電磁鋼板では、薄手化によって低鉄損とする方向性電磁鋼板であるので、前記板厚の範囲とする。ここで、方向性電磁鋼板の板厚とは、仕上げ焼鈍後の板厚を示しており、JIS C 2550によって決められるものである。
したがって、上記板厚が、0.23mmを超えると、渦電流の増加によって鉄損が大きくなり好ましくない。一方、上記板厚が小さくなるほど、渦電流を低減でき鉄損を小さくできるものであるが、0.15mm未満になると、方向性電磁鋼板の中で被膜の占める割合が多くなり、磁束密度の高いものが得られず、占積率も低下するので好ましくない。
また、前記方向性電磁鋼板は、インヒビターとなる成分を含有させた鋼素材(スラブ)から、熱間圧延、冷間圧延、及び一次再結晶焼鈍の基本工程を経て、二次再結晶焼鈍(仕上げ焼鈍)にて結晶方位をGOSS方位と呼ばれる{110}<001>方位に集積した電磁鋼板である。
本発明の方向性電磁鋼板の少なくとも鋼板裏表の表面には、マグネシウム珪酸塩を含む被膜が存在する。マグネシウム珪酸塩を含む被膜は、張力絶縁被膜を施した際に密着性を確保し、張力絶縁被膜によって十分な張力を鋼板に与えるために必要である。即ち、本発明では、一次被膜は、二次被膜と鋼板との密着性を確保する役割とし、絶縁性及び張力付与(低鉄損化)は二次被膜に負わせるという設計思想である。
マグネシウム珪酸塩を含む被膜におけるマグネシウム珪酸塩とは、マグネシウムと珪酸を含む塩であり、フォルステライトMg2SiO4-δ、及びその固溶体(例えば、(Mg,Fe)2SiO4-δ)である。その他に、MgSiO3、Mg2SiO4、Mg2Si38、Mg3Si27などのマグネシウム珪酸塩(珪酸マグネシウム)が挙げられ、これらの固溶体も含まれる。前記マグネシウム珪酸塩の中でも、張力絶縁被膜との密着性により優れるフォルステライトがより望ましい。
前記被膜中のマグネシウム珪酸塩の同定及び定量には、X線回折法(XRD)を用いる。XRDピークの積分値で各相の検量線を作成して、目的にサンプルを測定することにより、マグネシウム珪酸塩の各相に関し、その存在比率を算出できる。
また、マグネシウム珪酸塩を含む被膜には、マグネシウム珪酸塩が主として含まれるものであるが、その他に、スピネルMgAl24-δ、ファイヤライトFe2SiO4、クリノフェロシライトFeSiO3等の酸化物が含まれていてもよい。特に、スピネルMgAl24-δが共存しているのが好ましい。
前記被膜に含まれるマグネシウム珪酸塩は、張力絶縁被膜との密着性及び鋼板との密着性を両立させて十分確保するために、被膜中に70質量%〜90質量%含まれるのがより好ましい。マグネシウム珪酸塩の含有量が70質量%未満であると、張力絶縁被膜と鋼板との間で十分な密着性が得られない場合がある。マグネシウム珪酸塩の含有量が90質量%を超えると、マグネシウム珪酸塩を含む被膜(一次被膜)自体の鋼板に対する密着性が低下する場合がある。特に、マグネシウム珪酸塩を含む被膜中に、スピネルMgAl24-δが10質量%超以上含まれると、一次被膜自体の鋼板に対する密着性がより良好になる。
本発明のマグネシウム珪酸塩を含む被膜による鋼板裏表面の被覆率が、70%〜90%であるのが、より好ましい。前記被覆率の範囲であると、その上に施す張力絶縁被膜の密着性に優れ、鋼板へ張力が効果的に付与できる。即ち、一次被膜で鋼板面が完全に覆われているよりは、寧ろ、一部覆われていない部分が存在することにより、二次被膜が接触する総面積が大きくなるので密着性がより向上するものである。
ここで、被覆率Rc(%)とは、鋼板の裏表両面の面積Stに対するマグネシウム珪酸塩を含む被膜が前記裏表両面を覆っている面積Scの割合Rc=100×Sc/Stである。
前記被覆率が70%未満では、張力絶縁被膜と鋼板との密着性を確保するマグネシウム珪酸塩を含む被膜が少なくなり、張力絶縁被膜と鋼板との間の密着性が低くなる場合がある。また、その結果、鋼板へ付与する張力は小さくなる場合がある。
前記被覆率が90%を超えると、上述のような張力絶縁被膜の密着性向上が小さくなり、張力絶縁被膜を被覆した鋼板の加工時に部分的に剥離する場合がある。張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板は、変圧器などの鉄心を組み立てるにあたり、鋼板の切断や打ち抜き等の加工をするが、前記被覆率が90%を超えたものでは、マグネシア珪酸塩等が緻密に焼結した一次被膜となっているため、加工時の衝撃等でクラックが伝播しやすく、加工時の密着性が劣る場合がある。その反面、前記被覆率が90%以下では、一次被膜には間隙が存在し、加工時の衝撃を吸収でき、クラックが発生したとしてもその伝播を抑制できる。
ここで、前記被覆率Rcは、次のようにして求めるものである。
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて、50μm×50μmの領域Stに対して、前記被膜の表面を上部から観察して又は写真に撮って、被膜が覆っている面積Scを計測し、その値から被覆率Rc=100×Sc/Stを算出する。本発明の被覆率は、20箇所の50μm×50μmの計測から得られる値を平均したものである。
前記被覆率に関し、張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板の一次被膜の被覆率は、前記張力絶縁被膜を湿式(化学)エッチングやドライエッチングした後に、上記と同様にSEMにて求めることができる。また、集束イオンビーム(FIB、Focused Ion Beam)を使用して張力絶縁被膜を除去しながら一次被膜を観察し、被覆率を求めることもできる。
本発明のマグネシウム珪酸塩を含む被膜は、酸化物の粒子が焼結した状態で構成されるものであるが、前記粒子の粒径(数平均粒子径)は、二次被膜の張力付与を効果的にできるという観点で大きい方が好ましく、0.3μm〜1.5μmの範囲であるのが、より好ましい。
前記のように、マグネシウム珪酸塩を含む被膜は、酸化物の粒子が焼結した組織であるので、粒子が大きいと、粒子に比べて弾性率(ヤング率)の低い粒界の占める割合が小さくなるので、被膜の見掛け弾性率が高くなる。二次被膜と鋼板との間に存在する前記被膜の見掛け弾性率が高い方が、二次被膜による張力を効率よく鋼板に付与できる。
前記粒径が0.3μm未満では、二次被膜による鋼板への張力付与が効果的に得られない場合がある。前記粒径が1.5μmを超えると、被膜組織の粒界の占める割合が少なくなるが、粗大粒による被膜表面の凹凸が顕著になり、二次被膜を施しても鋼板表面の凹凸が残って占積率が低下する場合がある。
ここで、前記粒径は、SEMにて方向性電磁鋼板の表面を観察し、線分法にて求められるものであり、数平均粒子径として100個の粒子の粒径を平均したものである。
張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板では、一次被膜の粒子の粒径は、前記張力絶縁被膜を湿式(化学)エッチングやドライエッチングした後に、上記と同様にSEMにて求めることができる。また、集束イオンビーム(FIB、Focused Ion Beam)を使用して張力絶縁被膜を除去しながら一次被膜の粒子を観察し、粒径を求めることもできる。
すでに例示したように、本発明の薄手方向性電磁鋼板は、鋼板面の裏表の表面に、張力絶縁被膜を施して張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板とすることができる。
前記張力絶縁被膜は、方向性電磁鋼板に張力を付与でき、絶縁性が確保できるものであれば、特に限定されないが、例えば、以下のような被膜を張力絶縁被膜とすることができる。
張力絶縁被膜の例としては、少なくとも、リン酸塩とコロイダルシリカを含む水系塗布溶液を塗布して形成される被膜がある。この場合、前記リン酸塩としては、例えば、Ca、Al、Sr等のリン酸塩が挙げられる。中でも、リン酸アルミニウム塩がより好ましい。前記コロイダルシリカは特に限定はなく、その粒子サイズも適宜使用することができる。特に好ましい粒子サイズ(数平均粒径)は、200nm以下である。前記粒子サイズが100nm未満でも分散に問題はないが製造コストが高くなって現実的でない場合がある。前記粒子サイズが、200nmを超えると処理液中で沈降する場合がある。
前記塗布液には、更に、クロム酸塩を含んでもよい。前記クロム酸塩としては、例えば、Na、K、Ca、Sr等のクロム酸塩が挙げられる。中でも、無水クロム酸がより好ましい。
また、前記塗布液には、リン酸塩3〜24質量%、コロイダルシリカ4〜16質量%が含まれているのが好ましい。更に、クロム酸塩を含む場合には、クロム酸塩が0.2〜4.5質量%含有するのが好ましい。更に、前記水系塗布溶液に、酸化ナトリウム等の添加剤を含んでもよい。
前記張力絶縁被膜の膜厚は、0.5μm〜2.0μmであるのがより好ましい。前記膜厚が0.5μm未満では、十分な張力を付与できない場合、又は十分な絶縁性を確保できない場合がある。一方、前記膜厚が2.0μmを超えると、占積率が低下する場合がある。したがって、前記膜厚の範囲であると、優れた絶縁性と張力付与が得られ、低い鉄損で高い占積率を有する張力絶縁膜被覆の方向性電磁鋼板とすることができる。ここで、前記膜厚とは、鋼板の断面SEM観察において、任意の10視野で測定された膜厚の平均値を意味する。
また、本発明者らは、本発明の薄手方向性電磁鋼板に関し、Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲で含まれ、板厚が0.15mm〜0.23mmの範囲において、前記Mg含有量Cmと前記板厚Tの関係について更に詳細に調べた。
詳細は後の実施例5に記載するが、前記Mg含有量の範囲内と前記板厚の範囲内で種々の薄手方向性電磁鋼板のサンプルを作製し、前記サンプルに更に張力絶縁被膜を施し、切断端部における前記張力絶縁被膜の耐振動剥離性(密着性)を評価した結果、前記Mg含有量Cmと前記板厚Tとが特定の関係にあるときに、切断端部における張力絶縁被膜の耐振動剥離性(密着性)がより優れたものになることを見出した。
即ち、図1に示した結果が得られ、この結果より、
Cm ≦ −115×T2+531×T−3.7 ・・・(3)
の関係にある場合には、鉄損が小さく、優れた磁束密度が得られるとともに、切断端面における張力絶縁被膜の耐振動剥離性に優れているものとなることを見出しものである。
また、図1に示しているように、
Cm ≧ 10×T−0.5 ・・・(4)
であると、更に、切断端面における張力絶縁被膜の耐振動剥離性に優れるものである。
なお、図1に示されているように、Tはmmで、Cmはg/m2で表したときの値である。
ここで、前記切断端面における張力絶縁被膜の耐振動剥離性とは、具体的には、張力絶縁被膜を被覆した方向性電磁鋼板を50cm角にシャー切断し、該切断片を40kHz超音波照射のアセトン中で10分間保持した後、該切断端部を観察して張力絶縁被膜の剥離の程度を意味する。
前記剥離の程度は、50cm角の1辺の切断端部を顕微鏡で観察して、50cmの切断端部で剥離している部分の総長さLt(cm)を測定し、100×Lt/50(%)として算出する。
前記切断片に関して、4辺の裏表を同様に観察して、前記同様に算出した値の平均値で、0%以上1%未満:○、1%以上〜2%未満:●、2%以上5%未満:◇、5%以上:×として、耐振動剥離性を評価した。
図1に示したように、前記Mg含有量Cmと前記板厚Tとが、前記(3)式で示した特定の関係を満たすときに、切断端部における張力絶縁被膜の耐振動剥離性がより優れたものになるということが実験的に明確に裏付けられているが、その理由について詳細は不明である。但し、次のような理由が考えられる。
すなわち、シャー切断のようなせん断による切断時における衝撃が、超音波振動によって剥離を起こす程度のクラックを起こす起点を、切断断面の被膜界面に発生させる場合があり、そのクラック発生起点が、Mg含有量Cmと板厚Tとが特定の関係にあるときには生成し難いものと考える。前記切断時における衝撃が、切断断面の被膜界面に集中あるいは共鳴すると前記クラック発生起点が生成し易くなり、反対に前記衝撃を分散できれば前記クラック発生起点の生成を抑制できる。Mg含有量Cmも板厚Tも、切断時における衝撃に対して大きく影響するものであり、Mg含有量Cmは張力絶縁被膜との密着強度や被膜界面での衝撃振動吸収の程度に主に影響し、板厚Tは鋼板全体の衝撃振動の共振及び減衰(吸収)に主に影響するものである。なお、前記クラック発生起点とは、例えば、マイクロクラックのようなものである。
次に、本発明の薄手方向性電磁鋼板、及び張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
まず、本発明で使用できる鋼素材(珪素鋼スラブ)の好ましい成分組成について説明する。なお、%は質量%を意味する。
本発明における鋼素材は、方向性電磁鋼板の製造に通常用いられているものが使用できるが、例えば、Si:2〜5%、C:0.02〜0.085%、酸可溶性Al:0.01〜0.065%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物よりなるものである。
Siは、電磁鋼板(珪素鋼板)の成分として、電気抵抗を高め、鉄損(渦電流損)を下げる基本元素である。Siの含有量が5%を超えると、冷間圧延時に、材料が割れ易くなり、圧延し難くなる。一方、Siの含有量が2%未満では、電気抵抗が小さくなり、製品における鉄損が増加してしまう。Siの含有量が2.5%以上であるのが好ましく、さらに好ましい範囲は2.8〜3.5%である。
Cは、一次再結晶組織を制御するうえで有効な元素であるが、最終的には磁気特性に悪影響を及ぼすので仕上げ焼鈍前に脱炭する必要がある。Cの含有量が0.02%未満では、良好な一次再結晶組織が得られ難い。Cの含有量が0.085%より多いと脱炭焼鈍時間が長くなり生産性が低下する。よって、Cの含有量は、0.02〜0.085%が好ましい。
酸可溶性Alは、AlNもしくは(Al、Si)Nを形成してインヒビターとしての機能を果たすための元素の一つである。酸可溶性Alの含有量が0.01〜0.065%であると、良好に二次再結晶させることができる。酸可溶性Alの含有量が0.01%未満では、AlNもしくは(Al、Si)Nを形成する量が少なくなり、インヒビターとしての作用が低下する。酸可溶性Alの含有量が0.065%を超えると、二次再結晶が不安定となる。
Nは、前記のように、酸可溶性Alとともに、AlNもしくは(Al、Si)Nを形成してインヒビターとしての機能を果たすための元素の一つである。Nの含有量が0.005%未満では、AlNもしくは(Al、Si)Nを形成する量が少なくなり、適量のAlNもしくは(Al、Si)Nを形成させるために、窒化処理の負担が大きくなる。Nの含有量が0.012%を超えると、冷延時にブリスターとよばれる鋼板中の空孔(ふくれ)を生じ易くなる。
鋼素材のその他の成分に関しても、薄手化による本発明の作用を妨げない範囲で添加することができ、既存の知見をそのまま適用することができる。
例えば、Mnは、MnSやMnSeを形成してインヒビターとしての機能を果たすための元素の一つである。Mnの含有量が0.06〜0.12%であると、良好に二次再結晶させることができる。より好ましくは0.08〜0.1%である。
Sは、MnSを形成してインヒビターとしての機能を果たすための元素の一つである。Sの含有量が0.005〜0.030%であると、良好に二次再結晶させることができる。より好ましくは0.007〜0.025%である。
Seは、MnSeを形成してインヒビターとしての機能を果たすための元素の一つである。Seの含有量が0.005〜0.1%であると、良好に二次再結晶させることができる。より好ましくは0.01〜0.05%である。
次に、本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
前記珪素鋼スラブは、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処理し、次いで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延することによって得られる。前記珪素鋼スラブを加熱して、熱間圧延を行う。前記珪素鋼スラブの加熱は、通常、MnS、MnSe、AlN等のインヒビター成分を十分に溶体化(固溶)させるため1300℃を超える高温で行う。但し、後工程において、鋼板状態で外部から窒素を導入する窒化過程を用いてインヒビター成分を増加させる場合には、普通鋼並みのスラブ加熱を行うことも可能である。
上記普通鋼並みのスラブ加熱を行って得られた熱間圧延板は、通常、磁気特性を高めるために900〜1200℃で30秒〜30分間の短時間焼鈍を施す。その後、一回もしくは焼鈍を挟んだ二回以上の冷間圧延により、目的とする最終の薄手化板厚(0.15〜0.23mm)とする。
一方、上記1300℃を超える高温でスラブ加熱を行って得られた熱間圧延板は、仕上げ冷延、あるいは中間焼鈍を含む複数回の冷延、あるいは熱延板焼鈍後中間焼鈍を含む複数回の冷延によって目的とする薄手化板厚(0.15〜0.23mm)に仕上げる。但し、仕上げ冷延前の焼鈍では結晶組織の均質化と、AlNの析出制御を行う。
冷間圧延後の鋼板は、鋼中に含まれるCを除去するために湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍(一次再結晶焼鈍)を施す。熱間圧延工程のスラブ加熱で普通鋼並みの加熱を行った場合、脱炭焼鈍の後は、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気中で焼鈍する方法により窒化処理を行う。
前記のようにして得られた脱炭板又は脱炭窒化板に、焼鈍分離剤を塗布して、1100℃以上の温度で仕上げ焼鈍を行う。仕上げ焼鈍は二次再結晶を主目的としているが、この過程でマグネシウム珪酸塩を含む被膜を形成する。前記焼鈍分離剤の塗布の方法としては公知の方法でよく、特に、前記焼鈍分離剤を水スラリーとしてロールコーターなどで鋼板に塗布する方法、静電塗布にて鋼板に粉体を付着させる方法などが好ましい。また、前記焼鈍分離剤の水スラリーは、焼鈍分離剤となる、マグネシアMgOを主として含む固形分が12〜20質量%含むスラリーである。また、前記固形分には、マグネシアが85〜98質量%(固形分を100質量%とした場合)含有するのが好ましい。また、後述するように、焼鈍分離剤の固形分としてマグネシア以外にいくつかの添加剤も使用される。
前記水スラリーを得る方法としては、焼鈍分離剤となる固形分の各原料をそれぞれ水に加えて混合し、水スラリーを得る方法、あらかじめ焼鈍分離剤となる固形分の各原料を粉末状態で混合した後に、前記混合粉末を水に加えて水スラリーを得る方法の何れでもよい。
本発明に係る薄手方向性電磁鋼板のMg量は、どのような方法で制御してもよいが、例えば、次のような方法で制御できる。
前記Mgは、上述の仕上げ焼鈍にて、焼鈍分離剤のマグネシアがMg供給源となって、マグネシウム珪酸塩等の化合物の形態で鋼板に含まれることになる。また、方向性電磁鋼板のMg量は、Mg供給源となるマグネシアは過剰にあるために、その他の条件で制御する。即ち、脱炭焼鈍(一次再結晶焼鈍)における脱炭焼鈍温度及び脱炭焼鈍時の露点(酸素ポテンシャル)、並びに、仕上げ焼鈍(二次再結晶焼鈍)における焼鈍分離剤の添加剤、及び塗布された焼鈍分離剤の含水量等がMg量に影響するので、これらの条件を適宜設定して、目的とするMg量にできる。
脱炭焼鈍は、鋼中のCを除去して磁気特性を向上させるのが目的であるが、Cを除去するために焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルを高くしている。酸素ポテンシャルが高くなると、鋼中のSiも酸化されて鋼板の表面にシリカSiO2が形成される。前述の(1)式ように、前記シリカとマグネシアが反応して一次被膜が形成されるので、脱炭焼鈍の条件は、Mg量に影響する。前述のように、脱炭焼鈍で形成されるシリカの量が前記Mg量に影響し、シリカ量を少なくするとMg量も少なく出来る傾向にある。
前記シリカの量は、脱炭焼鈍の温度と露点によって変化させることができる。
脱炭焼鈍の温度に関しては、脱炭焼鈍温度が変化すると、鋼中のCやSiの拡散速度が変化するとともに、CやSiの酸化反応速度も変化する。すなわち、脱炭焼鈍温度が高くなると、鋼中のCやSiの酸化反応が進みやすくなる。したがって、シリカ量に関しては、脱炭焼鈍温度が高いほど多くのシリカが形成され、脱炭焼鈍温度を低くするとシリカの量を少なくできる。
脱炭焼鈍の露点(酸素ポテンシャルPH2O/PH2)に関しては、脱炭焼鈍の雰囲気である露点は、CやSiの酸化反応に影響するものである。例えば、露点(酸素ポテンシャル)が高くなると、CやSiの酸化反応が進みやすくなる。したがって、シリカ量に関しては、露点が高いほど多くのシリカが形成され、露点を低くすると形成されるシリカ量を少なくできる。
仕上げ焼鈍では、以下のようにすることでMg量を制御できる。
Mg量は、仕上げ焼鈍における焼鈍分離剤のMgO以外に、各種添加剤を添加することで変化する。前記添加剤には、シリカとマグネシアの反応に関与するもの、脱炭焼鈍後に形成された鋼板表面のシリカを焼鈍分離剤中に移動させて除去する作用を促すもの、等がある。
Mg量を制御するには、脱炭焼鈍後に形成された鋼板表面のシリカを焼鈍分離剤中に移動させて除去する作用を促す添加剤を使用する。このような添加剤としては、Li、Na、K、Rb等のアルカリ金属塩が挙げられる。中でも、その効果とコストの観点で、ナトリウム塩とカリウム塩のアルカリ金属塩が好ましい。
具体的な例としては、Na2B4O7、NaOH、Na2CO3、NaCl、KOH、KCl、K2CO3等が挙げられる。
焼鈍分離剤にアルカリ金属塩を添加しておくと、仕上げ焼鈍の過程で、アルカリ金属塩が、脱炭焼鈍で形成された鋼板表面のシリカに作用して、少なくとも一部のシリカの融点が下がり、流動性を示すようになる。流動性が高くなったシリカは、焼鈍分離剤中(マグネシア粉末中)に移動し易くなり、焼鈍分離剤中に移動したシリカは仕上げ焼鈍後に焼鈍分離剤の除去とともに除去される。即ち、焼鈍分離剤中へ移動したシリカは、マグネシウム珪酸塩を含む被膜の形成には関与せず、その結果として、Mg量が抑制できる。
脱炭焼鈍で形成されたシリカ量や仕上げ焼鈍の条件にもよるが、アルカリ金属塩を多く添加するとMg量を少なくできる。また、アルカリ金属塩の添加量は0.01質量%〜0.03質量%がより好ましい。
更に、焼鈍分離剤にTiO2を添加すると、上述のアルカリ金属塩の効果がより顕著になる。
アルカリ金属塩の作用によって流動性を示すようになったシリカは、焼鈍分離剤中、即ち、マグネシア粉末中に移動していくのであるが、マグネシア粒子の表面に高温でシリカが来ると反応して流動性を失ってしまう。一方、TiO2は、マグネシアに比べてシリカと反応し難いので、TiO2が存在するとシリカが反応せずにその表面を移動でき、よりシリカを焼鈍分離剤中に吸収させることになる。よって、添加するTiO2の量は、アルカリ金属塩の量とのバランスで決まるが、一般的には、1.0質量%〜10質量%の範囲であるのが好ましい。アルカリ金属塩の質量に対するTiO2質量の比が、50〜200の範囲がより好ましい。
また、Mg量は、仕上げ焼鈍前における、塗布された焼鈍分離剤中の含水量によっても制御できる。焼鈍分離剤中に水分が含まれ、仕上げ焼鈍中に該水分が水蒸気となって放出されると、仕上げ焼鈍雰囲気が局所的に高い酸素ポテンシャルとなる。その結果、鋼中Siの酸化反応が進行し、鋼板表面のシリカ量が増加する。即ち、増加したシリカと焼鈍分離剤中のMgOとが反応してマグネシウム珪酸塩を形成するので、Mg量が増加することになる。よって、塗布された焼鈍分離剤中の含水量を少なくすれば、Mg量の増加を抑制できることになる。
焼鈍分離剤中に含まれる上記水分は、例えば、水スラリー中や塗布・焼付け工程の間に、MgOの一部がMg(OH)2となって含まれていたり、化学吸着や物理吸着として含まれていたりするものである。前記化学吸着や物理吸着によって含まれる水分は、焼鈍分離剤を塗布・焼付け後から、仕上げ焼鈍を始めるまでの時間にも依存することが大きい。
塗布された焼鈍分離剤中の含水量は、熱天秤(TG)によって測定できる。通常、塗布された焼鈍分離剤中の含水量は、塗布されている焼鈍分離剤の総質量に対して百分率で、3〜10質量%の範囲である。Mg量を低くするには、前記含水量を3質量%以下にするのが好ましい。但し、含水量を3質量%以下にするのは、実質的に困難であるので、前記値が下限となる。
前述の他に、Mg量の制御方法、特にMg量の低減方法として、MgS、Mg3N2、MgSeなどのマグネシウム非酸化物の形成量を低減させることでも制御できる。これら形成量は、Mg量が少ない本発明の1.5〜2.2g/m2程度の場合、Mg量の制御に大きく影響するものである。
方向性電磁鋼板では、仕上げ焼鈍中、鋼中にMnS、AlN、MnSeといったインヒビターが存在し、最終的には前記インヒビターは分解して、S、N、Seは系外に排出される。しかしながら、S、N、Seは、Mgと上記のような化合物を形成して鋼中に残存するので、その形成を抑制することでMg量を低減できる。
そのためには、仕上げ焼鈍中に、脱炭焼鈍で形成された鋼板表面を覆っているシリカ層を焼鈍分離剤のマグネシアと反応させて、S、N、Seがガスとなって系外に排出されやすい被膜構造にする。即ち、空隙があり、ガスが透過し易い被膜構造にする。空隙を有する被膜構造にするためには、例えば、100%未満の被覆率にすることで可能であり、以下に説明するように、焼鈍分離剤に、セリウム化合物を添加するのが有効である。
本発明に係るマグネシウム珪酸塩を含む被膜(一次被膜)の被覆率は、どのようの方法で制御してもよいが、例えば、次のようにして制御できる。
仕上げ焼鈍で使用する焼鈍分離剤に、セリウム化合物を添加し、その添加量によって前記被覆率を制御できる。セリウム化合物の添加量が多くなると、被覆率が小さくなる傾向がある。前記セリウム化合物としては、例えば、CeO2、Ce2O3、Ce(OH)4、Ce2S3、Ce(SO4)2・nH2O(nは0以上の数)、Ce2(SO4)3・nH2O(nは0以上の数)が挙げられる。なかでもCe(OH)4が、被覆率の制御性が良いので、より好ましい。通常、前記セリウム化合物を、焼鈍分離剤の固形分総量に対して1〜10質量%となるように添加することで、本発明のより好ましい被覆率に制御できる。
本発明に係るマグネシウム珪酸塩を含む被膜を構成する粒子の粒径は、どのような方法で制御してもよいが、例えば、次のようにして制御できる。
前記粒子の粒径は、仕上げ焼鈍の温度の影響を受ける。仕上げ焼鈍温度が高くなるとともに、被膜を構成する結晶粒が成長するため、粒子の粒径が増加する。
本発明では、上述の薄手方向性電磁鋼板の表面に、張力絶縁被膜を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法で前記被膜を形成できる。
張力絶縁被膜が形成できる上述の塗布液を、ロールコーター等の湿式塗布方法で鋼板表面塗布し、空気中、800〜900℃の温度で10〜60秒間焼き付けることによって、張力絶縁被膜を形成できる。
さらに、必要に応じ、上記張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板に、レーザー照射、プラズマ照射、歯型ロールやエッチングによる溝加工等のいわゆる磁区細分化処理を施すことができる。
以上、本発明の態様について説明したが、さらに、実施例を用いて、本発明の実施可能性及び効果について説明する。
(実施例1)
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.027質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.12〜0.25mm厚に冷間圧延した。この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.33の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分16質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表1に示した添加剤を表1の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。また、焼鈍分離剤の焼付け温度と時間、及び焼鈍分離剤の焼付け後から仕上げ焼鈍を始めるまでの時間によって、塗布した焼鈍分離剤中の含水量を調整した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の薄手方向性電磁鋼板の表面について、上述と同様にしてXRD測定を行い、その結果、表面の被膜にフォルステライト相が存在し、薄手方向性電磁鋼板の表面にマグネシウム珪酸塩を含む被膜が形成されていることを確認した。
また、前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
薄手方向性電磁鋼板の磁気特性の評価に関しては、エプスタイン法により磁束密度B8(磁界800A/mにおける磁束密度)及び鉄損W17/50(磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損)を評価した。
前記薄手方向性電磁鋼板に、更に、張力絶縁膜を被覆するには、次のように行った。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.3質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1μmの張力絶縁膜を施した。
得られた張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板は、上記と同様にエプスタイン法で磁気特性(B8及びW17/50)を評価した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
更に、張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板の占積率は、JIS2550に順ずる方法で測定した。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで除去した後に、Mgを上記と同様にICP分光分析法で分析し、Mg量を求めた。ここで求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上記の方法により張力絶縁被膜を除去した後に、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた被覆率は、張力絶縁膜を施す前の上記被覆率の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
薄手方向性電磁鋼板に含まれるMg量、被覆率、粒径、張力絶縁被膜密着性、及び、磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(A))、並びに、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(B))及び占積率を表2に示す。なお、板厚0.23mmの従来の方向性電磁鋼板では、その鉄損(W17/50)は1.0W/kg以下、その占積率は94.5%以上であり、これを基準に表2の結果を判断している。表2から明らかなように、板厚が0.12mmの場合(比較例No.1-1)、板厚が本発明の対象外で0.15mm未満と薄すぎるので、Mg量を本発明の範囲内にしても、方向性電磁鋼板の中で被膜の占める割合が多くなり、張力絶縁膜被覆薄手化電磁鋼板の磁束密度は1.86Tと低く、占積率に関しても93.50%と低かった。一方で、板厚が0.25mmの場合(比較例No.1-3)、板厚が本発明の対象外で0.23mmを超えて厚すぎるので、薄手化の効果が得られず、渦電流損の増加によって鉄損(B)は1.02W/kgと高かった。
板厚が0.15mm〜0.23mmの範囲ある中で、Mg量が1.5g/m2〜2.2g/m2の範囲にある実施例No.1-2、No.1-4〜1-7、No.1-9、No.1-11、No.1-13〜1-17は、薄手化による低い鉄損が得られながら、張力絶縁膜被覆薄手化電磁鋼板の磁束密度が高いものとなった。
しかし、Mg量が1.5g/m2未満の比較例No.1-8及び1-10の場合、張力絶縁被膜が剥離し、張力絶縁被膜による鉄損低減効果が小さく、張力絶縁被膜を施す前後の鉄損の差(表中のA-B)が0.02W/kgと小さかった。一方で、Mg量が2.5g/m2を超えた比較例No.1-12の場合、方向性電磁鋼板の中で非磁性体の占める割合が大きくなりすぎて、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁束密度は1.87Tと低かった。
Figure 0005482117
Figure 0005482117
(実施例2)
C:0.06質量%、Si:3.2質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.028質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.23mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.21〜0.41の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、表3に示した希土類化合物を種々の割合で添加した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分16質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表3に示した添加剤を表3の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の薄手方向性電磁鋼板の表面について、上述と同様にしてXRD測定を行い、その結果、表面の被膜にフォルステライト相が存在し、薄手方向性電磁鋼板の表面にマグネシウム珪酸塩を含む被膜が形成されていることを確認した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の薄手方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
薄手方向性電磁鋼板の磁気特性の評価に関しては、エプスタイン法により磁束密度B8(磁界800A/mにおける磁束密度)及び鉄損W17/50(磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損)を評価した。
前記方向性電磁鋼板に、更に、張力絶縁膜を被覆するには、次のように行った。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、18質量%、11質量%、0.2質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1μmの張力絶縁膜を施した。
得られた張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板は、上記と同様にエプスタイン法で磁気特性(B8及びW17/50)及び占積率を評価した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
更に、張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板の占積率は、JIS2550に順ずる方法で測定した。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで張力絶縁膜を除去した後に、Mgを上記と同様にICP分光分析法で分析し、Mg量を求めた。ここで求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、張力絶縁被膜を上記の方法で除去した後に、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた被覆率は、張力絶縁膜を施す前の上記被覆率の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
薄手方向性電磁鋼板に含まれるMg量、被覆率、粒径、張力絶縁被膜密着性、及び、磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(A))、並びに、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(B))及び占積率を表4に示す。
表4から明らかなように、Mg量が1.5〜2.5g/m2の範囲である実施例No.2-1〜2-8においては、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁束密度は1.89T以上であり良好な磁気特性であった。特に、被覆率が70%以上である実施例No.2-1〜2-7は、張力絶縁被膜密着性がより良好であった。
一方、Mg量が0.91g/m2である比較例No.2-9の場合、Mg量が1.5g/m2未満で少なすぎるため、張力絶縁被膜が剥離し、張力絶縁被膜による鉄損低減効果(表中のA-B)が0.02W/kgと小さかった。一方で、Mg量が2.67g/m2の比較例No.2-10の場合、Mg量が多すぎて2.5g/m2を超えたため、方向性電磁鋼板の中で非磁性体の占める割合が大きくなりすぎて、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁束密度は1.86Tと低かった。
Figure 0005482117
Figure 0005482117
(実施例3)
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.026質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.23mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.41の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、表5に示した希土類化合物を種々の割合で添加した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分17質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表5に示した添加剤を表5の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1050〜1300℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の薄手方向性電磁鋼板の表面について、上述と同様にしてXRD測定を行い、その結果、表面の被膜にフォルステライト相が存在し、薄手方向性電磁鋼板の表面にマグネシウム珪酸塩を含む被膜が形成されていることを確認した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
薄手方向性電磁鋼板の磁気特性の評価に関しては、エプスタイン法により磁束密度B8(磁界800A/mにおける磁束密度)及び鉄損W17/50(磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損)を評価した。
更に、前記方向性電磁鋼板に張力絶縁膜を被覆するには、次のように行った。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.2質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1μmの張力絶縁膜を施した。
得られた張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板は、上記と同様にエプスタイン法で磁気特性(B8及びW17/50)及び占積率を評価した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
更に、張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板の占積率は、JIS2550に順ずる方法で測定した。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで張力絶縁膜を除去した後に、Mgを上記と同様に分析し、Mg量を求めた。この方法で求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上記の方法により張力絶縁被膜を除去した後に、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた被覆率は、張力絶縁膜を施す前の上記被覆率の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
薄手方向性電磁鋼板に含まれるMg量、被覆率、粒径、張力絶縁被膜密着性、及び、磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(A))、並びに、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁気特性(磁束密度と鉄損W17/50(B))及び占積率を表6に示す。
表6から明らかなように、Mg量が1.5〜2.5g/m2の範囲である実施例No.3-1〜3-7においては、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の鉄損が小さく、その磁束密度は1.89T以上であり良好な磁気特性であった。特に、粒径が0.3〜1.5μmの範囲にある実施例No.3-1,3-2,3-5は、二次被膜による鋼板への張力付与が効果的に得られ((A)−(B)値が大きい)、占積率も高いものであった。
Figure 0005482117
Figure 0005482117
(実施例4)
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.027質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.23mm厚に冷間圧延した。
この冷延板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.41の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、表7に示した希土類化合物を種々の割合で添加した焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分16質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、表7に示した添加剤を表7の添加量(固形分総量に対する添加剤の質量%)で添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の薄手方向性電磁鋼板の表面について、上述と同様にしてXRD測定を行い、その結果、表面の被膜にフォルステライト相が存在し、薄手方向性電磁鋼板の表面にマグネシウム珪酸塩を含む被膜が形成されていることを確認した。
前述のようにして得られた仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板について、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、上述と同様にしてSEMによる鋼板表面を観察、線分法にて測定した。
また鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上述と同様にしてSEMにより鋼板表面を観察することにより求めた。
薄手方向性電磁鋼板の磁気特性の評価に関しては、エプスタイン法により磁束密度B8(磁界800A/mにおける磁束密度)及び鉄損W17/50(磁束密度1.7T、周波数50Hzにおける鉄損)を評価した。
更に、前記方向性電磁鋼板に張力絶縁膜を被覆するには、次のように行った。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.3質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここで、数平均粒子径150nmサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚0.5〜2.5μmの張力絶縁膜を施した。
得られた張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板は、上記と同様にエプスタイン法で磁気特性(B8及びW17/50)を評価した。
張力絶縁膜の密着性の評価には、鋼板試験板を直径20mmの角を持つ金型に沿って、180°の角度に折り曲げ、折り曲げ部分を実体顕微鏡で観察した。ここで加工部面積(試験片が金型に接する面積)に対して張力絶縁被膜の剥離した面積が0%の場合には「◎」、0%を超えて5%未満の場合には「○」とし、5%以上の場合には「×」とした。
更に、張力絶縁膜被覆方向性電磁鋼板の占積率は、JIS2550に順ずる方法で測定した。
また、張力絶縁膜を、80℃、20%水酸化ナトリウム水溶液に15分浸漬することで張力絶縁膜を除去した後に、Mgを上記と同様に分析し、Mg量を求めた。この方法で求めたMg量は、張力絶縁膜を施す前の上記Mg量の値と測定誤差範囲内で一致した。
鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の被覆率は、上記の方法により張力絶縁被膜を除去した後に、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた被覆率は、張力絶縁膜を施す前の上記被覆率の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
また、鋼板表面のマグネシウム珪酸塩を含む被膜の粒径は、被覆率と同様に張力絶縁被膜を除去した後、張力絶縁被膜被覆前の薄手方向性電磁鋼板の場合と同様にSEMで求めた。ここで求めた粒径は、張力絶縁膜を施す前の上記粒径の値と測定誤差範囲内で一致することを確認した。
薄手方向性電磁鋼板に含まれるMg量、被覆率、粒径、張力絶縁被膜密着性、及び、磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(A))、並びに、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の磁気特性(磁束密度B8と鉄損W17/50(B))及び占積率を表8に示す。
表8から明らかなように、Mg量が1.5〜2.5g/m2の範囲である実施例No.4-1〜4-8においては、張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板の鉄損が小さく、その磁束密度は1.89T以上であり良好な磁気特性であった。特に、張力絶縁被膜の膜厚が1.5〜3.0μmの範囲にある実施例No.4-2,4-3,4-5〜4-9は、張力がより効果的に付与でき((A)−(B)値が大きい。)、より高い占積率が維持できた。
Figure 0005482117
Figure 0005482117
(実施例5)
C:0.06質量%、Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、酸可溶性Al:0.027質量%、N:0.008質量%、S:0.07質量%を含有する珪素鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、熱間圧延によって、2.3mm厚にし、この熱間圧延板を1100℃で焼鈍し、その後、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23mm厚に冷間圧延して、板厚の異なるサンプル板を作製した。
前記各サンプル板を、800〜840℃で120秒間、PH2O/PH2=0.26〜0.33の酸化性湿潤水素-窒素雰囲気で脱炭焼鈍し、続いて750℃で30秒間、アンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、鋼板中の窒素量を0.023質量%とした。その後、焼鈍分離剤のスラリーを鋼板にロールコーターで塗布し、炉温700〜800℃で焼付け、コイルとして巻き取った。
焼鈍分離剤のスラリーは、固形分15質量%である。また、焼鈍分離剤(固形分)は、マグネシアを主成分とし、Na247:0〜0.025質量%、TiO2:1〜10質量%、Ce(OH)2:0〜12質量%の添加剤を添加した。
仕上げ焼鈍は、前記焼鈍分離剤を塗布したコイルを、N225%、H275%の雰囲気で、1200℃まで昇温速度15℃/hで加熱した後、H2100%の雰囲気で、20時間焼鈍した。
前記脱炭焼鈍の条件、及び仕上げ焼鈍の条件と焼鈍分離剤の組成を制御して、各板厚の鋼板において、Mg含有量が1.5g/m2〜2.5g/m2の範囲内で各種Mg含有量の異なる薄手方向性電磁鋼板のサンプルを作製した。
ここで、Mg含有量は、上述と同様にしてICP分光分析法によってMgを定量分析し、Mg量を決定した。また、作製した薄手方向性電磁鋼板の表面について、上述と同様にしてXRD測定を行い、その結果、その表面の被膜にフォルステライト相が存在し、マグネシウム珪酸塩を含む被膜が形成されていることを確認している。更に、作製した薄手方向性電磁鋼板の各サンプルの磁気特性に関しては、実施例1と同様に評価して、本発明で達成される磁束密度B8と鉄損W17/50が得られることを確認している。
前記薄手方向性電磁鋼板に、更に、張力絶縁膜を被覆するには、次のように行った。
張力絶縁膜とする塗布液は、重リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、無水クロム酸、をそれぞれ、20質量%、12質量%、0.3質量%含有するように調製した水系塗布液とした。ここでは、数平均粒径150nmのサイズのコロイダルシリカを用いた。該塗布液をロールコーターで塗布し、850℃で10秒間焼付けた。ロールコーターの回転数を制御することにより形成する膜厚を設定し、膜厚1.2μmの張力絶縁膜を施した。
前記張力絶縁被膜を施した薄手方向性電磁鋼板の各サンプルを、50cm角にシャー切断し、該切断片を、40kHz超音波照射のアセトン中(槽サイズ:297×152×100mm(アセトン深さ)、高周波出力150W)に10分間放置した。前記処理後に、各策ンプルの1辺の切断端部を実体顕微鏡で観察して、50cmの切断端部で剥離している各部分の辺に沿った長さLc(cm)を測定し、その長さの合計Lt=ΣLc(cm)から、100×Lt/50(%)として剥離割合を算出した。
前記切断片に関して、4辺の裏表を同様に観察して、前記同様に算出した剥離割合の値の平均値で、0%以上1%未満:○、1%以上〜2%未満:●、2%以上5%未満:◇、5%以上:×として、振動剥離性を評価した。その結果を図1に示す。
図1では、Mg含有量Cmを縦軸とし、板厚Tを横軸として、前記の振動剥離性を示している。その結果、◇と○との境界が図1のように明確に現れ、本発明の範囲の中で、更に、Cm ≦ −115×T2+531×T−3.7の条件を満たすものが耐振動剥離性に優れている。また、その中でも、Cm ≧ 10×T−0.5の条件を満たすものが耐振動剥離性により優れている。
尚、膜厚1.2μmの張力絶縁膜を施した場合のみを示しているが、その他の膜厚でも同様の結果を得ている。

Claims (5)

  1. Mgが金属換算質量で1.5g/m2〜2.5g/m2含まれている薄手方向性電磁鋼板であって、マグネシウム珪酸塩を含む被膜を有し、該マグネシウム珪酸塩を含む被膜による前記鋼板の表面の被覆率が70%〜90%であり、板厚0.15mm〜0.23mmであることを特徴とする薄手方向性電磁鋼板。
  2. 前記マグネシウム珪酸塩を含む被膜を構成する粒子の数平均粒径が、0.3μm〜1.5μmであることを特徴とする請求項1に記載の薄手方向性電磁鋼板。
  3. 前記金属換算質量によるMg含有量Cm(g/m2)が、前記板厚T(mm)に対して、
    m ≦ −115×T2+531×T−3.7
    の関係であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄手方向性電磁鋼板。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の薄手方向性電磁鋼板の表面に、張力絶縁膜による被覆が施されていることを特徴とする張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
  5. 前記張力絶縁膜の膜厚が、0.5〜2.0μmであることを特徴とする請求項に記載の張力絶縁膜被覆薄手方向性電磁鋼板。
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