JP7295394B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
本発明の無方向性電磁鋼板は、質量%で、Si:2.10~4.00%、Zn:0.001~1.000%を必須元素とし、並びに、残部:Fe、任意元素及び不純物元素、からなる。
シリコン(Si)は鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減する。さらに、Siは、鋼板の集合組織を電磁鋼板に好ましいものとして磁束密度を向上させる。また鋼板の強度を高めるためにも含有される。また、本発明が課題とする酸洗性はSi含有量が低い鋼板では問題とならず本発明の対象にはならない。さらに、Si含有量が低い鋼板では酸洗性が問題とならないため、Zn添加による本発明効果自体が発揮されない。これらを考慮し、Siの含有量は、2.10%以上とする。一方、Siの含有量が多過ぎると、鋼の磁束密度が低下し、また、冷間加工性が低下し、冷間圧延時に鋼板に割れが発生する場合がある。したがって、Si含有量は2.10~4.00%とする。Si含有量の好ましい下限は2.20%であり、さらに好ましくは2.30%、さらに好ましくは2.50%、さらに好ましくは3.10%である。一方、Si含有量の好ましい上限は3.60%であり、さらに好ましくは3.40%である。
Znは酸洗性を制御し、鋼板の表面性状を良好にする。含有量が0.001%未満では、Si含有に起因する酸洗性の低下を改善する効果を得ることができない。また、本願ではZnは製鋼工程で溶鋼に添加することを前提としているが、Znを多量に添加した場合、通常の溶鋼処理過程でZnはヒュームとして系外に排出されるため、設備改造コストなどを考慮すると多量の含有は工業的に困難となる。また多量のZnの含有は、Znの偏析による表面疵の増大や金属間化合物の形成による圧延性の低下などの原因ともなるため、上限を1.000%とする。好ましくは0.001%超、さらに好ましくは0.002%超、さらに好ましくは0.006%超、さらに好ましくは0.011%超、さらに好ましくは0.021%超、さらに好ましくは0.026%超、さらに好ましくは0.030%超、さらに好ましくは0.050%超である。上限については、好ましくは0.600%未満、さらに好ましくは0.400%未満、さらに好ましくは0.300%未満、さらに好ましくは0.200%未満、さらに好ましくは0.100%未満である。
なお、上記範囲であれば、Znの含有による磁気特性への影響は問題とはならない。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の残部はFeである。ただし、磁気特性を含めた各種特性の改善を目的として、Feの一部に代えて、任意元素を含有してもよい。さらに不純物を含有することも許容される。
質量%で、
Mn:5.00%以下
Al:3.000%以下
Cu:3.00%以下
Cr:5.00%以下
Sn:0.50%以下
Sb:0.10%以下
Ca:0.020%以下
Mg:0.020%以下
La:0.020%以下
Ce:0.020%以下
Sr:0.020%以下
Ba:0.020%以下
Nd:0.020%以下
Pr:0.020%以下
Cd:0.020%以下
B:0.020%以下
また、Mnは鋼板の酸洗性にも強い影響を与える元素である。このため、ある程度のMnを含有する鋼板において、本発明効果が有効に作用する。本発明効果が顕著に得られる対象となる鋼板としては、好ましくは0.07%超、さらに好ましくは0.15%超、さらに好ましくは0.16%以上、さらに好ましくは0.50%超、さらに好ましくは0.80%超である。一方、Mn含有量が高くなると酸洗性の改善効果が小さくなるので、Mn含有量の好ましい上限は4.50%であり、さらに好ましくは4.00%である。
Cは磁気特性を劣化させる場合があるので0.005%以下とすることが好ましい。製造コストの観点からは溶鋼段階で脱ガス設備によりC量を低減しておくことが有利で、0.003%以下とすれば磁気時効抑制の効果が著しく、0.002%以下とすることがさらに好ましく、0.0015%以下がさらに好ましい。0%であっても構わない。
Sは硫化物を形成し磁気特性、特に鉄損を劣化させる場合があるので、Sの含有量はできるだけ低いことが好ましく0%であっても構わない。本発明では0.01%以下が好ましく、さらに好ましくは0.004%以下、さらに好ましくは0.002%以下、さらに好ましくは0.001%以下である。
SeはMnとの析出物を形成し磁気特性、特に鉄損を劣化させる場合があるので、Seの含有量はできるだけ低いことが好ましく0%であっても構わない。本発明では0.010%以下が好ましく、さらに好ましくは0.004%以下、さらに好ましくは0.002%以下、さらに好ましくは0.001%以下である。
Pは固溶体強化により抗張力を高める効果の著しい元素である。また酸洗性に影響を及ぼし、少量を含有させることで酸洗を促進する効果を発揮することもあるが、この目的ではあえて添加する必要はない。0%であっても構わない。0.03%を超えると脆化が激しく、工業的規模での熱延、冷延等の処理が困難になるため、上限を0.03%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.01%以下である。
NはCと同様に磁気特性を劣化させるので0.0050%以下とすることが好ましい。また、窒化物の生成による磁気特性劣化を避けるためNは低い方が好ましく、0.0027%以下とすれば磁気時効や微細な窒化物形成による特性劣化の抑制効果は顕著で、さらに好ましくは0.0022%、さらに好ましくは0.0015%以下、0%であっても構わない。
または研削等により絶縁皮膜等を除去しても良い。
本発明の無方向性電磁鋼板は、前記成分を含む鋼を溶製し、連続鋳造で鋼スラブとし、ついで熱間圧延、冷間圧延および仕上げ焼鈍することによって製造することができる。また、これらの工程に加え絶縁皮膜の形成や脱炭工程など行っても構わない。
スラブは周知の方法で製造される。例えば、転炉又は電気炉等で溶鋼を製造する。製造された溶鋼に対して脱ガス設備等で二次精錬して、上記化学組成を有する溶鋼とする。溶鋼を用いて連続鋳造法又は造塊法によりスラブを鋳造する。鋳造されたスラブを分塊圧延してもよい。
上述の化学組成を有するスラブを1000~1200℃に加熱する。具体的には、スラブを加熱炉又は均熱炉に装入して、炉内にて加熱する。加熱炉又は均熱炉での上記加熱温度での保持時間は、例えば、30~200分である。
本実施形態による無方向性電磁鋼板の製造方法では、熱間圧延工程後、冷間圧延工程前に、焼鈍工程(一般的に熱延板焼鈍工程と呼ばれる)を実施してもよい。一般的には、900~1150℃、10~120秒である。
熱間圧延の後、熱延板焼鈍を実施する場合は熱延板焼鈍の前または後であって、冷間圧延工程前に、ショットブラスト工程及び/又は酸洗工程を実施する。本発明鋼はこの酸洗工程での酸洗性を良好にし、最終製品の表面性状が好ましいものとなる。ショットブラスト工程では、熱間圧延工程後の鋼板に対してショットブラストを実施して、熱間圧延工程後の鋼板の表面に形成されているスケールを破壊して除去する。酸洗工程では、熱間圧延工程後の鋼板に対して酸洗処理を実施する。酸洗処理は、例えば、塩酸水溶液を酸洗浴として利用する。酸洗により鋼板の表面に形成されているスケールが除去される。熱間圧延工程後であって、冷間圧延工程前に、ショットブラスト工程を実施して、次いで、酸洗工程を実施してもよい。また、熱間圧延工程後であって冷間圧延工程前に、酸洗工程を実施して、ショットブラスト工程を実施しなくてもよい。
熱間圧延工程の後、酸洗工程を実施した鋼板に対して、冷間圧延工程を実施する。
冷間圧延工程では、複数回パスによって圧延を実施する場合、冷間圧延途中で焼鈍処理(中間焼鈍)を実施してもよい。また例えばリバース圧延により、圧延工程途中でコイルに巻き取られる時間で時効しながら圧延する。
冷間圧延工程後の鋼板(冷延板)に対して、仕上げ焼鈍を実施する。仕上げ焼鈍温度は、例えば700~1100℃、仕上げ焼鈍温度での保持時間は10~120秒である。
本実施形態による無方向性電磁鋼板の製造方法はさらに、仕上げ焼鈍工程後にコーティング工程を実施してもよい。コーティング工程では、仕上げ焼鈍工程後の鋼板の表面に、絶縁コーティングを施す。
表1、2に示す各成分(質量%)を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる鋼種S01~S62を真空溶解にてスラブを鋳造し、さらに熱間圧延にて2mm厚の熱延鋼板を作成した。この際、熱間圧延における温度降下過程で、900℃超の温度から900℃に到達した後、600℃に達するまでの時間HTを5分とした。さらに900℃60s均熱にて熱延板焼鈍を実施した。そして、濃度5%、温度85℃の塩酸溶液中に50s浸漬する酸洗により脱スケールし、冷間圧延によって0.30mm厚さとした。得られた冷延板について、950℃40s均熱の仕上げ焼鈍を実施し、さらにアクリル系の絶縁コーティングを施し、無方向性電磁鋼板を作成した。
本発明が注目すべき酸洗性は特にSiにより、さらにMnおよびAlにより大きく変化することは前述の通りである。例えば、Si、さらにはMnおよびAlの含有量が低い鋼種においては、Znの含有に関わらず上記Is/Ipの値は小さくなり、表面性状は問題とならない範囲になりうる。
本開示は特にZn添加によって効果が発現するものであるが、その効果を評価する際は、Zn以外の成分は基本的に同一とした鋼板において比較されるべきである。本実施例においては、S01~S04に対するS05~S08、S19~S24に対するS25~S30、S31~S35に対するS36~S40、S41~S43に対するS44~S46、S47~S49に対するS50~S52、S53~S57に対するS58~S62として、本開示の効果が確認できるように成分を調整している。
また、S09~S18は、特定成分系鋼種において単純にZn含有量を変化させた際の特性変化を確認するように成分を調整している。
この点を考慮した特性比較により、本発明範囲内でZnを添加した鋼板は、磁気特性の劣化などなく、表面性状の改善が図られている。
表1、2に示すうちの一部の鋼種について真空溶解にてスラブを鋳造し、さらに熱間圧延にて2mm厚の熱延鋼板を作成した。この際、熱間圧延における温度降下過程で、900℃超の温度から900℃に到達した後、600℃に達するまでの時間HTを変化させた。さらに950℃60s均熱にて熱延板焼鈍を実施した。そして、濃度5%、温度85℃の塩酸溶液中に50s浸漬する酸洗により脱スケールし、冷間圧延によって0.20mm厚さとした。得られた冷延板について、1050℃30s均熱の仕上げ焼鈍を実施し、さらにアクリル系の絶縁コーティングを施し、無方向性電磁鋼板を作成した。使用鋼種および熱間圧延での温度降下条件(熱間圧延における温度降下過程で、900℃超の温度から900℃に到達した後、600℃に達するまでの時間HT)を表2に示す。
Claims (1)
- 質量%で、Si:2.10~4.00%、Zn:0.001~1.000%を含有し、さらに任意元素として、
Mn:0.15%超、5.00%以下、
Al:3.000%以下、
Cu:3.00%以下、
Cr:5.00%以下、
Sn:0.50%以下、
Sb:0.50%以下、
Ca:0.020%以下、
Mg:0.020%以下、
La:0.020%以下、
Ce:0.020%以下、
Sr:0.020%以下、
Ba:0.020%以下、
Nd:0.020%以下、
Pr:0.020%以下、
Cd:0.020%以下、
B:0.020%以下、
を含有し、残部Feおよび不純物からなり、
Si+Al+Mn>2.575、
鋼板表面における蛍光X線によるSiスペクトル強度Isと表面を10μm以上化学研磨した地鉄面のSiスペクトル強度Ipとの比Is/Ip≦1.10
であることを特徴とする、無方向性電磁鋼板。
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