JP6825681B2 - 方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、トランスに製造した際に優れた磁気特性と被膜特性を有する方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、主にトランスの鉄心材料として使用されることから、磁気特性に優れること、特に鉄損が低いことが強く求められている。そのため、方向性電磁鋼板は、従来、冷間圧延したSi含有鋼板に、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施し、MgOを主剤とする焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍において二次再結晶を起こさせ、結晶粒を{110}<001>方位(いわゆるゴス方位)に高度にそろえる方法で製造している。上記仕上焼鈍は、二次再結晶させる焼鈍と、最高1200℃程度の温度まで昇温する純化処理を合わせて10日間程度を要するため、通常、コイルに巻いた状態で行うバッチ焼鈍により行われている。
上記仕上焼鈍中においては、脱炭焼鈍時に鋼板表面に形成されるSiO2を主体としたサブスケールと、脱炭焼鈍後に鋼板表面に塗布したMgOを主剤とする焼鈍分離剤が、2MgO+SiO2→Mg2SiO4の反応を起こし、鋼板表面にガラス質のフォルステライト被膜が形成される。上記フォルステライト被膜は、絶縁性や耐食性を付与することの他に、鋼板表面に引っ張り応力を付与して磁気特性を改善する効果があるため、均一で密着性に優れることが要求される。
しかしながら、膜厚が厚くなりすぎると占積率が低下して、トランスとして使用する際に積み厚が厚くなりすぎてサイズが大きくなる結果、銅損が増大したり、逆に所定のサイズに収めるために積み枚数を少なくして鉄損が増大したりする問題が生じる。従って、できるだけ膜厚を薄くすることも同時に求められる。
また、上記フォルステライト被膜は、地鉄の内部に食い込んだ形で形成され、これにより鋼板表面に機械的に接着している。しかし、地鉄と被膜との界面の凹凸が激しくなると、凹凸部に残留磁化が生じるため、ヒステリシス損が増加する。そのために、被膜密着性とヒステリシス損はトレードオフの関係にあり、この二つを両立させることは困難であった。
なお、フォルステライト被膜を形成させずに、鋼板表面に直接絶縁被膜を被成する技術も開発されているが、現時点においては、被膜密着性を確保するのが難しく、絶縁性や耐電圧特性、耐食性も不十分である。そのため、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に対するニーズは依然として高い。
また、上記占積率を改善する技術として、特許文献1には、焼鈍分離剤に非水和性酸化物を用いてこれにBaを添加する技術が記載されている。また、特許文献2にはヤング率と線膨張係数が一定の条件を満たす被膜を形成させる技術が記載されている。
特開平9−118922号公報 特開平6−248465号公報
しかし、特許文献1の方法では、下地被膜を作らないため占積率は高いものの、被膜密着性、絶縁性、耐食性などが不十分であった。また、特許文献2の方法は、被膜張力が高く膜厚が薄いため、被膜が容易に剥落してしまうという問題があった。
このように、良好な密着性を有し、かつトランスに供した際の鉄損(トランス鉄損)が低くかつ占積率が高い方向性電磁鋼板は得られていない。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、優れた被膜密着性と低減されたトランス鉄損を有することに加えて、高い占積率を有する方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、表面が凹凸を有するように下地被膜を形成し、その後、表面を平滑化させることにより、優れた被膜密着性と低減されたトランス鉄損を有することに加えて、高い占積率を有する方向性電磁鋼板が得られることを見出した。
また、上記課題を達成するためには、焼鈍分離剤中に適正量のアルカリ土類金属を含有させ、仕上焼鈍後に、形成された下地被膜の表面を薄く研削すること、さらに、表面偏析元素として、Sb、SnおよびPを鋼中に含有させることが重要であることも見出した。
以下、本発明を導くに至った実験について説明する。
(実験)
C:0.068質量%、Si:3.41質量%、Mn:0.07質量%、Al:0.030質量%、N:0.008質量%を含有する鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼素材(鋼スラブ)とした後、1410℃に加熱し、熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、1050℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延して中間板厚の1.7mmとし、1100℃×80秒の中間焼鈍を施した後、200℃の温間域での圧延により最終板厚0.23mmの冷延板とした。
次いで、50vol%H2−50vol%N2、露点57℃の湿潤雰囲気下で830℃×100秒保持する脱炭焼鈍を施した。
その後、酸化チタン、水酸化ナトリウムを含み、残部が酸化マグネシウムの焼鈍分離剤であって、酸化チタンをTi換算で5質量%、水酸化ナトリウムをNa換算で40質量ppm含み、Ca濃度を0.2質量%以上3.2質量%以下の範囲で種々に異ならせた酸化マグネシウムを主剤とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した。なお、酸化チタン、水酸化ナトリウムの不純物分析をしたところ、Caと他のアルカリ土類金属の濃度はいずれも検出限界以下であった。
この鋼板を、二次再結晶焼鈍と水素雰囲気下で1200℃×7時間の純化処理を含む仕上焼鈍を施して下地被膜を形成した後、未反応の焼鈍分離剤を除去し、さらに、粒度#100、#240(JIS R6001)の砥粒をもつブラシロールで下地被膜の表面を研削することによりその表面粗さを種々に変更した。その後、下地被膜の表面に、焼付後の塗布厚で1μmとなるようにコーティング液を塗布し、コーティング液の焼付けをかねて平坦化焼鈍を800℃×30秒で行った。
このようにして得られた鋼板について、占積率と被膜密着性、耐食試験による錆発生率を評価するともに、この鋼板を用いて1MVA(メガボルトアンペア)のトランスを製造し、該トランスでの鉄損(トランス鉄損)を測定した。この測結果について焼鈍分離際剤のCa濃度との関係で整理して図1〜図9に示す。ここで、被膜密着性は、800℃で2時間の歪取焼鈍を施した後、丸棒で曲げ、被膜が剥離しなかった最小径を評価した。また、鋼板をアルカリ洗浄することによりコーティング膜を除去したのちに、表面粗度計を用いて、下地被膜表面の算術平均粗さRaを測定するとともに、SEM観察により下地被膜断面を観察し、その膜厚を測定した。具体的には、算術平均粗さRaは、触針式の粗度計を用い、下地被膜表面の板幅方向中央部から圧延直角方向に10mmの測定長で三回測定し、その平均値をとった。占積率は、JIS C2550に規定の方法で算出した。
図1より、焼鈍分離剤中のCa濃度が高まるとともに下地被膜の表面粗さが増大すること、また、研削により算術平均粗さRaが低下することがわかる。また、図2および図3より、研削をしなければ、分離剤中のCa濃度が変わっても、下地被膜の最大膜厚、最小膜厚に大きな変化はないが、研削をすると、Ca濃度が高くなるにつれて最大膜厚は増加傾向にあり、最小膜厚は減少傾向にあった。
した。
さらに、下地被膜の膜厚について特定の膜厚範囲について調査した。すなわち、膜厚が0.05〜0.5μmの範囲および膜厚が2.0〜3.5μmの範囲について、焼鈍分離剤のCa濃度との関係を調査した。ここで、膜厚が0.05〜0.5μmの範囲および膜厚が2.0〜3.5μmの範囲に着目したのは、被膜−地鉄界面の凹凸を評価するためである。すなわち、下地被膜の最表面については研削によりほぼ平坦になっているため、膜厚が厚い部分(すなわち2.0〜3.5μm厚)は被膜が鋼板内部まで貫入しており、膜厚が薄い部分(すなわち0.05〜0.5μm厚)は鋼板が最表層近くまで盛り上がっていることを示す。このように膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していると、被膜と地鉄の接触が密となり、アンカー効果により被膜密着性が高まる。
図4に下地被膜における「膜厚が0.05〜0.5μmの範囲となる線分比率」について示す。この「膜厚が0.05〜0.5μmの範囲となる線分比率」は、断面SEM写真から、膜厚が0.05〜0.5μmの範囲となる線分比率を測定したものである。測定倍率は2000倍で、長さ100μm分について3回測定してその平均値をとった。図4に示すように、研削なしではCa濃度によらずほぼ0%程度であったが、研削すると、Ca濃度の増大とともに線分比率も増大する傾向にあることがわかる。
同様に、「膜厚が2.0〜3.5μmの範囲となる線分比率」について測定したものを図5に示す。図5に示すように、「膜厚が2.0〜3.5μmの範囲となる線分比率」は研削なしではCa濃度によらずほぼ一定の値となったが、研削するとCa濃度が低い場合は急激に低下し、Ca濃度が高まるとともに増大する傾向となった。
次に、図6に示されるトランス鉄損については、Ca濃度に最適値が認められ、0.3〜2.2質量%の範囲で最も鉄損が改善していることがわかる。研削すると、この傾向はさらに強まり、上記のCa濃度範囲で優れたトランス鉄損が得られていることがわかる。
図7において被膜密着性を示す曲げ剥離径についても、Ca濃度に最適値が認められる。特に、Ca濃度の高い領域では、研削することにより、密着性の劣化が顕著となった。図8に示される耐食性試験による錆発生率は、Ca濃度が低い領域でほぼ0%であったが、Ca濃度を高くし、さらに研削をすることにより、錆発生率は増大した。図9に示される占積率は、Ca濃度が高くなるとともに低下するが、研削により顕著に改善されることがわかる。
以上の結果から、焼鈍分離剤中にごく微量のCaを含有させるとともに仕上焼鈍後に軽研削を行い、さらにコーティング膜厚を1μmと薄くすることにより鉄損が改善する理由について、本発明者らは以下のように考えている。
まず、焼鈍分離際剤のMgO結晶中の不純物のCaイオンは非晶質SiO2のSi−O間の結合を切断することにより、SiO2の可動度を高めて表層濃化を促進する働きがある。Caイオンがない場合にはSiO2の表層濃化が緩やかに進行することにより、鉄の拡散も同時に起こり、表面の応力が発生しにくくなる結果、地鉄との界面の凹凸は小さくなる。これに対し、Caイオンを添加すると、SiO2が速やかに表層濃化するため、圧縮応力が発生して界面の変形が起こりやすくなる。
このように下地被膜に凹凸が形成された状態では、曲げ応力を加えたときに被膜が地鉄にめり込んでいるため剥がれにくくなっており、密着性が確保される。しかしながら、Caイオンが大量に存在すると、MgOの反応自体も抑えられてしまうため、被膜形成不良となり、密着性も劣化する。以上の点から、被膜密着性に関し、最適なCa濃度の範囲があるといえる。
さらに凹凸が形成された状態の下地被膜を研削したときに、Ca濃度が低い場合は曲げ密着性に変化はなかったが、Ca濃度が2.2質量%を超えて高くなると密着性の劣化も著しくなった。これは、Ca濃度が高まって下地被膜の凹凸が強調され、かような被膜を研削したときに地鉄が露出する部分が生じたためと考えられる。
鉄損に関しても、最適なCa濃度の範囲があるといえる。まず、ごく微量のCa濃度の場合は、被膜密着性が高まり、これにより被膜による鋼板への張力が有効にかかる結果、鉄損が改善すると考えられる。一方、Ca濃度が高すぎると、下地被膜の凹凸が増大し、占積率が低下する結果、トランスを組んだときの積み枚数が少なくなり、鉄損が増加したと考えられる。上記下地被膜表面の凸部を研削することにより、占積率が改善され、その結果、鉄損も低減される。
錆発生率について、Ca濃度が低い場合には、錆がほとんど発生していないが、Ca濃度が高くなると錆発生率が上昇した。このことは、今回の実験ではコーティングの膜厚を1μmと薄くしているためと考えられる。すなわち、Ca濃度が低い場合は下地被膜表面の凹凸が小さいが、Ca濃度を高めることにより凹凸が増大し、コーティング液を薄く塗布したときに、下地被膜の一部が露出する。下地被膜中にはFeも含まれているため、この部分の耐食性が劣化する。下地被膜表面を研削した場合にも、被膜表面の凸部で一部地鉄が露出する。この上にコーティングを施しても、下地被膜がないため部分的に剥落してしまう。そしてこの部分の耐食性が劣化するものと思われる。
これらの知見は、Caに限らず、アルカリ土類金属全般において同様であり、その適合範囲も全く同じであった。アルカリ土類金属イオンは、非晶質SiO2のSi−O間の結合を切断することにより、SiO2の可動度を高めて表層濃化を促進する働きがある。
そこで、まず、Ca等のアルカリ土類金属を所定量含有させることにより、被膜の凹凸を適度につけ、地鉄に適度な張力をかけるとともに被膜の密着性を向上させる。次に、下地被膜の最表面を研削する等により粗度を低下させ、占積率を高める。さらに、コーティング膜厚を薄くすることにより占積率の低下を防ぎ、耐食性の劣化も防ぐことができる。
上記のような鋼板を使用してトランスをくみ上げることで、大きさの制約から積み厚が一定であっても積み枚数を十分確保でき、その結果、所定の磁束密度に磁化させる場合に、磁化量を過度に高めることなく、鉄損を改善することができる。
このように、本発明は、下地被膜表面の凹凸を低減し、コーティング膜厚を薄くすることにより、被膜密着性の確保およびトランス鉄損の低減と、占積率の増大とを両立させる方法について提案するものである。
本発明は、上記した実験結果に基づき、さらに検討を重ねた末に完成されたものであり、その要旨構成は、以下のとおりである。
1.質量%で、
C:0.0040%以下、
Si:2.50%以上4.50%以下および
Mn:0.03%以上0.30%以下
を含有し、さらに、
P:0.005%以上0.20%以下
Sb:0.005%以上0.200%以下および
Sn:0.005%以上0.50%以下
のうちの1種または2種以上、
または、
Ni:0.01%以上1.50%以下、
Cr:0.01%以上0.50%以下、
Cu:0.01%以上0.50%以下、
Bi:0.005%以上0.100%以下、
Mo:0.005%以上0.100%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下、
Te:0.0005%以上0.0100%以下、
Nb:0.001%以上0.010%以下、
V:0.001%以上0.010%以下、
Ti:0.001%以上0.010%以下および
Ta:0.001%以上0.010%以下
のうちの1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物を有する成分組成を有し、
鋼板の表面上に下地被膜を有し、該下地被膜の上にコーティング被膜を有する方向性電磁鋼板であって、
前記下地被膜と前記コーティング被膜との界面における算術平均粗さRaが0.25μm以下であり、
前記下地被膜は、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上、膜厚2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.6%以下および膜厚0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.3%以下であり、
前記コーティング被膜の膜厚が2μm以下である方向性電磁鋼板。
2.質量%で、
C:0.0040%以下、
Si:2.50%以上4.50%以下および
Mn:0.03%以上0.30%以下
を含有し、さらに、
P:0.005%以上0.20%以下
Sb:0.005%以上0.200%以下および
Sn:0.005%以上0.50%以下
のうちの1種または2種以上、
並びに、
Ni:0.01%以上1.50%以下、
Cr:0.01%以上0.50%以下、
Cu:0.01%以上0.50%以下、
Bi:0.005%以上0.100%以下、
Mo:0.005%以上0.100%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下、
Te:0.0005%以上0.0100%以下、
Nb:0.001%以上0.010%以下、
V:0.001%以上0.010%以下、
Ti:0.001%以上0.010%以下および
Ta:0.001%以上0.010%以下
のうちの1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物を有する成分組成を有し、
鋼板の表面上に下地被膜を有し、該下地被膜の上にコーティング被膜を有する方向性電磁鋼板であって、
前記下地被膜と前記コーティング被膜との界面における算術平均粗さRaが0.25μm以下であり、
前記下地被膜は、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上、膜厚2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.6%以下および膜厚0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.3%以下であり、
前記コーティング被膜の膜厚が2μm以下である方向性電磁鋼板。
また、本発明の他の実施形態における要旨構成は、次のとおりである。
1.鋼板の表面上に下地被膜を有し、該下地被膜の上にコーティング被膜を有する方向性電磁鋼板であって、
前記下地被膜と前記コーティング被膜との界面における算術平均粗さRaが0.25μm以下であり、
前記下地被膜は、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上、膜厚2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率が2%以上および膜厚0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率が2%以上であり、
前記コーティング被膜の膜厚が2μm以下である方向性電磁鋼板。
2.質量%で、
C:0.020%以上0.080%以下、
Si:2.50%以上4.50%以下および
Mn:0.03%以上0.30%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼素材に、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
該冷延鋼板に脱炭焼鈍を施し、
鋼板の表面に、MgO:50質量%以上およびアルカリ土類金属を金属換算で0.3質量%以上2.2質量%以下を含有する焼鈍分離剤を塗布し、
その後、仕上焼鈍を施して下地被膜を形成し、次いで、前記下地被膜につき、表面の算術平均粗さRaを0.25μm以下、膜厚最大部を3.50μm以下、膜厚最小部を0.05μm以上、膜厚が2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率を2%以上および膜厚が0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率を2%以上に調整した後、該下地被膜の表面にコーティング液を塗布、焼付けして、厚みが2μm以下のコーティング被膜を形成する方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記成分は、さらに、質量%で
P:0.005%以上0.20%以下
Sb:0.005%以上0.200%以下および
Sn:0.005%以上0.50%以下
のうちの1種または2種以上を含有する、前記2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記成分組成は、さらに、質量%で、
Al:0.010%以上0.040%以下および
N:0.003%以上0.012%以下
を含有する、前記2または3に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Se:0.003%以上0.030%以下および/または
S:0.002%以上0.030%以下
を含有する、前記2から4のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
6.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ni:0.01%以上1.50%以下、
Cr:0.01%以上0.50%以下、
Cu:0.01%以上0.50%以下、
Bi:0.005%以上0.100%以下、
Mo:0.005%以上0.100%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下、
Te:0.0005%以上0.0100%以下、
Nb:0.001%以上0.010%以下、
V:0.001%以上0.010%以下、
Ti:0.001%以上0.010%以下および
Ta:0.001%以上0.010%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、前記2から5のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、優れた被膜密着性と低減されたトランス鉄損を有することに加えて、高い占積率を有する方向性電磁鋼板を提供することができる。
焼鈍分離剤中のCa濃度と下地被膜の算術平均粗さとの関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と下地被膜の最大膜厚との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と下地被膜の最小膜厚との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と膜厚:0.05μm以上0.5μm以下の線分比率との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と膜厚:2.0μm以上3.5μm以下の線分比率との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度とトランス鉄損との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と曲げ剥離径との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と錆発生率との関係を示すグラフである。 焼鈍分離剤中のCa濃度と占積率との関係を示すグラフである。
本発明は、鋼板の表面上に下地被膜を有し、該下地被膜の上にコーティング被膜を有する方向性電磁鋼板において、
前記下地被膜と前記コーティング被膜との界面における算術平均粗さRaが0.25μm以下であること、
前記下地被膜は、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上、膜厚2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率が2%以上および膜厚0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率が2%以上であること、
前記コーティング被膜の膜厚が2μm以下であること、
を特徴とする。なお、本発明で単に膜厚と言った場合は下地被膜(フォルステライト被膜)の膜厚である。
以下、上記した下地被膜に関する要件毎に説明する。
[算術平均粗さRa:0.25μm以下]
下地被膜と前記コーティング被膜との界面、換言すると、下地被膜表面の算術平均粗さRaは、0.25μmを超えると凹凸がつきすぎて占積率が低下する。そのため、算術平均粗さRaは0.25μm以下、好ましくは0.20μm以上0.24μm以下とする。
ちなみに、算術平均粗さを求めるための粗度計としては、レーザー式、触針式等市販のいずれの粗度計を用いても良い。算術平均粗さの求め方は、JIS B0601の方法の通りである。
[膜厚最大部および膜厚最小部]
下地被膜の膜厚最大部が3.50μm超では、十分な占積率の改善効果が得らないのみならず、耐食性が劣化する。同膜厚最小値が0.05μm未満では、フォルステライト被膜が薄すぎて部分的に地鉄が露出し、被膜欠陥となる。そのため、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上の範囲とする。膜厚最大部は、好ましくは2.90μm以上3.30μm以下とする。膜厚最小部は、好ましくは0.08μm以上0.35μm以下とする。
ここで、膜厚については、光学顕微鏡や電子顕微鏡により評価できる。コイル板幅方向中央部からサンプルを切出し、C断面(板幅方向に平行な断面)を、電子顕微鏡を用いて2000倍で断面観察し、長さ100μmの範囲における最大値・最小値を測定して評価する。測定は三回行い、その平均値をそれぞれ膜厚最大部および膜厚最小部とする。なお、膜厚を測定する際には、被膜上面から遊離した、いわゆるアンカー部については考慮に入れず、遊離していない被膜のみの膜厚を測定した。
[膜厚:0.05〜0.5μmの範囲の線分比率および膜厚:2〜3.5μmの範囲の線分比率]
膜厚が0.05〜0.5μmの範囲の線分比率は2%以上、膜厚が2〜3.5μmの範囲の線分比率は2%以上とする。この範囲に収めることにより、膜厚の厚い部分と薄い部分が導入され、その凹凸により鋼板地鉄およびコーティング被膜との密着性が確保される。なお、膜厚の測定法は上記と同様の方法により求めることができる。
ここで、膜厚:0.05〜0.5μmの範囲および膜厚:2〜3.5μmの範囲について線分比率を規定したのは、これにより、被膜と地鉄の界面の凹凸が評価されるためである。なお、両領域の線分比率の上限は、特に限定する必要はないが、凹凸が増大しすぎて磁気特性が劣化することから40%以下とすることが望ましい。
[コーティング被膜]
コーティング被膜の膜厚は、層間抵抗が劣化するのを防止し、占積率を改善するために、2μm以下とする。一方、膜厚が0.2μm未満になると、耐食性、絶縁性が問題になるから、0.2μm以上とすることが好ましい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板において好適成分組成について説明する。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
[成分組成]
C:0.020%以上0.080%以下
Cは、0.020%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われ、スラブに割れが生じるなど、製造に支障を来たす欠陥を生ずるようになる。一方、0.080%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.005%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.020%以上0.080%以下の範囲とする。好ましくは0.025%以上0.075%以下の範囲である。
Si:2.50%以上4.50%以下
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必要な元素である。この効果は、2.50%未満では十分ではなく、一方、4.50%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造すること困難となる。よって、Siは2.50%以上4.50%以下の範囲とする。好ましくは2.80%以上4.00%以下の範囲である。
Mn:0.03%以上0.30%以下
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。この効果は、0.03%未満では十分ではなく、一方、0.30%を超えると、製品板の磁束密度が低下する。よって、Mnは0.03%以上0.30%以下の範囲とする。好ましくは0.04%以上0.20%以下の範囲である。
本発明における基本成分は、上記したとおりであり、残部はFeおよび不可避的不純物である。かかる不可避的不純物としては、原料や製造設備から不可避的に混入する不純物が挙げられる。
また、上記Si、CおよびMn以外の成分については、表面偏析元素として、Sb、SnおよびPの1種または2種以上を含有させると、さらに有利な効果が得られる。というのは、これらの元素が仕上焼鈍中に表面偏析すると、下地被膜のフォルステライトが形成される際、被膜中のFe濃度が下がる。その結果、その後の研削で下地被膜の膜厚が薄くなっても防錆性や絶縁性が保たれるからである。さらに、たとえ研削で地鉄が露出したとしても、これら偏析元素の働きにより、コーティングと地鉄との間の密着性が保たれるからである。
以上の効果を得るには、Sb、SnおよびPの各々が0.005%以上であることが好ましい。一方、Sbで0.500%、SnおよびPで0.200%を超えると、圧延での割れやそれに起因する破断が懸念されるから、Sbで0.500%、SnおよびPで0.200%を上限とすることが好ましい。
さらに、二次再結晶を生じさせるために、インヒビターを利用する場合と、しない場合とについて、次の成分を含有してもよい。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合で、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、それぞれAl:0.010%以上0.040%以下、N:0.003%以上0.012%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
また、MnS・MnSe系インヒビターを利用する場合には、前述した量のMnと、S:0.002%以上0.030%以下およびSe:0.003%以上0.030%以下のうちの1種または2種を含有させることが好ましい。それぞれの添加量が、上記下限値より少ないと、インヒビター効果が十分に得られず、一方、上限値を超えると、インヒビター成分がスラブ加熱時に未固溶で残存し、磁気特性の低下をもたらす。なお、AlN系とMnS・MnSe系のインヒビターは併用して用いてもよい。
一方、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター形成成分であるAl、N、SおよびSeの含有量を極力低減し、Al:0.010%未満、N:0.003%未満、S:0.002%未満およびSe:0.003%未満に低減した鋼素材を用いることが好ましい。
本発明では、磁気特性の改善を目的として、Ni:0.01%以上1.50%以下、Cr:0.01%以上0.50%以下、Cu:0.01%以上0.50%以下、Bi:0.005%以上0.100%以下、Mo:0.005%以上0.100%以下、B:0.0002%以上0.0025%以下、Te:0.0005%以上0.0100%以下、Nb:0.001%以上0.010%以下、V:0.001%以上0.010%以下、Ti:0.001%以上0.010%以下およびTa:0.001%以上0.010%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を適宜含有させることができる。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
[鋳造-加熱]
前述した成分組成を有する鋼を常法の精錬プロセスで溶製した後、従来公知の造塊−分塊圧延法または連続鋳造法でスラブを製造し、該スラブに熱間圧延を施して鋼素材(熱延板)を製造してもよいし、あるいは、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片を製造したのち、熱間圧延して、または熱間圧延することなく鋼素材とする。上記スラブまたは薄鋳片は常法に従い、例えば、インヒビター成分を含有する場合には、1350℃程度まで加熱し、一方、インヒビター成分を含まない場合は、1300℃以下の温度に加熱する。
[熱間圧延]
上記加熱後、熱間圧延に供する。なお、インヒビター成分を含有しない場合には、鋳造後加熱することなく直ちに熱間圧延してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延してもよいし熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。特に限定するものではないが、熱間圧延の圧延終了温度は700〜1100℃、コイル巻き取り温度は300〜650℃で、熱間圧延後の板厚は1.0〜4.0mmの範囲とすることが望ましい。
[熱延板焼鈍]
熱間圧延して得た熱延板もしくは薄鋳片スラブは、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の焼鈍温度は、良好な磁気特性を得るためには、800〜1150℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、二次再結晶の発達が阻害される。一方、1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、やはり整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。また、均熱時間は必ずしも必要でなく、最高到達温度でそのまま降温することも可能である。均熱する場合の時間の上限は5分程度までとすることが好ましい。
[冷間圧延]
熱間圧延後あるいは熱延板焼鈍後の熱延板(上記した薄鋳片を含む)は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延をして最終板厚の冷延板とする。上記中間焼鈍の焼鈍温度は、900〜1200℃の範囲とするのが好ましい。900℃未満では、中間焼鈍後の再結晶粒が細かくなり、さらに一次再結晶組織におけるGoss核が減少して製品板の磁気特性が低下する傾向がある。一方、1200℃を超えると、熱延板焼鈍のときと同様、結晶粒が粗大化し過ぎて整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなる。また、中間焼鈍時間は、2〜150秒程度とすることが好ましい。なお、冷間圧延は、温間域での圧延(温間圧延)を含むこととする。
また、最終板厚とする冷間圧延(最終冷間圧延)は、冷間圧延時の鋼板温度を100〜300℃に上昇させて行うことや、冷間圧延の途中で100〜300℃の温度で時効処理を1回または複数回施すことが、一次再結晶集合組織を改善し、磁気特性を向上させるのに有効である。
[脱炭焼鈍]
最終板厚とした冷延板は、その後、一次再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施す。脱炭焼鈍温度は700〜900℃の範囲とし、脱炭焼鈍時間は30〜300秒の範囲とする。700℃未満、もしくは30秒未満では、脱炭が不十分であり、一次再結晶粒径が小さすぎるため磁気特性が劣化する。一方、900℃超、もしくは300秒超では、一次再結晶粒径が大きくなりすぎるため、磁気特性が劣化する。
この脱炭焼鈍により表層にサブスケールを形成させる。このサブスケールの酸素目付量は特定されないが、0.5〜1.2g/m2の低い範囲に抑えることが望ましい。サブスケール中のSiO2は、低密度なため、鋼板表層と中心層の間に応力を加える働きを持つが、酸素目付量が多いと仕上焼鈍中に表面の圧縮応力により下地被膜の凹凸が激しくなり、鉄損が劣化する。逆に少なすぎると被膜形成量が不足する。
[焼鈍分離剤の塗布]
上記脱炭焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布する。このとき焼鈍分離剤の主剤として少なくとも50質量%以上のMgOを含み、アルカリ土類金属を含む化合物を該金属換算で、焼鈍分離剤中に0.3〜2.2質量%含有させることとする。これは適度に下地被膜に凹凸を形成させるために必要な量であり、多すぎると凹凸が激しくなりすぎて鉄損が劣化する。また、少なすぎると凹凸が少なくなりすぎて被膜密着性が低下する。このため、アルカリ土類金属を含む化合物の含有量は、上記の範囲とする。
アルカリ土類金属の導入方法としては、MgOや他の添加物中に微量に含有させてもよく、別途水酸化物や硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酸化物、塩化物、硫化物などの化合物として添加したものであってもよい。また、アルカリ土類金属を複数種含有させた場合は、それらの総和を上記範囲内に収めることとする。なお、焼鈍分離剤としては、これら以外にも、従来公知の種々の添加物を用いることができる。例えば、Mn、Mo、Fe、Cu、Zn、Ni、Al、K、Li、Ti、NaおよびSb等の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、塩化物および硫化物等である。これらは1種のみ添加してもよく、または複数種を混合して添加してもよい。
[仕上焼鈍]
焼鈍分離剤の塗布後、鋼板をコイル状に巻き取った状態で仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積させた二次再結晶組織を発達させるとともに、下地被膜(フォルステライト被膜)を形成させる。
仕上焼鈍の焼鈍温度は、二次再結晶の発現のために800℃以上で行うことが好ましく、また、二次再結晶を完了させるために1100℃以下まで行うことが好ましい。その後、フォルステライト被膜を形成させるために、純化処理として、1200℃程度の温度まで昇温させることが好ましい。仕上焼鈍は公知の条件でよく、例えば雰囲気としては、N2、H2およびArのいずれか、もしくはこれら2以上の混合雰囲気、純化温度は1100〜1250℃、時間は1〜40時間程度の均熱で行われる。
なお、仕上げ焼鈍後の鋼板には、C:40質量ppm以下、Si:4.5質量%以下およびMn:0.3質量%以下が含まれ、鋼素材にAl、S、SeおよびNが含まれていた場合には、Al:50質量ppm以下、S:20質量ppm以下、Se:20質量ppm以下、N:30質量ppm以下が含まれる。
[表面研削]
仕上焼鈍後の鋼板コイルは、その後、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去するための水洗やブラッシング、酸洗等を行う。また、それとともにコーティング液を塗布するまでのいずれかの段階で、軽研削またはブラスト加工のような表面研削を行うことが、本発明では重要である。焼鈍分離剤中にアルカリ土類金属を添加することにより、下地被膜断面の凹凸を高めて被膜密着性が向上する効果が得られるが、一方で、この凹凸が占積率を劣化させるため、研削により、突き出た部分を除去する。
表面研削の具体的な方法としては、ナイロンブラシロールに研削砥粒を入れた砥粒ブラシ研削、マイクロブラストやファインショットブラストのようなブラスト加工等あるが、特に手段を問わない。これらの砥粒や粒子の粒径を微細化することにより、表面粗さを低減することができる。また、ブラシ研削ではブラシの回転速度を早めたり複数パス通すこと、ブラスト加工では投射密度を高めたり投射圧力を低下させたりすることによっても表面粗さを低下させることができる。
上記の手法で下地被膜の表面を削ることにより、フォルステライト被膜の膜厚を最大部で3.50μm以下、最小部で0.05μm以上、膜厚が0.05〜0.5μmの範囲の線分比率を2%以上および膜厚が2〜3.5μmの範囲の線分比率を2%以上に加工する。
[コーティング液の塗布]
上記のように表面研削により下地被膜の表面を整えた後、コーティング液を塗布し、乾燥後に焼付けて最終製品とする。下地被膜の表面調製を行うことにより、耐食性を損なうことなくコーティング被膜の膜厚を薄くすることができ、さらには占積率を改善することができる。層間抵抗が劣化するのを防止し、占積率を改善するため、コーティング被膜の膜厚は2μm以下とする。
上記コーティング液は、電磁鋼板の表面にコーティングするために用いられる公知のコーティング液であればいずれでも良い。
[磁区細分化処理]
なお、鉄損をより低減するためには、磁区細分化処理を施すことも可能である。処理方法としては、一般的に実施されているような、二次再結晶が終了した鋼板に溝を形成する方法、レーザー照射や電子ビーム照射により、線状または点状に熱歪や衝撃歪を導入する方法、最終板厚に冷間圧延した鋼板等、中間工程の鋼板表面にエッチング加工を施して溝を形成する方法等を用いることができる。
その他の製造条件は、方向性電磁鋼板の一般的な製造方法に従えばよい。
このようにして製造された本発明の方向性電磁鋼板は、高い占積率を有するために、トランスやEIコア等に加工された際に低鉄損が実現でき、しかも耐食性や層間抵抗に優れた鋼板を得ることができる。
(実施例1)
質量%で、C:0.070%、Si:3.43%、Mn:0.08%、P:0.03%、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1250℃の温度に加熱した後、熱間圧延して、板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×50秒の熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延により1.8mmの中間板厚とし、1100℃×20秒の中間焼鈍を施した後、二次冷間圧延して最終板厚が0.27mmの冷延板に仕上げて脱炭焼鈍した。脱炭焼鈍は50vol%H2−50vol%N2、露点50〜65℃の湿潤雰囲気下で840℃×100秒保持して酸素量を制御した。
次いで、焼鈍分離剤として、MgOを主剤とし、TiO2をTi換算で2質量%と、各種のアルカリ土類金属を含む化合物を、アルカリ土類金属換算で表1に記載の量を添加した粉体を、スラリー状にして鋼板表面に塗布、乾燥した。さらに1200℃×10時間の純化処理を伴う仕上焼鈍を施し下地被膜を形成した。仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1200℃保定時はH2、昇温時および降温時はN2とした。
上記の処理を行った鋼板の下地被膜に、ファインショットブラストを施して表面状態を変更したのち、コーティング液を塗布した。このとき、塗布量を変更してコーティング膜厚を調整し、塗布、焼付けを行い、最終製品とした。かくして得られた製品板について、耐食性を示す錆発生率、占積率、被膜密着性を示す曲げ剥離径、およびトランス鉄損を、上記した測定手法に従って測定した。その測定結果を表1に示す。なお、下地被膜の各種膜厚についても上記した測定手法に従って測定した。表1から、本発明によれば、優れた被膜密着性と低減された鉄損を有することに加えて、高い占積率を有する方向性電磁鋼板が得られていることがわかる。
Figure 0006825681
(実施例2)
表2に記載の成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1380℃の温度に加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とし、1030℃×10秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚が0.23mmの冷延板に仕上げた。その後、脱炭焼鈍を施した。脱炭焼鈍は、50vol%H2−50vol%N2、露点55℃の湿潤雰囲気下で840℃×100秒保持した。
Figure 0006825681
次いで、焼鈍分離剤として、MgOを主剤とし、TiO2をTi換算で2%と、硫酸BaをBa換算で、それぞれ添加量を変更して添加した粉体をスラリー状にして鋼板表面に塗布し、乾燥した後、さらに1220℃×4時間の純化処理を伴う仕上焼鈍を施し下地被膜を形成した。仕上焼鈍の雰囲気は、純化処理する1220℃保定時はH2、昇温時および降温時はArとした。
上記の処理を行った鋼板の下地被膜を、#360の砥粒入りのナイロンブラシロールで研削して表面状態を変更したのち、さらにコーティング液の塗布量を膜厚が1.0μmとなるように調整して塗布、焼付けを行い、最終製品とした。かくして得られた製品板について、耐食性を示す錆発生率、占積率、被膜密着性を示す曲げ剥離径、およびトランス鉄損を、上記した測定手法に従って測定した。その測定結果を表3に示す。なお、下地被膜の各種膜厚についても上記した測定手法に従って測定した。表3から、本発明によれば、優れた被膜密着性と低減されたトランス鉄損を有することに加えて、高い占積率を有する方向性電磁鋼板が得られていることがわかる。
このように、本発明に係る方向性電磁鋼板は、各種の被膜特性を損なうことなく、下地被膜の凹凸を制御して鉄損を低減し、かつ高い占積率を得ることができる。
Figure 0006825681

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.0040%以下、
    Si:2.50%以上4.50%以下および
    Mn:0.03%以上0.30%以下
    を含有し、さらに、
    P:0.005%以上0.20%以下
    Sb:0.005%以上0.200%以下および
    Sn:0.005%以上0.50%以下
    のうちの1種または2種以上、
    または、
    Ni:0.01%以上1.50%以下、
    Cr:0.01%以上0.50%以下、
    Cu:0.01%以上0.50%以下、
    Bi:0.005%以上0.100%以下、
    Mo:0.005%以上0.100%以下、
    B:0.0002%以上0.0025%以下、
    Te:0.0005%以上0.0100%以下、
    Nb:0.001%以上0.010%以下、
    V:0.001%以上0.010%以下、
    Ti:0.001%以上0.010%以下および
    Ta:0.001%以上0.010%以下
    のうちの1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物を有する成分組成を有し、
    鋼板の表面上に下地被膜を有し、該下地被膜の上にコーティング被膜を有する方向性電磁鋼板であって、
    前記下地被膜と前記コーティング被膜との界面における算術平均粗さRaが0.25μm以下であり、
    前記下地被膜は、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上、膜厚2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.6%以下および膜厚0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.3%以下であり、
    前記コーティング被膜の膜厚が2μm以下である方向性電磁鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.0040%以下、
    Si:2.50%以上4.50%以下および
    Mn:0.03%以上0.30%以下
    を含有し、さらに、
    P:0.005%以上0.20%以下
    Sb:0.005%以上0.200%以下および
    Sn:0.005%以上0.50%以下
    のうちの1種または2種以上、
    並びに、
    Ni:0.01%以上1.50%以下、
    Cr:0.01%以上0.50%以下、
    Cu:0.01%以上0.50%以下、
    Bi:0.005%以上0.100%以下、
    Mo:0.005%以上0.100%以下、
    B:0.0002%以上0.0025%以下、
    Te:0.0005%以上0.0100%以下、
    Nb:0.001%以上0.010%以下、
    V:0.001%以上0.010%以下、
    Ti:0.001%以上0.010%以下および
    Ta:0.001%以上0.010%以下
    のうちの1種または2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物を有する成分組成を有し、
    鋼板の表面上に下地被膜を有し、該下地被膜の上にコーティング被膜を有する方向性電磁鋼板であって、
    前記下地被膜と前記コーティング被膜との界面における算術平均粗さRaが0.25μm以下であり、
    前記下地被膜は、膜厚最大部が3.50μm以下、膜厚最小部が0.05μm以上、膜厚2.0μm以上3.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.6%以下および膜厚0.05μm以上0.5μm以下の領域の線分比率が2%以上5.3%以下であり、
    前記コーティング被膜の膜厚が2μm以下である方向性電磁鋼板。
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