JP4305040B2 - 方向性電磁鋼板用クロムレス被膜の形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、クロムを含まない被膜を方向性電磁鋼板の表面に形成するに際し、不可避的に発生する被膜欠陥を防止し、表面被膜性状を改善する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、方向性電磁鋼板においては、絶縁性、加工性、防錆性等を付与するために、その表面に被膜を施している。かかる表面被膜は、最終仕上焼鈍時に形成されるフォルステライトを主体とする下地被膜と、その上に被成されるりん酸塩系の上塗り被膜からなる。
【0003】
また、これらの被膜は高温で形成され、しかも低い熱膨張率を持つことから、温度が室温まで下がったときの鋼板とコーティングとの熱膨張率の違いにより鋼板に張力を付与し、鉄損を低減させる効果があるため、被膜によって、できるだけ高い張力を鋼板に付与することが望まれている。
【0004】
このような諸特性を満たすために、従来、種々のコーティング被膜が提案されている。例えば、特許文献1には、りん酸マグネシウム、コロイド状シリカおよび無水クロム酸を主体とするコーティングが、また特許文献2には、りん酸アルミニウム、コロイド状シリカおよび無水クロム酸を主体とするコーティングが、それぞれ提案されている。
【0005】
一方、近年の環境保全への関心の高まりにより、クロムや鉛等の有害物質を含まない製品に対する要望が強まっており、方向性電磁鋼板においてもクロムを含まない被膜を形成させる方法の開発が望まれていた。しかし、クロムを用いないと著しい耐吸湿性の劣化や、張力低下による鉄損改善効果の消失等、品質上の問題が発生するため、クロムを無添加とすることができなかった。ここに、被膜における耐吸湿性の劣化とは、被膜が大気中の水分により吸湿し、部分的に液化して膜厚が薄くなったり被膜のない部分ができたりして、絶縁や防錆性が劣化してしまうことである。
【0006】
この問題を解決する方法として、特許文献3に記載された、コロイド状シリカ、りん酸アルミニウム、ホウ酸および硫酸塩からなるコーティング液を塗布する方法が開発された。この方法により、従来のクロム含有被膜に近い張力効果による鉄損改善と耐吸湿性の改善とがもたらされた。しかしながら、この方法による鉄損並びに耐吸湿性の改善は、得られる効果にばらつきがあり、場合によっては問題となるレベルまで鉄損や耐吸湿性が劣化することがあった。
【0007】
また、これ以外にもクロムを含まないコーティングとして、例えば特許文献4にはクロム化合物の代りにホウ酸化含物を添加する方法が、特許文献5には酸化物コロイドを添加する方法が、特許文献6には金属有機酸塩を添加する方法が、それぞれ開示されている。ところが、いずれの技術を用いても、耐吸湿性および鉄損の改善効果に生じるばらつきは依然として大きく、完全に解決するには到らなかった。
【0008】
【特許文献1】
特公昭56−52117号公報
【特許文献2】
特公昭53−28375号公報
【特許文献3】
特公昭57−9631号公報
【特許文献4】
特開2000−169973号公報
【特許文献5】
特開2000−169972号公報
【特許文献6】
特開2000−178760号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、方向性電磁鋼板にクロムを含まない被膜を適用した場合にあっても、クロム含有被膜を被成した鋼板と同レベルの高い耐吸湿性並びに低鉄損を有する鋼板を得るための、クロムレス被膜の形成方法について提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、クロムを含まない被膜によってもクロム含有被膜と同程度の効果を得るための方策を鋭意究明したところ、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面粗さを規制するのが極めて有効であることを見出し、この発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)最終仕上焼鈍済みの方向性電磁鋼板の表面を算術平均粗さで0.4μm以下とした後、クロムを含まないりん酸塩系のコーティング液を鋼板表面に塗布し、次いで200〜700℃までの昇温速度が10〜60℃/sである焼付けを行うことを特徴とする方向性電磁鋼板用クロムレス被膜の形成方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
発明者らは、特許文献3に記載された、クロムを含まない被膜において、耐吸湿性並びに鉄損の改善効果にばらつきが生じるのは、何らかの外乱要因があって所望の特性が達成できないものと考え、この原因を究明するために膨大な実験を実施した。その結果、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面粗さが、このばらつきを生じさせる主要因であることをつきとめた。以下に、この知見を得るに至った実験について述べる。
【0014】
C:0.045mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.07mass%およびSe:0.02mass%を含み、残部実質的にFeよりなる珪素鋼スラブを、1380℃で30分間加熱後熱間圧延にて2.2mm厚とし、その後950℃で1分間の熱延板焼鈍を施し、1000℃で1分間の中間焼鈍を挟む冷間圧延にて0.23mmの最終板厚に仕上げたのち、鋼板表面をサンドペーパーで研磨し、表面粗さを調整した。次いで、850℃で2分、雰囲気酸化性(雰囲気における水素分圧に対する水蒸気分圧の比)が0.55の脱炭焼鈍を施した後、鋼板表面に酸化マグネシウム100質量部、酸化チタン2質量部および硫酸ストロンチウム1質量部よりなる焼鈍分離剤を、鋼板表面に両面で12g/m2塗布そして乾燥して二次再結晶焼鈍を施し、引続き乾H2中で1200℃で10時間の純化焼鈍を兼ねた最終仕上焼鈍を行った後、未反応の焼鈍分離剤を除去した。
【0015】
このようにして得られた鋼板を300mm×100mmのサイズにせん断し、SST試験器(単板磁気試験器)で磁気測定を行った。また、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面粗さについても測定を行った。その後、りん酸酸洗を行った後に、コーティング処理液として、特許文献3に記載のりん酸アルミニウムを50質量部、コロイド状シリカを40質量部、ホウ酸を5質量部および硫酸マグネシウムを10質量部の配合割合になるコーティング剤を鋼板両面に対して乾燥重量で10g/m塗布したのち、乾N2雰囲気において200℃〜700℃の温度域を20℃/Sの速度で昇温して800℃で2分間保持する焼付けを行った。
【0016】
また、比較として、第一りん酸アルミニウム50質量部、コロイド状シリカ40質量部および無水クロム酸10質量部からなるコーティング液を同様に塗布して同様に焼付けを行った。
【0017】
かくして得られた鋼板に対して再びSST試験器で磁気測定を行った。また、Pの溶出試験も行った。すなわち、P溶出試験は、50mm×50mmの試験片3枚を100℃蒸留水中で5分間浸漬煮沸することによって被膜表面からPを溶出させ、そのPを定量分析した。このPの溶出量によって、被膜の水分による溶解のしやすさを判別することにより、耐吸湿性が評価できる。
【0018】
以上の測定並びに評価結果について、磁気特性およびP溶出量と最終仕上焼鈍後の鋼板の表面粗さの平均値との関係として整理し、図1(a)および(b)にそれぞれ示す。
図1(b)に示すように、クロム含有被膜を形成した鋼板では、表面粗さに大きく影響されることなく良好な耐吸湿性が得られている。また、図1(a)に示すように、磁気特性についても、クロム含有被膜を用いると、表面粗さが大きくなるに従って若干の鉄損劣化が認められるものの、大きな鉄損の劣化は認められない。これに対し、クロムを含有しない被膜を形成した鋼板では、表面粗さの高い領域では十分な耐吸湿性および磁気特性が得られていないが、表面粗さの低い領域、とりわけ算術平均粗さで0.4を超えると磁気特性および耐吸湿性がともに改善し、クロム含有被膜を形成した鋼板と同等の良好な特性が得られている。
【0019】
このように、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面粗さにより、耐吸湿性や磁気特性の変化が起こるメカニズムについて明確にするために、上記実験で被膜を形成した鋼板の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。図2に、このSEMによる画像を示す。鋼板の表面粗さ自体は被膜で隠されるために、両サンプル間でさほど大きな差はないが、耐吸湿性の良好なサンプルでは平坦で均一な表面となっているのに対し、耐吸湿性の劣ったサンプルでは、表面に膨れやクラックが多数発生していることがわかる。
【0020】
以上の点から、クロムを含有しない被膜において、表面粗さが耐吸湿性や磁気特性に影響を及ぼすメカニズムについて、発明者らは以下のように考えた。
まず、通常のクロムを含有した被膜では、りん酸塩とコロイド状シリカとの反応後に残った、フリーのりん酸分をクロムがトラップすることにより吸湿性が改善され、また、これにより強固な被膜となるために鋼板への張力効果が高まり、磁気特性が改善される。
【0021】
一方、今回用いた特許文献3に記載されたクロムを含まない被膜では、クロムの代わりに金属硫酸塩およびホウ酸にフリーのりん酸分をトラップさせる働きを持たせているが、表面粗さが高い場合には、このような効果が不十分になると考えられる。
すなわち、クロムを含まない被膜では、表面粗さが高いとコーティング液が高温で蒸発したり、りん酸塩が脱水したりする際に、激しく気泡が発生し、一部が膨れとなったり、割れとなってクラックを生じる、原因となる。また、このような膨れを分析すると、多くの場合、りんが強く濃化しSiの濃化量が少なくなっており、フリーのりん酸分が強く濃化したと考えられることから、このような膨れやクラックから、フリーのりん酸分が溶出していく。また、このようなクラックは被膜自体の強度を弱めることになり、張力効果を低下させて鉄損の改善をもたらさないものと考えられる。
【0022】
これに対し、表面粗さが低いと膨れやクラック自体の発生が抑えられるために、これに起因するフリーのりん酸分と、これが溶出する起点が無くなる結果、耐吸湿性は改善される。また、クラックが少なくなることにより、本来の張力効果が発揮されて、鉄損も効果的に低減されるのである。
【0023】
なお、クロムを含むコーティングでは、例え粗度が高い場合に乾燥中に例えクラックが発生したとしても、クロムの修復機能により最終的にはクラックは少なくなるため、吸湿性の劣化はなく、また粗度が大きいとヒステリシス損は劣化するものの、被膜の強度は保たれるために渦電流損の低下量が損なわれず、鉄損改善効果は保たれるものと考えられる。
【0024】
次に、本発明の各要件の限定理由について述べる。
この発明の素材である含珪素鋼は、方向性珪素鋼用素材であれば、特に鋼種を問わない。例えば、次の成分組成の鋼を用いることができる。
C:0.02〜0.1mass%、
Si:2.0〜4.5mass%および
Mn:0.02〜0.3mass%を含有し、さらに
インヒビターとしてAlNを用いる場合は、Al、Nに関して
Al:0.01〜0.04mass%
Nは、途中窒化させない場合0.006〜0.01mass%で、途中窒化させる場合は特に限定されない。
また、インヒビターとしてMnSe、MnSを用いる場合は、
Se、S:合計で0.01〜0.03mass%。
その他、磁気特性を改善する目的で、
B:0.002〜0.007 mass%、
Cu:0.05〜0.2 mass%、
Bi:0.005〜0.03 mass%、
Te:0.05〜0.2 mass%、
Sb:0.01〜0.05 mass%、
Sn:0.05〜0.3 mass%および
Ni:0.05〜0.2 mass%
の1種または2種以上を含有してもよい。
【0025】
次いで、含珪素鋼スラブを公知の方法で熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延により最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍を施してから、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍する。このとき、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面を、その粗さが0.4μmRa以下の平滑にすることが、図1に示したように肝要である。すなわち、クロムレス被膜を施す鋼板の表面粗さが、0.4μmRaを超えると、クロムを含まないコーティング液を塗布、そして焼付けした場合に、所望の耐吸湿性や磁気特性が得られない。
【0026】
ここで、0.4μmRa以下とする鋼板の表面とは、最終仕上焼鈍後にフォルステライト被膜を有する場合はフォルステライト被膜表面の粗さであり、最終仕上焼鈍後にフォルステライト被膜を持たない、いわゆる鏡面仕上げ材の場合は、地鉄表面の粗さを意味する。なお、鏡面仕上げ材は、焼鈍分離剤にアルミナを用いたり、マグネシアに塩化物を添加した粉体を用いたりして、表面に被膜をほとんど形成させないようにして打抜性や磁気特性を改善することを意図したものである。
【0027】
また、鋼板の表面粗さを0.4μmRa以下とするための方法は、特に限定するものではないが、例えば、一次再結晶焼鈍前の冷間圧延におけるロ一ル粗度を小さくしたり、一次再結晶焼鈍前に鋼板表面を研磨したり、一次再結晶焼鈍後に塗布する焼鈍分離剤に、表面を平滑にする効果をもたらす薬剤、例えば水酸化カルシウムや水酸化ストロンチウム等、を添加したりする方法を用いることができる。特に、一次再結晶焼鈍前の冷間圧延におけるロ一ル粗度を小さくしたり、一次再結晶焼鈍前に鋼板表面を研磨したりする方法は、最終仕上焼鈍後にフォルステライト被膜を有する場合および同フォルステライト被膜を持たない場合のいずれにも適用できる。また、焼鈍分離剤に水酸化カルシウムや水酸化ストロンチウム等の、表面を平滑にする効果をもたらす薬剤を添加する手法は、フォルステライト被膜を有する場合に有効である。一方、フォルステライト被膜を持たない場合には、焼鈍分離剤の主成分であるマグネシアに塩化物を添加する際に、その添加量や塩化物の種類の選択により、表面粗さを低減することができる。
【0028】
このような表面粗さを規定した、最終仕上焼鈍済の方向性電磁鋼板に、クロムを含まないコーティング液を塗布する。このコーティング液の成分としては、従来公知のもの、例えば特許文献3に記載されたコロイド状シリカ、りん酸アルミニウム、ホウ酸及び硫酸塩からなるコーティング液、特許文献4に記載されたホウ酸化合物を添加したもの、特許文献5に記載された酸化物コロイドを添加したもの、特許文献6に記載された金属有機酸塩を添加したもの等、いずれのコーティング液も使用可能である。また、これらに、さらにシリカやアルミナ等の無機鉱物粒子を添加して、耐スティッキング性を改善することも可能である。被膜の目付け量は、鋼板両面で4〜15g/m2とする。すなわち、4g/m2より少ないと層間抵抗が低下し、一方15g/m2より多いと占積率が低下するため、この範囲内とする。
【0029】
このコーティング液を塗布、そして乾燥した後、焼付けを兼ねて平坦化焼鈍を行う。表面粗さが低い鋼板であれば、クロムを含まないコーティング液を塗布した場合に、この平坦化焼鈍中にクラックや膨れが発生することなく、良好な被膜が得られる。
【0030】
なお、平坦化焼鈍の条件は、200℃〜700℃の温度域での昇温速度を10〜60℃/sとする。この昇温速度が遅すぎると、水蒸気等のガスが発生した時に、これが膨れとして残りやすい。また、この昇温速度が60℃/sを超えると、クラックが残りやすくなる。この昇温後の焼鈍温度は700℃〜950℃の温度範囲で2〜120秒程度の均熱時間とするのが望ましい。この温度が低すぎ、また時間が短すぎると、平坦化が不十分で形状不良のために歩留まりが低下し、一方温度が高すぎて時間が長すぎると、平坦化焼鈍の効果が強すぎてクリープ変形して磁気特性が劣化するため、この範囲とすることが好ましい。
【0031】
【実施例】
実施例1
mass%で、C:0.06%、Si:3.3%、Mn:0.06%、Al:0.023%、N:0.007%、Se:0.020%、Sb:0.026%、Cu:0.08%を含有する鋼スラブを熱間圧延そして冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を施して得た、板厚0.23mmの脱炭焼鈍板に、焼鈍分離剤として、凹凸を増大させることを狙いとして100質量部のマグネシア、6質量部の酸化チタン及び0.05質量部の塩化マグネシウムを添加した粉体と、鋼板表面の凹凸を低下させることを狙いとして100質量部のマグネシア、6質量部の酸化チタン及び0.05質量部の水酸化バリウムを添加した粉体とを、それぞれ塗布して、900〜1050℃までの昇温速度を20℃/h、雰囲気を75%H2と75%N2とする最終仕上焼鈍を行い、引き続き1150℃,10hの純化焼鈍を行った。その後未反応の焼鈍分離剤を除去することにより、表面粗さが0.32μm Raと0.42μm Raの2種類の鋼板を準備した。これをりん酸酸洗処理した後に、成分組成が乾固固形分比率で、コロイド状シリカ:50mass%、りん酸マグネシウム:40mass%、硫酸マンガン9.5mass%および微粉末シリカ粒子:0.5mass%である、コーティング液を鋼板の両面で10g/m2で施した。なお、最終仕上焼鈍後の鋼板の磁束密度はいずれもB8で1.92(T)であった。その後、200〜700℃までの昇温速度を5〜100℃/sの各昇温速度で850℃、30秒、乾N2雰囲気の焼付け処理を施した。
【0032】
このようにして得られた鋼板の諸特性について調査した結果を、表1に示す。特許文献3に記載の方法に従って、ホウ酸を用いずに硫酸Mnのみを用いたが、昇温速度10〜60℃/sの範囲で、良好な耐吸湿性と鉄損が得られた。特に、表面粗さが0.32μm Raの鋼板を用いたときに、この昇温速度域で焼付けすることにより、優れた特性が得られている。
【0033】
【表1】
Figure 0004305040
【0034】
実施例2
実施例1と同様に最終冷間圧延を終了した後、部分的にエッチング処理を施すことにより、最終仕上焼鈍後の鋼板の表面粗さを0.27μm Ra及び0.45μm Raに変更した。なお、最終仕上焼鈍後の鋼板の磁束密度はB8でいずれも1.89(T)であった。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去してりん酸酸洗処理した後に、成分組成が乾固固形分比率で、コロイド状シリカ:50mass%、各種第1りん酸塩化合物:40mass%、無機化合物:9.5mass%および微粉末シリカ粒子:0.5mass%である、コーティング液を鋼板の両面で10g/m2施した。その後、200〜700℃までの昇温速度を8℃/sまたは200℃/sの昇温速度で850℃および30秒の乾N2雰囲気の焼付け処理を施した。このようにして得られた鋼板の諸特性を調査した結果を、表2に示す。
【0035】
【表2】
Figure 0004305040
【0036】
特許文献3、4、5および6に記載のいずれのクロムを含まないコーティング液に対しても、鋼板の表面粗さを低下させ、より好ましくは焼付け時の昇温速度を適切な範囲内に収めることにより優れた磁気特性並びに被膜特性が得られている。
【0037】
【実施例3】
実施例1と同様に得られた、板厚0.23mmの最終冷延後を、サンドペーパーで研磨した後脱炭焼鈍し、焼鈍分離剤として100質量部のマグネシアおよび3質量部の塩化ニッケルを添加した焼鈍分離剤を塗布して、実施例1と同様の条件で最終仕上焼鈍を行い、その後未反応の焼鈍分離剤を除去することにより、表面粗さが0.30μm Raおよび0.46μm Raの2種類の下地被膜を有しない鋼板を準備した。なお、最終仕上焼鈍後の鋼板の磁束密度はいずれもB8で1.94(T)であった。これにコロイド状シリカ:50mass%、りん酸マグネシウム:40mass%、硫酸鉄:6mass%およびホウ酸4mass%となるコーティング液を、鋼板両面で10g/m2施した。その後、200〜700℃までの昇温速度を20℃/sとして850℃で30秒の保持を乾N2雰囲気で行う焼付け処理を施した。
【0038】
このようにして得られた鋼板の諸特性を調査した結果を、表3に示すように、下地被膜を持たない鋼板においても表面粗さを低下させ、焼付け時の昇温速度を適切な範囲内に収めることにより、優れた磁気特性並びに被膜特性が得られていることがわかる。
【0039】
【表3】
Figure 0004305040
【0040】
【発明の効果】
この発明によれば、クロムを含まない被膜を適用した場合にあっても、磁気特性および被膜特性ともに優れた電磁鋼板を安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 最終仕上焼鈍板の表面粗さと被膜形成後の鉄損、そして耐吸湿性との関係を示した図である。
【図2】 表面粗さの異なる最終仕上焼鈍板にクロムを含まない被膜を形成したときの鋼板表面のSEM像を示す写真である。

Claims (1)

  1. 最終仕上焼鈍済みの方向性電磁鋼板の表面を算術平均粗さで0.4μm以下とした後、クロムを含まないりん酸塩系のコーティング液を鋼板表面に塗布し、次いで200〜700℃までの昇温速度が10〜60℃/sである焼付けを行うことを特徴とする方向性電磁鋼板用クロムレス被膜の形成方法。
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