JP4012401B2 - 油圧式無段変速機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ポンプと油圧モータとで構成した油圧式無段変速機構(HST)(以下HSTと称する)を具備する変速装置の、HST斜板角制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、HSTを備えた変速装置が知られている。HST式変速装置は可変容量型の油圧ポンプの可動斜板を主変速操作手段と連結連動して、該主変速操作手段を回動操作することにより油圧ポンプからの吐出量を変更して出力回転数を変更して主変速を行い、主変速操作手段を中立位置から逆方向に回動することにより前後進を切り換えて、同時に変速を行えるようにしている。油圧ポンプの可動斜板の角度は、油圧シリンダ等のアクチュエータによって変更操作され、該アクチュエータはその作動量をアクチュエータに与えられる電流値によって制御される。即ち、アクチュエータに与える電流値を制御することによって所望の可動斜板の角度を得る構成となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に係る油圧式無段変速機構では、主変速操作手段の操作により決定された可動斜板の角度(HST斜板角)を変更操作するHST斜板角アクチュエータへの指令電流値を、該HST斜板角アクチュエータに流れる電流と、HST斜板角の間のヒステリシス差を考慮して決定する方法を提案する。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
請求項1においては、容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角を操作するHST斜板角アクチュエータ(86)を設け、該HST斜板角アクチュエータ(86)は、前記可動斜板(22a)にリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ(86b)と、該サーボシリンダ(86b)への圧油を制御する電磁弁である制御バルブ(86a)から構成し、該制御バルブ(86a)は制御装置(90)よりの指令電流値により制御し、該サーボシリンダ(86b)を伸縮駆動し、該油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流降下過程において、HST回転数が変化し始める(C)点の飽和電流値(IC )と、同じく電流降下過程でHST回転数がゼロとなる(D)点の初動電流値(Id )との間の非線形線を、直線補間近似した近似線(α)を算出し、該近似線(α)を設定線として、該設定線に基づいて、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、電流上昇過程において、HST回転数が変化し始める(A)点の初動電流値(Ia )と、同じく電流上昇過程においてHST回転数が飽和状態となる(B)点の飽和電流値(Ib )との間で、非線形線を直線補間近似した近似線(β)を算出し、該近似線(β)を設定線として、該設定線に基づいて、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、前記近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出し、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、前記ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更するものである。
【0006】
請求項2においては、容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角を操作するHST斜板角アクチュエータ(86)を設け、該HST斜板角アクチュエータ(86)は、前記可動斜板(22a)にリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ(86b)と、該サーボシリンダ(86b)への圧油を制御する電磁弁である制御バルブ(86a)から構成し、該制御バルブ(86a)は制御装置(90)よりの指令電流値により制御し、該サーボシリンダ(86b)を伸縮駆動し、該油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流上昇過程において、HST回転数が変化し始める(A)点と、HST回転数が飽和状態となる(B)点との間に、予め設定したステップ毎に、複数の認識点(S1 ・S1 ・・・Sn )をとり、(A)点−(S1 )点・(S1 )点−(S2 )点・・・(Sn )点−(B)点をそれぞれ直線近似することで、近似線(β)を得て、同様に、電流降下過程においてHST回転数が変化し始める(C)点とHST回転数がゼロとなる(D)点で、複数の認識点をとり直線近似することで近似線(α)を得て、決定した近似線(β)と、近似線(α)に基づいて、HST斜板角アクチュエータ(86)への、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態の指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、前記近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出し、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、前記ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0008】
図1はHMT式変速装置のスケルトン図、図2はHSTの側面断面展開図、図3はミッション前部の側面断面展開図、図4はHST斜板制御のための構成を示す説明図である。
【0009】
図5は車速とHST変速比との関係を示す図、図6は車両の変速比とHST変速比及びHST斜板角の関係を示す図、図7はHST斜板角アクチュエータの構成を示す説明図である。図8は変速モード切換時間補正の説明図、図9はHST回転数とHST斜板角アクチュエータに与えられる電流値との関係を示す図、図10はスィープ状電流を示す図である。
【0010】
図11はHST斜板角アクチュエータへの指令電流値の第一の決定方法の説明図、図12はHST斜板角アクチュエータへの指令電流値の第二の決定方法の説明図、図13はHST斜板角アクチュエータへの指令電流値の第三の決定方法の説明図である。図14はHSTに加わる負荷の有無によるHST回転数に対するHST斜板角の変化を示す図、図15はHSTに加わる負荷の有無によるHST斜板角アクチュエータへの指令電流値に対するHST回転数の変化を示す図である。
【0011】
図16は変速モード切換におけるHST斜板角補正の説明図である。図17は変速モード切換におけるHST斜板角アクチュエータへの指令電流値を決定するタイムチャート図、図18はHST斜板角アクチュエータへの指令電流に対するHST斜板角の応答状態を示す図である。
【0012】
本実施例では、本発明に係るHST21を具備する変速装置の一例として、HST21と遊星歯車機構とを備えた油圧−機械式変速装置を挙げる。該油圧−機械式変速装置は作業車両に搭載され、作業車両は変速装置によって変速されたエンジンの動力によって走行駆動され、また、エンジンの動力によって車両に装備された作業機を駆動可能としている。
【0013】
〔動力伝達構成〕
以下に、本実施例に係る油圧−機械式変速装置の動力伝達構成について説明する。
【0014】
(1)走行駆動系
まず、走行駆動系を説明する。図1及び図2に示すように、HST21は油圧ポンプ22及び油圧モータ23を備えており、両者22・23は平板状のセンタセクション32に付設されて、HSTハウジング31内に収容されている。前記センタセクション32はミッションケース33に固設されている。
【0015】
HST21の油圧ポンプ22の回転軸心をポンプ出力軸25が貫通しており、該ポンプ出力軸25は駆動源であるエンジン20からの動力を、該油圧ポンプ22に伝達するとともに、遊星歯車機構10に伝達させ、さらには、後述するPTO駆動系を介して、PTO軸53へも動力を伝達させている。該ポンプ出力軸25には油圧ポンプ22のシリンダブロック22bが係合されて相対回転不能とされ、ポンプ出力軸25とともにシリンダブロック22bが駆動される構成になっている。該シリンダブロック22bには複数のプランジャ22cが摺動自在に配設され、該プランジャ22cの頭部には可動斜板22aが当接している。該可動斜板22aは傾動自在に枢支され、その傾斜角を調節することにより油圧ポンプ22の容積を変更することができる。以後、本明細書において、可動斜板22aの傾斜角を「HST斜板角」と表すことにする。
【0016】
油圧ポンプ22により吐出された作動油は、センタセクション32に設けられた油路を介して油圧モータ23に送油される。そして、同様にシリンダブロック、プランジャ等より構成される固定容積型の油圧モータ23を駆動させることによって、該油圧モータ23の出力軸であるHST出力軸26の回転速度及び方向を制御する構成になっている。以後、本明細書において、HST出力軸26の回転速度及び方向を「HST回転数」とし、HST回転数をエンジンの回転数に対する関数としたもの(詳しくは、HST回転数をエンジンの回転数で割ったもの)を「HST変速比」と記載することにする。なお、本実施例のHST21では油圧ポンプ22のみを可変容積型とし、油圧モータ23は固定容積型としているが、その構成のHST21に限るものでもない。例えば、油圧ポンプ22と油圧モータ23の双方を可変容積型とする構成でも、本発明を適用することができる。
【0017】
(2)ミッション
ミッション30の構成について、図1乃至図4を参照して説明する。ミッション30はミッションケース33により被装されており、該ミッションケース33にはポンプ出力軸25、HST出力軸26、出力軸27、副変速軸28、PTO軸53等が水平で前後方向に配設され、それぞれ回動自在に支持されている。また、ミッションケース33内には遊星歯車機構10が設けられている。遊星歯車機構10は前記HST21の後方に配設され、後述するサンギア1、プラネタリギア2、リングギア3、キャリア5等より構成されている。
【0018】
一方、前記HST出力軸26にはリングギア3のボス部3aと、ギア12が遊嵌されており、該リングギア3のボス部3aと該HST出力軸26との間には、第一の油圧パッククラッチであるHMTクラッチ13が、ギア12とHST出力軸26との間には第二の油圧パッククラッチであるHSTクラッチ14が、それぞれ介在させてある。この二つの油圧パッククラッチ13・14は二つの変速モード(「HMT変速モード」と「HST変速モード」)を切り換えるために用いられ、変速モードに応じて二つの油圧パッククラッチ13・14のうちいずれか一方を係合させ、他方を係合解除させることにより、リングギア3又はギア12のいずれか一方を介して出力軸27に動力が伝達されることとなる。また、この二つの油圧パッククラッチ13・14を双方とも係合させないことで、車軸に対し動力が完全に断たれる状態をも現出させることができ、この意味で前記二つの油圧パッククラッチ13・14は、車両のメインクラッチとしての役割をも果たす。
【0019】
一方、前記ポンプ出力軸25は前記HST21のセンタセクション32を貫通してミッションケース33内に延出しており、該延出部分上にポンプ側入力ギア8を外嵌している。該ポンプ側入力ギア8と、サンギア1に同心的に遊嵌したキャリア5の前部外周面に形成したギア5aとが噛合して、キャリア5を回転させている。そして、該キャリア5には、前記サンギア1及びリングギア3と噛合する複数のプラネタリギア2・2が支承されて、これらの、サンギア1、プラネタリギア2・2、リングギア3、キャリア5等よりで遊星歯車機構10を構成している。
【0020】
前記遊星歯車機構10を説明する。遊星歯車機構10の第一の要素たるサンギア1は出力軸27に遊嵌され、プラネタリギア2は前記サンギア1と、前記サンギア1に同心して配置された、第三の要素たるリングギア3に噛合している。ここでプラネタリギア2は、出力軸27上に遊嵌された第二の要素たるキャリア5に回転自在に支持され、自転しながら該キャリア5とともに公転し得るように構成されている。該キャリア5の前部にはギア5aが形成されており、該ギア5aは、前記ポンプ出力軸25上に外嵌されたポンプ側入力ギア8と噛合している。
【0021】
一方、前記出力軸27と平行にHST出力軸26が配設されており、該HST出力軸26上にはモータ側入力ギア9が固定されて、出力軸27に遊嵌したサンギア1の前部に外嵌固定したギア6とモータ側入力ギア9が噛合してサンギア1を回転駆動している。このHST出力軸26上には、モータ側入力ギア9の後方にさらにギア15が固設してあり、該ギア15は、前記出力軸27上に遊嵌される前記ギア12と噛合している。
【0022】
また、図1で示すように、前記出力軸27には、ブレーキ装置95が備えられ、同じく出力軸27の後端にはカップリングを介して伝達軸34が連結されており、該伝達軸34の後部に二つのギア17・18を固定している。前記伝達軸34と平行に副変速軸28が支持され、該副変速軸28上にはギア60・61が遊嵌されており、該ギア60・61が前記ギア17・18に噛合して互いに異なる回転数で駆動している。そして、副変速軸28に設けられた副変速クラッチ62を操作することにより、ギア60・61のうちいずれか一方の回転駆動力を副変速軸28に伝達できるように構成し、副変速機構を構成している。該副変速軸28の後端にはベベルギア69が形設され、該ベベルギア69を介して後輪デフ70に動力が伝達される。
【0023】
また、図1に示すように、副変速軸28の前端部には二つのギア63・64が固設されており、該ギア63・64は前輪出力軸29上に遊嵌されたギア65・66にそれぞれ噛合し、該ギア65・66を異なる回転数で駆動している。そして、前輪出力軸29上には二つの油圧クラッチ67・68が設けられており、該油圧クラッチ67・68のうちいずれか一方を接続することにより、ギア65・66のいずれか一方の回転駆動力を前輪出力軸29に伝達できるようにし、前輪増速切換機構を構成している。
【0024】
(3)PTO駆動系
次に、図1を参照してPTO駆動系を説明する。前記ポンプ出力軸25の後端はPTOクラッチ40を介してPTO入力軸41に伝達される。PTO入力軸41の後端には三つのギア42・43・44が相対回転不能に挿嵌され、それぞれPTO副変速軸45に遊嵌されたギア46・47・48に噛合している。そして、PTO副変速クラッチ49の操作により三段階に変速された出力が、ギア50・52・54を介してPTO軸53に伝達され、作業機等に動力を伝達するよう構成している。
【0025】
〔各変速モードにおける駆動伝達構成〕
次に、以上の構成における変速装置において、「HMT変速モード」/「HST変速モード」の各変速モードにおける走行駆動系の駆動伝達構成を説明する。
【0026】
(1)「HMT変速モード」
最初に、「HMT変速モード」としたときの駆動伝達構成について説明する。「HMT変速モード」においては前記二つの油圧パッククラッチ13・14のうちHMTクラッチ13は係合され、HSTクラッチ14は係合を解除される。
【0027】
エンジン20に連結されたポンプ出力軸25に固設のポンプ側入力ギア8が、前記キャリア5に形成されたギア5aに噛合しているので、ポンプ出力軸25の回転出力が遊星歯車機構10のキャリア5に伝達される。一方、HST出力軸26の回転出力によって、モータ側入力ギア9とサンギア1の前部に固設のギア6が噛合してサンギア1が回転駆動されている。従って、前記キャリア5に支持され、さらに前記サンギア1に噛合しているプラネタリギア2には、両者5・1の回転が合成されて伝達され、該合成された駆動力が、該プラネタリギア2に噛合するリングギア3に伝達される。
【0028】
そして、「HMT変速モード」においては前記HMTクラッチ13が係合するよう制御されるので、リングギア3の回転動力が出力軸27に伝達される。出力軸27の動力は副変速軸28を経て後輪や前輪に伝達され、車両が駆動されることとなる。
【0029】
(2)「HST変速モード」
次に、「HST変速モード」としたときの駆動伝達構成について説明する。「HST変速モード」においては前記二つの油圧パッククラッチ13・14のうちHSTクラッチ14が係合され、HMTクラッチ13の係合は解除される。
【0030】
ギア12には前述のとおりギア15が噛合されているので、HST出力軸26の回転出力が出力軸27に伝達される。この動力は副変速軸28を経て後輪や前輪に伝達され、車両が駆動される。
【0031】
この「HST変速モード」においては、エンジン20の出力が前後輪にまで伝達されるまでの間に遊星歯車機構10を経由しない動力伝達構成となっている。すなわち、エンジン20の出力がポンプ出力軸25を介してキャリア5を駆動するが、リングギア3のボス部3aと出力軸27が係合しないので、遊星歯車機構10はそのキャリア5の回転により空転するのみとされる。結局は、エンジン20の出力はHST21により変速されてHST出力軸26→出力軸27と伝達された後、副変速されて前後輪に伝達されることになる。
【0032】
(3)各変速モードにおけるHST変速比
ここで、各変速モードにおけるHST変速比について説明する。図5に示す図表では、HST変速比と車速との関係が示されている。前述するように後進域の全域〜前進低速域においては「HST変速モード」とされ、該モードにおいては前記HST出力軸26の回転出力が前記出力軸27にそのまま出力されることから、HST変速比が中立にあるときは車両は駆動されず、HST出力軸26が正転したときは車両は前進し、逆転したときは車両は後進する。また、車速は該HST出力軸26の回転速度に比例する。このことから、「HST変速モード」において車両を前進側に増速させるためには、HST変速比を正転側に変更制御させる必要がある。
【0033】
一方、前進の中速域〜高速域においては「HMT変速モード」とされ、該モードにおいてはHST出力軸26とポンプ出力軸25の回転出力を前記遊星歯車機構10にて合成し、差動的に取り出された動力が前記出力軸27に出力される。従って、「HMT変速モード」において車両を前進側に増速させるには、前記「HST変速モード」とは逆に、HST変速比を逆転側に変更制御させる必要がある。
【0034】
以上のことから、図6の図表に示すように、車両の変速比を前進低速域から前進高速域まで加速するときには、変速比が予め設定された変速モード切換変速比に至るまでは「HST変速モード」であり、HST変速比は正転側に増加し、従って、HST斜板角も正転側に制御される。そして、変速比が変速モード切換変速比に至れば「HMT変速モード」に切り換わって、HST変速比は逆転側に減速し、従って、HST斜板角も逆転側に制御される。
【0035】
〔変速モード切換機構〕
次に、変速モード切換機構の構成を説明する。図4は変速装置の変速モード切換機構の構成を示した説明図である。
【0036】
本実施例においては、HST出力軸26に外嵌したモータ側入力ギア9に近接して設けた検出器81で該HST出力軸26の回転量をパルス信号として検出し、また、その回転方向をも検出できるようにしている。さらに、前記出力軸27に固定したダミーギア82aにも検出器82を近接して設け、該検出器82にて該出力軸27の回転量やその方向を検出している。また、エンジン20のクランク軸にも検出器83が設けられて、エンジン回転数を検出可能としている。
【0037】
さらに、車両の運転席には主変速操作手段である主変速レバー84や、副変速操作手段である副変速切換スイッチ87が設けられて、その枢支部には回動角検出手段(例えば、ポテンショメータ)84a・87aが配設され、該主変速レバー84や副変速切換スイッチ87の操作位置を検出できるようにしている。
【0038】
同じく車両の運転席には、HMTクラッチ13及びHSTクラッチ14の断接を操作するための手段としてのクラッチペダル85が設けられている。該クラッチペダル85の枢支部分には図示せぬポテンショメータ等よりなる回動角検出手段85aが配設されており、その踏込み量を電気信号として検出して、制御装置90に送信するように構成されている。
【0039】
図4に示すように前記三つの検出器81・82・83は制御装置90に電気的に接続され、該制御装置90は前記主変速レバー84の操作位置や前記検出器82の検出値をもとに、車速が該主変速レバー84で指示される車速となるよう、HST斜板角アクチュエータ86を通じて前記油圧ポンプ22の可動斜板22aの傾斜角はフィードバック制御されている。これについては後述する。
【0040】
前記HST斜板角アクチュエータ86は、図7に示すように、主に、油圧ポンプ22の可動斜板22aにリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ86b・86bと、該サーボシリンダ86b・86bへの圧油を制御する制御バルブ86aから構成されている。該制御バルブ86aは電磁弁であって、与えられた電流値によって該電磁弁を切り換えて、サーボシリンダ86b・86bを伸縮駆動し、可動斜板22aの斜板角、すなわち、HST斜板角を変更する構成としている。従って、HST斜板角アクチュエータ86に与えられる電流の値によって、該HST斜板角アクチュエータ86の作動量を制御し、HST斜板角を変更する構成としている。そして、前記制御バルブ86aの電磁弁は制御装置90に対して電気的に接続されており、HST斜板角アクチュエータ86に与えられる電流値は制御装置90により制御されている。
【0041】
一方、図4に示すように、前記HMTクラッチ13及びHSTクラッチ14には、それぞれ電磁弁91・92が接続されて圧油を給排可能に構成されており、前記制御装置90は該電磁弁91・92に対し電気的に接続されている。
【0042】
制御装置90は前記検出器82・83の検出値から、変速装置の変速比を計算する演算手段を備えており、求められた変速比が高速側の一定領域にあるときは「HMT変速モード」となって前記電磁弁91・92に信号を送り、前記HMTクラッチ13を係合させ、HSTクラッチ14を係合解除させる。一方、変速比が低速側の一定領域にあるときは「HST変速モード」となって電磁弁91・92に信号を送り、前記HMTクラッチ13を係合解除させ、HSTクラッチ14を係合させる。すなわち、中速域〜高速域では「HMT変速モード」、後進域の全域〜前進低速域では「HST変速モード」というように、変速比に応じて二つの変速モードを自動切換し、前記電磁弁91・92を電気的に制御してHMTクラッチ13及びHSTクラッチ14を係脱させるように構成しているのである。
【0043】
〔変速モード切換時の時間補正〕
次に、前記変速モード切換機構に基づいて、「HST変速モード」から「HMT変速モード」へ、又は、「HMT変速モード」から「HST変速モード」へ、変速モードの切換制御の時間補正について、図17において説明する。本制御においては、車両が加速あるいは減速されて、車両の変速比が変速モードの切換変速比Rcに至った場合に両変速モード間の切換が行われるように構成して、切換時におけるショックの発生を抑えるようにしている。
【0044】
しかし、車両の変速比が切換変速比Rcに至ったことが検知されてから「HMT変速モード」に切り換えるように前記電磁弁91・92に信号を送るとしたのでは、制御装置90が信号を送ってから実際に前記クラッチ13・14が係合又は係合解除されて実際に「HMT変速モード」となるまでに、電気的な時間遅れと機械(油圧機器など)的な時間遅れとに起因するタイムラグ(特に機械的時間遅れによるタイムラグ)が生じてしまい、実際にクラッチ13・14が動作する時点では、HMTクラッチ13及びHSTクラッチ14の前後のリングギア3及びギア12の回転数にズレが生じ、変速モード切換時のショックの原因となる。
【0045】
そこで、タイムラグによる回転数のズレを抑制するため、HMTクラッチ13及びHSTクラッチ14それぞれにおいて油圧・機械の遅れ時間ΔTHMTon ・ΔTHMToff・ΔTHSTon ・ΔTHSToffを予め計測して制御装置90に記憶させておき、車両の変速比が切換変速比に到達する時間よりΔTHMTon ・ΔTHMToff・ΔTHSTon ・ΔTHSToffだけ早い時間にモードの切換を行うよう制御装置90に信号を送るようにしている。従って、ちょうど実変速比が切換変速比となるときに、実際にHMTクラッチ13又はHSTクラッチ14が係合又は係合解除されてモードの切換動作を行うことができる。
【0046】
例えば、図8の図表に示すように、「HST変速モード」から「HMT変速モード」へ(又は「HMT変速モード」から「HST変速モード」へ)、変速モードを切り換えるときには、制御装置90で変速比の傾きを常時計算し、実変速比と計算した変速比の傾きからΔTHMTon 後の変速比(予測変速比)を予測し、該予測変速比が切換変速比RC に到達していれば、HSTクラッチ14(又は、HMTクラッチ13)を係合するよう電磁弁92(又は、電磁弁91)に信号を送る。この結果、ΔTHMTon 後に車両の変速比が切換変速比RC に達したときに、HSTクラッチ14(又はHMTクラッチ13)の係合動作が実際に行われることとなる。
【0047】
なお、変速モード切換においては、HMTクラッチ13又はHSTクラッチ14のうち一方を係合させるとともに、他方を係合解除させる制御を行うことになるが、本実施例では切換の際に、HMTクラッチ13及びHSTクラッチ14を双方とも係合させておく状態を短時間ΔTMtos現出させるようにし、これによって切換を円滑に行うようにしている。
【0048】
〔HST斜板角アクチュエータの不感帯の設定〕
油圧ポンプ22の可動斜板22aの傾斜角を変更するHST斜板角アクチュエータ86は、前述の如く、該HST斜板角アクチュエータ86に流れる電流値を制御することにより、その作動が制御される構成としている。HST斜板角アクチュエータ86に流れる電流値には、中立点が認識されやすいように、HST斜板角アクチュエータ86に、ある指定範囲の量の電流を与えても該HST斜板角アクチュエータ86が動作しない不感帯が設けられている。該不感帯は各HST21において個体差が存在するため、各個体に応じて不感帯を決定する必要がある。
【0049】
図9に示す図表を用いて、HST出力軸26と出力軸27の間のクラッチを開放した状態、すなわち、第一・第二の油圧パッククラッチ13・14を双方とも係合を解除した状態で、図10の図表に示すようなスィープ状の電流をHST斜板角アクチュエータ86に与えたときの、電流とHST回転数の変化について説明する。
【0050】
図9の図表では、電流上昇過程において、油圧モータ23が作動し始めるA点、それ以上電流を与えてもHST回転数が変化しなくなりHST回転数が飽和するB点、最大の電流を流したB’点、さらに、電流降下過程において、HST回転数が飽和した状態からHST回転数が変化し始めるC点、HST回転数がゼロとなるD点を示している。そして、電流をHST斜板角アクチュエータ86に与えると、A点→B点→B’点→C点→D点のようにHST回転数が変化する。
【0051】
A点からB点へは非線形的にHST回転数が増加し、B点からB’点を経てC点まではHST回転数は変化せず、HST回転数は飽和状態にあり、C点からD点まではHST回転数が非線形的に減少する。ここで、C点からB’点までの範囲にある電流値を飽和電流値とし、A点及びC点の電流値はそれぞれ初動電流値とする。
【0052】
そして、不感帯を決定するときは、図11の図表に示すように、前記初動電流値と、飽和電流値とを制御装置90のメモリに記憶させ、これらの電流値の間を直線補間近似した近似線を設定線とし、該設定線に基づいて不感帯ΔI0 を決定する。すなわち、電流降下過程においてHST回転数が変化し始めるC点の飽和電流値Ic と、同じく電流降下過程でHST回転数がゼロとなるD点の初動電流値Id との間の非線形線を直線補間近似した近似線αを算出し、該近似線αを設定線として、該設定線に基づいて不感帯ΔI0 を決定するのである。このようにして決定された不感帯ΔI0 は、各HST21個体に応じて決定されることになり、各HST21個体よって異なる不感帯のばらつきに対応することができる。
【0053】
なお、電流上昇過程においてHST回転数が変化し始めるA点の初動電流値Ia と、同じく電流上昇過程においてHST回転数が飽和状態となるB点の飽和電流値Ib との間で直線補間近似して算出した近似線を設定線として採用すると、初動電流値Ia を与えても、電流上昇時のA点ではHST回転数はゼロであるが、電流下降時のA’点では、HST回転数はゼロとならずHST21出力軸が回転することになるため、設定線はC点とD点に基づいて算出した近似線αとしている。
【0054】
〔HST斜板角アクチュエータへの指令電流値の設定方法〕
図9に示す図表から分かるように、HST斜板角アクチュエータ86に流したスィープ状の電流とHST回転数との間には、同じ電流値に対し、電流上昇時と電流低下時ではHST回転数が異なり、すなわち、スィープ状の電流とHST回転数にはヒステリシス差Wが発生している。従って、HST回転数を増加過程から減少過程に変化させようと電流値を減少させると、ヒステリシス差Wのために、HST回転数は変化しないが電流値を徐々に減少させるための遅れが生じる。この遅れを解消したHST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’の設定方法を、以下に、第一・第二・第三の設定方法として説明する。
【0055】
(1)第一の設定方法
第一の設定方法では、HST斜板角アクチュエータ86の不感帯Δi0 の設定の方法と同様に、初動電流値と、飽和電流値とを制御装置90のメモリに記憶させ、これらの電流値の間を直線補間近似した線を設定線とし、該設定線に基づいてあるHST回転数を得るためにHST斜板角アクチュエータ86に与える指令電流値を決定する。
【0056】
すなわち、図11の図表に示すように、電流降下過程においてHST回転数が変化し始めるC点の飽和電流値Ic と、同じく電流降下過程でHST回転数がゼロとなるD点の初動電流値Id との間の非線形線を直線補間近似した近似線αを算出し、該近似線αを設定線として、該設定線に基づいて、HST21に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値i’を決定するのである。従って、例えば、HST回転数H(n) を得ようとするときには、HST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’は、近似線αに基づいて決定され、その値はI(n) となる。
【0057】
なお、電流上昇過程においてHST回転数が変化し始めるA点の初動電流値Ia と、同じく電流上昇過程においてHST回転数が飽和状態となるB点の飽和電流値Ib との間で直線補間近似して算出した近似線を設定線とすると、初動電流値Ia を与えても、電流上昇時のA点ではHST回転数はゼロであるが、電流下降時のA’点では、HST回転数はゼロとならずHST21出力軸が回転することになるため、設定線はC点とD点に基づいて算出した近似線としている。
【0058】
(2)第二の設定方法
第二の設定方法では、指令電流とHST回転数の間に発生するヒステリシス差Wを考慮したHST斜板角アクチュエータ86への指令電流値の設定方法を示す。
【0059】
ヒステリシス差Wは、A点とB点を直線近似した近似線βと、C点とB点を直線近似した近似線αとの偏差で決定される。例えば、図12の図表に示すように、HST回転数がH(f) であるときのヒステリシス差W(f) は、近似線β上の点fの電流値I(f) と近似線α上の点f’の電流値I(f')との偏差となる。
R(f) =I(f) −I(f')
上述の如く各電流値に対して算出したヒステリシス差Wを制御装置90のメモリに記憶させ、HST21に負荷が加わらないときのHST斜板角アクチュエータ86への指令電流値である原指令電流値i’をヒステリシス差Wを考慮して決定する。
【0060】
例えば、HST回転数増加過程では、近似線βに基づいて原指令電流値i’を決定し、HST回転数H(f) を得ようとするときには、原指令電流値i’はI(f) となる。また、HST回転数減少過程では、近似線αに基づいて原指令電流値i’を決定し、HST回転数H(f) を得ようとするときには、原指令電流値i’はI(f')となる。
【0061】
さらに、HST回転数増加過程において、HST回転数がH(f) であるF点でHST回転数減少過程に切り換えるときには、f点からf’点まで、HST回転数H(f) に対応するヒステリシス差W(f) の量だけHST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’を急激に変化させる。同様に、HST回転数減少過程において、HST回転数がH(f) であるとき、HST回転数増加過程に切り換えるときには、f’点からf点まで、HST回転数H(f) に対応するヒステリシス差W(f) の量だけHST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’を急激に変化させる。f点とf’点とではヒステリシス差W(f) のためにHST回転数が同一でありHST回転数が連続するため、HST回転数を増加過程から減少過程へ、又は減少過程から増加過程へ変化させても、HST斜板角が急激に変化することなく滑らかな切り換えが行われる。
【0062】
(3)第三の設定方法
第三の設定方法では、HST斜板角アクチュエータ86への指令電流値とHST回転数との関係は非線形的に変化するため、初動電流値と飽和電流値との間の点を複数プロットして、それぞれの点において電流値及びHST回転数を制御装置90のメモリに記憶し、隣接する各点間で直線近似する。すなわち、近似線を、二点ではなく複数点の直線近似から算出して非線形状とするのである。
【0063】
例えば、図13の図表に示すように、電流上昇過程においてHST回転数が変化し始めるA点と、HST回転数が飽和状態となるB点との間に、予め設定したステップ毎(例えば、100rpm毎)に複数の認識点S1 ・S2 ・・・Sn をとり、A点−S1 点・S1 点−S2 点・・・Sn 点−B点をそれぞれ直線近似することで、近似線βを得る。同様に、電流降下過程においてHST回転数が変化し始めるC点とHST回転数がゼロとなるD点で、近似線αを得る。
【0064】
上述の如く決定した近似線α及び近似線βに基づいて、近似線αと近似線βとの偏差によってヒステリシス差Wを算出し、HST斜板角アクチュエータ86への、HST21に負荷が加わらない状態の指令電流値である原指令電流値i’を決定する。このように第三の設定方法では、前記第一及び第二の設定方法で補正するときと比較して、近似線α及び近似線βが実際の電流値とHST回転数との関係を示す非線形線により近づくため、より精度の高い原指令電流値i’を得ることができる。
【0065】
例えば、HST回転数増加過程では、近似線βに基づいて原指令電流値i’を決定し、HST回転数H(f) を得ようとするときには、原指令電流値i’はI(f) となる。また、HST回転数減少過程では、近似線αに基づいて原指令電流値i’を決定し、HST回転数H(f) を得ようとするときには、原指令電流値i’はI(f')となる。
【0066】
さらに、HST回転数増加過程において、HST回転数がH(f) であるF点でHST回転数減少過程に切り換えるときには、f点からf’点まで、HST回転数H(f) に対応するヒステリシス差W(f) の量だけHST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’を急激に変化させる。同様に、HST回転数減少過程において、HST回転数がH(f) であるとき、HST回転数増加過程に切り換えるときには、f’点からf点まで、HST回転数H(f) に対応するヒステリシス差W(f) の量だけHST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’を急激に変化させる。
【0067】
なお、第三の設定方法では、近似線αと近似線βとの間のヒステリシス差Wが無視できる程度に十分小さいときには、近似線αを設定線として用い、所望のHST回転数を得るためにHST斜板角アクチュエータ86への原指令電流値i’を設定線上の値として決定することもできる。このとき、二本の近似線α・βを設定するときと比較して、制御装置90のメモリに記憶する情報量を削減することができる。
【0068】
〔HST斜板角の補正〕
前述の如く、HST斜板角には、補正値Δrのフィードバック制御が断続的に行われている。上述の如く、HST21に負荷が加わらない状態でのHST斜板角アクチュエータ86への指令電流値である原指令電流値i’が決定されるが、車両の実走行時にはHST21に負荷が加わった状態であるため、この負荷に対応するためにHST斜板角をΔrだけフィードバック制御するのであり、従って、実走行時にはHST斜板角アクチュエータ86への指令電流値iは、原指令電流値i’にΔiのフィードバック制御が施されたものとなる。以下に、HST斜板角に対するフィードバック制御について詳細に説明する。
【0069】
図14において、上側の線はHST21に加わる負荷が大きい場合の油圧ポンプ22のHST斜板角と油圧モータ23の単位時間当たりの回転数との関係を示すものであり、下側の線はHST21に加わる負荷が小さい場合のものである。これらの間にはHST21に加わる負荷によって差Δdr が生じている。
【0070】
すなわち、HST21に加わる負荷により、HST21の容積効率が変化し、油圧モータ23の駆動効率が変化しているのである。HST21の容積効率は作動油の温度、劣化度合い、HST21に加わる負荷により変化する。例えば、HST21に加わる負荷による回路内の油圧の上昇を起因とする油の漏れや圧縮、また、これらの反復による経時劣化や油温の変化等を原因として容積効率が変化する。
【0071】
HST21に加わる負荷が大きい場合には、HST斜板角に対して油圧モータ23の回転数の上昇率が少なく、負荷が小さい場合には、HST斜板角に対して油圧モータ23の回転数の上昇率が大きくなる。つまり、単位時間当たりの油圧モータ23の回転数が同じでも、HST21に加わる負荷により、油圧ポンプ22のHST斜板角が異なる。
【0072】
従って、HST21の容積効率が変化した状態では、主変速レバー84操作により決定された車両の変速比に対応する操作量だけHST斜板角アクチュエータ86がHST斜板角を変更しても、車両が所望の走行速度にならない事態が生じる。そこで、HST斜板角アクチュエータ86の操作量にHST21の容積効率の変化を加味し、すなわち、HST斜板角アクチュエータ86への指令電流値iにHST21に加わる負荷を加味した補正値Δiで補正することによって、HST斜板角を補正値Δrだけ補正し、HST21の容積効率の変化に対応するようにしている。
【0073】
(1)一定変速モード時のHST斜板角補正
HST斜板角の補正は、HST21に加わる負荷に基づいて行われる。図15の図表に示すように、HST回転数が等しくても、油の漏れや圧縮等の容積効率の変化によって、HST21に加わる負荷が無視できない程度に大きい状態(負荷状態)となると、HST21に加わる負荷が無視できる程度に十分に小さい状態(無負荷状態)と比べて、HST斜板角アクチュエータ86に与えなければならない電流値に差Δiが生じる。
【0074】
すなわち、HST斜板角アクチュエータ86への指令電流値には、無負荷時の原指令電流値i’と、実操向の状態である負荷時の指令電流値iとで差Δiが生じることになり、HST21に加わる負荷の値Qと、負荷時の指令電流値iと無負荷時の原指令電流値i’との差はほぼ比例している。従って、指令電流値iは原指令電流値i’に対してΔiだけ補正された値でなければならず、この指令電流値iの補正値Δiを、HST21に加わる負荷から生じたものと推測し、Δiの値に基づいてHST21に加わる負荷の大きさを検出するようにしている。
【0075】
制御装置90は、エンジン20の回転数を検出する検出器83、HST21の油圧モータ23回転数を検出する検出器81、主変速レバー84位置及び副変速スイッチ87位置を検出する検出手段84a・87a等からの情報で決定される変速比に必要な出力軸27の目標回転数Mp を算出し、車軸に連動している出力軸27の回転数を検出する検出器82から得られる実際の出力軸27の回転数Mと、目標回転数Mp の差ΔM(ΔM=Mp −M)を算出する。
【0076】
上述の如く算出した差ΔMの値に基づいてHST斜板角アクチュエータ86への指令電流値iを定める。そして、HST斜板角アクチュエータ86に指令電流値iに相当する電流が送られて該HST斜板角アクチュエータ86の作動が制御されHST斜板角が変更される。
【0077】
HST21に加わる負荷の値Qは、前記指令電流値iと、予め試験操向してHST21が無負荷状態であるときに測定し制御装置90のメモリに記憶させたHST斜板角アクチュエータ86への指令電流値(原指令電流値i’)とを比較し、その差Δi(Δi=i−i’)を算出し、さらに、予め制御装置90に記憶されている差Δiと負荷Qとの対応関係を表すマップに基づいて決定される。
【0078】
前記指令電流値iは、原指令電流値i’に対して、1回前の制御ループにおいて検出されたHST21に加わる負荷の値Qに対応する補正値Δiによって補正された値となる構成として、すなわち、HST斜板角アクチュエータ86への指令電流値iによって動作されるHST斜板角は常にフィードバック制御されている。
【0079】
なお、指令電流値iの補正値Δiは、図16の図表に示すように、車両を増速させようと主変速レバー84を操作するときは減速側にHST斜板角をΔrだけ変更するよう補正された値であり、車両を減速させようと主変速レバー84を操作するときは増速側にHST斜板角をΔrだけ変更するよう補正された値である。すなわち、指令電流値iの補正値Δiによって、HST斜板角が無負荷時のHST斜板角に対してΔrだけオフセット制御されるよう補正されている。上述の如く、断続的にHST斜板角がΔrだけオフセット制御されるようフィードバック制御するので、様々な状況に応じたキメ細かい制御が可能とされ、滑らかな加速をより安定的に達成できる。
【0080】
(2)変速モード切換時のHST斜板角補正
ここで、変速モードの切換時における、HST斜板角の補正制御について図16及び図17の図表(5)を用いて説明する。
【0081】
前述の如く、アクチュエータ86への指令電流値iは常にΔiだけフィードバック制御されており、HST斜板角は無負荷時のHST斜板角に対し常にΔrだけ補正されるよう制御されている。しかし、「HST変速モード」から「HMT変速モード」へ、もしくは「HMT変速モード」から「HST変速モード」へと切換が行われる点Xにおいては、HST21に加わる負荷が急激に変化する。
【0082】
これは、「HST変速モード」と「HMT変速モード」のモード切換時にはHST21の油圧ポンプ22に対する力の加わり方が変化するためである。すなわち、「HST変速モード」では油圧ポンプ22が油圧モータ23を回転させているのに対し、「HMT変速モード」では油圧モータ23が回ろうとするのを油圧ポンプ22が抑えているのである。このため、変速モード切換時に円滑な変速操作を行うためには、変速モード切換時以外のHST斜板角の補正値Δrとは異なる補正値ΔrC でHST斜板角を補正するよう、アクチュエータ86の指令電流値iを補正する必要がある。
【0083】
前記HST斜板角の補正値ΔrC も、変速モード切換時以外と同様に、HST21に加わる負荷の大きさにより決定される。すなわち、制御装置90が変速モード切換の直前又は直後であることを認識し、このときの指令電流値iと原指令電流値i’によって算出したHST21に加わる負荷の値Qから、予め作成し制御装置90に記憶させておいた指令電流値iの補正値Δix と負荷の値Qとの対応関係を表すマップに基づいて、補正値Δix を決定する。そして、変速モード切換時における指令電流値iは、補正値Δix の二倍の値とした切換時補正値ΔiC (ΔiC =2Δix )によって補正された値となるようにする。
【0084】
そして、HST斜板角アクチュエータ86への指令電流値iの切換時補正値ΔiC は、HST斜板角をΔrC だけ補正するに相当する値であり、「HST変速モード」から「HMT変速モード」へ切り換える際には、HST斜板角をΔrC だけ中立側に傾動し、「HMT変速モード」から「HST変速モード」へと切り換える際には、HST斜板角をΔrC だけ正転側に傾動して、円滑な変速モード切換が行われるようにしている。
【0085】
こうして、変速モードの切換時に、HST21に加わる負荷による容積効率の変化による車速の一時的な落ち込みを防止するためHST21を減速側(HMTとしては増速側)に制御している。従って、HST21の容積効率の変化をカバーするようにして、変速モード切換の際のショックを低減するようにしているのである。
【0086】
〔変速モード切換のタイムチャート〕
ここで、車両が低速前進域の「HST変速モード」にある状態から、中速又は高速前進域の「HMT変速モード」に移行するときの、HST斜板角アクチュエータ86への指令電流値iの変化を、前記時間補正、及びHST21に加わる負荷に対する補正を考慮して、図17に示す図表を用いて説明する。図17に示す各図表では、縦軸には、図表(1)は車両の変速比、図表(2)はHST変速比、図表(3)はHMTクラッチ13の動作とHMTクラッチ13により出力軸27に与えられる圧力、図表(4)は図表(3)はHMTクラッチ14の動作とHMTクラッチ14により出力軸27に与えられる圧力、図表(5)はHST斜板角アクチュエータ86に出力される電流値とHST変速比、を示し、横軸は各図表(1)〜(5)において共通の時間を採っている。
【0087】
まず、図17の図表(1)に示すように、作業者のレバー操作により原目標変速比101が決定される。そして、作業者がレバーを急激に操作した場合に車両が急加速、又は急減速するのを防止するために、原目標変速比101に制限を加味して目標変速比102が決定される。
【0088】
実際に車両の走行速度を変速する際に、制御されるのはHST21の油圧ポンプ22の可動斜板22aの角度(HST斜板角)であり、図17の図表(2)に示すように、前記目標変速比102に基づいて、原HST目標変速比103が決定される。目標変速比102は、本来であれば、目標変速比102が機械的に決定される変速モードを切り換えるための切換変速比RC に達する時刻TA で、それまで増加過程にあった原HST目標変速比103の値を、減少過程に切り換えなければならないが、HST21の可動斜板22aの動作遅れによるタイムラグを考慮すると、時刻TA で原HST目標変速比103を減少させるよう制御しても、実HST変速比Rnow は切換HST変速比RHSTCに達しない。
【0089】
そこで、実変速比Rnow が切換変速比RC に達した時点で変速モードの切換が行われるよう、「HST変速モード」から「HMT変速モード」へ変速モード切換時の許容目標変速比ΔRを設定し、該許容目標変速比ΔRをHST変速比に変換した値をΔRHST として、原HST目標変速比103を切換HST変速比RHSTCより、ΔRHST だけ越えた値となるように真の切換HST変速比RtHSTC、
RtHSTC=RHSTC+ΔRHST
を設定する。
【0090】
また、図17の図表(1)に示すように、ある時刻T(n) における実変速比Rnow (n) と、実変速比の傾きα、及び、HSTクラッチ14に係合するよう信号を送ってから実際に係合するまでのタイムラグΔTHMTon の値を確定することによって、時刻T(n) からΔTHMTon 後の変速比REst
REst =Rnow (n) +α×ΔTHMTon
が推定できる。
【0091】
前述の如く算出したREst が、切換変速比RC より大きくなると、HSTクラッチ14の切換動作に入る。切換動作に入るに際して、まず、HST目標変速比を、一旦切換HST変速比RHSTCまで戻す。このとき、HST目標変速比が急激に変化するのを防止するために、原HST目標変速比103をフィルタリング処理して平滑化したHST目標変速比104を作成し、該HST目標変速比104に沿ってHST斜板角を制御するようにしている。
【0092】
時刻Tにおいて、HMTクラッチ13を係合すべく信号を出力する。すると、図17の図表(3)及び図表(4)に示すように、HMTクラッチ13は、タイムラグΔTHMTon 後に実際に係合する。HMTクラッチ13が係合すれば、変速モードは「HMT変速モード」に切り換わるため、HST変速比は、減少方向に制御する必要がある。実際に、HMTクラッチ13が係合してから、HST斜板角を減少方向に制御する信号を出力していては、HST21の動作遅れによるタイムラグΔTHST のために、良好に切換が行われない。そこで、時刻Tから、ΔTHMTon 後に、HST斜板角が減少方向に制御されるように、時刻TからΔTkeep
ΔTkeep=ΔTHMTon −ΔTHST
後に、HST斜板角を減少方向に制御する信号を出力する。なお、時刻TからΔTkeepが経過する以前に信号を出力すれば、HSTクラッチ14が係合する前に、HST変速比が減少するために、モード切換によるショックが生じる原因となる。
【0093】
そして、時刻Tから、予め設定されたHSTクラッチ14を係合すべく信号を出力してからHMTクラッチ13の係合を解除すべく信号を出力するまでの時間ΔTMtos後に、HMTクラッチ13の係合を解除する信号を出力する。
HMTクラッチ13は、時刻TからΔTMtosと、HMTクラッチ13の係合を解除すべく信号を出力してから実際に係合が解除されるまでのタイムラグΔTHSToffを合わせた時間の経過後に、係合が解除される。
【0094】
ここで、クラッチの切換動作を滑らかに行うためには、HSTクラッチ14が係合すると同時に、HMTクラッチ13の係合を解除することが好ましい。すなわち、
ΔTMtos+ΔTHSToff=ΔTHMTon
となるように、ΔTMtosを決定すればよい。
また、
ΔTMtos+ΔTHSToff>ΔTHMTon
となるようにΔTMtosを決定すれば、両方のクラッチ13・14が同時に係合している時間ΔTsimuが発生する。本実施例における、変速モード切換時の負荷の補正は、ΔTsimuの間に行われる。
【0095】
両方のクラッチ13・14が係合している状態では、HST変速比は切換HST変速比RHSTCに固定される。その間に可動斜板22aを動かしても車速に影響は出ない。ここで、ステップ状の電流を与えたときのHST斜板角の変化を、図18に示す図表を用いて説明する。但し、この図表では、HST21の機械的特性によって電流を与えてから実際にHST斜板角が変化し始めるまでの時間をΔTHST とし、HST斜板角が変化し始めて定常状態となるまでの時間(整定時間)Ts としている。
【0096】
HSTクラッチ14が切れたときにはHST斜板角は定常状態であることが望ましい。従って、変速モード切換時の指令電流値iの補正は時刻TからΔTkeep後に行われ、両方のクラッチ13・14が係合している時間ΔTsimuは、HST21の整定時間Ts より長くなるように設定する。また、前述の如く、変速モード切換時の指令電流値iの補正値ΔiC は、補正直前の無負荷時の原指令電流値i’と指令電流値iから決定された値Δix の二倍の値であり、これによってHST斜板角が大幅に変更されたあとにHSTクラッチ14が切れて、HST斜板角が定常状態となる。
【0097】
このように、容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角をHST斜板角アクチュエータ(86)に与える指令電流値により制御することにより変更操作して、油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流降下過程において、HST回転数が変化し始める(C)点の飽和電流値(IC )と、同じく電流降下過程でHST回転数がゼロとなる(D)点の初動電流値(Id )との間の非線形線を、直線補間近似した近似線(α)を算出し、該近似線(α)を設定線として、該設定線に基づいて、指定範囲の量の電流を与えても該HST斜板角アクチュエータ(86)が動作しない範囲である不感帯(ΔI0 )を決定するので、各HST個体に有するバラツキに応じた制御が可能となり、各HST固体間の異なる不感帯を知ることができて、その不感帯に合わせて回転数制御することが可能となる。
【0098】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0099】
請求項1に示す如く、容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角を操作するHST斜板角アクチュエータ(86)を設け、該HST斜板角アクチュエータ(86)は、前記可動斜板(22a)にリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ(86b)と、該サーボシリンダ(86b)への圧油を制御する電磁弁である制御バルブ(86a)から構成し、該制御バルブ(86a)は制御装置(90)よりの指令電流値により制御し、該サーボシリンダ(86b)を伸縮駆動し、該油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流降下過程において、HST回転数が変化し始める(C)点の飽和電流値(IC )と、同じく電流降下過程でHST回転数がゼロとなる(D)点の初動電流値(Id )との間の非線形線を、直線補間近似した近似線(α)を算出し、該近似線(α)を設定線として、該設定線に基づいて、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、電流上昇過程において、HST回転数が変化し始める(A)点の初動電流値(Ia )と、同じく電流上昇過程においてHST回転数が飽和状態となる(B)点の飽和電流値(Ib )との間で、非線形線を直線補間近似した近似線(β)を算出し、該近似線(β)を設定線として、該設定線に基づいて、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、前記近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出し、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、前記ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更するので、制御装置は簡易な計算で各HST個体に異なる指令電流値を決定することができ、制御かかるメモリを減少し、制御ステップも減少することができて、制御の応答性も向上することができる。
また、制御電流と出力回転数の間にはヒステリシスが生じるが、このヒステリシスに合わせた制御が可能となって、制御精度が向上する。
また、近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出するので、特別な検出手段を設けずにヒステリシス差を検出でき、回転数上昇途中から回転数を減少する制御を行なう時などの制御を正確に行なうことができる。
また、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更するので、ヒステリシス差を考慮して指令電流値を決定することができ、滑らかな加速及び減速が安定的に得られる。
【0100】
請求項2に示す如く、容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角を操作するHST斜板角アクチュエータ(86)を設け、該HST斜板角アクチュエータ(86)は、前記可動斜板(22a)にリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ(86b)と、該サーボシリンダ(86b)への圧油を制御する電磁弁である制御バルブ(86a)から構成し、該制御バルブ(86a)は制御装置(90)よりの指令電流値により制御し、該サーボシリンダ(86b)を伸縮駆動し、該油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流上昇過程において、HST回転数が変化し始める(A)点と、HST回転数が飽和状態となる(B)点との間に、予め設定したステップ毎に、複数の認識点(S1 ・S1 ・・・Sn )をとり、(A)点−(S1 )点・(S1 )点−(S2 )点・・・(Sn )点−(B)点をそれぞれ直線近似することで、近似線(β)を得て、同様に、電流降下過程においてHST回転数が変化し始める(C)点とHST回転数がゼロとなる(D)点で、複数の認識点をとり直線近似することで近似線(α)を得て、決定した近似線(β)と、近似線(α)に基づいて、HST斜板角アクチュエータ(86)への、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態の指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、前記近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出し、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、前記ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更するので、制御精度が向上する。
また、近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出するので、特別な検出手段を設けずにヒステリシス差を検出でき、回転数上昇途中から回転数を減少する制御を行なう時などの制御を正確に行なうことができる。
また、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更するので、ヒステリシス差を考慮して指令電流値を決定することができ、滑らかな加速及び減速が安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 HMT式変速装置のスケルトン図。
【図2】 HSTの側面断面展開図。
【図3】 ミッション前部の側面断面展開図。
【図4】 HST斜板制御のための構成を示す説明図。
【図5】 車速とHST変速比との関係を示す図。
【図6】 車両の変速比とHST変速比及びHST斜板角の関係を示す図。
【図7】 HST斜板角アクチュエータの構成を示す説明図。
【図8】 変速モード切換時間補正の説明図。
【図9】 HST回転数とHST斜板角アクチュエータに与えられる電流値との関係を示す図。
【図10】 スィープ状電流を示す図。
【図11】 HST斜板角アクチュエータへの指令電流値の第一の決定方法の説明図。
【図12】 HST斜板角アクチュエータへの指令電流値の第二の決定方法の説明図。
【図13】 HST斜板角アクチュエータへの指令電流値の第三の決定方法の説明図。
【図14】 HSTに加わる負荷の有無によるHST回転数に対するHST斜板角の変化を示す図。
【図15】 HSTに加わる負荷の有無によるHST斜板角アクチュエータへの指令電流値に対するHST回転数の変化を示す図。
【図16】 変速モード切換におけるHST斜板角補正の説明図。
【図17】 変速モード切換におけるHST斜板角アクチュエータへの指令電流値を決定するタイムチャート図。
【図18】 HST斜板角アクチュエータへの指令電流に対するHST斜板角の応答状態を示す図。
【符号の説明】
H ヒステリシス差
21 HST
22 油圧ポンプ
22a 可動斜板
23 油圧モータ
25 ポンプ出力軸
26 HST出力軸
27 出力軸
86 HST斜板角アクチュエータ
90 制御装置
Claims (2)
- 容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角を操作するHST斜板角アクチュエータ(86)を設け、該HST斜板角アクチュエータ(86)は、前記可動斜板(22a)にリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ(86b)と、該サーボシリンダ(86b)への圧油を制御する電磁弁である制御バルブ(86a)から構成し、該制御バルブ(86a)は制御装置(90)よりの指令電流値により制御し、該サーボシリンダ(86b)を伸縮駆動し、該油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流降下過程において、HST回転数が変化し始める(C)点の飽和電流値(IC )と、同じく電流降下過程でHST回転数がゼロとなる(D)点の初動電流値(Id )との間の非線形線を、直線補間近似した近似線(α)を算出し、該近似線(α)を設定線として、該設定線に基づいて、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、電流上昇過程において、HST回転数が変化し始める(A)点の初動電流値(Ia )と、同じく電流上昇過程においてHST回転数が飽和状態となる(B)点の飽和電流値(Ib )との間で、非線形線を直線補間近似した近似線(β)を算出し、該近似線(β)を設定線として、該設定線に基づいて、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらないときの指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、前記近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出し、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、前記ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更することを特徴とする油圧式無段変速機構。
- 容積を可変とする油圧ポンプ(22)と、油圧モータ(23)とで構成した油圧式無段変速機構(21)と、遊星歯車機構(10)とを備えた油圧−機械式変速装置であって、後進域の全域〜前進低速域においては、油圧モータ(23)の回転出力がそのまま出力される「HST変速モード」とし、前進の中速域〜高速域においては、該油圧モータ(23)の回転出力が遊星歯車機構(10)にて合成されて、差動的に取り出された回転が出力される「HMT変速モード」とし、前記油圧ポンプ(22)の可動斜板(22a)の斜板角を操作するHST斜板角アクチュエータ(86)を設け、該HST斜板角アクチュエータ(86)は、前記可動斜板(22a)にリンクを介して連結した油圧式のサーボシリンダ(86b)と、該サーボシリンダ(86b)への圧油を制御する電磁弁である制御バルブ(86a)から構成し、該制御バルブ(86a)は制御装置(90)よりの指令電流値により制御し、該サーボシリンダ(86b)を伸縮駆動し、該油圧ポンプ(22)の容積を変更すべく構成した油圧式無段変速機構において、該油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態で、HST斜板角アクチュエータ(86)にスィープ状の電流を与えることによって、電流上昇過程において、HST回転数が変化し始める(A)点と、HST回転数が飽和状態となる(B)点との間に、予め設定したステップ毎に、複数の認識点(S1 ・S1 ・・・Sn )をとり、(A)点−(S1 )点・(S1 )点−(S2 )点・・・(Sn )点−(B)点をそれぞれ直線近似することで、近似線(β)を得て、同様に、電流降下過程においてHST回転数が変化し始める(C)点とHST回転数がゼロとなる(D)点で、複数の認識点をとり直線近似することで近似線(α)を得て、決定した近似線(β)と、近似線(α)に基づいて、HST斜板角アクチュエータ(86)への、油圧式無段変速機構(21)に負荷が加わらない状態の指令電流値である原指令電流値(i’)を決定し、前記近似線(α)と近似線(β)との偏差によって、ヒステリシス差(W)を算出し、前記油圧モータ(23)の出力回転数を減少過程から増加過程へ、又は、増加過程から減少過程へ変更する際に、前記ヒステリシス差(W)に相当する電流値でHST斜板角アクチュエータ(86)への指令電流値を変更することを特徴とする油圧式無段変速機構。
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