JP4011626B2 - 角速度センサ - Google Patents
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Description
本発明は角速度センサに関し、特に、マイクロマシニング技術および半導体技術を利用した大量生産に適する角速度センサに関する。
背景技術
自動車産業や機械産業などでは、運動する物体の加速度や角速度を正確に検出できるセンサの需要が高まっている。加速度センサに関しては、従来から種々のタイプのものが提案されており、作用した加速度を二次元あるいは三次元的に正確に検出可能な小型のセンサが実用化に至っている。たとえば、特許協力条約に基づく国際公開第WO88/08522号公報(米国特許第4967605号/同第5182515号)には、半導体基板上に形成されたピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を利用した加速度センサが開示されている。また、特許協力条約に基づく国際公開第WO92/17759号公報(米国特許第5492020号)には、静電容量素子あるいは圧電素子を用い、作用した加速度を各座標軸方向ごとに検出する加速度センサが開示されており、特許協力条約に基づく国際公開第WO93/02342号公報(米国特許第5365799号)には、また別なタイプの圧電素子を用いた多軸加速度センサが開示されている。
これに対して、角速度センサについての文献は比較的少ない。特に、多軸まわりの角速度を同時に検出できる角速度センサに関する文献は、ほとんど見受けられない。通常、角速度センサは車両の動力軸などの角速度を検出するために利用されており、ある特定の一軸まわりの角速度を検出する機能しかもたない。このような動力軸の回転速度を求めるような場合には、一次元の角速度センサを用いれば十分であるが、三次元空間内において自由運動する物体についての角速度を検出するセンサとしては、二軸もしくは三軸まわりの角速度を同時に検出することができる多軸角速度センサが望まれる。
このような需要に応えるため、本願発明者は、特許協力条約に基づく国際公開第WO94/23272号公報(米国特許出願第08/366026号)および日本国特許出願第7−56690/1995号明細書(米国特許出願第08/601794号)に、新規な多軸角速度センサを提案した。この新規な角速度センサは、XYZ三次元直交座標系において、第1の座標軸方向に運動中の物体に対して、第2の座標軸まわりに角速度が作用すると、第3の座標軸方向にコリオリ力が発生するという原理を利用したもので、発生したコリオリ力を検出することにより、作用した角速度を間接的に検出するものである。コリオリ力の検出には、従来の加速度センサで培われてきた技術が応用されており、ピエゾ抵抗素子、容量素子、圧電素子などが利用される。
本発明の目的は、上述の原理に基づく角速度センサのより具体的かつ実用的なメカニズムを提供することにあり、特に、マイクロマシニング技術および半導体技術を利用した多軸角速度センサを実現するための新規な手法を提供することにある。本発明の適用により、小型で高精度な多軸角速度センサを大量生産することが可能になる。
発明の開示
(1) 本発明の第1の態様は、
XYZ三次元座標系におけるXY平面に沿った上面を有する基板と、
基板上面に直交するZ軸を回転軸として前記基板上面に対して非接触の状態で回転運動を行う第1の重錘体および第2の重錘体と、
外力が作用しない状態において、前記第1の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、正のX軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給するとともに、前記第2の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、負のX軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給するエネルギー供給手段と、
前記第1の重錘体が正のX軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第1の重錘体との距離を測定する正のX軸上方距離測定手段と、
前記第2の重錘体が負のX軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第2の重錘体との距離を測定する負のX軸上方距離測定手段と、
を備え、
前記正のX軸上方距離測定手段によって測定された距離と、前記負のX軸上方距離測定手段によって測定された距離と、に基づいて、前記基板に作用したX軸まわりの角速度を検出する機能を有する角速度センサを構成し、
前記正のX軸上方距離測定手段は、前記基板上面の正のX軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第1の固定電極対と、前記第1の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第1の重錘体の下面に形成された第1の移動電極と、前記第1の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第1の検出回路と、を有し、前記第1の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第1の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第1の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有し、
前記負のX軸上方距離測定手段は、前記基板上面の負のX軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第2の固定電極対と、前記第2の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第2の重錘体の下面に形成された第2の移動電極と、前記第2の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第2の検出回路と、を有し、前記第2の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第2の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第2の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有するようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る角速度センサにおいて、
エネルギー供給手段が、第1の重錘体の反転回転運動の回転方向と第2の重錘体の反転回転運動の回転方向とが同じになるように各重錘体に対するエネルギーの供給を行うようにし、
正のX軸上方距離測定手段によって測定された距離と負のX軸上方距離測定手段によって測定された距離との差を求める差分演算手段を設け、この差分演算手段によって求めた差に基づいて、基板に作用したX軸まわりの角速度を検出するようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る角速度センサにおいて、
基板上面に直交するZ軸を回転軸として前記基板上面に対して非接触の状態で回転運動を行う第3の重錘体および第4の重錘体と、
外力が作用しない状態において、前記第3の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、正のY軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給するとともに、前記第4の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、負のY軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給し、かつ、前記第3の重錘体の反転回転運動の回転方向と前記第4の重錘体の反転回転運動の回転方向とが同じになるように各重錘体に対するエネルギーの供給を行うエネルギー供給手段と、
前記第3の重錘体が正のY軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第3の重錘体との距離を測定する正のY軸上方距離測定手段と、
前記第4の重錘体が負のY軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第4の重錘体との距離を測定する負のY軸上方距離測定手段と、
前記正のY軸上方距離測定手段によって測定された距離と前記負のY軸上方距離測定手段によって測定された距離との差を求める差分演算手段と、
を更に設け、前記差に基づいて、前記基板に作用したY軸まわりの角速度を検出する機能をもたせるようにし、
前記正のY軸上方距離測定手段は、前記基板上面の正のY軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第3の固定電極対と、前記第3の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第3の重錘体の下面に形成された第3の移動電極と、前記第3の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第3の検出回路と、を有し、前記第3の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第3の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第3の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有し、
前記負のY軸上方距離測定手段は、前記基板上面の負のY軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第4の固定電極対と、前記第4の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第4の重錘体の下面に形成された第4の移動電極と、前記第4の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第4の検出回路と、を有し、前記第4の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第4の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第4の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有するようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る角速度センサにおいて、
第1の重錘体および第2の重錘体の反転回転運動の回転方向と、第3の重錘体および第4の重錘体の反転回転運動の回転方向と、が常に逆向きになるように設定したものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第3または第4の態様に係る角速度センサにおいて、
第1の重錘体が正のX軸上空に位置するときに、第2の重錘体が負のX軸上空に位置し、第3の重錘体が正のY軸上空に位置し、第4の重錘体が負のY軸上空に位置するように、前記第1の重錘体、前記第2の重錘体、前記第3の重錘体、前記第4の重錘体を中間部材を介して結合したものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る角速度センサにおいて、
Z軸まわりに捩じれを生じることができる材質からなる支持体を基板上面に固着し、各重錘体をこの支持体によって支持するようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る角速度センサにおいて、
用いる複数の重錘体の形状および質量を同一にしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第7の態様に係る角速度センサにおいて、
各重錘体の少なくとも一部分を誘電体で構成し、
エネルギー供給手段を、前記重錘体の回転運動経路に沿って配置した複数の電極と、これら複数の電極に対してそれぞれ位相の異なる交流電圧を供給する電圧供給回路と、によって構成したものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、X軸およびY軸まわりの角速度ωx,ωyを検出するための角速度センサの基本構成を示す斜視図である。
第2図は、移動中の物体に角速度が作用した場合に、コリオリ力が作用する原理を示す斜視図である。
第3図は、第1図に示す角速度センサの動作を説明する斜視図である。
第4図は、加速度が作用する環境下において、加速度の成分をキャンセルしつつ、X軸およびY軸まわりの角速度ωx,ωyを検出するための角速度センサの基本構成を示す斜視図である。
第5図は、第4図に示す角速度センサの動作を説明する斜視図である。
第6図は、第4図に示す角速度センサの変形例を示す斜視図である。
第7図は、第6図に示す角速度センサのロータ部分の具体的な構造例を示す平面図である。
第8図は、第7図に示すロータの変形例を示す平面図である。
第9図は、第7図に示すロータの更に別な変形例を示す平面図である。
第10図は、第7図に示すロータを反転回転運動(振動運動)させる動作態様を示す平面図である。
第11図は、第7図に示すロータを、回転振動成分をキャンセルさせる方法で反転回転運動させる第1の動作態様を示す平面図である。
第12図は、第7図に示すロータを、回転振動成分をキャンセルさせる方法で反転回転運動させる第2の動作態様を示す平面図である。
第13図は、ロータを連続回転運動させるタイプの本発明の具体的な実施例に係る角速度センサの平面図である。
第14図は、第13図に示す角速度センサをX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。
第15図は、第13図に示す角速度センサのロータのみを示す平面図である。
第16図は、第13図に示す角速度センサからロータを取り外した状態を示す平面図である。
第17図は、第13図に示す角速度センサの動作を説明するための平面図である。
第18図は、第13図に示す角速度センサの動作を説明するためのX軸に沿った切断面を示す側断面図である。
第19図は、第13図に示す角速度センサのステータに所定の電圧を与えることによりロータを回転させる原理を示す平面図である。
第20図は、第13図に示す角速度センサのステータに所定の電圧を与えることによりロータを回転させる原理を示す別な平面図である。
第21図は、第13図に示す角速度センサのステータに与えるべき交流電圧を示す波形図である。
第22図は、第13図に示す角速度センサのロータ側に形成された移動電極とステータ側に形成された固定電極とにより構成される容量素子を示すためにX軸に沿った切断面を示す側断面図である。
第23図は、第13図に示す角速度センサのロータ側に形成された移動電極とステータ側に形成された固定電極とにより構成される容量素子を示すためにY軸に沿った切断面を示す側断面図である。
第24図は、第13図に示す角速度センサのロータ側に形成された移動電極とステータ側に形成された固定電極とにより構成される容量素子を示す平面図である。
第25図は、第13図に示す角速度センサにおいて、ロータ回転中にX軸まわりの角速度ωxが作用した場合のX軸に沿った切断面を示す側断面図である。
第26図は、第13図に示す角速度センサについて用いられる検出回路を示す回路図である。
第27図は、第13図に示す角速度センサに用いられる固定電極の別な配置例を示す平面図である。
第28図は、ロータを反転回転運動(振動運動)させるタイプの本発明の具体的な実施例に係る角速度センサのX軸に沿った切断面を示す側断面図である。
第29図は、第28図に示す角速度センサの主要な構成要素の配置を示す平面図である。
第30図は、第28図に示す角速度センサにおいて、ロータを反転回転運動させる動作態様を示す平面図である。
第31図は、第28図に示す角速度センサにおいて、回転振動成分をキャンセルさせる方法でロータを反転回転運動させる第1の動作態様を示す平面図である。
第32図は、第28図に示す角速度センサにおいて、回転振動成分をキャンセルさせる方法でロータを反転回転運動させる第2の動作態様を示す平面図である。
第33図は、第28図に示す角速度センサにおいて、回転振動成分をキャンセルさせる方法でロータを反転回転運動させる第3の動作態様を示す平面図である。
第34図は、Z軸まわりの角速度ωzを検出するための角速度センサの基本構成を示す斜視図である。
第35図は、加速度が作用する環境下において、加速度の成分をキャンセルしつつ、Z軸まわりの角速度ωzを検出するための角速度センサの基本構成を示す斜視図である。
第36図は、三軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzを検出することができる三次元角速度センサの具体的な実施例を示す平面図である。
第37図は、第36図に示す角速度センサをX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。
第38図は、第36図に示す角速度センサのロータのみを示す平面図である。
第39図は、第36図に示す角速度センサからロータを取り外した状態を示す平面図である。
第40図は、第36図に示す角速度センサに外力が作用していないときに形成される容量素子を示す平面図である。
第41図は、第36図に示す角速度センサにZ軸まわりの角速度ωzが作用しているときに形成される容量素子を示す平面図である。
第42図は、第36図に示す角速度センサについて用いられる検出回路の一部を示す回路図である。
第43図は、第36図に示す角速度センサにX軸方向の加速度αxが作用しているときに形成される容量素子を示す平面図である。
第44図は、第36図に示す角速度センサについて、ロータの構造を変えた変形例を示す側断面図である。
第45図は、第36図に示す角速度センサについて、ロータを反転回転運動(振動運動)させるタイプに変えた変形例を示す側断面図である。
発明を実施するための最良の形態
§1. 本発明の基本原理
はじめに、本発明に係る角速度センサの基本原理を第1図を参照しながら説明する。この第1図に示す角速度センサは、XYZ三次元座標系におけるX軸およびY軸まわりの角速度ωx,ωyを検出する機能を有する。基板10は、平坦な上面11を有し、装置筐体として機能する。ここで、XYZ三次元座標系は、この上面11がXY平面に含まれるように定義されており、原点Oから上方に伸びるZ軸は、上面11に直交する軸となる。いま、所定の質量をもった重錘体20を用意し、この重錘体20をZ軸を回転軸として図の軌道Cに沿って回転運動させたとする。すなわち、重錘体20は、基板10の上面11に対して非接触の状態で回転運動を行うことになる。このとき、エネルギー供給手段30から重錘体20に対して回転運動のためのエネルギーを供給するようにし、重錘体20が上面11に対して一定の距離hを保ちながら回転運動を行うようにする。
もちろん、実際の角速度センサでは、重錘体20を基板10に対して支持するための具体的な機構や、上面11に非接触状態で一定の距離hを維持しつつ回転運動させるための具体的な機構が必要になるが、そのような具体的な機構については§5以降において詳述する。ここでは、コリオリ力や加速度に基づく力などの系外からの余分な力(外力)が加わらない限り(すなわち、基板10が静止状態にある限り)、上面11から常に一定の距離hを維持しつつ、重錘体20に回転運動をさせるような何らかの機構が設けられているものとする。
この角速度センサは、更に、重錘体20がX軸上空を通過した時点において、上面11と通過中の重錘体20との距離を測定するX軸上方距離測定手段40と、重錘体20がY軸上空を通過した時点において、上面11と通過中の重錘体20との距離を測定するY軸上方距離測定手段50とを備えている。上述したように、系外からの力が作用しない状態では、重錘体20は常に上面11から距離hの高さの位置を運動する。別言すれば、方程式Z=hで示される平面上の円軌道Cに沿って重錘体20は移動する。したがって、この状態では、X軸上方距離測定手段40による測定値も、Y軸上方距離測定手段50による測定値も、いずれも定常状態の距離hとなる。
しかしながら、この系全体がX軸まわりの角速度ωxもしくはY軸まわりの角速度ωyをもって回転運動していた場合、別言すれば、基板10に対して角速度ωxあるいはωyが作用していた場合、この角速度に基づくコリオリ力が重錘体20に作用することになり、重錘体20の運動は本来の円軌道Cから外れることになる。
ここで、運動中の物体に作用する角速度とコリオリ力との関係を第2図を参照して簡単に説明しておく。いま、第2図に示すように、XYZ三次元座標系内において、所定の質量mをもった重錘体20がY軸方向に所定の速度Vyで運動している場合を考える。このとき、この座標系全体が、X軸まわりの角速度ωxをもって回転していたとすると、この座標系内における重錘体20の運動は、Z軸方向の外力Fczが発生したものとして取り扱うことができる。この外力Fczは、この系内でのみ現れるみかけの力であり、コリオリ力と呼ばれ、
Fcz=2・m・Vy・ωx
なる式で定義される。第2図に示す例では、このコリオリ力Fczの作用により、Y軸方向に移動中の重錘体20の軌道は、Z軸方向に曲げられることになる。
そこで、第1図に示す系全体に、X軸まわりの角速度ωxが加えられた場合の重錘体20に対するコリオリ力の作用について考える。第3図に示すように、重錘体20は、X軸の上方を通過する瞬間に、円軌道Cの接線方向であるY軸方向の速度成分Vyを有している。したがって、この瞬間に系全体にX軸まわりの角速度ωxが作用した場合、Z軸方向にコリオリ力Fczが作用することになる。エネルギー供給手段30は、重錘体20を当初の円軌道C(角速度ωx=0のときに予定されていた軌道)に沿って回転移動させるためのエネルギーを供給しているが、重錘体20にZ軸方向のコリオリ力Fczが加わると、重錘体20は当初の円軌道CからZ軸方向にΔhだけ外れて、図に示すように、基板上面11から距離h+Δhだけ離れた地点を通過することになる。当初の円軌道Cからの隔たりΔhは、作用したコリオリ力Fczに関連した値となる。前述したように、このコリオリ力Fczの大きさは、
Fcz=2・m・Vy・ωx
なる式により定義されるので、重錘体20の質量mおよび運動速度Vyを一定にしておけば、コリオリ力Fczは角速度ωxに比例した値となり、結局、重錘体20がX軸上方を通過する時点における当初の円軌道Cからの隔たりΔhを、角速度ωxを示す値として用いることができる。また、hは一定であるから、重錘体20と基板上面11との距離h+Δhを測定することができれば、角速度ωxの値を得ることができる。
第1図に示した角速度センサは、このような原理に基づいて、X軸まわりの角速度ωxおよびY軸まわりの角速度ωyを検出する機能を有する。すなわち、センサ筐体としての基板10を被測定対象物に取り付け、エネルギー供給手段30からエネルギーを供給すると、重錘体20は円軌道Cに沿って回転運動する。この状態において、X軸上方距離測定手段40からは、重錘体20がX軸上方を通過したときの基板上面11からの距離の測定値が出力され、Y軸上方距離測定手段50からは、重錘体20がY軸上方を通過したときの基板上面11からの距離の測定値が出力される。したがって、X軸上方距離測定手段40の出力は、基板10のX軸まわりの角速度ωx(すなわち、被測定対象物の角速度ωx)を示すものになり、Y軸上方距離測定手段50の出力は、基板10のY軸まわりの角速度ωy(すなわち、被測定対象物の角速度ωy)を示すものになる。
なお、逆向きの角速度が作用した場合には、発生するコリオリ力の向きが逆転し、円軌道Cからの隔たりΔhの符号が逆転することになるので、重錘体20と基板上面11との距離hが増えたか減ったかによって、作用した角速度の向きを認識することができる。
§2. 加速度成分のキャンセル
角速度センサを実際に使用する環境を考えた場合、純然たる角速度のみが作用する環境は非常にまれであり、通常は、加速度と角速度との双方が作用する環境下で使用されることが多い。このような一般的な環境下での使用を前提とした場合、加速度の影響を受けることなく、角速度のみを正確に検出する機能が必要になる。
前述の§1で述べた角速度センサは、実は、加速度が作用する環境下では、正確な角速度の検出を行うことはできない。すなわち、第3図において、角速度ωxのみが作用している環境下では、隔たりΔhは角速度ωxに比例したコリオリ力Fczのみに基づく量になり、測定されたΔhの値は、角速度ωxを示すものになる。ところが、この系全体に、Z軸方向の加速度αzが作用していた場合には、この加速度αzに基づく力Fazが重錘体20に加わることになり、隔たりΔhは角速度ωxに比例したコリオリ力Fczと加速度αzに基づく力Fazとの双方によって決定される量になるため、測定されたΔhの値には加速度成分が含まれることになり、正確な角速度ωxを求めることはできない。
もちろん、§1で述べた角速度センサとともに、一般的な加速度センサを併用するようにして、この加速度センサが検出した加速度の値によって、角速度センサの検出値に対する補正を行い、加速度成分をキャンセルすることも可能である。しかしながら、常に加速度センサとの併用を前提とした装置構成は複雑にならざるを得ず、装置の小型化およびコストダウンという見地から好ましくない。この§2で述べる角速度センサは、基本的には§1で述べた角速度センサの原理を採用しているものの、加速度成分をキャンセルした検出値を容易に得ることが可能である。
第4図に、この加速度成分をキャンセルする機能をもった角速度センサの基本構成を示す。このセンサの特徴は、軌道C上に一対の重錘体21,22を設けた点にある。いずれの重錘体も、エネルギー供給手段30からのエネルギーの供給を受けて、Z軸を回転軸として基板上面11に対して非接触の状態で回転運動を行う。ただし、図示のとおり、第1の重錘体21が正のX軸上空に位置するときに、第2の重錘体22は負のX軸上空に位置するように、第1の重錘体と前記第2の重錘体とは、互いに位相が180°ずれた状態で回転運動を行う。したがって、第1の重錘体21が正のY軸上空に位置するときには、第2の重錘体22は負のY軸上空に位置することになる。
また、この角速度センサには、4組の距離測定手段が設けられている。すなわち、正のX軸上方距離測定手段41は、いずれかの重錘体が正のX軸上空(第4図において、第1の重錘体21が存在する地点)を通過した時点において基板上面11と通過中の重錘体との距離を測定する機能を有し、負のX軸上方距離測定手段42は、いずれかの重錘体が負のX軸上空(第4図において、第2の重錘体22が存在する地点)を通過した時点において基板上面11と通過中の重錘体との距離を測定する機能を有する。また、正のY軸上方距離測定手段51は、いずれかの重錘体が正のY軸上空を通過した時点において基板上面11と通過中の重錘体との距離を測定する機能を有し、負のY軸上方距離測定手段52は、いずれかの重錘体が負のY軸上空を通過した時点において基板上面11と通過中の重錘体との距離を測定する機能を有する。
更に、正のX軸上方距離測定手段41によって測定された距離と負のX軸上方距離測定手段42によって測定された距離との差を求めるための第1の差分演算手段43と、正のY軸上方距離測定手段51によって測定された距離と負のY軸上方距離測定手段52によって測定された距離との差を求めるための第2の差分演算手段53と、が備わっており、最終的に、これら差分演算手段43,53の出力に基づいて、X軸まわりの角速度ωxおよびY軸まわりの角速度ωyが検出されることになる。
続いて、この角速度センサにおける検出原理および加速度成分がキャンセルされる理由について述べる。いま、第4図に図示されているように、Z=hで示される平面上に含まれる円軌道C上を、互いに位相が180°ずれた状態で一対の重錘体21,22が回転運動を行うように、エネルギー供給手段30からエネルギーが供給されている状態を考える。この状態では、図示のように、第1の重錘体21は正のX軸上空をY軸正方向の速度Vyをもって通過し、それと同時に、第2の重錘体22は負のX軸上空をY軸負方向の速度−Vyをもって通過する。このとき、もしこの系全体に対して、X軸まわりの角速度ωxが作用していたとすると、第5図に示すように、第1の重錘体21に対しては、Z軸正方向のコリオリ力Fczが加わり、第1の重錘体21は当初の円軌道Cから上方に外れる。一方、第2の重錘体22に対しては、Z軸負方向のコリオリ力−Fczが加わり、第2の重錘体22は当初の円軌道Cから下方に外れる。
いま、第1の重錘体21と第2の重錘体22とが、全く同一の形状を有し、全く同一の質量を有していたとする。ここで、両者は常に180°の位相差を保って回転運動をしているのであるから、回転運動の速度の絶対値も両者は同じになる。したがって、両重錘体に作用するコリオリ力の絶対値は同じになり、第1の重錘体21がΔhだけ円軌道Cから上方に外れ、基板上面11からの距離h+Δhの位置を通過したとすれば、第2の重錘体22はΔhだけ円軌道Cから下方に外れ、基板上面11からの距離h−Δhの位置を通過することになる。したがって、正のX軸上方距離測定手段41の出力はh+Δhとなり、負のX軸上方距離測定手段42の出力はh−Δhとなる。結局、差分演算手段43からは、両者の差分である2・Δhが出力される。この差分2・Δhは、作用したコリオリ力Fcz(−Fcz)の大きさを示すものであり、X軸まわりの角速度ωxの大きさを示すものになる。なお、作用した角速度ωxの向きが逆の場合、コリオリ力の向きは逆転し、差分演算手段43からの出力は−2・Δhになる。したがって、差分演算手段43から得られる出力信号の符号は角速度ωxの向きを示し、出力信号の大きさは角速度ωxの大きさを示すものとなる。
ここで、この系全体に対して加速度が作用していたとしても、この加速度は検出結果には何ら影響を与えない。すなわち、この系全体に何らかの加速度成分が作用していたとしても、この加速度成分に基づく力は、第1の重錘体21と第2の重錘体22との双方に加わることになるので、差分をとった段階でキャンセルされるのである。たとえば、第5図に示す例において、Z軸方向の加速度αzが作用したために、この加速度αzに基づく力Fazに起因して、両重錘体がZ軸正方向に更にΔkだけ変位したとする。この場合、正のX軸上方距離測定手段41の出力はh+Δh+Δkとなり、負のX軸上方距離測定手段42の出力はh−Δh+Δkとなり、差分演算手段43から出力される差分は依然として2・Δhとなる。すなわち、差分をとったために、加速度αzの影響はキャンセルされたことになる。
このように、互いに位相が180°ずれた状態で回転運動を行う一対の重錘体を用いることにより、加速度成分をキャンセルすることが可能になる。
なお、上述の説明では、正のX軸上方距離測定手段41および負のX軸上方距離測定手段42と、これら両測定手段の出力の差分をとる差分演算手段43とを用いて、X軸まわりの角速度ωxを検出する動作を説明したが、正のY軸上方距離測定手段51および負のY軸上方距離測定手段52と、これら両測定手段の出力の差分をとる差分演算手段53とを用いれば、全く同様の原理でY軸まわりの角速度ωyを検出することが可能である。このように、両重錘体21,22が正のX軸上方および負のX軸上方を通過する瞬間にX軸まわりの角速度ωxの検出を行い、正のY軸上方および負のY軸上方を通過する瞬間にY軸まわりの角速度ωyの検出を行うようにすれば、角速度ωx,ωyを交互に検出することができる。また、この検出周期は、重錘体21,22の回転速度によって調節可能である。
§3. 重錘体によるロータの構成
上述した§2では、一対の重錘体を互いに位相を180°ずらして回転運動させることにより、加速度成分をキャンセルする手法を説明した。原理的には、この一対の重錘体を、それぞれが全く別個独立した物体として構成してもかまわないが、実用上は、一対の重錘体を単一の構造体として用意するのが好ましい。また、少なくとも2個の重錘体を用いれば加速度成分のキャンセルは可能であるが、実用上は、より多数の重錘体を用いた方が好ましい。
ここでは、複数の重錘体を相互に結合することにより、ロータを形成する実施例を示すことにする。第6図に示す実施例は、4組の重錘体21,22,23,24をアーム61,62,63,64を介して結合することにより、ロータ60を形成した例である。4本のアーム61−64は、Z=hの平面上に配置され、点Pにおいて相互に90°の角度を保って結合されている。各アームの外側端部には、それぞれ重錘体21−24が結合されており、このようなロータ60を、点Pを中心点として回転させれば、4つの重錘体21−24は、互いに90°の位相差をもって円軌道C上を回転運動することになる。このように、互いに90°の位相差をもって4つの重錘体21−24が配置されているため、図示の状態のように、第1の重錘体21が正のX軸上空に位置するときには、第2の重錘体22は負のX軸上空に位置し、第3の重錘体23は正のY軸上空に位置し、第4の重錘体は負のY軸上空に位置するようになる。したがって、この瞬間に、各重錘体と基板上面11との距離を測定するようにすれば、第1の重錘体21および第2の重錘体22に関する測定結果に基づきX軸まわりの角速度ωxを検出することができ、同時に、第3の重錘体23および第4の重錘体24に関する測定結果に基づきY軸まわりの角速度ωyを検出することができる。
なお、このような検出を行うためには、ロータ60の中心点PがZ軸上の所定位置に支持されるようにしなければならないが、その場合、次の2つの条件が満たされるような工夫が必要である。第1の条件は、各重錘体21−24がZ軸を回転軸として回転移動できるようにするという条件であり、回転運動中の重錘体に作用するコリオリ力を検出するという本発明の基本原理を実現するためには、この条件は不可欠である。また、第2の条件は、各重錘体21−24がZ軸方向に所定の自由度をもって移動自在となるようにするという条件であり、コリオリ力を基板上面11からの距離の変化として検出するためには、各重錘体がZ軸方向に必要な範囲内で移動できるような構成にしておくことが不可欠である。
第7図は、第6図に示したロータ60のより実用的な構成を示す平面図である。4つの重錘体21−24は、4本のアーム61−64の外側端部に接続されており、4本のアーム61−64の内側端部は、中心点Pの近傍に配置された中心部材65に接続されている。ロータ60は、全体的に剛性を有し、中心点Pを中心として図の矢印で示すように回転する。
図示の瞬間には、第1の重錘体21はY軸正方向の速度Vyをもって正のX軸を通過し、第2の重錘体22はY軸負方向の速度−Vyをもって負のX軸を通過する。したがって、X軸まわりの角速度ωxが作用している環境下では、第1の重錘体21に対しては、Z軸正方向のコリオリ力Fczが作用し、第2の重錘体22に対しては、Z軸負方向のコリオリ力−Fczが作用し、両者の差分として角速度ωxが検出される。同様に、第3の重錘体23はX軸負方向の速度−Vxをもって正のY軸を通過し、第4の重錘体24はX軸正方向の速度Vxをもって負のY軸を通過するので、Y軸まわりの角速度ωyが作用している環境下では、第3の重錘体23および第4の重錘体24に対してそれぞれ逆方向のコリオリ力が作用し、両者の差分として角速度ωyが検出される。
既に§2で説明したように、差分をとることにより加速度の影響はキャンセルすることができる。また、角速度ωxの作用によっては、X軸方向の速度成分をもった第3の重錘体23および第4の重錘体24に対しては、何らコリオリ力は発生せず、同様に、角速度ωyの作用によっては、Y軸方向の速度成分をもった第1の重錘体21および第2の重錘体22に対しては、何らコリオリ力は発生しない。したがって、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとの双方が作用している環境下においても、両者をそれぞれ独立して同時に検出することが可能であり、両者間に干渉が生じることはない。
また、Z軸まわりの角速度ωzが作用していた場合、本発明に係る角速度センサでは、この角速度ωz自体を検出することはできないが、この角速度ωzの存在によって、角速度ωxあるいは角速度ωzの検出結果が影響を受けることはない。たとえば、角速度ωzに起因して第1の重錘体21に対してX軸正方向に向かうコリオリ力Fcxが作用したとしても、第2の重錘体22に対してはX軸負方向に向かうコリオリ力−Fcxが作用するため、ロータ60全体としては、これらコリオリ力の影響はキャンセルされてしまうことになる。
以上のように、第7図に示すロータ60を用いれば、このロータ60が90°回転するたびに、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとの双方の検出値を得ることができる。この検出周期を短くするには、ロータ60の回転速度を高めてもよいが、重錘体の数を増やしてもよい。たとえば、第8図は、8個の重錘体21−28を含むロータ68の平面図である。このようなロータ68を用いれば、ロータ68が45°回転するたびに、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとの双方の検出値を得ることができ、第7図に示すロータ60を用いた場合に比べて、回転速度が同じでも検出周期を1/2に短縮することができる。
なお、複数の重錘体を用いてロータを形成する場合には、個々の重錘体の形状および質量を同一にするのが好ましい。もちろん、形状あるいは質量の異なる複数の重錘体を用いても本発明は実現可能ではあるが、加速度成分をキャンセルするために質量やモーメントを考慮した補正演算を行う必要が生じるため実用的ではない。
第9図に示すロータ70は、4本のアーム71−74と、その内側端部に接続された中心部材75と、外側端部に接続された環状構造体76とによって構成される。中心点PをZ軸上に支持し、エネルギー供給手段30から供給されるエネルギーを利用して、環状構造体76をZ軸を回転軸として基板上面11に対して非接触の状態で回転運動させれば、この環状構造体76が多数の重錘体として機能することになる。すなわち、この環状構造体76の一部分を1個の重錘体とみなして距離測定の対象とすれば、上述の原理に基づく角速度検出が可能になる。たとえば、第9図に示すように、環状構造体76上に質点M1−M4を定義し、これらの質点をそれぞれ重錘体21−24とみなせば、このロータ70は、第7図に示すロータ60と等価になる。
この環状構造体76を有するロータ70は、原理的には、重錘体の個数を無限個にしたロータとして機能するため、角速度の検出周期を零にまで短縮することができ、時間的に連続した検出値を得ることが可能になる。
§4. ロータの反転回転運動
これまで述べてきた例では、いずれも重錘体もしくはその集合体としてのロータを、常に同一の回転方向に向かって運動させていた。たとえば、第7図に示すロータ60を用いた例では、点Pを中心点として、ロータ60全体を「反時計回り」に回転させており、この「反時計回り」という回転方向には変わりがなく、連続回転運動が行われることになる。
しかしながら、本発明の基本原理によれば、重錘体がX軸もしくはY軸の上空を、軸に対して垂直な速度成分をもって横切るような運動が繰り返し実行されればよいのであり、必ずしも重錘体を連続回転運動させる必要はない。
たとえば、第10図に示すように、ロータ60を反転回転運動させても、本発明の基本原理に基づく角速度検出は可能である。ここで、反転回転運動とは、時計回りの方向への回転と反時計回りの方向への回転とを交互に繰り返す運動を言う。第10図に示す例では、各重錘体21−24を、位置Aから位置Bへと移動させる前半周期の回転運動(時計回りの方向への回転運動)と、逆に、位置Bから位置Aへと移動させる後半周期の回転運動(反時計回りの方向への回転運動)とが、交互に繰り返し実行されることになる。位置AB間にX軸もしくはY軸が位置するため、前半周期および後半周期のそれぞれにおいて、重錘体はX軸もしくはY軸の上空を、軸に対して垂直な速度成分をもって横切ることになる。要するに、各重錘体は、円弧状の軌道に沿って往復運動を繰り返すことになる。別言すれば、各重錘体は、各軸を横切るような円弧に沿った振動運動を行うことになり、特に、固有の共振周波数で振動させるようにすると、効率のよい往復運動が可能になる。
ただ、このような反転回転運動を行わせた場合には、前半周期と後半周期とで、検出値の符号が反転する点に留意する必要がある。すなわち、重錘体が位置Aから位置Bへと移動する前半周期に各軸上空を横切ったときに得られる検出値と、重錘体が位置Bから位置Aへと移動する後半周期に各軸上空を横切ったときに得られる検出値とは、作用するコリオリ力の向きが逆転するために、符号が逆転することになる。よって、たとえば、後半周期に得られた検出値については符号を逆転させるような処理が必要になる。
以上のように、本明細書における「回転運動」とは、常に回転方向が一定の「連続回転運動」と、回転方向が周期的に反転する「反転回転運動(振動)」との双方を含む広い概念で用いており、中心に対する回転角度も360°の全範囲にわたっている必要はなく、第10図に示すように、X軸もしくはY軸の両側に定義した位置AB間に相当する一定の角度θだけ回転すれば十分である。
ロータを連続回転運動させずに反転回転運動させるメリットは、後述する§8の実施例のように、ロータの支持機構が単純化されるという点にある。すなわち、反転回転運動の場合は、ロータを360°回転させる必要はなく、第10図に示す角度θだけ回転させれば十分であるので、Z軸まわりに角度θだけ捩じれを生じさせることができるような態様で、ロータを基板上に固定すればよい。要するに、Z軸まわりに捩じれを生じることができる材質からなる支持体を基板上に固着し、ロータ(重錘体)をこの支持体によって支持する単純な構造を採ることが可能になる。
ただし、このような単純な構造を採った場合、ロータの反転回転運動による振動が、支持体を介して基板から装置筐体へと伝播することになる。すなわち、前半周期には、ロータ全体が時計回りの方向に回転するため、この時計回りの回転要素が筐体へと伝播し、後半周期には、ロータ全体が反時計回りの方向に回転するため、この反時計回りの回転要素が筐体へと伝播する。このようにロータの振動成分が装置筐体へと漏れることは、正確な検出を行う上では好ましくない。たとえば、装置筐体に手を触れただけでも、ロータの反転回転運動に影響が及ぶことになり、被測定対象物に対する装置筐体の取り付け態様によっても検出結果が影響を受けることになる。
こうした振動漏れを防ぐためには、時計回りの回転と反時計回りの回転とが互いにキャンセルし合うような態様で、反転回転運動を行うようにすればよい。具体的には、前半周期においては、第11図に示すように、第1の重錘体21および第2の重錘体22(X軸を横切る重錘体)を位置Aから位置Bへと向かうように時計回りの方向に回転運動させ、第3の重錘体23および第4の重錘体24(Y軸を横切る重錘体)を位置Bから位置Aへと向かうように反時計回りの方向に回転運動させる。そして、後半周期においては、第12図に示すように、第1の重錘体21および第2の重錘体22(X軸を横切る重錘体)を位置Bから位置Aへと向かうように反時計回りの方向に回転運動させ、第3の重錘体23および第4の重錘体24(Y軸を横切る重錘体)を位置Aから位置Bへと向かうように時計回りの方向に回転運動させる。
このように、第1の重錘体21および第2の重錘体22の反転回転運動の回転方向と、第3の重錘体23および第4の重錘体24の反転回転運動の回転方向と、が常に逆向きになるように設定しておけば、時計回りの振動成分と反時計回りの振動成分とがロータ60内で互いにキャンセルし合い、装置筐体への振動漏れを抑制することが可能になる。もっとも、このような駆動方法を採る場合には、ロータ60を構成するアーム61,62,63,64が、ある程度の可撓性を有するような構造にしておく必要がある(アームの可撓性は、たとえば、太さによって調整可能である)。
§5. 本発明の角速度センサの具体的な実施例
続いて、本発明に係る角速度センサをより具体的な実施例に基づいて説明する。第13図は、この実施例の平面図であり、第14図は、この実施例をX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。この実施例は、マイクロマシニング技術および半導体技術を利用して製造可能な角速度センサであり、必要な構成要素はすべて半導体基板上に形成されている。
この角速度センサの主たる構成要素は、基板100およびロータ200である。基板100は、第14図に示されているように、シリコン基板101とその上部に形成されたシリコン酸化膜102から構成されており、ここでは、この基板の上面103がXY平面に含まれるようにXYZ三次元座標系を定義して以下の説明を行う。
基板100の上面103には、ロータ200が配置されている。ロータ200は、第15図の平面図に明瞭に示されているように、基本的には第7図に示したロータ60と同じ構造を有する。すなわち、4本のアーム221−224が、互いに90°の角度差をもって配置され、それぞれの内側端部は肉厚円筒状の中心部材225に接続されている。また、各アーム221−224の外側端部には、それぞれ重錘体211−214が接続されている。4本のアーム221−224および4個の重錘体211−214は、いずれも形状および質量が同一のものである。
このロータ200の本体部は誘電体材料によって構成されているが、その下面には導電性を有する電極が形成されている。すなわち、ロータ200の本体部を構成する重錘体211−214、アーム221−224、中心部材225は、いずれも誘電体材料(この例では、ポリシリコン)によって構成されているが、重錘体211−214および中心部材225の下面には、それぞれ導電性材料(この例ではアルミニウムあるいは高濃度不純物がドープされたポリシリコン)からなる移動電極231−235が形成されている(移動電極233,234は第23図に示されている)。ロータ200の本体部を誘電体材料によって構成する理由は、§6において詳述するように、誘導モータの原理によってロータ200に回転運動を行わせるためである。また、各重錘体211−214の下面に移動電極231−234を形成する理由は、§7において詳述するように、重錘体211−214と基板上面103との距離を測定するための容量素子を形成するためである。
なお、中心部材225の下面には電極235を形成する必要はないが、一般的な半導体製造プロセスを実施すると、各重錘体の下面に移動電極の層を形成する工程において、中心部材225の下面にも電極層235が形成されてしまうことになる。この電極層235は、角速度センサの動作を何ら阻害するものではないので、この実施例では、電極層235をそのまま残してある。
基板100上には、Z軸に沿って伸びるように円柱状の枢軸130が固着されている。第15図に示されているように、ロータ200の中心部材225は肉厚の円筒状をしており、中心部には円柱状の空洞が形成されている。この空洞の直径は、枢軸130の直径よりもやや大きくなっており、第14図に示すように、この空洞内に枢軸130を通すようにして、ロータ200を枢軸130に嵌合させると、枢軸130の外周部と空洞内周部との間に空隙が形成されることになる。この空隙によって、ロータ200は枢軸130に対して回転自在に、かつ、所定の自由度をもって傾斜自在に(別言すれば、各重錘体がZ軸方向に移動自在に)なるように支持されることになる。枢軸130の上端部には円盤状のストッパ131が取り付けられており、ロータ200が枢軸130から抜け落ちるのを防止している。枢軸130やストッパ131は、どのような材料によって構成してもかまわないが、ロータ200が接触したときに電気的な動作に支障を及ぼさないように、絶縁性材料によって構成するのが好ましい。
なお、第14図では、ロータ200が基板100上に浮上した状態が示されているが、これは後述するように、ロータ200の回転運動中の状態を示したためである。
第13図の平面図をみればわかるように、基板100上には、ロータ200の周囲を取り囲むように、8個のステータ電極111−118が配置されている。これらのステータ電極111−118は、ロータ200を回転させるためのエネルギーを供給する。この実施例では、各重錘体211−214の回転運動経路に沿って、互いに45°の角度差をもって交わるX軸,W1軸,Y軸,W2軸上に8個のステータ電極111−118を配置しているが、より円滑な回転運動を行わせるために、更に多くのステータ電極を配置するようにしてもかまわない。
各ステータ電極111−118は、絶縁材料からなる台座を介して、基板100上に固着されている。たとえば、第14図の側断面図に示されているように、ステータ電極111は台座121を介して基板100上に固定されており、ステータ電極115は台座125を介して基板100上に固定されている。この実施例では、ポリシリコンによって各台座を構成し、アルミニウムによってステータ電極を構成している。各ステータ電極を絶縁性の台座を介して基板100上に設けたのは、後述するように、ロータ200の浮上回転運動を円滑に行わせるためである。
第16図は、第13図に示す角速度センサのストッパ131を除去し、ロータ200を取り外した状態を示す平面図であり、基板100上に固定電極141A−144A,141B−144Bが配置されている状態が明瞭に示されている。これら固定電極は、いずれも各座標軸の近傍にそれぞれ対をなして配置されている。すなわち、固定電極対141A,141Bは正のX軸近傍に配置され、固定電極対142A,142Bは負のX軸近傍に配置され、固定電極対143A,143Bは正のY軸近傍に配置され、固定電極対144A,144Bは負のX軸近傍に配置されている。しかも、第13図に破線で示されているように、ロータ200の各重錘体211−214がX軸上空およびY軸上空を通過する際に、各重錘体の下面に形成されている移動電極231−234に対向するような位置に、各固定電極141A−144A,141B−144Bは配置されている。
基板100上の上述したような位置に各固定電極を配置しておくと、各重錘体211−214がX軸上空およびY軸上空を通過する際に、各軸の位置において容量素子が形成されることになる。たとえば、第14図には、重錘体211が正のX軸上空に位置し、重錘体212が負のX軸上空に位置する状態が示されている。この状態において、重錘体211の下面に形成された移動電極231は、基板100上に形成された固定電極対141A,141Bの双方に対向しており、一対の容量素子が形成されている。同様に、重錘体212の下面に形成された移動電極232は、基板100上に形成された固定電極対142A,142Bの双方に対向しており、一対の容量素子が形成されている。これらの容量素子は、各重錘体と基板上面との距離を測定するために用いられるが、詳細については§7で説明を行う。
なお、第16図にブロック図として電圧供給回路310および検出回路320が示されているが、電圧供給回路310は、各ステータ電極111−118に所定の電圧を供給するための回路であり、検出回路320は、上述した各容量素子の静電容量値を検出するための回路である。実際には、各ステータ電極111−118と電圧供給回路310との間には、電圧供給用の配線が存在し、また、各固定電極141A−144A,141B−144Bと検出回路320との間にも、容量検出用の配線が存在する。ただ、図が繁雑になるのを避けるため、第16図においては、これらの配線の図示は省略されている。この実施例では、基板100は半導体基板であるので、このような配線を形成する工程は、半導体製造プロセスの工程内に容易に組み入れることが可能である。
§6. ロータの回転動作の原理
ここでは、§5で構造を説明した角速度センサにおけるロータの回転動作の原理を説明する。この原理は、誘導モータの原理として古くから知られているものであり、最近では、マイクロマシニングなどの分野において、半導体基板上に形成したマイクロモータを回転させるための原理として利用されている。本実施例では、電圧供給回路310から各ステータ電極111−118に対して、互いに位相の異なる交流電圧を供給することにより、誘電体材料からなるロータ200に回転エネルギーを供給することになる。
いま、第17図に示すように、ステータ電極111とステータ電極115との間に所定の電圧を印加し、ステータ電極111側に正の電荷を発生させ、ステータ電極115側に負の電荷を発生させる。すると、ロータ200の本体部は誘電体材料で構成されているため、内部で分極作用が生じ、図示のように、重錘体211側に負の電荷が集まり、重錘体212側に正の電荷が集まることになる。第18図は、このときの状態を示す側断面図である(断面を示すハッチングは省略)。重錘体211とステータ電極111との間、重錘体212とステータ電極115との間には、それぞれクーロン引力が作用した状態になる。
続いて、ステータ電極111とステータ電極115間の電圧印加を中止し、代わりに、ステータ電極112とステータ電極116との間に所定の電圧を印加し、第19図に示すように、ステータ電極112側に正の電荷を発生させ、ステータ電極116側に負の電荷を発生させる。このようにステータ電極側の電荷の分布状態が変化すると、それに応じてロータ200内の分極状態も変化することになるが、導体内の電荷移動速度に比べて、誘電体内の電荷移動速度は遅いため、ロータ200内の分極状態の変化は、ステータ電極側の電荷分布状態の変化には十分に追従することができない。そのため、第19図に示すように、ステータ電極側の電極分布が変化した後も、ロータ側の分極状態は直前の状態のままとなり、重錘体211とステータ電極112との間にクーロン引力が作用し、重錘体212とステータ電極116との間にクーロン引力が作用する。その結果、ロータ200には、図の矢印の方向を向いた回転力が作用することになり、第20図に示す位置までロータ200が回転することになる。
そこで、今度は、ステータ電極112とステータ電極116間の電圧印加を中止し、代わりに、ステータ電極113とステータ電極117との間に所定の電圧を印加し、ステータ電極113側に正の電荷を発生させ、ステータ電極117側に負の電荷を発生させれば、重錘体211とステータ電極113との間にクーロン引力が作用し、重錘体212とステータ電極117との間にクーロン引力が作用する。その結果、ロータ200には、更に反時計回りの方向への回転力が作用することになる。以下、同様にして、ステータ電極111−118に関する電荷分布を反時計回りに移動させてゆけば、これに応じてロータ200は反時計回りに連続回転運動を行うことになる。
結局、電圧供給回路310から各ステータ電極111−118に対して、それぞれ第21図に示すような交流電圧信号S1−S8を供給してやれば、ロータ200を反時計回りの方向に連続回転運動させることが可能になる。もちろん、供給する交流電圧信号を変えれば、時計回りの方向に連続回転運動させることもできるし、時計回りの運動と反時計回りの運動とを交互に繰り返す反転回転運動をさせることも可能である。ただし、この実施例に示す構造では、ロータ200を、一定の回転速度で連続回転運動させるのが好ましい。ロータ200を一定速度で連続回転運動させると、ロータ200の下面に空気の流体層が形成され、第14図に示すように、ロータ200が基板100の上方で浮き上がった状態で回転を行うことになり、安定した回転運動を維持させることが可能である。ロータ200が回転状態においてこのように浮き上がるのは、台座上に設けられたステータ電極に対するクーロン引力が作用するとともに、回転に伴って形成される空気の流体層の上に乗った状態になるためである。
このように、ロータ200は、基板100に対して非接触な状態で安定した連続回転運動を行うため、回転に伴う振動成分が基板側へ漏れることはなく、信頼できる角速度検出が可能になる。
以上、誘導モータの原理に基づいてロータ(重錘体)を連続回転運動させる実施例を述べたが、本発明を実施するにあたって、ロータを回転させるための原理は、この誘導モータの原理に限定されるものではない。要するに、ロータ(重錘体)を基板に非接触の状態で回転させることができれば、どのような方法を用いてもかまわない。たとえば、可変容量モータあるいはエレクトレットモータなどの原理に基づいて、ロータを回転させるような構造を採ることも可能である。
§7. 重錘体と基板との間の距離検出の原理
本発明に係る角速度センサの基本原理によれば、回転運動中の重錘体がX軸もしくはY軸の上方を通過する時点において、重錘体と基板との距離を検出することにより、Z軸方向に作用したコリオリ力Fczを求め、間接的にX軸まわりの角速度ωxもしくはY軸まわりの角速度ωyを検出することになる。ここでは、§5で構造を説明した角速度センサにおける重錘体と基板との間の距離検出の原理を説明する。
いま、基板上に形成された固定電極対と重錘体の下面に形成された移動電極とによって形成される一対の容量素子を考える。たとえば、第22図の側断面図には、重錘体211の下面に形成された移動電極231が、基板100上に形成された一対の固定電極141A,141Bに対向した状態が示されており、この状態は、図の右上に示された等価回路に置き換えることができる。すなわち、第1の固定電極141Aと移動電極231の一部分とによって第1の容量素子C1Aが形成され、第2の固定電極141Bと移動電極231の一部分とによって第2の容量素子C1Bが形成されている。しかも、移動電極231は単一の電極であるから、これら一対の容量素子C1A,C1Bは、移動電極231を中間点として直列接続された状態になっている。
そこで、この直列接続された一対の容量素子C1A,C1B全体を1つの容量素子C1とみなせば、容量素子C1の静電容量値をC1、個々の容量素子C1A,C1Bの各静電容量値をそれぞれC1A,C1Bとしたときに、
1/C1=(1/C1A)+(1/C1B)
が成り立つことになり、特に、C1A=C1Bの場合には、
C1=C1A/2
となる。
同様に、重錘体212の下面に形成された移動電極232と、これに対向する一対の固定電極142A,142Bとについて、第22図左上に示すような等価回路を考えれば、容量素子C2が構成されることになる。一方、Y軸に沿った切断面を示す第23図には、重錘体213の下面に形成された移動電極233と、これに対向する一対の固定電極143A,143Bとについての等価回路と、重錘体214の下面に形成された移動電極234と、これに対向する一対の固定電極144A,144Bとについての等価回路とが示されており、これらの等価回路により、容量素子C3,C4が構成されることになる。
結局、ロータ200が第24図に示すような位置にある場合、正のX軸上方に位置する重錘体211の下方には容量素子C1が形成され、負のX軸上方に位置する重錘体212の下方には容量素子C2が形成され、正のY軸上方に位置する重錘体213の下方には容量素子C3が形成され、負のY軸上方に位置する重錘体214の下方には容量素子C4が形成されることになる。
なお、基板側に一対の固定電極(たとえば、固定電極141A,141B)を設け、直列接続された一対の容量素子(たとえば、容量素子C1A,C1B)を1つの容量素子(たとえば、容量素子C1)とみなす取扱いをする理由は、ロータ200側に設けられた移動電極に対する配線が困難なためである。たとえば、第22図の右上に示した等価回路において、一方の容量素子C1A自身の静電容量値を直接測定するためには、固定電極141Aに対する配線と移動電極231に対する配線とが必要になる。ところが、移動電極231は、ロータ200の回転運動によって回転する電極であり、前述のように、ロータ200は基板100に対して非接触の状態で回転運動を行うため、実用上、移動電極231に対して配線を行うことは困難である。これに対し、直列接続された一対の容量素子C1A,C1B全体の静電容量値を容量素子C1の静電容量値として測定するようにすれば、移動電極231に対する配線は不要になる。すなわち、電気的には、第1の固定電極141Aと第2の固定電極141Bとの間の静電容量値を測定することができればよいので、これら一対の固定電極に対する配線が行われていれば足りる。
ところで、一対の電極によって構成される容量素子の静電容量値Cは、電極の面積をS、電極間隔をd、電極間の誘電率をεとすれば、
C=ε・S/d
なる式で表される。ここで、電極面積Sおよび誘電率εが一定であれば、静電容量値Cはdに反比例することになり、静電容量値Cを測定することができれば、電極間隔dを求めることができる。したがって、第22図および第23図に示された等価回路において、静電容量値C1,C2,C3,C4の値は、それぞれ重錘体211,212,213,214と基板100の上面との距離に関連した値になる。結局、これら静電容量値C1−C4を検出回路320によって検出すれば、この検出値は、重錘体と基板との間の距離を示す値となり、作用した角速度を示す値になる。
続いて、第25図を参照しながら、実際の角速度検出の原理を説明しよう。いま、ロータ200が前述の§6で述べた原理に基づき、上方から見たときに反時計回りの方向に一定の速度で連続回転運動を行っていたとする。このとき、基板100に対して、図のようなX軸まわりの角速度ωxが作用したとすると、重錘体211が正のX軸上方を通過する瞬間には、Z軸正方向のコリオリ力Fczが作用する。このとき、重錘体212は負のX軸上方を通過中であり、この重錘体232に対しては、Z軸負方向のコリオリ力−Fczが作用することになる。その結果、ロータ200全体は図示のように傾斜し、角速度が何ら作用していない基準状態に比べると、容量素子C1の電極間隔は広がり、容量素子C2の電極間隔は狭まる。その結果、静電容量値C1はΔC1だけ小さくなり、静電容量値C2はΔC2だけ大きくなる。そこで、両静電容量値の差分(ΔC1+ΔC2)をとれば、この差分の符号が作用したX軸まわりの角速度ωxの向きを示し、この差分の大きさが角速度ωxの大きさを示す量になる。なお、ΔC1とΔC2とは、厳密には等しくならないが、実用的なレベルでは、ΔC1=ΔC2=ΔCとして取り扱うことができ、差分は2・ΔCとして求めることができる。
第26図は、検出回路320の具体的な回路構成例を示す回路図である。容量素子C1,C2,C3,C4の静電容量値は、静電容量値Cを電圧値Vに変換する機能をもったC/V変換回路321,322,323,324によって、それぞれ電圧値V1,V2,V3,V4に変換され、差動増幅器325によって、電圧値V1とV2との差が演算され、差動増幅器326によって、電圧値V3とV4との差が演算される。上述の説明のとおり、電圧値の差(V1−V2)は、X軸まわりの角速度ωxを示す出力電圧Vωxとして差動増幅器325から出力され、電圧値の差(V3−V4)は、Y軸まわりの角速度ωyを示す出力電圧Vωyとして差動増幅器326から出力される。
ここに示す実施例では、第24図に示すように、4個の重錘体を有するロータ200を用いているため、ロータ200が90°回転するたびに(各重錘体が各軸上を通過するたびに)、正しい検出値を示す出力電圧VωxおよびVωyが得られることになる。また、第9図に示すような環状構造体76を有するロータ70を用いる場合には、環状構造体76の下面全体に移動電極を形成しておくようにすれば、常に正しい検出値が出力されることになる。
なお、上述の実施例における固定電極141A−144A,141B−144Bは、いずれも各座標軸上に配置されているが、一対の固定電極は座標軸の近傍に隣接配置されていれば足り、たとえば、第27図に示すように(重錘体211−214の参考位置を破線で示す)、各座標軸を挟んで固定電極141C−144C,141D−144Dを配置してもかまわない。また、隣接配置する一対の固定電極は、形状や大きさが異なっていてもかまわないが、検出回路を単純化する上では、すべての固定電極を同一の形状かつ同一の大きさにするのが好ましい。
§8. 本発明の角速度センサの別な実施例
§5で述べた実施例は、ロータを連続回転運動させるのに適した構造をもった角速度センサであるが、ここでは、ロータを反転回転運動させるのに適した構造をもった角速度センサの例を示す。第28図は、このような実施例の側断面図であり、第29図は、この実施例の主要な構成要素の配置を示す平面図である。
この角速度センサにおける基板100の構造は、§5で述べた実施例と全く同様である。ロータ250の構造も、§5で述べたロータ200の構造とほぼ同じであるが、中心部材260は円柱状のブロックであり、電極265を介して支持体270の上端に固着されている。支持体270は、円柱状のブロックであり、下端は基板100上に固定されている。結局、ロータ250は、その中心部が支持体270を介して基板100上に固定された状態になっている。ただし、重錘体211−214は、アーム221−224や支持体270を介して間接的には基板100に接続されているものの、基板100に対して非接触な状態で反転回転運動が可能な状態となっている。
ロータ250を反転回転運動させるためには、支持体270として、Z軸まわりに捩じれを生じることができる構造のものを用いる必要がある。この実施例では、上述のように、支持体270はポリシリコンから構成されており、径の大きさを適当な寸法に設定することにより、必要な自由度で反転回転運動が可能になるようにしている。
より円滑な反転回転運動を実現するために、この実施例では、角度差が30°となるように配置された12個のステータ電極を設けている。第29図は、これら12個のステータ電極E11−E22およびロータ250の配置を示す平面図である。ロータ250を反転回転運動させるには、各ステータ電極に所定の交流電圧を印加すればよい。
たとえば、第30図に示すように、ステータ電極E11に正の電荷、ステータ電極E17に負の電荷をそれぞれ発生させれば、ロータ250側では、重錘体211に負の電荷、重錘体212に正の電荷が集まる分極現象が起こる。続いて、ステータ電極E11,E17を中立状態に戻し、ステータ電極E12に正の電荷、ステータ電極E18に負の電荷をそれぞれ発生させれば、ロータ250は反時計回りに回転し始める。次に、ステータ電極E12,E18を中立状態に戻し、再び第30図に示すように、ステータ電極E11に正の電荷、ステータ電極E17に負の電荷をそれぞれ発生させると、ロータ250の回転運動は時計回りに反転する。更に、ステータ電極E11,E17を中立状態に戻し、今度は、ステータ電極E22に正の電荷、ステータ電極E16に負の電荷をそれぞれ発生させれば、ロータ250は更に時計回りに回転し続ける。そこで、ステータ電極E22,E16を中立状態に戻し、再び第30図に示すように、ステータ電極E11に正の電荷、ステータ電極E17に負の電荷をそれぞれ発生させれば、ロータ250の回転運動は反時計回りに反転する。
以上のような駆動動作を行えば、ロータ250は前半周期には反時計回りに回転運動し、後半周期には時計回りに回転運動するようになり、図に矢印で示すように、所定の角度範囲内で反転回転運動(振動)することになる。
しかしながら、ロータ250がこのような反転回転運動を行うと、ロータの振動成分が支持体270を介して基板100へと伝播し、振動が装置筐体へ漏れるという弊害がある点は、既に§4で述べたとおりである。また、こうした振動漏れを防ぐためには、時計回りの回転と反時計回りの回転とが互いにキャンセルし合うような態様で、反転回転運動を行うようにすればよいことも既に説明した。すなわち、4個の重錘体を有するロータの場合、前半周期では第11図に示すように、後半周期では第12図に示すように、それそれ各重錘体ごとに所定の方向に回転を行うようにすればよい。
第29図に示す実施例に対して、このような反転回転運動を適用するには、次のような駆動方法を実施すればよい。まず、第31図に示すように、ステータ電極E11,E14に正の電荷、ステータ電極E17,E20に負の電荷をそれぞれ発生させる。すると、ロータ250側では、重錘体211,213に負の電荷、重錘体212,214に正の電荷が集まる分極現象が起こる。続いて、ステータ電極E11,E14,E17,E20を中立状態に戻し、ステータ電極E12,E13に正の電荷、ステータ電極E18,E19に負の電荷をそれぞれ発生させれば、第32図に示すように、重錘体211,212は反時計回りに、重錘体213,214は時計回りに、それぞれ回転し始める。次に、ステータ電極E12,E13,E18,E19を中立状態に戻し、再び第31図に示すように、ステータ電極E11,E14に正の電荷、ステータ電極E17,E20に負の電荷をそれぞれ発生させると、各重錘体の回転方向は反転する。更に、ステータ電極E11,E14,E17,E20を中立状態に戻し、ステータ電極E15,E22に正の電荷、ステータ電極E16,E21に負の電荷をそれぞれ発生させれば、第33図に示すように、重錘体211,212は時計回りに、重錘体213,214は反時計回りに、それぞれ移動を続ける。そこで、ステータ電極E15,E16,E21,E22を中立状態に戻し、再び第31図に示すように、ステータ電極E11,E14に正の電荷、ステータ電極E17,E20に負の電荷をそれぞれ発生させると、各重錘体の回転方向は反転する。
以上のような駆動動作を行えば、ロータ250を構成する2個の重錘体は時計回り、残りの2個の重錘体は反時計回りに回転することになり、振動成分がロータ250内でキャンセルされ、振動が装置筐体へ漏れるという弊害を防止することができる。なお、この反転回転運動の周波数(振動周波数)として、ロータ250に固有の共振周波数を選択するようにすると、効率よい駆動が可能になる。
§9. Z軸まわりの角速度検出の基本原理
これまで述べてきた角速度センサは、XYZ三次元座標系において、XY平面に平行な基板上で重錘体を回転運動させ、X軸まわりの角速度ωxおよびY軸まわりの角速度ωyを検出するものであった。ここでは、更に、基板に対して垂直なZ軸まわりの角速度ωzを検出する原理を説明する。
第34図は、角速度ωzの検出原理を示す斜視図である。この図に示されている個々の構成要素は、図1に示されている構成要素とほぼ同じである。すなわち、基板10は、平坦な上面11を有し、装置筐体として機能する。XYZ三次元座標系は、この上面11がXY平面に含まれるように定義されており、原点Oから上方に伸びるZ軸は、上面11に直交する軸となる。ここで、所定の質量をもった重錘体20に対して、エネルギー供給手段30からエネルギーを供給し、重錘体20がZ軸を回転軸として図の軌道Cに沿って回転運動するようにする。このとき、この系に対して角速度や加速度などの外力が作用しない状態において、重錘体20が上面11に対して一定の距離hを保ちながら、かつ、Z軸に対して一定の距離rを保ちながら、軌道Cに沿って回転運動するように、エネルギー供給手段30からのエネルギー供給が行われるようにする。したがって、この系に外力が作用していない状態(基板10が静止している状態)では、エネルギー供給手段30からのエネルギー供給を受けて、重錘体20は、方程式Z=hで示される平面内で半径rをもった円軌道C上を回転運動することになる。
この角速度センサは、更に、重錘体20がX軸上空を通過した時点において、Z軸と重錘体20との距離(回転運度の半径)を測定する距離測定手段80を備えている。上述したように、系外からの力が作用しない状態では、重錘体20は常に円軌道Cに沿った運動を行うので、その状態では、距離測定手段80による測定値は、常に一定の半径値rを示すものとなる。
ところが、この系全体がZ軸まわりの角速度ωzをもって回転運動していた場合、別言すれば、基板10に対して角速度ωzが作用していた場合、この角速度に基づくコリオリ力が重錘体20に作用することになり、重錘体20の運動は本来の円軌道Cから外れることになる。すなわち、第34図に示すように、この系全体がZ軸まわりの角速度ωzをもって回転していた場合、X軸上空をY軸方向の速度成分Vyをもって運動している重錘体20に対しては、X軸方向のコリオリ力Fcx(角速度ωzの向きによっては−X軸方向のコリオリ力−Fcx)が作用することになり、このコリオリ力は、
Fcx=2・m・Vy・ωz
なる式で定義される。第34図に示す例では、このコリオリ力Fcxの作用により、Y軸方向に移動中の重錘体20の軌道は、X軸方向に歪められることになり、X軸上空を通過する時点における重錘体20とZ軸との距離はΔrだけ増加もしくは減少(角速度ωzの向きに依存)し、r±Δrとなる。
重錘体20の質量mおよび運動速度Vyを一定にしておけば、コリオリ力Fcxは角速度ωzに比例した値となり、結局、重錘体20がX軸上方を通過する時点における当初の円軌道Cからの隔たりΔrを、角速度ωzを示す値として用いることができる。また、rは一定であるから、重錘体20とZ軸との距離r+Δrを測定することができれば、角速度ωzの値を得ることができる。第34図に示した角速度センサは、このような原理に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを検出する機能を有する。すなわち、距離測定手段80の出力が、角速度ωzの検出値を示すものになる。
以上が角速度ωzを検出するための基本原理であるが、§2で述べたように、実用上は、加速度の影響をキャンセルする機能を設けるのが好ましい。第34図に示す構成では、重錘体20の軌道がX軸方向にΔrだけ変位したとしても、その変位が、コリオリ力Fcxに起因するものなのか、X軸方向の加速度αxに基づく力Faxに起因するものなのかが区別できないのである。
第35図に、この加速度成分をキャンセルする機能をもった角速度センサの基本構成を示す。このセンサでは、一対の重錘体21,22が用意され、いずれの重錘体も、エネルギー供給手段30からのエネルギーの供給を受けて、Z軸を回転軸として半径rの円軌道C上を回転運動する。ただし、図示のとおり、第1の重錘体21が正のX軸上空に位置するときに、第2の重錘体22は負のX軸上空に位置するように、第1の重錘体と前記第2の重錘体とは、互いに位相が180°ずれた状態で回転運動を行う。
また、この角速度センサには、一対の距離測定手段が設けられている。すなわち、正のX軸上距離測定手段81は、いずれかの重錘体が正のX軸上空(第35図において、第1の重錘体21が存在する地点)を通過した時点においてZ軸と通過中の重錘体との距離を測定する機能を有し、負のX軸上距離測定手段82は、いずれかの重錘体が負のX軸上空(第35図において、第2の重錘体22が存在する地点)を通過した時点においてZ軸と通過中の重錘体との距離を測定する機能を有する。更に、正のX軸上距離測定手段81によって測定された距離と負のX軸上距離測定手段82によって測定された距離との和を求めるための演算手段83が備わっており、最終的に、この演算手段83の出力に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzが検出されることになる。
続いて、この角速度センサにおける検出原理および加速度成分がキャンセルされる理由について述べる。いま、第35図に図示されているように、Z=hで示される平面上に含まれる円軌道C上を、互いに位相が180°ずれた状態で一対の重錘体21,22が回転運動を行うように、エネルギー供給手段30からエネルギーが供給されている状態を考える。この状態では、図示のように、第1の重錘体21は正のX軸上空をY軸正方向の速度Vyをもって通過し、それと同時に、第2の重錘体22は負のX軸上空をY軸負方向の速度−Vyをもって通過する。このとき、もしこの系全体に対して、Z軸まわりの角速度ωzが作用していたとすると、第1の重錘体21に対しては、X軸正方向のコリオリ力Fcxが加わり、第1の重錘体21は当初の円軌道Cから外側(Z軸から遠ざかる方向)に外れる。一方、第2の重錘体22に対しては、X軸負方向のコリオリ力−Fcxが加わり、第2の重錘体22は当初の円軌道Cから外側に外れる。
いま、第1の重錘体21と第2の重錘体22とが、全く同一の形状を有し、全く同一の質量を有していたとする。ここで、両者は常に180°の位相差を保って回転運動をしているのであるから、回転運動の速度の絶対値も両者は同じになる。したがって、両重錘体に作用するコリオリ力の絶対値は同じになり、第1の重錘体21がΔrだけ円軌道Cから外側に外れ、Z軸からの距離r+Δrの位置を通過したとすれば、第2の重錘体22もΔrだけ円軌道Cから外側に外れ、Z軸からの距離r+Δrの位置を通過することになる。したがって、演算手段83からは、これらの和に相当する2r+2・Δrが出力される。予め、外力が作用していない状態での演算手段83の出力値2rを基準値として定めておけば、この基準値2rとの差2・ΔrがZ軸まわりの角速度ωzを示す値になる。なお、作用した角速度ωzの向きが逆の場合、コリオリ力の向きは逆転し、2つの重錘体21,22はいずれも当初の円軌道Cから内側に外れることになる。この場合、演算手段83からの出力は2r−2・Δrになる。したがって、演算手段83から得られる出力信号の符号は角速度ωzの向きを示し、出力信号の大きさは角速度ωzの大きさを示すものとなる。
ここで、この系全体に対して加速度が作用していた場合を考える。Z軸方向の加速度αzに基づいて生じる力FazおよびY軸方向の加速度αyに基づいて生じる力Fayは、いずれもX軸方向のコリオリ力Fcxに対して直交しているため、この測定系に干渉することはない。ところが、X軸方向の加速度αxに基づいて生じる力Faxは、コリオリ力Fcxと同じ方向を向いているため、干渉の影響を考えねばならない。実際、第34図に示す単一の重錘体20を用いた測定系では、この加速度αxに基づいて生じる力Faxが、角速度ωzの検出値に干渉することになる。しかしながら、一対の重錘体21,22を用いた第35図に示す測定系では、この干渉はキャンセルされることになる。なぜなら、加速度αxに基づいて生じる力Faxが作用すると、2つの重錘体21,22は、いずれもX軸正方向に変位Δxを生じることになるため、正のX軸上距離測定手段81の出力はΔxだけ増加するが、負のX軸上距離測定手段82の出力はΔxだけ減少する。したがって、演算手段83の出力は、加速度αxの作用に起因して変化することはないのである。
このように、互いに位相が180°ずれた状態で回転運動を行う一対の重錘体を用いることにより、加速度成分をキャンセルすることが可能になる。
なお、上述の説明では、正のX軸上距離測定手段81および負のX軸上距離測定手段82と、を用いて、重錘体がX軸を通過する時点に測定を行っているが、正のY軸上距離測定手段および負のY軸上距離測定手段を用いて、重錘体がY軸を通過する時点に測定を行っても同様に角速度ωzの検出が可能である。もちろん、X軸やY軸に限らず、重錘体が任意の軸上を通過する時点で角速度ωzの測定を行うことも可能である。
§10. 三次元角速度センサの具体的な実施例
§5では、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを同時に検出できる二次元角速度センサの具体的な実施例を説明した。ここでは、この二次元角速度センサに§9で述べた原理を適用することにより、X軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωzのすべてが検出可能な三次元角速度センサを実現した実施例を説明することにする。
第36図は、この三次元角速度センサの平面図であり、第37図は、このセンサをX軸に沿って切断した状態を示す側断面図である。この三次元角速度センサの構造は、§5で述べた二次元角速度センサ(第13図〜第16図参照)の構造とほぼ同じであるため、ここでは両者の相違点のみを述べることにする。両者間に共通の構成要素については、同一符号で示すことにし、詳しい説明は省略する。
この三次元角速度センサの第1の特徴は、一部分が伸縮性を有する構造をもったロータ400を用いた点である。ロータ400は、第38図の平面図に明瞭に示されているように、4個の重錘体411〜414を4本のアーム421−424によって、中心部材425に接続した構造をなす。ここで、4本のアーム421−424は、図示のとおりジグザグ構造を有し、伸縮性を有している。したがって、各重錘体411−414に対して、中心部材425から離れる方向の力もしくは中心部材425に近付く方向の力が作用した場合、重錘体は作用した力の方向に変位することが可能である。各重錘体411−414の下面に、それぞれ移動電極431−434が形成され(電極433,434は図示されていない)、中心部材425の下面に電極435が形成されている点は、前述した二次元角速度センサと同様である。
この三次元角速度センサの第2の特徴は、基板上の固定電極の形状および配置を若干変更した点と、角速度ωzを検出するために、新たな固定電極を付加した点である。第39図は、第36図に示す角速度センサのストッパ131を除去し、ロータ400を取り外した状態を示す平面図である。基板100上に配置されている固定電極145A−148A,145B−148Bは、第16図に示されている固定電極141A−144A,141B−144Bと全く同等の機能(すなわち、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを検出する機能)を果たす固定電極であるが、個々の電極の面積は若干小さくなっている。このように面積を小さくしたのは、ロータ400を構成する4本のアーム421−424が伸縮性を有するため、各重錘体411〜414がこのアームの伸縮性に基づいて多少変位しても、形成される容量素子の面積に変化が生じないようにするためである。一方、固定電極145C,145D,146C,146Dは、Z軸まわりの角速度ωzを検出するために付加された電極である。検出回路330は、基板100上に配置された合計12個の固定電極と、ロータ400側(各重錘体の下面)に形成された移動電極とによって構成される容量素子の静電容量値を検出する回路であり、この回路の出力として、三次元角速度ωx,ωy,ωzの検出値が出力されることになる。
このセンサによる角速度ωxおよびωyの検出原理は、既に§7で述べたとおりである。ここでは、角速度ωzの検出原理を以下に説明する。第40図は、重錘体411および412がX軸上空を通過する瞬間において形成される容量素子を示す平面図である。ここで、破線の矩形で示す構成要素431,432は、それぞれ重錘体411,412の下面に形成された移動電極を示し、構成要素420は両重錘体を接続する伸縮性をもった中間部材を示している。基板100上に配置された各固定電極の上空に、図に破線で示すような移動電極431,432が位置すると、対向する電極によってそれぞれ容量素子が形成される。すなわち、固定電極145A,145B,145C,145Dと移動電極431とによって、容量素子C1A,C1B,C5C,C5Dが形成され、固定電極146A,146B,146C,146Dと移動電極432とによって、容量素子C2A,C2B,C6C,C6Dが形成される。ここで、容量素子C1A,C1B,C2A,C2Bを用いて、第26図の左半分に示す回路を構成すれば、X軸まわりの角速度ωxが検出できることは既に述べたとおりである。ここでは、容量素子C5C,C5D,C6C,C6Dを用いて、Z軸まわりの角速度ωzが検出できることを示そう。
いま、このセンサに外力が作用しない状態において、ロータ400が一定速度で回転運動を行っている場合を考える。そして、この定常状態において、重錘体411,412がX軸上空を通過する瞬間に、各固定電極と各移動電極とが第40図の平面図に示すような位置関係を保つように、各固定電極が配置されていたものとする。この場合、各固定電極のうち、ハッチングを施した部分が移動電極に対向した部分となる。別言すれば、容量素子は、このハッチングを施した領域にのみ形成されることになる。ここで留意すべき点は、角速度ωx検出用の固定電極145A,145B,146A,146Bは、いずれも全面にハッチングが施され、全面が容量素子の形成に関与するのに対し、角速度ωz検出用の固定電極145C,145D,146C,146Dは、いずれも図の左半分にのみハッチングが施されている点である。要するに、固定電極145A,145B,146A,146Bは、Y軸に対して対称になる位置に形成されているのに対し、固定電極145C,145Dは、外側(Z軸から遠ざかる方向)に所定のオフセット量だけシフトした位置に形成され、固定電極146C,146Dは、内側(Z軸に近付く方向)に所定のオフセット量だけシフトした位置に形成されていることになる。
さて、ここで、このセンサ全体にZ軸まわりの角速度ωzが作用した場合を考える。既に、§9で説明したように、角速度ωzが作用すると、各重錘体411−414には円運動の半径方向に沿ったコリオリ力が加わる。ロータ400では、各重錘体が伸縮性を有する中間部材420(アーム421−424)によって接続されているため、このコリオリ力により、重錘体の軌道は外側(角速度ωzの向きによっては内側)に変化することになる。たとえば、各重錘体の軌道が外側に変化したとすれば、X軸周辺の固定電極と移動電極との位置関係は第41図のようになる。すなわち、正のX軸上空を通過中の移動電極431は、X軸正方向のコリオリ力Fcxの作用により、X軸正方向に所定量Δrだけ変位することになり、負のX軸上空を通過中の移動電極432は、X軸負方向のコリオリ力−Fcxの作用により、X軸負方向に所定量Δrだけ変位することになる。
移動電極の位置がこのように変位した場合、X軸まわりの角速度ωxの検出に用いられる固定電極145A,145B,146A,146Bによって構成される容量素子の電極面積(図のハッチング部分の面積)には、変化は生じない。逆に言えば、中間部材420の伸縮に基づいて、重錘体の軌道が円運動の半径方向へ変位しても、固定電極145A,145B,146A,146Bは、常にその全面積が移動電極に対向した状態になるように配置されていることになる。このため、Z軸まわりの角速度ωzは、X軸まわりの角速度ωxの検出には干渉しない。同じ理由により、Z軸まわりの角速度ωzは、Y軸まわりの角速度ωyの検出にも干渉しない。
一方、Z軸まわりの角速度ωzの検出に用いられる固定電極145C,145D,146C,146Dによって構成される容量素子の電極面積(図のハッチング部分の面積)には、変化が生じている。ここで、固定電極145C,145D,146C,146Dと移動電極431,432とによって構成される容量素子を、それぞれ容量素子C5C,C5D,C6C,C6Dと呼ぶことにすると、第41図に示す状態では、容量素子C5C,C5Dは電極面積の増加によって静電容量値は増加し、容量素子C6C,C6Dは電極面積の減少によって静電容量値は減少することになる。
ところで、静電容量値の測定のために、回転運動を行うロータ400に対して配線を行うことは困難であるが、それぞれ一対の固定電極を形成しておくことにより、上述した各静電容量の値は、基板100側に配線を行っておくだけで測定可能になる。すなわち、直列接続された一対の容量素子C5C,C5D全体を1つの容量素子C5とみなし、直列接続された一対の容量素子C6C,C6D全体を1つの容量素子C6とみなせば、容量素子C5の静電容量値は固定電極145Cと145Dとの間の静電容量値として測定でき、容量素子C6の静電容量値は固定電極146Cと146Dとの間の静電容量値として測定できる。
第42図は、角速度ωzを検出するための具体的な回路構成例を示す回路図である。容量素子C5,C6の静電容量値は、静電容量値Cを電圧値Vに変換する機能をもったC/V変換回路331,332によって、それぞれ電圧値V5,V6に変換され、差動増幅器333によって、電圧値V5とV6との差が演算されて出力される。この出力電圧は、作用したコリオリ力の符号を考慮した差(Fcx−(−Fcx))を示すものになり、作用したZ軸まわりの角速度ωzに相当する値になる。
なお、加速度が作用する環境下であっても、差動増幅器333の出力電圧が加速度による影響を受けることはない。たとえば、X軸方向の加速度αxが作用した場合、第43図に示すように、加速度αxに基づく力Faxにより、移動電極431,432がともにX軸方向に変位することになるが、容量素子C5C,C5D,C6C,C6Dの電極面積は、いずれも同じ量だけ増加するため、差動増幅器333によって差分をとることにより、この増加分はキャンセルされることになる。また、Y軸方向の加速度αyが作用した場合、移動電極431,432はY軸方向に若干変位することになるが、容量素子C5C,C5D,C6C,C6Dの電極面積には変動はなく、これら各容量素子の静電容量値に影響はない。更に、Z軸方向の加速度αzが作用した場合、容量素子C5C,C5D,C6C,C6Dの電極間隔が、いずれも同じ量だけ増減するため、静電容量値も同じ量だけ増減することになる。しかしながら、差動増幅器333によって差分をとることにより、この増減分はキャンセルされることになる。
第35図に示した基本原理によれば、加速度成分をキャンセルするために、正のX軸上距離測定手段81の出力と負のX軸上距離測定手段82の出力との和を演算手段83によって求めていた。それに対し、ここに示す実施例では、加速度成分をキャンセルするために、差動増幅器333を用いて差を求めている。このように、前者では和を求め、後者では差を求めているが、両者は原理的には等価である。すなわち、前者では距離rに関する和を求めているのに対し、後者では静電容量値Cの差を求めているのであり、このように両者で取り扱いが異なるのは、同じ現象に対して、距離rの増減と静電容量値Cの増減とはそのふるまいが異なるため当然である。たとえば、第40図の状態における重錘体の円運動半径をrとし、第41図の状態における重錘体の円運動半径をr+Δrとする。第35図に示した基本原理によれば、位相が180°ずれた一対の重錘体の中心軸からの距離の和に基づいてZ軸まわりの角速度ωzを求めることになる。したがって、距離の和は、第40図の状態では「2r」であったのに、第41図の状態では「2r+2Δr」となっており、両状態の変動分である「2Δr」が作用した角速度ωzを示す値となる。ところが、この実施例における電極配置によれば、静電容量値Cの増減は、必ずしも距離rの増減には一致しない。すなわち、第41図を見ればわかるように、容量素子C5C,C5Dの容量値は距離rの増加によって増加するのに対し、容量素子C6C,C6Dの容量値は距離rの増加によって減少する。このため、第42図に示す回路図では、差動増幅器333によって、容量値C6に対応する電圧値V6の符号を反転させているのであり、差動増幅器333の行っている「静電容量値Cの差を求める演算」は、「距離rの和を求める演算」と等価である。
§11. 三次元角速度センサの変形例
第44図は、§10で述べた三次元角速度センサの変形例を示す側断面図である。このセンサは、§10で述べたセンサのロータ400を、ロータ450に置き換えたものである。ロータ400とロータ450との相違点は、重錘体411−414を接続するための伸縮性をもったアームの構造だけである。すなわち、ロータ400で用いられていたアーム421−424は、上面から見たときにジグザグの構造を採っていたが、第44図に示す変形例のロータ450では、側面から見たときにジグザグの構造を有するアーム441−444(アーム443,444は図示されていない)が用いられている。
伸縮性をもったアームとしては、この他にも種々の構造のものを利用することが可能であり、たとえば、コイルスプリング状のアームを用いてもかまわない。ただ、半導体基板にマイクロマシニング技術を利用してロータを形成する場合には、これまで述べた例のように、板ばねをジグザグ構造にしたものを用いると製造が容易である。
第45図は、§10で述べた三次元角速度センサにおけるロータを、反転回転運動させる構造にした変形例である。ロータ500は、第44図に示すロータ450とほぼ同じ構造を有する。すなわち、4個の重錘体511−514が、側面から見たときにジグザグの構造を有するアーム541−544によって中心部材560に接続されている(重錘体513,514,アーム543,544は図示されていない)。重錘体511−514および中心部材560の下面には、移動電極531−534,565が形成され(移動電極533,534は図示されていない)、中心部材560は電極565および支持体570を介して基板100上に固着されている。支持体570は、Z軸まわりに捩じれを生じることができる構造を有し、ロータ500は§8で述べたような反転回転運動を行うことが可能になる。このセンサの動作は、ロータ500が反転回転運動を行う点を除いて、§10で述べたセンサの動作と全く同じであり、ここでは詳しい説明は省略する。
産業上の利用可能性
本発明に係る角速度センサを被測定対象物に装着すると、この対象物に作用するX軸まわりの角速度ωxおよびY軸まわりの角速度ωyを同時に検出することが可能になり、しかも加速度成分の影響を受けない正確な検出値を得ることが可能になる。この角速度センサは、マイクロマシニング技術および半導体技術を利用して製造することが可能であり、小型化および大量生産に適している。したがって、産業用機械、産業用ロボット、自動車、航空機、船舶などに搭載し、運動状態の認識、あるいは運動に対するフィードバック制御を行う上でのセンサとして広く利用できるものである。また、カメラの撮影時における手振れを補正する制御にも利用できる。
Claims (8)
- XYZ三次元座標系におけるXY平面に沿った上面を有する基板と、
基板上面に直交するZ軸を回転軸として前記基板上面に対して非接触の状態で回転運動を行う第1の重錘体および第2の重錘体と、
外力が作用しない状態において、前記第1の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、正のX軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給するとともに、前記第2の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、負のX軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給するエネルギー供給手段と、
前記第1の重錘体が正のX軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第1の重錘体との距離を測定する正のX軸上方距離測定手段と、
前記第2の重錘体が負のX軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第2の重錘体との距離を測定する負のX軸上方距離測定手段と、
を備え、
前記正のX軸上方距離測定手段によって測定された距離と、前記負のX軸上方距離測定手段によって測定された距離と、に基づいて、前記基板に作用したX軸まわりの角速度を検出する機能を有し、
前記正のX軸上方距離測定手段は、前記基板上面の正のX軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第1の固定電極対と、前記第1の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第1の重錘体の下面に形成された第1の移動電極と、前記第1の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第1の検出回路と、を有し、前記第1の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第1の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第1の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有し、
前記負のX軸上方距離測定手段は、前記基板上面の負のX軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第2の固定電極対と、前記第2の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第2の重錘体の下面に形成された第2の移動電極と、前記第2の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第2の検出回路と、を有し、前記第2の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第2の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第2の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有することを特徴とする角速度センサ。 - 請求項1に記載の角速度センサにおいて、
エネルギー供給手段が、第1の重錘体の反転回転運動の回転方向と第2の重錘体の反転回転運動の回転方向とが同じになるように各重錘体に対するエネルギーの供給を行うようにし、
正のX軸上方距離測定手段によって測定された距離と負のX軸上方距離測定手段によって測定された距離との差を求める差分演算手段を設け、この差分演算手段によって求めた差に基づいて、基板に作用したX軸まわりの角速度を検出することを特徴とする角速度センサ。 - 請求項2に記載の角速度センサにおいて、
基板上面に直交するZ軸を回転軸として前記基板上面に対して非接触の状態で回転運動を行う第3の重錘体および第4の重錘体と、
外力が作用しない状態において、前記第3の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、正のY軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給するとともに、前記第4の重錘体が、前記基板上面に対して一定の距離を保ちつつ、負のY軸を時計回りの方向へ横切るような回転と反時計回りの方向へ横切るような回転とを交互に繰り返す反転回転運動を行うようにエネルギーを供給し、かつ、前記第3の重錘体の反転回転運動の回転方向と前記第4の重錘体の反転回転運動の回転方向とが同じになるように各重錘体に対するエネルギーの供給を行うエネルギー供給手段と、
前記第3の重錘体が正のY軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第3の重錘体との距離を測定する正のY軸上方距離測定手段と、
前記第4の重錘体が負のY軸上空を通過した時点において前記基板上面と通過中の前記第4の重錘体との距離を測定する負のY軸上方距離測定手段と、
前記正のY軸上方距離測定手段によって測定された距離と前記負のY軸上方距離測定手段によって測定された距離との差を求める差分演算手段と、
を更に備え、前記差に基づいて、前記基板に作用したY軸まわりの角速度を検出する機能を有し、
前記正のY軸上方距離測定手段は、前記基板上面の正のY軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第3の固定電極対と、前記第3の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第3の重錘体の下面に形成された第3の移動電極と、前記第3の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第3の検出回路と、を有し、前記第3の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第3の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第3の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有し、
前記負のY軸上方距離測定手段は、前記基板上面の負のY軸の近傍に互いに隣接して配置された一対の電極からなる第4の固定電極対と、前記第4の固定電極対を構成する一対の電極の双方に対向可能となるように前記第4の重錘体の下面に形成された第4の移動電極と、前記第4の固定電極対を構成する一対の電極間の静電容量値を電気的に検出する第4の検出回路と、を有し、前記第4の固定電極対を構成する一対の電極のそれぞれと前記第4の移動電極とによって構成される一対の容量素子を直列接続して得られる容量素子の静電容量値を前記第4の検出回路によって検出することにより距離の測定を行う機能を有することを特徴とする角速度センサ。 - 請求項3に記載の角速度センサにおいて、
第1の重錘体および第2の重錘体の反転回転運動の回転方向と、第3の重錘体および第4の重錘体の反転回転運動の回転方向と、が常に逆向きになるように設定したことを特徴とする角速度センサ。 - 請求項3または4に記載の角速度センサにおいて、
第1の重錘体が正のX軸上空に位置するときに、第2の重錘体が負のX軸上空に位置し、第3の重錘体が正のY軸上空に位置し、第4の重錘体が負のY軸上空に位置するように、前記第1の重錘体、前記第2の重錘体、前記第3の重錘体、前記第4の重錘体を中間部材を介して結合したことを特徴とする角速度センサ。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
Z軸まわりに捩じれを生じることができる材質からなる支持体を基板上面に固着し、各重錘体をこの支持体によって支持するようにしたことを特徴とする角速度センサ。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
用いる複数の重錘体の形状および質量を同一にしたことを特徴とする角速度センサ。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
各重錘体の少なくとも一部分を誘電体で構成し、
エネルギー供給手段を、前記重錘体の回転運動経路に沿って配置した複数の電極と、これら複数の電極に対してそれぞれ位相の異なる交流電圧を供給する電圧供給回路と、によって構成したことを特徴とする角速度センサ。
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