JP4010888B2 - 屋根構造及び屋根工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋根技術に関し、特に雨水を屋根勾配方向に対して交差方向に流すことを特徴とする技術である。
【0002】
【従来の技術】
一般的な屋根は、屋根面を斜めに設けて屋根勾配を形成し、雨水を屋根勾配に沿って流す。屋根面を流れ落ちた雨水は、谷樋や軒樋に集め、さらに竪樋を通して地上側に排水される。
【0003】
谷樋や軒樋の許容流量は、降雨量を想定して設定されており、規格品が市販されていない場合がある。しかし、集中豪雨などの異常降雨時には、谷樋や軒樋が溢れて、樋排水では間に合わない場合がある。かかる場合には、雨水が谷樋や軒樋に集中し、谷樋や軒樋から溢れた雨水は、樋と屋根の隙間から壁面内に至り、壁面に浸透する場合もある。
【0004】
特に、工場などのように屋根面積が大きくなる場合には、屋根面積が大きくなる分、屋根面での雨水の集水量が増大し、特段の異常降雨時以外でも、谷樋や軒樋が溢れる状況となる場合が見られる。かかる事態を避けるため、大型の谷樋や軒樋を特注したり、竪樋の数を増やす場合がある。
【0005】
大規模工場の屋根構造としては、例えば、鋸屋根構造がよく知られている。鋸屋根構造では、両翼の傾斜した屋根面の屋根勾配の下側の会合する部分に、両翼の屋根面から流れ落ちる雨水を流す谷樋が設けられている。しかし、かかる谷樋が十分に機能せず、雨水が溢れた状態となり、その状態で工場内側、天井側などに漏水する場合も往々にして見られる。谷樋は、一般の軒樋のように大型の樋を設けたり、竪樋を増やしたりすることが困難である。それは、竪樋が建物の内部に位置してしまうことによる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来の屋根構造では、異常豪雨などの場合に、十分な樋機能を果たすことができなく、最悪の場合には、雨水の建屋内部への溢水などの障害が発生していた。特に、大規模な工場などの屋根では、屋根面積が一般の建物の場合と比べて格段に広いために、屋根の形式は鋸屋根となって、谷樋が必要となり、軒樋と谷樋の構造的な違いから、建物内部への溢水現象も大きなものとなりがちである。
【0007】
また、軒樋や谷樋は、従来構造の建屋に対して、平均的な降雨での雨水の捌けが行えるに十分な水勾配が設けられているが、しかし、かかる水勾配は、僅かなものであり、一見した程度では、殆ど気付かない程度の僅かな勾配で、建屋に沿って水平に見えるものである。
【0008】
かかる軒樋や谷樋に、雨水の排水性を向上させるために、水勾配を大きくして排水させる方法も考えられなくもないが、排水性の向上とはいえ、軒樋を見た目にも分かる程度に傾斜を設けることは、デザイン性が特に重視される一般住宅へ適用するのは難しい。
【0009】
また、工場などの機能性重視の建屋であっても、谷樋に大きな傾斜を設けることは簡単には行い難い。一般住宅とは異なりある程度のデザイン的配慮は、我慢できるものの、屋根構造を支持する鉄骨構造の梁が水平に設けられているため、谷樋の水上側を水下側に比べて高く設けるためには水上側の嵩上げ施工が必要となり、従来施工とは異なる施工が求められ、簡単には対処できるものではない。
【0010】
そこで、本発明者は、屋根面からの雨水を、建屋に対してほぼ水平に設けられ、十分な水勾配を付けにくい軒樋や谷樋に集中させることなく、効率的に排水できる屋根構造の技術開発が必要と考えた。
【0011】
また、かかる屋根構造は、新規建築の場合に限らず、既存の建屋の屋根に適用できればより好ましい。実際に雨水の効率的排水ができず問題が発生している既存の屋根の修復が行えるようにすることも必要である。壁面へ浸透した水は、日本のような湿気の多い環境では、簡単には乾燥させることができず、長期的には、家屋の痛みを助長することとなる。
【0012】
そこで、かかる問題が発生している既存屋根にも簡単に適用できる構成が強く望まれる。リフォーム時などで屋根改修が必要となった場合に適用できる構成が好ましい。
【0013】
屋根改修においては、元の屋根を撤去することなく、既存屋根をカバーで覆って改修する方法は、既に知られている。かかる方法では、既存の屋根部材の撤去が不要であり、その分、施工の手間と必要コストの低減が図れる。
【0014】
例えば、スレート葺き構成の鋸屋根の工場などでは、経年劣化によりスレート屋根材の割れ、ヒビなどが発生し、広い屋根面積の所々でかかる割れなどの障害が発生する。都度の発生箇所を修復する程度では間に合わず、手間もかかるため、スレート葺き構造の屋根を全体的に改修する場合がある。
【0015】
一般的には、かかる改修では、トタンなどの金属板により、スレート葺き構造の屋根面全体を覆う構成が採用される。しかし、既存の屋根構造を金属板で覆った従来構成の改修屋根の場合では、上記軒樋や谷樋に係る雨水排水の問題は何ら解消されていなかった。
【0016】
本発明の目的は、屋根面の雨水を樋部分で溢れさせることなく排水できるようにすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、建物の屋根構造であって、勾配を有する屋根面に取り付けられ、凹凸が交互に繰り返され凹部が屋根の雨水を流す樋機能部としての溝を形成する屋根材を有し、前記屋根材を前記樋機能部としての前記溝が屋根勾配方向に対して90度未満の交差角度で交差配置となるように前記屋根面に設けることを特徴とする。
【0018】
上記いずれかの屋根構造において、前記樋機能部を設けた前記屋根面は、既存の屋根の上に、前記樋機能部を有する前記屋根材で覆って形成するようにしてもよい。
【0019】
本発明は、勾配を有する屋根面に屋根材を取り付ける屋根工法であって、凹凸が交互に繰り返され凹部が屋根の雨水を流す樋機能部としての溝を形成する屋根材を、前記溝が屋根勾配方向に対して90度未満の交差角度で交差配置となるように前記屋根面に設け、屋根の一部または全部を形成することを特徴とする。
【0021】
本発明では、上記の如く、屋根面の雨水などの水を、屋根勾配方向に流すのではなく、屋根勾配方向に対して交差方向に流すように構成して、従来構成の軒樋、谷樋に雨水が集中するのを防ぐ構成としている。
【0022】
すなわち、屋根面に降った雨水を、屋根面を略斜め横方向に流すこととなる。屋根面をこのようにして斜め横方向にながされた雨水は、屋根端部で、屋根の傾斜に合わせて勾配を設けた樋(以下、屋根樋と呼ぶ)で受けて、地上側に排水すればよい。
【0023】
屋根樋は、屋根端部の屋根勾配に合わせて傾斜させられているので、従来の一見水平に見える軒樋、あるいは谷樋に比べて格段の急傾斜を有することとなり、極めて速やかに雨水の排水が行える。
【0024】
また、かかる屋根樋は、屋根勾配に合わせて設けておけばよく、屋根の稜線と屋根樋とが並行した空間配置となり、稜線と屋根樋を示す両直線が交差することなく、デザイン的に安定した印象を与える。例えば、ほぼ水平に設けられている従来構成の軒樋を、急傾斜の軒樋にする場合に比べて、見た目の印象を安定したものとすることができる。
【0025】
すなわち、屋根樋の採用は、住宅デザイン上の違和感を与えることなく、雨水の排水効率の向上が図れる構成と言える。
【0026】
屋根面の雨水を横方向に流すのは、溝を設けた屋根材を、その溝が屋根勾配方向に対して交差方向に、すなわち横切るように設けることで行える。屋根勾配方向に対して雨水を流すに際しては、上記溝が樋機能を果たすこととなるが、かかる樋機能を果たす溝を複数設けるようにすれば、雨水の樋機能を複数の溝に分散させることができ、溝部分での溢水現象を発生させないようにすることができる。
【0027】
複数本の樋機能部は、屋根面に平均的に設ければ、上記雨水の樋機能も平均的負荷となり、より溢水現象の発生を抑えることができる。
【0028】
なお、本発明の上記構成は、従来構成の軒樋、谷樋と代替できるものではあるが、しかし、従来構成の軒樋、谷樋と併存させた構成を採用しても構わない。
【0029】
また、本発明の前記構成は、樋機能を有する溝を設けた屋根材を、その溝が屋根勾配に対して交差方向となるように設ければよいため、既存の屋根構造の上に設けることもできる。
【0030】
そのため、本発明の構成は、新規着工に基づく新築建物は勿論、既存の屋根材を存続させた状態でその上に設けることで、既存建物の屋根改修技術としても採用することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、本発明に係る屋根構造の一例を示す斜視図であり、(b)はカバープレートの一例を示す斜視図である。図2は本発明の屋根構造の構成に使用する溝構造材を示す斜視図である。
【0032】
本発明の屋根構造10は、図1(a)に示すように、工場の既存の鋸屋根上に、あるいは、新築屋根として母屋の上に、屋根材としての溝構造材11を設けて構成されている。
【0033】
溝構造材11は、図2に示すように、凹凸が交互に繰り返され、複数の凹部が屋根の雨水を流す樋として機能する、所謂樋機能部としての溝12に形成されている。なお、図2では、凹凸の繰り返し状況を左右で中断させて、図示を省略している。
【0034】
溝構造材11の材質は、屋根葺き材に使用できる性状を有するものであればどのような材質を使用しても構わない。例えば、プラスチック材、ゴムなどの樹脂材、金属材、スレートなどの無機材など種々の材料を使用することができる。
【0035】
金属材としては、より詳細には、例えば、亜鉛メッキ鋼板、樹脂塗布亜鉛メッキ鋼板、ステンレス、鋼板、塗装鋼板、アルミニウムなどを使用することができる。
【0036】
かかる溝構造材11は、図3に示すように、棟木方向に対して直交して下る方向を屋根勾配方向Aとすると、屋根面a上で、この屋根勾配方向Aに対して溝方向Bが交差するように設けられている。交差角をαとすると、α<90度と設定すればよい。
【0037】
交差角αの設定は、溝12に水勾配として、例えば、0.1度以上、90度未満の水勾配が付けられるように設定しておけばよい。
【0038】
なお、図3では、屋根面aを分かりやすく平板状に略記し、屋根勾配Aを屋根勾配の水上側から水下側への矢印で示した。
【0039】
このように溝方向Bを屋根勾配方向Aに対して交差方向に設けることで、溝12には水勾配が設定される。図3に示す交差状況であれば、図3の紙面に向かって左側が溝12における水勾配の水上側で、右側が水下側となる。
【0040】
図3では、交差角αを90度未満として設定してあるため、溝12自体に水勾配が設けられていなくても、溝構造材11の取り付けにより溝12が斜めに取り付けられて水勾配が溝12に発生するようになっている。
【0041】
例えば、図2に示す溝構造材11の段階で、一端側から他端側に水勾配を設けるように溝12を形成しておけば、既存の屋根上に、あるいは、母屋上に、溝構造材11を設けるに際して、屋根勾配方向Aと溝方向Bとの交差角αを、90度と設定することもできる。
【0042】
さらに、図2に示す溝構造材11の溝に当初から水勾配を設けておかなくても、溝構造材11を既存の屋根上に、あるいは、母屋上に設けるに際して、屋根の一端側を他端側より嵩上げするなどして溝12に水勾配を設けるようにすれば、上記構成と同様に、屋根勾配方向Aと溝方向Bとの交差角αを90度に設定することができる。
【0043】
図1に示す屋根構造10では、樋機能部としての溝12の水勾配の水下側は紙面手前側となる。また、紙面手前側となる水下側では、屋根端部に沿って屋根勾配に合わせた屋根樋13が設けられている。
【0044】
図1の紙面左側に示す場合には、両翼の片流れ屋根の水下側が合流した構造の、すなわち、左右両翼の屋根の屋根勾配の水下側が谷部で出会う屋根構造となっており、両翼の屋根端部に沿って設けた屋根樋13が谷部側で合流し、竪樋14に連絡されている。
【0045】
このようにして溝構造材11を設けることにより形成した屋根構造10では、降雨時の雨水は、屋根材としての溝構造材11の溝12に流れ込み、溝12を樋機能部として、図中、水の流れ方向として示した矢印方向に向けて雨水が流れることとなる。
【0046】
このように屋根面を流れた雨水は、屋根端部に設けた屋根樋13に流れ込み、屋根樋13を下って、竪樋14から地上側に排水されることとなる。屋根樋13には、屋根勾配に合わせた急傾斜がつけられているため、流れ込んできた雨水は一気に水下側の竪樋14に流れ込み、さらに竪樋14から地上側に流れ落ちる。
【0047】
また、屋根構造10では、屋根面に樋機能部としての溝12が複数設けられているため、屋根面の雨水は、最寄りの溝12に流れ込み、屋根面全体の雨水が一本の軒樋に集中するような従来構成とは異なり、樋機能が複数本の溝12に分散されることとなる。このようにして樋機能を分散させることにより、各溝12での溢水障害は回避され、溢水に基づく漏水などの障害を未然に防止しながら、屋根面の雨水などの排水を行うことができる。
【0048】
このようにして屋根面に設けた樋機能部としての溝12で、溝部における溢水を起こさずに、屋根勾配方向に対して交差方向に流された水は、屋根面に設けた複数の樋機能部としての溝12から、屋根樋13で集水されることとなる。しかし、従来構成の軒樋とは異なり、屋根樋13では屋根勾配に合わせた急角度の水勾配が設けられているため、複数本の溝12から雨水が流れ込んでも溢れることとなく一気に排水させることができる。
【0049】
また、屋根樋13から樋のつまりなどで水が溢れる可能性も考えられなくはないため、かかる場合の対策としては、溢れた水を建屋外にオーバーフローさせるようにして、建屋内への漏水回避を考慮するように構成すればよい。オーバーフローさせる構成としては、例えば、屋根樋13の側面に溢水用の孔を開けておく構成が考えられる。屋根樋13の水位が上昇した場合に、溢水用の孔から異常増水した雨水が建屋外に放流され、樋上面から水が溢れないようにすることができる。
【0050】
図1の紙面右側に示す屋根構造では、切り妻屋根に、本発明の屋根構造10を適用した場合を示している。図1の紙面左側への片流れ屋根への屋根構造10の適用と同様に、図2に示す溝構造材11を切り妻屋根の左右の屋根面に、溝12の水勾配が紙面手前の屋根樋13に向けて形成されるように、屋根勾配方向Aに対して交差方向に通して設けられている。
【0051】
雨水の流れ方向は、図中の太矢印で示すように、複数本の溝12を樋機能部として通って、屋根樋13に至り、屋根樋13から竪樋14を通って一気に地上側に雨水の排水が行われる。かかる切り妻形式の屋根においても、本発明の屋根構造10の効果は、前記谷部で両翼の片流れ屋根が合流する構造の屋根と同様の効果が、すなわち、複数本の溝12に雨水が分けられる樋機能の分散効果、屋根樋13の急傾斜に基づく迅速排水の効果などが得られる。
【0052】
また、片流れ屋根構造でも、切り妻屋根構造でも、屋根構造10を構成する溝構造材11は、溝12の方向が、図3に示すように、屋根勾配方向に対して交差方向に設けられているため、溝構造材11の屋根勾配の水上側(棟木側),水下側(軒樋側)では、図4に略記するように、溝12が途中で切断されたような極めて不規則な形状となる。
【0053】
すなわち、複数本の溝12のうち、一部は、溝12の一端側が屋根樋13に通じず、軒樋側に外れる場合が発生する。かかる屋根樋13に通じない溝12をそのまま活かしておくと、水勾配を十分に設定できない軒樋、あるいは谷樋などに雨水が流れ込むこととなる。
【0054】
そこで、かかる流れ込みを防止するために、溝12の一端側から屋根樋13に通じない溝12を樋機能部として使用しないように、図1に示すように、水下側を水下側カバープレート15aで覆った。
【0055】
片流れ屋根の屋根勾配の水下側は、両翼の片流れ屋根の出会う谷部分、谷樋が形成される部分に雨水が入らないように覆う水下側カバープレート15aが設けられている。水下側カバープレート15aは、溝方向の上流側に向けて裾広がりの略三角形状、あるいは略台形状に形成されることとなる。
【0056】
一方、切り妻屋根においても、鋸屋根構造の工場の壁面16に向かう側は、上記と同様の屋根樋13に通らない溝12ができるため、水下側カバープレート15aが設けられている。
【0057】
一方、切り妻屋根の頂部側に相当する屋根勾配の水上側の不規則形状部分も、図1に示すように、溝方向の上流側に向けて裾窄まりの略三角形状、あるいは略台形状の水上側カバープレート15bで覆っている。このように、水上側カバープレート15bで覆うのは、定尺の幅の溝構造材を切妻両サイドの屋根面に平行でなく少し角度を持たせて葺くため開きの部分のアジャストとふさぎの理由による。
【0058】
また、片流れ屋根の屋根構造の場合には、屋根勾配の水上側は、図1に示す場合には、屋根側は溝方向の上流側に向けて先窄まりに形成され、切り立った壁面16側は壁面に沿った垂下部分を設けた水上側カバープレート15cに形成されている。かかる様子を、図1(b)に示した。
【0059】
図1(a)に示す屋根構造10では、図2に示すような溝構造材11を使用して、既存の鋸屋根、あるいは、新規着工の屋根に本発明を適用した場合を示したが、図2に示す構成とは異なる図5に示す溝構造材21を用いて、既存の波形スレート葺きの鋸屋根構造上に、本発明を適用する場合について以下説明する。
【0060】
図5(a)は、断面皿型に曲げ加工した溝構造材21を示す。かかる溝構造材21の左右は、同じ溝構造材21を連接できるように、係合部21aが設けられている。図5(b)は、2本の溝構造材21を係合部21aを用いて係合して連接した状態を示す。
【0061】
図5(a)に示すように、1本の溝構造材21で1本の溝12を構成するようにしておけば、施工する屋根の面積に合わせ易い。
【0062】
図6(a)は屋根の伏せ図を示し、図6(b)は図6(a)に示す伏せ図に対応した鋸屋根の形状を示す。また、図6(a)では、屋根樋13の流れ方向を矢印でそれぞれ示した。
【0063】
図6(a)に示す屋根は、図5(a)に示す溝構造材21を必要本数連接して構成されている。かかる様子を、図7に示した。図7では、図6に示す構成を、屋根樋13側から見た様子を示している。複数本の溝構造材21が互いに連接され、既存の鋸屋根面を覆うように設けられている。個々の溝構造材21により形成されている樋機能部としての溝12には、雨水が流入している様子を斜線表示した。
【0064】
また、既存の鋸屋根構造の谷樋部分、棟木側部分には、前記説明のように水下側カバープレート15a、水上側カバープレート15b、15cがそれぞれ設けられている。
【0065】
溝構造材21は、次のようにして、鋸屋根構造上に設ければよい。図8、図9(a)に示すように、鋸屋根は、鉄骨組立で形成された母屋22の上に、波形スレート23を設けて構成されている。かかる波形スレート23上に、ベースプレート24をフックボルト25を用いて固定する。フックボルト25では、図9(b)に示すように、ベースプレート24と波形スレート23との間にシース管26を介在させる。
【0066】
このようにして既存の波形スレート23を使用した鋸屋根構造の上に、ベースプレート24を固定し、このベースプレート24上に、溝構造材取付用母屋27を設ける。溝構造材取付用母屋27上に、溝構造材21の断面形状に合わせた凹凸形状に形成したタイトフレーム28を設け、このタイトフレーム28に溝構造材21を合わせて嵌め込み、その状態でタイトフレーム28と溝構造材21とをボルトなどで固定すれば、本発明に係る屋根構造10が施工できる。
【0067】
このように本発明に係る屋根構造10は、既存の屋根を撤去することなく、その上に施工することができる。既存の屋根は、上記説明ではスレート屋根の場合を例示して説明したが、スレート屋根以外にも、瓦屋根にも適用できることは言うまでもない。
【0068】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて変更してもよい。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、鋸屋根構造を例示して本発明の適用を説明したが、本発明は、鋸屋根以外の屋根構造で適用できるものである。また、工場の屋根、一般住宅の屋根、商業施設屋根、商店街のアーケードの屋根、倉庫屋根、体育館の屋根など、従来軒樋や谷樋により雨水の排水を行っていた屋根構造に有効に適用できるものである。
【0070】
また、前記説明では、溝構造材11、21として、溝12の断面形状が略逆台形状の場合を例示して説明したが、かかる断面形状に限定する必要はなく、雨水を流す樋機能部として使用できる形状であればどのような形状であってもよく、例えば逆円弧状、逆三角状などの種々の形状が考えられる。
【0071】
【発明の効果】
本発明では、屋根勾配方向に対して交差方向に屋根面の水を排水することができるので、雨水を軒樋に集中させることなく、軒樋の溢水現象を防止することができる。
【0072】
屋根勾配方向に対して交差方向に排水した屋根面の水は、屋根勾配に合わせて急な勾配を設けて屋根樋で排水することができるので、急激な水勾配を設けにくい従来構成の軒樋や谷樋を使用する場合とは異なり、樋部分での溢水現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の屋根構造を示す斜視図であり、(b)は水上側カバープレートの一例を示す斜視図である。
【図2】溝構造材の一例を示す斜視図である。
【図3】屋根勾配方向と、溝方向との交差状況を示す説明図である。
【図4】屋根勾配の水上側と水下側とでの溝構造材の始末状況を示す説明図である。
【図5】(a)溝構造材の変形例の断面状況を示す説明図であり、(b)は(a)に示す溝構造材を連接した断面状況を示す説明図である。
【図6】(a)は屋根の伏せ図であり、(b)は(a)に対応する鋸屋根の状況を示す説明図である。
【図7】図5(a)に示す溝構造材を連接して本発明の屋根構造を形成した状況を示す説明図である。
【図8】既存の鋸屋根上に本発明に係る屋根構造を設ける状況を示す説明図である。
【図9】(a)、(b)は既存の鋸屋根上に、本発明に係る溝構造材を設ける際の取付構造を示す説明図である。
【符号の説明】
10 屋根構造
11 溝構造材
12 溝
13 屋根樋
14 竪樋
15a 水下側カバープレート
15b 水上側カバープレート
15c 水上側カバープレート
16 壁面
21 溝構造材
21a 係合部
22 母屋
23 波形スレート
24 ベースプレート
25 フックボルト
26 シース管
27 溝構造材取付用母屋
28 タイトフレーム
A 屋根勾配方向
B 溝方向
Claims (2)
- 建物の屋根構造であって、
勾配を有する屋根面に取り付けられ、凹凸が交互に繰り返され凹部が屋根の雨水を流す樋機能部としての溝を形成する屋根材を有し、
前記屋根材を前記樋機能部としての前記溝が屋根勾配方向に対して90度未満の交差角度で交差配置となるように前記屋根面に設けることを特徴とする屋根構造。 - 勾配を有する屋根面に屋根材を取り付ける屋根工法であって、
凹凸が交互に繰り返され凹部が屋根の雨水を流す樋機能部としての溝を形成する屋根材を、前記溝が屋根勾配方向に対して90度未満の交差角度で交差配置となるように前記屋根面に設け、屋根の一部または全部を形成することを特徴とする屋根工法。
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