JP4010150B2 - 車両のボディ部材の形状設計方法 - Google Patents

車両のボディ部材の形状設計方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両のボディ形状を設計する方法に関し、特に隣接する二つのボディ部材の端部の形状の設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両のボディのデザインを行うにあたっては、CAD技術が広く利用されている。車両のボディは複数のパーツから構成されるが、CAD装置にて各パーツに対応した3次元形状を生成し、生成されたモデルを組み合わせたり、変更したりすることにより車両の設計を行っている。
【0003】
車両のパーツには、例えば図8に示すようにフェンダ110とフード112、或いはリアドア114とクオータ116等互いに隣接したものがある。これらパーツは車両の外形の一部を形成するために全体として統一のとれたデザインが要求される。これら隣接するパーツを設計する場合は、まず最初に、これらパーツの全体形状を表すデザイン面を設定し、この面を各ボディ部材に対応した領域に分割して形状の設計を行う。
【0004】
図9は、図8において点線部分で囲まれた部分115におけるフェンダ端部123とフード端部125の断面図である。
【0005】
フェンダのパネル板118、及びフードの上パネル板120は所定の板厚を有する。フェンダのパネル板118、フードの上パネル板120は、ともに両端部123,125にて屈曲しており、両端部123,125は、所定の見切り隙をもって離間して配置される。見切り隙はフェンダ端部123とフード端部125との間に形成される隙間である。
【0006】
フェンダのパネル板118は、端部123にて、車体の内側に屈曲されてなる側壁124を備える。側壁124の上端は、R加工される。側壁124の下端には、フード側に延びる折曲面126が形成される。フェンダを車体に取り付ける場合は、折曲面126が車体側方にあるフレーム(図示せず)に溶接、またはボルト付けされる。
【0007】
フードの上パネル板120は、その端部125にてフード側に折り返された形状であって、R加工されたフック部127を備える。フック部127はフードの下側パネル板の端部(図示せず)を保持するために設けられる。
【0008】
次に、図10を用いて、図9で示したフェンダ端部123及びフード端部125の形状作成方法を説明する。
【0009】
まず、デザイン面119上に、フェンダ側の見切り線121を設定する。見切り線121を設定した後に、フェンダとフードとの間の見切り隙を考慮して、見切り線128を作成する。見切り線128は、見切り線121を所定距離dだけフード側にシフトすることにより得られる(図10(a)参照)。
【0010】
次に、フェンダ側の見切り線121を基準として、見切り壁面129、折曲面130を作成する。見切り壁面129は、見切り線121の位置から車両の内側方向に延設される。見切り壁面129は、その下端にて、フード側に延びる折曲面130が形成される。(図9(b)参照)。
【0011】
フード側の見切り線128対しては、フード側見切り面132、折り返し面134を作成する。フード側見切り面132は、見切り線128位置から車両の内側に延設され、折曲面134は、フード側見切り面132の下端にてフード側に延びた形状を有する。(図9(b)参照)。
【0012】
次に、見切り線121に沿って、見切り線121に直行するように断面を複数取り(図9(b)中、一点鎖線参照)、各断面形状に板厚を加えて、端部のR加工を行ってフェンダパネル端部123及び、フード端部125の形状を作成する(図8参照)。
【0013】
その後、作業者がフェンダ端部とフレーム端部との間の見切り隙を確認し、それが見切り線にそって一定でない等適切でない場合は、もう一度フード側の見切り線128を修正し(図10(c))、見切り隙が一定になるまで上述の工程を繰り返す。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、デザイン面119の断面形状が見切り線121に沿って変化するような場合、上述したように見切り線間の距離dをすべて同じ値にとると、断面ごとにフード端部とフェンダ端部との間の見切り隙が異なってしまう。
【0015】
一例として、図11に示すように、フードの表面とフェンダの表面とを含むデザイン面がフラットである場合(デザイン面130)及びフェンダの表面がフードの表面に対して傾いている場合(デザイン面131)、それぞれ場合について作成されたフェンダとフードとの間の見切り隙h3,h4を比較してみる。フェンダ端部のR付けを行った時に、傾いている場合のフェンダ端部138は、フラットな場合のフェンダ端部136と比較すると下側にシフトしてしまい(図11中、矢印参照)、その分、見切り隙の長さh4はh3に比べて長くなってしまう。
【0016】
このように、デザイン面の形状によって見切り隙の長さが変化してしまうと、それらを一定のものに修正するのに非常に手間がかかるという問題があった。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接する車両のボディ部材の端部に適切な見切り隙を与えることができる形状設計方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するために、本発明に係る車両のボディ端部の形状設計方法は、互いに離間して配される第1見切り線及び第2見切り線を車両の外形を表すデザイン面上に設定し、第1見切り線を基準として第1ボディ部材の屈曲端部形状を設計し、第2見切り線を基準として第2ボディ部材の屈曲端部形状を設計する車両のボディ部材の形状設計方法であって、入力手段からの入力により、デザイン面上の第1見切り線の設定を受け付ける工程と、第1見切り線を基準として第1ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第1仮想チューブを設定する工程と、第1仮想チューブを基準として、第1ボディ部材の屈曲端部と第2ボディ部材の屈曲端部との間の見切り隙を規定するパラメータを用いて第2ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第2仮想チューブを設定する工程と、第2仮想チューブを基準としてデザイン面上に第2見切り線を設定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
上記方法によれば、第1/第2仮想チューブを設定することにより、前もって第1/第2ボディ部材の屈曲端部の形状を見当にいれて第2見切り線を設定することができる。それゆえ、上記方法によって設定された第1及び第2見切り線を基準として第1/第2ボディ部材の屈曲端部形状を設計することにより、適切な見切り隙を与えることができる。
【0020】
望ましくは、第1仮想チューブは、デザイン面と見切り面とに内接するよう配置される。また、第2仮想チューブは、デザイン面に接するよう配置される。
【0021】
また、本発明に係る車両のボディ部材の形状設計方法は、前記第1仮想チューブと前記第2仮想チューブの中心軸間距離が、前記見切り隙を規定するパラメータ、前記第1仮想チューブの半径、及び前記第2仮想チューブの半径に基づいて定められることを特徴とする。
【0022】
望ましくは、第1仮想チューブと第2仮想チューブの中心軸間距離Lを一定とする。こうすれば、第1見切り線、又は第2見切り線に沿って、第1ボディ部材と第2ボディ部材との間の見切り隙を一定にすることができる。
【0023】
また、本発明に係る車両のボディ部材の形状設計方法は、第2仮想チューブの中心軸をデザイン面上に投影する工程を含み、第2見切り線は、投影された中心軸を第2ボディ部材側から第1ボディ部材側に向かって第2仮想チューブの半径分シフトすることにより定まることを特徴とする。
【0024】
また、見切り面は、デザイン面との交差角度を90°に設定することを特徴とする。こうすることにより、第1見切り線に近い位置に第1仮想チューブを配置することができる。したがって、設定された第1見切り線のイメージに合った第1ボディ部材の端部形状を作成することができる。
【0025】
また、本発明に係るボディ部材の形状設計方法は、コンピュータにより、互いに離間して配置される第1見切り線及び第2見切り線を車両の外形を表すデザイン面上に設定し第1見切り線を基準として第1ボディ部材の端部形状が定められ第2見切り線を基準として第2ボディ部材の端部形状が定められる車両のボディ部材の形状設計方法であって、入力手段からの入力により、デザイン面上の第1見切り線の設定を受け付ける工程と、第1ボディ部材の端部の曲率半径を規定する第1パラメータの入力を受け付ける工程と、第2ボディ部材の端部の曲率半径を規定する第2パラメータの入力を受け付ける工程と、第1ボディ部材の端部と第2ボディ部材の端部との間の見切り隙を規定する第3パラメータの入力を受け付ける工程と、第1パラメータに基づいて、第1見切り線を基準として、第1ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第1仮想チューブを設定する工程と、第2パラメータ及び第3パラメータに基づいて、第1仮想チューブを基準として、第2ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第2仮想チューブを設定する工程と、第2仮想チューブを基準として、デザイン面上に第2見切り線を設定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る見切り線設定プログラムは、互いに離間して配置される車両の第1ボディ部材及び第2ボディ部材の端部形状を定めるために車両の外形を表すデザイン面上に第1見切り線、及び第2見切り線を設定する見切り線設定プログラムであって、入力手段からの入力により、デザイン面上の前記第1見切り線の設定を受け付ける手順と、第1ボディ部材の端部形状の曲率半径を規定する第1パラメータを受け付ける手順と、第2ボディ部材の端部形状の曲率半径を規定する第2パラメータを受け付ける手順と、第1ボディ部材の端部と第2ボディ部材の端部との間の見切り隙を規定する第3パラメータを受け付ける手順と、前記第1パラメータに基づいて、前記第1見切り線を基準として、第1ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第1仮想チューブを設定する手順と、前記第2パラメータ及び第3パラメータに基づいて、第1仮想チューブを基準として、前記第2ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第2仮想チューブを設定する手順と、前記第2仮想チューブを基準として、前記デザイン面上に第2見切り線を設定する手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0028】
図1〜図3に従って、実施形態に係る車両のボディ部材の形状作成方法の原理を説明する。
【0029】
図1に示すようにまず、デザイン面10上にフェンダ側の見切り線(第1見切り線)12を作成する。フェンダ側のデザイン面11がフェンダのパネル面、フード側のデザイン面13がフード上パネル面に対応する。
【0030】
次に、見切り線12を基準に、フェンダ側の見切り面17、及び折曲面130(図示せず)を作成する。フェンダ側の見切り面17は、見切り棚面14と見切り壁面16とからなる。見切り棚面14は、フェンダ側のデザイン面11に対して垂直に交わる。また、その面幅zは、後に作成されるフード形状の端部に干渉しないよう設定される。
【0031】
見切り壁面16は見切り棚面14の下端にて、車両の内側方向に延設される。フェンダ側のデザイン面11と見切り壁面16とは、鋭角的に交わる関係にある。見切り壁面16の下端にて、フード側に延びる折曲面130が形成される。折曲面130に関しては、従来の技術の欄で説明したので同一番号を付して説明を省略する。
【0032】
見切り面17,折曲面130を作成した後に、フェンダ側のデザイン面11、及び見切り棚面14に内接する仮想チューブ18(第1仮想チューブ)を設定する。仮想チューブ18の設定において実際演算されるのは中心軸20の位置座標である。仮想チューブ18は、フェンダ端部のおおよその形状を表すものであり、仮想チューブ18の半径r1は、フェンダ端部Rの設計値、例えば曲率半径の値に基づいて決められる。
【0033】
従来の技術の欄で説明したように、フェンダの端部の位置は、フェンダ側のデザイン面と見切り面とのなす角度に応じて変化する。また、その位置は、角度が鋭角的になるほど見切り線から遠ざかる。
【0034】
本実施形態においては、デザイン面11と見切り棚面14との間の角度を90度に設定している。見切り棚面14がなく、デザイン面11に対して直接見切り壁面が設けられた場合と比較すると、第1仮想チューブ18を見切り線12に近い位置に配することができ、それゆえ後に作成されるフェンダ端部の位置も第1見切り線に近い位置に作成することができる。また、見切り線12に沿って、デザイン面11と見切り棚面14との間の角度を一定にしているので、第1仮想チューブ18と見切り線12との距離をほぼ一定にすることができる。それゆえ、設定した見切り線12のイメージに合ったフェンダ端部形状を作成することができる。
【0035】
なお、デザイン面11と見切り棚面14との間の角度は、上述した90度に限るものではなく、見切り壁面16とデザイン面11とがなす角度よりも大きいものであればよい。
【0036】
仮想チューブ18の設定後、図2に示すように、仮想チューブ18を基準として仮想チューブ21を設定する。仮想チューブ18と仮想チューブ21との中心間距離Lは、見切り隙を規定するパラメータhによって定まる。仮想チューブ18の半径をr1、仮想チューブ21の半径をr2とすると、Lは、h+r1+r2により定まる。仮想チューブ21の半径r2は、フード端部Rの設計値、例えば曲率半径の値に基づいて決められる。また、仮想チューブ21は、フード側のデザイン面13に接するように設けられる。
【0037】
本実施形態においては、見切り隙の大きさを、フェンダ端部及びフード端部の断面(図8参照)を取ったときに、フェンダ端部の表面とフード端部の表面との距離が最小となる時の長さとする。なお、見切り隙の定義としてはこれに限られるものではなく、フェンダ端部とフード端部との間に生じる隙を示す指標であればよい。
【0038】
仮想チューブ21の設定において実際に演算されるのは、その中心軸23の位置である。中心軸23の位置を求める方法としては、まず、フード側のデザイン面13に対して、その下側に半径r2分オフセットしたオフセット面22を作成する。同時に、仮想チューブ18と同心であって、半径Lを有するチューブ24を作成し、オフセット面22とチューブ24との交線を求める。求められた交線が仮想チューブ21の中心軸23となる。
【0039】
次に、仮想チューブ21の中心軸23をフード側のデザイン面13の法線方向に投影した投影線30を求める。投影線30は、デザイン面10と仮想チューブ21が接する接点の集合である。投影線30の作成した後に、図3に示すように、デザイン面10上にて、投影線30を半径r2分フェンダ側にシフトした見切り線32(第2見切線)を作成する。
【0040】
見切り線32の作成方法は、上述したものに限らない。チューブの中心軸23をオフセット面22上にて半径r2分フェンダ側にシフトすることにより得られるチューブ32の側方のライン35を演算し、演算されたライン35をフェンダ側のデザイン面13に投影したものを見切り線32としてもよい。
【0041】
見切り線32を作成した後、見切り線32を基準として、フード側の見切り面34、および折返し面36を作成する。フード側の見切り面34は、見切り線32から車両の内側に向かって延設され、フード側の見切り面34の下端にてフード側方向に延びる折返し面36が形成される。その後、従来の技術の欄で説明したように、この形状に、板厚を加え、端部のR付け等を行って、フード及びフェンダの3D形状を作成する(図8参照)。
【0042】
図4は、従来の方式で作成されたフード・フェンダの端部の3D形状(図中、一点鎖線部参照)と、上述した本実施形態に係る方法で作成された3D形状(図中、実線部参照)とを比較した図である。フェンダ端部41、フード端部43は、従来の方法で作成されたもの、フェンダ端部40、フード端部42は、本実施の形態に係る方法で作成されたものである。比較のため、フェンダ端部40,41の形状の頂部を重ねて、フェンダ端部40,41に対するフード端部42,43の位置を比較してみると、図示のように、本実施形態に係る方法で作成された見切り隙の長さh1は、従来方法により作成された形状の見切り隙h2よりも短い。すなわち、従来の方法において、フェンダ端部の形状が鋭角的である場合、設定した見切り線の間隔よりも見切り隙が大きくなってしまうという問題点が改善されていることがわかる。
【0043】
本実施形態においては、上述したように、予め所定の見切り隙が得られるように仮想チューブ18、及び仮想チューブ21を配置し、フェンダ及びフードのR端部の形状を見当に入れて見切り線32を設定している。その結果、見切り隙を一定にしたいような場合でも、一般に見切り線12と見切り線32との間隔は一定とはならない。しかしながら、これら見切り線12,32を基準として、端部のR付け等を行えば、結果作成されるフェンダ端部とフード端部との間の見切り隙は一定となる。
【0044】
また、見切り面17は、デザイン面10に直行する見切り棚面14を備えており、見切り線12に近い位置に仮想チューブ18を配置することができる。したがって、設定された第1見切り線のイメージに合った第1ボディ部材の端部形状を作成することができる。
【0045】
上記の方法が適用されるCAD装置50の構成例を図5に示す。CAD装置50は、演算部52、記憶部54、画像表示部56、キーボード58、マウス60、プロッタ62、補助記憶部64を有する。
【0046】
演算部52は、3D及び2Dの形状データの作成等の演算処理を行う。記憶部54は、各種データを一時的に記憶する、例えばRAM(ランダムアクセスメモリ)等である。画像表示部56は、3D及び2Dの形状データ等の画像を表示し、例えばCRT(カソードレイチューブ)等で構成される。キーボード58は、各種データ等を入力するためのもので、マウス60は、画像表示部56に表示された3D及び2Dの形状データを指示するため等に用いられる。プロッタ62は、3D及び2D形状を用紙等に出力するためのものである。補助記憶部64は、演算部52にて作成された3D及び2Dの形状データや、プログラム等を記憶しておくためのハードディスク等で構成される。
【0047】
図6は、上記CAD装置50を用いて、フェンダ・フードの端部形状を作成する手順を説明する図である。
【0048】
ユーザは、画像表示部56の起動画面上に表示されるツールバー等から、フェンダ・フード端部形状の作成コマンドを選択する(図示せず)。コマンドが選択されると、画像表示部56には、見切り隙作成用の入力テーブル65が表示される(図6(a)参照)。入力テーブルには、複数の設定ボタンが表示される。設定ボタンとしては、デザイン面の形状を設定するボタン66、フェンダ側の見切り線の形状を設定するボタン68、フェンダ側のデザイン面に対する棚面の角度を設定するボタン70、フェンダ側の見切り面の棚面と壁面と間の境界線の表示の有無を設定するボタン72、棚面の幅を設定するボタン74、フェンダの端部Rを設定するボタン76、フードの端部Rを設定するボタン78、見切り隙の値を設定するボタン80、フード側の見切り面の形状を設定するボタン82がある。また、入力テーブルには、設定の完了を指示するボタン84も含まれる。
【0049】
ユーザが各ボタンをマウスによってクリックすること等により、各設定項目が設定可能となる。まず、ボタン66をマウス62でクリックしてデザイン面の設定を行う。デザイン面の形状データは、ユーザが作成中のもの、或いは予め補助記憶部64に登録されたものであってもよい。次に、ボタン66をマウス62でクリックした後、フェンダ側の見切り線を決定するパラメータをユーザがキーボード58等により入力し、デザイン面上のフェンダ側見切り線の設定を行う。上記の設定が終わると、画像表示部56には、デザイン面10とフェンダ側見切り線12の図形が表示される(図6(b)参照)。
【0050】
次に、ユーザは、フード側の見切り線、及びフェンダ・フードの見切り面等を作成するための情報を、ボタン70〜82をマウス60でクリックし、各ボタン70〜82の右にある設定項目の欄に設定内容をキーボード58を用いて入力する。すべての設定情報を入力した後、入力終了のボタン84をマウスでクリックする。
【0051】
入力が終わると、図1〜3を用いて説明した方法で、演算部は、見切り線12,32及び見切り棚面14,フード側見切り面34,等の画像データの演算を行い、そのデータを画像表示部58に表示する。表示された画面を図6(c)に示す。
【0052】
最後に、ユーザは、作成された画像データに対して、板厚を加え、端部R付けを行なって、フェンダ・フードの3D形状を作成する。
【0053】
上述の説明では、車両のボディ部材としてフェンダとフードを用いたが、もちろん他のボディ部材を設計する場合も、本発明に係る形状作成方法が適用可能である。その場合、一般にボディ部材に応じて端部形状も異なるが、例えば図7(c)には、両端部が折り返された隣接するパネル部材が示されている。
【0054】
以下、上記図示されたパーツに対して本発明に係る方法を適用した場合について、図7を用いて説明する。
【0055】
まず、図7(a)に示すように、デザイン面86上に第1パネル部材側の見切り線88を設定する。次に、図7(b)に示すように、見切り線88を基準として、第1パネル部材側の見切り面90を作成する。見切り面90と、第1パネル部材側のデザイン面92となす角度は90度とする。また、見切り面90の下端にて、第1パネル部材側に延びる折曲面94を作成する。
【0056】
次に、第1パネル部材側のデザイン面92と見切り面90とに内接する仮想チューブ96の中心軸98の位置座標を演算する。仮想チューブ96の半径は、第1パネル部材側の端部R、例えば曲率半径に基づいて決められる。
【0057】
中心軸98の演算後、第2パネル部材側の端部に第2仮想チューブ99を設定する。第2仮想チューブ99の半径r2は、第2パネル部材側の端部Rに基づいて決められる。第2仮想チューブ99は、第2パネル部材側のデザイン面100に接し、仮想チューブ96と仮想チューブ99の中心軸間距離Lは、見切り隙パラメータをhとして、L=r1+r2+hによって定まる。
【0058】
仮想チューブ99の中心軸101を、第2パネル部材側に投影し、投影された線を第1パネル部材側に半径r2分シフトすることにより、フード側見切り線102を作成する。次に、フード側見切り線102に対して、下方にフード側見切り面103を作成し、見切り面103の下端にて、第2パネル部材側に延びる折曲面104を作成する。
【0059】
最後に、図7(c)に示すように、図7(b)で作成された形状に、板厚、R付け等を行うことにより、第1パネル部材端部105、第2パネル部材106の形状作成を行う。
【0060】
上記のような場合でも、予め所定の見切り隙が得られるように仮想チューブ90、仮想チューブ99を配し、この仮想チューブ99に基づいて見切り線102を設定している。こうすることで、第1パネル部材端部105と第2パネル部材端部106との間の見切り隙を一定にすることができる。
【0061】
【発明の効果】
上述したように、本発明に係る方法によれば、デザイン面の形状によらずに効率的に隣接する車両のボディ部材形状を設計する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る車両のボディ部材の形状設計方法の原理説明の図である。
【図2】 本発明の実施の形態に係る車両のボディ部材の形状設計方法の原理説明の図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係る車両のボディ部材の形状設計方法の原理説明の図である。
【図4】 従来技術により作成された形状と本実施形態に係る方法により作成された形状とを比較する図である。
【図5】 CAD装置の構成を表す図である。
【図6】 端部形状の作成時におけるCAD装置の表示画面を表す図である。
【図7】 本発明の実施の形態に係る車両のボディ部材の形状設計方法の説明の図である。
【図8】 車両のボディを表す図である。
【図9】 フェンダ端部及びフード端部の形状を表す図である。
【図10】 従来技術による車両のボディ部材の形状設計方法の原理説明の図である。
【図11】 デザイン面形状による見切り隙の変化を表した図である。
【符号の説明】
10 デザイン面、12 見切り線、14 見切り棚面、16 見切り壁面、17 見切り面、18,21 仮想チューブ、32 フード側見切り線、34フード側見切り面。

Claims (6)

  1. コンピュータにより、車両の外形を表すデザイン面上に第1見切り線及び第2見切り線を互いに離間して設定し、第1見切り線を基準として第1ボディ部材の屈曲端部形状を設計し、第2見切り線を基準として第2ボディ部材の屈曲端部形状を設計する車両のボディ部材の形状設計方法であって、
    入力手段からの入力により、前記デザイン面上の前記第1見切り線の設定を受け付ける工程と、
    前記第1見切り線を基準として前記第1ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第1仮想チューブを設定する工程と、
    前記第1仮想チューブを基準として、前記第1ボディ部材の屈曲端部と前記第2ボディ部材の屈曲端部との間の見切り隙を規定するパラメータを用いて前記第2ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第2仮想チューブを設定する工程と、
    前記第2仮想チューブを基準として、前記デザイン面上に前記第2見切り線を設定する工程と、
    を含むことを特徴とする車両のボディ部材の形状設計方法。
  2. 請求項1に記載の車両のボディ部材の形状設計方法であって、
    前記第1仮想チューブと前記第2仮想チューブの中心軸間距離が、前記見切り隙を規定するパラメータ、前記第1仮想チューブの半径、及び前記第2仮想チューブの半径に基づいて定められることを特徴とする車両のボディ部材の形状設計方法。
  3. 請求項1に記載の車両のボディ部材の形状設計方法であって、
    前記第2仮想チューブは、前記デザイン面に接するように配置され、
    前記第2見切り線を設定する工程は、
    前記第2仮想チューブ上の中心軸を前記デザイン面上に投影する工程と、
    前記投影された中心軸を第2ボディ部材側から第1ボディ部材側に向かって第2仮想チューブの半径分シフトする工程と、
    を含むことを特徴とする車両のボディ部材の形状設計方法。
  4. 請求項3に記載の車両のボディ部材の形状設計方法であって、
    前記見切り面と前記デザイン面の交差角度が90度に設定されることを特徴とする車両のボディ部材の形状設計方法。
  5. コンピュータにより、互いに離間して配置される第1見切り線及び第2見切り線を車両の外形を表すデザイン面上に設定し第1見切り線を基準として第1ボディ部材の端部形状が定められ第2見切り線を基準として第2ボディ部材の端部形状が定められる車両のボディ部材の形状設計方法であって、
    入力手段からの入力により、前記デザイン面上の前記第1見切り線の設定を受け付ける工程と、
    第1ボディ部材の端部の曲率半径を規定する第1パラメータの入力を受け付ける工程と、
    第2ボディ部材の端部の曲率半径を規定する第2パラメータの入力を受け付ける工程と、
    第1ボディ部材の端部と第2ボディ部材の端部との間の見切り隙を規定する第3パラメータの入力を受け付ける工程と、
    前記第1パラメータに基づいて、前記第1見切り線を基準として、第1ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第1仮想チューブを設定する工程と、
    前記第2パラメータ及び第3パラメータに基づいて、第1仮想チューブを基準として、前記第2ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第2仮想チューブを設定する工程と、
    前記第2仮想チューブを基準として、前記デザイン面上に第2見切り線を設定する工程と、
    を含むことを特徴とする車両のボディ部材の形状設計方法。
  6. 互いに離間して配置される車両の第1ボディ部材及び第2ボディ部材の端部形状を定めるために車両の外形を表すデザイン面上に第1見切り線、及び第2見切り線を設定する見切り線設定プログラムであって、
    入力手段からの入力により、前記デザイン面上の前記第1見切り線の設定を受け付ける手順と、
    第1ボディ部材の端部形状の曲率半径を規定する第1パラメータを受け付ける手順と、
    第2ボディ部材の端部形状の曲率半径を規定する第2パラメータを受け付ける手順と、
    第1ボディ部材の端部と第2ボディ部材の端部との間の見切り隙を規定する第3パラメータを受け付ける手順と、
    前記第1パラメータに基づいて、前記第1見切り線を基準として、第1ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第1仮想チューブを設定する手順と、
    前記第2パラメータ及び第3パラメータに基づいて、第1仮想チューブを基準として、前記第2ボディ部材の屈曲端部形状を規定するための第2仮想チューブを設定する手順と、
    前記第2仮想チューブを基準として、前記デザイン面上に第2見切り線を設定する手順と、
    をコンピュータに実行させるための見切り線設定プログラム。
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