JP2004206262A - スケッチに基づく3次元形状データ作成方法 - Google Patents

スケッチに基づく3次元形状データ作成方法 Download PDF

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【課題】本発明は、デザイナーの意図やイメージが反映された3次元物体の3次元形状データを生成することができる3次元形状データ作成方法の提供を課題とする。
【解決手段】本発明のよる3次元形状データ作成方法は、3次元物体が描かれた複数のスケッチから当該3次元物体の3次元形状データを作成する方法であって、前記複数のスケッチに基づいて、歪みのある3次元歪空間を定義する第1ステップと、前記3次元歪空間内に前記スケッチの線図を定義する第2ステップと、前記3次元歪空間内の線図を3次元直交空間内に変換する第3ステップとを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デザイナー等が手書きで作成した3次元物体のスケッチから当該3次元物体の3次元形状データを作成する手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、デザイナーが手書きで作成したスケッチから3次元形状データを作成する手法が各種提案されている。例えば、ある平面で切断された際の断面線が描かれている3次元物体の透視図(スケッチ)を用いて、当該透視図に対する前記平面に対応する消失点等から、直交座標系の3次元空間内に於ける前記平面を表現する平面方程式を求め、当該平面方程式で表わされた前記平面に前記断面線を投影することにより、3次元物体の3次元形状データを作成する手法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−149943号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、デザイナーが実際に手書きで作成するスケッチは、正確な直交座標系に従って描かれているわけではなく、座標系がデザイナーのイメージにより大局的に歪められていることが多い。従って、上述の従来技術のように、直交座標系の3次元空間に基づいて3次元形状データを生成した場合、得られた3次元形状データにデザイナーの意図するイメージが反映されない場合がある。
【0005】
即ち、上述の従来技術では、デザイナーが作成するスケッチが数学的に不正確なパースとなっているにも拘らず、3次元直交空間で見た場合の最適なパースを探し出し、スケッチが正確なパースで表現されていると仮定して、3次元立体が創成されている。このため、上述の従来技術では、スケッチに表現されたデザイナーのコンセプトやイメージが反映されていない3次元形状データが創成されてしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、デザイナーの意図やイメージが反映された3次元物体の3次元形状データを生成することができる、3次元形状データ作成方法、及び、コンピュータープログラムが記録された記録媒体、並びに、3次元形状データ作成装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1に記載する如く、3次元物体が描かれた複数のスケッチから当該3次元物体の3次元形状データを作成する方法であって、
前記複数のスケッチに基づいて、歪みのある3次元歪空間を定義する第1ステップと、
前記3次元歪空間内に前記スケッチの線図を定義する第2ステップと、
前記3次元歪空間内の線図を3次元直交空間内に変換する第3ステップとを含むことを特徴とする、方法により達成される。
【0008】
本発明では、デザイナー等により作成されるスケッチにおいて、座標系がデザイナーのイメージにより大局的に歪められていることを考慮して、歪みのある3次元歪空間内にスケッチの線図が定義される。これにより、デザイナーの意図やイメージが反映された3次元物体の3次元形状データを得ることができる。
【0009】
尚、3次元物体の3次元形状データの作成に使用する複数のスケッチは、請求項2に記載する如く、前記3次元物体を斜め方向から表現した斜視スケッチ、前記3次元物体を側面視で表現した側面視スケッチ、及び、前記3次元物体の中心線を法線とする横断面で切断された際の前記3次元物体の外形線であってよい。この場合、前記第1ステップは、
前記3次元物体の中心線を含むセンター断面を定義する第1サブステップと、前記斜視スケッチの前記センター断面上の少なくとも3点と、該少なくとも3点に対応する前記側面視スケッチの前記センター断面上の少なくとも3点とを対応付けることにより、前記センター断面を基準とした視点の3次元位置を定めると共に、前記側面視スケッチの平面を、前記視点及び前記斜視スケッチに対して空間的に位置付ける第2サブステップと、
前記外形線の前記センター断面上の点を第1の点とし、該第1の点に対応する前記側面視スケッチの前記断面線上の点を第2の点としたとき、前記第1の点を第2の点に一致させ、且つ、前記斜視スケッチの前記横断面上の少なくとも1点と、該少なくとも1点に対応する前記外形線上の少なくとも1点とを対応付けることにより、前記位置付けされた側面視スケッチの平面に対して、前記横断面を空間的に位置付ける第3サブステップと、
前記位置付けされた側面視スケッチの平面及び横断面に基づいて、歪みのある3次元歪空間を定義する第4サブステップとを含むことが好ましい。
【0010】
本発明によれば、センター断面を基準とした視点を考慮しつつ、立体構成、比率や角度が異なる各スケッチを適切に対応付けることにより、3次元歪空間が定義されるので、デザイナーの意図やイメージが一層反映された3次元物体の3次元形状データを得ることができる。
【0011】
尚、前記第1ステップに含まれる各サブステップは、適切にプログラムされた機械読取り可能なコンピュータープログラムにより実行することが可能であり、請求項3に記載する如く、当該コンピュータープログラムが記録されたCD−ROMやフロッピー(登録商標)ディスク(R)等の記録媒体を介して実行されてよい。
【0012】
また、本発明による3次元形状データ作成方法は、請求項4及び5に記載する如く、3次元形状データ作成装置として具現化することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、図1をベースに図2以下の各図を参照して説明する。尚、以下の説明は、車両を描いたスケッチに関するものであるが、本発明による3次元形状データ作成手法は、電化製品、鉄道、飛行機等のような車両以外の種々の3次元物体のスケッチに対して適用可能である。
【0014】
図1は、スケッチから3次元形状データを作成する本発明による3次元形状データ作成手法の一実施例を示すフローチャートである。尚、本明細書において、「スケッチ」とは、デザイナーの意図やイメージを表現した絵、即ち、正確なパース表現ではなく、比率や角度が異なり、立体構成も不正確なものを指す。
【0015】
3次元形状データを作成する基になるスケッチは、同一の3次元物体を異なる角度から表現した3つの異なるスケッチである。本実施例では、車両を斜め前方向から表現したスケッチ(以下、「クォータービュースケッチ」という)、車両を側方から表現したスケッチ(以下、「サイドビュースケッチ」という)、及び、車両前後方向から見た車両の外形線(即ち、車両前後方向に垂直な面(ドア断面)で切断した際の、ドアやルーフを含む車体の外形線であり、以下、「ドア断面線」という)が、3次元形状データ作成のための入力データとなる(ステップ100)。また、入力データには、3次元物体の所与の諸元データ(本実施例では、車両の全長、全幅、高さ)が含まれる。尚、図2(a)−(c)には、デザイナーにより作成されるクォータービュースケッチ、サイドビュースケッチ、及び、ドア断面線の一例が示されている。
【0016】
各スケッチは、スキャナ等で読み込まれ、ディスプレイに画像として表示される(ステップ110)。尚、ディスプレイ上の各スケッチに対応する画像は、ユーザがマウス等を操作することで回転、移動、拡大及び縮小が可能である。各スケッチの画像線は、曲線データ化される(ステップ120)。このとき、各スケッチに対して任意の2次元直交座標が定義され、各スケッチの画像線は、それぞれの2次元直交座標系における座標値の集合として表現される。尚、スケッチの画像線の曲線データ化は、既存のCAD(computer-aided design)が通常的に備える曲線創成機能を用いて実行可能である。
【0017】
以上の前段階のステップ100乃至120が終了すると、本発明による3次元形状データ作成手法の主題をなす各ステップ130乃至170の処理が実行される。以下、各ステップの処理について詳説する。尚、以下の各ステップ(ステップ180を含む)の処理は、適切にプログラムされたコンピュータープログラムにより実行されてよい。
【0018】
ステップ130では、スケッチにおけるセンター断面を考慮した視点EP及びセンター断面平面を定義するための処理が実行される。即ち、クォータービュースケッチとサイドビュースケッチを対応付けることによりパースが定義される。ここで、センター断面とは、3次元形状データ作成の対象となる3次元物体の中心軸を含む面であり、本実施例では、前後方向の車軸を含む鉛直面である。
【0019】
本実施例において、クォータービュースケッチとサイドビュースケッチとの対応付けは、センター断面を重視したパースを定義するため、図3(a)及び図3(b)に示すように、クォータービュースケッチのセンター断面上の幾つかの選定点に、当該各選定点に対応するサイドビュースケッチのセンター断面上の幾つかの選定点を空間的に対応付けることによって実現される。但し、この幾つかの選定点のうちの各1点は、センター断面上の点であると共にドア断面上の点でもある。尚、これらの幾つかの選定点は、両スケッチに表現されている重要な点(キーポイント)であってよく、本ステップ130の初期段階で、ユーザがマウス等を操作して対話式に選定されてよく、若しくは、上記ステップ120の曲線データ化処理の際に同様に選定されていてもよい。尚、図3(b)以下で示すサイドビュースケッチには、理解の容易のため、センター断面上の断面線しか図示されていないが、実際には、図2(b)のように、他の曲線が含まれている。
【0020】
図4は、本ステップ130の処理の具体例を示す。図4に示すように、クォータービュースケッチのセンター断面上の3つの選定点A0,C1,C2(2次元)に、当該3つの選定点A0,C1,C2に対応するサイドビュースケッチのセンター断面上の3つの選定点a0,c1,c2(3次元)を空間的に対応付けることによって、センター断面を考慮した視点EPと共にサイドビュースケッチのセンター断面のクォータービュースケッチに対する位置関係が定まる。即ち、クォータービュースケッチと視点EPの位置関係は、指定された視野角θ1(焦点距離f:視中心線Lの長さ)により決定されるので、視点EPから選定点A0,C1,C2までの放射状の線上に選定点a0,c1,c2を位置決めすることで、サイドビュースケッチのセンター断面が、クォータービュースケッチ及び視点EPに対して空間的に(3次元的に)位置決めされる。このようにして、位置決めされたサイドビュースケッチのセンター断面平面をS平面と称する。
【0021】
尚、図4に示す実施例において、選定点A0,a0は、車体のルーフ部の略中央の点であり、選定点C1,c1は、フロントガラス前縁の点であり、選定点C2,c2は、車体の先端の点である。また、視中心線Lは、視点EPからクォータービュースケッチの中心に向かうベクトルであり、視中心線Lとサイドビュースケッチのセンター断面との交点が視中心点Lpとなる。
【0022】
本ステップ130での対応付け処理は、数学的には、下記の原理に基づいて実行されてよい。即ち、一般的に、2次元座標系の点と3次元座標系の点の対応付けは、数1に示す射影行列で表現される。
【0023】
【数1】
Figure 2004206262
ここで、2次元座標系の点(u,v)及び3次元座標系の点(x,y,z)の対応関係は、sを定数として、数2のように表わされる。
【0024】
【数2】
Figure 2004206262
この場合、未知数は11個であるため、対応点(即ち、選定点)が少なくとも6点あれば、数1の射影行列が定まり、2次元座標系の点と3次元座標系の点の対応付けが可能となる。また、拘束条件(焦点距離や仰角等)を与え、未知数を減らしていくと、対応点(即ち、選定点)が少なくとも3点あれば、数1の射影行列が定まり、2次元座標系の点と3次元座標系の点の対応付けが可能となる。
【0025】
尚、本発明は、上述のセンター断面を重視したパースの設定手法(先に例示した3点の対応付けによる方法)に特に限定されることはなく、センター断面を重視したパース設定は種々の方法によって実現可能である。
【0026】
次のステップ140では、図5に示すように、上述の如く定義されたS平面(及び、視点EP)に対してドア断面を空間的に位置決め・定義する処理が実行される。以下、3通りの定義手法について順に説明する。尚、以下の各種法により定義されるドア断面をVj平面と称する。本実施例により定義されるVj平面は、後述するように、必ずしもS平面に直交している必要はない。
【0027】
<3点パースフィックス方法(手法1)>
先ず、3点パースフィックス方法と称する第1の手法について、図6を参照して説明する。尚、S平面上のドア断面上の点でもある選定点a0の座標値は、S平面が既に定義されているので既知である。本手法では、先ず、クォータービュースケッチのセンター断面上であり且つドア断面上の点でもある選定点A0以外に、クォータービュースケッチのドア断面上の2つの点B1,B2が選定される。そして、図6に示すように、視点EPとクォータービュースケッチの選定点B1を結ぶ直線EPB1、及び、視点EPとクォータービュースケッチの選定点B2を結ぶ直線EPB2上に、それぞれ点b1,b2が、三角形a0b1b2と三角形A0B1B2が相似になるように決定される。このとき、点a0,b1,b2を含む平面がVj平面として定義される。
【0028】
換言すると、本手法では、先ず、クォータービュースケッチのドア断面上の3つの選定点A0,B1,B2に対応するドア断面線の点α0、β1,β2(図2(c)参照)が選定される。次いで、選定点α0が選定点a0と一致し、且つ、選定点β1,β2がそれぞれ直線EPB1及び直線EPB2上に位置するように、ドア断面がS平面に対して位置合わせされる。そして、位置合わせされたドア断面がVj平面として定義される。尚、本実施例において、選定点B1,β1は、ベルトライン部の点であり、選定点B2,b2は、車体側方下部にあるロッカー部の点である。
【0029】
<2点パースフィックス方法(手法2)>
次に、2点パースフィックス方法と称する第2の手法について、図7を参照して説明する。本手法では、先ず、クォータービュースケッチのセンター断面上であり且つドア断面上の点でもある選定点A0以外に、クォータービュースケッチのドア断面上の1つの点B1が選定される。また、図7Bに示すように、クォータービュースケッチのドア断面上の2つの選定点A0,B1に対応するドア断面線の点α0、β1が選定される。次に、選定点a0と選定点α0が一致し、且つ、選定点α0を通るドア断面のZ軸が選定点a0を通るS平面のZs軸と同軸になるように、ドア断面がS平面に対して位置合わせされる。そして、位置合わせされたドア断面が、ドア断面のZ軸まわりに回転させられる。このとき、視点EPとクォータービュースケッチの選定点B1を結ぶ直線EPB1上の点をb1’(図7A参照)とした場合、ドア断面のZ軸と直線α0β1のなす角度θ2が、S平面のZs軸と直線a0b1’のなす角度θ3と一致するように、ドア断面の回転位置が調整される。このようにして、S平面に対して位置合わせされ且つ回転させられたドア断面がVj平面として定義される。換言すると、直線α0β1をドア断面のZ軸まわりに回転させてできる円錐の表面と直線EPB1の交点(当該交点が2点ある場合には、視点EPに近い側の点)がb1’となり、選定点a0を通るS平面のZs軸及び点b1’を含む平面がVj平面として定義される。このとき、直線a0b1’の長さと、直線α0β1の長さの比がスケーリング係数として定義される。そして、ドア断面線は、選定点α0を固定点としてスケーリング係数に応じてその平面内で拡大・縮小され、Vj平面が決定される(即ち、Vj平面の外形が、S平面のX軸方向に見て長方形から台形へと変化する)。
【0030】
<投射法(手法3)>
次に、投射法と称する第3の手法について、図8を参照して説明する。本手法では、選定点a0を通るS平面のZ軸を含み且つS平面に直交する平面がVj平面として定義される。尚、この投射法により定義されたVj平面は、S平面に直交することになる。
【0031】
次のステップ150では、図9(a)に示すように、クォータービュースケッチの先端に相当するS平面の前側(図中、X方向で前側)のエッジED1を含み、Vj平面に対向する平面(以下、「先端Vj平面」という)を定義する処理が実行される。尚、本発明は、この先端Vj平面の定義手法を特定するものではなく、先端Vj平面の定義手法として種々の手法を採用することが可能である。例えば、図9(b)に示すように、クォータービュースケッチの先端部の接線方向を指定し、当該接線上の一点(2次元座標)を上述の数1の射影行列により変換した3次元座標値を含む平面として先端Vj平面が定義されてもよい。或いは、先端Vj平面は、単に、S平面の前側のエッジED1を含み、S平面に垂直な平面として定義されてもよく、若しくは、S平面の前側のエッジED1を含み、上記ステップ140で定義されたVj平面と平行な平面として定義されてもよい。
【0032】
また、本ステップ150では、図9(c)に示すように、先端Vj平面に加えて、先端Vj平面とVj平面との間に新たな一若しくはそれ以上のVj平面を定義することも可能である。同様に、先端Vj平面に加えて若しくはそれに代えて、クォータービュースケッチの後端に相当するS平面の後側のエッジED2を含み、Vj平面に対向する後端Vj平面(図示せず)を定義することも可能である。
【0033】
次のステップ160では、上記ステップ130,140及び150で定義された各平面に基づいて、有限の3次元空間70を定義する処理が実行される(図10参照)。尚、本発明は、この3次元空間70の定義手法を特定するものではなく、3次元空間70の定義手法として種々の手法を採用することが可能である。例えば、図9(a)及び図10を参照するに、S平面の上側のエッジED3を含み、S平面に垂直をなす3次元空間70の上面70aを設定すると共に、S平面の下側のエッジED4及びVj平面の下側のエッジEDv4を含む3次元空間70の底面70bを設定する。そして、Vj平面の側方のエッジEDv1及び先端Vj平面の側方のエッジEDv1’を含む3次元空間70の側面70cを設定すると共に、S平面の後端のエッジED2を含み、先端Vj平面に平行な3次元空間70の後端面70dを設定する。
【0034】
ここで、上述の2点パースフィックス方法によりドア断面線が拡大若しくは縮小されている場合、Vj平面の外形が長方形から台形へと変化しているため(即ち、Vj平面のエッジEDv4とS平面のエッジED4のなす角度が、X軸方向に見て直角でない)、3次元空間70の底面70bはS平面に対して直交関係にならない。また、先端Vj平面を定義したときと同様の手法により側面70cを決定すると、側面70cは、S平面に平行になるとは限らない。
【0035】
上述の如く、Vj平面及び/又は先端Vj平面及び/又は底面70bがS平面に直交していない場合、及び/又は、側面70cがX軸に平行とならない場合、各平面70a,70b,70c,70d及び先端Vj平面により定義される3次元空間は歪んだ3次元空間となる(即ち、直方体でない)。尚、上述の3点パースフィックス方法若しくは2点パースフィックス方法により定義されたVj平面は、スケッチの上述の如く不正確な特性の故に、通常的にはS平面に直交することはなく、特に2点パースフィックス方法により定義されたVj平面の外形は、スケーリング係数が初期的に1となる場合がほとんどないため、通常的には長方形にならない。従って、本ステップ160で定義される3次元空間には、歪が生ずるものとして以下の説明を続ける。
【0036】
次のステップ170では、上記ステップ160で定義された3次元歪空間に対して3次元格子番線座標を定義する処理が実行される。本ステップ170で定義される3次元格子番線(図10参照)は、S平面に定義された2次元格子番線と、Vj平面に定義された2次元格子番線に基づいて定義される(図9(a)参照)。尚、本ステップ170で定義される3次元格子番線は、3次元歪空間が上述の如く歪んでいるため、歪んだ3次元格子番線座標となる。
【0037】
ここで、S平面のX軸方向の2次元格子番線は、図9(a)において破線で示すように、上側のエッジED3から下側のエッジED4まで等間隔に定義されてよい。また、Z軸方向の各2次元格子番線は、図9(a)及び図9(c)において破線で示すように、S平面とVj平面との交線から前側のエッジED1まで等間隔に、且つ、当該交線から後側のエッジED2まで等間隔に定義されてよい。また、S平面の各エッジED1,2,3,4は、図9(a)に示すように、S平面上の断面線に接するものであってよい。
【0038】
また、Vj平面の2次元格子番線についても、図9(a)に示すように、S平面のX軸方向の各2次元格子番線に対応させつつ、各エッジにおいて等間隔に定義されてよい。また、側面70cの各2次元格子番線については、Vj平面の2次元格子番線に対応させつつ、S平面の対応する各2次元格子番線に平行に定義される。また、側面70cのZ軸方向の各2次元格子番線については、Vj平面のエッジEDv1から先端Vj平面のエッジEDv1まで等間隔に、且つ、Vj平面のエッジEDv1から後端面70dまで等間隔に定義されてよい。そして、S平面のZ軸方向の各2次元格子番線と側面70cのZ軸方向の対応する各2次元格子番線とによって形成される各平面、及び、S平面のX軸方向の各2次元格子番線とVj平面のY方向の対応する2次元格子番線とによって形成される各平面によって、3次元歪空間70内に歪格子72が画成される(図10参照)。
【0039】
尚、S平面及びVj平面に定義される2次元格子数(即ち、各2次元格子番線の間隔)は、対象となる3次元物体の所与の諸元データ(本実施例では、車両の全長、全幅、高さ)等に応じて適切に決定される。また、本発明は、上述の歪格子作成手法に限定されることはなく、局所的に粗い格子や細かい格子を作成するといったように、種々の歪格子作成手法を採用することが可能である。尚、歪格子72の作成は、CAE(computer-aided engineering)用のメッシュ作成用ツール(例えば、IDEAS(R))が備えるソリッドメッシュ創成機能を用いて実行可能である。
【0040】
次のステップ180では、上記ステップ160で定義された3次元歪空間(歪んだ3次元格子番線座標)内に曲線を創成する処理が実行される。本ステップ180では、先ず、図11に示すように、サイドビュースケッチ中の任意の曲線60(線図)(例えば、スケッチ中のベルトライン線)を選定し、当該曲線60に対応する曲面80(以下、「線織面80」という)を3次元歪空間内に形成する。具体的には、S平面上の曲線60を構成する各点は、S平面の2次元格子番線と側面70cの2次元格子番線との対応関係を考慮して、側面70c上の各点へと変換される。この変換は、例えば、S平面上の所定の複数の代表点と側面70c上の所定の複数の代表点との既知の対応関係を用いて、適切な補間を行うことにより実行されてよい。そして、S平面上の各点と側面70c上の各変換点とを結ぶ直線の集合として線織面80が、3次元歪空間において形成される。
【0041】
一方、サイドビュースケッチ中の曲線60に対応するクォータービュースケッチ中の曲線62と視点EPとを結ぶ放射状の曲面82(以下、「一点放射面82」という)が形成される。そして、図11に示すように、一点放射面82と線織面80との交線84が、スケッチ中の曲線に対応する曲線として、3次元歪空間において形成される。このようにして、スケッチ中の各曲線(例えば、キャラクターライン)に対応する各曲線が3次元歪空間において創成される。尚、3次元歪空間内に創成された各曲線は、点列(点の集合)として3次元格子番線座標系で座標値が定義されている。
【0042】
次のステップ190では、上記ステップ160で定義された3次元歪空間(歪んだ3次元格子番線座標)を3次元直交空間に変換する処理が実行される(図12参照)。本ステップ190では、3次元歪空間を3次元直交空間に変換する際、上記ステップ180で3次元歪空間内に創成された曲線84も同時に3次元直交空間内に変換される。この結果、3次元歪空間内に創成された各曲線の点列は、直交3次元座標系で表現されることになる。
【0043】
尚、3次元歪空間内の曲線の3次元直交空間内への変換は、歪み現象を取り扱う構造解析手法である有限要素法(FEM)の原理を用いて実行可能である。例えば、3次元歪空間内の代表的な複数個のノード(節点)を用いて、3次元歪空間から3次元直交空間への変換式を求め、3次元歪空間で定義された曲線の点列を当該変換式により3次元直交空間へ変換することが可能である。
【0044】
また、3次元物体の諸元値(例えば、全長や全幅)との対応関係は、3次元歪空間から3次元直交空間内へ変換する際に補正されてよく、若しくは、サイドビュースケッチのセンター断面上の断面線を曲線データ化する段階(上記ステップ120)でサイドビュースケッチのサイズを調整することで補正されていてもよい。
次のステップ200では、上記ステップ160で得られた直交3次元座標系表現の各曲線データから、既存のCAD機能を用いて3次元物体の各曲面が創成される。この結果、デザイナーが作成した各スケッチから、最終的な3次元物体の3次元形状データが得られる。
【0045】
以上説明した実施例によれば、デザイナーが作成した各スケッチから最終的な3次元物体の3次元形状データを生成する際、スケッチ特有の不正確な特性を補償する3次元歪空間を用いることで、デザイナーの意図やイメージが反映された3次元物体の3次元形状データを得ることができる。
【0046】
尚、上記実施例においては、特許請求の範囲に記載の「斜視スケッチ」が、クォータービュースケッチに、「側面視スケッチ」が、サイドビュースケッチに、「横断面」が、ドア断面にそれぞれ対応している。また、特許請求の範囲に記載の「位置付けされた側面視スケッチの平面」が、S平面に、「位置付けされた横断面」が、Vj平面にそれぞれ対応している。また、特許請求の範囲に記載の「斜視スケッチのセンター断面上の少なくとも3点」が、選定点A0,C1,C2に、「側面視スケッチのセンター断面上の少なくとも3点」が、選定点a0,c1,c2にそれぞれ対応している。また、特許請求の範囲に記載の「第1の点」が、選定点α0に、「第2の点」が、選定点a0にそれぞれ対応している。また、特許請求の範囲に記載の「斜視スケッチの横断面上の少なくとも1点」が、選定点B1若しくはB2に、「外形線上の少なくとも1点」が、β1若しくはβ2にそれぞれ対応している。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0048】
例えば、上述した実施例においては、3次元歪空間として線形な3次元歪空間(平面で各面が構成されている3次元歪空間)が例示されているが、例えば図13に示すような非線形の3次元歪空間を用いることも可能である。また、3次元歪空間70内の歪格子72についても、線形な歪格子に限ることなく、非線形の歪格子であってもよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、デザイナー等が作成した各スケッチから3次元物体の3次元形状データを生成する際、スケッチの線図を3次元歪空間内に創成することで、デザイナーの意図やイメージが反映された3次元物体の3次元形状データを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による3次元形状データ作成手法の一実施例を示すフローチャートである。
【図2】本発明による3次元形状データ作成手法で用いる各スケッチの一例を示す図である。
【図3】図3(a)は、クォータービュースケッチの選定点の一例を示し、図3(b)は、サイドビュースケッチの選定点の一例を示す図である。
【図4】センター断面を考慮してクォータービュースケッチとサイドビュースケッチとを対応付ける処理の説明図である。
【図5】S平面に対してドア断面を位置決め・定義する処理の説明図である。
【図6】3点パースフィックス方法の説明図である。
【図7】2点パースフィックス方法の説明図である。
【図8】投射法の説明図である。
【図9】先端Vj平面を定義する処理の説明図である。
【図10】3次元格子番線を定義する処理の説明図である。
【図11】3次元歪空間内に曲線を創成する処理の説明図である。
【図12】3次元歪空間を3次元直交空間に変換する処理の説明図である。
【図13】本発明の代替実施例として非線形の3次元歪空間を示す図である。
【符号の説明】
60 曲線(線図)
70 3次元歪空間
80 線織面
82 一点放射面

Claims (5)

  1. 3次元物体が描かれた複数のスケッチから当該3次元物体の3次元形状データを作成する方法であって、
    前記複数のスケッチに基づいて、歪みのある3次元歪空間を定義する第1ステップと、
    前記3次元歪空間内に前記スケッチの線図を定義する第2ステップと、
    前記3次元歪空間内の線図を3次元直交空間内に変換する第3ステップとを含むことを特徴とする、方法。
  2. 前記複数のスケッチは、前記3次元物体を斜め方向から表現した斜視スケッチ、前記3次元物体を側面視で表現した側面視スケッチ、及び、前記3次元物体の中心線を法線とする横断面で切断された際の前記3次元物体の外形線からなり、
    前記第1ステップは、
    前記3次元物体の中心線を含むセンター断面を定義する第1サブステップと、前記斜視スケッチの前記センター断面上の少なくとも3点と、該少なくとも3点に対応する前記側面視スケッチの前記センター断面上の少なくとも3点とを対応付けることにより、前記センター断面を基準とした視点の3次元位置を定めると共に、前記側面視スケッチの平面を、前記視点及び前記斜視スケッチに対して空間的に位置付ける第2サブステップと、
    前記外形線の前記センター断面上の点を第1の点とし、該第1の点に対応する前記側面視スケッチの前記断面線上の点を第2の点としたとき、前記第1の点を第2の点に一致させ、且つ、前記斜視スケッチの前記横断面上の少なくとも1点と、該少なくとも1点に対応する前記外形線上の少なくとも1点とを対応付けることにより、前記位置付けされた側面視スケッチの平面に対して、前記横断面を空間的に位置付ける第3サブステップと、
    前記位置付けされた側面視スケッチの平面及び横断面に基づいて、歪みのある3次元歪空間を定義する第4サブステップとを含む、請求項1記載の方法。
  3. 請求項2記載の各サブステップを実行するコンピュータープログラムが記録された記録媒体。
  4. 3次元物体が描かれた複数のスケッチから当該3次元物体の3次元形状データを作成する3次元形状データ作成装置であって、
    前記複数のスケッチを読み込む手段と、
    前記読み込まれた複数のスケッチを画面上に表示する手段と、
    前記各スケッチを空間的に位置付ける手段と、
    前記複数のスケッチの線図を曲線データ化する手段と、
    前記曲線データ化された線図上に特定点を選定する手段と、
    各スケッチの線図上の特定点を対応付けると共に、前記複数のスケッチを空間的に位置付けることにより、歪みのある3次元歪空間を定義する定義手段と、
    前記3次元歪空間内に前記スケッチの線図を定義する手段と、
    前記3次元歪空間内の線図を3次元直交空間内に変換する手段とを含むことを特徴とする、3次元形状データ作成装置。
  5. 前記複数のスケッチは、前記3次元物体を斜め方向から表現した斜視スケッチ、前記3次元物体を側面視で表現した側面視スケッチ、及び、前記3次元物体の中心線を法線とする横断面で切断された際の前記3次元物体の外形線からなり、
    前記定義手段は、
    前記3次元物体の中心線を含むセンター断面を定義する手段と、
    前記斜視スケッチの前記センター断面上の少なくとも3つの特定点と、該少なくとも3つの特定点に対応する前記側面視スケッチの前記センター断面上の少なくとも3つの特定点とを対応付けることにより、前記センター断面を基準とした視点の3次元位置を定めると共に、前記側面視スケッチの平面を、前記視点及び前記斜視スケッチに対して空間的に位置付ける手段と、
    前記外形線の前記センター断面上の特定点を第1の点とし、該第1の点に対応する前記側面視スケッチの前記断面線上の特定点を第2の点としたとき、前記第1の点を第2の点に一致させ、且つ、前記斜視スケッチの前記横断面上の少なくとも1つの特定点と、該少なくとも1つの特定点に対応する前記外形線上の少なくとも1つの特定点とを対応付けることにより、前記位置付けされた側面視スケッチの平面に対して、前記横断面を空間的に位置付ける手段と、
    前記位置付けされた側面視スケッチの平面及び横断面に基づいて、歪みのある3次元歪空間を定義する手段とを含む、請求項4記載の3次元形状データ作成装置。
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