JP4009549B2 - 歩行者保護用バンパアブソーバ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歩行者保護用バンパアブソーバに関し、特に、自動車等の車両において衝突時に歩行者を保護する歩行者保護用バンパアブソーバに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の車両のバンパアブソーバにおいては、発泡体からなるエネルギ吸収体の断面形状を略I字状とすることで、歩行者保護と本来、バンパに要求される性能との両立を狙った構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
実開昭60−37457号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このバンパアブソーバでは、衝突時に車両前方から荷重が作用すると、断面形状を略I字状としたエネルギ吸収体の上壁部と下壁部とが車両前後方向に圧縮変形される。この結果、初期の荷重レベルの立上りが鈍くなり、エネルギー吸収量が低下する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、歩行者がバンパに衝突した際の、荷重レベルの初期立上りを上昇させることができる歩行者保護用バンパアブソーバを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、バンパカバー内に長手方向が車幅方向に沿って配置され、衝突エネルギを吸収する発泡成形体から成る歩行者保護用バンパアブソーバであって、
前記長手方向と直交する断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部と、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部とが車両上下方向で重複する部分を有するW形状であると共に、前記W形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっていることを特徴とする。
【0007】
従って、歩行者保護用バンパアブソーバに荷重が作用した初期には、荷重に対して、W形状の一方には広がる方向への荷重が発生し、W形状の他方には狭まる方向への荷重が発生する。この結果、隣接する逆向きのW形状の境界部における連結部には、剪断力が発生する。このため、荷重レベルの初期立上りを上昇させることができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の歩行者保護用バンパアブソーバにおいて、前記逆向きのW形状の境界面が、型抜き方向に傾斜していることを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1記載の内容に加えて、逆向きのW形状の境界面が、型抜き方向に傾斜しているため、型抜きが容易となる。この結果、スライドカムを使用しなくても、通常の上型と下型とを使用する簡単な型形状で製造できる。
【0010】
請求項3記載の本発明は、バンパカバー内に長手方向が車幅方向に沿って配置され、衝突エネルギを吸収する発泡成形体から成る歩行者保護用バンパアブソーバであって、
前記長手方向と直交する断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部と、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部とが車両上下方向で重複する部分を有するジグザグ形状であると共に、前記ジグザグ形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっていることを特徴とする。
【0011】
従って、歩行者保護用バンパアブソーバに荷重が作用した初期には、荷重に対して、ジグザグ形状の一方には広がる方向への荷重が発生し、ジグザグ形状の他方には狭まる方向への荷重が発生する。この結果、隣接する逆向きのジグザグ形状の境界部における連結部には、剪断力が発生する。このため、荷重レベルの初期立上りを上昇させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明における歩行者保護用バンパアブソーバの第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0013】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示している。
【0014】
図5に示される如く、本実施形態では、自動車車体10の前端下部に車幅方向に沿ってフロントバンパ12が配設されている。
【0015】
図3に示される如く、フロントバンパ12のバンパリインフォースメント14は、車幅方向に沿って配設されており、長手方向と直交する方向、即ち、車幅方向から見た断面形状は、上下2つの矩形閉断面部16、18が前壁部14Aによって連結された形状となっている。また、バンパリインフォースメント14の前壁部14Aの車両前方側面には、歩行者保護用バンパアブソーバ20が車幅方向に沿って配設されている。
【0016】
図1に示される如く、歩行者保護用バンパアブソーバ20における長手方向と直交する方向(車幅方向)から見た断面形状はW形状となっており、W形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっている。即ち、歩行者保護用バンパアブソーバ20は、車幅方向に沿った長さP1の一般部32と、車幅方向に沿った長さP2の反転部34とが、車幅方向に沿って交互に形成されている。
【0017】
図3に示される如く、歩行者保護用バンパアブソーバ20における一般部32においては、車幅方向から見た断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部22と、車両後方側から切り欠かれた上側後部切欠部24及び下側後部切欠部26とが車両上下方向で重複する部分を有するW形状となっており、前部切欠部22と、上側後部切欠部24及び下側後部切欠部26との前記重複長さはLとなっている。
【0018】
一方、図4に示される如く、歩行者保護用バンパアブソーバ20における反転部34においては、車幅方向から見た断面形状が、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部23と、車両前方側から切り欠かれた上側前部切欠部25及び下側前部切欠部27とが車両上下方向で重複する部分を有するW形状となっており、後部切欠部23と、上側前部切欠部25及び下側前部切欠部27との前記重複長さはLとなっている。
【0019】
なお、歩行者保護用バンパアブソーバ20は、圧縮強度及び曲げ強度が強い素材、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン改質ポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡成形体で構成されており、衝突エネルギを吸収するようになっている。特にスチレン改質ポリエチレン樹脂(スチレン成分50〜70重量%)ビーズ発泡体の型内成形品が好ましい。
【0020】
図3及び図4に示される如く、バンパリインフォースメント14及び歩行者保護用バンパアブソーバ20は、バンパカバー36に覆われており、バンパカバー36の前壁部36Aと歩行者保護用バンパアブソーバ20の前壁部20Aとが対向している。また、歩行者保護用バンパアブソーバ20の後壁部20Bが、バンパリインフォースメント14の前壁部14Aに当接しており、歩行者保護用バンパアブソーバ20の上壁部20Cと下壁部20Dとは、W形状の上部と下部を構成する傾斜部となっている。
【0021】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0022】
本実施形態では、歩行者がフロントバンパ12に衝突すると、バンパカバー36の前壁部36Aを介して、歩行者保護用バンパアブソーバ20の車両前方から荷重が作用する。この時、歩行者保護用バンパアブソーバ20に荷重が作用した初期には、図1に示される如く、荷重Fに対して、歩行者保護用バンパアブソーバ20の反転部34には、上壁部20Cと下壁部20Dとが広がる方向(図1の矢印A方向)への荷重が発生する。一方、歩行者保護用バンパアブソーバ20の一般部32には、上壁部20Cと下壁部20Dとが狭まる方向(図1の矢印B方向)への荷重が発生する。
【0023】
この結果、図2に示される如く、歩行者保護用バンパアブソーバ20の一般部32と反転部34との交差部、即ち、隣接する逆向きのW形状の境界部における連結部S(図2に斜線で示す部位)には、剪断力が発生する。
【0024】
このため、本実施形態では、図6に実線で示すように、歩行者保護用バンパアブソーバ20に車両前方から衝撃荷重が作用した際の、荷重レベルの初期立上りを、図6に二点破線で示すW形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっていない場合、即ち、歩行者保護用バンパアブソーバ20を車幅方向に沿って全て一般部32とした場合に比べて、上昇させることができ、エネルギー吸収量の低下を防止できる。
【0025】
また、変形後期では、連結部Sが剪断力によって破断し、W形状が広がることにより、潰れ残りの厚みが薄くなる。このため、底付き荷重が発生するタイミングを遅らせることができ、バンパに衝突した歩行者に作用する衝撃荷重の上昇を抑制できる。
【0026】
次に、本発明に係る歩行者保護用バンパアブソーバの第2実施形態を図7及び図8に従って説明する。
【0027】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図7に示される如く、本実施形態では、歩行者保護用バンパアブソーバ20の一般部32と反転部34との境界壁部40が、型抜き方向(図7の矢印C方向及び矢印D方向)に傾斜している。
【0029】
図8に示される如く、歩行者保護用バンパアブソーバ20の境界壁部40は、前方への型抜き方向(図7の矢印C方向)に対して傾斜角度θ1となっており、前方へ型を抜いた時に境界壁部40の近傍に穴があかないようになっている。また、境界壁部40は、後方への型抜き方向(図7の矢印D方向)に対して傾斜角度θ2(θ1=θ2)となっており、後方へ型を抜いた時に境界壁部40の近傍に穴があかないようになっている。
【0030】
従って、本実施形態では、スライドカムを使用しなくても、通常の上型と下型とを使用する簡単な型形状で製造できる。このため、製造コストを低減できる。
【0031】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、第2実施形態では、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とを等しく(θ1=θ2)したが、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とを異なる角度(θ1≠θ2)としても良い。
【0032】
また、上記各実施形態では、歩行者保護用バンパアブソーバ20における長手方向と直交する方向(車幅方向)から見た断面形状をW形状としたが、歩行者保護用バンパアブソーバ20における長手方向と直交する方向(車幅方向)から見た断面形状はW形状に限定されず、V形状を含む他のジグザグ形状としても良い。
【0033】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明は、バンパカバー内に長手方向が車幅方向に沿って配置され、衝突エネルギを吸収する発泡成形体から成る歩行者保護用バンパアブソーバであって、長手方向と直交する断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部と、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部とが車両上下方向で重複する部分を有するW形状であると共に、W形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっているため、歩行者がバンパに衝突した際の、荷重レベルの初期立上りを上昇させることができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の歩行者保護用バンパアブソーバにおいて、逆向きのW形状の境界面が、型抜き方向に傾斜しているため、簡単な型形状で製造できるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項3記載の本発明は、バンパカバー内に長手方向が車幅方向に沿って配置され、衝突エネルギを吸収する発泡成形体から成る歩行者保護用バンパアブソーバであって、長手方向と直交する断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部と、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部とが車両上下方向で重複する部分を有するジグザグ形状であると共に、ジグザグ形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっているため、歩行者がバンパに衝突した際の、荷重レベルの初期立上りを上昇させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る歩行者保護用バンパアブソーバを示す車両斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】図5の3−3線に沿った拡大断面図である。
【図4】図5の4−4線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る歩行者保護用バンパアブソーバが適用された車体を示す車両斜め前方から見た斜視図である。
【図6】歩行者保護用バンパアブソーバの荷重特性を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る歩行者保護用バンパアブソーバを示す車両斜め前方から見た斜視図である。
【図8】図7の8−8線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
12 フロントバンパ
14 バンパリインフォースメント
20 歩行者保護用バンパアブソーバ
22 歩行者保護用バンパアブソーバの前部切欠部
23 歩行者保護用バンパアブソーバの後部切欠部
24 歩行者保護用バンパアブソーバの上側後部切欠部
25 歩行者保護用バンパアブソーバの上側前部切欠部
26 歩行者保護用バンパアブソーバの下側後部切欠部
27 歩行者保護用バンパアブソーバの下側前部切欠部
32 歩行者保護用バンパアブソーバの一般部
34 歩行者保護用バンパアブソーバの反転部

Claims (3)

  1. バンパカバー内に長手方向が車幅方向に沿って配置され、衝突エネルギを吸収する発泡成形体から成る歩行者保護用バンパアブソーバであって、
    前記長手方向と直交する断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部と、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部とが車両上下方向で重複する部分を有するW形状であると共に、前記W形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっていることを特徴とする歩行者保護用バンパアブソーバ。
  2. 前記逆向きのW形状の境界面が、型抜き方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護用バンパアブソーバ。
  3. バンパカバー内に長手方向が車幅方向に沿って配置され、衝突エネルギを吸収する発泡成形体から成る歩行者保護用バンパアブソーバであって、
    前記長手方向と直交する断面形状が、車両前方側から切り欠かれた前部切欠部と、車両後方側から切り欠かれた後部切欠部とが車両上下方向で重複する部分を有するジグザグ形状であると共に、前記ジグザグ形状の前後方向の向きが車幅方向に沿って所定の間隔で逆向きになっていることを特徴とする歩行者保護用バンパアブソーバ。
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