JP2004345423A - 車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バンパーフェイシャー4に作用する衝突エネルギーを圧縮変形により吸収する圧縮エネルギー吸収材12と、少なくとも一方の面側に座屈変形を許容する座屈許容空間14が形成されるように、幅方向を車体前後方向に向けて圧縮エネルギー吸収材12に並設され、バンパーフェイシャー4に作用する衝突エネルギーを座屈変形により吸収する板状部材からなる座屈エネルギー吸収材11と、圧縮エネルギー吸収材12と座屈エネルギー吸収材11とを一体的に連結する相互に間隔をあけて配置した複数の柱状の連結部材13とを備えた。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置として、歩行者に対する保護性能を高めるため、バンパーレインフォースメントとバンパーフェイシャー間の空間内に衝突エネルギー吸収材を組み込んだものが種々提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、車両の前端部に配置されるバンパー補強材と、バンパー補強材を覆うバンパーフェイシャー間に、ポリプロピレン系樹脂製の発泡成形体からなる衝突エネルギー吸収材を設け、衝突エネルギー吸収材が圧縮変形することにより、バンパーに作用する衝突エネルギーを吸収するように構成した車両用バンパー(例えば、特許文献1参照。)や、バンパー前部に前後隔壁によって中空部を2重に形成するとともに、前後隔壁のいずれか一方に、他方の隔壁と離間して対峙する複数個のリブを突設してなり、バンパーが障害物と比較的弱く衝突した場合には、バンパーの前壁が撓んで衝突エネルギーが吸収され、強く衝突した場合には、リブが座屈変形することによって衝突エネルギーを吸収するように構成した車両用バンパーが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方、バンパーによる衝突エネルギーの吸収期間の全期間にわたって、衝突エネルギー吸収材に作用する衝撃力が略一様になるように設定することで、バンパーに作用する衝突エネルギーを効率よく吸収できることが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−144989号公報(第4頁、第5頁、図1)
【特許文献2】
実開昭57−37051号公報(第4頁〜第6頁、図2、図5)
【特許文献3】
特開2002−172987号公報参照(第2頁、第3頁、図24〜図28)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1,2に見られるように、従来のバンパーにおけるエネルギー吸収構造は、基本的には、発泡成形体などからなる圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形、またはリブなどからなる座屈エネルギー吸収材の座屈変形により衝突エネルギーを吸収する構成を採用している。しかし、図6に示すように、圧縮エネルギー吸収材においては、その変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、座屈エネルギー吸収材においては衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示す。ところで、歩行者に対する安全性能を高めるためには、人体に致命的な損傷を与えない程度に衝撃力のピーク値を低く設定する必要があるが、そのように設定すると、前記圧縮エネルギー吸収材では、衝突エネルギーの吸収初期における衝突エネルギーを十分に吸収できず、また前記座屈エネルギー吸収材では、衝撃力がピーク値を迎えた後の衝突エネルギーの吸収後期における衝突エネルギーを十分に吸収できないという問題がある。もっとも、エネルギー吸収材の変位量を大きく設定できるのであれば、衝突エネルギーの吸収量もそれに応じて大きくなるのであるが、自動車等の車両用に適用する場合には、極限られたスペース内にエネルギー吸収材を配置させる必要があることから、衝撃力のピーク値を低く設定しつつ衝突エネルギーを十分に吸収することが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、製作コストを低く抑えつつ、極限られたスペース内における衝突エネルギーの吸収効率を高め、歩行者に対する保護性能を向上し得る車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段及びその作用】
図6に示すように、圧縮エネルギー吸収材においてはその変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、座屈エネルギー吸収材においては衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示す。一方、歩行者の保護性能を高めるには、歩行者に対する衝撃力が過剰に大きくならないように設定する必要がある。本発明者らは、歩行者の保護性能を向上し得る車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置の構成について鋭意検討した結果、圧縮エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性と、座屈エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性とを組み合わせることで、両エネルギー吸収材による衝突エネルギー吸収期間の全期間にわたって、それに対する衝撃力を歩行者の保護が可能な目標値に維持させて、歩行者の保護性能を確保しつつ、衝突エネルギーを最大限吸収可能な車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置を実現できるとの発想を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明に係る車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置は、バンパーフェイシャーとバンパーレインフォースメント間の空間内に組付けられる車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置であって、前記バンパーレインフォースメントの前側に沿って車幅方向に配置され、バンパーフェイシャーに作用する衝突エネルギーを圧縮変形により吸収する圧縮エネルギー吸収材と、前記バンパーレインフォースメントの前側に沿って車幅方向に配置され、少なくとも一方の面側に、座屈変形を許容する座屈許容空間が形成されるように、幅方向を車体前後方向に向けて圧縮エネルギー吸収材に並設され、バンパーフェイシャーに作用する衝突エネルギーを座屈変形により吸収する板状部材からなる座屈エネルギー吸収材と、前記圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材とを一体的に連結する相互に間隔をあけて配置した複数の柱状の連結部材とを備え、圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材との協働によりバンパーフェイシャーに作用する衝突エネルギーを吸収するものである。
【0010】
前述のように圧縮エネルギー吸収材においては、その変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、座屈エネルギー吸収材においては衝撃力が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示すことになる。それに対して本発明に係る車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置では、圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材とを組み合わせて衝突エネルギーを吸収するので、衝突エネルギー吸収装置による衝突エネルギーの吸収期間の全期間にわたって、衝突エネルギー吸収装置に対する衝撃力を略一定に維持することが可能となり、衝突エネルギーの吸収特性を略理想的な形態に設定できる。このため、衝突エネルギー吸収装置に対する衝撃力が、歩行者を保護可能な目標値になるように設定することで、歩行者の保護性能を十分に確保しつつ、衝突エネルギー吸収装置の僅かな設置スペース内において、最大限効率的に衝突エネルギーを吸収することが可能となる。
【0011】
また、この衝突エネルギー吸収装置では、連結部材により座屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とが一体的に連結されているので、座屈エネルギー吸収材の姿勢の安定性が高くなり、衝突直前や衝突時における振動等で、座屈エネルギー吸収材の姿勢が微妙に変動することを防止して、座屈不良の発生を効果的に防止できる。
【0012】
更に、連結部材として相互に間隔をあけて配置した複数の柱状の連結部材を採用しているので、連結部材を配置させている部分においては、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形が多少阻害されるが、連結部材間においては、車体前後方向に対する圧縮エネルギー吸収材の略全体幅を圧縮変形させて、衝突エネルギーを効果的に吸収することが可能となる。つまり、連結部材が設けられる位置においては、バンパーフェイシャーとバンパーレインフォースメント間に連結部材が配置されて、連結部材も車体前後方向に変形しようとすることから、車体前後方向に対する連結部材の厚さ分だけ圧縮エネルギー吸収材が圧縮変形し難くなるが、連結部材間においては障害物となるものがないので、車体前後方向に対する圧縮エネルギー吸収材の略全体幅を圧縮変形させて、衝突エネルギーを効果的に吸収することが可能となる。
【0013】
更にまた、座屈エネルギー吸収材の少なくとも一方の面側に、座屈変形を許容する座屈許容空間が形成されるので、座屈変形した座屈エネルギー吸収材が圧縮エネルギー吸収材に干渉することを防止して、座屈エネルギー吸収材との接触による、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形不良を防止できるとともに、座屈エネルギー吸収材同士の干渉を防止して、車体前後方向に嵩張らないように座屈エネルギー吸収材を座屈させ、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形量を極力大きく設定できる。
【0014】
また、座屈エネルギー吸収材及び圧縮エネルギー吸収材をバンパーレインフォースメントの前側に沿って車幅方向に配置しているので、両エネルギー吸収材に作用する衝突荷重をバンパーレインフォースメントにより確実に受け止めることができるとともに、衝突荷重がバンパーフェイシャーの車幅方向の任意の位置に対して作用しても、両エネルギー吸収材により効率よく衝突エネルギーを吸収することが可能となる。
【0015】
ここで、連結部材は座屈エネルギー吸収材や圧縮エネルギー吸収材とは別部材で構成することも可能であるが、衝突エネルギー吸収装置の部品点数を少なくするとともに組立性を向上するため、前記圧縮エネルギー吸収材又は座屈エネルギー吸収材に一体形成することが好ましい。
【0016】
座屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とは任意の位置で連結部材により連結できるが、前記連結部材として、両エネルギー吸収材の車体前後方向の前部側同士を連結する前部連結部材と、両エネルギー吸収材の車体前後方向の後部側同士を連結する後部連結部材とを設けると、座屈エネルギー吸収材の姿勢の安定性を高め、座屈エネルギー吸収材の姿勢変化による座屈不良の発生を防止できるので好ましい。
【0017】
前記前部連結部材と後部連結部材とを正面視において重なるように車幅方向に対して略同じ位置に設けてもよし、前記前部連結部材と後部連結部材とを正面視において重ならないように車幅方向にずらして設けてもよい。後者の場合には、衝突エネルギー吸収時に前後の連結部材が重ならないので、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形が連結部材により阻害されることを一層効果的に防止できる。
【0018】
衝突直前や衝突時における座屈エネルギー吸収材の安定性を向上し、座屈エネルギー吸収材の座屈不良を防止するために、前記座屈エネルギー吸収材の上下両側に連結部材を設け、座屈エネルギー吸収材の上面側の連結部材と下面側の連結部材とを座屈エネルギー吸収材を挟んで車体上下方向に連なるように設けることが好ましい。
【0019】
前記圧縮エネルギー吸収材が板状である場合には、両エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性の合成特性を容易に求めることが可能となり、衝突エネルギー吸収装置の設計が容易になる。
【0020】
衝突エネルギー吸収装置の衝突エネルギー吸収特性をバランスよく設定するため、前記圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材の少なくとも一方を複数設けることができる。
【0021】
衝突時に座屈エネルギー吸収材に作用する車体後方への荷重をバンパーレインフォースメントで確実に受け止めて座屈エネルギー吸収材を座屈変形させるため、前記座屈エネルギー吸収材をバンパーレインフォースメントの前面に対して略垂直に設けることが好ましい。
【0022】
前記座屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを略平行に設けることができる。この場合には、両エネルギー吸収材の変形量が略同じになるので、両エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性の合成特性を容易に求めることが可能となり、衝突エネルギー吸収装置の設計が容易になる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図3に示すように、車体1の前部には、車体前後方向に延びる左右1対のフロントサイドフレーム2が設けられ、左右のフロントサイドフレーム2の前端部は、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント3により連結され、バンパーレインフォースメント3の前側にはバンパーフェイシャー4が設けられ、本発明に係る車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置10は、バンパーレインフォースメント3とバンパーフェイシャー4の上部間の空間5内に組み付けられている。バンパーレインフォースメント3の下方のやや後方側には車幅方向に延びるフロントクロスメンバー6が設けられ、フロントクロスメンバー6にはバンパーフェイシャー4付近まで延びる下部緩衝材7が設けられている。この下部緩衝材7は、歩行者等が車体の下側へ巻き込まれることを防止するためのもので、本発明とは直接的に関係しないのでその詳細な説明を省略する。また、この衝突エネルギー吸収装置10は、リアバンパーに対しても同様に適用することが可能である。
【0024】
フロントバンパー8は、バンパーフェイシャー4と衝突エネルギー吸収装置10とバンパーレインフォースメント3とで構成され、前突時における衝突荷重は、バンパーフェイシャー4を介して衝突エネルギー吸収装置10に伝達されて、両者が変形することで受け止められ、更に大きな衝突荷重が作用すると、バンパーレインフォースメント3に衝突荷重が作用して、バンパーレインフォースメント3が変形することで受け止められる。
【0025】
衝突エネルギー吸収装置10は、図1〜図5に示すように、フロントバンパー8に作用する衝突エネルギーを座屈変形により吸収する板状の座屈エネルギー吸収材11と、フロントバンパー8に作用する衝突エネルギーを圧縮変形により吸収する板状の圧縮エネルギー吸収材12と、座屈エネルギー吸収材11を圧縮エネルギー吸収材12に対して間隔をあけて一体的に連結する連結部材13とを備えている。
【0026】
圧縮エネルギー吸収材12は、合成樹脂発泡成形体からなる細長い板状部材で構成され、バンパーレインフォースメント3とバンパーフェイシャー4とで形成される空間5内において、バンパーレインフォースメント3の前側に沿ってその略全長にわたって略水平に設けられ、バンパーレインフォースメント3の前面に対して略垂直に配置されている。圧縮エネルギー吸収材12は、板状以外の形状に構成することも可能であり、例えばバンパーレインフォースメント3とバンパーフェイシャー4とで形成される空間5に適合する形状に形成してもよい。
【0027】
圧縮エネルギー吸収材12は上下方向に間隔をあけて1対設けられ、バンパーレインフォースメント3の前面に対してピン等の係止具や凹凸嵌合部や接着剤や両面テープ、或いはこれらの組み合わせることで固定されている。圧縮エネルギー吸収材12の車幅方向の長さはバンパーレインフォースメント3と略同じ長さに設定され、車体前後方向の長さはバンパーレインフォースメント3とバンパーフェイシャー4間の隙間に適合した長さに設定されている。圧縮エネルギー吸収材12の前端部はバンパーフェイシャー4の内面に沿った緩やかな湾曲状に形成され、圧縮エネルギー吸収材12の前端部はバンパーフェイシャー4に略隙間無く近接配置され、空間5内のスペースを有効活用して衝突エネルギーを吸収できるように構成されている。
【0028】
圧縮エネルギー吸収材1としては、圧縮変形により衝突エネルギーを吸収可能なものであれば、合成樹脂材料や合成ゴム材料などの任意の素材からなるものを採用できる。具体的には、ポリスチレン系樹脂や、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、これらの合成樹脂の共重合体などからなる発泡成形体で構成できる。
【0029】
圧縮エネルギー吸収材12をビーズ法にて成形する場合には、素材自体に柔軟性を有することから、例えばエチレンプロピレンランダムポリプロピレン樹脂、エチレンプロピレンブロックポリプロピレン樹脂、ホモポリプロピレンエチレンプロピレンブテンランダムターポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、架橋低密度ポリエチレン(架橋LDPE)などのポリオレフィン系樹脂を好適に利用できる。また、発泡成形体の発泡倍率は、原料ビーズの素材にもよるが、3〜150倍の範囲内が好ましい。具体的には、ポリオレフィン系合成樹脂材料からなる予備発泡ビーズにおいては、発泡倍率が低すぎると圧縮変形し難くなって衝撃力が大きくなり、高すぎると圧縮変形し易くなりすぎて十分に衝突エネルギーを吸収できないので、2倍以上で90倍以下、好ましくは2倍以上で60倍以下のものを採用することになる。
【0030】
座屈エネルギー吸収材11は、合成樹脂材料からなるソリッド状の細長い板状部材で構成され、バンパーレインフォースメント3の前側に沿ってその略全長にわたって略水平に設けられ、バンパーレインフォースメント3の前面に対して略垂直に配置されている。また、座屈エネルギー吸収材11は、上下の圧縮エネルギー吸収材12の略中間位置に、圧縮エネルギー吸収材12と略平行に設けられ、後述する複数の柱状の連結部材13を介して、上下の圧縮エネルギー吸収材12に一体的に連結されている。座屈エネルギー吸収材11の平面形状は圧縮エネルギー吸収材12と略同形状に形成され、その後側端はバンパーレインフォースメント3に沿って略隙間無く配置され、その前側端はバンパーフェイシャー4の内面に沿って略隙間無く配置されている。
【0031】
上下の圧縮エネルギー吸収材12と座屈エネルギー吸収材11間には上下1対の座屈許容空間14が形成され、この座屈許容空間14内において座屈エネルギー吸収材11が座屈することで、座屈した座屈エネルギー吸収材11と圧縮エネルギー吸収材12との干渉が回避され、座屈エネルギー吸収材11の座屈変形が円滑に且つ確実になされるように構成されている。そして、このように座屈エネルギー吸収材11が円滑に且つ確実に座屈し、座屈不良により車体前後方向に嵩張ることが防止されるので、その分圧縮エネルギー吸収材13の圧縮変形量を大きく設定できる。また、座屈エネルギー吸収材11と圧縮エネルギー吸収材13との接触による、圧縮エネルギー吸収材13の圧縮変形不良が防止される。このような効果を得るため、座屈許容空間14の高さ(座屈エネルギー吸収材11と圧縮エネルギー吸収材12間の間隔)は、座屈エネルギー吸収材11の車体前後方向に対する長さの1/3以上の高さに設定することが好ましい。尚、座屈許容空間14は、前述のように座屈エネルギー吸収材11の上下両側に設けることも可能であるが、座屈エネルギー吸収材屈11の座屈後の折曲側にのみ設けることが、バンパーレインフォースメント3とバンパーフェイシャー4とで形成される空間5を有効活用する上で好ましい。
【0032】
座屈エネルギー吸収材11としては、座屈変形により衝突エネルギーを吸収可能なものであれば、合成樹脂材料や高密度発泡体あるいは金属材料などからなるものを採用できる。具体的には、ポリスチレン系樹脂や、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、これらの合成樹脂の共重合体などからなる合成樹脂材料やその高密度発泡体を好適に採用できる。高密度発泡体で構成する場合には、座屈エネルギー吸収材11が確実に座屈するように、その発泡倍率を20倍以下に設定することが好ましい。このような高密度発泡体からなる座屈エネルギー吸収材11は、前述した圧縮エネルギー吸収材12と同様にビーズ法にて成形できる。
【0033】
尚、座屈エネルギー吸収材11としては、前述のように平坦な板状の部材を用いる以外に、座屈不良を防止するなどの目的で、上下の少なくとも一方の面に車体前後方向に延びるリブ状の突起を形成したものや、車体上下方向に振幅する波形状のものを用いることも可能である。また、座屈エネルギー吸収材11は、バンパーレインフォースメント3の前面に対して略直角に配置されていれば、必ずしも水平に配置させる必要はなく、車体左下がりや車体右下がりの傾斜状に配置させてもよい。
【0034】
両エネルギー吸収材11,12の選定に際しては、リサイクルの観点から、圧縮エネルギー吸収材12ならびに座屈エネルギー吸収材11の両方をポリプロピレン系樹脂で構成することが好ましい。
【0035】
連結部材13は、圧縮エネルギー吸収材12に一体的に形成した柱状の部材からなり、上下の圧縮エネルギー吸収材12の略中間位置に座屈エネルギー吸収材11を固定保持するように、これら3つのエネルギー吸収材12,12,11を一体的に連結するもので、圧縮エネルギー吸収材12の前部及び後部に車幅方向に例えば100〜300mmの間隔をあけて上下方向に突出状にそれぞれ複数形成されている。連結部材13の先端部は接着剤などを介して座屈エネルギー吸収材11に固定され、これにより上下の圧縮エネルギー吸収材12と座屈エネルギー吸収材11とが一体的に結合されている。また、複数の連結部材13により座屈エネルギー吸収材11の前部及び後部と、圧縮エネルギー吸収材12の前部及び後部とをそれぞれ一体的に連結することで、衝突直前や衝突時の振動等における座屈エネルギー吸収材11の不安定な挙動が規制される。
【0036】
連結部材13は、角形や円形や楕円形などの任意の断面形状に形成でき、座屈エネルギー吸収材11の座屈変形が円滑になされるように、その水平断面の断面積が、座屈エネルギー吸収材11と圧縮エネルギー吸収材12との結合強度が許す範囲で極力小さくなり、且つ圧縮エネルギー吸収材12の圧縮変形を阻害しないように、車体前後方向の長さが極力短くなるように設定することが好ましい。
【0037】
前後の連結部材13は同一形状に形成してもよいが、異なる形状に形成してもよい。また、座屈エネルギー吸収材11の安定性は多少低下するが、前側或いは後側の連結部材13を省略したものも本発明の範疇である。また、連結部材13は、圧縮エネルギー吸収材12及び座屈エネルギー吸収材11とは別部材で構成することも可能であるし、座屈エネルギー吸収材11に一体的に形成することも可能である。座屈エネルギー吸収材11と一体的に形成する場合には、上下の圧縮エネルギー吸収材12間に複数枚の座屈エネルギー吸収材11を連結部材で連結して配置することも可能である。
【0038】
また、上下の連結部材13は、平面視において異なる位置に配置することも可能であるが、図4に示すように、平面視において同じ位置、即ち座屈エネルギー吸収材11の上面側の連結部材13と下面側の連結部材13とが座屈エネルギー吸収材11を挟んで車体上下方向に連なるように設けると、衝突直前や衝突時における座屈エネルギー吸収材の安定性を向上でき、座屈エネルギー吸収材の座屈不良を防止できるので好ましい。また、前端側の連結部材13と後端側の連結部材13とは、正面視において(車体前後方向に対して)車幅方向に重なるように配置してもよいが、図7に示す圧縮エネルギー吸収材12Aのように、正面視において車幅方向に重ならないように車幅方向にずらして千鳥状に設けると、衝撃力により衝突エネルギー吸収装置10が変形したときに、前後の連結部材13同士が重ならないように設定して、圧縮エネルギー吸収材12の圧縮変形量を極力増やすことができるので好ましい。
【0039】
次に、衝突エネルギー吸収装置10の作用について説明する。
従来の衝突エネルギー吸収装置においては、フロントバンパーに対して衝突荷重が作用すると、図6に示すように、圧縮エネルギー吸収材単体の場合には、その変位が大きくなるにしたがって、作用する衝撃力が大きくなる傾向を示し、座屈エネルギー吸収材単体の場合には、衝突荷重が作用した初期段階において、作用する衝撃力が急速に大きくなってピーク値を迎え、その後は衝撃力が急速に低下する傾向を示すことになる。しかし、この衝突エネルギー吸収装置10では、圧縮エネルギー吸収材12と座屈エネルギー吸収材11とが併設されているので、両エネルギー吸収材11,12への衝撃力が図6に示すように合成されて、衝突エネルギー吸収装置10による衝突エネルギーの吸収期間の略全期間にわたって衝突エネルギー吸収装置10に対する衝撃力が略一様となり、衝突エネルギーの吸収特性を略理想的な形態に設定できる。このため、衝突エネルギー吸収装置10に対する衝撃力が、歩行者を保護可能な目標値になるように設定することで、歩行者の保護性能を十分に確保しつつ、衝突エネルギー吸収装置10の僅かな設置スペース内で、最大限効率的に衝突エネルギーを吸収することが可能となる。
【0040】
尚、衝突エネルギー吸収装置10を設計する際には、このような衝突エネルギー吸収特性が得られるように、両エネルギー吸収材11,12の素材や形状や発泡倍率や各部のサイズを設定することになる。また、両エネルギー吸収材11,12の発泡倍率、素材、形状、各部のサイズ設定により、衝突エネルギー吸収装置10の衝突エネルギー吸収特性すなわちエネルギー吸収曲線(図6における「合成」の曲線)を自由に設計することが可能となる。
【0041】
例えば、両エネルギー吸収材11,12の車体1前後方向に対する長さを調整して、両エネルギー吸収材11,12が、衝突荷重に対して略同一タイミングでエネルギー吸収変形を開始するように設定したり、両エネルギー吸収材11,12が、衝突荷重に対して異なるタイミングでエネルギー吸収変形を開始するように設定することになる。より具体的には、座屈に至るまでの変位量の大きい座屈エネルギー吸収材11を用いる場合には、座屈エネルギー吸収材11の先端部を圧縮エネルギー吸収材12よりも前方へ突出させ、座屈エネルギー吸収材11によるエネルギー吸収変形の開始タイミングが、圧縮エネルギー吸収材12によるエネルギー吸収変形の開始タイミングよりも早くなるように設定することで、衝突エネルギー吸収装置10によるエネルギー吸収期間の略全期間にわたって、衝突エネルギー吸収装置10に対する衝撃力が略一様になるように設定することになる。
【0042】
尚、座屈エネルギー吸収材11及び圧縮エネルギー吸収材12の枚数や上下の位置関係は任意に設定可能で、例えば座屈エネルギー吸収材11と圧縮エネルギー吸収材12とを交互に配置させてもよいし、上下の圧縮エネルギー吸収材12間に複数枚の座屈エネルギー吸収材11を配置させてもよい。より具体的には、図8、図9に示す衝突エネルギー吸収装置10Bのように、前記圧縮エネルギー吸収材12間に2枚の座屈エネルギー吸収材11を設けるとともに、隣接する座屈エネルギー吸収材11間に上下両側に連結部材13を突出させた圧縮エネルギー吸収材12Bを設け、3枚の圧縮エネルギー吸収材12、12Bと2枚の座屈エネルギー吸収材11とを備えさせることになる。また、上下の圧縮エネルギー吸収材12の間に3枚以上の枚数の座屈エネルギー吸収材11を設ける場合には、隣接する座屈エネルギー吸収材11間に圧縮エネルギー吸収材12Bをそれぞれ配置させ、座屈エネルギー吸収材11と圧縮エネルギー吸収材12,12Bを一体的に連結することになる。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置によれば、圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材との組み合わせにより衝突エネルギーを吸収するという簡単な構成で、衝突エネルギーの吸収特性を略理想的な形態に設定できる。このため、衝突エネルギー吸収装置に対する衝撃力が、歩行者を保護可能な目標値になるように設定することで、歩行者の保護性能を十分に確保しつつ、衝突エネルギー吸収装置の僅かな設置スペース内において、最大限効率的に衝突エネルギーを吸収することが可能となる。
【0044】
また、この衝突エネルギー吸収装置では、連結部材により座屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを一体的に連結するので、衝突直前や衝突時における座屈エネルギー吸収材の姿勢の安定性を向上でき、座屈エネルギー吸収材の姿勢が微妙に変動することによる座屈不良の発生を効果的に防止できる。また、連結部材として相互に間隔をあけて配置した複数の柱状の連結部材を採用しているので、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形が連結部材により阻害されることを防止できる。
【0045】
更に、座屈エネルギー吸収材の少なくとも一方の面側に、座屈変形を許容する座屈許容空間が形成されるので、座屈変形した座屈エネルギー吸収材が圧縮エネルギー吸収材に干渉することを防止して、座屈エネルギー吸収材との接触による圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形不良を防止できるとともに、座屈エネルギー吸収材同士の干渉を防止して、車体前後方向に嵩張らないように座屈エネルギー吸収材を座屈させて、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形量を極力大きく設定できる。
【0046】
更にまた、座屈エネルギー吸収材及び圧縮エネルギー吸収材をバンパーレインフォースメントの前側に沿って車幅方向に配置しているので、両エネルギー吸収材をバンパーレインフォースメントにより確実に受け止めることができるとともに、衝突荷重がバンパーフェイシャーの車幅方向の任意の位置に対して作用しても、両エネルギー吸収材により効率よく衝突エネルギーを吸収することが可能となる。
【0047】
ここで、前記圧縮エネルギー吸収材又は座屈エネルギー吸収材に連結部材を一体形成すると、衝突エネルギー吸収装置の部品点数を少なくできるとともに組立性を向上できる。
【0048】
前記連結部材として、両エネルギー吸収材の車体前後方向の前部側同士を連結する前部連結部材と、両エネルギー吸収材の車体前後方向の後部側同士を連結する後部連結部材とを設けると、座屈エネルギー吸収材の姿勢の安定性を高め、座屈エネルギー吸収材の姿勢変化による座屈不良の発生を防止できる。
【0049】
前記前部連結部材と後部連結部材とを正面視において重ならないように車幅方向にずらして設けると、衝突エネルギー吸収時に前後の連結部材が重ならないので、圧縮エネルギー吸収材の圧縮変形が連結部材により阻害されることを一層効果的に防止できる。
【0050】
前記座屈エネルギー吸収材の上下両側に連結部材を設け、座屈エネルギー吸収材の上面側の連結部材と下面側の連結部材とを座屈エネルギー吸収材を挟んで車体上下方向に連なるように設けると、衝突直前や衝突時における座屈エネルギー吸収材の安定性を向上でき、座屈エネルギー吸収材の座屈不良を防止できる。
【0051】
前記圧縮エネルギー吸収材が板状である場合には、両エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性の合成特性を容易に求めることが可能となり、衝突エネルギー吸収装置の設計が容易になる。
【0052】
前記圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材の少なくとも一方を複数設けると、衝突エネルギー吸収装置の衝突エネルギー吸収特性をバランスよく設定できる。
【0053】
前記座屈エネルギー吸収材をバンパーレインフォースメントの前面に対して略垂直に設けると、衝突時に座屈エネルギー吸収材に作用する車体後方への荷重をバンパーレインフォースメントで確実に受け止めて座屈エネルギー吸収材を座屈変形させることができる。
【0054】
前記座屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを略平行に設けると、両エネルギー吸収材の変形量が略同じになるので、両エネルギー吸収材の衝突エネルギー吸収特性の合成特性を容易に求めることが可能となり、衝突エネルギー吸収装置の設計が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車体前部に組み付けた衝突エネルギー吸収装置の平面図
【図2】車体前部に組み付けた衝突エネルギー吸収装置の正面図
【図3】衝突エネルギー吸収装置を組み付けた車体前部に縦断面図
【図4】衝突エネルギー吸収装置の斜視図
【図5】衝突エネルギー吸収装置の分解斜視図
【図6】圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材の変位と衝撃力との関係を示すグラフ
【図7】他の構成の圧縮エネルギー吸収材の底面図
【図8】他の構成の衝突エネルギー吸収装置及びその付近の縦断面図
【図9】同衝突エネルギー吸収装置の斜視図
【符号の説明】
1 車体
2 フロントサイドフレーム
3 バンパーレインフォースメント
4 バンパーフェイシャー 5 空間
6 フロントクロスメンバー 7 下部緩衝材
8 フロントバンパー
10 衝突エネルギー吸収装置
11 座屈エネルギー吸収材
12 圧縮エネルギー吸収材 13 連結部材
14 座屈許容空間
12A 圧縮エネルギー吸収材
10B 衝突エネルギー吸収装置
12B 圧縮エネルギー吸収材
Claims (10)
- バンパーフェイシャーとバンパーレインフォースメント間の空間内に組付けられる車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置であって、
前記バンパーレインフォースメントの前側に沿って車幅方向に配置され、バンパーフェイシャーに作用する衝突エネルギーを圧縮変形により吸収する圧縮エネルギー吸収材と、
前記バンパーレインフォースメントの前側に沿って車幅方向に配置され、少なくとも一方の面側に、座屈変形を許容する座屈許容空間が形成されるように、幅方向を車体前後方向に向けて圧縮エネルギー吸収材に並設され、バンパーフェイシャーに作用する衝突エネルギーを座屈変形により吸収する板状部材からなる座屈エネルギー吸収材と、
前記圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材とを一体的に連結する相互に間隔をあけて配置した複数の柱状の連結部材と、
を備え、圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材との協働によりバンパーフェイシャーに作用する衝突エネルギーを吸収する車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。 - 前記圧縮エネルギー吸収材又は座屈エネルギー吸収材に連結部材を一体形成した請求項1記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記連結部材として、両エネルギー吸収材の車体前後方向の前部側同士を連結する前部連結部材と、両エネルギー吸収材の車体前後方向の後部側同士を連結する後部連結部材とを設けた請求項1又は2記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記前部連結部材と後部連結部材とを正面視において重なるように車幅方向に対して略同じ位置に設けた請求項3記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記前部連結部材と後部連結部材とを正面視において重ならないように車幅方向にずらして設けた請求項3記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記座屈エネルギー吸収材の上下両側に連結部材を設け、座屈エネルギー吸収材の上面側の連結部材と下面側の連結部材とを座屈エネルギー吸収材を挟んで車体上下方向に連なるように設けた請求項1〜5のいずれか1項記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記圧縮エネルギー吸収材が板状である請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記圧縮エネルギー吸収材と座屈エネルギー吸収材の少なくとも一方を複数設けた請求項1〜7のいずれか1項記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記座屈エネルギー吸収材をバンパーレインフォースメントの前面に対して略垂直に設けた請求項1〜8のいずれか1項記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
- 前記座屈エネルギー吸収材と圧縮エネルギー吸収材とを略平行に設けた請求項1〜9のいずれか1項記載の車両用バンパーの衝突エネルギー吸収装置。
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