JP4007847B2 - 真空加熱設備における劣化生成物の回収および脱臭装置 - Google Patents
真空加熱設備における劣化生成物の回収および脱臭装置Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有する絶縁油を使用した変圧器を解体処理して、鉄心やコイル等の内部部品に付着しているPCBを含有する絶縁油を蒸発・分離させて、前記蒸発した絶縁油等を含む劣化生成物を良好に凝縮回収したり、前記蒸発・分離時に発生する排気ガスを簡易に脱臭処理して、大気中に悪臭等を放散させることなく排気可能とした、真空加熱設備における劣化生成物の回収および脱臭装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、使用済みの変圧器においては、封入されている絶縁油を抜油して解体した後、鉄心とかコイル等の内部部品は、有価物として再生利用する関係上、鉄類とか銅類等に分別収集して有効活用している。
【0003】
そして、前記封入された変圧器の絶縁油からは、国が使用を禁止している添加物(例えば、ポリ塩化ビフェニルであり、以下「PCB」と称す。)が検出される場合がある。PCBは、優れた電気絶縁特性,難燃性特性を備えているため、過去において、電気絶縁体として種々な産業分野に広く利用されていた。変圧器の絶縁油も例外ではなかった。しかし、今日ではPCBは人体に悪影響を及ぼす有害な物質としてその使用を禁止されている。従って、前記PCBを含有する絶縁油を使用した変圧器においては、これを解体して鉄心やコイルから鉄類,銅類を回収する場合には、前記鉄心,コイル等からなる変圧器の内部部品からPCBを含む絶縁油を確実に分離・除去する必要があった。
【0004】
前記PCBを変圧器から除去する事例としては、例えば、絶縁油を抜油した変圧器を原姿の状態、あるいは、鉄心やコイル等を個別に解体した状態で、真空加熱炉を用いて真空加熱処理を行っていた。前記処理方法では、真空加熱炉内に変圧器を収容し、所要の減圧状態下で加熱することにより、変圧器内に内在している絶縁油を蒸発・分離して除去し、この後、前記PCBを含有する絶縁油が除去された変圧器の内部部品を構成する鉄心やコイルから、鉄類や銅類等個別に分別収集し、これを有価物として再利用していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
然るに、前記真空加熱炉にて変圧器を原姿の状態、あるいは、ケースや鉄心,コイル等に分別解体して真空加熱処理する場合、真空加熱炉内を例えば、約200℃の温度に維持するとともに、炉内の圧力を例えば、6.7Pa以下に維持して加熱処理を行うと、鉄心やコイル等変圧器の内部部品に付着している絶縁油は、内部部品から徐々に蒸発・分離されて真空加熱炉から排出され、冷却器を利用して冷却凝縮し、常温により液体に戻して回収していた。また、絶縁油の蒸発・分離時に発生する排気ガスは、排気ガス処理装置により清浄に浄化されて大気中に放出していた。
【0006】
しかし、前記内部部品に付着していたり、残存している絶縁油を蒸発・分離させた場合とか、内部部品の真空加熱処理時に発生する、例えば、絶縁油の油脂成分とかコイルに介在されている絶縁紙やコイル押えに使用した木材、あるいは、コイルの皮膜(エナメル等)等からなる微細な固形分によって発生する劣化生成物が、排気ガスとともに排出されて、排気設備(真空ポンプ)内に侵入し、排気設備に錆等を発生させたり、駆動部内に侵入したりして排気設備の円滑な駆動を阻害したり、故障を誘発するという問題があった。
【0007】
また、排気ガス中に含まれている悪臭は、排気ガス処理装置にて脱臭して大気中に放散しているが、この場合、脱臭部材は一般に活性炭を使用している関係上、活性炭は排気ガス中に油脂分が含まれていることもあって油脂分が付着しやすくなり、この結果、脱臭効果が早期に低下して悪臭の脱臭処理が不充分となったり、あるいは、活性炭の交換作業を頻繁に行なわなければならない等、前記排気設備の故障を誘発することと相まって、排気設備や排気ガス処理装置のメンテナンス機会が必要以上に多くなる等の問題があった。その上、前記排気設備のメンテナンスにより真空加熱炉の稼動率は大幅に低下するため、変圧器の廃棄処理作業は非効率化するとともに、コスト高を招く大きな要因となっていた。
【0008】
本発明は、前記の種々の問題点に鑑み、変圧器の内部部品等の真空加熱処理時、内部部品に付着しているPCBを含有している絶縁油を蒸発・分離する際に発生する劣化生成物の排気設備への侵入を阻止し、かつ、排気ガス中に含まれる悪臭を良好に脱臭処理して、変圧器のケースや内部部品等に付着している絶縁油の蒸発・分離処理を迅速・確実に、かつ、効率よく行うことができるようにした真空加熱設備における劣化生成物の回収および脱臭装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、PCBを含有する絶縁油が付着した変圧器のケースや内部部品を真空加熱炉に収容し、所要の真空状態下で加熱処理してケースや内部部品に付着している前記絶縁油を蒸発・分離させて、ケースや内部部品からPCBを除去するように構成した真空加熱設備において、前記ケースや内部部品から蒸発・分離したPCBを含有する絶縁油や、真空加熱処理時に内部部品から発生する微細な固形分を含む劣化生成物を冷媒により冷却・凝縮させて捕集・回収し、前記絶縁油や劣化生成物が排気設備に流入するのを阻止する第1,第2のコンデンサおよび回収設備からなる回収装置を前記真空加熱設備に付設し、前記回収設備は、内部に温度を−40ないし−100℃の範囲に設定・保持した冷媒を収容して、その外表面に第2のコンデンサを通過したPCBを含有する微量の絶縁油や、微細な固形分を含む劣化生成物を接触させることにより冷却・凝縮して捕集する冷媒収容管と、内部に冷媒収容管を気密に遊嵌し、前記冷媒収容管との間で前記絶縁油や劣化生成物が屈曲しながら流通する流路を形成した捕集管体とからなる捕集部材を、第2のコンデンサと排気設備との間に所定数配設して構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明においては、変圧器のケースや内部部品から蒸発・分離したPCBを含有する絶縁油や、真空加熱処理時に内部部品から発生する微細な固形分を含む劣化生成物の大部分を、第1,第2のコンデンサにおいて冷却・凝縮して回収するとともに、前記第2のコンデンサを通過したPCBを含有する微量の絶縁油や、微細な固形分を含む劣化生成物は、前記第2のコンデンサと排気設備との間に配設した回収設備を構成する所定数の捕集部材に流入し、前記捕集部材を構成する冷媒収容管と捕集管体との間に形成された流路を屈曲しながら流通する際に、極低温状態(−40〜−100℃の範囲)に設定・保持された冷媒を収容した前記冷媒収容管の外表面と接触して冷却・凝縮され、排気設備に流入する前の段階で捕集・回収されるため、排気設備に絶縁油や劣化生成物、該劣化生成物に含まれる微細な固形分が侵入して、その排気性能を低下させるという問題を確実に解消することができる。この結果、排気設備が変圧器の真空加熱処理中において、その機能低下によって真空加熱処理作業に支障をきたしたり、即ち、変圧器の内部部品等から蒸発・分離させた絶縁油の回収効率を低下させたり、劣化生成物が真空加熱炉と回収設備との間に滞留したりするという問題を確実に回避し、変圧器の真空加熱処理を効率的に行うことができる。しかも、回収設備においては劣化生成物だけでなく、PCBを含む微量の絶縁油も極低温状態下で確実に冷却・凝縮して回収することが可能となるため、PCBが大気中に放出されるのを確実に防ぐことができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、PCBを含有する絶縁油が付着した変圧器のケースや内部部品を真空加熱炉に収容し、所要の真空状態下で加熱処理してケースや内部部品に付着している前記絶縁油を蒸発・分離させて、ケースや内部部品からPCBを除去するように構成した真空加熱設備において、前記ケースや内部部品から蒸発・分離したPCBを含有する絶縁油や、真空加熱処理時に内部部品から発生する微細な固形分を含む劣化生成物を冷媒により冷却・凝縮させて捕集・回収し、前記絶縁油や劣化生成物が排気設備に流入するのを阻止する第1,第2のコンデンサおよび回収設備からなる回収装置と、排気設備の排出側において絶縁油の蒸発・分離時に発生する排気ガスに含有される臭気を脱臭処理する脱臭装置とを前記真空加熱設備に付設し、前記回収設備は、内部に温度を−40ないし−100℃の範囲に設定・保持した冷媒を収容して、その外表面に第2のコンデンサを通過したPCBを含有する微量の絶縁油や、微細な固形分を含む劣化生成物を接触させることにより冷却・凝縮して捕集する冷媒収容管と、内部に冷媒収容管を気密に遊嵌し、前記冷媒収容管との間で前記絶縁油や劣化生成物が屈曲しながら流通する流路を形成した捕集管体とからなる捕集部材を、第2のコンデンサと排気設備との間に所定数配設して構成するとともに、前記脱臭装置は、オゾン発生装置と、活性炭と、活性炭を主成分とするアルデヒド類吸着材と、余剰オゾンを分解処理する脱臭触媒と、ブロワとを効果的に配置して構成するようにしたことを特徴とする真空加熱設備における劣化生成物の回収装置および脱臭装置。
【0012】
請求項2記載の発明においては、脱臭処理部材として活性炭の他に、オゾン添加型の脱臭部材を付加して、排気ガス中に特に多く含有されて悪臭の大きな要因をなすアルデヒド類を良好に脱臭処理することができるため、排気ガスの排出によって悪臭が大気中に放散されるという問題を確実にクリアすることができる。また、回収設備において、排気ガスに残存している絶縁油や劣化生成物、該劣化生成物に含まれる微細な固形分を確実に回収することができるので、脱臭部材に絶縁油や劣化生成物、微細な固形分が付着することにより、脱臭機能が低下するという問題も良好に回避することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図4により説明する。図1において、1は真空加熱設備の真空加熱炉を示し、廃棄処理する変圧器のケース2とか、変圧器を構成する鉄心やコイル等の内部部品(変圧器中身)3を出し入れする開口を開閉する開閉扉4を一方に備え、上部には上部壁体を貫通して排気管5が外方に向けて導出されている。また、前記真空加熱炉1には、常時炉内を設定温度に加熱維持する電熱ヒータ等からなる加熱源1aが具備されている。
【0018】
前記真空加熱炉から導出した排気管5には、図1に示すように、第1のコンデンサ(凝縮器)6と、補助ポンプ7と、第2のコンデンサ(凝縮器)8と、回収設備9と、排気設備10と、脱臭装置11とが、それぞれ直列的に配管接続されている。
【0019】
前記第1,第2のコンデンサ6,8には、絶縁油の蒸気等真空加熱炉1内から排出される加熱液・気体により加温された冷媒をコンプレッサ等により圧縮して各コンデンサ6,8内を循環させることにより、コンデンサ6,8内を流通する真空加熱炉1から排出される絶縁油の蒸気や排気ガスを冷却凝縮させるための冷媒循環装置12が連結されている。また、前記各コンデンサ6,8には冷媒により常温化されて各コンデンサ6,8内に滞留する油脂分等の液体を排出させるためのドレンa,bが具備されており、ドレンa,bを開放して排出された油脂分等の液体は、密封容器(図示せず)に封入し、別途無害化処理される。
【0020】
次に、補助ポンプ7はターボファン等を内蔵して形成され、真空加熱炉1から排出される絶縁油の蒸気や排気ガスを排気設備10の補助として協同して真空加熱炉1から強制的に排出させるために用いるもので、蒸発した絶縁油を凝縮する機能を備えていないため、絶縁油の蒸気等による悪影響を受けることはほとんどない。
【0021】
つづいて、第2のコンデンサ8と排気設備10との間において、排気管5に具備した回収設備9について説明する。前記回収設備9は、真空加熱炉1から排出される絶縁油の蒸気に含まれている油脂分とか変圧器の内部部品3から発生する微細な固形分(絶縁紙やコイル押え用の木材,コイルの皮膜等からなる破砕片等)とからなる劣化生成物を捕集するために設けたもので、図3に示す捕集部材13,13aを図1に示すように、排気管5を二叉状となして本体に配設したそれぞれの排気管5,5に複数本相互に連通可能に具備して構成されている。
【0022】
そして、前記捕集部材13,13aは、図3に示すように、エタノール等の冷媒を密封充填した冷媒収容管14と、前記冷媒収容管14を気密に遊嵌して上部側端に突出する連結管16を介して排気管5,5に連通可能に止着した捕集管体15とによって構成されている。
【0023】
前記冷媒収容管14には、冷媒(エタノール等)を冷却するための冷却パイプ17が螺旋状に成形加工して収容されており、この冷却パイプ17は、それぞれ他の冷媒収容管14に挿入した図示しない冷却パイプと合体させる等して冷凍機18に接続されている。そして、冷凍機18から供給される冷媒冷却用のフロンガスを冷却パイプ17内に循環させることにより、冷媒収容管14に充填したエタノール等の冷媒を−40〜−100℃までの間において冷却保持させる。
【0024】
捕集部材13,13aは、図1に示すように二叉状に配管した排気管5,5に二列に分離して配設されているが、これは、例えば、一方の捕集部材13において、冷媒収容管14を冷媒に−40〜−100℃の間で冷却しているとき、排気管5を通して排出される絶縁油の蒸気(真空加熱炉1から排出される絶縁油の蒸気は大部分が第1,第2のコンデンサ6,8にて凝縮され回収されるが、これらコンデンサ6,8を通過した絶縁油の残存蒸気)や、内部部品から発生する微細な固形分(これらは大部分が排気ガスに含まれている)等からなる劣化生成物は、前記冷媒収容管14に接触すると、急速に冷却凝縮されて被着することにより、捕集部材13にて補集する。
【0025】
このように、一方の捕集部材13にて劣化生成物を捕集しているとき、図1に示す他方の捕集部材13aにおいては、劣化生成物を除去するために、例えば、冷媒収容管14内の冷媒中にあらかじめ図示しない電熱ヒータを内蔵し、この電熱ヒータに通電を行い、冷媒を常温に戻すことにより(この際、冷凍機18は運転停止の状態にある)、冷媒収容管14に付着した劣化生成物を融解し、捕集管体15に設けたドレンcを開放して排出して図示しない密封容器に収容する。
【0026】
なお、前記捕集部材13,13aは、それぞれの捕集部材13,13aと連通する排気管5,5には、開閉バルブb1,b2を設け、一方の捕集部材13が真空加熱炉1から排出される蒸気物質(劣化生成物)を冷却凝縮している場合、他方の捕集部材13aは劣化生成物の融解処理を行っている関係上、開閉バルブb2を閉鎖し、前記劣化生成物が捕集部材13a内に流入するのを阻止するようにしている。
【0027】
次に排気設備10について説明する。この排気設備10は、前述した補助ポンプ7と連動して駆動するもので、真空加熱炉1内を所要の圧力で減圧するために設置したもので、本実施例では、真空加熱炉1内を例えば、6.7Pa以下に保持するように設定されているが、この設定圧は必要に応じて任意に可変できることは云うまでもない。
【0028】
つづいて、脱臭装置11について説明する。この脱臭装置11は、図4に示すように、真空加熱炉1から排出される劣化生成物や排気ガスに含有されている悪臭を、脱臭処理して外部に清浄に排気できるようにしたもので、オゾン発生装置11a,活性炭11b,活性炭を主成分としたアルデヒド類吸着材11c,余剰オゾンを分解処理して大気中に排出されるのを防止する脱臭触媒11d,ブロワ11eとを効果的に配置して悪臭を清浄化するように構成されている。なお、図1中、19は真空加熱炉1に搬入する変圧器を構成するケース2や、内部部材3の搬送台車である。また、20は循環ポンプで真空加熱炉1内の熱気を第1のコンデンサ6に送って冷却したあと、冷気を供給管21にて真空加熱炉1内に戻すことにより、真空加熱炉1内を常温状態に復帰させる。この場合、排気管5と供給管21は流路切換バルブb3を介して接続されている。
【0029】
次に、動作について説明する。はじめに、真空加熱炉1に搬送する内部部品3等は、事前に変圧器を解体することによって得ることができる。即ち、図2に示すフローチャート図により説明すると最初に、変圧器は内部に充填されている絶縁油をポンプ等を用いて抜き取る。絶縁油を抜き取った変圧器は、変圧器中身を示す内部部品3をケース2から取り出して、鉄心に取り付けた図示しないクランプやケースに付設されている碍子等の部品を取り外す。
【0030】
内部部品3は鉄心あるいはコイルを切断する等して鉄心とコイルとに分離する。そして、前記鉄心やコイル、クランプ類は、例えば、専用のバケット1bに収容して搬送台車19に積載して真空加熱炉1に搬入する。また、ケース等は、図1に示すように、必要に応じて内部部品3を積載した搬送台車19に、載置板19a等を介してケース2を乗載する。
【0031】
前記のようにして、真空加熱処理を行う変圧器を解体したケース2や内部部品3を真空加熱炉に収容したら、真空加熱炉1内を加熱源1aにて所定温度(例えば、約200℃まで加熱するとともに、排気設備10を駆動して真空加熱炉1内を減圧する(約6.7Pa以下)。前記真空加熱炉1の加熱・減圧処理によって、変圧器のケース2や内部部品3に付着している絶縁油は、内部部品3等から分離して蒸発を開始し、順次真空加熱炉1から熱気(排気ガス)とともに排気管5に排出される。前記排気管5に排出される絶縁油の蒸気や排気ガスは、排気設備10の駆動により真空加熱炉1内が所定の減圧下に維持されている関係上、排気管5内も一定の負圧状態下にあるため、良好に排気管5内に吸引排出される。なお、前記真空加熱炉1から排出される絶縁油の蒸気や排気ガスは、排気管5内を流通するものの、流路切換バルブb3の切換操作にて供給管21側に流入することはない。
【0032】
前記排気管5に排出された絶縁油の蒸気,排気ガスは第1のコンデンサ6に流入し冷却される。このコンデンサ6は冷媒循環装置12の作動により常時−15℃程度に冷却保持されているので、前記絶縁油の蒸気等は良好に冷却凝縮され液化される。この第1のコンデンサ6により真空加熱炉1から排出される絶縁油のPCBを含む蒸気等は、大部分(約70〜80%)が冷却凝縮処理され液化され、ドレンaよりPCBを大気中に排出させることなく、液化した絶縁油とともに密封容器に回収する。
【0033】
又、第1のコンデンサ6を通過した残りの蒸気や排気ガスは補助ポンプ7,排気設備10の駆動により第1のコンデンサ6と同様の冷却能力を備えた第2のコンデンサ8に流入し、第1のコンデンサ6と同様に良好に冷却凝縮され液化し、ドレンbから密封容器に回収する。この第2のコンデンサ8と第1のコンデンサ6の存在により、真空加熱炉1から排出される絶縁油の蒸気は、その大半が冷却凝縮されて回収することができる。この結果、真空加熱炉1に収容した内部部品3,ケース2に付着(残存)しているPCBを含む絶縁油を除去することが可能となる。
【0034】
前記のようにして、真空加熱炉1から排出される内部部品3等に付着しているPCBを含む絶縁油の蒸気は、第1、第2のコンデンサ6,8により大部分が冷却凝縮されるものの前記第2のコンデンサ8を通過した絶縁油の蒸気や、内部部品3の真空加熱処理によって発生する紙木類、鋼線破砕品等を含む微細な固形物は、排気ガスとともに排気管5内を流通し、捕集部材13,13aに流入する。これら捕集部材13,13aは、前記のように、大部分が第1,第2のコンデンサ6,8を通過したことにより回収することができなかった絶縁油の残りとか排気ガスによって飛散される内部部品3の破砕品等からなる劣化生成物の外部への流出を防ぐとともに、排気設備10,脱臭装置11の機能低下を回避するために設けたものである。
【0035】
捕集部材13,13aは図1,3に示すように、複数本の捕集管体15を1組として排気管5,5にそれぞれ連通可能に接続し、第2のコンデンサ8と排気設備10との間において、2組が並列配置されており、それぞれ開閉バルブb1,b2によって排気管5とは連通するものの相互には連通しないように管接続されている。そして、例えば、今、捕集部材13aの開閉バルブb2を閉鎖し、開閉バルブb1を開放すると、第2のコンデンサ8は捕集部材13側とのみ連通することになる。
【0036】
この状態で、第2のコンデンサ8から前記絶縁油の漏れ蒸気や内部部品3の破砕品等が流入すると、捕集部材13はこれを構成する捕集管体15内に遊離した冷媒収容管14内の冷媒(例えば、エタノール等)が、冷凍機18によって−40〜−100℃の間で冷凍されている関係上、前記排出管5から捕集管体15内に流入した劣化生成物とか絶縁油の油脂分等は、前記冷媒収容管14の外表面に接触すると瞬時に冷却凝縮して被着されることになる。即ち、劣化生成物は捕集管体15内に侵入すると同時に、冷媒収容管14の極低温化現象によって強制的に吸引された状態で粒状となって、冷媒収容管14の表面に氷結して被着されることになる。これは冷媒収容管14が極低温状態下に維持されているために実行することが可能となる。
【0037】
前記捕集部材13の存在により排気ガスのガス中に含まれている水分や固形分は捕集部材13の冷却機能によってほぼ完全に補足することが可能となる。この結果、捕集部材13から排出される排気ガスは、捕集部材13内の極低温状態下を通過することにより、乾燥された状態で排出されることになる。この結果、真空加熱炉1内を所定の減圧下に維持する排気設備(真空ポンプ)10には、常時劣化生成物とか油分を含まない乾燥した排気ガスが流入される結果、排気設備10は劣化生成物の流入により機能障害を起して減圧機能を損なうといった問題を良好に解消することができる。
【0038】
なお、他方の捕集部材13aは、開閉バルブb2により排気管5とは閉鎖状態となっているが、次回に真空加熱炉1を使用するときは、今回とは逆に、捕集部材13側を開閉バルブb1により閉鎖し、捕集部材13a側は、閉鎖バルブb2により開放する。そして、捕集部材13aを極低温下に冷却して、排気管5から流入する油分とか劣化生成物を瞬時に冷却凝縮して冷媒収容管14に被着させることにより捕集・回収する。
【0039】
この際、前回使用した捕集部材13は、開閉バルブb1により排気管5とは連通していないため、例えば、冷媒収容管14内に事前に挿入しておいた電熱ヒータ等を加熱して冷媒(エタノール等)を常温に戻す(この場合、冷凍機18は既に停止状態にあることは云うまでもない)。冷媒を常温下に戻すことにより冷媒収容管14に付着している油分とか劣化生成物は、冷媒収容管14の冷却解除により融解し、ドレンcより図示しない密封容器に回収する。
【0040】
このように、捕集部材13,13aは、常に一方は油分や劣化生成物の回収を行い、他方は回収した劣化生成物等を融解して捕集部材13,13a外に排出するように構成することにより、変圧器の真空加熱処理において、油分や劣化生成物の回収を迅速・容易に行うことができる。これにより、PCBを含む絶縁油の外部流出や排気設備10等の機能低下を良好に回避することができ、PCBを含有する絶縁油を用いた変圧器の廃棄処理を迅速・確実に、かつ、安全に行うことができる。
【0041】
前記のように、油分や排気ガスに含まれる劣化生成物を捕集部材13,13aにより捕集することにより、排気設備10および脱臭装置11には湿気を大部分除去した排気ガスのみが流入することになる、この結果、排気設備10は、劣化生成物や油分が除去された排気ガスのみが流入するため、機能低下をきたすことなく良好に駆動することができる。一方、脱臭装置11においては、排気ガス中に含まれている悪臭の大部分の要因をなすアルデヒド類(絶縁油の蒸発処理とか、変圧器の内部部品3加熱処理によって発生することが実験により確認できた)は、脱臭装置11を構成するオゾン発生装置11a,活性炭11b,アルデヒド類吸着材11cからなる脱臭処理部材の効能により、確実に除去することができるようにしたので、脱臭装置11からは排気ガスを常に清浄化して大気中に排出することができるので、PCBを含有する絶縁油の回収処理において、有害物質を外部に排出(漏出)することなく、円滑に処理することができる。
【0042】
前記のようにして、変圧器のケース2,内部部品3に付着しているPCBを含有している絶縁油は、真空加熱炉1内において所定時間(約15時間)真空加熱処理することにより、完全に除去することが可能となるため、前記ケース2や内部部品(鉄心,コイル)3は、有価物として安全に再利用可能に回収することができる。
【0043】
なお、真空加熱炉1をはじめ、冷媒循環装置12,回収設備9,排気設備10,脱臭装置11は、すべて図示しないコントローラによって、温度,真空度を常に最適に制御して変圧器の真空加熱処理作業を実施していることは当然である。また、回収設備9の捕集部材13,13aによる油分や劣化生成物を補集する場合の極低温温度の使用範囲、および脱臭装置11における脱臭処理能力は、すべて実験によって確認することができた。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、変圧器のケースや内部部品に付着しているPCBを含有する絶縁油や内部部品から前記絶縁油の蒸発分離等に発生する劣化生成物を極低温状態下において、ほぼ瞬時に冷却凝縮して捕集することにより、排気設備に流入するのを防止する回収設備を真空加熱設備に具備するように構成したので、排気設備(真空ポンプ)は、前記劣化生成物によって排気機能を低下させたりして、真空加熱設備における変圧器の真空加熱処理作業に支障をきたしたり、真空加熱処理が不充分となるような問題を一掃し、変圧器の真空加熱処理を効率的に行うことを可能とした。
【0045】
また、劣化生成物は、回収設備に流入した場合、極低温状態下(−40〜−100℃)において、瞬時に冷却凝縮させることができるように構成されているので、劣化生成物はほぼ完全に補集・回収することができるため、排気設備には乾燥した排気ガスが流入するのみとなる結果、PCBを含む有害な劣化生成物が大気中に飛散されるという問題も確実に解消することができる。
【0046】
その上、前記回収設備は、冷媒を収容した冷媒収容管が常時極低温温度状態下に維持されているので、劣化生成物を瞬時に冷却凝縮して補集することができるとともに、劣化生成物の回収に際しては、冷媒収容管に収容した冷媒を加熱手段にて常温に戻すことにより、容易に回収することができる。この際、他方の冷媒収容管は別ルートにより極低温温度状態下に維持されているため、変圧器の真空加熱処理は連続して行うことができるので、真空加熱設備を効率的に使用することができるという利点も備えている。
【0047】
更に、脱臭装置は、活性炭の早期劣化を防ぐために、オゾン発生装置や悪臭の最大要因をなすアルデヒド類を脱臭処理する吸着剤を具備して構成したので、脱臭処理が良好に行えることはもとより、劣化生成物の回収設備を備えたことにより、油分を含む劣化生成物の流入をほぼ完全に阻止することができるため、脱臭装置は脱臭処理の向上と相まって長期間にわたり安定した状態で使用することができ至便である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の劣化生成物回収設備および脱臭装置を具備して構成した真空加熱設備を示す概略構成図である。
【図2】変圧器を真空加熱処理する一例を示すフローチャート図である。
【図3】回収設備を構成する捕集部材の要部を示す縦断面図である。
【図4】脱臭装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 真空加熱設備
2 ケース
3 内部部品
9 回収設備
10 排気設備
11 脱臭装置
13,13a 捕集部材
14 冷媒収容管
15 捕集管体
Claims (2)
- PCBを含有する絶縁油が付着した変圧器のケースや内部部品を真空加熱炉に収容し、所要の真空状態下で加熱処理してケースや内部部品に付着している前記絶縁油を蒸発・分離させて、ケースや内部部品からPCBを除去するように構成した真空加熱設備において、前記ケースや内部部品から蒸発・分離したPCBを含有する絶縁油や、真空加熱処理時に内部部品から発生する微細な固形分を含む劣化生成物を冷媒により冷却・凝縮させて捕集・回収し、前記絶縁油や劣化生成物が排気設備に流入するのを阻止する第1,第2のコンデンサおよび回収設備からなる回収装置を前記真空加熱設備に付設し、前記回収設備は、内部に温度を−40ないし−100℃の範囲に設定・保持した冷媒を収容して、その外表面に第2のコンデンサを通過したPCBを含有する微量の絶縁油や、微細な固形分を含む劣化生成物を接触させることにより冷却・凝縮して捕集する冷媒収容管と、内部に冷媒収容管を気密に遊嵌し、前記冷媒収容管との間で前記絶縁油や劣化生成物が屈曲しながら流通する流路を形成した捕集管体とからなる捕集部材を、第2のコンデンサと排気設備との間に所定数配設して構成したことを特徴とする真空加熱設備における劣化生成物の回収装置。
- PCBを含有する絶縁油が付着した変圧器のケースや内部部品を真空加熱炉に収容し、所要の真空状態下で加熱処理してケースや内部部品に付着している前記絶縁油を蒸発・分離させて、ケースや内部部品からPCBを除去するように構成した真空加熱設備において、前記ケースや内部部品から蒸発・分離したPCBを含有する絶縁油や、真空加熱処理時に内部部品から発生する微細な固形分を含む劣化生成物を冷媒により冷却・凝縮させて捕集・回収し、前記絶縁油や劣化生成物が排気設備に流入するのを阻止する第1,第2のコンデンサおよび回収設備からなる回収装置と、排気設備の排出側において絶縁油の蒸発・分離時に発生する排気ガスに含有される臭気を脱臭処理する脱臭装置とを前記真空加熱設備に付設し、前記回収設備は、内部に温度を−40ないし−100℃の範囲に設定・保持した冷媒を収容して、その外表面に第2のコンデンサを通過したPCBを含有する微量の絶縁油や、微細な固形分を含む劣化生成物を接触させることにより冷却・凝縮して捕集する冷媒収容管と、内部に冷媒収容管を気密に遊嵌し、前記冷媒収容管との間で前記絶縁油や劣化生成物が屈曲しながら流通する流路を形成した捕集管体とからなる捕集部材を、第2のコンデンサと排気設備との間に所定数配設して構成するとともに、前記脱臭装置は、オゾン発生装置と、活性炭と、活性炭を主成分とするアルデヒド類吸着材と、余剰オゾンを分解処理する脱臭触媒と、ブロワとを効果的に配置して構成するようにしたことを特徴とする真空加熱設備における劣化生成物の回収装置および脱臭装置。
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