JP4005339B2 - 生分解性ごみ袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性フィルムをヒートシールすることにより袋形態にした、コンポスト処理にて生分解するごみ袋に関するものである。さらに詳しくは、ポリ乳酸に、特定の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル成分と可塑剤成分、さらに無機質充填材成分を配合することにより得られる生分解性フィルムからなり、少なくとも一方がヒートシールされており、そのヒートシール強力が5.0N/15mm以上である生分解性ごみ袋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全に関する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解される生分解性ポリマーが注目されている。生分解性ポリマーの具体例としては、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルや、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/アジピン酸の共重合体である脂肪族−芳香族共重合ポリエステルなどの溶融成形可能なポリエステルが挙げられる。一方、近年では廃棄物処理問題への積極的な取り組みや環境負荷を低減させるといった目的でこれら生分解性樹脂から作製されたフィルムがごみ袋用途へ試験的に展開されている。
【0003】
上記生分解性樹脂の内、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、あるいは脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのフィルムから形成されたごみ袋は、フィルム強度やヒートシール強力など実用物性的には使用上何ら問題はなく、現在使用されているポリエチレン製のごみ袋と同レベルの物性値を示すものも出現してきている。ところがこれら生分解性樹脂のフィルムからなるごみ袋は、生分解性樹脂を使用する意味、つまり従来の焼却処理ではなく、コンポスト処理にて生ごみと共に分解させ環境負荷を低減するという大きな意味においては、全く不十分なものである。すなわち、コンポスト処理を行った場合、必要時間内では全く分解せず、あるいは分解不足によってフィルムがコンポスト装置内の攪拌機に絡みつき、最悪の場合は、機械を壊してしまうといったトラブルが発生することがあった。また、これらの生分解性樹脂のフィルムからなるごみ袋は、ポリエチレン製ごみ袋に比べ樹脂価格で4〜8倍と非常に高価なものであった。
【0004】
一方、ポリ乳酸は、脂肪族ポリエステルの中でも、自然界に広く分布し、動植物や人畜に対して無害で、融点が140〜175℃であるため、十分な耐熱性を有し実用性に優れるとともに、ポリエチレンの2〜3倍の樹脂価格であるため、比較的安価な生分解性の熱可塑性樹脂として期待されている。そこでポリ乳酸系フィルムをごみ袋に適用するために検討がなされているが、ポリ乳酸フィルムは硬質で衝撃に脆く、また、滑り性に劣るため口開き性が良好でないので、ごみ袋としての実用適性を備えた袋は得られておらず、このような物性の改善が求められていた。
【0005】
そこでポリ乳酸系フィルムの柔軟性や耐衝撃性を改善するために、ポリ乳酸あるいは乳酸と他のヒドロキシカルボン酸に可塑剤を配合して樹脂組成物の可塑化を促す方法(特許第3105020号)が提案されている。この方法では、樹脂組成物に実用に即した柔軟性を付与するには、相当量の可塑剤をポリ乳酸に対し配合しなければならないが、元来、ポリ乳酸との相溶性が良好な可塑剤は非常に少ないため、ほとんどの可塑剤はブリードアウトし、フィルム製膜後のフィルム間のブロッキングや、袋に仕立てた際の口開き性の悪化を招き、袋としての実用性に問題があった。さらに、可塑剤によるガラス転移温度の低下は、常温での分子運動の容易に向上できる反面、加水分解を促進し、フィルムの保存寿命を著しく短縮させることになり、ごみ袋としての保存安定性に劣るといった重大な問題があった。
【0006】
また、ポリ乳酸系重合体とガラス転移温度が0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルからなるシートを用いて真空成形したカップが耐衝撃性に優れることが示されているが(特開平9―111107号公報)、厚みの薄いフィルムでは、衝撃強度は実用上不十分で特に、ごみ袋のような用途には破れるなどの問題があった。
【0007】
そこで、上記のような問題を解決するため、ポリ乳酸と融点が80〜250℃の生分解性を有する脂肪族ポリエステルと可塑剤の樹脂組成物からフィルムやシートを製膜することによって(特開平11−116788号公報)、また、ポリ乳酸とガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族ポリエステルと可塑剤からインフレーションフィルムを製膜することによって(特開2000−273207号公報)、柔軟性や耐衝撃性を改良する方法が提案されている。この方法では、本来剛性の高いポリ乳酸を、可塑剤による可塑化と、ポリ乳酸よりも柔軟な脂肪族ポリエステルを配合することにより上記課題は解決できる。しかし、ここで用いられる脂肪族ポリエステルは、フィルム形成過程において結晶化しやすく、また結晶性も高いため、脂肪族ポリエステルに分配された可塑剤を保持することができないものであった。したがって、上記の方法で得られたフィルムは、可塑剤がブリードアウトし、結果的には袋の口開き悪化や、フィルム間のブロッキングが生じ、また経時でのヒートシール強力低下による実用性不良といった問題が発生し、これらを十分に解決できるものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のように従来のポリ乳酸系フィルムでは困難であった、未延伸のフィルムで、可塑剤を相当量配合しても可塑剤のブリードアウトが見られず、フィルム製膜後および製袋時のフィルム間のブロッキングや袋の口開き性が良好で、保存安定性にも優れ、ヒートシール強力向上と経時変化の改善した生分解性フィルムからなる袋を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸に特定の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルと可塑剤および無機質充填材を特定の割合で配合したフィルムが、上記課題を解決でき、しかもある特定の条件下でヒートシールすることによりシール強力が向上することを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
【0010】
生分解性フィルムの少なくとも一方がヒートシールされてなるごみ袋であって、生分解性フィルムが、ポリ乳酸(A)、ガラス転移温度が0℃以下であって、かつ結晶融解熱量(ΔHm)が25J/g以下である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)、可塑剤(C)、および無機質充填材(D)を溶融混練してなり、(A)と(B)の含有比率が95/5〜30/70(質量%)であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、(C)を3〜30質量部、(D)を5〜40質量部含有し、ヒートシール強力が5.0N/15mm以上であることを特徴とする生分解性ごみ袋。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられるポリ乳酸(A)としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸、またはこれらの混合体である。ポリ乳酸の数平均分子量は8万〜15万であることが好ましい。
また、可塑剤のブリードアウトの抑制と、ポリ乳酸の結晶化による製膜安定性を確保する理由から、結晶性ポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸の併用が好ましく、その割合は結晶性ポリ乳酸/非晶性ポリ乳酸=50/50〜90/10(質量%)が好ましい。ここでいう結晶性ポリ乳酸とは、140〜175℃の範囲の融点を有するポリ乳酸樹脂のことを指し、非晶性ポリ乳酸とは、実質的に融点を保有しないポリ乳酸樹脂のことをいう。結晶性ポリ乳酸の割合が50質量%未満であると、ポリ乳酸の結晶化に劣り、安定した製膜が行えない。一方、結晶性ポリ乳酸の割合が90質量%を超えると可塑剤を保持できなくなり製膜時あるいは製膜後に可塑剤のブリードアウトが生じる。
【0012】
本発明において、生分解性フィルムは、ガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)を必須成分として含有する。従来の生分解性脂肪族ポリエステルではポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、脂肪族のジカルボン酸であったため、得られる樹脂の融点は低く(115℃程度)、その上、柔軟性付与を目的として一般にアジピン酸などの成分を共重合するとさらに融点降下が生じて樹脂の加工性悪化を誘発することから、柔軟性付与を目的とした成分をあまり共重合できなかった。このため、得られる脂肪族ポリエステル樹脂の結晶性もさほど低下しないため、結晶性の高い樹脂となり、可塑剤を添加した場合、可塑剤を十分保持できずにブリードアウトが見られた。ところが、本発明において使用されるガラス転移温度が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)は、ポリエステルの構成成分に芳香族ジカルボン酸を使用しているため、比較的高い融点にて設計可能となる。このため融点降下を誘発する脂肪族ジカルボン酸を脂肪族ポリエステルの場合よりも多量に共重合することが可能となる。これによって、樹脂の加工性に悪影響を及ぼさない程度(融点100℃程度)にまで脂肪族ジカルボン酸成分を共重合し、結晶性を低下させるような樹脂設計が可能となった。このことにより、脂肪族ポリエステルよりも柔軟性に優れ、可塑剤の保持も格段に向上し、耐ブリードアウト性を改善することができた。
【0013】
脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの結晶性が高い、すなわち結晶融解熱量(ΔHm)が大きい場合、この結晶化にともなう排除体積効果と非晶領域の不足によって可塑剤のブリードアウトが生じ、樹脂中に可塑剤を保持することが困難となる。そこで、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジカルボン酸成分の共重合組成比によっては、得られる樹脂の結晶融解熱量(ΔHm)は異なるが、本発明においては、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体(B)の結晶融解熱量(ΔHm)は25J/g以下であることが好ましい。脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の結晶融解熱量(ΔHm)が25J/gを超えると、樹脂の結晶性向上による非晶領域の低下にともない、可塑剤を保持できなくなり可塑剤のブリードアウトが著しくなる。
【0014】
本発明において用いられるガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)としては、脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を縮合して得ることができる。
脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)を構成する脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどであり、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などであり、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸などである。そして、これらそれぞれ1種類以上選んで重縮合することにより得られる。必要に応じて多官能のイソシアネート化合物により架橋することもできる。
【0015】
本発明において、生分解性フィルムを構成するポリ乳酸(A)とガラス転移温度0℃以下の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)の含有比率は95/5〜30/70(質量%)であることが好ましく、さらに好ましくは80/20〜50/50(質量%)、より好ましくは80/20〜60/40(質量%)である。ポリ乳酸含有比率が95質量%を超えると、得られるごみ袋は柔軟性に劣るとともに、加水分解による分子量低下によるフィルム物性の著しい低下が急速に促進され実用上問題となる。ポリ乳酸含有比率が30質量%未満であると、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル成分が主体となり、著しく分解が遅くなる。このため、コンポスト装置などによる分解処理では攪拌翼にフィルムが絡みつきコンポスト装置を破損する恐れがあるため好ましくない。
【0016】
本発明において、生分解性フィルムは可塑剤(C)を必須成分として含有する。用いられる可塑剤(C)としては、(A)成分、(B)成分に対して相溶し、かつ、不揮発性であり、環境問題などの観点から無毒性で、さらにFDAに合格しているものが好ましい。このような条件を満たす可塑剤としては、エーテルエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤が挙げられる。エーテルエステル系可塑剤の具体例としては、ビスメチルジエチレングリコールアジペート、ビスブチルジエチレングリコールアジペートなどが挙げられ、また、オキシ酸エステル系可塑剤の具体例としては、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。これら可塑剤は2種以上混合して使用することもできる。
【0017】
可塑剤(C)の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、3〜30質量部、好ましくは4〜20質量部である。可塑剤(C)の含有量が3質量部未満であると、ポリ乳酸のガラス転移温度の低下がほとんど見られない結果、得られるごみ袋はセロファン様となって柔軟性に劣る。可塑剤(C)の含有量が30質量部を超えるとポリ乳酸のガラス転移温度が低下しすぎて得られるごみ袋の加水分解速度を急速に促進させることにより、製品寿命が短くなりすぎて実用上問題になるばかりか、可塑剤のブリードアウトが発現して製膜時のフィルムブロッキングや印刷できないといった問題が生じる。
【0018】
本発明において、生分解性フィルムは無機質充填材(D)を必須成分として含有する。この目的は、可塑剤による樹脂の可塑化に伴い、製膜時にフィルムの溶融張力が著しく低下することを抑制するために、結晶核剤として作用させること、および、製膜時のブロッキング抑制と滑り性を付与することにある。
【0019】
本発明で用いられる無機質充填材(D)としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、マイカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、ゼオライト、クレー、ガラスビーズなど一般的な無機質充填材が挙げられるが、特にタルクはポリ乳酸の結晶核剤として最も効果を発揮するため好ましい。
【0020】
無機質充填材(D)の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、5〜40質量部が好ましく、さらに好ましくは10〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部である。無機質充填材(D)の含有量が5質量部未満であると、無機質充填材が有する結晶核剤的効果が現れないため、製膜時におけるフィルムの溶融張力不足により製膜が困難となるばかりか、フィルム自体の滑り性、耐ブロッキング性に劣り後加工などの加工上問題が生じる可能性がある。一方、無機質充填材(D)の含有量が40質量部を超えると、得られるフィルム(ごみ袋)の物性、特に引き裂き強力、ヒートシール強力などが著しく低下し実用上問題となる。
【0021】
また、本発明では、有機滑剤を無機質充填材と併用してもよい。有機滑剤の具体例としては、たとえば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィンなどの脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油などの脂肪酸系滑剤、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックスなどの長鎖エステルワックスなどの脂肪酸エステル系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤などが挙げられる。
【0022】
本発明においては製膜時の溶融張力低下を抑制する目的で、必要に応じて有機過酸化物などの架橋剤および架橋助剤を併用して樹脂組成物に軽度の架橋を施すことも可能である。
架橋剤の具体例としては、n−ブチル−4,4−ビス−t−ブチルパーオキシバリレート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−t−ブチルパーオキシヘキシン−3などの有機過酸化物、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメチルアジピン酸、無水トリメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシドなどの金属錯体、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルなどのエポキシ化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物などが挙げられる。
架橋助剤の具体例としては、グリシジルメタクリレート、ノルマル−ブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0023】
本発明のごみ袋には、用途に応じて紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料など上記以外の添加剤も添加できる。
【0024】
次に、本発明のごみ袋を構成する生分解性フィルムの製造方法について説明するが、これに限ったものではない。
まず、ポリ乳酸(A)とガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)と可塑剤(C)および無機質充填材(D)を所定量配合し、2軸混練押出機にて溶融混練してコンパウンドペレットを作製する。このコンパウンドペレットを乾燥後、インフレーション製膜法によりフィルム化する。すなわち、乾燥後のコンパウンドペレットを1軸混練押出機に投入し、溶融したポリマーを丸ダイから円筒状に引き上げ、空冷しながら同時に風船状に膨らまして製膜する方法、あるいは、丸ダイより溶融ポリマーを円筒状に冷却水とともに下方へ押し出した後一旦折り畳み、それを上方へ引き上げ、次いで加熱しながら風船状に膨らまして製膜・フィルム化することができる。2軸混練押出機のポリマー溶融温度はポリ乳酸の溶融温度210〜240℃の温度範囲で適時選択され、1軸混練押出機におけるコンパウンドペレットのポリマーの溶融温度は、ポリ乳酸のL−乳酸とD−乳酸の組成比、(B)成分の融点や配合量、および(C)成分の配合量を考慮して適時選択されるが、通常、160℃〜200℃の温度範囲が好ましい。
また、フィルム製造の前段階であるコンパウンドペレットを製造する際、必要に応じて架橋剤、架橋助剤、有機滑剤などを添加することもできる。加えて、フィルム製造の際にも、必要に応じて添加剤をフィルム物性に影響を与えない程度に加えてもよい。
【0025】
このようにして製膜されたフィルムを一旦ロールに巻き取り、その後別工程あるいは連続工程で製袋機にて袋を作製する。
【0026】
このようにして得られた生分解性フィルムは、ガラス転移温度が25〜40℃であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃未満では、室温においてもポリ乳酸の加水分解が促進し、フィルムの機械物性及びシール強力が経時で著しく低下するため、実用上問題である。ガラス転移温度が40℃を超えると、フィルムの柔軟性が低下し、製膜時にフィルムしわの原因になったり、フィルムの伸度が低下してフィルムが破れ易くなるため、好ましくない。
【0027】
次に、生分解性フィルムから本発明のごみ袋を製造する方法について説明するが、これに限ったものではない。
生分解性フィルムをごみ袋に製袋する際、フィルムはヒートシールされた後、またはヒートシールと同時に切断されるが、このヒートシールの条件がごみ袋に仕立てた場合の実用性および保管時のシール強力経時変化に重大な影響を与える。
まず、フィルムの厚みにもよるが、ごみ袋のように15〜30μmの厚みの薄いフィルムをヒートシールする場合のシール温度は、115〜150℃が好ましく、さらに好ましくは130〜140℃である。シール温度が115℃未満であると、熱量不足によりシールが不十分となりシールが外れる可能性がある。また、150℃を超えると、温度が高すぎてシール部とフィルムの境界にて境線切れが多発し、ごみ袋の底抜け現象を誘発するため問題である。
一方、ヒートシールする際、フィルムに熱量を与える時間を一定時間とすることは、境線切れを防止するとともに、シール強力を向上させ、フィルムにダメージを与えないため経時でのシール強力低下を抑制する効果がある。シール時間は1〜3秒が好ましく、さらに好ましくは1.5〜2秒である。1秒より短いとシール強力不足となりごみ袋としての実用性能に問題が生じる。シール時間が3秒を超えると、フィルムに熱が加わる時間が長くなりフィルム自体にダメージを与えてしまい、境線切れを引き起こす以外に、たとえ上手くシールできたとしてもフィルムの熱劣化から経時におけるシール強力低下が誘発されてしまうため好ましくない。
【0028】
ごみ袋として作製されたフィルムのヒートシール強力は、5.0N/15mm以上であることが必要である。袋の大きさにもよるが、袋一杯に生ごみを入れた状態にした場合、シール強力が5.0N/15mm未満では、シール部が外れ底が抜けてしまう可能性があるため好ましくない。
【0029】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
(1)引張強度(MPa)、引張伸度(%)、引張弾性率(GPa):
JIS K―7127に準じて測定した。
(2)ヒートシール強力:
ヒートシール部を中心になるよう試料長50mm、試料幅15mmに準備したフィルム片を東洋ボールド社製AGS−100Bを用い、引張速度300mm/minにてフィルムを引張った際、シール部が剥がれた時の強力をヒートシール強力とした。
(3)可塑剤のブリード性、ならびにブロッキング性及び開口性:
インフレーション法により作製したフィルムを製袋して得られた袋について、JIS Z0219に準じて80℃、荷重500gの条件下に保持したときの可塑剤のブリード性、ならびにブロッキング性及び開口性を評価した。ブリードアウトの見られなかったものを○、ややブリードアウトの見られたものを△、ブリードアウトが顕著に見られたものを×とした。また、ブロッキングが見られず開口性良好なものを○、ややブロッキングし、開口性も若干難ありのものを△、完全にブロッキングし、開口しないものを×とした。
【0030】
実施例1
結晶性ポリ乳酸(D−乳酸=1.2モル%、重量平均分子量20万、カーギル・ダウ社製:ネイチャーワークス)と非晶性ポリ乳酸(D−乳酸=10モル%、重量平均分子量20万、カーギル・ダウ社製:ネイチャーワークス)の配合比が70/30(質量%)からなるポリ乳酸(A)60質量部、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)(ガラス転移温度−30℃、結晶融解熱量(ΔHm)15J/g、BASF社製:エコフレックスF)40質量部、可塑剤(C)としてビスメチルジエチレングリコールアジペート(大八化学社製:MXA)8質量部、無機質充填材(D)としてタルク(林化成社製Upu HST−0.5、平均粒子径2.75μm)15質量部を計量し、2軸押出混練機(日本製鋼所社製:TEX44α)を用いて溶融混練し、押出温度230℃にてポリ乳酸系コンパウンド原料を作製した。
次いでこのポリ乳酸系コンパウンド原料を直径100mmの口径を有するサーキュラーダイを装着したスクリュー径45mmの単軸押出機を用い、設定温度190℃にて溶融押出を行った。ダイより吐出された溶融樹脂組成物を空気圧によって膨張させると同時にエアリングによる空冷しながらチューブ状に成形した。フィルム厚み20μm、フィルム折り幅400mmとなるように成形されたフィルムをダイ上部に設置された一組のピンチロールによって30m/minの速度で引き取った。約7秒の冷却時間を経た後チューブ状のフィルムをピンチロールによってニップし、巻き取り機によって500m巻き取った。組成物のフィルム化は、20〜25℃に温調された環境下で実施した。
次に、巻き取った生分解性フィルムを製袋機(野崎社製:野崎式高速ターボ自動製袋機 KBS703L−30103)を用い、シール温度135℃、シール時間1.5秒にて一方のみヒートシールし、その後自動的に切断して20L用ごみ袋を作製した。このようにして得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0031】
実施例2
可塑剤をビスブチルジエチレングリコールアジペート(大八化学社製:BXA)とし、その配合量を6質量部に変更した以外は実施例1と同様にして生分解性フィルムを作製した。その後実施例1と同じ製袋機を用い、シール温度140℃、シール時間を2秒にて一方のみヒートシールし、その後自動的に切断して20L用ごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0032】
実施例3
可塑剤をアセチルクエン酸トリブチル(田岡化学社製:ATBC)とし、その配合量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして生分解性フィルムを作製した。その後実施例1と同じ製袋機を用い、シール温度135℃、シール時間を2秒にて一方のみヒートシールし、その後自動的に切断して20L用ごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0033】
比較例1
実施例1の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの代わりに、脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート(昭和高分子社製:ビオノーレ#3001)を用いた以外は配合量、コンパウンド条件、製膜条件など実施例1と同様にして厚み20μm、フィルム幅400mmのフィルムを得た。その後実施例1と同じ製袋機を用い、シール温度135℃、シール時間を1.5秒にて一方のみヒートシールし、その後自動的に切断して20L用ごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0034】
比較例2
実施例1において、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを使用せず、可塑剤の配合量を20質量部、無機質充填材の配合量を25質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてコンパウンド原料を作製した。続いて、このコンパウンド原料を実施例1と同じ単軸押出機を用い、設定温度175℃にて溶融押出を行った。ダイより吐出された溶融樹脂組成物を実施例1と同様にしてフィルム化した。
次に、巻き取ったフィルムを実施例1と同じ製袋機を用い、シール温度160℃、シール時間1.5秒にて一方のみヒートシールし、その後自動的に切断して20L用ごみ袋を作製した。このようにして得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0035】
比較例3
実施例1において、可塑剤を全く使用しなかった以外は実施例1と同様にして厚み20μm、フィルム幅400mmのフィルムを得た。
次に、巻き取ったフィルムを実施例1と同じ製袋機を用い、シール温度140℃、シール時間1.5秒にて一方のみヒートシールし、その後自動的に切断して20L用ごみ袋を作製した。このようにして得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0036】
比較例4
無機質充填材を全く使用しなかった以外は、実施例1と同様の組成・配合比にてコンパウンドを行った。ペレット化する際、ブロッキングが激しく、また、このペレットを用いて実施例1と同様にして製膜したところ、チューブの溶融張力が不足しているためチューブが安定せず幅斑を生じ、しかもチューブ状のフィルムをピンチロールによってニップした後のフィルムはブロッキングして全く口開きのできないものであった。
【0037】
比較例5
実施例1と同様にしてフィルムを製膜し、その後シール温度100℃、シール時間3秒にて製袋した以外は実施例1と同様にして20L用のごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0038】
比較例6
実施例1と同様にしてフィルムを製膜し、その後シール温度160℃、シール時間1秒にて製袋した以外は実施例1と同様にして20L用のごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0039】
比較例7
実施例1と同様にしてフィルムを製膜し、その後シール温度135℃、シール時間0.5秒にて製袋した以外は実施例1と同様にして20L用のごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0040】
比較例8
実施例1と同様にしてフィルムを製膜し、その後シール温度135℃、シール時間4秒にて製袋した以外は実施例1と同様にして20L用のごみ袋を作製した。得られたごみ袋の各種物性値を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1〜3で得られたごみ袋は、柔軟で、可塑剤のブリードアウトを見られず、フィルム間のブロッキングはなく、口開きも良好であった。また、シール強力も実用上問題ないレベルであった。
比較例1は、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの代わりに、脂肪族ポリエステルを用いたが、脂肪族ポリエステルは、結晶性が高いため可塑剤を十分保持できず可塑剤がブリードアウトし、フィルム間でブロッキングし口開き性も悪かった。
比較例2は、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを全く用いなかったため、フィルムに柔軟性を付与するには可塑剤の配合量を増加させる必要があった。可塑剤配合量の増加は、ごみ袋を構成するフィルムのガラス転移温度を低下させるが、これが室温以下になるとポリ乳酸の加水分解を促進させ、フィルムの機械物性およびシール強力が経時で著しく低下するため実用上問題であった。
比較例3は、可塑剤を全く使用しなかったため、得られるフィルムは柔軟性に劣るとともに、チューブニップ時に発現するシワが、フィルムが硬いために回復せず、得られたフィルムはシワが多発したものでごみ袋としての製品上問題であった。
比較例5は、シール温度が低すぎたため、十分ヒートシールできず、シール強力不足によるごみ袋の底が抜けるといった致命的な欠陥が生じた。
比較例6は、シール温度が高すぎたため、フィルムが溶けてしまいシール部とフィルムとの境界に穴があいたり境線切れが多発し、ごみ袋の底が抜けるといった致命的な欠陥を有していた。
比較例7は、シール時間が短かったために十分ヒートシールできず、シール強力不足によるごみ袋の底が抜けるといった致命的な欠陥が生じた。
比較例8は、シール時間が長すぎたため、フィルムが溶けてしまいシール部とフィルムとの境界に穴があいたり境線切れが多発した。これは熱によりフィルムにダメージを与えることになり好ましくなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸にガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル、可塑剤、および無機質充填材を必須成分として含有したフィルムを製膜し、このフィルムをシール温度115〜150℃、シール時間1〜3秒の条件で少なくとも一方をヒートシールして得られたごみ袋は、ポリ乳酸の欠点であった室温で硬くて脆い性質を改良できるとともに、可塑剤のブリードアウトもなく、シール強力にも優れたものである。また、このごみ袋は生分解性であり、自然環境下で分解する以外に、ポリ乳酸から得られているため焼却しても有毒ガスを発生せず、廃棄物処理の問題を持たない地球に優しい実用的なごみ袋として極めて有用である。
Claims (5)
- 生分解性フィルムの少なくとも一方がヒートシールされてなるごみ袋であって、生分解性フィルムが、ポリ乳酸(A)、ガラス転移温度が0℃以下であって、かつ結晶融解熱量(ΔHm)が25J/g以下である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(B)、可塑剤(C)、および無機質充填材(D)を溶融混練してなり、(A)と(B)の含有比率が95/5〜30/70(質量%)であり、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、(C)を3〜30質量部、(D)を5〜40質量部含有し、ヒートシール強力が5.0N/15mm以上であることを特徴とする生分解性ごみ袋。
- 可塑剤(C)がエーテルエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性ごみ袋。
- 可塑剤(C)がビスメチルジエチレングリコールアジペート、ビスブチルジエチレングリコールアジペート、アセチルクエン酸トリブチルから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の生分解性ごみ袋。
- 生分解性フィルムのガラス転移温度が25〜40℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性ごみ袋。
- シール温度が115〜150℃、シール時間が1〜3秒の条件で、生分解性フィルムの少なくとも一方をヒートシールすることを特徴とする請求項1記載の生分解性ごみ袋の製造方法。
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