JP4003038B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室に供給されたインクを圧電素子又は発熱素子を介して加圧することによって、ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電素子や発熱素子によりインク滴吐出のための圧力を発生させる複数の圧力発生室と、各圧力発生室にインクを供給する共通のリザーバと、各圧力発生室に連通するノズル開口とを備えたインクジェット式記録ヘッドは、印字信号に対応するノズルと連通した圧力発生室内のインクに吐出エネルギを印加してノズル開口からインク滴を吐出させる。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドは、前述したように圧力発生手段として圧力発生室内に駆動信号によりジュール熱を発生する抵抗線を設けた電気熱変換式のものと、圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させてノズル開口からインク滴を吐出させる圧電振動式の2種類のものに大別され、また、圧電振動式のインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電素子を使用したものと、たわみ振動モードの圧電素子を使用したものの2種類が実用化されている。
【0004】
これらのインクジェット式記録ヘッドでは、インクが充填された、例えば、インクカートリッジ等から、流路を介してインクジェット式記録ヘッドの圧力発生室にインクが供給され、駆動回路からの駆動信号によって、圧電素子等に所定のタイミングで駆動するエネルギが与えられることにより、圧力発生室内のインクが加圧されてノズル開口から吐出される。
【0005】
また、このようなインクジェット式記録ヘッドでは、周囲の環境温度の変化に伴うインクの温度変化等によりインクの粘度が増加し、ノズル開口の目詰まりが発生するという問題がある。そのため、通常、所定の時期、例えば、印刷開始時等にインクを吐出させてノズル開口内及び近傍のインクを排出し、ノズル開口の目詰まりを防止する、いわゆる予備吐出動作が行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のインクジェット式記録装置の予備吐出動作では、駆動信号を急激なメニスカスの挙動はメニスカスを不安定にして、逆にノズル開口から気泡を取り込んでしまうという問題がある。例えば、図8に示すように、ノズル開口101近傍のインク102内に増粘インク塊103が存在すると、この増粘インク塊103を避けるように、ノズル開口101内にメニスカス104が斜めに深く入り込んだ状態が十分回復せず、メニスカス104の挙動が極めて不安定となり、その後の吐出で飛行曲がりが生じる等、安定した吐出特性を得られない虞がある。また、上記のようにメニスカス104が斜めに深く入り込むと、ノズル開口101内に気泡が取り込まれてインク滴を吐出できなくなる虞もある。
【0007】
また、このような問題は、予備吐出動作時だけでなく、印刷実行時のインク吐出においても生じる虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、インク滴を常に良好に吐出することのできるインクジェット式記録装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室に付設されるアクチュエータに吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与することにより前記ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置において、前記アクチュエータに微振動信号を構成する微振動波形と吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形とが組み合わされた基本波形から選択した所定の微振動信号を供給して前記ノズル開口からインク滴を吐出させない程度に前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つメニスカスに微振動を励起させて前記ノズル開口近傍のインクを撹拌する微振動工程を実行する微振動制御手段を具備し、該微振動制御手段は、前記基本波形から選択する微振動波形の数を変えることにより供給間隔を調整することで、メニスカスに微振動を励起させる間隔が段階的に短くなるように微振動工程を実行することを特徴とするインクジェット式記録装置にある。
【0010】
かかる第1の態様では、微振動工程でのメニスカスの振動が安定するため、ノズル開口近傍の増粘したインクが効果的に且つ略均一に撹拌される。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記微振動制御手段は、前記微振動信号を構成する微振動波形の周期が段階的に短くなるように各微振動工程を実行することを特徴とする第1の態様に記載のインクジェット式記録装置にある。
【0012】
かかる第2の態様では、各微振動工程でのメニスカスの振動が安定する。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記微振動制御手段は、前記微振動工程を所定間隔で複数回実行する際に、当該微振動工程の間隔が段階的に短くなるように実行することを特徴とする第1又は2の態様に記載のインクジェット式記録装置にある。
【0014】
かかる第3の態様では、複数回の微振動工程によって、増粘したインクが効果的に且つ略均一に撹拌される。
【0015】
本発明の第4の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室に付設されるアクチュエータに吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与することにより前記ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置において、印字期間外に前記アクチュエータに少なくとも吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形を含んで構成される基本波形から選択した所定の吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つ前記ノズル開口からインク滴を吐出させる予備吐出工程を実行する予備吐出制御手段を具備し、該予備吐出制御手段は、前記基本波形から選択する吐出駆動波形の数を変えることにより供給間隔を調整することで、インク滴が吐出される間隔が段階的に短くなるように予備吐出工程を実行することを特徴とするインクジェット式記録装置にある。
【0016】
かかる第4の態様では、微振動工程でのインク吐出が安定するため、ノズル開口近傍の増粘したインクを効果的に排出することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記予備吐出制御手段は、前記吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形の周期が段階的に短くなるように前記予備吐出工程を実行することを特徴とする第4の態様に記載のインクジェット式記録装置にある。
【0018】
かかる第5の態様では、各予備吐出工程でのインク吐出が安定する。
【0019】
本発明の第6の態様は、前記予備吐出制御手段は、前記予備吐出工程を所定間隔で複数回実行する際に、当該予備吐出工程の間隔が段階的に短くなるように実行することを特徴とする第4又は5の態様に記載のインクジェット式記録装置にある。
【0020】
かかる第6の態様では、複数回の予備吐出工程で、増粘したインクを効果的に排出することができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、前記アクチュエータに微振動信号を供給して前記ノズル開口からインク滴を吐出させない程度に前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つメニスカスに微振動を励起させて前記ノズル開口近傍のインクを撹拌する微振動工程を実行する微振動制御手段をさらに具備し、該微振動制御手段は、前記予備吐出工程の吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形に前記微振動信号を構成する微振動波形を組み合わせて前記微振動工程を実行することを特徴とする第4〜6の何れかの態様に記載のインクジェット式記録装置にある。
【0022】
かかる第7の態様では、微振動工程によって増粘したインクを撹拌しながら予備吐出工程によってインク滴を吐出させるため、効果的に増粘したインクを排出することができる。
【0023】
本発明の第8の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室に付設されるアクチュエータに吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与することにより前記ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置において、前記アクチュエータに吐出駆動波形と前記微振動信号を構成する微振動波形とを組み合わせた駆動信号を構成する基本波形から選択した所定の微振動信号を供給して前記ノズル開口からインク滴を吐出させない程度に前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つメニスカスに微振動を励起させて前記ノズル開口近傍のインクを撹拌する微振動工程と、印字期間外に前記アクチュエータに前記基本波形から選択した所定の吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つ前記ノズル開口からインク滴を吐出させる予備吐出工程とが、前記基本波形から選択される吐出駆動波形又は微振動波形の数を変えることにより供給間隔を調整することによって実行されることを特徴とするインクジェット式記録装置にある。
【0024】
かかる第8の態様では、微振動工程によって増粘したインクを撹拌しながら予備吐出工程によってインク滴を吐出させるため、効果的に増粘したインクを排出することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0031】
図1に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A,1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A,1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0032】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ3に沿ってプラテン8が設けられている。また、このプラテン8の近傍には排紙ローラ9が設けられ、図示しない紙送りモータの駆動力により回転できるようになっており、給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSが搬送されるようになっている。
【0033】
このようなインクジェット式記録装置では、キャリッジ3がキャリッジ軸5に沿って移動されると共にインクジェット式記録ヘッドによってインクが吐出されて記録シートSに印刷される。
【0034】
なお、本実施形態では、キャリッジ3の移動方向の端部であるプラテン8の側方にキャップ10が設けられており、またこのキャップ10には、図示しない吸引ポンプが連結され、いわゆるクリーニング操作が行われるようになっている。なお、キャップ10はまた、所定時間以上印刷待機しているインクジェット式記録ヘッドのヘッド端面をキャッピングしてノズルの乾燥を防止している。
【0035】
ここで、上述のようなインクジェット式記録装置に搭載されるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図2は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの一例を示す断面図である。
【0036】
図2に示すインクジェット式記録ヘッド30は、縦振動型の圧電素子を有するタイプであり、スペーサ31には、複数の圧力発生室32が並設され、スペーサ31の両側は、各圧力発生室32に対応してノズル開口33を有するノズルプレート34と、振動板35とにより封止されている。また、スペーサ31には、各圧力発生室32毎にそれぞれインク供給路36を介して連通されて複数の圧力発生室32の共通のインク室となるリザーバ37が形成されており、リザーバ37には、図示しないインクカートリッジが接続される。
【0037】
一方、振動板35の圧力発生室32とは反対側には、各圧力発生室32に対応する領域にそれぞれ圧電素子38の先端が当接されている。これらの圧電素子38は、圧電材料39と、電極形成材料40及び41とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層され、振動に寄与しない不活性領域が固定基板42に固着されている。なお、固定基板42と、振動板35,スペーサ31及びノズルプレート34とは、基台43を介して一体的に固定されている。
【0038】
このように構成されたインクジェット式記録ヘッド30では、インクカートリッジに連通されるインク流路を介してリザーバ37にインクが供給され、インク供給路36を介して各圧力発生室32に分配される。実際には、圧電素子38に電圧を印加することにより圧電素子38を収縮させる。これにより、振動板35が圧電素子38と共に変形されて(図中下方向に引き下げられて)圧力発生室32の容積が広げられ、圧力発生室32内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口33に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧電素子38の電極形成材料40及び41に印加していた電圧を解除すると、圧電素子38が伸張されて元の状態に戻る。これにより、振動板35も変位して元の状態に戻るため圧力発生室32が収縮され、内部圧力が高まりノズル開口33からインク滴が吐出される。
【0039】
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドによるインクの吐出を制御する構成を図3に示す。
【0040】
図3のブロック図に示すように、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドでは、実際に印刷を行う機構部となる記録ヘッド30とこの記録ヘッド30の動作を制御する制御部50とを有する。
【0041】
制御部50の印刷制御手段51は、記録ヘッド30の印刷動作の制御を行い、例えば、印刷信号の入力に伴って記録ヘッド駆動回路60を介して記録ヘッド30に印刷を実行させる。
【0042】
微振動制御手段52は、後述する変更手段によって変更された微振動動作の設定条件に基づいて記録ヘッド駆動回路60を介して記録ヘッド30に微振動駆動動作を実行させる。
【0043】
また、予備吐出制御手段53は、印刷制御手段51から供給されるインクを吐出するための吐出駆動信号によって、記録ヘッド駆動回路60を介して記録ヘッド30に予備吐出を実行させる。
【0044】
計時手段54は、記録ヘッド30の待機時間を計測するものであり、例えば、本実施形態では、記録ヘッド30がキャップ10によってキャッピングされている時間を計測している。
【0045】
変更手段55は、計時手段54の検出結果に基づいて微振動動作の制御を変更する。例えば、本実施形態では、変更手段55は、微振動波形の周期を変更する。
【0046】
そして、本実施形態のインクジェット式記録装置では、印刷期間外に、微振動制御手段52が、微振動動作、すなわち、インク滴が吐出されない程度に圧力発生室32内のインクに圧力を付与することによってノズル開口33近傍のインクに振動を励起させてノズル開口近傍のインクを撹拌し、その後、予備吐出制御手段53が、予備吐出動作、すなわち、圧電素子に吐出駆動信号を供給してノズル開口からインクを吐出させることにより、ノズル開口から増粘したインクを排出する。
【0047】
ここで、微振動動作及び予備吐出動作について詳しく説明する。なお、図4は、本実施形態に係る駆動信号の波形形状を示す図である。
【0048】
本実施形態の微振動動作及び予備吐出動作を実行するための駆動信号は、例えば、図4(a)に示すように、ノズル開口33近傍のインクを撹拌するための複数の微振動波形61からなる微振動工程71と、インク滴を吐出させるための複数の吐出駆動波形62からなる予備吐出工程72とからなり、微振動工程71における各微振動波形61の周期が、時間の経過に伴って段階的に短くなるように設定されている。例えば、本実施形態では、変更手段55によって変更された微振動波形61の周期fに応じて、微振動工程71での微振動波形61の周期が、f/4,f/3,f/2,fと段階的に早くなるように設定されている。
【0049】
ここで、この微振動波形61の周期は、時間の経過に伴って段階的に短くなっていれば特に限定されないが、状況に応じて適宜決定されることが好ましい。例えば、本実施形態で、計時手段54によって計時された記録ヘッド30のキャッピング時間の長さに応じて、変更手段55が微振動波形61の周期を変更し、変更された設定で微振動制御手段52が微振動動作を実行している。すなわち、記録ヘッド10のキャッピング時間が長くインクが増粘しているほど、微振動波形61の周期が長くなるように設定される。
【0050】
なお、例えば、上述した実施形態では、記録ヘッド30のキャッピング時間に応じて、微振動動作の制御を変更するようにしたが、これに限定されず、例えば、環境温度あるいはインク種、すなわち、インクの増粘され易さ等に応じて、微振動動作の制御を変更するようにしてもよい。例えば、環境温度が高いほど、微振動波形の周期fを長くするように制御を変更し、また、増粘され易いインクほど微振動波形の周期fを長くするように制御を変更すれば、インクの状態に最適な微振動動作を実行することができる。
【0051】
このように、本実施形態では、微振動波形の周期を時間の経過に伴って段階的に短くするようにしたので、ノズル開口近傍で増粘したインクを効果的に且つ略均一に撹拌することができる。また微振動動作後に予備吐出動作を実行することにより、増粘したインクを効果的且つ確実に排出することができる。したがって、インク滴を吐出する際に、飛行曲がり等の不安定吐出や、ノズル開口内に気泡を取り込むことにより吐出不良も防止でき、安定したインク吐出を行うことができる。
【0052】
なお、このような微振動工程71は、例えば、図4(b)に示すように、微振動波形61とインク滴を吐出するための吐出駆動波形62とが組み合わされた基本波形73から微振動波形61のみを選択して圧電素子に供給することにより実行される。そして、各微振動波形61の間隔(周期)は、この基本波形73から選択される微振動波形61の数を変えることによって調整される。また、同様に、予備吐出工程72は、基本波形73から吐出駆動波形62を選択することにより実行される。
【0053】
また、本実施形態では、各微振動波形61の周期を変更するようにしたが、これに限定されず、一定周期の複数の微振動波形61からなる微振動工程71の間隔が、時間の経過に伴って段階的に短くなるようにしてもよい。このような微振動駆動を実行することによっても、本実施形態と同様に、ノズル開口近傍の増粘したインクを効果的に撹拌することができる。
【0054】
また、本実施形態では、微振動工程71を予備吐出工程72の前に実行するようにしたが、これに限定されず、勿論、印刷開始前等の所定のタイミングで実行するようにしてもよい。これにより、微振動工程71によって、ノズル開口近傍で増粘したインクが効果的に撹拌されるため、印刷時に飛行曲がり等の不安定吐出が生じ難く、ノズル開口内に気泡を取り込むことによる吐出不良も防止することができる。
【0055】
(実施形態2)
図5に、本実施形態に係る駆動波形の一例を示す。
【0056】
本実施形態は、予備吐出動作の周期を時間の経過に伴って短くするようにした例であり、変更手段55が、微振動制御手段52の制御と共に、予備吐出制御手段53の制御を変更するようにした以外は、実施形態1と同様である。
【0057】
すなわち、図5(a)に示すように、本実施形態の予備吐出工程72Aにおける各吐出駆動波形62の周期f1は、時間の経過に伴って段階的に短くなるように設定されている。例えば、本実施形態では、変更手段55が、吐出駆動波形62の周期f1を変更し、変更された周期f1に応じて、予備吐出工程72Aの各吐出駆動波形62の周期が、f1/4,f1/3,f1/2,f1と段階的に短くなるように設定されている。
【0058】
このような構成では、予備吐出工程72Aにおいて段階的に吐出スピードが増加するため、メニスカスの動きが安定し、ノズル内に気泡を取り込むのを防止することができる。したがって、増粘したインクを効果的に排出することができ、印刷品質を良好に保持することができる。
【0059】
なお、本実施形態のこのような予備吐出工程72Aは、例えば、実施形態1と同様に、複数の微振動波形61と吐出駆動波形62とが組み合わされた基本波形73から吐出駆動波形62のみを選択して圧電素子に供給することにより実行される。そして、吐出駆動波形62の供給間隔は、基本波形73から選択される吐出駆動波形62の数を変えることによって調整される。また、微振動工程71も同様に、基本波形73から微振動波形61を選択することにより実行される。
【0060】
また、本実施形態では、各吐出駆動波形62の供給間隔を変更するようにしたが、これに限定されず、同一周期の複数の吐出駆動波形62からなる予備吐出工程の間隔が、時間の経過に伴って段階的に短くなるようにしてもよい。このような吐出駆動波形で予備吐出動作を実行させることによっても、本実施形態と同様に、ノズル開口近傍の増粘したインクを効果的に撹拌することができる。
【0061】
また、本実施形態では、微振動工程71及び予備吐出工程72Aは、複数の微振動波形61と吐出駆動波形62とが組み合わされた基本波形73から、所定の駆動波形を選択することにより実行されるが、これに限定されるものではない。
【0062】
例えば、図5(b)に示すように、吐出駆動波形62のみからなる第1の基本波形74と、微振動波形61のみからなる第2の基本波形75とを設けておき、これらを適宜選択することにより、微振動工程71及び予備吐出工程72Aを実行するようにしてもよい。
【0063】
これにより、吐出駆動波形62及び微振動波形61の周期が実質的に短くなるため、圧電素子の高速駆動を実現でき、印刷準備にかかる時間を短縮することができる。また、勿論、高速印刷を実現することもできる。
【0064】
なお、本実施形態では、微振動工程71実行後に予備吐出工程72Aを実行するようにしたが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、吐出駆動波形62と微振動波形61と組み合わせた駆動信号によって、微振動工程71A及び予備吐出工程72Bを実行するようにしてもよい。このとき、各微振動工程71Aを構成する微振動波形61の数は、予備吐出工程72Bの各吐出駆動波形62の間隔に応じて、適宜選択すればよい。
【0065】
これにより、増粘したインクをさらに効果的に排出することができ、印刷品質を良好に保持することができ、信頼性を向上することができる。
【0066】
(実施形態3)
本実施形態は、微振動動作と予備吐出動作とを交互に実行するようにした例である。すなわち、図7に示すように、略一定周期の微振動波形61と吐出駆動波形62とを交互に組み合わせた駆動信号によって印刷期間外に圧電素子を駆動し、微振動工程71及び予備吐出工程72を実行することにより増粘したインクを撹拌及び排出するようにした。
【0067】
このように、本実施形態では、各微振動波形61及び予備吐出波形62の周期は略一定であるが、微振動工程と予備吐出工程とが交互に実行されるため、ノズル開口近傍の増粘したインクの撹拌及び排出を効果的に実行することができる。
【0068】
(他の実施形態)
以上説明した実施形態では、縦振動型のインクジェット式記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置を例示して説明したが、インクジェット式記録ヘッドの種類は特に限定されず、例えば、たわみ振動型のインクジェット式記録ヘッド、あるいは圧力発生室内に抵抗線を設けた電気熱変換式のインクジェット式記録ヘッド等、種々の構造のインクジェット式記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録ヘッドにも適用することができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、微振動動作中のメニスカスに微振動を励起させる間隔、すなわち、各微振動信号の周期を時間の経過に伴って段階的に短くするようにしたので、メニスカスを安定して振動させることができ、ノズル開口近傍で増粘したインクを効果的且つ均一に撹拌することができる。したがって、微振動動作後のインク吐出を常に良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る駆動波形及び基本波形の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る駆動波形及び基本波形の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る駆動波形の他の例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る駆動波形の一例を示す図である。
【図8】従来のインクジェット式記録装置における予備吐出動作時のメニスカスの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
31 スペーサ
32 圧力発生室
34 ノズルプレート
35 振動板
38 圧電素子
Claims (8)
- ノズル開口に連通する圧力発生室に付設されるアクチュエータに吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与することにより前記ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置において、
前記アクチュエータに微振動信号を構成する微振動波形と吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形とが組み合わされた基本波形から選択した所定の微振動信号を供給して前記ノズル開口からインク滴を吐出させない程度に前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つメニスカスに微振動を励起させて前記ノズル開口近傍のインクを撹拌する微振動工程を実行する微振動制御手段を具備し、該微振動制御手段は、前記基本波形から選択する微振動波形の数を変えることにより供給間隔を調整することで、メニスカスに微振動を励起させる間隔が段階的に短くなるように微振動工程を実行することを特徴とするインクジェット式記録装置。 - 前記微振動制御手段は、前記微振動信号を構成する微振動波形の周期が段階的に短くなるように各微振動工程を実行することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記微振動制御手段は、前記微振動工程を所定間隔で複数回実行する際に、当該微振動工程の間隔が段階的に短くなるように実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット式記録装置。
- ノズル開口に連通する圧力発生室に付設されるアクチュエータに吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与することにより前記ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置において、
印字期間外に前記アクチュエータに少なくとも吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形を含んで構成される基本波形から選択した所定の吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つ前記ノズル開口からインク滴を吐出させる予備吐出工程を実行する予備吐出制御手段を具備し、該予備吐出制御手段は、前記基本波形から選択する吐出駆動波形の数を変えることにより供給間隔を調整することで、インク滴が吐出される間隔が段階的に短くなるように予備吐出工程を実行することを特徴とするインクジェット式記録装置。 - 前記予備吐出制御手段は、前記吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形の周期が段階的に短くなるように前記予備吐出工程を実行することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記予備吐出制御手段は、前記予備吐出工程を所定間隔で複数回実行する際に、当該予備吐出工程の間隔が段階的に短くなるように実行することを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記アクチュエータに微振動信号を供給して前記ノズル開口からインク滴を吐出させない程度に前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つメニスカスに微振動を励起させて前記ノズル開口近傍のインクを撹拌する微振動工程を実行する微振動制御手段をさらに具備し、該微振動制御手段は、前記予備吐出工程の吐出駆動信号を構成する吐出駆動波形に前記微振動信号を構成する微振動波形を組み合わせて前記微振動工程を実行することを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のインクジェット式記録装置。
- ノズル開口に連通する圧力発生室に付設されるアクチュエータに吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与することにより前記ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置において、
前記アクチュエータに吐出駆動波形と前記微振動信号を構成する微振動波形とを組み合わせた駆動信号を構成する基本波形から選択した所定の微振動信号を供給して前記ノズル開口からインク滴を吐出させない程度に前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つメニスカスに微振動を励起させて前記ノズル開口近傍のインクを撹拌する微振動工程と、印字期間外に前記アクチュエータに前記基本波形から選択した所定の吐出駆動信号を供給して前記圧力発生室内のインクに圧力を付与し且つ前記ノズル開口からインク滴を吐出させる予備吐出工程とが、前記基本波形から選択する吐出駆動波形又は微振動波形の数を変えることにより供給間隔を調整することによって実行されることを特徴とするインクジェット式記録装置。
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