JP3995431B2 - トリメチルアミンの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタノールとアンモニアの気相接触反応によりメチルアミンを製造する方法に関する。より詳しくは、メチルアミン製造プロセスの消費エネルギーコスト削減による経済性向上と、電子材料や医薬品向けの高純度トリメチルアミンの精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メチルアミンは、一般にはアルミナ、シリカアルミナ等の脱水およびアミネーション作用をもつ固体酸触媒の存在下にメタノールとアンモニアを気相で高温(400℃前後)で反応させることによって製造される。通常、この反応ではジメチルアミン、モノメチルアミン、トリメチルアミンの混合物が生成する。また、これらのメチルアミンはジメチルアミン以外は需要が著しく少ないことから、反応生成物からジメチルアミンを分離した後、反応系にリサイクルして再利用されている。
【0003】
また、メチルアミン混合物を分離するには蒸留が慣用されている。しかし、トリメチルアミンは、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミンと複雑な共沸系を形成することから、これを分離することは非常に煩雑な蒸留操作並びに大型の装置が必要となり、メチルアミン製造プロセスの消費エネルギーコストは非常に大きなものとなる。なお、この回収プロセスに関しては、例えば「改訂製造工程図全集」(昭和53年4月25日株式会社化学工業社発行)に詳しく開示されている。
【0004】
メチルアミン製造プロセスのトリメチルアミン分離工程で消費エネルギーコスト削減する方法は、特開平8−169864号公報、特開平8−311000公報に開示されているトリメチルアミンとアンモニアを共沸蒸留で分離し、その全量を反応系にリサイクルする方法がある。この方法は新たにトリメチルアミン分離塔を必要としない反面、トリメチルアミンを製品として必要とする場合には対応できない欠点がある。
【0005】
また,トリメチルアミンは電子材料向けや医薬原料向けの用途では高純度品が要求される。高純度のトリメチルアミンの製造に関しては特開平10−139737号公報に記載されているカルボン酸エステルを添加する方法が知られているが、操作が煩雑になる欠点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、トリメチルアミンは,アンモニア,モノメチルアミン,ジメチルアミンと複雑な共沸系を形成することから、これを分離することは非常に煩雑な蒸留操作ならびに大型の装置が必要で,メチルアミン製造プロセスの消費エネルギーコストは非常に大きなものとなってしまうという問題点がある。
【0007】
本発明はトリメチルアミン分離工程での消費エネルギーコスト削減及び高純度のトリメチルアミンの精製方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、メチルアミン混合物からトリメチルアミンを分離精製するに当たり,蒸留を2塔で行い、かつ2塔目の蒸留塔を1塔目より小型化することで消費エネルギーコストが大幅に削減できると同時に、高純度のトリメチルアミンが容易に得られることを見出して本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明は、メチルアミン混合物及びメタノールの少なくとも1種とアンモニアとをゼオライト触媒の存在下で気相接触反応させ得られた反応混合物を、アンモニア分離塔において未反応のアンモニアを分離した後、トリメチルアミンを精製する方法において、
1)メチルアミン混合物とメタノールを含む水溶液を水抽出蒸留塔であるトリメチルアミン分離塔に供給し、塔底よりモノメチルアミン、ジメチルアミン及びメタノールの水溶液を回収し、塔頂より粗トリメチルアミンを留出させ、その一部をトリメチルアミン精製塔に供給し、残りを反応系にリサイクルする工程
2)水抽出蒸留塔であるトリメチルアミン精製塔の塔頂より製品のトリメチルアミンを留出し、塔底より水を排出する工程
の2つの工程を有することを特徴とするトリメチルアミンの精製方法に関する。
【0010】
【発明実施の形態】
本発明は、メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアとをゼオライト触媒の存在下で気相接触反応させ得られた反応混合物を、アンモニア分離塔で未反応のアンモニアを分離し,メチルアミン混合物とメタノールを含む水溶液からトリメチルアミンを高純度でかつ経済的に取得する方法である。
【0011】
本発明におけるトリメチルアミンの精製方法の特徴は水抽出蒸留塔を2塔用いて行うことにある。ここで使う蒸留塔の組合せは2塔目を1塔目に比べ小型のものを用い、1塔目をトリメチルアミン分離塔、2塔目をトリメチルアミン精製塔とする。
【0012】
メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアとをゼオライト触媒の存在下で気相接触反応させ得られた反応混合物は、アンモニア分離塔で未反応のアンモニアを分離し、メチルアミン混合物とメタノールを含む水溶液とした後、トリメチルアミン分離塔の中段に供給される。
【0013】
トリメチルアミン分離塔は理論段数20〜40段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比5〜50、塔頂圧は0.4〜0.8Mpa、また、原料供給段より上に水を供給し水抽出蒸留を行う。ここで、水の供給量は、トリメチルアミン供給液中のトリメチルアミン量に対し3〜10倍量(質量比)とする。このような条件で蒸留することにより、塔底中のトリメチルアミンは10ppm以下となる。また、塔頂からは純度90〜97%のトリメチルアミンを留出させ、製品として必要な一部をトリメチルアミン精製塔に供給し、残りの部分を反応系にリサイクルする。
【0014】
トリメチルアミン精製塔は理論段数10〜20段程度の充填塔や棚段塔が用いられ、還流比3〜20、塔頂圧は0.4〜0.8Mpa、また、原料供給段より上に水を供給し水抽出蒸留を行う。ここで、水の供給量は、トリメチルアミン供給液中のトリメチルアミン量に対し3〜10倍量(質量比)とする。このような条件で蒸留することにより、塔頂からは純度99.9質量%以上、不純物のジメチルアミン100ppm以下の高純度トリメチルアミンを得る。
【0015】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
メタノールとアンモニアをゼオライト触媒の存在下気相で反応させ得られた反応生成物をアンモニア分離塔でアンモニアを除去し、モノチルアミン11.0質量%、ジメチルアミン40.9質量%、トリメチルアミン8.5質量%、メタノール5.3質量%、水34.3質量%の液を1000kg/hrで得た。この水溶液を図1に示すプロセスを用いて蒸留した。まず、アンモニアを除去した水溶液をトリメチルアミン分離塔(塔径0.35m,理論段数30段の充填塔)の中段に供給し、供給段より上に水を722.3kg/hrで供給し、塔頂圧0.7MPa、還流比9.8(この還流比は還流量/(塔頂ガス抜出し+液抜出し))で蒸留した。このとき塔頂ガスの64.6kg/hr分をガスのまま反応系にリサイクルし、残りをコンデンサーで凝縮しそのうち製品として必要な分25.08kg/hrを抜出した。このときの祖トリメチルアミンの純度は94.4質量%であった。また、塔底からモノメチルアミン、ジメチルアミン及びメタノールを含む水溶液を1632.64kg/hr抜出した。そして、塔頂より液で抜出した粗トリメチルアミンをトリメチルアミン精製塔(塔径0.10m,理論段数14段の充填塔)の中段に供給し、供給段より上に水を27.59kg/hrで供給し、塔底に蒸気を12.54kg/hr入れ、塔頂圧0.4MPa、還流比3で蒸留した。その結果、塔頂よりトリメチルアミンの純度99.9質量%以上の製品を21.28kg/hr得た。このときの不純物はジメチルアミンが40ppmであった。各ラインの組成は表1に記載した。また,トリメチルアミンの精製に使用した蒸気は336kg/hrであった。
【0017】
【表1】
【0018】
比較例1
メタノールとアンモニアをゼオライト触媒の存在下気相で反応させ得られた反応生成物をアンモニア分離塔でアンモニアを除去し、モノチルアミン11.0質量%、ジメチルアミン40.9質量%、トリメチルアミン8.5質量%、メタノール5.3質量%、水34.3質量%の液を1000kg/hr得た。この水溶液を図2に示すプロセスにて蒸留した。まず、アンモニアを除去した水溶液をトリメチルアミン分離塔(塔径0.5m,理論段数46段の充填塔)の中段に供給し、供給段より上に水を722.3kg/hrで供給し、塔頂圧0.7MPa、還流比23.8で蒸留した。塔底からモノメチルアミン、ジメチルアミン、及びメタノールを含む水溶液を1638.04kg/hr抜出し、塔頂よりトリメチルアミンを84.27kg/hr抜出した。このうち,21.28kg/hrを製品として回収し、残りは反応系にリサイクルした。なお,このときのトリメチルアミンの純度は98.14質量%であった。各ラインの組成は表−2に記載した。また,トリメチルアミンの精製に使用した蒸気は469kg/hrであった。
【0019】
【表2】
【0020】
【発明の効果】
本発明の方法により、簡便な蒸留操作で、消費エネルギーコストが削減され経済的かつ濃度99.9質量%以上の高純度のトリメチルアミンを得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する際のプロセスフローシートの1例である。
【図2】本発明を比較する際のプロセスフローシートの1例である。
【符号の説明】
A トリメチルアミン分離塔
B トリメチルアミン分離塔コンデンサー
C トリメチルアミン分離塔リボイラー
D トリメチルアミン精製塔
E トリメチルアミン精製塔コンデンサー
1 メチルアミン混合物水溶液
2 注水
3 粗トリメチルアミン
4 トリメチルアミン反応系リサイクル
5 モノメチルアミン、ジメチルアミン、及びメタノール水溶液
6 注水
7 蒸気
8 トリメチルアミン製品
9 排水
Claims (1)
- メチルアミン混合物及びメタノールの少なくとも1種とアンモニアとをゼオライト触媒の存在下で気相接触反応させ得られた反応混合物を、アンモニア分離塔において未反応のアンモニアを分離した後、トリメチルアミンを精製する方法において、
1)メチルアミン混合物とメタノールを含む水溶液を水抽出蒸留塔であるトリメチルアミン分離塔に供給し、塔底よりモノメチルアミン、ジメチルアミン及びメタノールの水溶液を回収し、塔頂より粗トリメチルアミンを留出させ、その一部をトリメチルアミン精製塔に供給し、残りを反応系にリサイクルする工程
2)水抽出蒸留塔であるトリメチルアミン精製塔の塔頂より製品のトリメチルアミンを留出し、塔底より水を排出する工程
の2つの工程を有することを特徴とするトリメチルアミンの精製方法。
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