JP3994369B2 - 酒石酸耐性酸性ホスファターゼに対するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aを特異的に認識するモノクローナル抗体、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、該モノクローナル抗体を用いた検体中の酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aの測定方法、更には該ハイブリドーマを作製するための免疫原としてのペプチドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒト酸性ホスファターゼは、SDS−PAGEによって少なくともバンド0〜5の6個のバンドに分けられることが知られている。この中でバンド5に相当するタイプ5のアイソザイムは、酒石酸による抑制に対して耐性を示すことからヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼと呼ばれている。従って、本明細書においては、酒石酸耐性酸性ホスファターゼとは、酸性ホスファターゼのバンド5に相当する酵素をいうものとする。
ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼは、 骨代謝異常やHairy cell leukemia、Paget病、Gaucher病などの患者において、その血中濃度が優位に上昇すると考えられている。従って、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼの血中濃度の測定は、これらの疾患の診断に適用できることから、これまで幾つかの測定法が提案されているが、いずれの測定法も、他の酸性ホスファターゼのアイソザイムをともに測定してしまうため特異的かつ精密な測定法がなかった。また、このヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼは血中存在量が少ないこと、不安定であること、抗原性が低いことなどが原因で、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼに対する抗体を作成するための免疫用抗原として大量に精製し、利用することが難しかった。従って、ペプチド抗原を利用してヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼに対するモノクローナル抗体を作成する方法(Hybridoma.14,91-94.1995)が試みられたこともあるがこれまで成功していない。
【0003】
また、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼは、高精度の電気泳動により、更に二つのバンドに分けられ、それらはヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5a及びヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5bと呼ばれている。ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aと5bは、それらの蛋白のアミノ酸配列は同一であるが、糖鎖が異なり、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5bは、その糖鎖においてシアリル酸残基が欠失しており、パラニトロフェニルリン酸(pNPP)を基質とした場合の至適pH値が約5.7と約6.0の間にあり、他方、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aは、その糖鎖においてシアリル酸残基が欠失しておらず、pNPPを基質とした場合の至適pH値が約4.9であることが知られている(Clin. Chem. 24(7): 1105-1108, 1978; Clin. Biochem. 14, 177-181, 1981)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aと5bは、それぞれに臨床的意義があるといわれているが、これまで精密測定系がないため測定が難しかった。即ち、例えば、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに特異的に結合するモノクローナル抗体として、組換えヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼを抗原として作成したモノクローナル抗体4E6が報告されている(Clin. Chem. 41(10): 1495-149、 1995)が、その後の研究により、このモノクローナル抗体4E6は、ポテト酸性ホスファターゼとも高い結合性を有することが明らかにされており(Immuno. Lett. 70(1999), 143-149)、 選択性が十分とは言えないものである。従って、本発明の目的は、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aと特異的に反応し、他の酸性ホスファターゼのアイソザイムとは交差反応性を示さない、あるいは示しても極めて低い交差反応性しか示さないモノクローナル抗体、それを産生するハイブリドーマ、それを利用したヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aの測定法、更には該ハイブリドーマを作製するための免疫原としてのペプチドを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、組換えヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼなどの複雑な蛋白作製を伴わないペプチドによる、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに特異的なモノクローナル抗体の作製を目的として鋭意研究した結果、抗原ペプチドとして特定のペプチドを選択することにより、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに特異的なモノクローナル抗体が得られることを見出して、本発明を完成させた。
【0006】
従って、本発明は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに対するモノクローナル抗体であって、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b、前立腺由来、赤血球由来、血小板由来及びポテト由来の酸性ホスファターゼのいずれとも交差反応性を持たないかあるいは交差反応性が10%以下のモノクローナル抗体に関する。
更に本発明は、上記のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関する。
更に本発明は、上記モノクローナル抗体を用いることを特徴とする検体中の酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aの測定方法に関する。
更に本発明は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチド、又は該ペプチドと実質的に同様の免疫原性を有するペプチドに関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本明細書においては、酸性ホスファターゼ、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5a及び酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5bを、それぞれACP、 TrACP5a及びTrACP5bと略記する。
上記モノクローナル抗体は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチド、又は該ペプチドと実質的に同様の免疫原性を有するペプチドを免疫原として利用することにより得ることができる。配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列は、ヒトTrACPのアミノ酸番号143〜160の領域に相当する(Gene, 13(1993), 201-207)。配列番号1のアミノ酸配列からなるぺプチドは、天然型のヒトTrACPに近い抗原性を有しているものと考えられるので、このペプチドを免疫原として用いることにより、ヒトTrACP5aに特異性を持つモノクローナル抗体を得ることができる。
免疫原として用いるペプチドは、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様の免疫原性を有するペプチドであってもよい。このようなペプチドとしては、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドであって実質的に同様の免疫原性を有するペプチドが挙げられる。また、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において、連続した3個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上のアミノ酸残基からなる実質的に同様の免疫原性を有するペプチドであってもよい。また、更には、このようなペプチドを含むペプチドであって実質的に同様の免疫原性を有するペプチドであってもよい。このようなペプチドとしては、アミノ酸残基50個までからなるペプチドが挙げられる。
免疫原として用いる上記したペプチドは化学合成によって得る事ができる。あるいは、ヒトTrACP遺伝子のクローニングにより明らかにされた塩基配列(Gene.130,201-207.1993)を参考にして、ペプチドをコードする遺伝子をPCR法によって増幅し、発現ベクターに導入して適当な宿主細胞に形質転換し、形質転換細胞を培養してペプチドをコードする遺伝子を発現させることによって作製することもできる。また、ペプチドを融合蛋白として発現させてもよい。
免疫原として用いるペプチドは、 必ずしも高純度に精製したものでなくともよく、粗精製品であってもよい。また、 ペプチドは、通常ハプテンとなるキャリアープロテインに化学結合して、抗原として用いられる。
【0008】
本発明のモノクローナル抗体は、上記ペプチドを免疫原として動物を免疫し、その抗ペプチド抗体産生細胞と骨髄腫瘍細胞とを融合させることによって得られるハイブリドーマによって産生される。
このハイブリドーマは以下の方法によって得ることができる。即ち、上記したようにして得たペプチドを、必要に応じてハプテンに結合し、これをフロイントの完全、不完全アジュバント、またはPBSなどの緩衝液とともに数回に分けてマウス等の動物に2〜3週間おきに腹腔内または尾静脈投与することによって免疫する。次いで脾臓等に由来する抗体産生細胞と骨髄腫瘍細胞(ミエローマ細胞)等の試験管内で増殖能力を有する細胞とを融合する。融合法としては、ケーラーとミルスタインの方法(Nature.256,495.1975)によってポリエチレングリコール(PEG)を用いることにより融合できる。またセンダイウィルスによっても融合を行うことができる。
上記融合した細胞からヒトTrACP5aを認識する抗体を産生するハイブリドーマの選択は、以下のようにして行うことができる。即ち、上記融合した細胞から限界希釈法によってHAT培地及びHT培地で生存している細胞により作られるコロニーからハイブリドーマを選択する。このコロニー培養上清中にヒトTrACP5aに対する抗体が含まれている場合には、免疫原として用いたペプチドをそのプレート上に固定化したアッセイプレート上に上清をのせ、反応後に抗マウスイムノグロブリン−HRP標識抗体等、2次標識抗体を反応させるEIA法により、ヒトTrACP5aに対するモノクローナル抗体産生クローンを選択できる。目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、通常細胞培養に用いられる培地において培養し、その培養上清より目的とするモノクローナル抗体を回収することができる。またハイブリドーマが由来する動物をあらかじめプリスタン処理しておき、その動物に細胞を腹腔内注射することによって腹水を貯留させ、その腹水からモノクローナル抗体を回収することもできる。上清、腹水よりモノクローナル抗体を回収する方法としては、通常の方法を用いることができる。即ち、例えばクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAなどによるアフィニティクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0009】
上記した方法により、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに対するモノクローナル抗体であって、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b、前立腺由来、赤血球由来、血小板由来及びポテト由来の酸性ホスファターゼのいずれとも交差反応性を持たないかあるいは交差反応性が10%以下のモノクローナル抗体が得られた。このモノクローナル抗体は、タイプIgM、軽鎖κ、分子量 約95万ダルトンの特性を有していた。また、このモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとしてTrK73が確立された。このハイブリドーマは、 工業技術院生命工学工業技術研究所に平成12年6月28日に寄託され、受託番号としてFERM P−17927が付与されている。
【0010】
本発明のモノクローナル抗体を用いた測定法によって検体中のヒトTrACP5a濃度を知ることができる。このような測定法としては、酵素免疫測定法(EIA)、酵素固定化免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)などが挙げられる。このような測定法には、通常用いられる固相、例えば、ポリスチレン等のポリマー、ガラスビーズ、磁性粒子、マイクロプレート、グラスフィルターなどが用いられる。標識としては、例えば、ホースラデシュパーオキシダーゼ、ワサビペルオキシダーゼなどが挙げられる。これらの試薬を用いた免疫測定法それ自体は当業者に既に周知であり、周知の方法により本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫測定法を容易に実施できる。
【0011】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の作製
(1)抗原の作製と免疫
既に発表されているヒトTrACPの遺伝子の塩基配列(Gene.130,201-207.1993)を基にしてアミノ酸配列143〜160番目に相当する領域を選び、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチドを化学的に全合成した後、これをキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)と結合させて抗原とした。これをフロイント完全アジュバントで乳化させて感作抗原とし、Balb/c 6週齢雌性マウスに50μgを腹腔内投与した。2回目以降はフロイント不完全アジュバントを用い2週間おきに3回免疫を行い、最終回はPBS溶液にて尾静脈投与した。
【0012】
(2) 細胞融合とスクリーニング
最終ブーストの3日後に外科的に脾臓を摘出し、細胞融合に用いた。融合はケーラーとミルスタインの方法(Nature.256,495.1975)に従い、ポリエチレングリコールを用いて脾細胞とP3-X63-Ag8-U1(P3U1)を融合した。融合細胞はHAT培地に分散し96穴マイクロタイターカルチャープレートに分注して37℃、5%CO2条件にて培養した。約2週間後にコロニーの生育を確認してスクリーニングを実施した。スクリーニングの方法を以下に述べる。
スクリーニング用プレートを作製するために上記(1)にて作製した合成ペプチドをPBS中に溶解し、0.5μg/100μl/wellとなるように96穴ウエルに分注した。プレートを4℃で2晩静置した後に0.005% Tween 20を含むPBSで3回洗浄し、非特異的反応を抑えるために1.5%BSA溶液を200μl分注して、更に4℃で1晩静置した。完成したプレートを0.005% Tween 20を含むPBSで3回洗浄した後に培養上清100μlを反応させ、更に洗浄を行った後に2次抗体であるホースラデシュパーオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスイムノグロブリン抗体を加えて反応させた。洗浄後にHRPの発色基質であるOPDを加えて吸光度を測定した。上記のようにして陽性になったクローンは限界希釈法によって再クローニングされ上清を再度チエックした。
(3)抗体の確認
得られた抗体をモノクローナル抗体タイピングキットにて検定した結果、以下のような結果であった。
クラス IgM
軽鎖 κ
また、分子量は、約95万ダルトンであった。
(4)腹水採取と抗体精製
上記(2)で得られたハイブリドーマ、Trk73の1×107細胞個をプリスタン0.5ml投与後2週間のBalb/c10週齢雌性マウスに腹腔内投与し、約2週間後にマウス腹腔内に貯留した腹水を外科的に採取した。スクリーニングで行ったEIA法によって腹水をサンプルとして確認すると高濃度の本発明のモノクローナル抗体(以下、このモノクローナル抗体をモノクローナル抗体Trk73と記載することもある)が含まれていた。この腹水を硫安50%で処理し、PBSに透析した後、S−300カラムによりIgMフラクションを精製した。
【0013】
(5) ウエスタン・ブロッティング
ウエスタン・ブロッティング用サンプルとして既に公知の方法(Clin.Chem.24:7,1105-1108.1978)によりヒトCord plasmaよりTrACPを精製した。このヒトTrACPを更に分離精製しヒトTrACP5a及びヒトTrACP5bの2種類の酵素を得た。精製したヒトTrACP5a及びヒトTrACP5bは、ディスク電気泳動法(Clin.Chem.24:2,309-312.1978)及びフッ素阻害による活性測定法(Clin.Chem.46:4,469-473.2000)により、いずれも単一であることを確認した。これらのヒトTrACP5aとヒトTrACP5bの2種の酵素をそれぞれ2μg取り、非還元条件下にてSDS−PAGEを行い、ウエスタン・ブロッティング法により反応性を確認した。その結果、ヒトTrACP5aでは約33Kダルトン(非分解物)及び約23Kダルトン付近にバンドが認められた。ヒトTrACP5bでは、約33Kダルトン及び約23Kダルトンのいずれにもバンドが認められなかった。
この結果は、モノクローナル抗体Trk73がヒトTrACP5aと反応性を持つこと、また公知の報告(Arch.Biochem.Biophys.345,230-236.1997)で現れると考えられる23Kダルトンの分解ラージフラグメントと反応することを示している。他方、モノクローナル抗体Trk73は、ヒトTrACP5bと反応性を持たないことを示している。
(6)特異性検定
モノクローナル抗体Trk73の特異性を調べるため、上記のヒトTrACP5a及びヒトTrACP5bの他に、赤血球由来ACP、血小板由来ACP、前立腺由来ACP及びポテト由来ACPを96穴マイクロタイタープレートに0.5μg/100μl PBS/wellとなるように分注した。その後上記(2)と同様にブロッキングを行いプレートの作成をした。別にBSA、カゼインのみ(ブロッキング剤のみ)のプレートをコントロールとして同時に作成した。結果のブランク吸光度の2倍値までをマイナス(-)、3倍値までをプラス・マイナス(±)、3倍以上5倍以下をプラス(+)、5倍以上をストロング・ポジティブ(++)と判断した。得られた結果を表1に示した。
【0014】
【表1】
表1から明らかなように、TrACP5aだけがストロング・ポジティブであり、他はすべてマイナスであった。また、モノクローナル抗体Trk73は、TrACP5b、赤血球由来ACP、血小板由来ACP、前立腺由来ACP及びポテト由来ACPのいずれとも10%以下の交差反応性しか持たないことが判った。
【0015】
実施例2
モノクローナル抗体を利用した EIA によるヒト TrACP 5 a の測定
実施例1の(6)と同様の方法で精製したTrACP5aをマイクロタイタープレートに結合させ、プレートを作製した。TrACP5aは、それぞれ3000ngからの10倍希釈であり、3000ng、300ng、30ng、3ng、0.3ng、0.003ngの6段階の濃度を調整した。1次抗体としてモノクローナル抗体Trk73を100μl/wellで分注し、実施例1の(2)と同様に抗マウスイムノグロブリン‐HRP標識2次抗体を反応させる方法で検定した。得られた感度検定結果を図1に示した。図1から明らかなように0.3ngまでの濃度のTrACP5aが検出可能であることが判った。
【0016】
実施例3
モノクローナル抗体を利用した EIA によるヒトTrACP5aの測定
まず、一次抗体を調製するために組換えヒトTrACP(rTrACP)をハイマンらの方法(J.Biol.Chem.269,1294-1300.1994)により作製した。このrTrACPを、実施例1の(1)でマウスに行ったのと同様の方法にてWister系6週齢雌性ラットに感作した。最終感作3日後に頸静脈より全採血し、血清を得た。さらに血清をプロテインAカラム処理してIgG分画を作成した。このポリクローナルなIgG分画を5μg/100μl PBS/wellとなるようにマイクロタイタープレートに分注し、実施例1の(6)と同様の方法にてブロッキングを行って固相プレートを作成した。別に精製したモノクローナル抗体Trk73を4mgと西洋ワサビペルオキシダーゼ1mgを過ヨウ素酸法にて結合させ、二次標識抗体を作成した。このプレートと標識抗体を用いて、精製したヒトTrACP5aを検体としてEIA測定系を作ったところ、図2のような検量線を得た。
上記方法において、精製したTrACP5aの代わりに、実際の検体として6例のヒト血清を使用して、血清中のTrACP5aを測定したところ表2に示した結果を得た。これらの結果から、ヒト血清中のTrACP5aの濃度の平均値は2.58 ng/mlであった。
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】
本発明により、酒石酸耐性酸性ホスファターゼの143〜160番目に相当するアミノ酸配列領域からなるペプチドあるいはそれと同様の免疫原性を有するペプチドを抗原として用いて、モノクローナル抗体を作製することにより、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに特異的なモノクローナル抗体であって、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b、前立腺由来、赤血球由来、血小板由来及びポテト由来の酸性ホスファターゼのいずれとも交差反応性を持たないかあるいは交差反応性が10%以下のモノクローナル抗体が得られ、このモノクローナル抗体は血中の酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aを高精度に測定することができる。
【0019】
【配列表】
【0020】
【配列表フリーテキスト】
配列表の配列番号1のアミノ酸配列は、ヒト酒石酸耐性酸性フォスファターゼの143〜160番目のアミノ酸配列に相当するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のモノクローナル抗体を利用したEIAによるヒトTrACP5aの感度検定結果を示す。
【図2】図2は、本発明のモノクローナル抗体を利用したEIAによるヒトTrACP5aの測定の検量線を示す。
Claims (3)
- ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼの断片ペプチドであって、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチドを、哺乳動物に免疫することにより得られるリンパ球と、ミエローマ細胞とを融合して、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに対するモノクローナル抗体であって、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b、前立腺由来、赤血球由来、血小板由来及びポテト由来の酸性ホスファターゼのいずれとも交差反応性を持たないかあるいは交差反応性が10%以下のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得て、該ハイブリドーマが産生する該モノクローナル抗体を回収することを特徴とする、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5aに対するモノクローナル抗体であって、ヒト酒石酸耐性酸性ホスファターゼ5b、前立腺由来、赤血球由来、血小板由来及びポテト由来の酸性ホスファターゼのいずれとも交差反応性を持たないかあるいは交差反応性が10%以下のモノクローナル抗体の製造法。
- モノクローナル抗体が、タイプIgM、軽鎖κ、分子量約95万ダルトンである請求項1記載のモノクローナル抗体の製造法。
- ハイブリドーマが工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P−17927として寄託されているハイブリドーマTrk73である請求項1又は2記載のモノクローナル抗体の製造法。
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