JP2786068B2 - Crkタンパクに対するモノクローナル抗体と、この抗体を産生するハイブリドーマ株 - Google Patents

Crkタンパクに対するモノクローナル抗体と、この抗体を産生するハイブリドーマ株

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JP2786068B2 JP4260215A JP26021592A JP2786068B2 JP 2786068 B2 JP2786068 B2 JP 2786068B2 JP 4260215 A JP4260215 A JP 4260215A JP 26021592 A JP26021592 A JP 26021592A JP 2786068 B2 JP2786068 B2 JP 2786068B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、前癌遺伝子CRKの
発現産物であるCRKタンパクに対するモノクローナル
抗体と、この抗体を産生するハイブリドーマ株に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年における遺伝子工学の進歩は目覚ま
しいものがあり、発癌のメカニズムについても遺伝子レ
ベルでの研究が活発に行なわれ、ヒトの発癌に関与する
多数の癌遺伝子および癌抑制遺伝子が明らかになってき
ている。また、それに伴って、癌の診断や基礎研究にお
いて、癌遺伝子に関連する抗体が広く利用されるように
なってきている。従来、このような癌遺伝子に関連した
抗体については、たとえばN−myc遺伝子産物と特異
的に反応する抗体に関する発明(特開昭63−3135
96号公報)が知られている。
【0003】一方、CRK遺伝子は、ニワトリCT10
ウイルスの癌遺伝子として最初に同定された前癌遺伝子
であり、現在では、マウス、ラット、サル、ヒト等にも
その存在が確認されている。この癌遺伝子CRKの発現
産物であるCRKタンパクは、チロシンキナーゼの制御
タンパクであり(Mayer et al., Nature, 332,27
2−275,1988;Matsuda et al., Molecular an
d Cellular Biology,12, 3482-3489, 1992 )、しかも
ある種のチロシンキナーゼは癌の悪性化に伴って発現量
が増加することから、このCRKタンパクもヒトの発癌
メカニズムに重要な役割を果している可能性がある。
【0004】このような理由から、このCRKタンパク
についての関心が高まりつつあり、その定量やタンパク
自体の精製が癌研究における重要な課題の一つになって
きている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このC
RK遺伝子に関連する抗体としては、これまでに、大腸
菌で発現させたニワトリCRKタンパクを抗原とする抗
CRKタンパクウサギ血清が知られているのみであり、
モノクローナル抗体に関する報告は未だなされていな
い。
【0006】従って、CRKタンパク、特にヒト由来の
CRKタンパクに対して高特異的な反応性を有するモノ
クローナル抗体を提供することは、このタンパクのヒト
発癌メカニズムに対する関与を理解するためにも、また
このタンパクによるチロシンキナーゼの制御機構を知る
うえでも極めて重要な意味を有するものである。この発
明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、
CRKタンパクに対して高特異的な反応性を有するモノ
クローナル抗体を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、CRKタンパクに対して特異的
な反応性を有するモノクローナル抗体、およびCRKタ
ンパクに対して特異的な反応性を有し、かつCRKタン
パクのリン酸化チロシン含有タンパク結合活性を阻害す
るモノクローナル抗体を提供する。
【0008】またこの発明は、上記モノクローナル抗体
を産生するハイブリドーマ株をも提供する。以下、この
発明についてさらに詳しく説明する。この発明のモノク
ローナル抗体は、前癌遺伝子CRKの発現産物であるC
RKタンパクに対して高特異的な反応性を有するモノク
ローナル抗体である。なお、このCRKタンパクについ
ては、ヒト、サル、ラット、マウスおよびニワトリにつ
いてその発現が確認されている。
【0009】この発明のモノクローナル抗体は、この抗
体を産生するハイブリドーマ株を培養することによって
製造することができ、そのようなハイブリドーマ株の作
出は、免疫、細胞融合、融合細胞選択およびクローニン
グ(株化)の各工程よりなる公知の方法(Nature, 25
6,495,1975)によって行なうことができる。
【0010】その場合に、免疫工程において用いる免疫
原としては、たとえばヒトCRK遺伝子を挿入した発現
ベクター(pET3等)による形質転換大腸菌の発現産
物から精製したCRKタンパクを挙げることができる。
あるいはまた、ヒトCRK遺伝子を、グルタチオン−S
−トランスフェラーゼ(以下、GSTと記す)発現ベク
ター(pGEX−3X、pGEX−2T;:ファルマシ
ア製品番号27−4801−01,27−4803−0
1)のGST遺伝子3′末端に挿入連結し、このベクタ
ーを導入した大腸菌から精製(たとえばグルタチオンセ
ファロースアフィニティークロマトグラフィーを使用)
したCRKタンパクとGSTとの融合蛋白質(以下、G
ST−CRKと記す)を免疫原とすることもできる。
【0011】このようにして作出したハイブリドーマ株
の産生するこの発明のモノクローナル抗体は、CRK遺
伝子の発現産物である分子量約28,000、40,000、42,000
のタンパク質、およびGST(分子量約26,000)との融
合蛋白質によって形成される分子量約54,000のタンパク
質に対して、ウエスタンブロッティング法、免疫沈殿
法、免疫組織化学法を用いてスクリーニングした場合、
少なくとも2以上の上記方法において高い特異的な反応
性を示す。
【0012】以下、この発明のハイブリドーマ株および
そのハイブリドーマ株を用いたモノクローナル抗体の好
ましい製造方法を、免疫動物としてマウスを用いた場合
について順次説明する。 (1)免疫動物リンパ球の調製 マウスへの免疫は、CRK遺伝子をGST遺伝子の3′
末端に連結挿入した発現ベクター(pGEX−CRK)
により形質転換した大腸菌から、アフィニティークロマ
トグラフィーで精製したCRKタンパク 200μl(濃度10
00μg/ml)をマウスに数週間隔で数回投与することで行
うことができる。
【0013】リンパ球は、その免疫マウスの充分な抗体
価を確認後、最終免疫から数日後の、血液、リンパ節、
脾臓などから得ることができるが、脾臓から得るのが好
ましい。 (2)ミエローマ細胞の準備 細胞融合には、マウス由来のMPC-11,P3-X63-Ag8・653
(653), P3-X63-Ag8-U1(P3U1), P3-NS1(NS-1), SP2/O-A
g14 (SP2/O)など、およびラット由来のIR983 F,Y3-Ag1.
2.3, YB2/0 などのミエローマ細胞を用いることができ
るが、653, P3U1,NS-1, SP2/O などの細胞外に抗体を産
生分泌しないミエローマ細胞が好ましい。 (3)細胞融合 細胞融合は、前記のようにして免疫されたマウスのリン
パ球とミエローマ細胞との細胞数を(4〜20):1の
割合で、細胞融合に支障をきたさない細胞懸濁溶液、例
えば、一般に用いられるリンパ球培養用培地成分(IMDM,
MEM,DMEM,McCoy, RPMI1640などの培地成分)溶液、等張
緩衝液などを用いてよく混合し、遠心分離した後のペレ
ット(細胞塊)に、HVJ(センダイウイルス)または
PEG(ポリエチレングリコール)溶液を添加すること
によって行うことができるが、好ましくはPEG溶液を
用いるのがよく、さらに好ましくは平均分子量が 1000
〜8000で30〜60重量%のPEG溶液を用いるのがよ
い。この時、細胞融合を促進するために、コルヒチン、
ジメチルスルホキシド、ポリ−L−アルギニンなどを添
加することもできる。
【0014】細胞融合に用いるミエローマ細胞として
は、免疫された動物と異種の動物由来のものを使用する
こともできるが、得られるモノクローナル抗体産生ハイ
ブリドーマ株の抗体産生量および安定性の面を考慮した
場合には、免疫された動物とは同種のミエローマ細胞を
用いた方がよく、さらに好ましくは同系ののを用いた方
がよい。 (4)ハイブリドーマの選択 ハイブリドーマの選択は、細胞融合の操作後の細胞をH
AT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジ
ン、ウシ胎児血清を含有した培地。この培地成分として
は一般に用いられるリンパ球培養用培地成分を用いるこ
とができる)で培養して行うことができる。
【0015】ハイブリドーマの培養は、培養プレートの
各ウェル(培養ウェル)に抗体産生ウェルの検索に適し
た細胞個数を入れて行い、この時、ハイブリドーマの増
殖促進物質またはそれを産生する細胞(例えば、胸腺、
脾臓、リンパ節由来のリンパ球など)をフィーダー細胞
として必要に応じて使用することができるし、あるいは
IL−6を含むリンパ球培養用培地などを使用すること
もできる。
【0016】HAT培地で増殖することによって選択さ
れたハイブリドーマは、抗体産生ウェルの検索に適した
細胞個数に達するまで、HAT培地で数日間培養し、さ
らに、一般的に用いられるウシ胎児血清を含有するリン
パ球培養用培地で培養する。 (5)抗体産生ハイブリドーマの選択 前記(4)で得られたハイブリドーマが、目的とする抗
体を産生しているか否かの検定は、例えば、ELISA
法(酵素免疫測定法)、ウエスタンブロッティング法、
RIA(ラジオアイソトープを用いた方法)、間接蛍光
抗体法(IFA)などで抗体産生ウェルを検索し、さら
に、その抗体がCRKタンパクのリン酸化チロシン含有
タンパクとの結合を阻害するか否かを検討することによ
って行うことができるが、検定数が非常に多い場合の抗
体産生ウェルの検索では、先ずELISA法で検索する
のが好ましい。
【0017】このELISA法は、以下のようにして行
う。CRKタンパク〔例えば、細胞から分離されたCR
Kタンパク、CRKタンパクを産生する形質転換菌より
分離されるCRKタンパク、CRKの一部分を合成した
ペプチドなど〕を固定化した(CRKタンパクと反応性
を有する抗体が存在している場合には、その固定化に要
する量は本ELISAで抗体の存在を確認できる程度の
量でよい。)ELISAプレートの各ウェル(測定ウェ
ル)に、ハイブリドーマ培養上清を加えて一定時間静置
する。そして、これらの洗浄した各測定ウェルに結合し
た動物由来の抗体と反応して結合することができる酵素
標識抗体をこれらの測定ウェルに加えて一定時間静置す
る。標識に用いる酵素は、例えば、ペルオキシターゼ、
アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼなど
を挙げることができる。標識される抗体は、測定ウェル
に結合したハイブリドーマ培養上清由来の抗体だけと反
応して結合することができる限り特に限定されず、例え
ば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギなどから得られた血
清、またはマウス細胞などを用いて作製されたハイブリ
ドーマ株が産生したモノクローナル抗体を挙げることが
できる。次に、これらの測定ウェルを洗浄し、用いた酵
素に対応した基質溶液を加えて酵素活性を測定する。そ
して、酵素活性が認められれば、その培養上清をとった
培養ウェル中にCRKタンパクとの反応性を有する抗体
を産生するハイブリドーマが存在していたことがわか
る。
【0018】CRKタンパクに対して特異的な反応性を
有し、かつリン酸化チシロン結合活性を阻害する抗体を
産生するハイブリドーマの検索は、Michiyuki Matsuda
等の方法(Molecular and Celuular Biology, 11, 1607
-1613, 1991 )に準じて、CRKタンパクとリン酸化チ
シロンを含む蛋白との結合を測定し、その結合を阻害す
る培養ウェルを検索することによって知ることができ
る。
【0019】このようにして、細胞増殖が認められ、C
RKタンパクに対して反応性を有し、かつCRKタンパ
クのリン酸化チシロン含有タンパク結合活性を阻害する
抗体を産生しているハイブリドーマを得ることができ
る。CRKタンパクに対して反応性を有する抗体を産生
するハイブリドーマが存在していたウェルについては、
ELISAの他に、さらにウェスタンブロッティング
法、免疫組織化学法等によってCRKタンパクとの反応
性を再認識することが好ましい。 (6)ハイブリドーマの株化(クローニング) 抗体産生が認められた培養ウェル中のハイブリドーマ
は、限界希釈法、シングル・セル・マニピュレーション
法(倒立顕微鏡下、1ウェルに1個のハイブリドーマを
入れる方法)、軟寒天を用いてコロニーを拾い上げる方
法、FACS(Fluorecent Activated Cell Sorter)を用
いた方法などでクローニングすることができる。この
時、前記のいずれかのクローニング方法によって上記
(5)で見い出した抗体産生ハイブリドーマを培養し、
その増殖が認められた培養ウェルの上清を用い、(5)
の抗体産生ハイブリドーマの選択で行ったELISA法
と同様の方法で、抗体産生ウェルを検索する。
【0020】このようにして、CRKタンパクに対して
特異性が高く、かつCRKタンパクのリン酸化チロシン
含有タンパク結合活性を阻害する抗体価が高いモノクロ
ーナル抗体を産生するハイブリドーマ株を選択すること
ができる。 (7)モノクローナル抗体の生産 CRKタンパクに対して特異性が高く、かつCRKタン
パクのリン酸化チロシン含有タンパク結合活性を阻害す
る抗体価が高いモノクローナル抗体の生産は、前記
(6)で得たハイブリドーマ株をフラスコ内で培養した
り、または動物の腹腔内で培養することによって行うこ
とができる。
【0021】すなわち、フラスコ内でのハイブリドーマ
株の培養によりモノクローナル抗体を生産する場合は、
例えば、0〜20%ウシ胎児血清を含む一般的に用いら
れるリンパ球培養用培地(IMDM, MEM, DMEM, McCoy, RP
MI1640などの培地成分を含む培地)で細胞濃度が上限に
達するまで培養する。この時、モノクローナル抗体は、
遠心操作で得た培養上清中に含まれている。
【0022】一方、動物腹腔内でのハイブリドーマ株の
培養によりモノクローナル抗体を生産する場合は、例え
ば、マウス、ラット、ハムスターなどの適当な動物の腹
腔内にこの動物の免疫能を低下させる物質、例えば、プ
リスタンなどの鉱物油あるいはメチルテトラペンタデカ
ンを投与し、数週間後に5×105 〜107 個の前記
(6)で得たハイブリドーマ株細胞を投与し、その腹腔
内にこの株細胞を数週間で高密度に増殖させることによ
って行うことができる。この時、遠心操作で得た腹水上
清中に含まれているモノクローナル抗体濃度は、フラス
コ内培養で得たときの培養上清の抗体濃度の10〜1,
000倍である。なお、培養に用いる動物は、細胞融合
に用いた細胞が由来する動物とは異種の動物を用いて行
うこともできるが、同種の動物を用いて行った方が好ま
しく、さらに好ましくは同系の動物を用いて行った方が
よい。
【0023】ハイブリドーマ株のフラスコ内または動物
腹腔内での培養で得られたモノクローナル抗体は、タン
パク質の一般的な精製法に適用されている塩析、透析、
イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマ
トグラフィーなどを行うことによって精製され、高純度
のモノクローナル抗体となる。このようにして得たこの
発明のモノクローナル抗体は、CRKタンパクである分
子量約28,000、40,000、42,000の各
タンパク質に対して高特異的な反応性を有し、かつCR
Kタンパクのリン酸化チロシン含有タンパク結合活性に
対する阻害作用を有する。このためこの発明のモノクロ
ーナル抗体は、CRKタンパクの免疫化学的定量方法に
用いるとができ、あるいはそのための試薬の材量(たと
えばEIA試薬の第1抗体または第2抗体)として用い
ることができる。さらにまた、上記の生理活性により、
抗癌剤の有効成分としても利用することができる。
【0024】
【実施例】以下、参考例および実施例を示してこの発明
を具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定され
るものではない。 参考例 〔免疫原およびELISA用抗原の調製〕GSTとの融
合蛋白質として発現するCRKタンパク(GST−CR
K)は次のようにして調製した。
【0025】形質転換大腸菌(pGEX−CRK)の1
コロニーを1LのLB培地(10g/L,トリプトン、
5g/L,酵母エキス、10g/L,NaCl、100mg
/L,アンピシリン)で6時間振とう培養(37℃)し
た後、1mMになるようにIsopropyl −β−D−thioga
lactopyranoside,(IPTG)を加え、さらに6時間培養を
続けた。この培養を遠心(7,000 ×g 10分間)して
大腸菌を回収し、これをPBSで3回洗浄し、最終濃度
0.1%TritonXを加えた4mlのPBSに懸濁し、3
0秒間3回超音波破砕し、遠心分離(10,000×g10分
間)し、その上清からグルタチオンセファロースアフィ
ニティークロマトグラフィー(Glutathione Sepharose
4B;ファルマシア製品番号17−0756−01)に
より融合蛋白を精製し、免疫原およびELISA抗原と
して用いた。実施例1 〔CRKタンパクに対するモノクローナル抗体産生ハイ
ブリドーマの作製〕 (a)マウスの免疫および脾臓リンパ球の調製 精製したGST−CRK(1mg/ml)を50μlず
つBALB/cマウス(♀、7週齢)の背部皮下に完全
フロイントアジュバントとともに投与した。初回免疫か
ら4週間後に前記と同様に調製したGST−CRKの溶
液を不完全フロイントアジュバントとともに背部皮下に
注射した。さらに初回免疫から6週間後に前記と同様に
調製したGST−CRKの溶液を、同マウスの眼底部静
脈に100μl投与した。
【0026】前記のようにして免疫されたマウスから摘
出された(最終免疫から3日目に摘出された)脾臓を、
MEM溶液(細胞培養用培地粉末を蒸留水に溶解したも
の、10mM HEPESを含む)を入れたシャーレ中
で洗い、新たに用意したMEM溶液の中に移して、注射
筒と注射針を用いてMEMで液流した。このようにして
得た浮遊リンパ球を、MEM溶液に懸濁して、遠心分離
(1200×g,5分間)し、MEM溶液に再懸濁し、
細胞融合に使用するマウス脾臓リンパ球とした。 (b)細胞融合 3.75×107 個の対数増殖期にある8−アザグアニ
ン耐性のマウスミエローマ細胞(SP2/O)と前記
(a)のマウスの脾臓リンパ球1.5×108 個とを5
0ml容プラスチック製コニカル遠心管にいれ、混合
し、次いで、上清を遠心分離(1200×g,5分間)
した後に、同遠心管を軽くたたいてペレットをほぐし
た。
【0027】このペレットを激しく振とうしながら、こ
の中に、50%PEG4000溶液(37℃)を1分間
かけて1ml入れ、さらに、1分間激しく振とうした。
同遠心管を穏やかに振とうしながらMEM溶液(37
℃)を数分間かけて徐々に加え、最終的には10mlと
し、室温で遠心分離(350×g,6分間)して、上清
を吸引除去した。
【0028】同遠心管を軽くたたいてペレットをほぐ
し、70mlのHAT培地(1×10-4Mヒポキサンチ
ン、4×10-7Mアミノプテリン、1.6×10-5Mチ
ミジン、ウシ胎児血清を含有するIMDM培地、37℃
に保温)に懸濁して、96ウェルの培養プレート7枚の
各培養ウェルに100μl分注して、CO2 インキュベ
ーターを用いて培養した(5%CO2 ,37℃、湿度1
00%)。 (c)ハイブリドーマの選択 前述の(b)の培養開始から10日〜2週間目にかけ
て、細胞増殖が認められた培養プレートの各ウェルの培
養上清中に、CRKタンパクに対する抗体が含まれてい
るか否かを、次ぎに示すELISA法で検討した。
【0029】先ず、96ウェルELISAプレートの各
分析ウェルに、参考例のGST−CRK溶液(2μg/
ウェル抗原濃度)を50μlずつ分注し、4℃で1晩静
置した。次いで、ELISAプレートの各分析ウェルを
洗浄液(0.05%のTween 20を含むPBS)で2回
洗浄した後、0.5%のBSA溶液(PBSに溶解)を
各ウェルに100μlずつ分注して室温で30分間静置
し、これらの各分析ウェルを洗浄液で2回洗浄し、前記
培養プレートの各培養ウェルの培養上清を、これらの各
分析ウェルに50μlずつ入れて室温で1時間静置した
(陰性対照には、HAT培地を用いた。一方、陽性対照
には、本発明での細胞融合に用いたマウスの血清を10
00倍に希釈したものを用いた)。
【0030】次に、ELISAプレートの各分析ウェル
を洗浄液で3回洗浄し、マウス免疫グロブリンに対する
アルカリホスファターゼ標識抗体溶液を、50μlず
つ、各ウェルに分注し、室温で1時間静置した。そし
て、ELISAプレートの各分析ウェルを洗浄液で4回
洗浄後、PNPP(paranitrophenylphosphate)溶液(1
mg/ml)を100μlずつ各分析ウェルに分注し、
室温で30分間反応後、マイクロプレート用の吸光度測
定装置を用いて各ウェルの405nmにおける吸光度を
測定した。
【0031】このような検討の結果、培養プレート中の
1880個の培養ウェルの中の25個で、CRKタンパ
クに対する抗体の産生が認められた。これらの抗体を産
生した25個の培養ウェルについて、免疫組織化学を行
った。その結果、CRKタンパクに反応した抗体を含有
する培養ウェルは、25個の中の25個で認められた。
即ち、この25個の培養ウェルには、CRKタンパクと
反応する抗体を産生するハイブリドーマが存在すること
が確認された。 (d)ハイブリドーマの株化(クローニング) 20%ウシ胎児血清を含むIMDM培地を用いて、前述
の(c)工程において示した抗体産生が確認された25
個の培養ウェルについて限界希釈法でハイブリドーマを
クローニングした。
【0032】ハイブリドーマ培養には、96ウェル培養
プレートを用い、(ハイブリドーマ1個/フィーダー細
胞を含むリンパ球培養用培地100μlウェル)で培養
した。培養開始後、10日目頃から単一コロニーとして
観察される培養ウェルの上清を採取して、参考例の溶液
を用いたELISA法(前述の(c)工程と同様の方
法)で抗体産生ウェルのスクリーニングを行い、ハイブ
リドーマ株を少なくとも2株ずつ得、これらを再クロー
ニングした。
【0033】このようにして得られた株をAD2株(微
工研菌寄第13176号)と称し、この株が産生したモ
ノクローナル抗体を、AD2と称する。この株の培養上
清中に含まれるモノクローナル抗体のクラス・サブクラ
ス、L鎖の型を次の測定試験Iで決定し、各種化合物に
対する反応性を測定試験IIで検討した。測定試験I 〔CRKタンパクに対するモノクローナル抗体のクラス
・サブクラスの決定〕AD2株が産生した免疫グロブリ
ンのクラス・サブクラスの決定は、マウス抗体の各クラ
スに特異的なペルオキシダーゼ標識抗体溶液(IgG
1,IgG2a,IgG2b,IgG3,IgM,Ig
A,κ型L鎖またはλ型L鎖などに対する西洋ワサビペ
ルオキシダーゼで標識された抗体)を用いた前述の
(c)工程と同様のELISA法およびマウス抗体の各
クラス・サブクラスに特異的な抗体溶液(IgG1,I
gG2a,IgG2b,IgG3,IgM,IgA,κ
型L鎖またはλ型L鎖などに対する抗体)を用いた免疫
ブロッティング法で行った。
【0034】その結果、AD2株が産生したモノクロー
ナル抗体(AD2)はIgG2aに属する抗体(L鎖は
κ)であることがわかった。測定試験II 〔CRKタンパクに対するモノクローナル抗体の反応性
の検討〕モノクローナル抗体(AD2)の反応特異性に
ついて、CRKタンパクを発現している細胞で免疫組織
化学を行ない検討した。
【0035】その結果、これらの、モノクローナル抗体
はCRK遺伝を発現している細胞とのみ反応し、CRK
タンパクに特異的であることが分かった。 実施例3 〔フラスコ培養でのCRKタンパクに対するモノクロー
ナル抗体の産生〕15%ウシ胎児血清を含むIMDM培
地で、AD2株の培養細胞を死滅直前まで培養した。
【0036】CRKタンパクに対するモノクローナル抗
体(AD2)は、培養液を遠心分離(1500×g 5
分間)して得られた上清中に133μg/ml(ELI
SA法により測定)含有されていた。 実施例4 〔マウス腹腔内でのCRKタンパクに対するモノクロー
ナル抗体の生産〕CRKタンパクに対する大量のモノク
ローナル抗体を得るために、マウス腹腔内でAD2株の
細胞培養をした。
【0037】BALB/cマウス(♀、6週齢、2週間
前にプリスタンを0.5ml腹腔内投与)の腹腔内に、
PBSで浮遊させたAD2株の細胞を1×106 個投与
した。このマウスの体重は、1週間目頃から顕著な増加
を示し、2週間目に腹水(5ml/匹)を採取した。こ
の腹水を遠心分離(1500×g 5分間)して、腹水
上清を得た。CRKタンパクに対するモノクローナル抗
体(AD2)は、この腹水上清中に2mg/ml(EL
ISA法により測定)含有されていた。
【0038】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、CRKタンパクに対して特異的な反応性を有し、
かつCRKタンパクのリン酸化チロシン含有タンパク結
合活性を阻害することのできる新しいモノクローナル抗
体と、この抗体を産生するハイブリドーマ株が提供され
る。このモノクローナル抗体によってヒトの癌細胞に関
する基礎研究のための試薬、あるいは新しい抗癌剤等の
開発が可能となる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒトCRKタンパクまたはヒトCRK融
    合タンパクによって免疫されたマウスリンパ球とマウス
    ミエローマ細胞との融合細胞であるハイブリドーマAD
    2株(微工研菌寄第13176号)が産生するモノクロ
    ーナル抗体であって、ヒトCRKタンパクに対して特異
    的な反応性を有し、かつヒトCRKタンパクのリン酸化
    チロシン含有タンパク結合活性を阻害するモノクローナ
    ル抗体。
  2. 【請求項2】 ハイブリドーマAD2株(微工研菌寄第
    13176号)。
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Proc.Natl.Acad.Sci,USA,87(1990)P.2638−2642

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