JP3987790B2 - クランクシャフト誘導焼入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフト誘導焼入装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、6気筒エンジン用のクランクシャフトには、図4に示すように、6つの第1〜第6のピン部P1〜P6と、4つの第1〜第4のジャーナル部J1〜J4とが設けられている。各ピン部P1〜P6及びジャーナル部J1〜J4には誘導焼入が施されるが、この誘導焼入を施す従来のクランクシャフト誘導焼入装置は、例えば第1、第3及び第5のピン部P1、P3、P5に対して同時に誘導焼入を行った後、残りの第2、第4及び第6のピン部P2、P4、P6に対して同時に誘導焼入を行い、その後、第1〜第4のジャーナル部J1〜J4に対して同時に誘導焼入を行うようにしている。
【0003】
すべてのピン部P1〜P6に対して同時に誘導焼入を行えればよいが、ピン部P1〜P6の幅が狭く、かつピン部P1〜P6同士が近接しているため、カレントトランス等のスペースの問題から6つのピン部P1〜P6に対して同時に誘導焼入を施すことはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、1つのピン部やジャーナル部の誘導焼入にTの時間がかかるとすれば、第1、第3及び第5のピン部の誘導焼入にT、第2、第4及び第6のピン部の誘導焼入にT、すべてのジャーナル部に対する誘導焼入にTの合計Tの時間が必要となる。言い換えれば、1つのクランクシャフトの誘導焼入には3Tの時間が必要となるのである。従って、10本のクランクシャフトに対して誘導焼入を施すためには、クランクシャフトのハンドリングに要する時間を考慮にいれなくても、30Tの時間が必要になる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、1つのクランクシャフトの誘導焼入に必要な時間を短縮することができるクランクシャフト誘導焼入装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るクランクシャフト誘導焼入装置は、クランクシャフトを軸芯を中心として回転しながら、そのピン部/ジャーナル部を誘導焼入れを施す装置であって、互いに位相の異なる複数のピン部からなる第1のピン群に誘導焼入を施す第1の焼入ステーションと、第1のピン群とは異なり且つ互いに位相の異なる複数のピン部からなる第2のピン群に誘導焼入を施す第2の焼入ステーションと、すべてのジャーナル部に誘導焼入を施す第3の焼入ステーションと、第1の焼入ステーションから第2の焼入ステーション、第2の焼入ステーションから第3の焼入ステーションへとクランクシャフトを移動させるハンドリング部と、前記第1の焼入ステーションの複数のカレントトランスと前記第2の焼入ステーションの複数のカレントトランスとに同時に電力を供給する1台の発振器とを備えており、前記第1の焼入ステーションにおいて第1のピン群に誘導焼入を行う場合に第1のピン群を誘導加熱する複数の加熱コイルの加熱導体部は、第1のピン群を構成する複数のピン部に対して相対的に同じ方向から対向し、前記第2の焼入ステーションにおいて第2のピン群に誘導焼入を行う場合に第2のピン群を誘導加熱する複数の加熱コイルの加熱導体部は、第2のピン群を構成する複数のピン部に対して相対的に同じ方向から対向するようになっている。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の図面であって、同図(A)は第1の焼入ステーションの概略的構成図、同図(B)は第2の焼入ステーションの概略的構成図、同図(C)は第3の焼入ステーションの概略的構成図、図2は本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置における各ピン部とカレントトランス及び加熱コイルとの関係を示す図面であって、同図(A)は第1の焼入ステーションの概略的構成図、同図(B)は第2の焼入ステーションの概略的構成図、図3は本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の動作を説明する概略的説明図、図4は本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置によって誘導焼入が施される6気筒エンジン用のクランクシャフトの概略的斜視図である。
【0008】
また、図5は本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の図面であって、同図(A)は第1の焼入ステーションの概略的構成図、同図(B)は第2の焼入ステーションの概略的構成図、同図(C)は第3の焼入ステーションの概略的構成図、図6は本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の第1の焼入ステーションにおける動作を示す概略的説明図、図7は本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の第2の焼入ステーションにおける動作を示す概略的説明図、図8は本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置によって誘導焼入が施される6気筒エンジン用のクランクシャフトの概略的斜視図である。
【0009】
なお、以下の説明においては、クランクシャフトを総称する場合にはクランクシャフトWと、誘導焼入工程において作業を開始してn本目のクランクシャフトを示す場合にはクランクシャフトWnとする。
【0010】
本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置は、6気筒エンジン用のクランクシャフトWのピン部P1〜P6及びジャーナル部J1〜J4に誘導焼入を施すものであって、第1、第2及び第4の3つのピン部P1、P2、P4からなる第1のピン群G1に誘導焼入を施す第1の焼入ステーション100と、第1のピン群G1とは異なる第3、第5及び第6の3つのピン部P3、P5、P6からなる第2のピン群G2に誘導焼入を施す第2の焼入ステーション200と、すべての第1〜第4のジャーナル部J1〜J4に誘導焼入を施す第3の焼入ステーション300と、第1の焼入ステーション100から第2の焼入ステーション200、第2の焼入ステーション200から第3の焼入ステーション300へとクランクシャフトWを移動させるハンドリング部(図示省略)と、前記第1の焼入ステーション100の3つのカレントトランス110A、110B、110Cと前記第2の焼入ステーション200の3つのカレントトランス210A、210B、210Cとに同時に高周波電力を供給する1台の発振器(図示省略)とを備えている。
【0011】
前記6気筒エンジン用のクランクシャフトWは、図4に示すように、図面左側から第1のジャーナル部J1、第1のピン部P1、第2のピン部P2、第2のジャーナル部J2、第3のピン部P3、第4のピン部P4、第3のジャーナル部J3、第5のピン部P5、第6のピン部P6、第4のジャーナル部J4と並んだものであって、第1のピン部P1と第6のピン部P6、第2のピン部P2と第5のピン部P5、第3のピン部P3と第4のピン部P4とが同じ位相に設定されている。第1のピン部P1と第6のピン部P6を中心に据えてみると、第2のピン部P2と第5のピン部P5とは図面において右側120°に、第3のピン部P3と第4のピン部P4とは図面において左側120°にそれぞれ位置している。
【0012】
第1の焼入ステーション100は、3つのカレントトランス110A、110B、110Cと、このカレントトランス110A、110B、110Cにそれぞれ接続された3つの加熱コイル120A、120B、120Cと、この加熱コイル120A、120B、120Cで加熱された部分に冷却液を噴射する冷却ジャケット(図示省略)と、クランクシャフトWを軸芯を中心として回転駆動させる駆動部(図示省略)とを有している。
【0013】
3つのカレントトランス110A、110B、110Cのうち、第1のピン部P1の加熱を担当するカレントトランス110AはクランクシャフトWの真上に位置している。従って、このカレントトランス110Aに接続される加熱コイル120Aは、カレントトランス110Aの下部から真っ直ぐ下方に垂下されている。
【0014】
また、3つのカレントトランス110A、110B、110Cのうち、第2のピン部P2の加熱を担当するカレントトランス110BはクランクシャフトWの軸芯方向から見ると、図2(A)に示すように右側に位置している。従って、このカレントトランス110Bに接続される加熱コイル120Bは、カレントトランス110Bの下部から真っ直ぐ下方に垂下されている。
【0015】
さらに、3つのカレントトランス110A、110B、110Cのうち、第4のピン部P4の加熱を担当するカレントトランス110CはクランクシャフトWの軸芯方向から見ると、図2(A)に示すように左側に位置している。従って、このカレントトランス110Cに接続される加熱コイル120Cは、真上にカレントトランス110Cが位置するようになっている。
【0016】
かかる3つのカレントトランス110A、110B、110Cに接続された加熱コイル120A、120B、120Cは、第1のピン群G1、すなわち第1のピン部P1、第2のピン部P2及び第4のピン部P4をそれぞれ加熱するものである。
【0017】
ここで、第1のピン部P1が上死点に位置すると、第2のピン部P2は左側60°、第4のピン部P4は右側60°に位置することになる。各カレントトランス110A、110B、110C及び各加熱コイル120A、120B、120Cの上記配置は、この位置関係に従ったものてある。
【0018】
各カレントトランス110A、110B、110Cは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置と同様に懸垂されており、クランクシャフトWの回転に基づく各ピン部P1、P2、P4の移動に追従して移動するようになっている。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、各ピン部1、P2、P4に跨がって乗っかった状態で、各ピン部1、P2、P4の移動に追従するようになっている。
【0019】
各カレントトランス110A、110B、110Cは、1台の発振器に並列に接続されているので、発振器から同時に高周波電力が供給されることになる。
【0020】
各加熱コイル120A、120B、120Cは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置に用いられるものと同様であって、いわゆる半開放鞍型コイルである。また、この加熱コイル120A、120B、120Cには、例えばセラミックス製のスペーサ(図示省略)が設けられている。このスペーサが各ピン部1、P2、P4の周面に接触して、加熱コイル120A、120B、120Cの加熱導体部121A、121B、121Cとの間に所定のギャップを確保するようにしている。
【0021】
各加熱コイル120A、120B、120Cには近接して冷却ジャケット(図示省略)が設けられている。この冷却ジャケットは、加熱コイル120A、120B、120Cによって加熱された箇所(第1、第2及び第4のピン部1、P2、P4)に冷却液を噴射するものである。
【0022】
前記第2の焼入ステーション200は、第1の焼入ステーション100に隣接して設けられている。この第2の焼入ステーション200は、3つのカレントトランス210A、210B、210Cと、このカレントトランス210A、210B、210Cにそれぞれ接続された3つの加熱コイル220A、220B、220Cと、この加熱コイル220A、220B、220Cで加熱された部分に冷却液を噴射する冷却ジャケット(図示省略)と、クランクシャフトWを軸芯を中心として回転駆動させる駆動部(図示省略)とを有している。
【0023】
3つのカレントトランス210A、210B、210Cのうち、第6のピン部P6の加熱を担当するカレントトランス210AはクランクシャフトWの真上に位置している。従って、このカレントトランス210Aに接続される加熱コイル220Aは、カレントトランス210Aの下部から真っ直ぐ下方に垂下されている。
【0024】
また、3つのカレントトランス210A、210B、210Cのうち、第3のピン部P3の加熱を担当するカレントトランス210BはクランクシャフトWの軸芯方向から見ると、図2(B)に示すように左側に位置している。従って、このカレントトランス210Bに接続される加熱コイル220Bは、真上にカレントトランス210Bが位置するようになっている。
【0025】
さらに、3つのカレントトランス210A、210B、210Cのうち、第5のピン部P5の加熱を担当するカレントトランス210CはクランクシャフトWの軸芯方向から見ると、図2(B)に示すように右側に位置している。従って、このカレントトランス210Cに接続される加熱コイル220Cは、真上にカレントトランス210Cが位置するようになっている。
【0026】
かかる3つのカレントトランス210A、210B、210Cに接続された加熱コイル220A、220B、220Cは、第2のピン群G2、すなわち第3のピン部P3、第5のピン部P5及び第6のピン部P6をそれぞれ加熱するものである。
【0027】
ここで、第6のピン部P6が上死点に位置すると、第3のピン部P3は左側60°、第5のピン部P5は右側60°に位置することになる。各カレントトランス210A、210B、210C及び各加熱コイル220A、220B、220Cの上記配置は、この位置関係に従ったものである。
【0028】
各カレントトランス210A、210B、210Cは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置と同様に懸垂されており、クランクシャフトWの回転に基づく各ピン部P3、P5、P6の移動に追従して移動するようになっている。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、各ピン部P6、P3、P5に跨がって乗っかった状態で、各ピン部P6、P3、P5の移動に追従するようになっている。
【0029】
各カレントトランス210A、210B、210Cは、1台の発振器に並列に接続されているので、発振器から同時に高周波電力が供給されることになる。
【0030】
各加熱コイル220A、220B、220Cは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置に用いられるものと同様であって、いわゆる半開放鞍型コイルである。また、この加熱コイル220A、220B、220Cには、例えばセラミックス製のスペーサ(図示省略)が設けられている。このスペーサが各ピン部P6、P3、P5の周面に接触して、加熱コイル220A、220B、220Cの加熱導体部221A、221B、221Cとの間に所定のギャップを確保するようにしている。
【0031】
各加熱コイル220A、220B、220Cには近接して冷却ジャケット(図示省略)が設けられている。この冷却ジャケットは、加熱コイル220A、220B、220Cによって加熱された箇所(第6、第3及び第5のピン部P6、P3、P5)に冷却液を噴射するものである。
【0032】
前記第3の焼入ステーション300は、4つのカレントトランス310A、310B、310C、310Dと、これらのカレントトランス310A、310B、310C、310Dにそれぞれ接続された4つの加熱コイル320A、320B、320C、320Dと、この加熱コイル320A、320B、320C、320Dで加熱された部分に冷却液を噴射する冷却ジャケット(図示省略)と、クランクシャフトWを軸芯を中心として回転駆動させる駆動部(図示省略)とを有している。
【0033】
この第3の焼入ステーション300において誘導焼入が施される第1〜第4のジャーナル部J1〜J4は、各ピン部P1〜P6と較べると大きな間隔があいているので、各カレントトランス310A、310B、310C、310Dに接続される各加熱コイル320A、320B、320C、320Dは、各カレントトランス10A、310B、310C、310Dの下部から真っ直ぐ下方に垂下させることができる。
【0034】
なお、この第3の焼入ステーション300における各加熱コイル320A、320B、320C、320Dは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置に用いられるものと同様であって、いわゆる半開放鞍型コイルである。また、この加熱コイル320A、320B、320C、320Dには、例えばセラミックス製のスペーサ(図示省略)が設けられている。このスペーサが各ジャーナル部J1〜J4の周面に接触して、加熱コイル320A、320B、320C、320Dの加熱導体部321A、321B、321C、321Dとの間に所定のギャップを確保するようにしている。
【0035】
各加熱コイル320A、320B、320C、320Dには近接して冷却ジャケット(図示省略)が設けられている。この冷却ジャケットは、加熱コイル320A、320B、320C、320Dによって加熱された箇所(第1〜第4のジャーナル部J1〜J4)に冷却液を噴射するものである。
【0036】
次に、上述した構成のクランクシャフト誘導焼入装置の動作について図3を参照しつつ説明する。なお、図3は四角形の枠が各焼入ステーション100〜300を示し、処理中のクランクシャフトWがあれば枠中に記載している。処理中のクランクシャフトWがない場合には『なし』と記載している。
【0037】
まず、図3(A)に示すように、1本目のクランクシャフトW1を第1の焼入ステーション100にセットする。このセットの際、第1のピン部P1を上死点に位置させる。すると、第1のピン部P1には加熱コイル120Aが、第2のピン部P2には加熱コイル120Bが、第4のピン部P4には加熱コイル120Cがそれぞれセットされることになる。すなわち、第1のピン群G1を構成する3つのピン部P1、P2、P4にそれぞれ加熱コイル120A、120B、120Cがそれぞれセットされるのである。なお、この時点では、第2の焼入ステーション200及び第3の焼入ステーション300にはクランクシャフトWはセットされていない。
【0038】
1本目のクランクシャフトW1を駆動部で回転駆動させつつ、発振器から第1の焼入ステーション100の3つのカレントトランス110A、110B、110Cに対して高周波電力を供給する。所定時間が経過したならば、冷却ジャケットから冷却液を各ピン部P1、P2、P4に噴射する。なお、この各ピン部P1、P2、P4に冷却液を噴射する際には、高周波電力の供給を停止しておく。
【0039】
これで、1本目のクランクシャフトW1の第1のピン群G1を構成する第1のピン部P1、第2のピン部P2及び第4のピン部P4に対する誘導焼入が完了する。
【0040】
図3(B)に示すように、第1のピン群G1、すなわち第1のピン部P1、第2のピン部P2及び第4のピン部P4に対する誘導焼入が完了した1本目のクランクシャフトW1をハンドリング部によって第2の焼入ステーション200に移動させ、同時に、第1の焼入ステーション100に新たな2本目のクランクシャフトW2をセットする。
【0041】
第2の焼入ステーション200においては、1本目のクランクシャフトW1の第6のピン部P6を上死点に位置させる。すると、第6のピン部P6には加熱コイル220Aが、第3のピン部P3には加熱コイル220Bが、第5のピン部P5には加熱コイル220Cがそれぞれセットされることになる。すなわち、第2のピン群G2を構成する3つのピン部P6、P3、P5にそれぞれ加熱コイル220A、220B、220Cがセットされるのである。
【0042】
また、第1の焼入ステーション100にセットされた新たな2本目のクランクシャフトW2は、先程の1本目のクランクシャフトW1と同様に、第1のピン部P1を上死点に位置させる。すると、2本目のクランクシャフトW2の第1のピン群G1を構成する第1のピン部P1には加熱コイル120Aが、第2のピン部P2には加熱コイル120Bが、第4のピン部P4には加熱コイル120Cがそれぞれセットされることになる。
【0043】
この状態で第1の焼入ステーション100及び第2の焼入ステーション200の各カレントトランス110A〜110C、210A〜210Cに対して1台の発振器から高周波電力を供給する。すると、第1の焼入ステーション100では、新たな2本目のクランクシャフトW2の第1、第2及び第4のピン部P1、P2、P4が加熱される。これと同時に、第2の焼入ステーション200では、1本目のクランクシャフトW1の第3、第5及び第6のピン部P3、P5、P6が加熱される。なお、各クランクシャフトW1、W2は、それぞれ第1の焼入ステーション100及び第2の焼入ステーション200の駆動部で回転駆動されている。
【0044】
所定時間が経過したならば、第1の焼入ステーション100及び第2の焼入ステーション200において、冷却ジャケットから冷却液を各ピン部P1〜P6に噴射する。なお、この各ピン部P1〜P6に冷却液を噴射する際には、高周波電力の供給を停止しておく。これで、第2の焼入ステーション200においては、1本目のクランクシャフトW1の第2のピン群G2を構成する第3のピン部P3、第5のピン部P5及び第6のピン部P6に対する誘導焼入が完了する。すなわち、1本目のクランクシャフトW1はすべてのピン部P1〜P6に対する誘導焼入が完了したことになる。また、第1の焼入ステーション100においては、新たな2本目のクランクシャフトW2の第1のピン群G1である第1のピン部P1、第2のピン部P2及び第4のピン部P4に対する誘導焼入が完了したことになる。
【0045】
次に、図3(C)に示すように、第2の焼入ステーション200で各ピン部P1〜P6に誘導焼入が施された1本目のクランクシャフトW1、すなわちすべてのピン部P1〜P6に誘導焼入が施されたクランクシャフトW1をハンドリング部によって第3の焼入ステーション300に移動させる。同時に、第1の焼入ステーション100において第1、第2及び第4のピン部P1、P2、P4に誘導焼入が施された2本目のクランクシャフトW2を第2の焼入ステーション200にハンドリング部によって移動させる。また、同時に、第1の焼入ステーション100にまったく新たな3本目のクランクシャフトW3をハンドリング部にてセットする。
【0046】
第2の焼入ステーション200においては、2本目のクランクシャフトW2の第6のピン部P6が上死点に位置するように、第1の焼入ステーション100においては、3本目のクランクシャフトW3の第1のピン部P1が上死点に位置するように各クランクシャフトW2、W3をセットする。
【0047】
第3の焼入ステーション300においては、1本目のクランクシャフトW1の第1〜第4のジャーナル部J1〜J4に対する誘導焼入を行うのであるが、各ジャーナル部J1〜J4は、ピン部P1〜P6のように位相が異なるいうことはないので、特に1本目のクランクシャフトW1のセットには特に問題はない。
【0048】
この時点では、第1の焼入ステーション100にはまったく新たな、すなわちすべてのピン部P1〜P6に対してまったく誘導焼入が施されていない3本目のクランクシャフトW3が、第2の焼入ステーション200には第1、第2及び第4のピン部P1、P2、P4にのみ誘導焼入が施された2本目のクランクシャフトW2が、第3の焼入ステーション300にはすべてのピン部P1〜P6に誘導焼入が施された1本目のクランクシャフトW1がセットされていることになる
【0049】
発振器からは、第1の焼入ステーション100の3つのカレントトランス110A、110B、110C、第2の焼入ステーション200の3つのカレントトランス210A、210B、210C、第3の焼入ステーション300の4つのカレントトランス310A〜310Dにそれぞれ高周波電力が供給される。そして、各焼入ステーション100、200、300において、それぞれピン部P1〜P6やジャーナル部J1〜J4に対して誘導焼入が施される。
【0050】
1本目〜3本目のクランクシャフトW1〜W3に対する誘導焼入が完了したならば、ハンドリング部によってそれぞれクランクシャフトW1〜W3を移動させる。すなわち、図3(D)に示すように、1本目のクランクシャフトW1はクランクシャフト誘導焼入装置の外に搬出され、2本目のクランクシャフトW2は第3の焼入ステーション300に、3本目のクランクシャフトW3は第2の焼入ステーション200に、4本目のクランクシャフトW4は第1の焼入ステーション100にそれぞれセットされる。
【0051】
これらと同等の作業を繰り返して複数本のクランクシャフトWに対して誘導焼入を施す。
【0052】
ここで、最初に第1の焼入ステーション100にセットされた1本目のクランクシャフトW1にのみ着目すると、ハンドリングに要する時間を考慮に入れなければ、3Tの時間が必要になる。しかし、10本のクランクシャフトWに対して誘導焼入を施すために必要な時間はハンドリングに要する時間を考慮に入れなければ13Tとなる。
【0053】
1本目のクランクシャフトW1から3本目のクランクシャフトW3までに対して誘導焼入を施している状態では、誘導焼入が完了したクランクシャフトWは存在せず、4本目のクランクシャフトW4に対して誘導焼入を施している状態で初めて1本目のクランクシャフトW1に対する誘導焼入が完了する。すなわち、1本目のクランクシャフトW1の誘導焼入が完了するまでに3Tの時間が必要となる。また、4本目〜10本目のクランクシャフトW4〜W10では、3つの焼入ステーション100、200、300で同時に誘導焼入が行われるため、4本目〜10本目のクランクシャフトW4〜W10に対する誘導焼入が完了するまでの時間は10Tとなる(図3(D)〜図3(M)参照)。この合計が13Tとなるのである。
【0054】
これに対して、従来のクランクシャフト誘導焼入装置では10本のクランクシャフトWに対して誘導焼入を施すのに必要な時間は、ハンドリングに要する時間を考慮に入れなくても30Tであった。しかし、上述したクランクシャフト誘導焼入装置では、ハンドリングに要する時間を考慮に入れずに13Tと半分以下になる。これは、平行して3本のクランクシャフトWに対して誘導焼入を同時に施すためである。
【0055】
次に、本発明の2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置について、図5〜図8を参照しつつ説明する。
【0056】
この本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置は、6気筒エンジン用のクランクシャフトWのピン部P1〜P6及びジャーナル部J1〜J4に誘導焼入を施すものであって、第1、第2及び第4のピン部P1、P2及びP4からなる第1のピン群G1に誘導焼入を施す第1の焼入ステーション100と、第1のピン群G1とは異なる第3、第5及び第6のピン部P3、P5及びP6からなる第2のピン群G2に誘導焼入を施す第2の焼入ステーション200と、すべての第1〜第4のジャーナル部J1〜J4に誘導焼入を施す第3の焼入ステーション300と、第1の焼入ステーション100から第2の焼入ステーション200、第2の焼入ステーション200から第3の焼入ステーション300へとクランクシャフトWを移動させるハンドリング部(図示省略)と、前記第1の焼入ステーション100の3つのカレントトランス110A、110B、110Cと前記第2の焼入ステーション200の3つのカレントトランス210A、210B、210Cとに同時に電力を供給する1台の発振器(図示省略)とを備えており、前記第1の焼入ステーション100において第1のピン群G1に誘導焼入を行う場合に第1のピン群G1を誘導加熱する3つの加熱コイル120A、120B、120Cの加熱導体部121A、121B、121Cは、第1のピン群G1を構成する第1のピン部P1、第2のピン部P2、第4のピン部P4に対して相対的に同じ方向から対向し、前記第2の焼入ステーション200において第2のピン群G2に誘導焼入を行う場合に第2のピン群G2を誘導加熱する3つの加熱コイル220A、220B、220Cの加熱導体部221A、221B、221Cは、第2のピン群G2を構成する第3のピン部P3、第5のピン部P5、第6のピン部P6に対して相対的に同じ方向から対向するようになっている。
【0057】
この本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置によって誘導焼入が施される6気筒エンジン用のクランクシャフトWは、図5に示すように、図面左側から第1のジャーナル部J1、第1のピン部P1、第2のピン部P2、第2のジャーナル部J2、第3のピン部P3、第4のピン部P4、第3のジャーナル部J3、第5のピン部P5、第6のピン部P6、第4のジャーナル部J4と並んだものであって、各ピン部P1〜P6の位相がそれぞれ異なっている。すなわち、第1のピン部P1を0°の位置とすれば、第2のピン部P2は300°の位置、第3のピン部P3は120°の位置、第4のピン部P4は60°の位置、第5のピン部P5は240°の位置、第6のピン部P6は180°の位置になる。
【0058】
このため、第1のピン部P1を0°の位置においた場合、上側に位置する第2のピン部P2と第4のピン部P4とを第1のピン部P1とともに第1のピン群G1とし、第1のピン部P1に対向する第6のピン部P6を0°の位置においた場合、上側に位置する第3のピン部P3と第5のピン部P5とを第6のピン部P6とともに第2のピン群G2とする。
【0059】
第1の焼入ステーション100は、3つのカレントトランス110A、110B、110Cと、このカレントトランス110A、110B、110Cにそれぞれ接続された3つの加熱コイル120A、120B、120Cと、この加熱コイル120A、120B、120Cで加熱された部分に冷却液を噴射する冷却ジャケット(図示省略)と、クランクシャフトWを軸芯を中心として回転駆動させる駆動部(図示省略)とを有している。
【0060】
3つのカレントトランス110A、110B、110Cのうち、第1のピン部P1の加熱を担当するカレントトランス110AはクランクシャフトWの真上に位置している。従って、このカレントトランス110Aに接続される加熱コイル120Aは、カレントトランス110Aの下部から真っ直ぐ下方に垂下されている。従って、かかる加熱コイル120Aの加熱導体部121Aは、クランクシャフトWの第1のピン部P1の頂点に対して正対するようになっている。
【0061】
また、3つのカレントトランス110A、110B、110Cのうち、第2のピン部P2の加熱を担当するカレントトランス110BはクランクシャフトWの軸芯方向から見ると、図6(A)に示すように左側に位置している。従って、このカレントトランス110Bに接続される加熱コイル120Bは、カレントトランス110Bの下部から右60°方向に曲がって配置されている。従って、かかる加熱コイル120Bの加熱導体部121Bは、クランクシャフトWの第2のピン部P2の頂点に対して正対するようになっている。
【0062】
さらに、3つのカレントトランス110A、110B、110Cのうち、第4のピン部P4の加熱を担当するカレントトランス110CはクランクシャフトWの軸芯方向から見ると、図6(A)に示すように右側に位置している。従って、このカレントトランス110Cに接続される加熱コイル120Cは、カレントトランス110Cの下部から左60°方向に曲がって配置されている。従って、かかる加熱コイル120Cの加熱導体部121Cは、クランクシャフトWの第4のピン部P4の頂点に対して正対するようになっている。
【0063】
従って、3つの加熱コイル120A、120B、120Cの各加熱導体部121A、121B、121Cは、第1のピン群G1を構成する第1のピン部P1、第2のピン部P2、第4のピン部P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0064】
かかる3つのカレントトランス110A、110B、110Cに接続された加熱コイル120A、120B、120Cは、第1のピン群G1、すなわち第1のピン部P1、第2のピン部P2及び第4のピン部P4をそれぞれ加熱するものである。
【0065】
ここで、第1のピン部P1が上死点に位置すると、第2のピン部P2は左側60°の箇所、第4のピン部P4は右側60°の箇所にそれぞれ位置することになる。各カレントトランス110A、110B、110C及び各加熱コイル120A、120B、120Cの上記配置は、この位置関係に従ったものである。
【0066】
各カレントトランス110A、110B、110Cは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置と同様に懸垂されており、クランクシャフトWの回転に基づく各ピン部P1、P2、P4の移動に追従して移動するようになっている。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、各ピン部1、P2、P4に跨がって乗っかった状態で、各ピン部1、P2、P4の移動に追従するようになっている。
【0067】
各カレントトランス110A、110B、110Cは、1台の発振器に並列に接続されているので、発振器から同時に高周波電力が供給されることになる。
【0068】
各加熱コイル120A、120B、120Cは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置に用いられるものと同様であって、いわゆる半開放鞍型コイルである。また、この加熱コイル120A、120B、120Cには、例えばセラミックス製のスペーサ(図示省略)が設けられている。このスペーサが各ピン部1、P2、P4の周面に接触して、加熱コイル120A、120B、120Cの加熱導体部121A、121B、121Cとの間に所定のギャップを確保するようにしている。
【0069】
各加熱コイル120A、120B、120Cには近接して冷却ジャケット(図示省略)が設けられている。この冷却ジャケットは、加熱コイル120A、120B、120Cによって加熱された箇所(第1、第2及び第4のピン部1、P2、P4)に冷却液を噴射するものである。
【0070】
まず、図6(A)に示すように、第1のピン部P1が上死点の位置にある場合、第1のピン部P1には加熱コイル120Aが、第2のピン部P2には加熱コイル120Bが、第4のピン部P4には加熱コイル120Cがそれぞれ載置されている。このとき、各ピン部P1、P2、P4においては、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心が各ピン部P1、P2、P4の中心に一致している。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0071】
図6(A)の状態から時計方向に60°回転すると、第2のピン部P2が上死点に位置する(図6(B)参照)。この状態では、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心は、各ピン部P1、P2、P4の中心から反時計方向に60°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0072】
図6(B)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第5のピン部P5が上死点に位置する(図6(C)参照)。この状態では、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心は、各ピン部P1、P2、P4の中心から反時計方向に120°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0073】
図6(C)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第6のピン部P6が上死点に位置する(図6(D)参照)。この状態では、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心は、各ピン部P1、P2、P4の中心から反時計方向に180°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0074】
図6(D)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第3のピン部P3が上死点に位置する(図6(E)参照)。この状態では、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心は、各ピン部P1、P2、P4の中心から反時計方向に240°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0075】
図6(E)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第4のピン部P4が上死点に位置する(図6(F)参照)。この状態では、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心は、各ピン部P1、P2、P4の中心から反時計方向に300°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0076】
図6(F)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第1のピン部P1が上死点に復帰する(図6(A)参照)。この状態では、各加熱コイル120A、120B、120Cの中心は、各ピン部P1、P2、P4の中心に一致する。従って、各加熱コイル120A、120B、120Cは、すべてのピン部P1、P2、P4に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0077】
第2の焼入ステーション200も、上述した第1の焼入ステーション100と同様の構成になっている。
まず、図7(A)に示すように、第6のピン部P6が上死点の位置にある場合、第6のピン部P6には加熱コイル220Aが、第3のピン部P3には加熱コイル220Bが、第5のピン部P5には加熱コイル220Cがそれぞれ載置されている。このとき、各ピン部P6、P3、P5においては、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心が各ピン部P6、P3、P5の中心に一致している。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピン部P6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0078】
図7(A)の状態から時計方向に60°回転すると、第3のピン部P3が上死点に位置する(図7(B)参照)。この状態では、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心は、各ピン部P6、P3、P5の中心から反時計方向に60°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピン部P6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0079】
図7(B)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第4のピン部P4が上死点に位置する(図7(C)参照)。この状態では、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心は、各ピン部P6、P3、P5の中心から反時計方向に120°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピン部P6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0080】
図7(C)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第1のピン部P1が上死点に位置する(図7(D)参照)。この状態では、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心は、各ピン部P6、P3、P5の中心から反時計方向に180°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピン部P6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0081】
図7(D)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第2のピン部P2が上死点に位置する(図7(E)参照)。この状態では、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心は、各ピン部P6、P3、P5の中心から反時計方向に240°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピン部P6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0082】
図7(E)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第5のピン部P5が上死点に位置する(図7(F)参照)。この状態では、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心は、各ピン部P6、P3、P5の中心から反時計方向に300°ずれた位置にある。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピン部P6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0083】
図7(F)の状態からさらに時計方向に60°回転すると、第6のピン部P6が上死点に復帰する(図7(A)参照)。この状態では、各加熱コイル220A、220B、220Cの中心は、各ピン部P6、P3、P5の中心に一致する。従って、各加熱コイル220A、220B、220Cは、すべてのピンP6、P3、P5に対して相対的に同じ方向から対向することになる。
【0084】
前記第3の焼入ステーション300は、4つのカレントトランス310A、310B、310C、310Dと、これらのカレントトランス310A、310B、310C、310Dにそれぞれ接続された4つの加熱コイル320A、320B、320C、320Dと、この加熱コイル320A、320B、320C、320Dで加熱された部分に冷却液を噴射する冷却ジャケット(図示省略)と、クランクシャフトWを軸芯を中心として回転駆動させる駆動部(図示省略)とを有している。
【0085】
この第3の焼入ステーション300において誘導焼入が施される第1〜第4のジャーナル部J1〜J4は、各ピン部P1〜P6と較べると大きな間隔があいているので、各カレントトランス310A、310B、310C、310Dに接続される各加熱コイル320A、320B、320C、320Dは、各カレントトランス10A、310B、310C、310Dの下部から真っ直ぐ下方に垂下させることができる。
【0086】
なお、この第3の焼入ステーション300における各加熱コイル320A、320B、320C、320Dは、通常のクランクシャフト誘導焼入装置に用いられるものと同様であって、いわゆる半開放鞍型コイルである。また、この加熱コイル320A、320B、320C、320Dには、例えばセラミックス製のスペーサ(図示省略)が設けられている。このスペーサが各ジャーナル部J1〜J4の周面に接触して、加熱コイル320A、320B、320C、320Dの加熱導体部321A、321B、321C、321Dとの間に所定のギャップを確保するようにしている。
【0087】
各加熱コイル320A、320B、320C、320Dには近接して冷却ジャケット(図示省略)が設けられている。この冷却ジャケットは、加熱コイル320A、320B、320C、320Dによって加熱された箇所(第1〜第4のジャーナル部J1〜J4)に冷却液を噴射するものである。
【0088】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、6気筒エンジン用のクランクシャフトWを例に挙げたが、4気筒エンジン用、8気筒エンジン用のクランクシャフトの場合でも従来のものより多数のクランクシャフトの誘導焼入に要する合計時間が短くなることは同様である。
【0089】
また、上述した第1及び第2の実施の形態では、1台の発振器で、ジャーナル部J1〜J4に対して誘導焼入を施す第3の焼入ステーション300におけるカレントトランス310A〜310Dと、第1の焼入ステーション100及び第2の焼入ステーション200とにおけるカレントトランス110A〜110C、210A〜210Cに同時に高周波電力を供給するものとして説明したが、第1の焼入ステーション100及び第2の焼入ステーション200は1台の発振器で、第3の焼入ステーション300は他のもう1台の発振器でそれぞれ高周波電力を供給するようにしてもよい。
【0090】
【発明の効果】
本発明に係るクランクシャフト誘導焼入装置は、クランクシャフトを軸芯を中心として回転しながら、そのピン部/ジャーナル部を誘導焼入れを施す装置であって、互いに位相の異なる複数のピン部からなる第1のピン群に誘導焼入を施す第1の焼入ステーションと、第1のピン群とは異なり且つ互いに位相の異なる複数のピン部からなる第2のピン群に誘導焼入を施す第2の焼入ステーションと、すべてのジャーナル部に誘導焼入を施す第3の焼入ステーションと、第1の焼入ステーションから第2の焼入ステーション、第2の焼入ステーションから第3の焼入ステーションへとクランクシャフトを移動させるハンドリング部と、前記第1の焼入ステーションの複数のカレントトランスと前記第2の焼入ステーションの複数のカレントトランスとに同時に電力を供給する1台の発振器とを備えている。
【0091】
かかるクランクシャフト誘導焼入装置であると、最大限3本のクランクシャフトのピン部やジャーナル部の誘導焼入が可能になるので、従来のこの種のクランクシャフト誘導焼入装置より、1つのクランクシャフトの誘導焼入に必要な時間を短縮することができる。
【0092】
しかも前記第1の焼入ステーションにおいて第1のピン群に誘導焼入を行う場合に第1のピン群を誘導加熱する複数の加熱コイルの加熱導体部は、第1のピン群を構成する複数のピン部に対して相対的に同じ方向から対向し、前記第2の焼入ステーションにおいて第2のピン群に誘導焼入を行う場合に第2のピン群を誘導加熱する複数の加熱コイルの加熱導体部は、第2のピン群を構成する複数のピン部に対して相対的に同じ方向から対向するようになっている。
【0093】
よって、各ピン部に対向する加熱コイルの加熱導体部が各ピン部に対向する場合に、各ピン部において常に同じ方向から対向するため、各加熱コイルに対してすべて同じタイミングで電力の調整を行うことができるというメリットがある。また、複数のピン部を同時に同じタイミングで加熱するため、ピン部を加熱するための発振器が1台でよいというメリットもある。
【0094】
また、前記発振器は、第1の焼入ステーションの複数のカレントトランスと前記第2の焼入ステーションの複数のカレントトランスのみならず、第3の焼入ステーションの複数のカレントトランスにも同時に電力を供給するものであれば、装置全体の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の図面であって、同図(A)は第1の焼入ステーションの概略的構成図、同図(B)は第2の焼入ステーションの概略的構成図、同図(C)は第3の焼入ステーションの概略的構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置における各ピン部とカレントトランス及び加熱コイルとの関係を示す図面であって、同図(A)は第1の焼入ステーションの概略的構成図、同図(B)は第2の焼入ステーションの概略的構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の動作を説明する概略的説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置によって誘導焼入が施される6気筒エンジン用のクランクシャフトの概略的斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の図面であって、同図(A)は第1の焼入ステーションの概略的構成図、同図(B)は第2の焼入ステーションの概略的構成図、同図(C)は第3の焼入ステーションの概略的構成図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の第1の焼入ステーションにおける動作を示す概略的説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置の第2の焼入ステーションにおける動作を示す概略的説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るクランクシャフト誘導焼入装置によって誘導焼入が施される6気筒エンジン用のクランクシャフトの概略的斜視図である。
【符号の説明】
100 第1の焼入ステーション
110A〜110C カレントトランス
120A〜120C 加熱コイル
200 第2の焼入ステーション
210A〜210C カレントトランス
220A〜220C 加熱コイル
300 第3の焼入ステーション
210A〜210D カレントトランス
220A〜220D 加熱コイル
W クランクシャフト
P1〜P6 ピン部
G1 第1のピン群
G2 第2のピン群
J1〜J4 ジャーナル部
Claims (2)
- クランクシャフトを軸芯を中心として回転しながら、そのピン部/ジャーナル部を誘導焼入れを施すクランクシャフト誘導焼入装置において、互いに位相の異なる複数のピン部からなる第1のピン群に誘導焼入を施す第1の焼入ステーションと、第1のピン群とは異なり且つ互いに位相の異なる複数のピン部からなる第2のピン群に誘導焼入を施す第2の焼入ステーションと、すべてのジャーナル部に誘導焼入を施す第3の焼入ステーションと、第1の焼入ステーションから第2の焼入ステーション、第2の焼入ステーションから第3の焼入ステーションへとクランクシャフトを移動させるハンドリング部と、前記第1の焼入ステーションの複数のカレントトランスと前記第2の焼入ステーションの複数のカレントトランスとに同時に電力を供給する1台の発振器とを備えており、前記第1の焼入ステーションにおいて第1のピン群に誘導焼入を行う場合に第1のピン群を誘導加熱する複数の加熱コイルの加熱導体部は、第1のピン群を構成する複数のピン部に対して相対的に同じ方向から対向し、前記第2の焼入ステーションにおいて第2のピン群に誘導焼入を行う場合に第2のピン群を誘導加熱する複数の加熱コイルの加熱導体部は、第2のピン群を構成する複数のピン部に対して相対的に同じ方向から対向するようになっていることを特徴とするクランクシャフト誘導焼入装置。
- 前記発振器は、第1の焼入ステーションの複数のカレントトランスと前記第2の焼入ステーションの複数のカレントトランスのみならず、第3の焼入ステーションの複数のカレントトランスにも同時に電力を供給するものであることを特徴とする請求項1記載のクランクシャフト誘導焼入装置。
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