JP3984498B2 - 成形用金型および、これを用いるプラスチックの成形方法 - Google Patents

成形用金型および、これを用いるプラスチックの成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高精度なプラスチック成形品(特にレンズ、ミラー等の光学素子)の製造技術に関する。本発明の応用分野としては、複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタ等の光走査系に用いられるプラスチックレンズ、プラスチックミラーの成形が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
レーザ方式のデジタル複写機、プリンター、又はファクシミリ装置の光書き込みユニットには、レーザービームの結像、及び各種補正機能を有する矩形状のレンズ、ミラー等の光学素子が用いられている。
【0003】
近年これらの光学素子は、製品のコストダウンの要求でガラス製からプラスチック製へと変化し、また複数の機能を最少限の素子で補うため、その転写面形状も、球面のみならず複雑な非球面形状を有するようになってきている。また、レンズの場合には、レンズ厚が厚く、また長手方向でレンズ厚が一定ではない偏肉形状が多くなっている。
【0004】
その製造方法としては、製造コストが低く大量生産に適した射出成形法が一般的である。射出成形法で製造する際は、加熱溶融された樹脂材料を金型内に射出充填し冷却固化させる工程において、金型内の樹脂圧力や樹脂温度が均一になることが、所望の形状精度を確保するために望ましい。
【0005】
しかし、レンズ厚が偏肉形状の場合、充填された樹脂の冷却速度が長手方向の各部で異なり、体積収縮量に差が生じるために形状精度が悪化する不具合があった。また、レンズ厚が大きい場合には、樹脂の冷却過程で体積収縮量が大きいため、ひけが発生しやすくなる。このひけ発生を防止するために射出圧力を大きくすると(樹脂の充填量を多くすると)、内部歪みが大きくなり光学性能に悪影響を及ぼす不具合が生じていた。
【0006】
このような問題に対して、以下の成形方法が提案されている。
(1)金型温度を樹脂のガラス転移点温度(Tg点)以上に高くし、充填された樹脂の冷却速度が長手方向の各部でできるだけ一定になるように、熱変形温度以下になるまで徐冷する方法。この成形方法によれば、樹脂温度を均一に保ったまま冷却することができるため形状精度が高く、内部歪みが小さい良好な成形品を得ることが可能となる。
【0007】
しかし、この成形方法では、樹脂温度を成形品各部で均一に保ったまま徐冷する必要があるため、成形サイクルが非常に長くなり、生産性が劣り成形品のコストが高くなる欠点がある。
【0008】
(2)一定温度の金型内に溶融樹脂を射出充填した後、転写面(レンズ面)以外の面を構成するキャビテイ駒を樹脂から離隔する方向に移動させ、その箇所に優先的にひけを発生させる(樹脂冷却過程で成形品の機能上不要な箇所に優先的にひけを発生させる)ことで、転写面の形状精度を向上させる成形方法。この成形方法によれば、非常に低圧低充填での成形が可能になるため、高い形状精度とともに、内部歪みも小さい良好な成形品を生産性良く得ることができる。
【0009】
しかし、この成形方法を用いても、近年のデジタル複写機やプリンタ等の製品の高画質化・低コスト化の要求に伴い、レンズ、ミラーなどの部品に要求される精度やコストが厳しくなってきているため、以下に示す問題点が生じている。これについて図16、図17をもとに説明する。
【0010】
図16はこの成形方法を示す模式的断面図であり、(a)は樹脂を射出充填した直後の状態を、(b)はキャビティ駒の離隔時を、(c)は樹脂徐冷時をそれぞれ示している。図17は、この成形方法の問題点説明図であって、(a)は成形品の温度ムラを示す模式的断面図、(b)は成形品の形状精度の低下状態を示す模式的断面図、(c)は成形工程の経過時間とキャビティ内樹脂の温度との関係を示すグラフである。図16,17に記載された主な符号について説明すると、100aは射出充填された溶融樹脂、100bは冷却中の樹脂、100cは成形品である。101は金型、101aはキャビティ、102はキャビティ駒(キャビティ形成用の可動入れ子)、103,104は転写面である。キャビティ駒102は金型101内に摺動自在に挿入され、その先端面は、キャビティを形成するとともに、成形品100cの非転写面105を形成している。
【0011】
成形工程では図16に示すように、転写面103,104を有する金型キャビテイ内に溶融樹脂100aを射出充填した後、この樹脂の軟化温度未満まで冷却する間に、キャビテイ駒102を、冷却中の樹脂100bから離隔する方向に移動させる(キャビテイ駒102の非転写面105を後退させる)。符号106はこのとき形成される空隙である。これにより樹脂の空気層に接している部分に、ひけ100dを優先的に発生させる。ついで、樹脂全体の温度が金型内で均一、かつほぼ金型温度になるまで冷却した後、金型から成形品を取り出す。
【0012】
ところが上記空隙106では、金型キャビテイを構成している金属材料と比較して、非常に熱が移動しにくい。そのため、樹脂が金型キャビテイの壁面(金型のキャビティ形成面)と接している部分と、空隙106に接している部分とでは樹脂の冷却速度に差が生じ、成形品内に非対称な温度分布が生じながら冷却が進み、形状精度の低下や内部歪みが発生してしまう。
【0013】
すなわち、図17(a)において冷却中の樹脂のうち、上記ひけが発生する部分(空隙106内の空気と接触する部分)をA点とし、このA点と反対側の部分(金型のキャビティ形成面と接触している部分)をB点とすると、成形工程の経過時間とこれらA点、B点の温度との関係は図17(b)のとおりとなる。この図に示すように、成形工程が開始されてから空隙106が形成されるまでは、A点、B点間に温度差は生じていない。しかし、空隙形成とともに、これらに温度差が生じ、成形品取出時にようやく同一温度になる。このため、図17(c)に示すように、成形品100cの転写面(レンズ面)がキャビティ形状と同一にならず(転写面が精確に転写されない)、形状精度が低下してしまう。
【0014】
また、金型内で樹脂温度が均一に、ほぼ金型温度になるまで冷却してから成形品を取り出すため、通常の射出成形の場合と比較して成形サイクルが長くなる。したがって、より高精度な成形品を、より低コストで得るためには、成形方法の改善が必要となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、その目的は、金型キャビティに射出充填された溶融樹脂の非転写面を均一に冷却することにより、転写面が冷却されるときの該転写面の温度ムラを抑えて成形品の形状精度低下を防ぎ、もって、より高精度な成形品を低コストで得ることができる成形用金型および、これを用いるプラスチック成形品の製造方法を提供することにある。
【0016】
上記目的達成のため、第1の発明は、溶融樹脂を金型内に射出充填した後、その軟化温度未満まで冷却する間に、樹脂の非転写面とキャビティ駒の先端面とにより金型内に形成される空隙全体に冷却気体を均等に供給して樹脂の非転写面側をムラなく冷却することにより、転写面全体を均一に冷却するように構成した成形用金型および、これを用いるプラスチック成形品の製造方法を提供するものである。
【0017】
また上記目的達成のため、第2の発明は、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を金型内に設け、溶融樹脂を金型内に射出充填した後、その軟化温度未満まで冷却する間に、キャビティ駒で樹脂の非転写面側を冷却するとともに、該冷却によって樹脂の転写面側の温度が低下するのを、前記温度維持手段で防止するように構成した成形用金型および、これを使用するプラスチック成形品の製造方法を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1及び9に係る発明は、転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記キャビティ駒内に冷却用媒体の流路を形成し、該流路を温度制御された冷却用媒体の供給手段に連絡したことを特徴とする成形用金型である。
【0024】
請求項2に係る発明は、請求項1において、温度維持手段が、転写面を形成する金型部材とキャビティ駒との間の適所に形成された空気層であることを特徴とする成形用金型である。
【0025】
請求項3に係る発明は、転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記温度維持手段が電熱ヒータと、該電熱ヒータの発熱温度を所定温度に制御するヒータ制御手段とを備えていることを特徴とする成形用金型である。請求項4に係る発明は、請求項3において電熱ヒータが、個別に通電発熱する複数の発熱素子を配列して構成されていることを特徴とする成形用金型である。請求項5に係る発明は、請求項3または4において、転写面の近傍に電熱ヒータを複数、転写面を包囲する形態で配備したことを特徴とする成形用金型である。
【0026】
請求項6に係る発明は、転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記温度維持手段が、金型部材内に形成された加熱用媒体の流路と、該流路に温度制御された加熱用媒体を供給する加熱用媒体供給手段とを備えていることを特徴とする成形用金型である。請求項7に係る発明は、請求項6において、加熱用媒体の流路を金型部材内のキャビティ近傍部位に複数、転写面を包囲する形態で配備したことを特徴とする成形用金型である。請求項8に係る発明は、転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記温度維持手段が、転写面を形成する金型部材とキャビティ駒との間の適所に配備された、低熱伝導性材料からなる保温部材であることを特徴とする成形用金型である
【0027】
請求項10に係る発明は、請求項3〜8のいずれか1項において、キャビティ駒として、キャビティに臨む給気口が先端面に形成され該給気口に連なる圧縮気体の供給流路(以下、給気流路)が形成されたものを設け、前記給気口からキャビティに供給された圧縮気体を当該金型外に排気する排気流路を適所に形成したことを特徴とする成形用金型である。請求項11に係る発明は、請求項10において、キャビティ駒に形成された給気流路を、温度・流量の少なくとも一方が制御された圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段(圧縮気体供給源と、これに連なる圧縮気体の温度調節装置及び/又は圧縮気体の流量制御弁)に連絡したことを特徴とする成形用金型である。請求項12に係る発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載の成形用金型を用いるプラスチックの射出成形方法であって、あらかじめ温度維持手段を作動させておき、溶融樹脂をその軟化温度未満に加熱された金型に射出充填し、溶融樹脂を軟化温度未満まで冷却する過程で、キャビティ駒を金型部材に対し摺動移動させてキャビティから離隔させることにより、キャビティ駒の非転写面とキャビティ内樹脂との間に空隙を形成し、該空隙をキャビティ駒で冷却することにより、非転写面に接触していた樹脂面を冷却することを特徴とするプラスチックの成形方法である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、第1〜第3の実施の形態は第1発明に係るものであり、第4〜第8の実施の形態は第2発明に係るものである。
【0029】
第1の実施の形態
図1は本発明によるプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図であり、(a)は樹脂を射出充填した直後の状態を、(b)はキャビティ駒離隔時の状態を示している。
【0030】
金型1の本体10を、金型部材11〜15で構成する。これらの金型部材は成形品の転写面を形成するためのものである。キャビティ10aを、これら金型部材11〜15の内面(転写面)と、キャビティ駒21の先端面すなわち非転写面21aとにより区画形成する。金型部材11内にキャビティ駒(可動入れ子)21を、その内周面に摺動移動自在に設ける。金型部材14,15により互いに対向する転写面14a,15bを形成する。非転写面21aの全体を、金型部材11の転写面で環状に包囲した形態とするとともに、金型部材11の内周面に排気流路23を複数、キャビティ駒の摺動移動方向に形成する。この排気流路23は、キャビティまで貫通させず、転写面の手前で終端させる。したがって、金型が閉じた図1(a)の状態では、排気流路23はキャビティ10aと連通していない。
【0031】
金型部部材14,15はそれぞれ、前記転写面のうち成形品の品質を左右する重要な上記転写面14a,15aを形成する。図1(a)と図15(a)との対比で明らかなように、この金型1が例えば、図15(a)に示す光学レンズ200の成形用金型である場合、転写面14a,15aの一方はレンズ面201を、他方はレンズ面202をそれぞれ形成するためのものである。したがって、これらレンズ面の形状精度を高くするとともに、これらレンズ面近傍の樹脂内の歪みを非常に小さくすることが、レンズの品質を高めるために重要となる。
【0032】
キャビティ駒21内に圧縮気体(空気、窒素ガスなど)の給気流路22を複数、その摺動移動方向に形成する。これら給気流路の先端部をキャビティ10a内に開口させることにより、キャビティ10aへの圧縮気体供給口すなわち給気口22aとする。これらの給気口は、キャビティ駒先端面の全体にわたって均等に分布させた形態で形成する。
【0033】
上記給気流路22を温度調節装置32および流量制御弁33を介して、冷却用の圧縮気体を供給するための気体供給源34に連絡する。温度調節装置32は、気体供給源34からの圧縮気体を所定温度に調節するためのものである。圧力制御装置31は、キャビティ駒21を摺動移動させるためのものであると同時に、キャビティ10aに溶融樹脂を充填する際に該樹脂の圧力(射出圧力)でキャビティ駒21がキャビティから後退しないようにこれに押圧力を付与するものである。
【0034】
また、本実施の形態の金型では、(1)キャビティ駒の先端面形状(輪郭線の形状)を、該先端面を包囲する金型部材11の環状転写面の外側輪郭線の形状とおおむね相似とし、かつ(2)キャビティ駒に形成された複数の給気口22aの全体が内接する図形の形状を、金型部材11の前記環状転写面の外側輪郭線の形状とおおむね相似とする。キャビティ10aを上記(1)のように構成することで、ひけの発生に起因する金型内樹脂の移動が転写面劣化(転写面の転写精度低下)に与える影響を防止することができ、高精度な成形品をより確実に得ることができる。
【0035】
また、キャビティ10aを上記(2)のように構成することにより、キャビティ内樹脂の非転写面をより均一に冷却する(キャビティ駒後退で形成される空隙を均一に冷却する)ことができ、高精度な成形品をより確実に得ることができる。なお上記環状転写面の幅は、図1(a)(b)において転写面14aと非転写面21aとの距離および、転写面15aと非転写面21aとの距離に等しい。
【0036】
プラスチックの成形に際しては溶融樹脂を、その軟化温度以下に加熱された金型1のゲート(図示せず)からキャビテイ10a内に射出充填する(図1(a))。そして、充填された樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、キャビテイ駒21を樹脂から離隔する方向に摺動移動させることで空隙40を形成する(図1(b))。これにより、排気流路23が空隙40と連通する。ついで、空隙内の気体に接する樹脂面(非転写面)を冷却する。この場合、流量・温度が制御された圧縮気体を給気口22aから空隙40に供給して空隙内を冷却し、冷却後の気体を排気流路23を介して大気中に排出する。以下、従来技術と同様にして、樹脂全体の温度が金型内で均一、かつほぼ金型温度になるまで冷却した後、金型から成形品を取り出す。図1(a)(b)において、符号16は充填された溶融樹脂、符号17は冷却中の樹脂である。
【0037】
この成形工程では、キャビティ内の樹脂の冷却が進み、樹脂圧力が所定値になったときに、キャビティ駒10aを後退させることで、その先端面(非転写面)と樹脂との間に空隙40を形成する。この空隙に対面する部分の樹脂は、他の部分に比べて動きやすくなるため、冷却により生じる応力を吸収しながら凹状のひけを形成する。その結果、転写面において歪みの少ない成形品を得ることができる。また、上記のように非転写面21aを包囲する金型部材11の環状転写面を形成することで、空隙形成時の成形品の変形が転写面14a,15aに及ぼす悪影響が軽減されるため、形状精度がより高い成形品を得ることができる。
【0038】
上記成形方法による場合の、成形品内の温度測定結果を図2に示す。図2(a)において符号A1は、冷却中の樹脂のうち、ひけが発生する側の面の上端近傍部分、符号A2は同じく下端近傍部分である。符号B1はA1と反対側の部分(金型部材のキャビティ形成面と接触している部分)、符号B2はA2と反対側の部分である。ひけが発生する側の面の温度分布、すなわち、ひけ発生面側の樹脂位置と樹脂温度との関係および、上記キャビティ形成面側の樹脂位置と樹脂温度との関係は図2(b)のとおりとなる。この図において太い実線はA1からA2までの範囲の温度分布曲線、細い実線はB1からB2までの範囲の温度分布曲線である。この図で明らかなように、ひけが発生する側の樹脂表面温度の分布、これと反対側の樹脂表面温度の分布は均等であり、しかも双方の分布間に温度差は実質的に生じていない。
【0039】
このような結果が得られたのは、空隙40を形成するキャビティ駒21の先端面全体にわたって給気口22aを複数、均等に分布させて設けたことにより、樹脂面全体を均一に冷却することができるからである。そのため、従来の成形金型で生じていた、空隙と接する樹脂面の温度ムラを大幅に低減することができる。また、圧縮気体の流量・温度を最適化することで、成形品内の非対称な温度分布を防ぐことができ、成形品の形状精度を更に向上させることができる。また、成形品が光学レンズの場合には、内部歪みも非常い小さい高性能な製品を得ることができる。
【0040】
第2の実施の形態
図3は、成形用金型の構造を示す模式的断面図である。この成形用金型1は、図1のキャビティ駒21とな異なる特異構造のキャビティ駒51を配備して構成されている。このキャビティ駒51は、その後端部を形成する板状部材の先端面に、直線状のピン52を複数本、当該キャビティ駒の摺動移動方向に平行に突設するとともに、これらのピン52の先端面を面一に揃えたものである。すなわち、複数のピン52同士間の間隙により、給気流路53を複数、互いに平行(キャビティ駒の摺動移動方向に平行)に形成し、ピン52の先端面によりキャビティの非転写面を形成するとともに、該先端面に給気口を開口したものである。なお、符号54は金型部材に形成した排気流路である。この金型のその他の構造は、図1の金型1と同様である。
【0041】
この金型による成形工程は図1の金型と同様で、溶融樹脂をその軟化温度以下に加熱された金型1のゲート(図示せず)から金型キャビテイ内に射出充填した後、樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、キャビテイ駒51を樹脂から離隔する方向に摺動移動させて空隙40を形成する。その後、流量・温度が制御された圧縮気体を供気口から空隙40を供給し、排気流路54を介して大気中に排出することで、空隙内の圧縮気体に接する樹脂面を冷却する。
【0042】
上記成形方法による場合の、成形品内の温度測定結果を図4に示す。図4(a)における符号A1,A2,B1,B2の意味は、図2(a)について説明したものと、図4(b)に示すグラフの意味は、図2(b)について説明したものと、それぞれ同じである。
【0043】
この図4(b)で明らかなように、ひけが発生する側の樹脂表面温度の分布および、これと反対側の樹脂表面温度の分布は均等であり、しかも双方の分布間に温度差は実質的に生じていない。したがって、図3の金型によれば、従来の金型で生じていた、空隙と接する側の樹脂面の温度ムラを大幅に低減することができる。また、圧縮気体の流量・温度を最適化することで、成形品内の非対称な温度分布を防ぐことができ、形状精度を更に向上させることができる。また、成形品が光学レンズの場合には、内部歪みが非常い小さい高性能な成形品を得ることができる。また、上記キャビティ駒51では、上記のように互いに平行な複数のピン同士の間隙により、冷却気体の給気流路および給気口を形成したので、部材に微細加工を施すことなく冷却気体を空隙40に供給することができる。さらに、実験によれば給気口の口径を0.05mm以下にすることでバリの発生や、樹脂とキャビティ駒51先端面との密着力が大きくなることに起因する成形品の変形を防止することができる。
【0044】
第3の実施の形態
図5は、成形用金型の構造を示す模式的断面図である。この成形用金型1は、図1のキャビティ駒21とな異なる特異構造のキャビティ駒61を配備して構成したものである。このキャビティ駒61では、前半部に径が比較的大きな凹部を形成し、この凹部内に多孔質材料かなる通気性部材62を挿入固定して、その先端面により非転写面を形成する。通気性部材62内には多数の空孔が該部材全体にわたって均一に分布しており、通気性部材62の先端面および後端面には前記空孔が露出している。したがって、圧縮気体の給気流路は、通気性部材内の空孔によって多数形成され、給気口は通気性部材先端面に露出する空孔により多数形成される。キャビティ駒61の後半部に給気流路63を形成し、その一端部を前記凹部に、他端部を圧縮気体の供給源(図略)にそれぞれ連通させる。また、金型部材の内周面に排気流路64を、キャビティ駒61の摺動移動方向に平行に複数本形成する。この金型のその他の構成は、図1と同様である。
【0045】
この金型による成形工程は、図1の金型による場合と同様で、流量・温度が制御された冷却用圧縮気体を、給気流路63を介して上記多数の給気口から供給する。このキャビティ駒61では、通気性部材62の先端面に多数の給気口が、該先端面全体にわって均一に分布形成されている。したがって、このキャビティ駒61によれば、樹脂の非転写面全体を極めて高い均等性をもって冷却することができる。
【0046】
上記成形方法による場合の、成形品内の温度測定結果を図6に示す。この図で明らかなように、ひけが発生する側の樹脂表面温度の分布、これと反対側の樹脂表面温度の分布は均等であり、しかも双方の分布間に温度差は実質的に生じていない。その理由は、圧縮気体が多孔質の通気性部材62から空隙40内に均等に供給されるため、樹脂の非転写面全体を極めて均一に冷却することができるからである。このため、本実施の形態の金型によれば、第2の実施の形態に係る金型と同等または、これよりも優れた成形結果が得られ、成形品の形状精度が著しく高く、しかも内部歪みが非常に小さい光学レンズ等の精密プラスチック成形品を製造することができる。
【0047】
通気性部材62の空孔径は0.05mm以下が好ましく、これによりバリの発生や、樹脂とキャビティ駒61先端面との密着力が大きくなることに起因する成形品の変形を防止することができる。通気性部材62を形成する材料としてはセラミッス、鋼鉄等が挙げられるが、その熱的性質(熱伝導率・比熱)および比重が、この通気性部材62以外の金型構成部分の材料のそれと同等のものから適宜選択することが望ましい。このように、熱的性質および比重が同等の材料で金型を構成することにより、特に高精度・高性能な成形品を得ることができる。その理由は、キャビテイ駒61を摺動移動させて空隙40を形成させる前に、キャビティ内の樹脂温度に非対称な温度分布が発生するのを防止することができるからである。
【0048】
第4の実施の形態
図7は、成形用金型1の構造を示す模式的断面図であり、(a)は樹脂を射出充填する直前の状態を、(b)は樹脂充填後のキャビティ駒離隔時の状態をそれぞれ示している。この金型1では、給気流路22をキャビティ駒21内に一つまたは複数形成し、金型部材11の内周面に排気流路23を複数形成する。この金型1の全体を所定温度に保持するための温調手段(図示せず)を適所に配備する。また、転写面14a,15aの温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段(加熱部材)として、電熱ヒータ(通電加熱型のヒータ)71を金型転写面近傍に複数配置する。これらのヒータは、熱電対が検出する温度に応じて出力を制御し、温度を一定に保つものである。なお、その他の金型構成要素の構造は図1の金型と同様である。
【0049】
プラスチックの成形に際しては溶融樹脂を、その軟化温度未満の温度に加熱された金型のゲート(図略)からキャビテイ10aに射出充填した後、樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、キャビテイ駒21を樹脂から離隔する方向に移動させることで空隙40を形成し、この空隙を金型部材11の排気流路23(凹溝)と連通させる。この空隙40に圧縮気体を供給流路22を介して供給し、排気流路23を介して排出することで空隙40と接する樹脂面を冷却する。
【0050】
従来の金型では、圧縮気体により樹脂を冷却する際、金型の転写面も冷却されてしまう。これは、金型が(熱伝導性の良い)金属材料からなるためである。これに対し、本実施の形態の金型では、これを金属材料で構成した場合でも、転写面14a,15aの近傍に設けたヒータ71により、これら転写面の温度を空隙40形成前と同じ温度に保つことができる。
【0051】
図8(a)(b)に、成形品内および金型の温度測定結果を示す。これらの図の意味は、図2についての説明で明らかであるから、重複する説明は省略する。図8(b)から、空隙40を冷却する前後で成形品内および金型の温度は殆ど変わらないことが分かる。このように、本実施の形態によれば、従来の金型で生じていた転写面の温度低下を防ぐことができ、金型温度の低下や金型温度ムラに起因する成形品の形状精度劣化を防ぐことができ、形状精度を向上させることができる。また、成形品が光学レンズの場合には、温度ムラが低減したことにより、内部歪みも非常い少ない高品質の成形品を得ることができる。
【0052】
第5の実施の形態
図9は金型1の構造を示す模式的断面図であり、キャビティ駒離隔時の状態を示している。図1の金型が空隙冷却用の手段として、圧縮気体を供給するように構成したものであるのに対し、図9の金型1は、キャビティ駒を冷却することで、間接的に空隙を冷却するように構成する。すなわち、摺動自在のキャビテイ駒21内に水、油などの冷却用媒体が流れる循環配管21bを挿入配備し、この循環配管を、外部配管を介して冷却用媒体の温調装置25に連結する。この温調装置25には冷却用媒体の循環ポンプ(図略)を配備する。また、金型1全体の温度を保持するための温調手段(図略)以外に、転写面14a,15aの温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段(加熱部材)として、転写面近傍に加熱媒体として熱水、加熱油などの加熱流体を流す加熱流体供給配管72を挿入配備する。その他の部分の構成は、図7(a)と同様とする。
【0053】
プラスチックの成形に際しては溶融樹脂を、その軟化温度未満に加熱された金型のゲート(図示せず)から金型キャビティ内に射出充填した後、樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、摺動可能なキャビテイ駒21を樹脂から離隔する方向に移動させ空隙40を形成する。ついで、キャビテイ駒21に冷却用媒体を流すことにより空隙40を冷却し、この空隙により樹脂面(非転写面)を冷却する。
【0054】
従来の金型では、冷却媒体によりキャビティ駒を冷却して樹脂を冷却するようにしているが、このような構造では、金型材料が金属製で熱伝導性が良いため、金型の転写面も冷却されてしまう。これに対し、本実施の形態の金型では、転写面近傍に加熱流体を流す配管を配備したことにより、転写面の温度を空隙形成前と同じ温度に保つことができる。
【0055】
図10に示すように、本実施の形態の金型によれば、従来の金型で生じていた転写面の温度低下を防ぐことができ、金型温度の低下や、金型の温度ムラに起因する成形品の形状精度劣化を防ぎ、形状精度を向上させることができる。また、成形品が光学レンズの場合には、温度分布が低減したことにより、内部歪みも非常い小さい成形品を得ることができる。
【0056】
第6の実施の形態
図11(a)は金型1の構造を示す模式的断面図であり、キャビティ駒離隔時の状態を示している。図11(b)は図11(a)のC−C線断面図である。この金型1では、摺動可能なキャビテイ駒21内に、外部の圧縮気体供給源(図略)と連通する給気流路22を形成する。また、金型1全体の温度を保持するための温調手段(図示せず)以外に、転写面14a,15aの温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段(加熱手段)として、転写面近傍に電熱ヒータ(通電加熱を行うヒータ)73を複数、キャビティ21の摺動方向に平行に、かつ上記C−C線断面図において、キャビティを包囲する状態で設ける。その他の部分の構造は図7と同様とする。
【0057】
成形に際しては溶融樹脂を、その軟化温度未満に加熱(手段は図略)された金型のゲート(図示せず)から金型キャビティ内に射出充填した後、樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、摺動可能なキャビテイ駒21を樹脂から離隔する方向に移動させ空隙40を形成する。ついで、圧縮気体を給気流路22から流入し、排気流路23から排出することで、空隙40と接する樹脂面を冷却する。転写面近傍に加熱手段として上記ヒータ73を上記態様で設けたことにより、成形品が長尺かつ偏肉な形状の場合にも、成形品の長手方向転写面の温度ムラを低減し、非常に高精度な成形品を得ることが可能となる。
【0058】
第7の実施の形態
図12(a)は金型1の構造を示す模式的断面図であり、キャビティ駒離隔時の状態を示している。図12(b)は図12(a)のD−D線断面図である。この金型1では、摺動可能なキャビテイ駒21内に、外部の圧縮気体供給源(図略)と連通する給気流路22を一つまたは複数形成する。また、金型1全体の温度を保持している温調手段(図示せず)以外に、転写面14a,15aの温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段(加熱手段)としてヒータ74を転写面近傍に複数、かつキャビティ10aの長手方向に沿って配備する。このヒータ74は、内部の発熱素子を複数に分割し、個別に通電加熱を行うことができる構造とする。
【0059】
プラスチックの成形に際しては溶融樹脂を、その軟化温度未満に加熱された金型のゲート(図示せず)から金型キャビティ内に射出充填した後、樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、摺動可能なキャビテイ駒21を樹脂から離隔する方向に移動させ空隙40を形成させる。ついで、圧縮気体を給気流路22から流入し、排気流路23から排出することで、空隙40と接する樹脂面を冷却する。転写面近傍に加熱媒体として、上記構造のヒータを上記態様で配備したので、成形品が長尺かつ偏肉な形状の場合にも、金型構造を複雑にすることなく成形品の長手方向転写面の温度ムラを低減することができ、非常に高精度な成形品を得ることが可能となる。
【0060】
第8の実施の形態
図13は金型1の構造を示す模式的断面図であり、キャビティ駒離隔時の状態を示している。この金型1では、摺動可能なキャビテイ駒21内に、外部の圧縮気体供給源(図略)と連通する給気流路22を形成する。また、転写面14a,15aの温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段として、低熱伝導性材料(例えばセラミックス材料)からなる伝熱抑制部材である保温部材26を、転写面を形成する金型部材11とキャビティ駒21との間に配備する。すなわち上記保温部材26を、キャビティ駒21を包囲する形態で、かつこの保温部材26の端部が空隙40に臨む形態で設ける。図7の金型が上記温度維持手段として電熱ヒータ71を設けたものであるのに対し、本実施の形態の金型は、上記温度維持手段として保温部材26を配備した点で図7の金型と相違する。本実施の形態の金型のその他の部分の構成は、図7と同様である。
【0061】
プラスチックの成形に際しては溶融樹脂を、その軟化温度未満に加熱された金型のゲート(図示せず)から金型キャビティ内に射出充填した後、樹脂をその軟度温度未満にまで冷却する過程において、摺動可能なキャビテイ駒21を樹脂から離隔する方向に移動させ空隙40を形成する。ついで、圧縮気体を給気流路22から供給し、排気流路23から排出することで、空隙40と接する樹脂面を冷却する。
【0062】
従来の金型では、この圧縮気体で樹脂を冷却する際、転写面も冷却されてしまう。これに対し、本実施の形態の金型では、保温部材26を上記態様で配備したことにより、転写面の温度を空隙形成前と同じ温度に保つことが可能となる。
【0063】
図14に成形品内および金型の温度測定結果を示す。この図で明らかなように、従来の金型で生じていた非転写面の温度低下を防ぐことができ、形状精度を向上させることができる。また、成形品が光学レンズの場合には、内部歪みも非常い小さい成形品を得ることができる。また、転写面の温度を維持する手段として、保温部材26に替えて空気層(断熱層)を適所に形成することも、非常に容易かつ有効な手段であり、空隙冷却に伴う転写面の温度低下をこの空気層で抑えることができる。
【0064】
実施例および比較例
上記第1〜第3の実施の形態に係る成形用金型(実施例)と、図16に示す成形用金型(比較例)とを用意し、光学レンズを成形した。この場合、それぞれの金型では同一形状・寸法のキャビティを形成して成形した。図15(a)は光学レンズ各部の設計寸法(狙いの寸法:単位mm)を示す説明図、図15(b)は、成形で得られた光学レンズの寸法測定結果の説明図である。図15(b)で明らかなように、本発明の実施例によれば、転写面すなわちレンズ面201,202の形状・寸法精度が比較例に比べて非常に高い成形品を得ることができる。
【0065】
また、本発明の成形用金型によれば、通常の射出成形法と同等の成形サイクルでプラスチック成形品を得ることができるため生産性も高く、比較例低コストで高性能の成形品を提供することが可能となる。さらに、これらのプラスチック成形品の製造方法で成形した光学素子は形状精度が高いうえ、内部歪みが非常に少ないため、この光学素子を用いた光学系は焦点位置ずれや、ビームスポット径の肥大化のない、高い光学性能を得ることができる。
【0066】
なお、上記実施の形態および実施例では、排気流路を金型部材の内周面に形成したが、これに替えてキャビティ駒の外周面に形成することもできる。また、給気流路を金型部材の内周面に形成し、キャビティ駒に排気流路を形成してもよい。さらに、キャビティ駒内に給気流路を形成するとともに、キャビティ駒の外周面および金型部材の内周面に排気流路を形成することもできる。
【0067】
また、キャビティに圧縮気体を供給するようにしたが、これに替えて、真空ポンプで吸引した大気をキャビティに供給するように構成することもできる。また、上記実施の形態および実施例では、キャビティ駒21をキャビティから後退させることで空隙40を形成するようにしたが、キャビティ駒21を後退させず圧縮気体をキャビティに供給し、それまで樹脂に密着していたキャビティ駒の先端面を、圧縮気体の圧力によって樹脂面から剥がすことで空隙を形成することもできる。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る成形用金型およびプラスチックの成形方法で成形したプラスチック成形品は、転写面の形状精度が非常に良く、しかもこれらの金型および成形方法は、金型の加熱昇温、溶融樹脂の射出充填、保圧・徐冷、成形品取出しの工程を経る通常の射出成形金型の場合と同等の生産性を有するものである。したがって、本発明の成形用金型で成形された光学素子は、形状・寸法精度が非常に高いうえ、内部歪みが非常に小さく、この光学素子を用いた光学系では、焦点位置ずれやビームスポット径の肥大化のない、高い光学性能を得ることができる。以下、請求項別の効果についてまとめる。
【0073】
請求項1(成形用金型)、請求項12の発明(プラスチックの成形方法)では、キャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、後退したキャビティ駒と樹脂の非転写面との間に形成される空隙をこのキャビティ駒で冷却するように構成するとともに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備したので、空隙冷却時の転写面温度の低下を防ぐことができ、かつ転写面の温度のムラを防止することが可能となり、そのうえ成形品の生産性も高い。このため、転写面の温度ムラが大幅に低減され、形状精度が高く、内部歪みが非常に小さい高品質のプラスチック成形品を低コストで提供することができる。
【0074】
請求項1の発明では、キャビティ駒をキャビティから後退させることにより確実に空隙が形成されるため、非転写面に凸状または凹凸状のひけを確実に誘導することができるので、高精度の成形品を、より確実に成形することができる。請求項10の発明では、上記空隙をキャビティ駒からの圧縮気体で冷却するようにしたので、樹脂の非転写面を非常に効率良く冷却することができ、高精度な成形品を、より確実に得ることができる。請求項11の発明では、空隙に供給される圧縮気体の温度及び/又は流量が制御されていることにより、更に高精度な成形品を安定して得ることができる。
【0075】
請求項1及び9の発明では、キャビティ駒に冷却用媒体を流すことで、上記空隙を冷却するようにしたため、樹脂の非転写面を効率良く冷却することができ、高精度な成形品を得ることができる。請求項3の発明では、転写面を所定温度に維持するための温度維持手段として、電熱ヒータを配備したので、空隙冷却時の転写面の温度低下を、比較的簡易な金型構造で確実に防止することができる。
【0076】
請求項4の発明では電熱ヒータを、個別に通電発熱する複数の発熱素子を配列して構成したので、また請求項5の発明では、転写面の近傍に電熱ヒータを複数、転写面を包囲する形態で配備したので、電熱ヒータによる加熱の精度が向上する。このため請求項4,5の発明では、成形品が長尺かつ偏肉形状の場合にも、成形品の長手方向転写面の温度分布を低減することができ、非常に高精度な成形品を得ることができる。
【0077】
請求項6の発明では、上記温度維持手段が、金型部材内に形成された加熱用媒体の流路と、該流路に温度制御された加熱用媒体を供給する加熱用媒体供給手段とを備え、金型内が加熱用媒体で加熱されるように構成したので、比較的簡易な金型構造で、空隙冷却時の転写面の温度低下を防ぐことができる。請求項7の発明では、加熱用媒体の流路を金型部材内のキャビティ近傍部位に複数、転写面を包囲する形態で配備したので、空隙冷却時の転写面温度低下を、より高精度に防止することができる。
【0078】
請求項8の発明では温度維持手段が、転写面を形成する金型部材とキャビティ駒との間の適所に配備された、低熱伝導性材料からなる保温部材であることにより、また請求項2の発明では温度維持手段が、転写面を形成する金型部材とキャビティ駒との間の適所に形成された空気層であることにより、それぞれ、加熱手段を設けることなく簡易な金型構造で、空隙冷却時の転写面の温度低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図である。
【図2】(a)は図1の成形方法による成形品内の温度測定要領の説明図、(b)は温度測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図である。
【図4】(a)は図3の成形方法による成形品内の温度測定要領の説明図、(b)は温度測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図である。
【図6】(a)は図5の成形方法による成形品内の温度測定要領の説明図、(b)は温度測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図である。
【図8】(a)は図7の成形方法による成形品内および金型の温度測定要領の説明図、(b)は温度測定結果を示すグラフである。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係るプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図である。
【図10】(a)は図9の成形方法による成形品内および金型の温度測定要領の説明図、(b)は温度測定結果を示すグラフである。
【図11】本発明の第6の実施の形態に係るもので、(a)プラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図であり、(b)はそのC−C線断面図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態に係るもので、(a)プラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図であり、(b)はそのD−D線断面図である。
【図13】本発明の第8の実施の形態に係るプラスチック成形用金型および、これによる成形方法を示す模式的断面図である。
【図14】(a)は図13の成形方法による成形品内および金型の温度測定要領の説明図であり、(b)は温度測定結果を示すグラフである。
【図15】(a)は本発明の金型(実施例)および、従来の金型(従来例)で成形しようとする光学レンズの概略斜視図、(b)はこれら実施例と従来例との、成形結果(成形品の形状精度)を比較して示すグラフである。
【図16】従来の成形用金型の構造および、これによる成形工程を示す説明図である。
【図17】図16の成形用金型および成形工程の問題点説明図である。
【符号の説明】
1 成形用金型
10 本体
10a キャビティ
11〜15 金型部材
14a 転写面
15a 転写面
16 溶融樹脂
17 冷却中の樹脂
21 キャビティ駒
21a 非転写面
21b 循環配管
22 給気流路
22a 給気口
23 排気流路
25 温調装置
26 保温部材
31 圧力制御装置
32 温度調節装置
33 流量制御弁
34 気体供給源
40 空隙
51 キャビティ駒
52 ピン
53 給気流路
54 排気流路
61 キャビティ駒
62 通気性部材
63 給気流路
64 排気流路
71 電熱ヒータ
72 加熱流体供給配管
73 ヒータ
74 ヒータ
100a 充填された溶融樹脂
100b 冷却中の樹脂
100c 成形品
100d ひけ
101 金型
101a キャビティ
102 キャビティ駒(可動入れ子)
103 転写面
104 転写面
105 非転写面
106 空隙
200 光学レンズ
201 レンズ面
202 レンズ面

Claims (12)

  1. 転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記キャビティ駒内に冷却用媒体の流路を形成し、該流路を温度制御された冷却用媒体の供給手段に連絡したことを特徴とする成形用金型。
  2. 温度維持手段が、転写面を形成する金型部材とキャビティ駒との間の適所に形成された空気層であることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
  3. 転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記温度維持手段が電熱ヒータと、該電熱ヒータの発熱温度を所定温度に制御するヒータ制御手段とを備えていることを特徴とする成形用金型。
  4. 電熱ヒータが、個別に通電発熱する複数の発熱素子を配列して構成されていることを特徴とする請求項3に記載の成形用金型。
  5. 転写面の近傍に電熱ヒータを複数、転写面を包囲する形態で配備したことを特徴とする請求項3または4に記載の成形用金型。
  6. 転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記温度維持手段が、金型部材内に形成された加熱用媒体の流路と、該流路に温度制御された加熱用媒体を供給する加熱用媒体供給手段とを備えていることを特徴とする成形用金型。
  7. 加熱用媒体の流路を金型部材内のキャビティ近傍部位に複数、転写面を包囲する形態で配備したことを特徴とする請求項6に記載の成形用金型。
  8. 転写面と非転写面とによりキャビティを画成した成形用金型において、先端面が非転写面を形成し、かつキャビティ内を冷却する機能を有するキャビティ駒を設け、さらに、転写面の温度をキャビティへの樹脂充填直前の温度に維持するための温度維持手段を適所に配備し、前記キャビティ駒を、金型部材に対し摺動移動させることによりキャビティに対し接近・離隔自在とし、前記温度維持手段が、転写面を形成する金型部材とキャビティ駒との間の適所に配備された、低熱伝導性材料からなる保温部材であることを特徴とする成形用金型。
  9. キャビティ駒内に冷却用媒体の流路を形成し、該流路を温度制御された冷却用媒体の供給手段に連絡したことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の成形用金型。
  10. キャビティ駒として、キャビティに臨む給気口が先端面に形成され該給気口に連なる圧縮気体の供給流路(以下、給気流路)が形成されたものを設け、前記給気口からキャビティに供給された圧縮気体を当該金型外に排気する排気流路を適所に形成したことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の成形用金型。
  11. キャビティ駒に形成された給気流路を、温度・流量の少なくとも一方が制御された圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段に連絡したことを特徴とする請求項10に記載の成形用金型。
  12. 請求項3〜7のいずれか1項に記載の成形用金型を用いるプラスチックの射出成形方法であって、あらかじめ温度維持手段を作動させておき、溶融樹脂をその軟化温度未満に加熱された金型に射出充填し、溶融樹脂を軟化温度未満まで冷却する過程で、キャビティ駒を金型部材に対し摺動移動させてキャビティから離隔させることにより、キャビティ駒の非転写面とキャビティ内樹脂との間に空隙を形成し、該空隙をキャビティ駒で冷却することにより、非転写面に接触していた樹脂面を冷却することを特徴とするプラスチックの成形方法。
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