JP2006150749A - レンズ成形方法及び成形金型 - Google Patents

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修三 土田
Kiyoshi Saeki
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Toshihiko Shiida
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Hideaki Hamada
秀明 濱田
Hisanori Toda
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Abstract

【課題】 高精度で品質ばらつきの少ないレンズを成形できかつレンズ1個当たりの成形時間を短縮できるレンズ成形方法及び成形金型を提供する。
【解決手段】 可動型3と固定型2から成る金型内に形成される空隙部11に樹脂材料を射出することでレンズを成形する成形金型1を用い、空隙部11に所定温度の樹脂材料を射出する射出工程、保圧工程、冷却工程及び取出工程の一連の工程を経てレンズを成形する方法において、空隙部11に臨む転写面6、9と、転写面を加熱する加熱手段と、転写面の熱を一時保持する断熱手段と、空隙部の熱を金型外部へ伝達する冷却手段とを有するインサート7、10を設け、温度の低い樹脂材料を射出して冷却時間を短縮しかつ空隙部11に臨む転写面6、9を加熱することで微細な転写も高精度にかつ確実に行えるようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、可動型と固定型にて形成される空隙部に樹脂材料を射出することでレンズを成形するレンズ成形方法及び成形金型に関するものである。
従来の樹脂製のレンズの成形方法として、大きな容積を有する金型を用い、一度に多数個のレンズを成形する多数個取り方式の成形方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
この種の従来の成形金型を、図8を参照して説明する。固定型31と可動型32にて形成される空隙部(以下、キャビティーと称する)34に、ノズル33から溶融した樹脂をスプール及びランナー35を介して射出し、所定の圧力にて保圧した後、樹脂がガラス転移温度以下になるまで十分冷却し、レンズを得るように構成されている。36は、空隙部34を形成するように固定型31と可動型32に挿入配置されたインサート、37は金型31、32の冷却回路である。
また、射出成形において、ウェルドやヒケといった不良に対する対策として、成形品の転写性を向上させるために、金型の全表面に薄膜加熱体を形成することは知られている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、成形サイクルを短縮するため、空隙部近傍にヒートシンクを投入して樹脂の熱を除去する冷却時間を短縮する方法も知られている(例えば、特許文献4参照。)。
特開昭55−25973号公報 特開昭57−123031号公報 特許第2618100号明細書 特開平11−320621号公報
しかしながら、従来の図8に示した多数個取り成形金型の構成では、転写面を有するキャビティー34へ樹脂を流す際の経路であるランナー35が製品に使用されずに廃棄されるため、材料歩留りが非常に悪く、近年はレンズ径・厚みの小型化が進んでいるため、さらに材料歩留りが悪くなるという問題がある。また、多数個を一度に成形するため、金型内の冷却水温度分布にばらつきが発生し、キャビティー34に充填される樹脂の温度や圧力のばらつきが発生し、各キャビティー34間で成形されるレンズの特性にばらつきが発生するという問題がある。さらに、金型や成形機が大きく、広い成形スペースを必要とし、さらに温度制御に膨大なエネルギーを要するという問題がある。
レンズの高精度化が求められる中、生産品質のばらつきを低減させるために、キャビティー34間でばらつきが無くなる1個取りの成形金型が考えられている。一方、1個取りにすることにより、材料低減、省スペース、省エネルギー化は実現できるが、成形品1個当たりの成形時間が長くなって、多数個取りの場合に比べて生産性が悪化するという問題があるため、これまで実現されて来なかった。
また、成形品の転写性を向上させる方法として、上記特許文献3には金型の表面全体に薄膜加熱体を形成し、金型全体を加熱する方法が開示されているが、これは必要のない部分も加熱するため、余分なエネルギーを消費することになるという問題がある。また、連続成形運転中には、固定型と可動型が高温・高圧で当接するため発熱体の耐久性に問題があり、また固定型と可動型の間で電気的に短絡する危険性もある。さらに、金型全体に加熱体が存在するため、金型周囲の外気状態により表面温度が急激に変化し易く、金型周囲の外気温度が変化すると電気抵抗体に通電して発熱させる発熱体の電気抵抗値が変化するため、発熱量の適正制御が困難になるという問題もある。
また、樹脂を冷却する方法として、上記特許文献4には転写面の近傍のインサート内部にヒートシンクを配設することが開示されているが、非常に小型のレンズを成形する際には、転写面近傍までヒートシンクを導入することは非常に困難であり、ヒートシンク自体の加工及びヒートシンクを挿入する穴加工が困難で、生産性に劣るという問題がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、高精度で品質ばらつきの少ないレンズを成形できかつレンズ1個当たりの成形時間を短縮できるレンズ成形方法及び成形金型を提供することを目的とする。
本発明のレンズ成形方法は、所定温度に温度制御された可動型と固定型とから成る金型内に形成される空隙部に所定温度の樹脂材料を射出する射出工程、保圧工程、冷却工程及び取出工程の一連の工程を経てレンズを成形するレンズ成形方法において、前記転写部に臨む転写面を加熱し、温度を上昇させる工程を有するものである。
成形サイクルは大きく分けて型締・射出・保圧・冷却・型開・取出の工程があるが、成形時間を大きく規制するのは冷却工程である。この冷却工程においては、樹脂中心部の冷却が極端に悪く、成形時間の短縮に影響を及ぼしており、肉厚の厚いレンズでは特に顕著である。冷却工程の時間を短縮する対策として、樹脂温度の設定を従来の射出成形よりも低温にし、射出工程後の樹脂内部の温度を低温に保持することが考えられるが、樹脂温度を低温化するとレンズ表面の転写形状が悪化することが懸念される。本発明では、レンズ表面の転写形状が精密に加工された転写面を一時的に加熱することによって、転写面を急速に昇温させ、その熱を充填樹脂表面層に伝達させることで、高精度で品質ばらつきのないレンズを成形できる。かくして、高精度で品質ばらつきの少ないレンズをレンズ1個当たりの成形時間を短縮して生産性良く成形することができる。また、1個取りの成形金型で成形すれば、多数個取りの場合のように空隙部間での品質ばらつきがなく、かつランナーなどによる材料の無駄がなくなり、材料歩留りも向上できる。
また、転写面の温度を上昇させる工程では、樹脂材料のガラス転移温度(Tg)に対して(Tg+5)℃以上、(Tg+120)℃未満の温度に加熱制御するのが好適であり、また転写面の温度を上昇させる工程は、樹脂材料を空隙部に射出してから保圧工程終了までの時間内に行うのが好適である。
また、転写面の温度を上昇させる工程を、樹脂材料を空隙部に射出してから冷却工程終了までに複数回繰り返すことにより、樹脂表面のみが昇温して高精度転写に必要な温度を確保することができ、転写後の樹脂表面温度が急激に冷却されるのを抑制しながらレンズ内部温度との温度差が大きくならないように断続的に表面を加熱することができ、内部歪みのない高精度のレンズを得ることができる。
また、本発明の成形金型は、可動型と固定型から成る金型内に形成される空隙部に樹脂材料を射出することでレンズを成形する成形金型であって、空隙部に臨む転写面と、転写面を加熱する加熱手段と、転写面の熱を一時保持する断熱手段と、空隙部の熱を金型外に向けて伝達する冷却手段とを有するインサートを備えたものである。
このような構成の成形金型を用いることで、上記成形方法を実施してその効果を奏することができ、かつ加熱手段にて転写面を加熱し、その加熱時に熱がインサート自体に流れるのを断熱手段で一時的に抑制し、かつ冷却手段にて樹脂の熱を積極的に除去するようにしたインサートを備えているので、これら加熱手段、断熱手段、冷却手段により、高品質で短時間の成形を実現することができ、またインサートの転写面の近傍のみを加熱するので、加熱・冷却の応答性が良くかつ消費エネルギーの削減を図ることができる。
インサートを、可動型と固定型から取り外せるように摺動可能に配設すると、成形レンズの取り出しを容易に行えて好適である。また、加熱手段は、導電回路を通じて電力を供給することにより発熱する電気導電薄膜を有すると、面内を均一に加熱できて好適であり、その導電回路はインサートの摺動面に形成した溝に配設するのが好適である。
また、導電回路に、電気導電薄膜に対して並列に接続された可変抵抗器を設けると、電流と電圧の単独のパラメータにて作業性・制御性良く、発熱量の制御を行うことができ、制御性良く高精度のレンズを成形できて好適である。
また、La:樹脂厚み、Lb:断熱手段の部材厚み、Lc:冷却手段の部材厚み、κa:樹脂熱伝導率、κb:断熱手段の熱伝導率、κc:冷却手段の熱伝導率として、下記の式
(La/κa)+(Lb/κb)+(Lc/κc)=Const.(一定)
を満たすように断熱手段の材質及び厚みを設定すると、レンズ面内での温度ばらつきを効果的に抑制できて好適である。
本発明のレンズ成形方法及び成形金型によれば、樹脂材料の射出温度を低温にすることができて樹脂充填後の冷却時間を短くして成形時間を短縮でき、かつ空隙部に臨む転写面を加熱することで転写性を確保して高精度の成形ができ、また成形時間の短縮化で1個取りを実現できることで、多数個取り成形に特有の成形ばらつきを解消し、さらに成形機の小型化・省エネルギー及び樹脂材料歩留りの向上を実現することができる。
以下、本発明のレンズ成形方法とそれに用いる成形金型の一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1において、成形金型1は、固定型2と可動型3の一対の金型から成り、固定型2は位置不動に支持されており、可動型3は固定型2と離接可能に支持されている。固定型2は円盤状に形成され、外周部に段差4と中央部に樹脂材料を射出するノズル孔5が設けられ、このノズル孔5にホッパー(図示せず)が連結されている。また、レンズ成形用の転写面6を高精度に加工したインサート7が配設されている。可動型3も円盤状に形成され、外周部に段差8が設けられており、レンズ成形用の転写面9を高精度に加工したインサート10が摺動可能な状態で配設されている。そして、可動型3を固定型2に接合させると、可動型3の段差8と固定型2の段差4が密着し、インサート7、10が対向して空隙部(キャビティー)11が形成される。
ここで、インサート7、10は、銅やアルミニウム若しくはその合金などの熱伝導率の高い材料を用いて製作して冷却手段を構成し、これらインサート7、10の鍔部12、13に当接する型板16、17も同様に熱伝導率の高い材料にて製作している。また、成形金型1は、冷媒が循環される多数の流路14が内部に形成されたウォータジャケット15にて挟んだ構成とされ、その流路14には冷媒循環用の温調機(図示せず)が接続されている。
次に、インサート7、10の転写面6、9の近傍の構成について、図2を参照して説明する。インサート7、10は、射出圧力・型締圧力に剛性的に耐えうる必要があり、高熱伝導材料として、銅合金を用いている。この銅合金製のインサート7、10に所定の形状の加工を施し、その加工面に断熱材(断熱手段)18として、厚み0.01〜数mm程度のジルコニアやアルミナなどのセラミックス層、若しくはアモルファスカーボンなどの非結晶性材料の層を形成し、その上に加熱手段として銅などの電気導電薄膜19を形成している。この電気導電薄膜19は、エッチングなどによってパターン形成した後、パターン内でショートしないように電気絶縁薄膜20にて絶縁している。最後に、その電気絶縁薄膜20の表面にニッケル膜21を形成し、そのニッケル膜21に最終レンズ形状の加工を施して転写面6、9を形成している。
また、インサート10は可動型3と固定型2から取り外せるように摺動する構造となっており、インサート7、10表面の電気導電薄膜19への電気供給構造として、インサート7、10の摺動する側面に溝を形成し、その溝内に絶縁保護を施した導電層22を形成して電気導電薄膜19に接続している。また、インサート7、10の鍔部12、13まで延長した導電層22からは電気配線23により金型外部に設置した電源24に接続している。
次に、以上の構成の成形金型1を用いたレンズ成形動作について説明する。まず、可動型3を固定型2に当接させて型締することで空隙部(キャビティー)11を形成する。この空隙部11にノズル孔5からガラス転移温度以上に温度制御されて溶融した樹脂材料(図示せず)を射出する。
次に樹脂材料を空隙部11に射出する射出工程の完了後、一定時間圧力を保持する保圧工程を経て冷却工程に入り、これら保圧工程と冷却工程の間に、インサート7、10の転写面6、9の近傍に配設されている加熱手段としての電気導電薄膜19に所定の電流を通電することにより転写面6、9を加熱し、温度を上昇させる。その熱が空隙部11に射出充填された樹脂材料の表面に伝達することにより、レンズ表面の微細形状転写に必要な温度まで樹脂表面の温度が昇温する。加熱する温度は成形するレンズ形状により異なるが、適正に昇温させることによって樹脂表面層における粘度が低下し、樹脂の流動性を増加させることにより、微細な形状転写を確保することができる。また、加熱手段が電気導電薄膜19から成り、通電させることで発熱する発熱体であり、電流量や時間の調整で昇温温度や昇温速度を制御することができ、樹脂材料のガラス転移温度(Tg)に対して(Tg+5)℃以上、(Tg+120)℃未満の温度に加熱制御することで、十分な転写性を確保しつつ樹脂温度が樹脂の分解温度まで達しないように調整することができる。
その後、電気導電薄膜19への通電を停止し、高熱伝導性部材から成るインサート7、10を介して樹脂の熱をウォータジャケット15へ逃がし、樹脂温度を低下させる。次に、樹脂温度がガラス転移温度近傍若しくはそれ以下になるまで、樹脂内部と表面部の温度差が広がらないように電気導電薄膜19による加熱を断続的に繰り返す。すなわち、樹脂表面は金型に接触しているため急激に冷却されるのに対して樹脂内部は熱が逃げにくいため徐々に冷却される。そのため、温度歪みを低減してレンズを成形するには樹脂表面と樹脂内部の温度差を減少させる必要がある。そこで、樹脂材料の表面がガラス転移温度Tg付近に冷却されたら、再度電気導電薄膜19に通電させる工程を少なくとも1回以上繰り返し、図3(a)若しくは図3(b)に示すように、樹脂内部と表面部の温度差を小さくするように冷却していく。ここで、図3(a)に示すように、樹脂表面温度を樹脂内部温度より低い温度に設定する場合と、図3(b)に示すように、樹脂表面温度が樹脂内部温度より高い温度に設定する場合があるが、いずれの場合でも表面温度と内部温度の差を減少させるような制御方法であれば、レンズ内の温度歪みの低減化が可能である。
次いで、樹脂全体がガラス転移温度Tg付近まで冷却すると、固定型2と可動型3を開き、突き上げロッド29aを押し込むことにより、突き上げプレート29bが押し込まれ、インサート10と突き上げピン30が同期して突き出されることにより成形されたレンズを取り出すことができる。
以下に、樹脂レンズ成形を行う具体的な実施例について説明する。
レンズを成形する樹脂材料として、ZEONEX 480R(日本ゼオン製)を使用し、ウォータジャケット15内の冷却媒体温度を50℃、樹脂温度を145℃に設定した。また、成形金型1の構成として、断熱材18に厚み1mmのアモルファスカーボンを用い、インサート7、10を構成する高熱伝導性材料として銅を用いた。その際の樹脂内部及び表面部の温度変化を解析にて計算した結果を、通常の金型材のみで作製した金型を用いた従来例の場合と比較して図4に示す。図4(a)は通常の金型を用いた従来例、図4(b)は通電加熱を行う本発明例を示す。
成形品を取り出すためには、できるだけ短時間で樹脂の温度がガラス転移温度以下に冷却されている必要があり、その観点で比較すると、本発明では充填樹脂温度が低いため、樹脂内部の温度がガラス転移温度以下まで冷却される時間が早くなる。また、樹脂表面温度に関しては、高温状態を維持している時間が長く、微細な転写を形成することが可能である。さらに、任意の時間後の取出工程にて、樹脂表面と内部の温度差を減少させることができる。実際に、この条件にてレンズを作成すると。レンズ特性である収差及び形状精度(設計形状値からのズレ値:P−V値)が表1の示すように改善されることを確認した。
Figure 2006150749
次に、樹脂の面内温度ばらつきを低減した構成例について説明する。本実施例では、樹脂の中央平面(ここでは固定型と可動型の当接面とした)からの樹脂厚みと断熱手段の部材の厚み及び冷却手段の部材厚みの決定に際し、次の(1)式
(La/κa)+(Lb/κb)+(Lc/κc)=Const.(一定)・・(1) ここで、La:樹脂厚み、Lb:断熱手段の部材厚み、Lc:冷却手段の部材厚み
κa:樹脂熱伝導率、κb:断熱手段の熱伝導率、κc:冷却手段の熱伝導率を満たすようにした。
樹脂の面内方向における中心部と有効径外周部の温度差を図5に示す。図5においては、図6に示すように、断熱材18の厚みを1mmにした場合と、上記(1)式に基づいて断熱材18の厚みを決定した場合を比較して示している。また、図5においては、図6に示すようにコバ部25を覆うように厚み1mmの断熱材26を設置した状態での温度差を示しており、その断熱材26の熱伝導率と温度との関係を示している。この結果、上記のような断熱材の厚み決定法を適用することで、温度差を数℃から十数度低減できることが確認できる。
また、上記(1)式に基づいてインサート7、10を製作した場合、樹脂の熱移動経路について、インサートを伝達してウォータジャケット15へ移動する熱移動が優先的に発生するとき、レンズ面内の温度分布を均一に制御できる。逆に、例えば図6に示すコバ部25から可動型3や固定型2などを通じて樹脂の熱がウォータジャケット15に移動する場合は、計算式による予測と異なり、レンズ面内温度分布の均一性向上が見込めない場合がある。そのため、コバ部25から可動型3や固定型2を介してウォータジャケット15への熱移動を抑制するため、図6に示すように、コバ部25にも断熱材26を設置することが望ましく、特に図5に示すように、コバ部25に設置する断熱材26の熱伝導率は5W/mK以下が望ましい。
本実施例では、インサート7、10の転写面6、9の近傍に設置した電気導電薄膜19は、転写面全体を均一に加熱させるために、面内に図7に示すようなパターン回路27を形成した。このパターン回路27の発熱量は回路の電気抵抗値及び流れる電流値にて決定する。しかし、電気抵抗値は、材質、パターン、厚みによって決定されるため、必要な発熱量に合わせて電圧値・電流値・抵抗値の組み合わせを考慮した設計が必要であるが、回路の材質、厚み、パターンは一旦加工してしまうと変更できず、発熱量の微調整が困難である。即ち、発熱量を調節するため印加電圧を調整して電流値調整を行う方法を取った場合、電圧値と電流値は独立したパラメータではなく、電圧値と電流値の組み合わせを考慮する必要があり、微調整が困難である。そこで、単独のパラメータにて発熱量を調整し、発熱量の微調整の作業性・制御性を向上させるために、図7に示すように、パターン回路27に並列に可変抵抗器28を接続することにより、電圧値・抵抗値一定の状態で任意に導電回路へ流れる電流値を調整できるようにしている。
以上の実施形態の説明では、1個取りの成形金型によるレンズ成形において、成形金型の空隙部に相対的に低温の樹脂材料を射出して冷却時間を短くするとともに、射出工程から冷却工程の間にレンズ表面を加熱することで転写性を向上した例を説明したが、本発明の上記成形方法は、多数個取りの成形金型による成形においても効果的に適用することができる。
本発明のレンズ成形方法及び成形金型は、レンズの成形サイクルを短くし、成形レンズの精度を高め、ばらつきを低減し、さらに特性を向上させることができ、また材料歩留りを向上し、成形金型の小型化・省スペース化を図れるので、特に小型薄型のレンズの1個取り成形金型による成形に特に有用であり、さらにその成形方法は多数個取りの成形金型による成形を含めて各種のレンズの成形にも有用である。
本発明の一実施形態の成形金型における概略構成を示す縦断面図。 同実施形態の成形金型におけるインサートの要部構成を示す斜視図。 同実施形態の成形方法における温度プロファイルの概略説明図。 同実施形態の成形方法における解析温度プロファイルの概略説明図。 同実施形態の成形方法における面内温度差の解析結果を示すグラフ。 図5の解析時のコバ部と断熱材の配置状態を示す断面図。 同実施形態の成形金型における加熱手段の説明図。 従来例の成形金型の概略構成を示す縦断面図。
符号の説明
1 金型
2 固定型
3 可動型
6 転写面
7 インサート
9 転写面
10 インサート
11 空隙部
18 断熱材(断熱手段)
19 電気導電薄膜(加熱手段)
22 導電通路(導電回路) 23 電気配線(導電回路)
28 可変抵抗器

Claims (10)

  1. 所定温度に温度制御された可動型と固定型とから成る金型内に形成される空隙部に所定温度の樹脂材料を射出する射出工程、保圧工程、冷却工程及び取出工程の一連の工程を経てレンズを成形するレンズ成形方法において、前記空隙部に臨む転写面を加熱し、温度を上昇させる工程を有することを特徴とするレンズ成形方法。
  2. 転写面の温度を上昇させる工程では、樹脂材料のガラス転移温度(Tg)に対して(Tg+5)℃以上、(Tg+120)℃未満の温度に加熱制御することを特徴とする請求項1記載のレンズ成形方法。
  3. 転写面の温度を上昇させる工程を、樹脂材料を空隙部に射出してから保圧工程終了までの時間内に行うことを特徴とする請求項1又は2記載のレンズ成形方法。
  4. 転写面の温度を上昇させる工程を、樹脂材料を空隙部に射出してから冷却工程終了までに複数回繰り返すことを特徴とする請求項3に記載のレンズ成形方法。
  5. 可動型と固定型から成る金型内に形成される空隙部に樹脂材料を射出することでレンズを成形する成形金型であって、空隙部に臨む転写面と、転写面を加熱する加熱手段と、転写面の熱を一時保持する断熱手段と、空隙部の熱を金型外に向けて伝達する冷却手段とを有するインサートを備えたことを特徴とする成形金型。
  6. インサートを、可動型と固定型から取り外せるように摺動可能に配設したことを特徴とする請求項5記載の成形金型。
  7. 加熱手段は、導電回路を通じて電力を供給することにより発熱する電気導電薄膜を有することを特徴とする請求項5又は6記載の成形金型。
  8. 導電回路は、インサートの摺動面に形成した溝に配設したことを特徴とする請求項7記載の成形金型。
  9. 導電回路には、電気導電薄膜に対して並列に接続された可変抵抗器を設けたことを特徴とする請求項7記載の成形金型。
  10. 空隙部に充填される樹脂の厚みと熱伝導率、断熱手段の部材厚みと熱伝導率、冷却手段の部材厚みと熱伝導率が、下式を満たすように断熱手段の材質及び厚みを設定したことを特徴とする請求項5記載の成形金型。
    (La/κa)+(Lb/κb)+(Lc/κc)=Const.(一定)
    La:樹脂厚み、Lb:断熱手段の部材厚み、Lc:冷却手段の部材厚み
    κa:樹脂熱伝導率、κb:断熱手段の熱伝導率、κc:冷却手段の熱伝導率。
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